(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134311
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】電子部品収納用パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/10 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
H01L23/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033366
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 鮎美
(57)【要約】
【課題】センサケースの封止部を局所的に加熱して封止するにあたって、小型のチャンバーを使用することが可能な電子部品収納用パッケージを提供する。
【解決手段】電子部品搭載用の凹部を有する絶縁基体22と、絶縁基体22に重ねられた蓋体23と、熱溶融性接合材料からなるプリフォーム(AuSnプリフォーム52)とを備える。AuSnプリフォーム52は、加熱前の状態では少なくとも1つの開口51(段差部55)を有し、加熱により溶融することにより開口51が全て塞がった状態で絶縁基体22と蓋体23とを接合し、凹部を密封するものである。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載される凹部を有する絶縁基体と、
前記凹部の開口部を塞ぐように前記絶縁基体に重ねられた蓋体と、
前記絶縁基体と前記蓋体との間に介在配置され、加熱されて溶融することにより前記絶縁基体に前記蓋体を接合する熱溶融性接合材料からなるプリフォームとを備えた電子部品収納用パッケージであって、
前記プリフォームは、加熱前の状態では少なくとも1つの開口を有し、加熱により溶融することにより前記開口が全て塞がった状態で前記絶縁基体と前記蓋体とを接合し、前記凹部を密封するものであることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品収納用パッケージにおいて、
前記プリフォームは、その一部に段差部が形成され、
前記プリフォームが前記絶縁基体と前記蓋体との接合領域に介在配置された状態で前記段差部と前記絶縁基体または前記蓋体との間の隙間により前記開口が形成されることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
請求項1に記載の電子部品収納用パッケージにおいて、
前記プリフォームは、複数の部分プリフォームを積層して構成され、
前記複数の部分プリフォームのうち少なくとも一つの部分プリフォームは切欠き部を有し、
前記部分プリフォームの前記切欠き部と当該部分プリフォームに隣接する他の部分プリフォームの非切欠き部とで囲まれた隙間により前記開口が形成されることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載される凹部を有する絶縁基体に蓋体が気密に接合されて形成された電子部品収納用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体によって形成されたセンサチップを収納するパッケージは、内部が不活性の状態となるように気密に封止されることが多い。センサチップは、例えば特許文献1に記載されているような圧力測定装置に用いられている。
【0003】
特許文献1に開示された圧力測定装置は、センサチップがボディの一端側の内部空間に収容され、ボディの他端側の導圧路からセンサチップに圧力を導く細管を備えている。ボディの他端側には、測定流体に接するバリアダイアフラムと、バリアダイアフラムが壁の一部となる圧力伝達室とが設けられている。上述した導圧路は、圧力伝達室と細管とを連通している。
【0004】
細管とボディとの接合は、細管が貫通する金属製のワッシャを介して行うことができる。細管は、ワッシャの貫通孔に挿入された状態でワッシャに溶接される。ワッシャは、ボディに抵抗溶接によって溶接される。
細管とセンサチップとの接合は、例えば接着剤を使用して行うことができる。接着剤としてエポキシ系の接着剤を使用する場合は、この接着剤が吸湿して劣化することを防ぐために、センサチップ搭載用の凹部を有する絶縁基体と蓋体とからなるセンサケース(電子部品収納用パッケージ)にセンサチップが収納される。
【0005】
接着部を内包するセンサケースの内部は、N2などの不活性ガスあるいは真空雰囲気下で封止する必要がある。そこで、センサケースは、高い気密性が得られるとともに、センサケースの外部へセンサ信号を取り出す構造を簡単に実現できるように、セラミックス材料によって形成することが好ましい。
セラミックス製のセンサパッケージの封止方法の一つとして、例えば特許文献2に開示されているようなAuSn封止がある。半田封止と比較して半田成分のガス化の懸念がなく高信頼性が求められる製品に広く応用されている。
【0006】
一般的にAuSn封止は、封止炉と呼ばれる設備を用い、センサパッケージ全体をN2や真空など所望の雰囲気下で、高温(320℃程度)を印加し、AuSnを溶融する方法である。しかし、このようなAuSn封止では、加熱時の熱ダメージがパッケージ内のセンサチップに印加されてしまうという問題がある。例えばSiで構成される半導体センサ(センサチップ)の耐熱温度は125℃前後である。このような半導体センサに熱ダメージを与えない様にするためには、例えば特許文献3に開示されているようなシーム溶接による封止など、加熱部が限定されている構造とする必要がある。
【0007】
シーム溶接の場合は、シールリングと呼ばれる溶接用の金属部品をセラミックス製の絶縁基体にあらかじめロウ付けする必要があり、部品コストがかかる。そこで、セラミックス製の蓋(LID)と絶縁基体との封止部にメタライズ(Au、Ni)を形成し、これら両者の間にAuSnプリフォームを挟み、封止部のみを局所的に加熱して封止することが考えられる。局所的に封止部を加熱する方法は、レーザー光を照射したり、誘導加熱(IH)により加熱する方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5089018号公報
【特許文献2】特開2008-186917号公報
【特許文献3】特開2006-49353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
センサケース内がN2の雰囲気や真空雰囲気となるように封止部のみを局所的に加熱するためには、N2の雰囲気や真空雰囲気となるチャンバー内で絶縁基体の凹部を蓋体で塞ぎ、その後にレーザー光や誘導加熱で封止部を加熱する必要がある。このため、チャンバー内にレーザー光照射装置や誘導加熱装置と、蓋体を搬送する搬送機構とを配置する必要があり、チャンバーが大型化したり、チャンバー内のシール部が増加するといった課題があった。
【0010】
本発明の目的は、絶縁基体と蓋体とからなるセンサケースの封止部を局所的に加熱して封止するにあたり蓋体をチャンバー内で搬送する必要がなく、小型のチャンバーを使用してシール部を最少にすることが可能な電子部品収納用パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために本発明に係る電子部品収納用パッケージは、電子部品が搭載される凹部を有する絶縁基体と、前記凹部の開口部を塞ぐように前記絶縁基体に重ねられた蓋体と、前記絶縁基体と前記蓋体との間に介在配置され、加熱されて溶融することにより前記絶縁基体に前記蓋体を接合する熱溶融性接合材料からなるプリフォームとを備えた電子部品収納用パッケージであって、前記プリフォームは、加熱前の状態では少なくとも1つの開口を有し、加熱により溶融することにより前記開口が全て塞がった状態で前記絶縁基体と前記蓋体とを接合し、前記凹部を密封するものである。
【0012】
本発明は、前記電子部品収納用パッケージにおいて、前記プリフォームは、その一部に段差部が形成され、前記プリフォームが前記絶縁基体と前記蓋体との接合領域に介在配置された状態で前記段差部と前記絶縁基体または前記蓋体との間の隙間により前記開口が形成されてもよい。
【0013】
本発明は、前記電子部品収納用パッケージにおいて、前記プリフォームは、複数の部分プリフォームを積層して構成され、前記複数の部分プリフォームのうち少なくとも一つの部分プリフォームは切欠き部を有し、前記部分プリフォームの前記切欠き部と当該部分プリフォームに隣接する他の部分プリフォームの非切欠き部とで囲まれた隙間により前記開口が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、絶縁基体に熱溶融性接合材料からなるプリフォームを介して蓋体を載置させることにより、絶縁基体の内部がプリフォームの開口を通して外部に連通される。蓋体を絶縁基体に載置する作業は、チャンバーの外で行うことができる。このため、絶縁基体に熱溶融性接合材料からなるプリフォームを介して蓋体を載せて形成された未封止の電子部品収納用パッケージをチャンバー内に装填することにより、チャンバーを使用してパッケージ内をチャンバー内と同じ不活性の雰囲気とすることができる。すなわち、チャンバー内で蓋体を搬送することなく、プリフォームの開口を通して絶縁基体の内部をN2ガスで置換したり真空雰囲気とすることができる。
絶縁基体と蓋体とからなる未封止の電子部品収納用パッケージの内部がN2ガスや真空雰囲気になっている状態でプリフォームがチャンバー内で局所的に加熱されて溶融することにより、開口が閉じて絶縁基体と蓋体との間が気密に封止される。
したがって、本発明によれば、絶縁基体と蓋体とからなるセンサケースの封止部を局所的に加熱して封止するにあたり蓋体をチャンバー内で搬送する必要がないから、小型のチャンバーを使用してシール部を最少にすることが可能な電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る電子部品収納用パッケージを備えた圧力測定装置の斜視断面図である。
【
図4】
図4は、封止前のセンサケースの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、熱溶融性接合材料からなるプリフォームの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、絶縁基体とプリフォームの一部を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図7は、封止前のセンサケースの要部を拡大して示す斜視図である。
【
図8】
図8は、加熱用チャンバーの構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、センサケースの一部を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は、プリフォームの段差部を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、封止前のセンサケースの要部を拡大して示す斜視図である。
【
図12】
図12は、プリフォームの変形例を示す分解斜視図である。
【
図13】
図13は、プリフォームの変形例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電子部品収納用パッケージの一実施の形態を
図1~
図9を参照して詳細に説明する。この実施の形態においては、圧力測定装置に搭載される電子部品収納用パッケージについて説明する。
図1に示す圧力測定装置1は、
図1において中央部に描かれているボディ2に後述する複数の機能部品を組み付けて構成されている。ボディ2は、
図1において下側に描かれている受圧部3と、上側に描かれている検出部4とを有している。この実施の形態によるボディ2は、ステンレス鋼によって形成されている。
【0017】
受圧部3の一端部には、第1のプロセス流体(図示せず)の圧力を受圧する第1の受圧ダイアフラム5が設けられているとともに、この第1の受圧ダイアフラム5が壁の一部となる第1の圧力伝達室6が形成されている。
受圧部3の他端部には、第2のプロセス流体(図示せず)の圧力を受圧する第2の受圧ダイアフラム7が設けられているとともに、この第2の受圧ダイアフラム7が壁の一部となる第2の圧力伝達室8が形成されている。
【0018】
第1の圧力伝達室6と第2の圧力伝達室8は、ボディ2内に形成された第1の導圧路9および第2の導圧路10と、後述する検出部4の第1および第2のワッシャ11,12と、第1および第2の細管13,14とを介して圧力センサチップ15に連通されている。第1および第2の圧力伝達室6,8から圧力センサチップ15に至る圧力伝達系は、圧力伝達媒体16(
図3参照)で満たされている。圧力センサチップ15は、第1および第2の受圧ダイアフラム5,7との間に充填された圧力伝達媒体16の圧力を受圧して圧力を検出する。
【0019】
ボディ2の検出部4は、円筒状に形成され、受圧部3とは反対の方向に向けて開口している。検出部4内にボディ2の内部空間17が形成されている。検出部4の開口部分は、図示していないカバーが取付けられ、カバーによって閉塞される。
検出部4の内側底部には、第1および第2の導圧路9,10がそれぞれ開口している。第1および第2の導圧路9,10は、ボディ2の内部に、第1および第2の圧力伝達室6,8からボディ2の内部空間17に通じるように形成されている。
【0020】
第1の導圧路9の内部空間17に通じる開口端には、第1のワッシャ11が装着されている。第2の導圧路10の内部空間17に通じる開口端には第2のワッシャ12が装着されている。第1および第2のワッシャ11,12は、それぞれステンレス鋼によって円板状に形成されており、ボディ2に溶接されている。
第1および第2のワッシャ11,12の中心部には第1および第2の細管13,14の一端が挿入されて接合されている。
第1の細管13と第2の細管14は、それぞれステンレス鋼によって形成され、所定の形状に曲げられている。第1の細管13と第2の細管14の他端には、センサケース21および圧力センサチップ15が接合されている。
【0021】
センサケース21は、
図2に示すように、絶縁基体22と蓋体23とを用いて形成されている。この実施の形態においては、センサケース21が本発明でいう「電子部品収納用パッケージ」に相当する。
絶縁基体22と蓋体23は、セラミックス材料によって形成されている。圧力センサチップ15は、
図3に示すように、複数のシリコン製の板状部材を厚み方向に重ねて立方体状に形成され、センサケース21の中に収容されている。この実施の形態においては、圧力センサチップ15が本発明でいう「電子部品」に相当する。上述した第1および第2の細管13,14は、圧力センサチップ15の内部に挿入されて接着されている。
【0022】
センサケース21の絶縁基体22は、
図3に示すように、
図3において上側であってボディ2の受圧部3とは反対の方向に向けて開口する凹部24を有する有底角筒状に形成されている。絶縁基体22の底壁22aには、第1および第2の細管13,14を通すための開口部25,26が形成されている。第1および第2の細管13,14は、先端に圧力センサチップ15が接着された状態で開口部25,26に通され、例えば半田付けによって接合される。
【0023】
蓋体23は、絶縁基体22が開口する方向とは反対の方向に向けて開口する有底角筒状に形成され、絶縁基体22と開口どうしが向かい合う状態(凹部24の開口部分を閉塞する状態)で絶縁基体22の先端面22bに気密に接合されている。絶縁基体22と蓋体23の接合部の詳細については後述する。
【0024】
センサケース21の底面、すなわち絶縁基体22の底壁22aにおけるケース外側の面には、図示してはいないが、圧力センサチップ15の複数の端子と個別に電気的に接続される複数の半田付け用ランドが形成されている。これらの半田付け用ランドは、基板27(
図1参照)に形成された半田付け用ランド(図示せず)に重ねて半田付けされる。この半田付けが行われることにより、センサケース21が基板27上に実装される。
【0025】
基板27は、円板状に形成されて樹脂ケース28(
図1参照)に支持され、樹脂ケース28を介してボディ2に支持されている。
ている。基板27には、第1および第2のワッシャ11,12を通すことが可能な円形の二つの貫通穴29,29と、これらの貫通穴29どうしを接続するスリット30とが形成されている。センサケース21を基板27に重ねる作業は、貫通穴29,29に第1および第2のワッシャ11,12を通すとともに、第1および第2の細管13,14をスリット30に通して行う。
【0026】
図3に示すように、絶縁基体22の底壁22aには、圧力センサチップ15の両側部を支承する取付座41が形成されているとともに、圧力伝達媒体16の圧力を圧力センサチップ15に導入するための第1および第2の開口部25,26が形成されている。
圧力センサチップ15は、第1の細管13の他端が挿入される第1の孔42と、第2の細管14の他端が挿入される第2の孔43とが形成されており、絶縁基体22の取付座41にたとえばろう付けによって固着されている。圧力センサチップ15は、第1の孔42に伝達された圧力と、第2の孔43に伝達された圧力との差圧を検出するように構成されている。
【0027】
第1および第2の細管13,14は、圧力センサチップ15に接着剤44によって接着されている。この接着剤44としては、エポキシ系の接着剤を用いることができる。センサケース21の内部は、エポキシ系の接着剤が吸湿することがない状態になっている。この状態は、真空状態あるいはN2ガスなどの不活性ガスで満たされた状態である。センサケース21内をこのような不活性な状態に保つために、第1および第2の細管13,14におけるセンサケース21の第1および第2の開口部25,26を貫通する部分は、半田付けによって封止されている。半田付けは、半田45が第1および第2の開口部25,26の周囲の全域にわたって濡れ拡がるように行われている。
【0028】
センサケース21内が上述した不活性な状態となるように絶縁基体22に蓋体23を接合するためには、絶縁基体22と蓋体23との間に通気用の開口51(
図6参照)を有する熱溶融性接合材料からなるプリフォーム52(
図4参照)を介在させ、不活性な雰囲気の中で絶縁基体22と蓋体23との接続部のみを局所的に加熱して行う。熱溶融性接合材料からなるプリフォーム52は、たとえばAuとSnとを所定の混合比で混ぜて成形したプリフォーム(以下、単にAuSnプリフォーム52という)を用いることができる。
【0029】
この実施の形態によるAuSnプリフォーム52は、
図5に示すように、複数の部分プリフォーム52a,52bを積層して構成されている。
図5に示すAuSnプリフォーム52は、矩形の枠状に形成されたシートからなる第1層の部分プリフォーム52aと第2層の部分プリフォーム52bとによって構成されている。
第1層の部分プリフォーム52aと第2層の部分プリフォーム52bとのうち、上側に位置する第2層の部分プリフォーム52bは、切欠き部53と、途切れることなく一連に延びる非切欠き部54とを有し、内側空間と外側とが切欠き部53を通して連通されるように形成されている。第1層の部分プリフォーム52aは、途切れることなく一連に延びる非切欠き部54のみによって形成されている。
【0030】
第2層の部分プリフォーム52bを第1層の部分プリフォーム52aに重ねることにより、
図6に示すように、第2層の部分プリフォーム52bの切欠き部53と、第1層の部分プリフォーム52aの非切欠き部54とによって溝状の段差部55が形成される。このような段差部55を有するAuSnプリフォーム52が絶縁基体22と蓋体23との接合領域に介在配置されることにより、
図7に示すように、段差部55と蓋体23との間の隙間により開口51が形成される。なお、AuSnプリフォーム52を第2層の部分プリフォーム52bが絶縁基体22に接するように配置した場合は、段差部55と絶縁基体22との間の隙間により開口51が形成される。
絶縁基体22の開口側の先端面22bには、加熱されて溶融したAuSnプリフォーム52が濡れ拡がるようにメタライズ層56が設けられている。なお、図示してはいないが、蓋体23の開口側の先端面にも絶縁基体22と同様にメタライズ層が設けられている。
【0031】
絶縁基体22にAuSnプリフォーム52を介して蓋体23を接合するためには、先ず、絶縁基体22の先端面22b上(メタライズ層56上)にAuSnプリフォーム52を載せ、さらに、このAuSnプリフォーム52の上に蓋体23を載せる。なお、絶縁基体22には、圧力センサチップ15と第1、第2の細管13,14とを予め接合し、絶縁基体22内の配線部と圧力センサチップ15の端子とを電気的に接続しておく。そして、これらの絶縁基体22と、AuSnプリフォーム52と、蓋体23とからなる封止前のセンサケース21を
図8に示すようにチャンバー61内に装填する。
【0032】
チャンバー61は、気密容器となるように構成されており、センサケース21内にN2を充填する場合には、チャンバー61内を真空雰囲気とするための真空装置62と、チャンバー61内にN2ガスを供給するガス供給装置63とが接続されている。チャンバー61内には、上述した封止前のセンサケース21の一部を局所的に加熱するための加熱装置64が設けられている。センサケース21の局所的に加熱する一部とは、絶縁基体22と蓋体23との接続部分である。加熱装置64は、例えばレーザー光を照射するレーザー加熱装置や、電磁誘導により加熱する誘導加熱装置などを用いることができる。
【0033】
チャンバー61内に封止前のセンサケース21を装填した後、真空装置62によってチャンバー61内を真空雰囲気とする。この工程で封止前のセンサケース21内の空気がAuSnプリフォーム52の開口51から吸い出され、センサケース21内も真空雰囲気となる。センサケース21内を真空雰囲気として封止する場合は、この状態で後述する加熱工程に移る。センサケース21内をN2雰囲気として封止する場合は、この状態でガス供給装置63によってチャンバー61内にN2ガスを供給する。このN2ガスは、AuSnプリフォーム52の開口51を通って封止前のセンサケース21内にも流入する。このようにセンサケース21内を真空雰囲気あるいはN2雰囲気とした後、加熱装置64によって絶縁基体22と蓋体23の接続部分を加熱し、AuSnプリフォーム52を溶融させる。
【0034】
このとき、AuSnプリフォーム52の段差部55からなるセンサケース21の開口部分は、
図9(A)に示す加熱前の状態からAuSnプリフォーム52が溶融することにより
図9(B)に示すように徐々に狭くなり、最終的には
図9(C)に示すように閉じられる。すなわち、溶融したAuSnプリフォーム52によって絶縁基体22と蓋体23とが接合されるのと同時に開口部分が閉じられ、絶縁基体22と蓋体23との間が気密封止される。
【0035】
このようにセンサケース21を気密封止するにあたっては、絶縁基体22に蓋体23を載せた状態で行うことができ、チャンバー61の中で蓋体23を移動させる必要はない。
したがって、この実施の形態によれば、絶縁基体22と蓋体23とからなるセンサケース21の封止部を局所的に加熱して封止するにあたり蓋体23をチャンバー61内で搬送する必要がないから、小型のチャンバーを使用してシール部を最少にすることが可能な電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【0036】
この実施の形態によるAuSnプリフォーム52は、その一部に段差部55が形成されている。このAuSnプリフォーム52が絶縁基体22と蓋体23との接合領域に介在配置されることにより、段差部55と絶縁基体22または蓋体23との間の隙間によって開口51が形成される。このため、AuSnプリフォーム52の加熱が開始されるまで開口51が開いた状態に保たれるから、センサケース21内を確実に不活性の状態とすることができる。
【0037】
(熱溶融性接合材料からなるプリフォームの変形例)
次に、AuSnプリフォーム52の変形例を
図10~
図13を参照して説明する。
上述した実施の形態によるAuSnプリフォーム52は、複数の部分プリフォーム(第1層の部分プリフォーム52aと第2層の部分プリフォーム52b)を積層して構成されている。複数の部分プリフォームのうち一つの部分プリフォーム(第2層の部分プリフォーム52b)は切欠き部53を有している。この第2層の部分プリフォーム52bの切欠き部53と、当該部分プリフォームに隣接する他の部分プリフォーム(第1層の部分プリフォーム52a)の非切欠き部54とで囲まれた隙間により開口51が形成されている。このため、開口51の開口面積を切欠き部53の幅と第2層の部分プリフォーム52bの厚みとによって規定することができるから、センサケース21の容積に適した開口面積となるように開口51を形成することができる。
【0038】
上述した実施の形態によるAuSnプリフォーム52は、第1層の部分プリフォーム52aと第2層の部分プリフォーム52bとを重ねて構成されている。しかし、AuSnプリフォーム52は、
図10に示すように、1枚のプリフォーム71のみによって形成することができる。
図10に示すAuSnプリフォーム71は、溝状の段差部55が形成されている。
図11に示すように、このAuSnプリフォーム71が絶縁基体22と蓋体23との接合領域に介在配置されることにより、段差部55と蓋体23との間の隙間により開口51が形成される。なお、AuSnプリフォーム52は、段差部55が絶縁基体22に向けて開放されるような姿勢で絶縁基体22に載置することができる。この場合は、段差部55と絶縁基体22との間の隙間により開口51が形成される。
【0039】
複数の部分プリフォームを積層して形成されるAuSnプリフォーム52は、
図12に示すように3枚の部分プリフォーム52a~52cを重ねて構成することができる。
図12に示すAuSnプリフォーム52は、矩形の枠状に形成されたシートからなる第1層~第3層の部分プリフォーム52a~52cによって構成されている。
【0040】
第1層~第3層の部分プリフォーム52a~52cのうち、中央に位置する第2層の部分プリフォーム52bは、切欠き部53と、途切れることなく一連に延びる非切欠き部54とを有し、内側空間と外側とが切欠き部53を通して連通されるように形成されている。第1層の部分プリフォーム52aと第3層の部分プリフォーム52cは、途切れることなく一連に延びる非切欠き部54のみによって形成されている。
【0041】
第2層の部分プリフォーム52bを第1層の部分プリフォーム52aと第3層の部分プリフォーム52cとによって挟むことにより、第2層の部分プリフォーム52bの切欠き部53と、当該部分プリフォーム52に隣接する第1層および第3層の部分プリフォーム52a,52cの非切欠き部54,54とで囲まれた隙間により開口51が形成される。
【0042】
AuSnプリフォーム52に形成する切欠き部53(開口51)は、上述した実施の形態で示したように1箇所に設ける他に、複数の箇所に設けることができる。AuSnプリフォーム52の開口の開口面積は、センサ搭載空間の内容積に応じてガス置換が可能になる開口面積とする必要がある。この開口面積が大きければ大きい程、ガス置換は容易となる。しかし、プリフォーム52が溶融したときに開口を塞ぎきれなくなることを防ぐために、一箇所で大きな開口とするよりも、狭い開口部を複数設けることが望ましい。複数の開口を有するAuSnプリフォーム52は、例えば
図13に示すように構成することができる。
【0043】
図13に示すAuSnプリフォーム52は、第1層~第3層の部分プリフォーム52cによって構成されている。第1層~第3層の部分プリフォーム52cのうち中央に位置する第2層の部分プリフォーム52bは、矩形の4箇所の角部にそれぞれ開口部が形成されるように、4つに分割されて形成されている。
なお、
図5に示した第2層の部分プリフォーム52bや、
図13に示した第2層の部分プリフォーム52b、すなわち開口部を有する部分プリフォームの単体によってAuSnプリフォームを構成することも可能である。この場合は、例えば厚みを厚くするなど、溶融時に開口部が残存することがない構成を採る必要がある。
【0044】
上述した実施の形態においては、熱溶融性接合材料からなるプリフォームとしてAuSnプリフォーム52を用いる例を示した。しかしながら、本発明はこのような限定にとらわれることはない。たとえば、熱溶融性接合材料からなるプリフォームとしては、加熱されることにより分解(昇華)する接着剤によって形成することができる。この種の接着剤としては、250℃~350℃に加熱されることにより分解するエポキシ樹脂などで構成される接着剤がある。
【符号の説明】
【0045】
1…圧力測定装置、15…圧力センサチップ(電子部品)、22…絶縁基体、23…蓋体、24…凹部、21…センサケース(電子部品収納用パッケージ)、51…開口、52,71…熱溶融性接合材料からなるプリフォーム、52a…第1層の部分プリフォーム、52b…第2層の部分プリフォーム、52c…第3層の部分プリフォーム、53…切欠き部、54…非切欠き部、55…段差部。