(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134374
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】火災監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033458
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 学
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AA03
5G405AA06
5G405AB05
5G405AD06
5G405BA01
5G405BA07
5G405CA19
5G405CA23
5G405FA26
(57)【要約】
【課題】工作機械の火災を局所的に監視することを可能にする。
【解決手段】炎感知器21は、工作機械4に取り付けられ、炎を感知すると作動信号を出力する。無線式警報盤子機22は、工作機械4に取り付けられ、炎感知器21から作動信号を受信すると火災信号を出力する。無線式警報盤親機31は、工作機械4から離れた場所に設置され、無線式警報盤子機22から火災信号を受信すると警報音を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式の工作機械の火災を監視するためのシステムであって、
前記工作機械に取り付けられ、炎を感知すると作動信号を送信する炎感知器と、
前記工作機械に取り付けられる警報盤子機であって、前記炎感知器と有線で接続されて、前記炎感知器から作動信号を受信すると火災信号を送信する警報盤子機と、
前記工作機械から離れた場所に設置される警報盤親機であって、前記警報盤子機と無線で接続されて、前記警報盤子機から火災信号を受信すると警報音を出力する警報盤親機と
を備える火災監視システム。
【請求項2】
前記工作機械は、一対の走行レールに沿って走行しながら、当該一対の走行レール間に配置された材料を加工するための装置であることを特徴とする、請求項1に記載の火災監視システム。
【請求項3】
前記炎感知器は、前記工作機械の加工点を監視対象とせず、前記工作機械で使用される油剤を通すための管または前記工作機械により切削された切りくずが排出される経路を監視対象とするように、前記工作機械に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の火災監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の火災を監視するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場内で発生する火災を感知して報知するための設備として、自動火災報知設備が使用されている(例えば、特許文献1参照)。この自動火災報知設備は、一般に、煙感知器、発信機、受信機および地区音響装置により構成されている。これらの構成要素のうち、煙感知器は、工場の天井面に設置されて、煙を感知すると、火災信号を受信機に出力する。発信機は、工場の壁面に設置されて、火災を発見した人により操作されると、火災信号を受信機に出力する。受信機は、防災センタに設置されて、煙感知器または発信機から火災信号を受信すると、工場の壁面に設置された地区音響装置を鳴動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場内に設置された工作機械において火災が発生すると、その煙は上昇して天井面に到達する。天井面に到達した煙はそのまま天井面に沿って流れ、やがて煙感知器により感知される。煙を感知した煙感知器は火災信号を受信機に出力し、この火災信号を受信した受信機は地区音響装置を鳴動させる。その結果、工場内の作業者は、その火災に気付くことができる。
【0005】
しかし、従来の火災検出方法では、工作機械から出火し、その煙が天井面の煙感知器に感知されるまでは、その火災に気付くことができなかった。そのため、火災の発見が遅れてしまい、出火した工作機械が使用不能となることがあった。工作機械には高価なものが多く、使用不能となる前に火災を検出したいというニーズが従来からあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、工作機械の火災を局所的に監視することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る火災監視システムは、移動式の工作機械の火災を監視するためのシステムであって、前記工作機械に取り付けられ、炎を感知すると作動信号を出力する炎感知器と、前記工作機械に取り付けられる警報盤子機であって、前記炎感知器と有線で接続されて、前記炎感知器から作動信号を受信すると火災信号を出力する警報盤子機と、前記工作機械から離れた場所に設置される警報盤親機であって、前記警報盤子機と無線で接続されて、前記警報盤子機から火災信号を受信すると警報音を出力する警報盤親機とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工作機械の火災を局所的に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】火災監視システム1の設置方法の一例を示す図
【
図4】火災監視システム1の動作を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.構成
本発明の一実施形態に係る火災監視システム1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る火災監視システム1は、工場内の工作機械の火災を監視するためのシステムであり、特に、移動式の工作機械の火災を監視するためのシステムである。ここで、移動式の工作機械とは、具体的には、レーザー切断装置である。本火災監視システム1は、後述するように火災検知ユニット2を備え、この火災検知ユニット2は工作機械に直接取り付けられる。そのため、この火災監視システム1によれば、工作機械の火災を局所的に監視することができる。
【0011】
図1は、この火災監視システム1の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この火災監視システム1は、大略、複数の火災検知ユニット2と、火災報知ユニット3を備えている。以下、各ユニットについて説明する。
【0012】
火災検知ユニット2は、工作機械に取り付けられ、その工作機械の火災を検知すると、火災信号を無線で火災報知ユニット3に送信する。この火災検知ユニット2は、
図1に示すように、複数の炎感知器21、無線式警報盤子機22およびAC電源23により構成されている。以下、各構成要素について説明する。
【0013】
炎感知器21は、無線式警報盤子機22と有線で接続されており、炎を感知すると、無線式警報盤子機22に作動信号を送信する。
【0014】
無線式警報盤子機22は、AC電源23と有線で接続されており、AC電源23から電力の供給を受ける。加えて、この無線式警報盤子機22は、AC電源23から供給される電力を炎感知器21に供給する。また、この無線式警報盤子機22は、後述する火災報知ユニット3の無線式警報盤親機31と無線で接続されており、炎感知器21から作動信号を受信すると、無線式警報盤親機31に火災信号を送信する。
【0015】
次に、火災報知ユニット3について説明する。
火災報知ユニット3は、工作機械から離れた場所に設置され、火災検知ユニット2から火災信号を受信すると、工場内の作業者に火災の発生を報知する。この火災報知ユニット3は、
図1に示すように、無線式警報盤親機31、火災受信機32およびAC電源33により構成されている。以下、各構成要素について説明する。
【0016】
無線式警報盤親機31は、工場内の壁面に設置される。この無線式警報盤親機31は、AC電源33と有線で接続されており、AC電源33から電力の供給を受ける。加えて、この無線式警報盤親機31は、AC電源33から供給される電力を火災受信機32に供給する。また、この無線式警報盤親機31は、無線式警報盤子機22から火災信号を受信すると、警報音を出力し、盤面の火災灯を点灯させる。その結果、工場内の作業者は、火災の発生に気付くことができる。また、この無線式警報盤親機31は、火災受信機32と有線で接続されており、無線式警報盤子機22から火災信号を受信すると、火災が発生したことを通知する移報信号を火災受信機32に送信する。
【0017】
火災受信機32は、工場の防災センタに設置される。この火災受信機32は、無線式警報盤親機31から移報信号を受信すると、警報音を出力し、盤面の火災灯を点灯させる。その結果、センタ要員は、火災の発生に気付くことができる。また、この火災受信機32は、図示せぬ通信網を介して外部装置と接続されており、無線式警報盤親機31から移報信号を受信すると、火災が発生したことを通知する移報信号をその外部装置に送信する。
【0018】
次に、火災監視システム1の設置方法について説明する。
図2は、火災監視システム1の設置方法の一例を示す図である。
【0019】
同図に示す設置方法では、火災検知ユニット2は、工作機械4に取り付けられている。より具体的には、炎感知器21、無線式警報盤子機22およびAC電源23が工作機械4に取り付けられている。
【0020】
ここで、火災検知ユニット2が取り付けられている工作機械4は、具体的には、レーザー切断装置である。より具体的には、一対の走行レールRに沿って走行しながら、走行レールR間に配置された被切断材Mを切断するための装置である。この工作機械4に取り付けられた火災検知ユニット2は、この工作機械4とともに移動し、この工作機械4の火災を常時監視する。
【0021】
一方、火災報知ユニット3については、無線式警報盤親機31とAC電源33が、工場の壁面Wに取り付けられている。無線式警報盤親機31は、上記の通り、無線式警報盤子機22と無線で接続されており、無線式警報盤子機22から火災信号を受信する。一方、火災受信機32については、図示せぬ防災センタに設置される。火災受信機32は、上記の通り、無線式警報盤親機31と有線で接続されており、無線式警報盤親機31から移報信号を受信する。
【0022】
次に、炎感知器21の設置方法についてより具体的に説明する。
図3は、炎感知器21の設置方法の一例を示す図である。
【0023】
同図に示す設置方法では、炎感知器21は、上述した工作機械4に取り付けられている。この炎感知器21が取り付けられている工作機械4は、一対の走行レールRに沿って走行する台車41と、一対の走行レールRと直交するように台車41の正面に配置された一対の横行レール42と、一対の横行レール42に沿って横行する横行キャリッジ43と、横行キャリッジ43に搭載されたトーチ44と、台車41に載置された制御装置45とを備えている。この工作機械4は、一対の走行レールRに沿って走行しながら、走行レールR間に配置された被切断材Mをトーチ44で切断する。その際、工作機械4の台車41の走行速度と横行キャリッジ43の走行速度および走行方向は、制御装置45により制御される。
【0024】
炎感知器21は、この工作機械4の制御装置45の筐体に、自在金具5を介して取り付けられている。この炎感知器21は、工作機械4に接続されるホースのうち、特にホースHをその監視対象としている。この監視対象とされているホースHは、工作機械4に潤滑油を供給するための管である。このホースHは樹脂製であり、経年劣化すると油漏れが発生する。このホースHから漏れた油に、被切断材Mから飛散する火花が引火すると、火災が発生してしまう。そのため、炎感知器21は、このホースHを監視対象としている。
【0025】
なお、炎感知器21は、トーチ44の先端(言い換えると、加工点)を監視対象に含めないように取り付けられている。これは、被切断材Mから飛散する火花を火災として誤検出することを防止するためである。また、炎感知器21は、下向きに取り付けられている。これは、炎感知器21の受光窓カバーに埃が蓄積するのを防ぐためである。
【0026】
なお、
図3に示す設置方法では、1台の炎感知器21のみが工作機械4に取り付けられているが、工作機械4に複数の監視対象が存在する場合には、複数の炎感知器21を工作機械4に取り付けてもよい。
【0027】
1-2.動作
火災監視システム1の動作について説明する。
図4は、この火災監視システム1の動作を示すシーケンス図である。
【0028】
同図に示す動作では、工作機械に取り付けられた炎感知器21は、その工作機械から出火して炎を感知すると(ステップS1)、無線式警報盤子機22に作動信号を送信する(ステップS2)。無線式警報盤子機22は、炎感知器21から送信された作動信号を受信すると、無線式警報盤親機31に火災信号を送信する(ステップS3)。無線式警報盤親機31は、無線式警報盤子機22から送信された火災信号を受信すると、警報音を出力し、盤面の火災灯を点灯させる(ステップS4)。その結果、工場内の作業者は、火災の発生に気付くことができる。加えて、無線式警報盤親機31は、火災が発生したことを通知する移報信号を火災受信機32に送信する(ステップS5)。火災受信機32は、無線式警報盤親機31から送信された移報信号を受信すると、警報音を出力し、盤面の火災灯を点灯させる(ステップS6)。その結果、センタ要員は、火災の発生に気付くことができる。加えて、火災受信機32は、火災が発生したことを通知する移報信号を、図示せぬ通信網を介して外部装置に送信する(ステップS7)。
以上が、火災監視システム1の動作についての説明である。
【0029】
以上説明した火災監視システム1では、炎感知器21が、監視対象である工作機械に直接取り付けられる。そのため、天井面に設置された煙感知器のみを用いて火災を検出する場合と比較して、工作機械の火災を早期に検出することができる。
【0030】
また、この火災監視システム1では、無線式警報盤子機22と無線式警報盤親機31が無線で通信を行う。そのため、有線で通信を行う場合と比較して、配線が不要となる。この利点は、特に、造船所等で使用される、長いレール上を走行するレーザー切断装置において顕著である。なぜなら、長いレール上を走行するレーザー切断装置にとって、配線は走行の妨げとなるからである。
【0031】
また、この火災監視システム1では、無線式警報盤子機22から無線式警報盤親機31に対して火災信号が送信され、無線式警報盤親機31において警報音の出力と火災灯の点灯が行われる。そのため、工作機械から離れた場所にいる作業者に火災の発生を知らせることができる。
【0032】
また、この火災監視システム1では、無線式警報盤親機31に対して複数の無線式警報盤子機22が接続可能となっている。そのため、1台の無線式警報盤親機31で複数の工作機械を一元的に監視することができる。
【0033】
2.変形例
上記の実施形態は以下のように変形してもよい。以下に記載する変形例は互いに組み合わせてもよい。
【0034】
2-1.変形例1
炎感知器21は、レーザー切断装置以外の移動式の工作機械に取り付けられてもよい。ここで想定している移動式の工作機械とは、移動しながら材料を加工するための工作機械である。例えば、炎感知器21は、ガス切断装置、プラズマ切断装置または切削加工機に取り付けられてもよい。
【0035】
炎感知器21を切削加工機に取り付ける場合、加工点を監視対象とせずに、切削加工機で使用される切削油剤を通すための管を監視対象とするように、炎感知器21を取り付けてもよい。そのように炎感知器21を取り付ける理由は、加工点に切削油剤が十分に供給されず加工点温度が上昇した場合に、その管から漏れ出た切削油剤に引火して火災が発生するおそれがあるからである。また別の例として、炎感知器21を、切削加工機により切削された切りくずが排出される経路を監視対象とするように取り付けてもよい。そのように炎感知器21を取り付ける理由は、加工点に切削油剤が十分に供給されず加工点温度が上昇した場合に、切りくずが発火して火災が発生するおそれがあるからである。
【0036】
また、炎感知器21は、移動式ではない固定式の工作機械に取り付けられてもよい。
【0037】
2-2.変形例2
無線式警報盤親機31は、工場内の壁面以外の場所に設置されてもよい。例えば、工場外であって、工場の管理者が常駐する施設に設置されてもよい。
【0038】
2-3.変形例3
無線式警報盤子機22は、炎感知器21から作動信号を受信した際に、警報音を出力し、盤面の火災灯を点灯させるようにしてもよい。このように動作させることで、工場内に複数の監視対象となる工作機械が存在する場合に、火元の工作機械の識別が容易になる。
【0039】
2-4.変形例4
炎感知器21と無線式警報盤子機22は、AC電源23に代えて、監視対象の工作機械の電源から電力の供給を受けてもよい。
【0040】
2-5.変形例5
無線式警報盤子機22と無線式警報盤親機31の距離が遠く、十分な電波強度が得られない場合には、無線式警報盤子機22と無線式警報盤親機31の間に無線式リピータを設置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…火災監視システム、2…火災検知ユニット、3…火災報知ユニット、4…工作機械、5…自在金具、21…炎感知器、22…無線式警報盤子機、23…AC電源、31…無線式警報盤親機、32…火災受信機、41…台車、42…横行レール、43…横行キャリッジ、44…トーチ、45…制御装置