IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リガクの特許一覧

<>
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図1
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図2
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図3
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図4
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図5
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図6
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図7
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図8
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図9
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図10
  • 特開-異物検出装置及び異物検出方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134358
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】異物検出装置及び異物検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20220908BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N21/89 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033432
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】島本 憲太
【テーマコード(参考)】
2G001
2G051
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001KA03
2G001MA01
2G001MA02
2G001MA05
2G051AB01
2G051AB06
2G051BA05
2G051BA06
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB02
2G051DA08
(57)【要約】
【課題】
異物位置を特定する新規な手法を提供する。
【解決手段】
本発明は、点光源から電磁波を発する電磁波発生部と、検査対象物を保持し、回転軸の周りで回転させる回転保持部と、前記検査対象物を透過した電磁波を検出する検出部と、前記検査対象物を前記回転軸の周りで回転させた状態で前記検査対象物を透過した電磁波を検出することにより生成された前記検査対象物の回転画像データにおいて、前記検査対象物の異物の軌跡を抽出し、前記軌跡が含まれる円の中心(C2)の座標を算出する軌跡抽出部と、前記中心(C2)の座標に基づき、前記異物の前記回転軸方向の位置を特定する異物位置特定部とを備える異物検出装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点光源から電磁波を発する電磁波発生部と、
検査対象物を保持し、回転軸の周りで回転させる回転保持部と、
前記検査対象物を透過した電磁波を検出する検出部と、
前記検査対象物を前記回転軸の周りで回転させた状態で前記検査対象物を透過した電磁波を検出することにより生成された前記検査対象物の回転画像データに基づき、前記検査対象物の異物の軌跡を抽出し、前記軌跡が含まれる円の中心(C2)の座標を算出する軌跡抽出部と、
前記中心(C2)の座標に基づき、前記異物の前記回転軸方向の位置を特定する異物位置特定部と
を備える異物検出装置。
【請求項2】
前記回転軸に沿った方向をz軸とし、z軸に垂直な平面をxy面とすると、前記検出部の検出面がxy面に平行に位置する、請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記点光源と前記回転軸とを含む断面において、前記検出面を含むxy面と前記点光源から下ろした直線との交点(P1)と、前記中心(C2)との間の距離をD2とし、前記点光源から下ろした直線と前記回転軸との間の距離をD1とし、前記点光源と前記異物との間のz軸方向の距離をZ1とし、前記点光源と前記検出面との間のz軸方向の距離をZ2とすると、以下の式1:
Z1/Z2=D1/D2 (式1)
が成立し、
前記異物位置特定部は、前記中心(C2)の座標及び前記交点(P1)の座標に基づき、D2を算出し、
前記異物位置特定部は、算出したD2、D1、及びZ2に基づき、Z1を算出することで、前記異物のz軸方向の位置を特定する、請求項2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
回転軸の周りで回転する検査対象物に点光源から電磁波を照射し、前記検査対象物を透過した電磁波を検出部の検出面にて検出して、前記検査対象物の回転画像データを生成する工程と、
前記回転画像データにおいて、前記検査対象物の異物の軌跡を抽出し、前記軌跡が含まれる円の中心(C2)の座標を処理装置の軌跡抽出部により算出する工程と、
前記処理装置の異物位置特定部により、前記中心(C2)の座標に基づき前記異物の前記回転軸方向の位置を特定する工程と
を備えた異物検出方法。
【請求項5】
コンピュータを、
検査対象物を回転軸の周りで回転させた状態で、点光源から出て前記検査対象物を透過した電磁波を検出することにより生成された前記検査対象物の回転画像データにおいて、前記検査対象物の異物の軌跡を抽出し、前記軌跡が含まれる円の中心(C2)の座標を算出する軌跡抽出部と、
前記中心(C2)の座標に基づき、前記異物の回転軸方向の位置を特定する異物位置特定部と
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物中の異物の位置を特定する異物検出装置及び異物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、セパレータ捲回体の内部の欠陥の有無を検査する欠陥検査装置を開示する。当該欠陥検出装置は、電池に使用されるセパレータが筒状のコアに捲回されたセパレータ捲回体に対し、セパレータ捲回体を透過する電磁波を照射する線源部と、線源部が照射し、セパレータ捲回体を透過した電磁波を検出するセンサ部とを有する。
【0003】
特許文献2は、感度ムラを低減し且つ検出器に形成される像の大きさを拡大して異物を検出できる放射線透過検査方法を開示する。放射線透過検査方法は、フィルムリールの側端部Aから入射し、リール中を透過し、側端部Bから出射する放射線を、第1の検出器で検出し、異物についての情報を得る第1の異物検知工程と、第2の放射線源から照射され、前記フィルムリールの側端部Bから入射し、リール中を透過し、側端部Aから出射する放射線を、第2の検出器で検出し、異物についての情報を得る第2の異物検知工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-091825号公報
【特許文献2】国際公開第2020/004435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、セパレータ捲回体の内部の欠陥の有無を判定するものであるが、欠陥のセパレータ捲回体奥行き方向位置を判定できない。特許文献2の技術は、放射線源と検出器の両方を検査対象物の周囲に180度回転させる構成が必要となり、装置構成が比較的複雑で大掛かりなものとなってしまう。
【0006】
このような事情に鑑み、本発明は、検査対象物中の異物の位置を特定する新たな手法を用いた異物検出装置及び異物検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には、以下の態様が含まれる。
〔1〕
点光源から電磁波を発する電磁波発生部と、
検査対象物を保持し、回転軸の周りで回転させる回転保持部と、
前記検査対象物を透過した電磁波を検出する検出部と、
前記検査対象物を前記回転軸の周りで回転させた状態で前記検査対象物を透過した電磁波を検出することにより生成された前記検査対象物の回転画像データに基づき、前記検査対象物の異物の軌跡を抽出し、前記軌跡が含まれる円の中心(C2)の座標を算出する軌跡抽出部と、
前記中心(C2)の座標に基づき、前記異物の前記回転軸方向の位置を特定する異物位置特定部と
を備える異物検出装置。
〔2〕
前記回転軸に沿った方向をz軸とし、z軸に垂直な平面をxy面とすると、前記検出部の検出面がxy面に平行に位置する、〔1〕に記載の異物検出装置。
〔3〕
前記点光源と前記回転軸とを含む断面において、前記検出面を含むxy面と前記点光源から下ろした直線との交点(P1)と、前記中心(C2)との間の距離をD2とし、前記点光源から下ろした直線と前記回転軸との間の距離をD1とし、前記点光源と前記異物との間のz軸方向の距離をZ1とし、前記点光源と前記検出面との間のz軸方向の距離をZ2とすると、以下の式1:
Z1/Z2=D1/D2 (式1)
が成立し、
前記異物位置特定部は、前記中心(C2)の座標及び前記交点(P1)の座標に基づき、D2を算出し、
前記異物位置特定部は、算出したD2、D1、及びZ2に基づき、Z1を算出することで、前記異物のz軸方向の位置を特定する、〔2〕に記載の異物検出装置。
〔4〕
回転軸の周りで回転する検査対象物に点光源から電磁波を照射し、前記検査対象物を透過した電磁波を検出部の検出面にて検出して、前記検査対象物の回転画像データを生成する工程と、
前記回転画像データにおいて、前記検査対象物の異物の軌跡を抽出し、前記軌跡が含まれる円の中心(C2)の座標を処理装置の軌跡抽出部により算出する工程と、
前記処理装置の異物位置特定部により、前記中心(C2)の座標に基づき前記異物の前記回転軸方向の位置を特定する工程と
を備えた異物検出方法。
〔5〕
コンピュータを、
検査対象物を回転軸の周りで回転させた状態で、点光源から出て前記検査対象物を透過した電磁波を検出することにより生成された前記検査対象物の回転画像データにおいて、前記検査対象物の異物の軌跡を抽出し、前記軌跡が含まれる円の中心(C2)の座標を算出する軌跡抽出部と、
前記中心(C2)の座標に基づき、前記異物の回転軸方向の位置を特定する異物位置特定部と
して機能させるためのプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る異物検出装置の概略構成図である。
図2】回転保持部の一例の概略構成図である。
図3】検査対象物と検出部との位置関係についての説明図である。
図4】回転する検査対象物中の異物の軌跡についての説明図である。
図5】回転画像についての説明図である。
図6】異物の位置の特定についての説明図である。
図7】異物の位置の特定についての説明図である。
図8】円の中心と半径の計算範囲についての説明図である。
図9】異物検出方法のフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る異物検出装置の検出部の概略構成図である。
図11】第3実施形態における異物の位置の特定についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る異物検出装置10の概略構成図である。本実施形態の異物検出装置10は、回転軸32aの周囲に検査対象物60を回転させながら取得した電磁波画像データ(回転画像データ)に基づき、検査対象物60中の異物の回転軸32a方向の位置(z)を特定するものである。また、異物検出装置10は、当該回転画像データに基づき、異物の回転軸32a方向の位置(z)を特定するとともに、異物の回転軸32aからの半径方向距離(R1)を特定するものである。さらに、異物検出装置10は、当該回転画像データと、検査対象物60を静止させた状態で取得した電磁波画像データ(静止画像データ)とに基づき、検査対象物60中の異物の3次元位置(x,y,z)を特定できる。
【0010】
本発明における検査対象物60には人体は含まれない。検査対象物中の異物には、検査対象物の欠陥、又は検査対象物中の見たい部位なども含まれる。また、検査対象物の形状は捲回状のもの、扇状のもの、板状のもの等どのようなものであってもよいし、検査対象物は固体状、粉体状、又は液体状のものであってもよい。
【0011】
異物検出装置10は、点光源22a(焦点)から電磁波を発する電磁波発生部20と、検査対象物60を保持し回転軸32aの周囲で回転させる回転保持部30と、検査対象物60を透過した電磁波を検出する検出部40と、検出部40が生成する検査対象物60の電磁波画像データ(回転画像データ、又は、回転画像データ及び静止画像データ)に基づき検査対象物60の異物(特徴点)の位置を特定する処理部50(処理装置50ともいう。)とを備える。ここで、検出面40aに平行な面内にそれぞれ直交するx軸、y軸をとり、検出面40aに垂直な方向をz軸とする。検出面40aの位置をz軸のゼロ点(z=0)としてもよいし、点光源22aの位置をz軸のゼロ点としてもよい。
【0012】
電磁波発生部20は、点光源22aから電磁波を発する線源22と、線源22を制御して電磁波の線量、エネルギー及び照射時間等を制御する線源制御部24とを備える。電磁波は、X線、放射線、紫外線、可視光線、又は赤外線であり、検査対象物60の種類に応じて採用される。例えば、検査対象物60がX線を透過させるが、X線よりも波長の長い紫外線や可視光線等を透過させないものである場合、電磁波としてX線を用いるとよい。検査対象物60が赤外線を透過させるが、可視光線等を透過させないものである場合、電磁波は赤外線を用いるとよい。なお、電磁波は、検査対象物60中の異物と、異物ではない他の部分とを識別できる程度にコントラストが生じるよう選択してもよい。
【0013】
回転保持部30は、検査対象物60を保持し、検査対象物60を回転軸32aの周囲で回転させる回転保持機構32と、回転保持機構32の回転方向、回転速度及び回転量等を制御する回転制御部34とを備える。本実施形態において、検査対象物60の回転速度は一定である必要はなく、電磁波画像データ上で異物の軌跡が円弧(円を含む)を描ければよいので、変速的なものであってもよい。また、回転は、360度一回転及び複数回転に限らず、一回転未満(例えば、~45度、~90度、~180度、又は270度など)であってもよい。
【0014】
回転軸32aは、検出部40の検出面40aに対して垂直である。ただし、異物の検出精度の許容量(検出誤差の許容量)を考慮すると、回転軸32aは、検出面40aに対して少し傾斜していてもよい。傾斜してよい角度は、±10度、±9度、±8度、±7度、±6度、±5度、±4度、±3度、±2度、又は±1度である。
【0015】
即ち、本発明における「垂直」の意義としては、回転軸32aと検出面40aとの間の角度が90度である場合(垂直の場合)と、回転軸32aが検出面40aに対して、異物の位置の特定精度の許容量に応じて少し傾斜している場合(略垂直の場合)とが含まれる。後者の場合(略垂直の場合)、回転軸32aと検出面40aとの間の角度は、80~100度、81~99度、82~98度、83~97度、84~96度、85~95度、86~94度、87~93度、88~92度、又は89~91度である。好ましくは、当該角度は、87~93度、88~92度、89~91度、又は90度である。
【0016】
回転保持機構32は、例えば図2に示すような、検査対象物60の片側を把持する機構36、電磁波を透過する材料で形成され、検査対象物60が載置されるステージ37、又は、検査対象物60に設けられた孔部62内から検査対象物60を保持する機構38であってもよい。回転保持機構32はこれらの例に限定されるものではない。
【0017】
検出部40は、検出面40aにおいて電磁波を検出して電気信号に変換するセンサ素子(検出画素)のアレイを備え、検査対象物60を透過してきた電磁波を検出し、検査対象物60の電磁波画像データを処理部50に出力する。電磁波を検出するセンサ素子は、電磁波の種類に応じて選択される。例えば、電磁波がX線の場合は、検出部40は、例えば、フォトダイオードアレイ、CCDエリアイメージセンサ、CMOSエリアイメージセンサ、半導体検出器、又はフラットパネルセンサである。
【0018】
本実施形態の検出部40は、検出面40a(xy面)において、センサ素子が二次元的に配列された二次元検出器である。
【0019】
検出部40と検査対象物60との位置関係について、図3(a)に示すように、検査対象物60の一部を透過する電磁波を検出できるように配置されてよい。また、回転する検査対象物60中の異物の軌跡が検出されればよいので、検出部40は、回転角全て(360度)を捕捉できるサイズのものでなくてもよい。なお、図3(b)に示すように、検査対象物60の全部を透過する電磁波を検出でき、且つ、回転する検査対象物60の回転角全体を捕捉できるものであってもよい。
【0020】
回転する検査対象物60とともに、検査対象物60中の異物62は、検査対象物60の他の部分と識別できるかたちで検出部40により撮像され、その軌跡62aは円弧を描く(図4)。
【0021】
図5(a)に、回転する検査対象物60が検出部40上を通過している間露光を続けた場合の電磁波画像データ(回転画像データ)の例を示し、異物62の軌跡62aは連続的となる。図5(b)に、回転する検査対象物60が検出部40上を通過している間、所定の時間間隔で静止画像データを複数枚取得し、それらを重ね合わせて一枚の電磁波画像データ(回転画像データ)とした例を示し、異物62の軌跡62aは、離散的である。検査対象物60中の異物のz軸位置を特定するためには、連続的な軌跡及び離散的な軌跡のいずれであってもよく、軌跡62aからその中心座標及び半径が求まればよい。
【0022】
図1に記載の構成を備えた異物検出装置10は、検査対象物60中の異物のxy面上の位置(x,y)を特定するために、検査対象物60を静止させた状態で電磁波画像データをさらに取得する。検出部40は、検査対象物60を静止させた状態での電磁波画像データ(静止画像データ)を生成し、処理部50へ出力する。
【0023】
処理部50は、検出部40から電磁波画像データを入力し、各種画像処理を行うコンピュータである。処理部50は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能部として、軌跡抽出部52及び異物位置特定部54を備える。処理部50には、コンピュータを軌跡抽出部52及び異物位置特定部54として機能させるためのプログラムがインストールされている。
【0024】
軌跡抽出部52は、回転画像データに公知の特徴抽出処理を行い、検査対象物60の異物62の軌跡を抽出し、円弧状の軌跡が含まれる円の中心の座標及び半径を算出する。軌跡抽出部52は、検出部40から取得した検査対象物60の回転画像データに対して、必要に応じて、補正処理(コントラスト補正、明るさ補正等)、平滑化処理、ノイズ除去処理、エッジ強調処理、拡大・縮小処理、又は二値化処理などの前処理を行うようにしてもよい。軌跡抽出部52は、ハフ(Hough)変換、Random sample consensus (RANSAC)、遺伝的アルゴリズム(電子情報通信学会論文誌D, Vol.J81-D2, No.6 pp.1233-1241参考)、又は最小外接円探索などの特徴抽出処理を行い、円弧状の軌跡を含む円の中心(画像データ上の回転中心)の座標(x,y,z)及び半径Rを算出する。ここで、検出面40aをz軸のゼロ点(z=0)に設定しておくと、円の中心の座標は(x,y,0)となる。
【0025】
異物位置特定部54は、検査対象物60の回転画像データにおける、軌跡抽出部52で算出した異物62の軌跡が含まれる円の中心の座標(x,y,z)及び半径Rの情報に基づき、検査対象物60の異物62のz軸方向の位置(z)を特定する。また、異物位置特定部54は、異物62のz軸方向の位置(z)とともに、異物62の回転軸32aからの半径方向距離(R1)を特定する。さらに、異物位置特定部54は、当該回転画像データと検査対象物60の静止画像データとに基づき、検査対象物60の異物62のx軸及びy軸方向の位置(x,y)を特定する。このように異物位置特定部54は、回転画像データに基づき、検査対象物60中の異物のz軸方向の位置(z)及び回転軸32aからの半径方向距離(R1)を特定し、さらに回転画像データ及び静止画像データに基づき、異物の3次元位置(x,y,z)を特定する。図6を用いて異物の位置の特定についてさらに説明する。
【0026】
まず、上述したように軌跡抽出部52は、回転画像データにおける円弧状の軌跡が含まれる円の中心C2の座標(x2,y2,z2)と半径R2を算出する(z2は既知の値)(図6(a))。
【0027】
図6(b)は、点光源22aと回転軸32aとを通るxy面に垂直な断面図である(図6(a)のAA線断面図)。円の中心C2は、異物62が位置するxy面と回転軸32aとの交点C1と、点光源22aとを通る直線が、検出面40aを含むxy面と交わる点である。点光源22aと異物62との間のz軸方向の距離をZ1、点光源22aと検出面40aとの間のz軸方向の距離をZ2とする。交点C1と異物62との間のxy面における距離をR1とし、点光源22aと回転軸32aとの間のxy面における距離をD1とする。また、点光源22aから下ろした直線(z軸方向)と検出面40aを含むxy面との交点P1と、円の中心C2との間のxy面における距離をD2とする。
【0028】
距離Z1、Z2、D1、D2、R1及びR2について、幾何の関係から以下の式1及び式2が成立する。
Z1/Z2=D1/D2 (式1)
R1/R2=Z1/Z2 (式2)
【0029】
Z2及びD1の値及び交点P1の座標は、点光源22a、回転軸32a、及び検出面40aの位置関係によるので、異物検出装置10の構成から既知である。また、円の中心C2の座標及びR2は軌跡抽出部52により算出される。
【0030】
異物位置特定部54は、円の中心C2と交点P1との間の距離D2を、円の中心C2の座標と交点P1の座標から算出する。そして、異物位置特定部54は、式1からZ1を算出し、式2からR1を算出する。Z2が既知であるから、異物位置特定部54が算出したZ1から、異物62のz軸方向の座標が求まる。例えば、検出面40aをz軸のゼロ点とすると、異物62のz軸位置はz=Z2-Z1である。そして、検査対象物60の上面(若しくは下面)のz軸位置は既知であり、撮像時に指定するパラメータであるから、上記z(=Z2-Z1)と検査対象物上面(若しくは下面)のz軸位置より検査対象物60の表面から異物62までの深さ方向の距離を計算することができる。
【0031】
また、異物位置特定部54は、算出したR1から、異物62の、回転軸32aからの半径方向距離を特定できる。異物62の、回転軸32aからの半径方向距離R1を特定することは、検査対象物60が例えば巻回体の場合に特に有効である。検査対象物60が芯に巻かれた巻回体である場合、撮像時に巻回体の芯を回転軸32aと平行に設置して回転及び撮像を行うことで、回転軸32aと芯との間の距離は既知であるから、算出したR1から回転軸32aと芯との間の距離を差し引くことで、巻回体における異物の、回転軸32aの半径方向の位置を特定できる。
【0032】
さらに、異物位置特定部54は、異物62のxy面における位置を静止画像データから特定できる。静止画像データ上の異物62aの座標(X,Y)と、その静止した状態での検査対象物60中の実際の異物62の座標(x,y)との間には、以下の関係から求めることができる。
(x,y)=((Z1/Z2)X,(Z1/Z2)Y)
【0033】
なお、異物62の位置が回転軸32aから見て点光源22aのX軸奥側(図面向かって右側)にある場合であっても、上記と同様に、異物位置特定部54は、異物62の位置(z軸位置Z1、回転軸32aからの半径方向距離R1、及び3次元座標(x,y,z))を特定できる(図7)。また、回転軸32aが検出面40aのxy面に対して少し傾斜しており、軌跡62aが厳密には楕円の円弧を描くものであるとして、その弧を円の一部として近似し、その中心を求めることでZ1及びR1の値を求めるようにするとよい。なお、分解能が足りない場合は、楕円でパターンマッチングを行い、検出面40aに対する回転軸32aの傾き角度を求めて後述する第3の実施形態を行う。
【0034】
本実施形態による検査対象物60中の異物の位置の特定手法は、画像処理の計算量を比較的低減できる。例えば、図8(a)に示すように、回転画像データ上における回転中心(円の中心)の位置する範囲は、点光源22aと回転軸32aとの位置関係及び検査対象物60の大きさ(特にZ軸方向の高さ)に応じて所定の範囲に収まる。また、図8(b)に示すように、円の中心から異物62の軌跡62aまでの最小半径及び最大半径は、検出部40の検出面40aのサイズ(XY面の面積)に応じて所定の範囲に収まる。
【0035】
即ち、回転画像データ上における回転中心の位置と半径の値がとりうる範囲は、それぞれ既知である、点光源22aと回転軸32aとの位置関係、検査対象物60のサイズ(特にZ軸方向の高さ)、及び検出面40aのサイズ(XY面の面積)に従い予め予測できる。従って、軌跡抽出部52は、円の中心が位置する領域及び半径の値の計算範囲を所定の範囲に絞って行うことができ、画像処理にともなう計算量を低減できる。
【0036】
図9は、本実施形態の異物検出装置10による異物検出方法のフローチャートである。まず、検査対象物60を回転保持部30に装着する(ステップS1)。検査対象物60を回転軸32aの周囲で回転させながら、電磁波発生部20の点光源22aから電磁波を検査対象物60に照射し、検出部40は、検査対象物60を透過した電磁波を検出して回転画像データを生成し、処理部50に出力する(ステップS2)。また、ステップS2において、検査対象物60を静止させたまま、電磁波発生部20の点光源22aから電磁波を検査対象物60に照射し、検出部40は、検査対象物60を透過した電磁波を検出して静止画像データを生成し、処理部50に出力するプロセスを、回転移動を挟みつつ繰り返す方法をとることもできる。
【0037】
処理部50(又はオペレータ)は、静止画像データ(又は回転画像データ)中において、異物(特徴点)の有無を判定する(ステップS3)。異物の有無の判定は、ステップS2で生成した静止画像データと、異物に関する特徴点が存在しない基準画像データとの比較により判定するものであってもよいし、他の公知の特徴点抽出処理による判定手法によるものであってもよい。又は、オペレータによる目視判定であってもよい。異物がないと判定されると(ステップS3のNo)、異物検査は終了となる。
【0038】
異物が有ると判定される場合(ステップS3のYes)、軌跡抽出部52は、回転画像データにおける異物の円弧状の軌跡が含まれる円の中心の座標及び半径を算出する(ステップS4)。異物位置特定部54は、軌跡抽出部52が算出した円の中心の座標及び半径、並びに既知のパラメータ(Z2、D1)に基づき、上記式1及び式2から異物のz軸方向の位置(Z1)及び回転軸32aからの半径方向距離(R1)を算出する。また、異物位置特定部54は、静止画像データより異物のx軸及びy軸位置を特定することで、異物の3次元位置(x,y,z)を特定する(ステップS5)。
【0039】
このように、本実施形態に係る異物特定装置及び異物特定方法は、検査対象物中の異物の位置を特定する新たな手法を提供する。
【0040】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態の異物検出装置10は、検出部40に、二次元検出器ではなく、一次元検出器42a~42cを複数用いた構成を有する。また、本実施形態の処理部50は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能部として画像生成部56をさらに備える。画像生成部56は、一次元検出器42a~42cから出力される電磁波画像データに基づき、回転画像データ及び静止画像データを生成する。その他は第1実施形態と同様であり説明を省略する。
【0041】
図10は、3つの一次元検出器42a~42cを備えた検出部40の概略構成を示す。なお、一次元検出器の数はこれに限定されず、軌跡抽出部52が円弧を認識できるように回転画像データを生成できる程度に十分な数であればよい。一次元検出器42a~42cそれぞれの検出面は同一のxy平面上にある。
【0042】
処理部50の画像生成部56は、一次元検出器42a~42cからそれぞれ一次元の検出データを取得する。画像生成部56は、一次元検出器42a~42cの実際の配置位置構成を保ったままあたかも二次元検出器により電磁波画像データが生成されるように、一次元検出器42a~42cからのデータが存在しない部分については仮のデータを有する電磁波画像データ(回転画像データ)を生成する(図10(c))。仮のデータは、例えば、異物を黒色とすると白色のデータとするものである。そして、軌跡抽出部52は、画像生成部56により生成された回転画像データに基づき、前述の軌跡抽出処理を行う。
【0043】
また、画像生成部56は、一次元検出器42a~42cにより生成された電磁波画像データと、回転制御部34から取得した検査対象物60の回転角度情報とを関連付けて内部メモリ等に記憶させておく。例えば、一次元検出器42a~42cのいずれかで異物が検出される回転角度にて、検査対象物60の静止画像データが生成される。
【0044】
そして、前述のように、異物位置特定部54は、軌跡抽出部52による算出結果に基づき異物のz軸位置を特定し、回転角度に関連した静止画像データに基づき異物のx軸位置及びy軸位置を特定する。
【0045】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態の異物検出装置は、回転軸32aが検出面40aに対して垂直に構成されたものではなく、回転軸32aが検出面40aに対して既知の方向に既知の角度(例えば10度超)傾いた構成を備える。なお、本実施形態では、検出部40は二次元検出器である。
【0046】
第1実施形態では、検出部40により生成された回転画像データ及び静止画像データに基づき異物の位置を特定するものである。他方、本実施形態では、検出面40aから離れて回転軸32aに垂直な射影面を仮定し、検出面40aで検出された電磁波画像データを射影面に投影し、射影面上の疑似画素の回転画像データ及び静止画像データに基づき、処理部50において異物の特定が行われる。以下詳述する。
【0047】
図11は、点光源22aと回転軸32aを通るzx面の断面図であり、回転軸32aが所定の角度(例えば10度超)傾いた構成を表す。そのような撮像が成された場合における事前の画像処理方法の例を示す。回転軸32aに垂直な面を射影面とする。回転軸32aと射影面との交点をP10とし、点光源22aから射影面に下ろした直線(z’方向)と射影面との交点をP11とする。計算を容易にするために、xyz軸の実空間(x,y,z)の原点及びx’y’z’軸の射影空間(x’,y’,z’)の原点を点光源22aの位置にとる。射影空間のz’軸は回転軸32aと平行であり、射影空間のx’y’面は回転軸32aと垂直である。
【0048】
回転軸32aの傾きとその方向は既知であるので、実空間(x,y,z)と射影空間(x’,y’,z’)との間の変換行列は、R(φ,θ,ψ)であり、以下のようになる(φ、θ、ψは二つの座標系を変換するオイラー角である)。
【0049】
射影面上に、検出部40と同じ大きさ及び数の疑似画素があると仮定する。疑似画素の座標を、射影前の空間(xyz空間)で表現したものを(x,y,z)とし、同じ座標を射影後の空間(x’y’z’空間)で表現したものを(x’,y’,z’)とすると、以下の座標変換が成り立つ。ここで、インデックスiはi番目の画素を表し、i=1~全画素数の整数である。
(x,y,z)=(x’,y’,z’)R(φ,θ,ψ) (式3)
【0050】
点光源22aと検出面40aとの間の距離をtとすると、i番目の疑似画素と、点光源22aを結んだ直線が検出面40aに交わる点(本項にて「交点」と呼ぶ)は、(xt/z,yt/z,t)となる。検出器上の各画素に対し、その近傍にある交点(例えば4つ)を探索する。k番目の検出画素(x,y,t)近傍にある当該交点(xt/z,yt/z,t)を探索する。各画素のサイズをΔx、Δyとして、x-Δx<x<x+Δx、y-Δy<y<y+Δyの範囲にある交点(xt/z,yt/z,t)を探索し、見つかった交点とk番目の検出画素とを紐づけする。
【0051】
各i番目の疑似画素に対し、紐づけした検出画素の画素値を重みを掛けて足し合わせ、その値に傾きと拡大率変化分を補正したものを疑似画素の画素値とする。重みのかけ方の例として、それぞれの画素(x,y)の実測画素値v(x,y)を、近傍の点(xt/z,yt/z,t)の距離dkiに応じて配分する。例えば、点(xt/z,yt/z,t)には、画素(x,y)から、以下の式4の寄与が足し合わされる:
v(x,y)×(dki/Σ kj) (式4)
【0052】
i番目疑似画素の画素値に対する傾きと拡大率変化分の補正は、以下のとおりとなる(疑似画素と測定画素を同じサイズにした場合)。
(t/zi)cosα (式5)
ここで、αは回転軸32aと検出面40aの垂線とのなす角度である。
【0053】
この疑似画素が、第1実施形態の検出面40a上の画素と同じ役割を持つため、第1実施形態と同じ計算により、検査対象物60の回転画像データと静止画像データから検査対象物60中の異物62の位置(x‘,y’,z‘)が特定される。撮像の座標系(xyz)で表現するには、式3に示すように回転行列R(φ,θ,ψ)を右から作用させればよい。
【0054】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態は、検査対象物60を回転軸32aの周囲に回転させる第1実施形態とは異なり、電磁波発生部20と検出部40との相対的な位置関係を固定させたまま、電磁波発生部20と検出部40を回転軸32aの周囲に回転させる構成である。即ち、検査対象物60は回転保持部30に固定されたまま静止している状態で、電磁波発生部20と検出部40とを回転軸32aの周囲で回転させるものである。
【0055】
本実施形態の構成により取得される電磁波画像データ(回転画像データ及び静止画像データ)は、第1実施形態において取得される電磁波画像データと同じであるから、第1実施形態と同じ手法により、異物の位置が特定される。検査対象物60が例えば粉体や液体を内容物とするものであって回転させると当該内容物の配置が変化するようなものを測定する場合に、本実施形態の構成は有利に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 異物検出装置
20 電磁波発生部
22 線源
22a 点光源
24 線源制御部
30 回転保持部
32 回転保持機構
32a 回転軸
34 回転制御部
40 検出部
40a 検出面
50 処理部(処理装置)
52 軌跡抽出部
54 異物位置特定部
56 画像生成部
60 検査対象物
62 異物
62a 異物の軌跡


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11