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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134331
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ドアハンドル及びそれを備えたドア
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
E05B1/00 311R
E05B1/00 311H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033394
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】593159637
【氏名又は名称】株式会社オークマ
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】濱田 二郎
(57)【要約】
【課題】手部を使わずに腕部で行う操作が容易で、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく安全性に優れると共に、多くの人に、手部を使わずに腕部を使って行う操作方法が、一見して分かるようにすることで、正しい使い方ができるドアハンドル及びそれを備えるドアを提供する。
【解決手段】ドアハンドル1は、ラッチ装置2の回転操作軸20に取り付け可能で回転中心となる軸部10と、軸部10の軸線方向に対し略直角方向に設けられており、ラッチ解除操作をするための下ろし手部12と、下ろし手部12の軸部10側の端部に設けられ、引き操作方向に所定の角度で傾斜している逃げ面130を有するドアDの引き操作をするための引き手部13とを備えており、ラッチ状態において、下ろし手部12の、回転操作軸20を回転中心とする回転方向における角度が、水平より下ろし回転操作方向とは反対方向へ所定の角度で傾斜している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア用のラッチ装置の回転操作軸に取り付け可能で回転中心となる軸部と、
該該軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられており、ラッチ解除時に下ろし回転操作をするための下ろし手部と、
該下ろし手部の前記軸部側の端部近傍に設けられ、引き操作方向に逃げるように所定の角度で傾斜している逃げ面を有するラッチ解除後にドアの引き操作をするための引き手部とを備える
ドアハンドル。
【請求項2】
前記下ろし手部と前記引き手部の間に、前記下ろし手部に添わせた腕部を入れるための凹状に設けられている腕入れ部を有する
請求項1記載のドアハンドル。
【請求項3】
前記下ろし手部は、先部側が前記軸部の基端方向に所定の度合いで湾曲形成されている
請求項1又は2記載のドアハンドル。
【請求項4】
水平方向に回転して開閉される片開きのドアと、
該ドアに取り付けてあるラッチ装置と、
該ラッチ装置の回転操作軸に取り付けてあるドアハンドルとを備えており、
該ドアハンドルは、
ドア用のラッチ装置の回転操作軸に取り付け可能で回転中心となる軸部と、
該該軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられており、ラッチ解除時に下ろし回転操作をするための下ろし手部と、
該下ろし手部の前記軸部側の端部近傍に設けられ、引き操作方向に逃げるように所定の角度で傾斜している逃げ面を有する、ラッチ解除後にドアの引き操作をするための引き手部とを備えており、
前記ラッチ装置のラッチ時において、前記下ろし手部の、前記回転操作軸を回転中心とする回転方向における角度が、水平より下ろし回転操作方向とは反対方向へ所定の角度で傾斜している
ドア。
【請求項5】
前記下ろし手部の軸線方向の水平方向に対する角度が、前記ラッチ装置のラッチ時においては10°~40°である
請求項4記載のドア。
【請求項6】
前記下ろし手部は、先部側が前記ドアの方向に所定の度合いで湾曲形成されている
請求項4又は5記載のドア。
【請求項7】
前記下ろし手部の先部側の前記ドアと最も近い部分と前記ドアの間隙が、20mm~50mmである
請求項6記載のドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアハンドル及びそれを備えたドアに関するものである。詳しくは、使用者が手部を使わずに腕部で行う操作が容易で、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく安全性に優れると共に、多くの人に、手部を使わずに腕部を使って行う操作方法が、一見して分かるようにすることで、正しい使い方ができるドアハンドル及びそれを備えたドアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に感染症対策の有効な対策の一つとして、ドアハンドル等、ドアの把手の改良に関心が集まっている。すなわち、感染症は、いわゆる飛沫感染の他、ヒトの手に付着したウィルスが、ヒトの手部がいろいろなものに触れて、ヒト間で受け渡されることにより拡がっていく。つまり、ドアハンドルに手部を触れずにドアの開閉ができれば、このルートでの感染の拡がりを抑制できるからである。
【0003】
このような機能性を有するドアの把手等としては、例えば特許文献1に記載された取っ手補助具がある。この取っ手補助具は、回転してラッチを解放する回転式のドアの取っ手に取り付けられるもので、腕部を掛けて取っ手を操作するための湾曲形状の腕掛け部と、腕掛け部の基端側と接続する取付部とを有しており、腕掛け部は、腕部を挿入するための挿入部と、取っ手を回転してラッチを解放するための前後方向に延在する円弧形状の本体部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6823887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の取っ手補助具によれば、使用者は手部(ハンド)を使用せず、腕部(アーム)のみで操作することができるため、感染症を予防する効果と、手の不自由な人のドアの開閉操作を助ける効果があるとされている。しかしながら、上記取っ手補助具には、次のような課題があった。
【0006】
すなわち、特許文献1の実施の形態で採用されている取っ手補助具の腕掛け部は、平面視略U字形状又はC字形状であり、外側へ膨らむように湾曲して略水平に取り付けられている。しかも、その先端部は、使用者の腕部を入れやすくするため、かつ抜きやすくするために、外側へ向けて他の部分とは逆方向に開くように湾曲させてある。
【0007】
つまり、腕掛け部は、ドアの前面側へ大きく突出しており、いわばフック形状となった腕掛け部に、ドアの側(そば)を歩行する人が衣服を引っ掛けて破ってしまったり、身体の一部を当てて怪我をしてしまう可能性が高い。特に、背の低い幼児や子供の場合は、腕掛け部の先端に、頭部や顔面を当ててしまうことにもなるので、危険であり、安全上好ましくない。
【0008】
また、フック形状の取っ手補助具は、これまでの一般的な把手、或いはドアハンドル等とは、およそ異なる形状であり、多くの人が、一見してどのように使えばよいかが分からずに、普通に腕掛け部を手でつかんで操作してしまう可能性が高い。このため、実際には感染症の予防効果はもとより、手の不自由な人のドアの開閉操作を助ける効果についても、それ程の有効性は期待できなかった。
【0009】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、使用者が手部を使わずに腕部で行う操作が容易で、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく安全性に優れると共に、多くの人に、手部を使わずに腕部を使って行う操作方法が、一見して分かるようにすることで、正しい使い方ができるドアハンドル及びそれを備えたドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕上記の目的を達成するために、本発明のドアハンドルは、ドア用のラッチ装置の回転操作軸に取り付け可能で回転中心となる軸部と、該軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられており、ラッチ解除時に下ろし回転操作をするための下ろし手部と、該下ろし手部の前記軸部側の端部近傍に設けられ、引き操作方向に逃げるように所定の角度で傾斜している逃げ面を有するラッチ解除後にドアの引き操作をするための引き手部とを備える。
【0011】
本発明のドアハンドルは、軸部をドア用のラッチ装置の回転操作軸に取り付けることにより、ラッチ装置のラッチとラッチ解除を下ろし手部の操作により行うことができるようになる。また、下ろし手部は、軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられているので、いわゆる略L型アングル状となり、使用者が下ろし手部に腕部を添わせて乗せれば、腕部を下げるだけで、比較的容易に下ろし回転操作を行うことができる。
【0012】
更に、下ろし手部の軸部側の端部近傍に引き手部が設けられているので、下ろし手部に添わせて乗せた腕部の先部側を引き手部に当てて、ドアハンドルを引く操作を行うことができる。引き手部は、引き操作方向に逃げるように所定の角度で傾斜している逃げ面を有するので、ラッチ解除後にドアの引き操作(開き操作)をするときに、引き手部が腕部の当接部にきつく当たることが抑制され、腕部を抜く際にも引っ掛かりにくいので、操作がしやすく、操作解除も容易にできる。
【0013】
このように、ドアが閉じてラッチ状態のドアハンドルを正面から見ると、下ろし手部と引き手部とが隣り合わせ、或いは横並びにあるので、下ろし手部に腕部を添わせるように乗せて、腕部の先部を引き手部に掛けると、腕部による下ろし手部の下ろし回転操作と、腕部の先部による引き操作が可能であることが自然にイメージできる。
【0014】
これにより、多くの人にとって、手部を使わずに腕部を使って行うドアハンドルの操作方法が、一見して分かりやすく、仮に操作手順の説明を受けていなくても、或いは知らなくても、上記イメージ通りの操作で略間違いのない正しい使い方ができる。
【0015】
また、下ろし手部は、軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられているので、特許文献1記載の取っ手補助具のようにドアの前面側へ大きく突出することがなく、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく、安全性に優れている。特に、背の低い幼児や子供の怪我を防ぐ意味で、きわめて有用である。
【0016】
〔2〕本発明のドアハンドルは、前記下ろし手部と前記引き手部の間に、前記下ろし手部に添わせた腕部を入れるための凹状に設けられている腕入れ部を有する構成とすることもできる。
【0017】
この場合は、凹状に設けられた腕入れ部が、横並びにある下ろし手部と引き手部との間に見えるので、上記〔1〕で説明した作用、すなわち腕部を使用した操作方法が自然にイメージできるという作用が、下ろし手部に腕部を添わせるように乗せて腕入れ部に入れるというイメージも加わり、より明確になる。
【0018】
また、凹状に設けられた腕入れ部に下ろし手部に添わせた腕部を入れてドアハンドルの各操作をすることにより、腕部が下ろし手部や引き手部から外れにくくなるので、操作がしやすく、より確実な操作ができる利点もある。
【0019】
〔3〕本発明のドアハンドルは、前記下ろし手部が、先部側が前記軸部の基端方向に湾曲して形成されている構成とすることもできる。
【0020】
この場合は、ドアハンドルをドアのラッチ装置に取り付けたときに、下ろし手部はドアの前面に近づく方向に湾曲していることになる。これによれば、下ろし手部の先部のドアと最も近い部分とドアとの間隙(距離)が下ろし手部の先部へ行くほど近くなり、上記〔1〕で説明した作用、すなわち下ろし手部がドアの前面側へ大きく突出することがなく、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく、安全性に優れている、という作用がより顕著になる。
【0021】
〔4〕上記の目的を達成するために、本発明のドアは、水平方向に回転して開閉される片開きのドアと、該ドアに取り付けてあるラッチ装置と、該ラッチ装置の回転操作軸に取り付けてあるドアハンドルとを備えており、該ドアハンドルは、ドア用のラッチ装置の回転操作軸に取り付け可能で回転中心となる軸部と、該該軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられており、ラッチ解除時に下ろし回転操作をするための下ろし手部と、該下ろし手部の前記軸部側の端部近傍に設けられ、引き操作方向に逃げるように所定の角度で傾斜している逃げ面を有する、ラッチ解除後にドアの引き操作をするための引き手部とを備えており、前記ラッチ装置のラッチ時において、前記下ろし手部の、前記回転操作軸を回転中心とする回転方向における角度が、水平より下ろし回転操作方向とは反対方向へ所定の角度で傾斜しているドアである。
【0022】
本発明のドアのドアハンドルは、ドアハンドルの下ろし手部が、軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられているので、いわゆる略L型アングル状である。したがって、ラッチ状態において、使用者が下ろし手部に腕部を添わせて乗せれば、腕部を下げるだけで、比較的容易に下ろし手部の下ろし回転操作を行うことができる。
【0023】
また、下ろし手部の軸部側の端部近傍に引き手部が設けられているので、下ろし手部に添わせて乗せた腕部の先部側を引き手部に当てて、ドアハンドルを引く操作を行うことができる。引き手部は、引き操作方向に逃げるように所定の角度で傾斜している逃げ面を有するので、ラッチ解除後にドアの引き操作をするときに、引き手部が腕部の当接部にきつく当たることが抑制され、腕部を抜く際にも引っ掛かりにくいので、操作がしやすく、操作解除も容易にできる。
【0024】
更に、ラッチ装置のラッチ時において、下ろし手部の、回転操作軸を回転中心とする回転方向における角度が、水平より下ろし回転操作方向とは反対方向へ所定の角度で傾斜しているので、正面から見て、下ろし手部の先部が右上がりになっている。この状態で、使用者が腕部を下ろし手部に添わせると、右腕部の場合では肘が上がった状態から下ろし手部の下ろし回転操作を始めることになり、必要以上に腕部を下ろすことなく、ラッチ解除の操作が終わるので、腰を折ったような無理な姿勢で操作する必要がなく、使いやすい。
【0025】
なお、ドアが閉じてラッチ状態のドアハンドルを正面から見ると、下ろし手部と引き手部とが隣り合わせ、或いは横並びにあるので、下ろし手部に腕部を添わせるように乗せて、腕部の先部を引き手部に掛けると、腕部による下ろし手部の下ろし回転操作と、腕部の先部による引き操作が可能であることが自然にイメージできる。
【0026】
これにより、多くの人にとって、手部を使わずに腕部を使って行うドアハンドルの操作方法が、一見して分かりやすく、仮に操作手順の説明を受けていなくても、或いは知らなくても、上記イメージ通りの操作で略間違いのない正しい使い方ができる。
【0027】
また、下ろし手部は、軸部の軸線方向に対し略直角方向に設けられているので、特許文献1記載の取っ手補助具のようにドアの前面側へ大きく突出することがなく、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく、安全性に優れている。特に、背の低い幼児や子供の怪我を防ぐ意味で、きわめて有用である。
【0028】
〔5〕本発明のドアは、前記下ろし手部の軸線方向の水平方向に対する角度が、前記ラッチ装置のラッチ時においては10°~40°である構成としてもよい。
【0029】
この構成によれば、ラッチ装置のラッチ時において、下ろし手部の軸線方向の水平方向に対する角度が40°を超える場合は、使用者が腕部を下ろし手部に添わせる際の腕部の高さが高くなってしまい、操作初めに肘を高く上げる必要がある等、操作がしにくくなる傾向にある。
【0030】
また、10°未満である場合は、使用者が腕部を下ろし手部に添わせる際の腕部の高さが低くなり、更にドアハンドルの可動範囲が同じであればラッチ解除の操作が終わるときの腕部の高さも低くなるので、腰を折ったような無理な姿勢で操作することになり、操作がしにくくなる傾向にある。
【0031】
〔6〕本発明のドアは、前記下ろし手部は、先部側が前記ドアの方向に湾曲して形成されている構成としてもよい。
【0032】
この場合は、下ろし手部の先部のドアと最も近い部分とドアとの間隙が下ろし手部の先部へ行くほど近くなり、下ろし手部がドアの前面側へ大きく突出することがない。したがって、ドアハンドルに対して、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく、安全性に優れている、という作用がより顕著になる。
【0033】
〔7〕本発明のドアは、前記下ろし手部の先部側の前記ドアと最も近い部分と前記ドアの間隙が、20mm~50mmである構成としてもよい。
【0034】
この構成によれば、下ろし手部の先部側の前記ドアと最も近い部分と前記ドアの間隙が20mm未満である場合は、ドアハンドルがドアに近すぎて、操作時に腕部がドアに当たってしまう等、操作がしにくくなる傾向にある。また、50mmを超える場合は、ドアハンドルがドアの前面側へ突出しすぎて、ドアの側を通る人がドアハンドルに当たってしまう可能性が高まる等、操作上の不都合が出る傾向にある。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、使用者が手部を使わずに腕部で行う操作が容易で、ドアの側を歩行している人の接触や衝突等が起こりにくく安全性に優れると共に、多くの人に、手部を使わずに腕部を使って行う操作方法が、一見して分かるようにすることで、正しい使い方ができるドアハンドル及びそれを備えたドアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明のドアハンドルの一実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明のドアの要部正面視説明図である。
図3】ドアの要部平面視説明図である。
図4】ドアの要部右側面視説明図である。
図5】ドアの要部左側面視説明図である。
図6】ドアハンドルの回転方向の可動域を示す正面視説明図である。
図7】ドアを開く手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1乃至図7を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
まず、ドアハンドル1について説明する。ドアハンドル1は、本実施の形態では真鍮等の金属製であるが、これに限定せず、例えば合成樹脂や木等、他の材料で形成することもできる。
【0038】
ドアハンドル1は、先端方向へやや窄まった略丸棒形状で所定の長さの軸部10を有している。軸部10の中心部には、基端部(図3で上端部)から穿孔して、断面正方形状で所定の深さの軸孔11が形成されている(図2図3参照)。軸孔11は、後述するドア用のラッチ装置2の角棒状の回転操作軸20に軸部10が軸周方向へ回転しないようにして嵌め込む孔である。
【0039】
軸部10の先端部には、下ろし回転操作をしてラッチ解除をするための下ろし手部12が、軸部10の軸線方向に対し略直角方向に所定の長さで形成されている。下ろし手部12の表面は、滑らかに連続する複数の曲面でやや膨らむように形成されている。
【0040】
下ろし手部12は、図2に示す正面視において下ろし回転操作方向(右周り方向)に所定の度合いで湾曲して形成され、更に平面視において軸部10の基端方向(図3でドアに近づく方向)にも同じく所定の度合いで湾曲して形成されている。
【0041】
下ろし手部12の上記各湾曲の度合いは、特に限定するものではなく、適宜設定が可能である。なお、本実施の形態では、下ろし手部12のドアに最も近い部分とドアDとの間隙gは30mmに設定されているが、これに限定するものではなく、下ろし手部12が必要以上に突出することのない範囲、例えば20mm~50mmの範囲で適宜設定可能である(図3図4図5参照)。
【0042】
また、下ろし手部12の軸部10側の端部近傍には、ラッチ解除後にドアの引き操作をするための引き手部13が形成されている。引き手部13は、正面視で略楕円盤状に形成されており(図2参照)、その後面側には、引き操作方向に斜め上方へ逃げるように所定の角度で傾斜している逃げ面130が形成されている(図3図5等参照)。
【0043】
逃げ面130は、やや膨らむような曲面で形成されており、当接する腕部に対する当たりは柔らかである。なお、逃げ面130の角度a3は、本実施の形態では水平方向に対し45°に設定されているが、これに限定せず、後述する作用の有効な範囲で適宜設定が可能である(図5参照)。
【0044】
また、下ろし手部12と引き手部13との間の上面側には、凹状に設けられた腕入れ部14が形成されている。腕入れ部14は、下ろし手部12の表面から引き手部13の逃げ面130へ続く滑らかに湾曲した凹面で形成されている。この腕入れ部14の曲面の湾曲の度合いは、使用者が腕部を下ろし手部12に添わせるように横にして入れたときに、腕入れ部14の内面に略収まって安定するように設定されている。
【0045】
次に、上記ドアハンドル1を備えたドアDについて説明する。
ドアDは、一般的な片開きドアである。ドアDは、ドア本体3と、ドア本体3の内部に収容されて固定されているラッチ装置2と、ラッチ装置2に取り付けてあるドアハンドル1を備えている。
【0046】
ドアハンドル1は、上記したドアハンドルであり、ドア本体3に収容されているラッチ装置2の回転操作軸20に軸部10の軸孔11を嵌め込んで、止めネジ(虫ネジ:図示省略)により固定されており、回転操作軸20と一体となって回転するようにしてある(図6(a)、(b)参照)。
【0047】
ドア枠4に開閉可能に取り付けられたドアDは、ドア枠4の戸当たり40に当たって停止し、同時にラッチ装置2のロックピン21は、ドアハンドル1を操作しない状態でも係止穴具41に当たって一旦後退した後、係止穴具41の穴に入ってから進出して戻り、図7(a)に示すようにラッチ状態となる。
【0048】
また、図6は、ドアハンドル1の回転方向の可動域を示す説明図で、(a)はラッチ状態の下ろし手部12の角度を示し、(b)はラッチ解除状態の下ろし手部12の角度を示す正面視説明図である。
【0049】
回転操作軸20に固定されたドアハンドル1は、ラッチ状態では、図6(a)に示すように、下ろし手部12の、回転操作軸20を回転中心とする回転方向における角度が、水平より下ろし回転操作方向(右回転方向)とは反対方向へ角度a1だけ傾斜している。本実施の形態では、角度a1は30°であるが、これに限定せず、例えば10°~40°の角度範囲で適宜設定が可能である。
【0050】
この場合の下ろし手部12の角度a1は、図6(a)、(b)に示すように、回転操作軸20の回転中心を通り、かつ下ろし手部12の湾曲した下縁部に対する接線となる直線の角度と定義している。なお、下ろし手部12の角度a1は、回転操作軸20の中心を通り、かつ下ろし手部12の湾曲した軸線に対する接線となる直線と定義することもできるが、その場合の角度はやや大きい数値となる。
【0051】
また、下ろし手部12は、ラッチ装置2の機械的な制限により、一定の角度範囲でのみ回転するようになっている。本実施の形態では、上記したようにラッチ状態での角度a1の30°から角度a2の10°までの20°の範囲で回転可能であり(図6(b)参照)、最大回転位置(10°の位置)においては、左回転方向に付勢力が作用しており、使用者がドアハンドル1の操作を解除すると、30°の位置(図6(a)参照)まで戻る。
【0052】
なお、ドア本体3の他方側(図3で上側)のドアハンドル(全体の図示と符号は省略)は、本実施の形態では旧来の単にL型のドアハンドルであるが、ドアの押し開け操作に支障がなければ、特に限定するものではなく、他の公知のドアハンドルを採用してもよい。
【0053】
本実施の形態では、ラッチ解除後にドアDを開ける際にドアハンドル1の引き操作を行うように、ドアハンドル1をドアDの開き方向側に取り付けた構造であるが、ラッチ解除後にドアDを押して開けることができるように、これとは反対側に取り付ける構造を採用することもできる。
【0054】
ただし、その場合は、例えば図3において、図示している一方側(図で下側)のドアハンドル1と対称構造(下ろし手部が図3で右側にある)のドアハンドル(図示と符号は省略)を他方側に取り付ける構造とする。なお、この場合、右腕部で操作すると、ドアの押し開き操作時に、右腕部が邪魔になるので、左腕部で操作するようにする。
【0055】
ここで、図1乃至図7、主に図7を参照してドアDを開く手順、及びそれに伴う各部の作用を説明する。図7は、ドアDを開く手順を示す説明図で、(a)はラッチ状態のドアハンドル1に腕部5を入れた状態を示し、(b)は腕部5で下ろし手部12を下ろした後、引き手部13を引いてドアDを開けた状態を示す一部断面説明図である。
【0056】
(1)まず、使用者が右の腕部5をドアDのドアハンドル1に添わせるように乗せる。ドアハンドル1は、下ろし手部12が、軸部10の軸線方向に対し略直角方向に設けられているので、いわゆる略L型アングル状である。これにより、ラッチ状態において(図7(a)参照)、使用者が下ろし手部12に腕部5を添わせて乗せれば、腕部5を下ろすだけで、下ろし手部12の下ろし回転操作を比較的容易に行うことができる。
【0057】
また、ドアDが閉じたラッチ状態のドアハンドル1を正面から見ると、下ろし手部12が30°の角度で右上がりになっており、引き手部13と腕入れ部14及び下ろし手部12は、その方向に横並びになっている(図6(a)参照)。
【0058】
これにより、下ろし手部12に腕部5を添わせるように乗せ、腕部5を腕入れ部14に入れ、腕部5の先部を引き手部13に掛けると、腕部5による下ろし手部12の下ろし回転操作と、腕部5の先部による引き操作が可能であることが自然にイメージできる。
【0059】
このように、多くの人にとって、手部を使わずに腕部を使って行うドアハンドル1の操作方法が、一見して分かりやすく、仮に操作手順の説明を受けていなくても、或いは知らなくても、上記イメージ通りの操作で略間違いのない正しい使い方ができる。
【0060】
なお、凹状に設けられた腕入れ部14に腕部5を入れてドアハンドル1の操作をすることにより、腕部5が下ろし手部12や引き手部13から外れにくくなるので、操作がしやすく、より確実な操作ができる利点もある。
【0061】
(2)使用者が腕部5で下ろし手部12を下ろし回転操作方向に回転させて、ラッチ装置2のラッチ状態を解除する。その際の作用は以下の通りである。
【0062】
ドアDを閉じたラッチ時において、下ろし手部12の、回転操作軸20を回転中心とする回転方向における角度が、水平より下ろし回転操作方向とは反対方向に傾斜しており、本実施の形態では、正面から見て、上記したように右上がりになっている。
【0063】
この状態で、使用者が腕部5を下ろし手部12に添わせて乗せると、右腕部の場合では肘が上がった状態から下ろし手部12の下ろし回転操作を始めることになり、しかも、下ろし手部12の可動範囲も、上記したように20°であり、必要以上に腕部5を下ろすことなく、ラッチ解除の操作が終わるので、例えば背の高い人が腰を折ったような無理な姿勢で操作する必要がなく使いやすい。
【0064】
なお、ドアハンドル1の下ろし手部12は、下ろし回転操作方向に所定の度合いで湾曲形成されている。下ろし手部12は、このように湾曲していることによって、腕部5で下ろし回転操作方向に回したときに、下ろし手部12による反力が腕部5に対して強く作用することが緩和され、しかも腕部5で押し下げる力が自然に湾曲部分に添って下方へ抜けるので、操作感が滑らかで使いやすい。
【0065】
(3)そして、使用者がラッチ装置2のラッチ解除状態を維持したまま、腕部5でドアハンドル1の引き手部13を引いてドアDを開ける。その際の作用は次の通りである。
【0066】
下ろし手部12の軸部10側の端部近傍に引き手部13が設けられているので、下ろし手部12に添わせて乗せた腕部5の先部側を引き手部13に当てて、ドアハンドル1を引く操作を行うことができる。ドアハンドル1は、上記のように下ろし手部12を下ろし回転操作方向の一杯まで回した状態でドアハンドル1を引き操作してドアDを開ける(図6(b)、図7(b)参照)。
【0067】
また、引き手部13は、引き操作方向に逃げるように傾斜している逃げ面130を有するので、ラッチ解除後にドアDの引き操作をするときに、腕部5の当接部にきつく当たることが抑制され、腕部5を抜く際にも引っ掛かりにくいので、操作がしやすく、操作解除も容易にできる。
【0068】
なお、使用者は、図7に示すような右の腕部5による操作だけでなく、例えば左の腕部(図示省略)の肘部近傍を引き手部13に掛け、腕部の中間部を腕入れ部14に入れて、腕部の先部寄りを下ろし手部12に乗せるようにして、左の腕部により操作することも容易である。
【0069】
また、下ろし手部12は、軸部10の軸線方向に対し略直角方向に設けられているので、ドア本体3の前面側へ大きく突出することがなく、ドアDの側を歩行している人の下ろし手部12に対する接触や衝突等が起こりにくく、安全性に優れている。特に、背の低い幼児や子供の怪我を防ぐ意味で、きわめて有用である。
【0070】
このように、ドアハンドル1及びそれを備えたドアDでは、使用者が手部を使わずに腕部で行うドアハンドル1の操作が容易で、ドアDの側を歩行している人のドアハンドル1に対する接触や衝突等が起こりにくく安全性に優れる。
【0071】
また、多くの人にとって、手部を使わずに腕部を使って行うドアハンドル1の操作方法が、一見してイメージしやすいので、イメージ通りの操作で略間違いのない正しい使い方ができる。
なお、ドアハンドル1は、上記したように腕部を使用した操作の他、普通に手部で下ろし手部12を掴んで操作する使い方も容易であり、状況に応じて使い分けができる。
【0072】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
D ドア
1 ドアハンドル
10 軸部
11 軸孔
12 下ろし手部
13 引き手部
130 逃げ面
14 腕入れ部
2 ラッチ装置
20 回転操作軸
21 ロックピン
3 ドア本体
4 ドア枠
40 戸当たり
41 係止穴具
5 右腕部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7