(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134310
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】圧力測定装置
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G01L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033365
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】中園 茉友子
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC60
2F055DD20
2F055EE40
2F055FF43
2F055GG01
2F055GG11
2F055HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】導圧用の細管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされるとともにボディ側のワッシャにシール性よく溶接された圧力測定装置を提供する。
【解決手段】センサケース42は、セラミックス材料からなり、第1および第2の開口部を有する。ボディ12には、第1および第2の導圧路25,26の開口端に装着されたステンレス製の第1および第2のワッシャ27,28と、これらのワッシャに一端が接合されるとともに他端がセンサケースの第1および第2の開口部を貫通して圧力センサチップ33に連通する第1および第2の細管31,32とが設けられる。第1および第2の細管がセンサケースを貫通する部分は、半田付け用のめっきが施されているとともに、メタライズされた第1および第2の開口部に半田付けされる。第1および第2の細管の一端は、半田付け用のめっきが施されていない状態で第1および第2のワッシャに溶接されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象であるプロセス流体の圧力を受圧する受圧ダイアフラムを備え、
前記受圧ダイアフラムとの間に充填された圧力伝達媒体の圧力を受圧して圧力を検出する圧力センサチップと、
前記圧力センサチップを収容するセンサケースとが内部空間に設置されたボディを有する圧力測定装置であって、
前記センサケースは、セラミックス材料によって形成されているとともに、前記圧力伝達媒体の圧力を前記圧力センサチップに導入するための開口部を有し、
前記ボディは、前記受圧ダイアフラムを壁の一部として形成されて前記圧力伝達媒体の一部を収容する圧力伝達室から前記ボディの前記内部空間に通じる導圧路を有し、
前記ボディの前記内部空間には、
前記導圧路における前記ボディの前記内部空間に通じる開口端に装着された、貫通孔を有するステンレス鋼製のワッシャと、
前記ワッシャの前記貫通孔にその一端が挿入されて接合されるとともに、その他端が前記センサケースの前記開口部を貫通して前記圧力センサチップに連通する、内部に前記圧力伝達媒体が充填されたステンレス鋼製の細管とが設けられ、
前記細管における前記センサケースの前記開口部を貫通する部分は、半田付け用のめっきが施されているとともに、メタライズされた前記開口部に半田付けされ、
前記細管における前記ワッシャの前記貫通孔に挿入された部分は、半田付け用のめっきが施されていない状態で前記ワッシャに溶接されていることを特徴とする圧力測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力測定装置において、
前記細管の表面は、前記ワッシャの前記貫通孔の内周面との接合部を除いて前記半田付け用のめっきが施されていることを特徴とする圧力測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力測定装置において、
前記細管は、前記半田付け用のめっきが施された状態で前記ワッシャおよび前記センサケースと接合されていることを特徴とする圧力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端部がセンサケースに半田付けされるとともに他端部がボディ側の部材に溶接される導圧用の細管を備えた圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧力測定装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された圧力測定装置は、センサチップがボディの一端側の内部空間に収容され、ボディの他端側の導圧路からセンサチップに圧力を導く細管を備えている。ボディの他端側には、測定流体に接するバリアダイアフラムと、バリアダイアフラムが壁の一部となる圧力伝達室とが設けられている。上述した導圧路は、圧力伝達室と細管とを連通している。
【0003】
細管とボディとの接合は、例えば特許文献2に記載されているように、細管が貫通する金属製のワッシャを介して行うことができる。細管は、ワッシャの貫通孔に挿入された状態でワッシャに溶接される。ワッシャは、ボディに抵抗溶接によって溶接される。
細管とセンサチップとの接合は、例えば接着剤を使用して行うことができる。接着剤としてエポキシ系の接着剤を使用する場合は、この接着剤が吸湿して劣化することを防ぐために、センサケースでセンサチップを覆うことが望ましい。センサケースは、信号取出し構造を容易に形成できるように、セラミックスによって形成することが好ましい。
【0004】
ところで、近年の圧力測定装置は、センサチップに過大圧保護機構を搭載することがある。過大圧保護機構をセンサチップに搭載した圧力測定装置においては、受圧部(バリアダイアフラム)から感圧部(センサチップ)までの圧力伝達経路においても高耐圧であることが求められる。そのため、圧力伝達経路の構成部品(ボディ、ワッシャ、細管)は、強度維持を目的としてステンレス鋼等の高強度金属によって形成する必要がある。
【0005】
センサチップを覆うセラミックス製のセンサケースを備えている場合、センサケースを細管が貫通する部分の隙間は、半田付けにより封止する。半田付けを行うために、センサケースには、細管を通す開口部の周囲に導体を形成し、Niを下地としてAuをメタライズする。同様に細管も半田付けを行うためにメタライズを行う。一般的に、ステンレス鋼は半田付けしづらい金属であり、ステンレス鋼に半田付けを行うためには、表面の酸化膜を除去する必要がある。酸化膜を除去するためには、やに入り半田やフラックスを使用する必要があるが、半田付け後にフラックス(腐食成分)の除去のため洗浄が必要となる。洗浄の際には、導圧路内への異物混入やセンサチップへの異物付着による特性劣化などの不具合が生じるおそれがある。このため、このような不具合の発生を避けるため、やに入り半田やフラックスを使用することなく、ステンレス鋼製の細管にNiを下地としてAuめっきを行い、このAu層をセンサケースのメタライズ部に半田付けして細管貫通部を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5089018号公報
【特許文献2】特許第6559584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、半田付けできるようにNiを下地としてAuめっきが施された細管は、ワッシャとの溶接部においてシール性が低くなるおそれがあった。この理由は、下地のNiめっき成分に含まれるP(りん)やS(硫黄)などにより、溶接割れが発生するからである。この溶接割れは、
図9に示すように発生する。
図9には、細管1の先端をワッシャ2の貫通孔の開口縁に溶接した溶接部が示されている。この溶接部には、
図9中に四角形の枠で囲って示すように、溶接割れにより生じるクラックが形成されている。クラックは、細管1とワッシャ2との境界に沿うように延びている。
【0008】
本発明の目的は、導圧用の細管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされるとともにボディ側のワッシャにシール性よく溶接された圧力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る圧力測定装置は、測定対象であるプロセス流体の圧力を受圧する受圧ダイアフラムを備え、前記受圧ダイアフラムとの間に充填された圧力伝達媒体の圧力を受圧して圧力を検出する圧力センサチップと、前記圧力センサチップを収容するセンサケースとが内部空間に設置されたボディを有する圧力測定装置であって、前記センサケースは、セラミックス材料によって形成されているとともに、前記圧力伝達媒体の圧力を前記圧力センサチップに導入するための開口部を有し、前記ボディは、前記受圧ダイアフラムを壁の一部として形成されて前記圧力伝達媒体の一部を収容する圧力伝達室から前記ボディの前記内部空間に通じる導圧路を有し、前記ボディの前記内部空間には、前記導圧路における前記ボディの前記内部空間に通じる開口端に装着された、貫通孔を有するステンレス鋼製のワッシャと、前記ワッシャの前記貫通孔にその一端が挿入されて接合されるとともに、その他端が前記センサケースの前記開口部を貫通して前記圧力センサチップに連通する、内部に前記圧力伝達媒体が充填されたステンレス鋼製の細管とが設けられ、前記細管における前記センサケースの前記開口部を貫通する部分は、半田付け用のめっきが施されているとともに、メタライズされた前記開口部に半田付けされ、前記細管における前記ワッシャの前記貫通孔に挿入された部分は、半田付け用のめっきが施されていない状態で前記ワッシャに溶接されているものである。
【0010】
本発明は、前記圧力測定装置において、前記細管の表面は、前記ワッシャの前記貫通孔の内周面との接合部を除いて前記半田付け用のめっきが施されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記圧力測定装置において、前記細管は、前記半田付け用のめっきが施された状態で前記ワッシャおよび前記センサケースと接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、細管のセンサケースを貫通する部分にはAuめっきが施されているから、センサケースの細管が貫通する貫通部が半田付けにより封止される。また、細管のワッシャに溶接される部分にはめっきが施されていないから、この細管とワッシャとの溶接部に溶接割れが生じることはない。
したがって、導圧用の細管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされるとともにボディ側のワッシャにシール性よく溶接された圧力測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る圧力測定装置の断面図である。
【
図3】
図3は、圧力測定装置のボディと樹脂ケースとを破断して示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、圧力センサ組立体の斜視断面図である。
【
図5】
図5は、センサケースおよび圧力センサチップと細管との接合部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、ワッシャと細管との接合部を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、細管のめっき範囲を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、ワッシャをボディに溶接する手順を説明するための斜視断面図である。
【
図9】
図9は、ワッシャと細管の溶接部を拡大して示す顕微鏡写真である。
【0014】
以下、本発明に係る圧力測定装置の一実施の形態を
図1~
図8を参照して詳細に説明する。
図1に示す圧力測定装置11は、
図1において中央部に描かれているボディ12に後述する複数の機能部品を組み付けて構成されている。ボディ12は、
図1において下側に描かれている受圧部13と、上側に描かれている検出部14とを有している。この実施の形態によるボディ12は、ステンレス鋼によって形成されている。この実施の形態によるボディ12は、ステンレス鋼として耐食性の観点からSUS316によって形成されている。
【0015】
受圧部13は、
図1において左右方向を厚み方向とする板状に形成されており、厚み方向の一方の端部に第1の配管15が接続されるとともに、厚み方向の他方の端部に第2の配管16が接続される。第1の配管15の内部は、測定対象である第1のプロセス流体17で満たされている。第2の配管16の内部は、測定対象である第2のプロセス流体18で満たされている。
受圧部13における第1の配管15と接続される一端部には、第1のプロセス流体17の圧力を受圧する第1の受圧ダイアフラム21が設けられているとともに、この第1の受圧ダイアフラム21が壁の一部となる第1の圧力伝達室22が形成されている。
受圧部13における第2の配管16と接続される他端部には、第2のプロセス流体18の圧力を受圧する第2の受圧ダイアフラム23が設けられているとともに、この第2の受圧ダイアフラム23が壁の一部となる第2の圧力伝達室24が形成されている。
【0016】
第1の圧力伝達室22と第2の圧力伝達室24は、
図2に示すように、ボディ12内に形成された第1の導圧路25および第2の導圧路26と、後述する検出部14の第1および第2のワッシャ27,28と、第1および第2の細管31,32とを介して圧力センサチップ33の圧力室34(
図5参照)に連通されている。第1および第2の圧力伝達室22,24から圧力室34に至る圧力伝達系は、圧力伝達媒体35(
図1、
図5参照)で満たされている。圧力センサチップ33は、第1および第2の受圧ダイアフラム21,23との間に充填された圧力伝達媒体35の圧力を受圧して圧力を検出する。
【0017】
ボディ12の検出部14は、円筒状に形成され、受圧部13とは反対の方向に向けて開口している。検出部14内にボディ12の内部空間36が形成されている。検出部14の開口部分は、カバー37(
図1参照)が取付けられ、カバー37によって閉塞される。
検出部14の内側底部には、
図3に示すように第1および第2の導圧路25,26がそれぞれ開口している。第1および第2の導圧路25,26は、ボディ12の内部に、第1および第2の圧力伝達室22,24からボディ12の内部空間36に通じるように形成されている。
【0018】
第1の導圧路25の内部空間36に通じる開口端には、
図2に示すように第1のワッシャ27が装着されている。第2の導圧路26の内部空間36に通じる開口端には第2のワッシャ28が装着されている。第1および第2のワッシャ27,28は、それぞれステンレス鋼によって円板状に形成されており、ボディ12に溶接されている。この実施の形態によるワッシャ27,28は、ボディ12の材料であるSUS316と溶接接合可能な、SUS316、SUS304などによって形成されている。
【0019】
第1および第2のワッシャ27,28の中心部には、
図6に示すように、第1および第2の導圧路25,26の内部に臨む凸部27a,28aが設けられているとともに、貫通孔38,39が形成されている。
図4に示すように、第1のワッシャ27の貫通孔38には、後述する第1の細管31の一端が挿入されて接合されている。第2のワッシャ28の貫通孔39には、後述する第2の細管32の一端が挿入されて接合されている。
【0020】
第1の細管31と第2の細管32は、それぞれステンレス鋼によって形成され、所定の形状に曲げられている。第1および第2の細管31,32の材料は、第1および第2のワッシャ27,28の材料(SUS316、SUS304)との溶接性がよいSUS304である。第1および第2の細管31,32の第1および第2のワッシャ27,28への接合は、凸部27a,28aに開口する貫通孔38,39の開口縁に細管31,32の先端外周部を溶接することによって行われている。この溶接は、
図6に示すように、溶接部40によって第1および第2のワッシャ27,28と第1および第2の細管31,32との間が液密にシールされるように行っている。
第1のワッシャ27に溶接された第1の細管31と、第2のワッシャ28に溶接された第2の細管32は、
図4中に符号41で示す圧力センサ組立体の一部を構成するものである。
【0021】
圧力センサ組立体41は、
図4に示すように、第1および第2の細管31,32の一端に接合された第1および第2のワッシャ27,28と、第1および第2の細管31,32の他端に接合されたセンサケース42および圧力センサチップ33とによって構成されている。第1および第2の細管31,32は、第1および第2のワッシャ27,28からボディ12の受圧部13とは反対方向に延びており、第1および第2のワッシャ27,28とセンサケース42との間でこれら両細管31,32の間隔が狭くなるように曲げられている。第1および第2の細管31,32の間隔は、第1および第2のワッシャ27,28に溶接される一端側で広くなり、センサケース42に接合される他端側で狭くなる。
【0022】
センサケース42は、セラミックス材料によって形成されたケース本体43と、セラミックス材料または金属材料によって形成された蓋体44とによって構成されている。圧力センサチップ33は、複数のシリコン製の板状部材を厚み方向に重ねて立方体状に形成され、センサケース42の中に収容されている。
センサケース42のケース本体43は、
図4において上側であってボディ12の受圧部13とは反対の方向に向けて開口する有底角筒状に形成されている。蓋体44は、板状に形成され、ケース本体43の開口部を閉塞する状態でケース本体43にろう付けあるいはシーム溶接などによって固着されている。この蓋体44をケース本体43に接合する作業は、ケース本体43内が真空あるいはN
2で満たされた状態で気密に封止されるように行う。
【0023】
センサケース42の底面、すなわちケース本体43の底壁43aにおけるケース外側の面には、図示してはいないが、圧力センサチップ33の複数の端子と個別に電気的に接続される複数の半田付け用ランドが形成されている。これらの半田付け用ランドは、基板45(
図3参照)に形成された半田付け用ランド46に重ねて半田付けされる。この半田付けが行われることにより、センサケース42が基板45上に実装される。
【0024】
基板45は、
図3に示すように、円板状に形成されている。基板45には、第1および第2のワッシャ27,28を通すことが可能な円形の二つの貫通穴47,47と、これらの貫通穴47どうしを接続するスリット48とが形成されている。センサケース42を基板45に重ねる作業は、貫通穴47,47に第1および第2のワッシャ27,28を通すとともに、第1および第2の細管31,32をスリット48に通して行う。
【0025】
この実施の形態による基板45は、樹脂ケース51(
図3参照)に支持され、樹脂ケース51を介してボディ12に支持されている。樹脂ケース51は、ボディ12の内部空間36に収容可能な有底円筒状に形成されている。樹脂ケース51には、基板45が載置される載置面52と、載置面52に基板45を載せて係止するための爪片53と、第1および第2のワッシャ27,28を通すための二つの貫通穴54,54とが形成されている。貫通穴54の周囲には、樹脂ケース51の底壁51aから
図3において下方、すなわちボディ12の受圧部13を指向する方向に突出する二つの円形突起55,55と、樹脂ケース51の底壁51aから受圧部13とは反対の方向に突出する二つの筒体56,56とが設けられている。円形突起55は、ボディ12に第1および第2の導圧路25,26を囲むように形成された円形凹部57に嵌合する。筒体56には、第1および第2の細管31,32を通すための凹部58が形成されている。
【0026】
図5に示すように、ケース本体43の底壁43aには、圧力センサチップ33の両側部を支承する取付座61(
図5参照)が形成されているとともに、圧力伝達媒体35の圧力を圧力センサチップ33に導入するための第1および第2の開口部62,63(
図4参照)が形成されている。
圧力センサチップ33は、
図4に示すように、第1の細管31の他端が挿入される第1の孔64と、第2の細管32の他端が挿入される第2の孔65とが形成されており、ケース本体43の取付座61にたとえばろう付けによって固着されている。圧力センサチップ33は、第1の孔64に伝達された圧力伝達媒体35の圧力と、第2の孔65に伝達された圧力伝達媒体35の圧力との差圧を検出するように構成されている。
【0027】
ケース本体43の第1および第2の開口部62,63は、底壁43aを貫通する貫通孔となるように形成されている。第1および第2の開口部62,63の孔径は、第1および第2の細管31,32の他端を通すことができる孔径である。第1の細管31の他端は、第1の開口部62を貫通して圧力センサチップ33の第1の孔64に挿入され、圧力センサチップ33に連通している。第2の細管32の他端は、第2の開口部63を貫通して圧力センサチップ33の第2の孔65に挿入され、圧力センサチップ33に連通している。
【0028】
第1および第2の細管31,32は、
図5に示すように、圧力センサチップ33に接着剤66によって接着されている。この接着剤66としては、エポキシ系の接着剤を用いることができる。センサケース42の内部は、エポキシ系の接着剤が吸湿することがない状態になっている。この状態は、真空状態あるいはN
2ガスなどの不活性ガスで満たされた状態である。センサケース42内をこのような不活性な状態に保つために、第1および第2の細管31,32におけるセンサケース42の第1および第2の開口部62,63を貫通する部分は、半田付けによって封止されている。半田付けは、半田67が第1および第2の開口部62,63の周囲の全域にわたって濡れ拡がるように行われている。
【0029】
ケース本体43の第1および第2の開口部62,63は、この半田付けを行うことができるように、メタライズ処理が施されている。また、第1および第2の細管31,32には、半田付け用のめっきが施されている。この半田付け用のめっきは、Niを下地とするAuめっきである。
半田付け用のめっきは、いわゆる部分めっき法によって行われている。第1および第2の細管31,32に半田付け用のめっきが必要な部分は、第1および第2の開口部62,63に挿入されて半田付けされる部分で、
図7中に領域Bとして示す部分である。
図7中に領域Aとして示す部分は、圧力センサチップ33に接着される部分である。領域Aは、半田付け用のめっきの有無は問わない。
図7中に領域Cとして示す部分は、半田付け部と第1および第2のワッシャ27,28との間の部分である。領域Cは、半田付け用のめっきの有無は問わない。
【0030】
図7中に領域Dとして示す部分は、第1および第2のワッシャ27,28内に挿入される部分である。領域Dは、半田付け用のめっきがあってはならない。
この実施の形態による第1および第2の細管31,32は、上述した領域Aと、領域Bと、領域Cとに半田付け用のめっきが施されている。すなわち、第1および第2の細管31,32の表面は、第1および第2のワッシャ27,28の貫通孔38,39の内周面との接合部を除いて半田付け用のめっきが施されている。
この第1および第2の細管31,32は、半田付け用のめっきが施された状態で第1、第2のワッシャ27,28およびセンサケース42と接合されている。
【0031】
次に、上述したように構成された圧力測定装置11を組立てる手順を説明する。圧力測定装置11を組み立てるにあたっては、先ず、第1および第2の細管31,32に半田付け用のめっきを施す。このめっきは、
図7中の領域A~Cとなる部分に施す。なお、ケース本体43の第1および第2の開口部62,63と、蓋体44が接合される部分には、予めメタライズ処理を施しておく。
【0032】
そして、第1および第2の細管31,32に第1および第2のワッシャ27,28を溶接する。その後、ケース本体43の第1および第2の開口部62,63に第1および第2の細管31,32を通し、第1および第2の細管31,32を圧力センサチップ33に接着する。そして、圧力センサチップ33をケース本体43に接合し、圧力センサチップ33とケース本体43の導通部分とを例えばボンディングワイヤ(図示せず)によって接続する。
【0033】
このように圧力センサチップ33がセンサケース42に取付けられた後、第1および第2の細管31,32をケース本体43の第1および第2の開口部62,63に半田付けし、細管貫通部を封止する。そして、ケース本体43と第1および第2の細管31,32を図示していない接合装置に装填し、ケース本体43内を不活性の状態としてケース本体43に蓋体44をろう付けあるいはシーム溶接によって取付ける。蓋体44がケース本体43に接合されることにより、圧力センサ組立体41が完成する。
【0034】
次に、圧力センサ組立体41を基板45に取付ける。この取付作業は、第1および第2のワッシャ27,28を基板45の貫通穴47に通すとともに第1および第2の細管31,32をスリット48に通し、センサケース42を基板45に半田付けして行う。その後、基板45を樹脂ケース51に係止させて樹脂ケース51をボディ12の内部空間36に挿入する。このとき、樹脂ケース51の円形突起55をボディ12の円形凹部57に嵌合させ、第1および第2のワッシャ27,28の凸部27a,28aを第1および第2の導圧路25,26に挿入する。
【0035】
そして、第1および第2のワッシャ27,28をボディ12に溶接する。この溶接は、
図8に示すように、ボディ12を下側電極71に載置するとともに、第1および第2のワッシャ27,28に上側電極72を押し付けて抵抗溶接により行う。上側電極72は、棒状に形成され、樹脂ケース51の貫通穴54と、基板45の円形穴47とに通して第1および第2のワッシャ27,28に重ねられる。上側電極72の先端部には、第1および第2の細管31,32を通すためにスリット73が形成されている。
第1および第2のワッシャ27,28がボディ12に溶接された後、第1および第2の圧力伝達室22,24から圧力センサチップ33内に至る圧力伝達経路に圧力伝達媒体35を充填する。この充填は、第1および第2の圧力伝達室22,24からボディ12の外に延びる充填孔(図示せず)を用いて行う。
【0036】
このように構成された圧力測定装置11においては、第1および第2の細管31,32のセンサケース42を貫通する部分には半田付け用のめっき(Niを下地とするAuめっき)が施されているから、センサケース42の第1および第2の細管31,32が貫通する第1および第2の開口部62,63が半田付けにより封止される。また、第1および第2の細管31,32の第1および第2のワッシャ27,28に溶接される部分には半田付け用のめっきが施されていないから、めっき工程により添加されるP(リン)やS(硫黄)の介在による溶接部の割れが発生しない。このため、第1および第2の細管31,32と第1および第2のワッシャ27,28との溶接部に溶接割れが生じることはない。
したがって、この実施の形態によれば、導圧用の細管がセラミックス製のセンサケースに半田付けされるとともにボディ側のワッシャにシール性よく溶接された圧力測定装置を提供することができる。
【0037】
この実施の形態による第1および第2の細管31,32の表面は、第1および第2のワッシャ27,28の貫通孔38の内周面との接合部を除いて半田付け用のめっきが施されている。このため、めっきを行わない部分が第1および第2の細管31,32の一端側の一部分のみになるから、部分めっきを容易に行うことができる。
【0038】
この実施の形態による第1および第2の細管31,32は、半田付け用のめっきが施された状態で第1、第2のワッシャ27,28およびセンサケース42とに接合されている。このため、第1および第2の細管31,32に第1および第2のワッシャ27,28を溶接した後にめっきを施す場合と較べると、導圧性能に関して信頼性が高くなる。第1および第2のワッシャ27,28に第1および第2の細管31,32を溶接するときには、溶融した金属が細管の穴を狭くするような状態で固まって厚肉部が形成されるおそれがある。すなわち、溶接後にめっきを行うと、溶接時に生じた厚肉部によってめっき液が細管内に詰まるおそれがある。このめっき液からなる詰まり部が細管内の導圧路を塞ぐような状況で存在すると、圧力センサチップ33に正しく圧力を伝達することができなくなる。このため、溶接以前にめっきを行うことにより、導圧性能の信頼性を高くすることができる。
【0039】
上述した実施の形態においては、半田付け用のめっきとして、Niを下地とするAuめっきを行う例を示した。しかし、ステンレス鋼および半田と合金化し易いめっきは、Ni下地のAuめっきの他に、Snめっきが挙げられる。
また、第1および第2の細管31,32は、外径がいわゆる30G以下の小径パイプとする必要がある。この理由は、第1および第2の細管31,32の外径が大きいと、繰り返しの熱印加や高圧印加により半田部分や、第1、第2の細管31,32およびセンサケース42のめっき部に応力が印加され、これらが破壊されてしまうからである。
【符号の説明】
【0040】
11…圧力測定装置、12…ボディ、17,18…プロセス流体、21…第1の受圧ダイアフラム、22…第1の圧力伝達室、23…第2の受圧ダイアフラム、24…第2の圧力伝達室、25…第1の導圧路、26…第2の導圧路、27…第1のワッシャ、28…第2のワッシャ、31…第1の細管、32…第2の細管、33…圧力センサチップ、35…圧力伝達媒体、36…内部空間、38…貫通孔、42…センサケース、62…第1の開口部、63…第2の開口部、67…半田。