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特開2022-134344蓋体用積層シート、蓋体およびチルド食品用包装容器
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  • 特開-蓋体用積層シート、蓋体およびチルド食品用包装容器 図1
  • 特開-蓋体用積層シート、蓋体およびチルド食品用包装容器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134344
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】蓋体用積層シート、蓋体およびチルド食品用包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/06 20060101AFI20220908BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220908BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20220908BHJP
   B65D 81/18 20060101ALI20220908BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B32B29/06
B32B27/00 B
B65D77/20 N
B65D81/18 D
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033411
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小出 晋也
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067BA07A
3E067BB01A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA06
3E067CA07
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA36
3E067EA37
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA01
3E067GD07
3E086AB01
3E086AD06
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB71
3E086CA01
3E086CA03
4F100AA17B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AB00B
4F100AB10B
4F100AB33B
4F100AK63A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DG10D
4F100EH46C
4F100EH66B
4F100EJ65C
4F100GB16
4F100GB23
4F100JD03
4F100JD03B
4F100JL12A
4F100YY00B
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】チルド食品用包装容器の蓋材として、環境に配慮した紙を使用し、高温多湿から取り出してもガスバリア性が劣化しない蓋体用積層シートが提供すること。
【解決手段】開口が設けられている容器本体と前記開口を覆う蓋体とを備えるチルド食品用包装容器の前記蓋体に用いられる蓋体用積層シートであって、少なくとも、ヒートシール層、ガスバリア層、アンカーコート層、紙基材をこの順序で含み、前記紙基材の質量が前記蓋体用積層シートの質量の50%以上であり、温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下であることを特徴とする蓋体用積層シート
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられている容器本体と前記開口を覆う蓋体とを備えるチルド食品用包装容器の前記蓋体に用いられる蓋体用積層シートであって、少なくとも、ヒートシール層、ガスバリア層、アンカーコート層、紙基材をこの順序で含み、前記紙基材の質量が前記蓋体用積層シートの質量の50%以上であり、温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下であることを特徴とする蓋体用積層シート。
【請求項2】
温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下で、且つ酸素透過度の変化量が、保管前の酸素透過度と比べ2cc以内であることを特徴とする請求項1に記載の蓋体用積層シート。
【請求項3】
温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下で、且つ酸素透過度の変化率が、保管前の酸素透過度と比べ20%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋体用積層シート。
【請求項4】
前記ガスバリア層が、金属または、金属酸化物の薄膜で形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の蓋体用積層シート。
【請求項5】
前記ガスバリア層が、アルミニウム薄膜であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の蓋体用積層シート。
【請求項6】
前記ガスバリア層が、酸化アルミニウム(アルミナ)であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の蓋体用積層シート。
【請求項7】
前記ガスバリア層が、シリカ(SiO)であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の蓋体用積層シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の蓋体用積層シートを用いた蓋体。
【請求項9】
請求項8に記載の蓋体を備えた、チルド食品用包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体用積層シート、蓋体およびチルド食品用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の核家族化による世帯構成の変化やライフスタイルの変化に加えて、流通及び冷凍・冷蔵技術の進歩に支えられて、コンビニエンスストアやスーパマーケットなどで販売されている調理又は加工済みチルド食品の需要が伸びている。それと同時にチルド食品を収容する包装容器の需要も伸びている。
【0003】
一方、プラスチックごみの削減が進められている中、環境負荷が小さく、再生可能な資源である紙を基材に使用した食品用包装容器の需要が高まっている。チルド食品を収容する包装容器にも基材として紙を使用することが求められている。
【0004】
チルド食品は、食品別に最適な温度帯が設定されるが、一般には0乃至10℃の範囲の温度で流通・保管される食品である。紙容器にチルド食品を収容してなる包装物品は、製造された後、さまざまな流通経路を通って消費者の手に渡るが、流通過程においても家庭においても通常冷蔵庫で保管される。冷蔵の環境下では、湿度が高い場合も多い。また、常温への環境変化によって紙容器外側表面に結露が生じる。このようにチルド食品用包装容器は水分の影響を受けるため、紙基材を使用する場合には、耐水性ガスバリア層が紙基材にラミネートされた積層シートが用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-224058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、チルド食品用包装容器に紙基材を使用する場合、蓋において以下の問題があることを見出した。すなわち、チルド食品を容器に収容してなり、耐水性ガスバリア層がラミネートされた紙基材を使用した蓋体を備える包装物品を、例えば上記の範囲内の温度で保管するか、又は、上記の範囲内の温度から常温まで温度を上昇させ、その後、上記の範囲内の温度まで温度を低下させると、紙の膨潤と、結露による水分により、ガスバリア層が劣化してしまうため、ガスバリア性が低下する傾向が見られる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み開発されたものであり、チルド食品用包装容器の蓋材として、低温環境から高温高湿の環境下に置かれても、優れたガスバリア性を有する蓋体用積層シートを提供することを目的とする。また、本発明は、上記蓋体用積層シートからなる蓋体、並びに、それを備えるチルド食品用包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る蓋体用積層シートは、開口が設けられている容器本体と前記開口を覆う蓋体とを備えるチルド食品用包装容器の前記蓋体に用いられる蓋体用積層シートであって、少なくとも、ヒートシール層、ガスバリア層、アンカーコート層、紙基材をこの順序で含み、前記紙基材の質量が前記蓋体用積層シートの質量の50%以上であり、温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下であることを特徴とする蓋体用積層シートである。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項2に係る蓋体用積層シートは、温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下で、且つ酸素透過度の変化量が、保管前の酸素透過度と比べ2cc以内であることを特徴とする請求項1に記載の蓋体用積層シートである。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項3に係る蓋体用積層シートは、温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下で、且つ酸素透過度の変化率が、保管前の酸素透過度と比べ20%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋体用積層シートである。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項4に係る蓋体用積層シートは、前記ガスバリア層が、金属または、金属酸化物の薄膜で形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の蓋体用積層シートである。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項5に係る蓋体用積層シートは、前記ガスバリア層が、アルミニウム薄膜であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の蓋体用積層シートである。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項6に係る蓋体用積層シートは、前記ガスバリア層が、酸化アルミニウム(アルミナ)であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の蓋体用積層シートである。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の請求項7に係る蓋体積層シートは、前記ガスバリア層が、シリカ(SiO2)であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の蓋体用積層シートである。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか1項に記載の蓋体用積層シートを用いた蓋体である。
【0016】
上記課題を解決するために、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の蓋体を備えたチルド食品用包装容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チルド食品用包装容器の蓋材として、低温環境から高温高湿の環境下に置かれた後でもガスバリア性が劣化しない蓋体用積層シートが提供される。また、本発明によれば、上記蓋体用積層シートからなる蓋体、並びに、それを備えるチルド食品用包装容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の第1実施形態に係る蓋体用積層シートの一例を概略的に示す部分断面図である。
図2図2は、本発明に係る食品包装容器の一例を概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の実施形態に係る蓋体用積層シートの一例は、図2の概略断面図に示されるように開口が設けられている容器本体202と開口を覆う蓋体201とを備えるチルド食品用包装容器200の、蓋体201に用いられる蓋体用積層シート10である。蓋体用積層シート10は、図1の概略断面図に示すように、少なくとも、ヒートシール層101、ガスバリア層102、アンカーコート層103、紙基材104をこの順序で積層形成したものである。内容物に接する最内層は、ヒートシール層101である。以下に各層を詳細に説明する。
【0021】
(ヒートシール層)
ヒートシール層101は、図2に示すチルド食品用包装容器200の容器本体202と蓋体201とをヒートシールし容器を密封できるものであればよい。一般的には、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、その他のポリオレフィン類のフィルムが使用される。好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene;LLDPE)、超低密度直鎖状ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene;VLDPE)が用いられる。また公知のイージピール機能(簡易剥離機能)をもったシーラント層も使用することができる。
【0022】
ヒートシール層101の厚みは、特に限定されるものではないが、紙化比率を考えると薄いのが望ましい。
【0023】
(ガスバリア層)
ガスバリア層102としては、遮光性が求められる用途としては、金属アルミニウムを蒸着した層を用いることができるが、電子レンジ向けの用途については、金属酸化物を用いるのが望ましい。その金属酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素(シリカ)などが挙げられるがこれに、限定しない。
【0024】
ガスバリア層102としてアルミニウムまたは、金属酸化物の蒸着層を有することで、本発明の蓋体積層シート10は、一般的な樹脂系の塗工ガスバリア層であるポリビニルアルコール系の酸素バリア性樹脂よりも酸素バリア性が高いうえに、耐水性が高まり、紙面に水滴が付着しこれが紙に浸透してガスバリア層102に達したとしても、水分劣化による酸素バリア性の低下をより一層抑制することができる。従って、冷蔵庫から取り出して低温環境から高温高湿環境に置かれたときに、蓋材に水滴が付着する可能性の高い、チルド食品用容器の蓋材に適する。
【0025】
上記ガスバリア層102は、真空成膜手段によって成膜することが、酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0026】
(アンカー層)
アンカーコート層103は、紙基材の表面張に設けられ、紙基材104とガスバリア層102との間の密着性向上や、ガスバリア性の向上のために設けられるものである。アンカーコート層103には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニリデン、10ポリアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリカーボネート系、ポリウレア系、ポリアミド系、ポリイミド系、メラミン系、フェノール系、ポリオレフィン系等の樹脂があげられる。添加剤として、シランカップリング剤、有機チタネート等の添加剤を混合してもよい。
【0027】
アンカーコート層103の厚みは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、20μm以下であってよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。アンカーコート層103の厚みが1μm以上であれば、上述した紙基材の凹凸を効率的に埋めることができ、後述するアルミニウム蒸着層を均一に積層させることができる。また、アンカーコート層103の厚みが20μm以下であれば、コストを抑えつつ蒸着層を均一に積層させることができる。
【0028】
アンカーコート層103の溶液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。アンカーコート層103を設ける方法としては、紙基材104上に少なくとも上述した溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。
【0029】
(紙基材)
紙基材104としては、特に限定されるものではなく、が適用される蓋体の用途に応じて適宜選択すればよく、植物由来のパルプを主成分としている紙であってよい。紙基材1の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙、グラシン紙等が挙げられる。紙基材104の厚さは、例えば、20g/m以上500g/m以下であることが好ましく、30g/m以上100g/m以下であることがより好ましい。
【0030】
紙基材104には、少なくとも後述するアンカーコート層103と接する側にコート層を設けてあってもよい。コート層を設けることで、紙にアンカーコート層103が染み込みことを防ぐことができるほか、紙の凹凸を埋める目止めの役割を果たすこともでき、アンカーコート層103を欠陥なく均一に製膜することができる。コート層には、例えば、バインダー樹脂として、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系等の各種共
重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、パラフィン(WAX)等を用い、填料としてクレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が含まれていてもよい。
【0031】
コート層の厚みは、特に制限されるものではないが、例えば、1μm以上10μm以下、又は3μm以上8μm以下であってよい。
【0032】
紙の重量は、蓋体用積層シート全体を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。紙の重量が蓋体用積層シート体全体を基準として、50質量%以上であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができ、蓋体用積層シート全体として紙製であるということができるとともに、リサイクル性に優れる。
【0033】
(印刷層)
印刷層(図示せず)は、製品として実用的に用いるために形成される層である。印刷層は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の
従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料、可塑剤、乾燥剤、安定剤等が添加されているインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。
【0034】
(酸素透過度)
本発明の蓋体用積層シート10は、紙基材104とガスバリア層102との間にアンカーコート層103を設けることで、紙基材104とガスバリア層102との間の密着性を向上させることができ、またガスバリア層102として、アルミニウムまたは、金属酸化物の蒸着層を有することで、低温環境から高温高湿環境下に置かれて保管された後でも、ガスバリア性低下が抑制される。その結果、温度5℃に保管し、その後、温度40℃及び相対湿度90%の雰囲気で保管した後の酸素透過度が、5cc/m・atm・day以下であり、且つ保管前の酸素透過度と比べ、酸素透過度の変化量が2cc以内であり、変化率が20%以内に保たれる。
【0035】
(チルド食品用包装容器)
以上のように、本発明の蓋体用積層シート10からなる蓋体201、並びに、それを備えるチルド食品用包装容器200は、低温環境から高温高湿の環境下に置かれても、優れたガスバリア性を発揮することによって、調理済みの冷凍またはチルド食品を安全に収納することが可能となる。
【実施例0036】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
坪量80g/mの片面コート紙(APP社製:シナールDG)のコート層面上に、アンカーコート層液1を、乾燥後の厚みが1μmになるように、バーコーターで塗工し、100℃、1分乾燥させた。その後、アンカーコート層面に、真空蒸着機で、アルミニウムを50nm形成し、さらに、アルミニウム蒸着層上に、ウレタン接着剤を塗布量2g/m塗工し、100℃、1分乾燥後、30μmのLLDPEフィルムをドライラミネートすることで、実施例1の蓋体用積層シートを得た。
<アンカーコート層液1>
純水 :90重量部。
ポリビニルアルコール(PVA-105) :10重量部。
【0038】
(実施例2)
坪量80g/mの片面コート紙(APP社製:シナールDG)の紙面側に、OPニス(DIC社製、VSP M OPニス)を塗布量3g/mとなるように、バーコーターで塗工し、100℃、2分乾燥させた。その他は、実施例1と同じとし、実施例2の蓋体用積層シートを得た。
【0039】
(実施例3)
実施例1のアルミニウム蒸着層を、真空蒸着により、シリカ(SiO2)を50nm形成した以外は、実施例1と同じとし、実施例3の蓋体用積層シートを得た。
【0040】
(実施例4)
実施例1のアルミニウム蒸着層を、真空蒸着により、アルミナ(Al23)を50nm形成した以外は、実施例1と同じとし、実施例4の蓋体用積層シートを得た。
【0041】
(実施例5)
アンカーコート層(アクリルポリオール、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、脂肪族系キシレンジイソシアネートの混合溶液)を乾燥後の厚みが1μmになるように、バーコーターで塗工し、100℃、1分乾燥させた以外は、実施例1とし、実施例5の蓋体用積層シートを得た。
【0042】
(比較例1)
坪量80g/mの片面コート紙(APP社製:シナールDG)のコート層面上に、塗工ガスバリア層液を、塗布量15g/mになるように、バーコーターで塗工し、100℃、10分間乾燥して、塗工ガスバリア層を形成した。その後、ウレタン接着剤を塗布量2g/m2塗工し、100℃、1分乾燥後、30μmのLLDPEフィルムをドライラミネートをすることで、比較例1の蓋体用積層シートを得た。
<塗工ガスバリア層液>
純水 :90重量部。
ポリビニルアルコール(PVA-105) :10重量部。
カオリン(イメリス社製バリサーフHX) :100重量部。
【0043】
(比較例2)
坪量80g/mの片面コート紙(APP社製:シナールDG)の紙面側に、OPニス(DIC社製、VSP M OPニス)を塗布量3g/mとなるように、バーコーターで塗工し、100℃、2分乾燥させた。その他は、比較例1と同じとし、比較実施例2の蓋体用積層シートを得た。
【0044】
(比較例3)
坪量80g/mの片面コート紙(APP社製:シナールDG)のコート層面上に、真空蒸着機で、アルミニウムを50nm形成し、さらに、アルミニウム蒸着層上に、ウレタン接着剤を塗布量2g/m塗工し、100℃、1分乾燥後、30μmのLLDPEフィルムをドライラミネートすることで、比較例3の蓋体用積層シートを得た。
【0045】
(比較例4)
真空蒸着機で、シリカ(SiO)を50nm形成した以外は、比較例3と同じとし、比較実施例4の蓋体用積層シートを得た。
【0046】
(比較例5)
真空蒸着機で、アルミナ(Al)を50nm形成した以外は、比較例3と同じとし、比較実施例5の蓋体用積層シートを得た。
【0047】
(比較例6)
坪量80g/mの片面コート紙(APP社製:シナールDG)のコート層面上に、アンカーコート層液1を、乾燥後の厚みが1μmになるように、バーコーターで塗工し、100℃、1分乾燥させた。その後、アンカーコート層面に、ウレタン接着剤を塗布量2g/m塗工し、100℃、1分乾燥後、30μmのLLDPEフィルムをドライラミネートすることで、比較例6の蓋体用積層シートを得た。
【0048】
(酸素透過度測定)
実施例1~5及び、比較実施例1~6に係る蓋体積層シートを、室温23℃、相対湿度50%で保管したサンプル、温度5℃で3時間保管した後、温度40℃、相対湿度90%の環境下で1時間保管したサンプルを作り、それぞれのサンプルの酸素透過度をMOCON法で測定した。MOCON法での測定条件は、温度30℃、相対湿度70%とした。
【0049】
表1に結果を示したが、比較実施例1と比較実施例2のガスバリア層が塗工膜であるサンプルでは、OPニスがあることにより、酸素透過度の変化量が小さくなっているが、変化量が小さい値でも、10cc/m・atm・dayを超え、変化率も65%を超えている。
また、アンカーコート層の無い比較例3~5では、ガスバリア層の形成状態が良くないためか、いずれもレンジオーバーとなっている。
それに対し、アンカーコート層があり、ガスバリア層が、金属または、無機酸化膜である実施例1~6では、OPニスの有無に関わらず変化量は、ほとんどみられていない。上記結果により、本発明の効果が示された。
【0050】
【表1】
【符号の説明】
【0051】
10・・・蓋体用積層シート
101・・・ヒートシール層
102・・・ガスバリア層
103・・・アンカーコート層
104・・・紙基材
200・・・チルド食品用包装容器
201・・・蓋体
202・・・容器本体
図1
図2