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特開2022-134357外用微粒子カプセル製剤及び皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134357
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】外用微粒子カプセル製剤及び皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/24 20060101AFI20220908BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20220908BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K47/24
A61K9/127
A61K47/14
A61K8/11
A61Q19/00
A61P17/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033431
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】592215011
【氏名又は名称】東洋ビューティ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597021026
【氏名又は名称】大日本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】久間 將義
(72)【発明者】
【氏名】久間 紗苗
(72)【発明者】
【氏名】池田 素勉
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 公男
(72)【発明者】
【氏名】青野 美紀
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA19
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD47F
4C076DD52F
4C076DD63F
4C076DD70F
4C076EE03
4C076FF34
4C083AA082
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC582
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD622
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】経皮吸収型の製剤や皮膚外用剤として皮膚に安定した浸透性を有すると共に、浸透した皮膚内部まで内包成分を直接に効率よく移送し、しかも内包する有効成分を皮膚内で確実に放出できる外用微粒子カプセル製剤を提供する。
【解決手段】乳化粒子の両親媒性カプセル膜で有効成分を内包した微粒子カプセル製剤からなり、両親媒性カプセル膜が、下記の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩を含有する両親媒性成分で構成され、皮膚等に広く分布する酵素のフォスファターゼによって分解可能な外用微粒子カプセル製剤とする。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化粒子の両親媒性カプセル膜で有効成分を内包した微粒子カプセル製剤からなり、前記両親媒性カプセル膜が、下記の化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩を含有する両親媒性成分で構成された外用微粒子カプセル製剤。
【化1】
【請求項2】
前記両親媒性カプセル膜が、リン脂質を含有する両親媒性カプセル膜である請求項1に記載の外用微粒子カプセル製剤。
【請求項3】
前記両親媒性カプセル膜が、天然型セラミド類、糖修飾セラミド化合物、合成疑似セラミド、スフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンから選ばれる1種以上のセラミド類縁体を含有する両親媒性カプセル膜である請求項1または2に記載の外用微粒子カプセル製剤。
【請求項4】
前記両親媒性カプセル膜が、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する両親媒性カプセル膜である請求項1~3のいずれかに記載の外用微粒子カプセル製剤。
【請求項5】
前記乳化粒子が、粒径100~300nmの乳化粒子である請求項1~4のいずれかに記載の外用微粒子カプセル製剤。
【請求項6】
前記有効成分が、皮膚生理活性の有効成分である請求項1~5のいずれかに記載の外用微粒子カプセル製剤を含有する皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、皮膚透過性を有し、皮膚内で内包する有効成分を放出可能な外用微粒子カプセル製剤及びそれを用いた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、真皮、および皮下組織から構成され、表皮の最外部の角層は、ケラチンマトリックスで構成された扁平な死細胞からなる多層膜であり、レンガ塀のレンガのように整然と配列した階層構造をとり、その間に細胞間脂質が充填されている、いわゆる「ブロックモルタル」構造を有している。
【0003】
このような構造によって、皮膚は外部からのさまざまなアレルゲンや細菌の侵入を防ぎ、また皮膚内からの水分の蒸散を制御するバリア機能を有している。
【0004】
しかしながら、このようなバリア機能を有することにより、皮膚の外部から生理活性成分等を皮膚の内部へ浸透させることは困難であり、さまざまな経皮吸収促進システムが検討されてきた。
【0005】
例えば医薬品や化粧品などの皮膚外用剤において、ナノテクノロジーの応用による顔料・粉体の微粒子化、液晶乳化、リポソームを含めたカプセル製剤などが知られている。
【0006】
リポソームの主要構成成分であるリン脂質は、リン酸部分が親水性、脂肪酸エステル部分が疎水性という両親媒性物質であり、水溶液中に閉鎖型ベシクル(リポソーム)を形成することがBangham法(1964年)によって周知であり、これを用いて薬物送達システムとして応用できることが知られている。
【0007】
すなわち、脂質二重膜の単層、または複数層からなり、水を分散媒とするときに疎水性の部分が内側に集まり、親水性の部分が外側に向くことで、リポソームは球形のカプセル構造となり、水溶性の薬効成分をその親水性の部分に、油溶性の薬効成分をその疎水性の部分に閉じこめることができる。
【0008】
このようなリポソームを始めとする微粒子カプセル製剤は、ドラッグ・デリバリー・システムへの応用が主に医学の分野で注目されており、また化粧品分野においても、皮膚に塗布した時の環境の変化に応じて、有効成分を放出し、皮膚内に効果的に浸透させることが可能である。
【0009】
例えば、温度感受性リポソーム(特許文献1)、pH応答性リポソーム(特許文献2)、温度及びpH応答性リポソーム(特許文献3)のように、熱や温度、pHを制御因子とする膜崩壊によって内包成分を放出する薬剤放出システムが知られている。
【0010】
また、ビタミンCは、皮膚の生理活性成分として知られており、水溶性ビタミンであるので皮膚に浸透し難く、その浸透性を高めるために親油性のイソステアリル酸エステルを結合させた誘導体が周知である(非特許文献1)。このビタミンC誘導体は、皮膚内に豊富にあるフォスファターゼによりビタミンCに変換され、抗酸化性による活性酸素の防御作用や美白作用などを期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006-306794号公報
【特許文献2】特開2010-209012号公報
【特許文献3】特開2015-209494号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Skin Pharm. Physol., 21,235-248 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、リポソームなどの微粒子カプセルによる薬剤放出システムでは、皮膚内の疾患部位ならびに加齢部位における構成細胞などの標的部位に対して、リポソームに内包された成分を充分に効率よく生体内に送り届ける制御技術が充分に確立されていない。
【0014】
例えば、ヒトの生活環境における皮膚には、様々な外部環境因子が作用し、皮膚表面の温度やpHなどは、体外の環境要因で予想外に大きく変動する場合があり、微粒子カプセル製剤の環境応答性だけで内包成分を確実に生体内に移送できない場合がある。
【0015】
このように種々の外部環境に対応しつつ、内包成分を皮膚を経由して標的の生体内細胞へ効率よく作用させるためには、皮膚に対する浸透性や生体内の貯留性を高めるだけでなく、皮膚内の目的部位または標的とする細胞内まで到達し、その後に最適なタイミングで確実に内包した活性成分を放出させる技術が必要である。
【0016】
そこで、この発明の課題は、上記したような問題点を解決し、経皮吸収型の製剤や皮膚外用剤として皮膚に安定した浸透性を有すると共に、浸透した皮膚内部まで内包成分を直接に効率よく移送し、しかも内包する有効成分を皮膚内で確実に放出できる外用微粒子カプセル製剤を創製することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の発明者らは、皮膚透過性を有し、皮膚内に常在する酵素によりカプセル崩壊させることにより内包成分を放出できる微粒子カプセル製剤を研究開発し、その組成により皮膚内での放出を制御できることを見出した。さらに、この発明の微粒子カプセル製剤を含有する皮膚外用剤においても皮膚内への効果的な内包成分のデリバリー作用を見出し、この発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、上記の課題を解決するために、この発明では乳化粒子の両親媒性カプセル膜で有効成分を内包した微粒子カプセル製剤からなり、前記両親媒性カプセル膜が、下記の化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩を含有する両親媒性成分で構成された外用微粒子カプセル製剤としたのである。
【0019】
【化1】
【0020】
上記したように構成されるこの発明の外用微粒子カプセル製剤は、両親媒性カプセル膜に含まれるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩(イソステアリルアスコルビルリン酸2金属塩)が、リン酸エステル部が分岐したアルキル基を有するL-アスコルビン酸―2-リン酸エステルであることにより、適度な脂溶性があって皮膚内に取り込まれやすく、浸透した皮膚内部に内包する有効成分を効率よく移送する。
【0021】
そして、取り込まれた皮膚等に広く分布する酵素のフォスファターゼによって、速やかにL-アスコルビン酸およびリン脂質などに分解されるから、両親媒性カプセル膜が生体内で崩壊し、乳化粒子に内包されている有効成分を確実に放出でき、皮膚内への優れた経皮移送性を有する外用微粒子カプセル製剤になる。
【0022】
前記両親媒性カプセル膜は、皮膚透過性を高めるために、皮膚が本来備えている脂溶性および親水性に相応する親水性及び親油性を備えていることが好ましく、皮膚を構成する成分であるリン脂質、セラミド類縁体を含ませることが好ましい。セラミド類縁体は、天然型セラミド類、糖修飾セラミド化合物、合成疑似セラミド、スフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンから選ばれる1種以上のセラミド類縁体であることが好ましい。
また、親水性から親油性まで幅広く対応できる合成できるポリグリセリン脂肪酸エステルは、耐酸性、耐塩基性、耐熱性も備えることができるので、両親媒性カプセル膜の構成成分として適用できるものである。
【0023】
このように構成される両親媒性カプセル膜で有効成分を内包した微粒子カプセル製剤の乳化粒子は、皮膚に対する浸透性を高めて効率よく薬効成分を移送できるように、マイメーターサイズまたはナノメーターサイズのカプセル微粒子であり、例えば粒径100~300nmの乳化粒子であることは好ましい。
【0024】
また、前記有効成分が、皮膚生理活性の有効成分である上記構成の外用微粒子カプセル製剤は、生理活性成分を有効成分として含有する化粧料等の皮膚外用剤に適用できる。
【発明の効果】
【0025】
この発明のカプセル製剤は、前記した化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩を両親媒性カプセル膜内に含有する微粒子カプセル製剤からなるので、皮膚外用剤として皮膚に対する充分な浸透性を有すると共に、内包成分を皮膚内に効率よく移送でき、しかも皮膚外部の環境的な要因に影響されることなく、内包成分を皮膚内部に確実に放出できる外用微粒子カプセル製剤となる利点がある。
また、上記効果を奏する外用微粒子カプセル製剤を含有する皮膚外用剤においては、有効成分により皮膚生理活性を充分に高めることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1~3、比較例1の経皮吸収性試験による経皮浸透総量を示す図表
図2】実施例4~6、比較例2の経皮吸収性試験による経皮浸透総量を示す図表
図3】実施例7~9、比較例3の経皮吸収性試験による経皮浸透総量を示す図表
図4】実施例10~12、比較例4の経皮吸収性試験による経皮浸透総量を示す図表
図5】実施例13~15、比較例5の経皮吸収性試験による経皮浸透総量を示す図表
図6】実施例16~18、比較例6の経皮吸収性試験による経皮浸透総量を示す図表
図7】実施例1~3、比較例1の経皮吸収性試験による皮膚内での内包成分のデリバリー率を示す図表
図8】実施例4~6、比較例2の経皮吸収性試験による皮膚内での内包成分のデリバリー率を示す図表
図9】実施例7~9、比較例3の経皮吸収性試験による皮膚内での内包成分のデリバリー率を示す図表
図10】実施例10~12、比較例4の経皮吸収性試験による皮膚内での内包成分のデリバリー率を示す図表
図11】実施例13~15、比較例5の経皮吸収性試験による皮膚内での内包成分のデリバリー率を示す図表
図12】実施例16~18、比較例6の経皮吸収性試験による皮膚内での内包成分のデリバリー率を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施形態としての有効成分を両親媒性カプセル膜で内包した酵素反応応答性の外用微粒子カプセル製剤は、両親媒性カプセル膜の構成成分として、前記下記の化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩からなるビタミンC誘導体と、その他の構成成分としてリン脂質、セラミド、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1つ以上を採用した乳化粒子からなる。
【0028】
乳化粒子は、例えば乳化組成物として、分散質となる親油性の有効成分と、分散媒となる水または親水性成分と、界面活性剤や乳化剤もしくは乳化助剤、乳化安定剤等の両親媒性物質が配合された混合物中に微粒子として分散した状態で存在する。
【0029】
すなわち、外用微粒子カプセル製剤は、乳化組成物をホモジナイザーや所定の高速ミキサーで混合し、微細な乳化粒子を均一分散状態に調製するという周知の分散及び乳化の工程、さらには必要に応じて機械的な乳化工程を経て得られるマイクロメーターサイズからナノメーターサイズの微粒子カプセル製剤の剤型のものを含めて総称するものである。
また、特にナノメーターサイズの微粒子カプセル製剤の剤型を採用することによって、その効果がより優れていることが、後述する試験結果からも明らかである。
【0030】
この発明に用いるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩(イソステアリルアスコルビルリン酸2金属塩)は、リン酸エステル部が分岐したアルキル基を有するL-アスコルビン酸―2-リン酸エステルであり、適度な脂溶性があって皮膚内に取り込まれやすく、その際に生体内に広く分布する酵素であるフォスファターゼによって速やかにL-アスコルビン酸およびリン脂質などに分解され、皮膚内への優れた経皮吸収性ならびに代謝性を有する周知の化合物である。
【0031】
イソステアリルアスコルビルリン酸2金属塩の具体例としては、以下の化2の式で示されるイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩が挙げられ、その他のアルカリ金属塩としてはカリウム塩等であってもよい。
【0032】
【化2】
【0033】
この発明に用いるリン脂質は、卵黄レシチンや大豆レシチン等の天然のリン脂質、レシチン中の不飽和炭素鎖を水素添加により飽和結合に変えた水素添加卵黄レシチン、大豆レシチン等のリン脂質、天然レシチンから精製するか、あるいは合成したホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等が挙げられる。
【0034】
これらのリン脂質は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。水素添加レシチンあるいは特定のリン脂質の濃度を高めた水素添加レシチンを用いてもよい。
【0035】
この発明に用いるリン脂質としては、天然のレシチンを精製し、ホスファチジルコリン含量を55 ~85質量% に調整したものが、安定であり、微小なカプセル製剤を調製するために好ましい。リン脂質に不飽和結合が含まれる場合には、水素添加処理を施すことにより、微粒子カプセル製剤の安定性が向上する。
【0036】
このようなリン脂質は周知であり、市販品としては、日光ケミカルズ株式会社製のレシノールS-10 M、レシノールS-10E、日清オイリオ株式会社製のベイシスLP-60 HR、日本油脂株式会社製のCOATSOMENC-61、キューピー株式会社製の卵黄レシチンPL 100P等を使用できる。また、上記以外にも、日光ケミカルズ株式会社製のレシノールS-10、レシノールS-10 EX、日清オイリオ株式会社製のベイシスL P-60、ベイシスLP-20、ベイシスLP-20H、日本油脂株式会社製のCOATSOMENC-21、COATSOMENC-20、キューピー株式会社製の卵黄レシチンPL-60、卵黄レシチンPL-100H、卵黄レシチンPL-30、卵黄レシチンPL95P、卵黄レシチンPL98P等も使用可能な市販品として挙げられる。
【0037】
この発明の外用微粒子カプセル製剤を調製する際のリン脂質の配合量は、0.1~10質量% が好ましい。安定なカプセル製剤を調製するためには、1.0~2.0質量%の配合量がより好ましい。
【0038】
この発明に用いるセラミド類縁体は、セラミドまたはその類似成分を包含するものである。このようなセラミド類縁体は、合成品、抽出品等の由来は問わず、天然型セラミド(類)、糖修飾セラミド化合物、合成疑似セラミド(セラミド類似体)、スフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンから選ばれる少なくとも1つを採用できる。
【0039】
天然型セラミドは、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド7、セラミド8、セラミド9とも称される周知の化合物であり、市販のものを目的に応じて使用できる。
【0040】
これらのセラミドは、人や動物等に由来する天然物であり、アルキル鎖の長さには様々な変形例が存在し、上記骨格を有するものであれば、アルキル鎖長については、いかなる構造のものであってもよい。
【0041】
また、製剤化などの目的で溶解性を付与するために、分子内に二重結合を導入したり、浸透性を付与するために、疎水基を導入するなど、上記セラミド類に目的に応じて、修飾を加えたものを用いることもできる。これらのセラミドはD(-)体ならびにL(+)体の光学活性体のどちらを用いても、さらにこれらの混合物を用いてもよい。
【0042】
市販のセラミドとしては、例えば、Evonik Operations GmbH社製のCeramide I、Ceramide III、Ceramide IIIB、Ceramide VI、クローダジャパン株式会社のCERAMIDE 2、高砂香料社製のCeramide TIC-001、Doosan Corporation社製のDS-ceramide Y3O、DS-ceramide Y3S等が挙げられる。
【0043】
この発明おけるセラミド類縁体の別の例としては、分子内に糖類を含む糖修飾セラミド化合物が挙げられる。
【0044】
セラミドの修飾に用いられる糖としては、例えば、グルコース、ガラクトースなどの単糖類、ラクトース、マルトースなどの二糖類、さらには、これらの単糖類や二糖類をグルコシド結合により高分子化したオリゴ糖類、多糖類などが挙げられる。また、糖の単位におけるヒドロキシル基を他の基で置き換えた糖誘導体であっても構わない。このような糖誘導体としては、例えば、グルコサミンやクルクロン酸、N -アセチルグルコサミンなどがある。なかでも、分散安定性の観点から、糖単位の数が1~5である糖類が好ましく、具体的には、グルコース、ラクトースが好ましく、グルコースがより好ましい。
【0045】
前記糖セラミド化合物は、合成によっても、市販品としても入手可能である。例えば、大日本化成株式会社製のビオセラG、ビオセラQD、デリソーム CX2、キッコーマンバイオケミファ株式会社のバイオスフィンゴ等が挙げられる。
【0046】
また、この発明におけるセラミド類縁体のさらに別の例として、セラミド類の構造を模倣した合成疑似セラミド(合成類似セラミドまたは合成されたセラミド類似体とも称される。例えばN-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドなど)も挙げられる。
【0047】
さらにまた、この発明おけるセラミド類縁体の別の例として、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンが挙げられる。これらは、合成品、天然品を問わず、天然型のスフィンゴシン、スフィンゴシン類縁体を使用することができ、このような化合物も本発明のセラミド類縁体に包含される。
【0048】
天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN-アルキル体( 例えばN-メチル体)、アセチル化体等が挙げられる。
これらのスフィンゴシンはD(-)体ならびにL(+)体の光学活性体を用いても、さらに天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。
【0049】
上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。これらのなかでも、本発明に好適に使用しうるフィトスフィンゴシンの具体例として、例えば、日光ケミカルズ株式会社のNIKKOL セラリピッド PS236、Doosan Corporation社製のDS-PHYTOSPHINGOSINE、Evonik Operations GmbH社製のPhytosphingosineを挙げることができる。フィトスフィンゴシンは、天然からの抽出品、合成品のいずれを用いてもよい。
この発明のカプセル製剤には、上記したセラミド類縁体を1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
この発明の外用微粒子カプセル製剤を調製するときのセラミド類縁体の濃度は0.1~10質量%が好ましく、安定なカプセル製剤を調製するためには1~3質量%が特に好ましい。
【0050】
この発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度が2以上、好ましくは6~15、より好ましくは8~10のポリグリセリンと、炭素数8~18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。
【0051】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらは医薬品、化粧品や食品などに乳化剤や発泡剤として添加されている周知の原料であり、市販品を利用できる。この発明のカプセル製剤には、ポリグリセリン脂肪酸エステルを1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
この発明の外用微粒子カプセル製剤を調製するときのポリグリセリン脂肪酸エステルの濃度は1~20質量%が好ましい。安定なカプセル製剤を調製するためには5~20質量%が特に好ましい。
【0053】
この発明の外用微粒子カプセル製剤の組成例としては、イソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩(イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩)1~10質量%と、リン脂質、セラミド類縁体、脂肪酸グリセリル誘導体1~20質量%とを、グリセリン水溶液等の水性溶媒と混合撹拌し、そこに必要に応じて1~30重量%の油性成分を加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによってカプセル製剤を調製することができる。
【0054】
上記のようにして得られる外用微粒子カプセル製剤は、通常、ミクロン単位の粒子径であって、例えば数μm(1~5μm)程度の略球状の微粒子状のマイクロカプセル製剤として得られる。
また、この発明の外用微粒子カプセル製剤は、マイクロカプセル製剤である場合の他、ナノカプセル製剤であってもよい。
すなわち、上記のようにして得られたマイクロカプセル製剤を、さらに薄膜旋回型高速ミキサーや高圧乳化機(高圧ホモジナイザー)などの周知の乳化機を用いて、機械的なせん断力、衝撃力、乱流などによって微粒化し、粒子径1μm未満のナノサイズの微粒子カプセル製剤を製造できる。
【0055】
この発明の微粒子カプセル製剤は、後述する実施例の評価試験で実証されるように、皮膚浸透性に優れ、さらに内包成分の皮膚内での効果的な放出能を有し、皮膚内への有効成分のデリバリー製剤として有用である。
【0056】
この発明に係るカプセル製剤は、化粧料、医薬品等の皮膚外用剤に有効成分を含有させて経皮吸収性の微粒子カプセル製剤として利用される他、化粧料やその他の皮膚外用剤に配合して有効成分の効果を発揮させることができ、種々の皮膚外用剤などに調製できる。
この発明に係るカプセル製剤を所要の割合に配合して化粧料、医薬品等の皮膚外用剤とする場合、微粒子カプセル製剤の1種又は2種以上を配合してもよい。
【0057】
因みに、安全性が周知である構成成分は、過剰に配合しても安全性に問題はなく、化粧料、医薬品等の皮膚外用剤として皮膚刺激性で実用性を失しない濃度で配合可能である。
【0058】
この発明の皮膚外用剤には、上記の必須成分の他、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば油性成分、乳化剤、保湿剤、増粘剤、薬効成分、防腐剤、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等を適宜配合することができる。
【0059】
上記した油性成分の具体例としては、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ホホバ油、ミツロウ、カルナウバロウ、ラノリン、オリーブ油、ヤシ油、高級アルコール、脂肪酸、イソステアリルアルコールなどの高級アルコールと脂肪酸のエステル、シリコーン油等が挙げられる。
【0060】
上記の乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、ステアロイル乳酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、大豆リン脂質等の両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0061】
また上記の保湿剤としては、例えばグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0062】
上記の増粘剤としては、例えばカルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマー、キサンタンガム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ベントナイト等の粘土鉱物等が挙げられる。
【0063】
有効成分または、その他の薬効成分としては、例えば各種ビタミンおよびその誘導体、アラントイン、グリチルリチン酸およびその誘導体、各種動植物抽出物等の老化防止剤、保湿剤、育毛剤、発毛剤、経皮吸収促進剤、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、美白剤、防腐防カビ剤が挙げられる。
【0064】
この発明のカプセル製剤を含む皮膚外用剤は、微粒子カプセル製剤を有効成分として配合することの他に、特に製造の条件を限定されるものではなく、周知の化粧料製造法によっても調製できる。
【0065】
また、この発明の微粒子カプセル製剤の用途は、国内外の法律や社会的事情などにより限定されず、医薬部外品、外用医薬品等にも適用でき、化粧料の剤型は目的に応じて選択でき、例えばクリーム状、乳液状、液状、ゲル状、軟膏状、パック状、スティック状、パウダー状等の形態を採用することができる。
【実施例0066】
両親媒性カプセル膜成分(A1)、その他のカプセル膜成分(A2)、内包(油性)成分(B)、水または水性成分(C)を表1または表2に示される割合(合計100重量%)で配合し、分散および乳化させて以下の実施例1~18及び比較例1~6の外用微粒子カプセル製剤を調製した。
得られた実施例及び比較例については、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製:LA-950)を用いて粒子径を測定し、その結果を表1及び表2中に併記した。
【0067】
[実施例1~3、比較例1]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩(前記化2の式で示されるもの、以下同じ)0.5質量%、市販の水素添加レシチン2.0質量%、グリセリン50.0質量%、水を混合し、そこに内包成分としてレチノール0.1質量%、イソステアリン酸10.0質量%、エチルヘキサン酸セチル5.0質量%、オレフィンオリゴマー10.0質量%、ベヘニルアルコール0.2質量%を加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによって、表1に示される粒子径の実施例1を得た。
【0068】
また実施例2、実施例3、比較例1についても、上記同様に表1に示す配合割合で、カプセル膜構成成分のイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩の配合量を変更したカプセル製剤(実施例2、3)及びイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を含まない比較例1の微粒子カプセル製剤を得た。
【0069】
[実施例4~6、比較例2]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩0.5質量%、セラミド類縁体として市販のスフィンゴモナスエキス2.5質量%、グリセリン45.0質量%、水を混合し、そこに内包成分としてトコフェロール0.1質量%、イソステアリン酸20.0質量%、エチルヘキサン酸セチル5.0質量%を加えてホモジナイザーによる分散・乳化によって実施例4のカプセル製剤を得た。
【0070】
実施例4における構成成分のイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩の配合量を変更した実施例5、スフィンゴモナスエキスを添加せずにイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみを配合した実施例6、及びスフィンゴモナスエキスのみを配合した比較例2のカプセル製剤をそれぞれ得た。
【0071】
[実施例7~9、比較例3]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩0.5質量%、市販のジイソステアリン酸ポリグリセリル5.0質量%、モノミリスチン酸デカグリセリル5.0質量%、グリセリン40.0質量%、水を混合し、そこに内包成分としてトコフェロール0.1質量%、エチルヘキサン酸セチル5.0質量%、スクワラン5.0質量%、オレフィンオリゴマー10.0質量%、ベヘニルアルコール0.3質量%を加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによって実施例7のカプセル製剤を得た。
【0072】
また、実施例7の構成成分から、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩の配合量を変更した実施例8、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみを配合した実施例9、ジイソステアリン酸ポリグリセリル及びモノミリスチン酸デカグリセリルのみを配合した比較例3を調製した。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例10~18、比較例4~6]
以下の表2に示す配合割合で、実施例10~18ならびに比較例4~6のカプセル製剤を薄膜旋回型高速ミキサーによって微粒子化することにより、表中に示す粒子径の実施例10~18ならびに比較例4~6の外用微粒子カプセル製剤を得た。
【0075】
【表2】
【0076】
上記のようにして得られた実施例1~18、比較例1~6について、経皮吸収性ならびに内包成分の皮膚内への供給性を調べるために、以下のように経皮吸収性試験を行ない、その結果を図1~12に示した。
【0077】
<経皮吸収性試験>
ヒト正常表皮角化細胞から構成された三次元培養皮膚モデルである倉敷紡績社製のEPI-200Xを用いて経皮吸収性試験を行なった。
すなわち、上記三次元培養皮膚モデルを専用培地を用いて6穴マイクロプレートにて全培養をし、その後、皮膚モデルの上部に実施例1~18ならびに比較例1~6の50%水溶液を50μL添加し、24時間後にモデル下部の培養液ならびに皮膚モデルを採取した。採取した皮膚モデルは1mLの50%エタノール水溶液にてホモジナイザーにより破砕抽出して皮膚モデル抽出液を得た。これらの採取した培養液と皮膚モデル抽出液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて内包成分を定量した。
経皮浸透総量は、培養液及び皮膚モデル抽出液中の内包成分総量とし、その結果は図1~6に示した。
【0078】
また、皮膚内での内包成分のデリバリー率(%)を、以下の計算式Aで算出し、標的となる皮膚細胞へ内包成分が効率よく移送(デリバリー)されたかどうかを評価した。皮膚内での内包成分のデリバリー率(%)結果については、図7~12に示した。
【0079】
(計算式A):
皮膚内での内包成分のデリバリー率(%)=(皮膚モデル抽出液中の内包成分総量)/(培養液及び皮膚モデル抽出液中の内包成分総量)
【0080】
<試験結果>
図1~6に示される結果からも明らかなように、実施例1~9に示す水素添加レシチン、スフィンゴモナスエキス、ポリグリセリン脂肪酸エステルをカプセル殻構成成分とするマイクロカプセル製剤は、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を導入することにより、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を配合しない比較例1~3よりも、経皮浸透総量は増加し、さらに皮膚内での内包成分のデリバリー率も向上した。
【0081】
また、図7~12に示される結果からも明らかなように、実施例10~13に示す水素添加レシチン、スフィンゴモナスエキス、ポリグリセリン脂肪酸エステルをカプセル殻構成成分とするナノカプセル製剤においても、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を導入することにより、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を配合しない比較例4~6よりも、経皮浸透総量が増加し、さらに皮膚内での内包成分のデリバリー率も向上した。
【0082】
以上のことから、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみ、ならびにイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩およびリン脂質、セラミド類縁体、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1つ以上をカプセル殻構成成分として配合した実施例1~18の外用微粒子カプセル製剤は、優れた内包成分の皮膚内へのデリバリー性を有していることは明らかであった。
【0083】
以下に、所定のカプセル製剤を有効成分とする実施例として、皮膚外用剤の代表的な処方例を示す。各行右端の数値は配合割合(質量%)である。なお、得られた処方例による皮膚外用剤は、内包成分由来の有効性を示しうる成分量のカプセル製剤を含有する皮膚外用剤である。
【0084】
[処方例1](化粧水)
カプセル製剤A(実施例1) 2.0
グリセリン 10.0
エタノール 5.0
POE(60)硬化ひまし油 0.3
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0085】
[処方例2](ゲル状クリーム)
微粒子カプセル製剤A(実施例14) 10.0
グリセリン 5.0
エタノール 5.0
水酸化ナトリウム 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.8
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0086】
[処方例3](乳液)
カプセル化製剤B(実施例6) 5.0
1,3-ブチレングリコール 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
スクワラン 5.0
セタノール 0.6
L-アルギニン 0.3
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0087】
[処方例4](クリーム)
微粒子カプセル化製剤B(実施例16) 20.0
1,3-ブチレングリコール 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.4
スクワラン 5.0
セタノール 3.0
ミツロウ 3.0
L-アルギニン 0.3
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【産業上の利用可能性】
【0088】
この発明の外用微粒子カプセル製剤は、経皮吸収性を活かした用途に汎用性があり、内包する有効成分が化粧料としての有効な皮膚の生理活性成分などである場合には、化粧クリームなどの化粧品として利用することができ、また生体に対する薬効成分である場合には、経皮吸収性のあるクリームやゼリーなどの外用の医薬品として利用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化粒子の両親媒性カプセル膜で有効成分を内包した微粒子カプセル製剤からなり、前記両親媒性カプセル膜が、下記の化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩と、リン脂質を含有する両親媒性成分で構成された外用微粒子カプセル製剤。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の外用微粒子カプセル製剤において、両親媒性カプセル膜が、天然型セラミド類、糖修飾セラミド化合物、合成疑似セラミド、スフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンから選ばれる1種以上のセラミド類縁体を、リン脂質に代えて含有する両親媒性カプセル膜である外用微粒子カプセル製剤。
【請求項3】
請求項1に記載の外用微粒子カプセル製剤において、両親媒性カプセル膜が、リン脂質に代えてポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する両親媒性カプセル膜である外用微粒子カプセル製剤。
【請求項4】
前記乳化粒子が、粒径100~300nmの乳化粒子である請求項1~のいずれかに記載の外用微粒子カプセル製剤。
【請求項5】
前記有効成分が、皮膚生理活性の有効成分である請求項1~のいずれかに記載の外用微粒子カプセル製剤を含有する皮膚外用剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
このように構成される両親媒性カプセル膜で有効成分を内包した微粒子カプセル製剤の乳化粒子は、皮膚に対する浸透性を高めて効率よく薬効成分を移送できるように、マイクロメーターサイズまたはナノメーターサイズのカプセル微粒子であり、例えば粒径100~300nmの乳化粒子であることは好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
両親媒性カプセル膜成分(A1)、その他のカプセル膜成分(A2)、内包(油性)成分(B)、水または水性成分(C)を表1または表2に示される割合(合計100重量%)で配合し、分散および乳化させて以下の実施例1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、参考例1~6及び比較例1~6の外用微粒子カプセル製剤を調製した。
得られた実施例、参考例及び比較例については、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製:LA-950)を用いて粒子径を測定し、その結果を表1及び表2中に併記した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
[実施例1、2、参考例1、比較例1]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩(前記化2の式で示されるもの、以下同じ)0.5質量%、市販の水素添加レシチン2.0質量%、グリセリン50.0質量%、水を混合し、そこに内包成分としてレチノール0.1質量%、イソステアリン酸10.0質量%、エチルヘキサン酸セチル5.0質量%、オレフィンオリゴマー10.0質量%、ベヘニルアルコール0.2質量%を加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによって、表1に示される粒子径の実施例1を得た。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
また実施例2、参考例1、比較例1についても、上記同様に表1に示す配合割合で、カプセル膜構成成分のイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩の配合量を変更したカプセル製剤(実施例2、参考例1)及びイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を含まない比較例1の微粒子カプセル製剤を得た。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
[実施例4、5、参考例2、比較例2]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩0.5質量%、セラミド類縁体として市販のスフィンゴモナスエキス2.5質量%、グリセリン45.0質量%、水を混合し、そこに内包成分としてトコフェロール0.1質量%、イソステアリン酸20.0質量%、エチルヘキサン酸セチル5.0質量%を加えてホモジナイザーによる分散・乳化によって実施例4のカプセル製剤を得た。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
実施例4における構成成分のイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩の配合量を変更した実施例5、スフィンゴモナスエキスを添加せずにイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみを配合した参考例2、及びスフィンゴモナスエキスのみを配合した比較例2のカプセル製剤をそれぞれ得た。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
[実施例7、8、参考例3、比較例3]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩0.5質量%、市販のジイソステアリン酸ポリグリセリル5.0質量%、モノミリスチン酸デカグリセリル5.0質量%、グリセリン40.0質量%、水を混合し、そこに内包成分としてトコフェロール0.1質量%、エチルヘキサン酸セチル5.0質量%、スクワラン5.0質量%、オレフィンオリゴマー10.0質量%、ベヘニルアルコール0.3質量%を加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによって実施例7のカプセル製剤を得た。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
また、実施例7の構成成分から、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩の配合量を変更した実施例8、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみを配合した参考例3、ジイソステアリン酸ポリグリセリル及びモノミリスチン酸デカグリセリルのみを配合した比較例3を調製した。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
【表1】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
[実施例10、11、13、14、16、17、参考例4~6、比較例4~6]
以下の表2に示す配合割合で、実施例10、13、14、16、17、参考例4~6ならびに比較例4~6のカプセル製剤を薄膜旋回型高速ミキサーによって微粒子化することにより、表中に示す粒子径の実施例10、11、13、14、16、17、参考例4~6ならびに比較例4~6の外用微粒子カプセル製剤を得た。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
【表2】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
上記のようにして得られた実施例1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、参考例1~6、比較例1~6について、経皮吸収性ならびに内包成分の皮膚内への供給性を調べるために、以下のように経皮吸収性試験を行ない、その結果を図1~12に示した。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
<経皮吸収性試験>
ヒト正常表皮角化細胞から構成された三次元培養皮膚モデルである倉敷紡績社製のEPI-200Xを用いて経皮吸収性試験を行なった。
すなわち、上記三次元培養皮膚モデルを専用培地を用いて6穴マイクロプレートにて全培養をし、その後、皮膚モデルの上部に実施例1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、参考例1~6ならびに比較例1~6の50%水溶液を50μL添加し、24時間後にモデル下部の培養液ならびに皮膚モデルを採取した。採取した皮膚モデルは1mLの50%エタノール水溶液にてホモジナイザーにより破砕抽出して皮膚モデル抽出液を得た。これらの採取した培養液と皮膚モデル抽出液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて内包成分を定量した。
経皮浸透総量は、培養液及び皮膚モデル抽出液中の内包成分総量とし、その結果は図1~6に示した。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
<試験結果>
図13、7~9に示される結果からも明らかなように、実施例1、2、4、5、7、8、参考例1~3に示す水素添加レシチン、スフィンゴモナスエキス、ポリグリセリン脂肪酸エステルをカプセル殻構成成分とするマイクロカプセル製剤は、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を導入することにより、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を配合しない比較例1~3よりも、経皮浸透総量は増加し、さらに皮膚内での内包成分のデリバリー率も向上した。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
また、図4~6、10~12に示される結果からも明らかなように、実施例10、11、13、14、16、17、参考例4~6に示す水素添加レシチン、スフィンゴモナスエキス、ポリグリセリン脂肪酸エステルをカプセル殻構成成分とするナノカプセル製剤においても、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を導入することにより、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩を配合しない比較例4~6よりも、経皮浸透総量が増加し、さらに皮膚内での内包成分のデリバリー率も向上した。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
以上のことから、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみ、ならびにイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩およびリン脂質、セラミド類縁体、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1つ以上をカプセル殻構成成分として配合した実施例1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、参考例1~6の外用微粒子カプセル製剤は、優れた内包成分の皮膚内へのデリバリー性を有していることは明らかであった。
【手続補正18】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12