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特開2022-134384マイクロチャネルプレート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134384
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】マイクロチャネルプレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 43/24 20060101AFI20220908BHJP
   H01J 9/12 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01J43/24
H01J9/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033476
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】佐川 啓
【テーマコード(参考)】
5C038
【Fターム(参考)】
5C038BB06
(57)【要約】
【課題】入射光がチャネルの内壁面に衝突する非直線形のチャネルを有するモノリシック型のマイクロチャネルプレートを提供する。また、当該マイクロチャネルプレートの製造方法を提供する。
【解決手段】単結晶シリコンからなり、対向する第1の主面12a及び第2の主面12bを有するモノリシック型のマイクロチャネルプレート10であって、前記第1の主面12aと前記第2の主面12bの間を貫通している複数のチャネル12を有し、前記チャネル12の中心軸は、非直線形である、マイクロチャネルプレート10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンからなり、対向する第1の主面及び第2の主面を有するモノリシック型のマイクロチャネルプレートであって、
前記第1の主面と前記第2の主面の間を貫通している複数のチャネルを有し、
前記チャネルの中心軸は、非直線形である、マイクロチャネルプレート。
【請求項2】
前記チャネルのチャネル径は、0.1~50μmであり、
前記マイクロチャネルプレートの厚さは、50~1000μmである、請求項1に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項3】
前記チャネルの中心軸が曲線形である、請求項1又は2に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項4】
前記第1の主面における前記チャネルの中心と前記第2の主面における前記チャネルの中心との間の前記第1の主面の面内方向の距離が、前記チャネルのチャネル径以上、且つ前記チャネルのチャネル径の3倍以下である、請求項3に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項5】
前記チャネルは、前記第1の主面の法線方向に分割された第1の部分及び第2の部分を有する、請求項1又は2に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項6】
前記第1の部分の延伸方向は、前記第2の部分の延伸方向と異なる、請求項5に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項7】
前記第1の主面の法線方向における、前記第1の部分の長さは、前記第2の部分の長さより短い、請求項5又は6に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項8】
前記第1の部分の端部の一方は、前記第2の部分の端部の一方と接続しており、
前記第1の部分の端部の他方は、前記第1の主面に表出し、
前記第2の部分の端部の他方は、前記第2の主面に表出している、請求項5~7のいずれか1項に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項9】
前記チャネルの第1の主面から法線方向に1~10μmの部分において、前記第1の部分の端部の一方が前記第2の部分の端部の一方と接続している、請求項8に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項10】
前記第2の部分における前記第2の主面に対する垂直軸を始線とし、反時計回りを正の向き、時計回りを負の向きとしたとき、
前記第1の部分の第1のバイアス角及び前記第2の部分の第2のバイアス角はそれぞれ-20~20°であり、
前記第1のバイアス角と前記第2のバイアス角との差は、5~20°である、請求項5~9のいずれか1項に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項11】
前記チャネルの中心軸が第1の主面の法線を中心に螺旋状である、請求項1又は2に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項12】
前記中心軸が螺旋状のチャネルにおける螺旋の半径は、前記チャネルのチャネル径以上、且つ、前記チャネルのチャネル径の2倍以下である、請求項11に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項13】
前記チャネルの第1の主面の面内方向において、前記螺旋状のチャネルにおける螺旋は、30°以上回転している、請求項11又は12に記載のマイクロチャネルプレート。
【請求項14】
対向する第1の主面及び第2の主面を有する、単結晶シリコンからなる基材を用意し、
前記第1の主面をエッチングして複数の第1の溝を形成し、
前記第2の主面をエッチングして複数の第2の溝を形成し、
前記第1の溝の底部と前記第2の溝の底部と接続することにより、前記第1の主面と前記第2の主面の間を貫通する複数のチャネルを形成する、マイクロチャネルプレートの製造方法。
【請求項15】
前記第1の溝の延伸方向は、前記第2の溝の延伸方向と異なる、請求項14に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【請求項16】
前記第2の溝を形成した後に前記第1の溝を形成し、
前記第1の主面の法線方向における、前記第1の溝の長さは、前記第2の溝の長さより短い、請求項14又は15に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【請求項17】
対向する第1の主面及び第2の主面を有する、単結晶シリコンからなる基材を用意し、
前記第1の主面をエッチングして前記第2の主面まで貫通する複数のチャネルを形成し、
前記チャネルの中心軸は非直線形であり、
前記複数のチャネルを形成する際、前記第1の主面と前記第2の主面の間において前記チャネルとなる溝の中心軸の延伸方向が変化する、マイクロチャネルプレートの製造方法。
【請求項18】
前記エッチングは、メタルアシストケミカルエッチングである、請求項17に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【請求項19】
前記チャネルの中心軸が曲線形である、請求項17又は18に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【請求項20】
前記チャネルの中心軸が第1の主面の法線を中心に螺旋状である、請求項17又は18に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、マイクロチャネルプレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチャネルプレート(MCP:micro-channel plateともいう)は、電子線等の強度増加のために検出器等の光分析装置に搭載されている。MCPでは、入射光がチャネルの内壁面に備えられた光電物質に衝突し、光電物質から光電子が放出される。MCPに印加された電界によって放出された光電子が加速されてチャネルの内壁面に衝突することにより二次電子が生成される。生成された二次電子がさらにチャネルの内壁面に衝突することにより光電子が雪崩的に増幅される。
【0003】
仮にチャネルの軸方向と入射光の入射方向とが一致したとき、入射光はチャネルの内壁面に衝突することがないため、光電子を雪崩的に増幅させることができない。入射光がチャネルの内壁面に衝突させ、光電子を雪崩的に増幅させるために様々な対策が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、マイクロチャネルプレート(MCP)を3枚用いた3段構成のMCP組立体が記載されており、MCP組立体の1段目のMCPは検出体を捕獲して2段目のMCPに送り込むことを目的とし、2段目及び3段目のMCPは、MCP組立体全面で十分な電荷量まで二次電子数を増倍させることを目的としている。
【0005】
また、特許文献2には、一枚または複数枚重ねられたMCPの両表面を環状の入力側電極と、出力側電極とで挟み込み、一体に固定したMCP組立体が記載されており、MCP組立体において、入力側電極および出力側電極はともに、内縁側にMCP表面に接触し、これを固定する略環状の当接面を有しており、入力側電極、出力側電極の少なくとも一方の当接面の外周にMCP表面から離隔する方向に後退している離隔表面を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-129362号公報
【特許文献2】特開2009-218001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チャネルの軸方向と入射光の入射方向とが一致したときに、入射光がチャネルの内壁面に衝突することがなく、通り抜けることを避けるために、MCPを複数枚用いて入射光をチャネルの内壁面に衝突させ、光電子を雪崩的に増幅させている。しかしながら、MCPは高価であり、MCPを複数枚用いると製造コストが増加してしまう。
【0008】
上記の問題を鑑み、本実施形態の一態様は、入射光がチャネルの内壁面に衝突する非直線形のチャネルを有するモノリシック型のマイクロチャネルプレートを提供する。また、本実施形態の他の一態様は、当該マイクロチャネルプレートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態は、エッチング等によりチャネルを形成することにより、非直線形であるチャネルを有する、単体であるモノリシック型のマイクロチャネルプレートを得ることができる。実施形態の一態様は以下のとおりである。
【0010】
本実施形態の一態様は、単結晶シリコンからなり、対向する第1の主面及び第2の主面を有するモノリシック型のマイクロチャネルプレートであって、前記第1の主面と前記第2の主面の間を貫通している複数のチャネルを有し、前記チャネルの中心軸は、非直線形である、マイクロチャネルプレート。
である。
【0011】
また、本実施形態の他の一態様は、対向する第1の主面及び第2の主面を有する、単結晶シリコンからなる基材を用意し、前記第1の主面をエッチングして複数の第1の溝を形成し、前記第2の主面をエッチングして複数の第2の溝を形成し、前記第1の溝の底部と前記第2の溝の底部と接続することにより、前記第1の主面と前記第2の主面の間を貫通する複数のチャネルを形成する、マイクロチャネルプレートの製造方法である。
【0012】
また、本実施形態の他の一態様は、対向する第1の主面及び第2の主面を有する、単結晶シリコンからなる基材を用意し、前記第1の主面をエッチングして前記第2の主面まで貫通する複数のチャネルを形成し、前記チャネルの中心軸は非直線形であり、前記複数のチャネルを形成する際、前記第1の主面と前記第2の主面の間において前記チャネルとなる溝の中心軸の延伸方向が変化する、マイクロチャネルプレートの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、チャネルが非直線形であるモノリシック型のマイクロチャネルプレートを提供することができる。また、当該マイクロチャネルプレートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係るマイクロチャネルプレートを説明する斜視図である。
図2図2は、図1のマイクロチャネルプレート中のチャネルの部分断面図である。
図3図3は、本実施形態に係るマイクロチャネルプレートの変形例1のチャネルの部分断面図である。
図4図4は、本実施形態に係るマイクロチャネルプレートの変形例2の平面図である。
図5図5は、図4のマイクロチャネルプレート中のチャネルの部分断面図である。
図6図6は、図1のマイクロチャネルプレートの製造方法を説明する部分断面図である(その1)。
図7図7は、図1のマイクロチャネルプレートの製造方法を説明する部分断面図である(その2)。
図8図8は、図1のマイクロチャネルプレートの製造方法を説明する部分断面図である(その3)。
図9図9は、図3のマイクロチャネルプレートの製造方法を説明する部分断面図である(その1)。
図10図10は、図3のマイクロチャネルプレートの製造方法を説明する部分断面図である(その2)。
図11図11は、図3のマイクロチャネルプレートの製造方法を説明する部分断面図である(その3)。
図12図12は、図3のマイクロチャネルプレートの製造方法を説明する部分断面図である(その4)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
具体的な本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0018】
<1> 単結晶シリコンからなり、対向する第1の主面及び第2の主面を有するモノリシック型のマイクロチャネルプレートであって、前記第1の主面と前記第2の主面の間を貫通している複数のチャネルを有し、前記チャネルの中心軸は、非直線形である、マイクロチャネルプレート。
【0019】
<2> 前記チャネルのチャネル径は、0.1~50μmであり、前記マイクロチャネルプレートの厚さは、50~1000μmである、<1>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0020】
<3> 前記チャネルの中心軸が曲線形である、<1>又は<2>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0021】
<4> 前記第1の主面における前記チャネルの中心と前記第2の主面における前記チャネルの中心との間の前記第1の主面の面内方向の距離が、前記チャネルのチャネル径以上、且つ前記チャネルのチャネル径の3倍以下である、<3>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0022】
<5> 前記チャネルは、前記第1の主面の法線方向に分割された第1の部分及び第2の部分を有する、<1>又は<2>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0023】
<6> 前記第1の部分の延伸方向は、前記第2の部分の延伸方向と異なる、<5>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0024】
<7> 前記第1の主面の法線方向における、前記第1の部分の長さは、前記第2の部分の長さより短い、<5>又は<6>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0025】
<8> 前記第1の部分の端部の一方は、前記第2の部分の端部の一方と接続しており、前記第1の部分の端部の他方は、前記第1の主面に表出し、前記第2の部分の端部の他方は、前記第2の主面に表出している、<5>~<7>のいずれか1項に記載のマイクロチャネルプレート。
【0026】
<9> 前記チャネルの第1の主面から法線方向に1~10μmの部分において、前記第1の部分の端部の一方が前記第2の部分の端部の一方と接続している、<5>~<8>のいずれか1項に記載のマイクロチャネルプレート。
【0027】
<10> 前記第2の部分における前記第2の主面に対する垂直軸を始線とし、反時計回りを正の向き、時計回りを負の向きとしたとき、前記第1の部分の第1のバイアス角及び前記第2の部分の第2のバイアス角はそれぞれ-20~20°であり、前記第1のバイアス角と前記第2のバイアス角との差は、5~20°である、<5>~<9>のいずれか1項に記載のマイクロチャネルプレート。
【0028】
<11> 前記チャネルの中心軸が第1の主面の法線を中心に螺旋状である、<1>又は<2>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0029】
<12> 前記中心軸が螺旋状のチャネルにおける螺旋の半径は、前記チャネルのチャネル径以上、且つ前記チャネルのチャネル径の2倍以下である、<11>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0030】
<13> 前記チャネルの第1の主面の面内方向において、前記螺旋状のチャネルにおける螺旋は、30°以上回転している、<11>又は<12>に記載のマイクロチャネルプレート。
【0031】
<14> 対向する第1の主面及び第2の主面を有する、単結晶シリコンからなる基材を用意し、前記第1の主面をエッチングして複数の第1の溝を形成し、前記第2の主面をエッチングして複数の第2の溝を形成し、前記第1の溝の底部と前記第2の溝の底部と接続することにより、前記第1の主面と前記第2の主面の間を貫通する複数のチャネルを形成する、マイクロチャネルプレートの製造方法。
【0032】
<15> 前記第1の溝の延伸方向は、前記第2の溝の延伸方向と異なる、<14>に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【0033】
<16> 前記第2の溝を形成した後に前記第1の溝を形成し、前記第1の主面の法線方向における、前記第1の溝の長さは、前記第2の溝の長さより短い、<14>又は<15>に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【0034】
<17> 対向する第1の主面及び第2の主面を有する、単結晶シリコンからなる基材を用意し、前記第1の主面をエッチングして前記第2の主面まで貫通する複数のチャネルを形成し、前記チャネルの中心軸は非直線形であり、前記複数のチャネルを形成する際、前記第1の主面と前記第2の主面の間において前記チャネルとなる溝の中心軸の延伸方向が変化する、マイクロチャネルプレートの製造方法。
【0035】
<18> 前記エッチングは、メタルアシストケミカルエッチングである、<17>に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【0036】
<19> 前記チャネルの中心軸が曲線形である、<17>又は<18>に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【0037】
<20> 前記チャネルの中心軸が第1の主面の法線を中心に螺旋状である、<17>又は<18>に記載のマイクロチャネルプレートの製造方法。
【0038】
<マイクロチャネルプレート>
本実施形態に係るマイクロチャネルプレートについて図面を用いて説明する。
【0039】
図1は、マイクロチャネルプレート10を説明する斜視図である。図2は、図1のマイクロチャネルプレート10中のチャネル12の部分断面図である。マイクロチャネルプレート10は、単結晶シリコンからなり、対向する第1の主面12a及び第2の主面12bを有する円柱状の構造体である。マイクロチャネルプレート10は、外周部11と、外周部11以外において厚さ方向Zにチャネル12と、を有する。チャネル12は、マイクロチャネルプレート10中に複数配置されている。また、図示しないがチャネル12の内壁面に光電物質が備えられており、そこに光が照射されることにより光電子が放出される。放出された光電子が所定の電圧に印加されることにより、光電子がチャネル12の内壁面に衝突し、光電子を雪崩的に増幅させることができる。
【0040】
本実施形態において、マイクロチャネルプレート10の厚さ方向をZ方向、マイクロチャネルプレート10の厚さ方向に垂直な方向をX方向、マイクロチャネルプレート10の厚さ方向及びX方向に垂直な方向をY方向とする。
【0041】
本実施形態のチャネル12は、図2に示すように、第1の部分12A及び第2の部分12Bを有する。第1の部分12Aは第1の主面12aを有する。また、第2の部分12Bは第2の主面12bを有する。第1の部分12Aの端部の一方は、第2の部分12Bの端部の一方と接続している。また、第1の部分12Aの端部の他方は、第1の主面12aに表出し、第2の部分12Bの端部の他方は、第2の主面12bに表出している。
【0042】
また、第1の部分12Aの延伸方向は、第2の部分12Bの延伸方向と異なっており、第1の部分12Aのバイアス角Vは、第2の部分12Bのバイアス角Vと異なっている。本明細書等において、「バイアス角」とは、端面(第1の主面12a又は第2の主面12b等)に対する垂直軸を基準としたチャネルの軸の傾きのことをいう。
【0043】
第2の部分12Bにおける第2の主面12bに対する垂直軸を始線とし、反時計回りを正の向き、時計回りを負の向きとしたとき、バイアス角V及びバイアス角Vは、それぞれ-20~20°であり、-15~-5°又は5~15°であると好ましい。また、バイアス角Vとバイアス角Vとの差は、5~20°であり、7~15°であると好ましい。
【0044】
本実施形態のチャネル12は、第1の部分12A及び第2の部分12Bを有する中心軸が非直線形のチャネルであるため、仮に入射側のチャネルの軸方向と入射光の入射方向とが一致したとしても入射光は出射側の部分の内壁面に衝突するため、光電子を雪崩的に増幅させることができる。
【0045】
また、第1の主面12aの法線方向において、第1の部分12Aの長さは、第2の部分12Bの長さより短いことが好ましい。このような構成であることにより、第1の部分12Aに光が入射するとしたとき、仮に入射側の第1の部分12Aの軸方向と入射光の入射方向とが一致したとしても出射側の第2の部分12Bの内壁面に早く衝突するため、光電子をより増幅させることができる。
【0046】
上記の観点から、チャネル12の第1の主面12aから法線方向に1~10μmの部分において、第1の部分12Aの端部の一方が第2の部分12Bの端部の一方と接続していることが好ましい。
【0047】
第1の部分12Aのチャネル径Dは、0.1~50μmであり、1~30μmであることが好ましい。同様に、第2の部分12Bのチャネル径Dは、0.1~50μmであり、1~30μmであることが好ましい。チャネル径D及びチャネル径Dは、互いに同じであっても異なっていてもよい。また、マイクロチャネルプレート10の厚さTは、50~1000μmである。
【0048】
第1の部分12Aにおいて、チャネルの軸と第1の主面12aとが交わる点はチャネルの中心C12aである。同様に、第2の部分12Bにおいて、チャネルの軸と第2の主面12bとが交わる点はチャネルの中心C12bである。第1の主面12aの面内方向において、第1の主面12aにおけるチャネルの中心C12aと第2の主面12bにおけるチャネルの中心C12bとの間の距離が、第1の部分12Aのチャネル径D以上、且つチャネル径Dの3倍以下であると、入射光が必ず第1の部分12Aの内壁面又は第2の部分12Bの内壁面に衝突し、光電子を増幅させることができるため好ましい。
【0049】
(変形例1)
本実施形態では、図3に示すようなチャネル12の中心軸が曲線形であるマイクロチャネルプレート10Aを用いてもよい。チャネル12は第1の主面12a及び第2の主面12bを有する。第1の主面12aの面内方向において、第1の主面12aにおけるチャネルの中心C12aと第2の主面12bにおけるチャネルの中心C12bとの間の距離が、入射光側のチャネル12のチャネル径D以上、且つチャネル径Dの3倍以下であると、入射光が必ずチャネル12の内壁面に衝突し、光電子を増幅させることができるため好ましい。
【0050】
また、バイアス角は図示していないが図2と同様に第1の主面12a側のバイアス角は、第2の主面12b側のバイアス角と異なり、当該バイアス角は、それぞれ-20~20°であり、-15~-5°又は5~15°であると好ましい。また、第1の主面12a側のバイアス角と第2の主面12b側のバイアス角Vとの差は、5~20°であり、7~15°であると好ましい。
【0051】
また、本変形例では、チャネル12は、入射側の第1の主面12aからメタルアシストケミカルエッチング(MaCE:Metal Assisted Chemical Etching)を用いて形成され、当該エッチングはチャネル12の中心軸が曲線形になるように調整しながら行われる。出射側の第2の主面12b付近の単結晶シリコンからなる基材は、曲がりながらエッチングされる。これにより、エッチングされた基材の形状が始めは真円に近いものであったとしても、曲がりながらエッチングされるため、第2の主面12bは楕円形になる。したがって、出射側のチャネル12のチャネル径Dは入射光側のチャネル12のチャネル径Dと異なり、具体的には、チャネル径Dはチャネル径Dより大きい。
【0052】
チャネル径D及びチャネル径Dは、それぞれ0.1~50μmであり、1~30μmであり、かつ、チャネル径Dはチャネル径Dより大きいことが好ましい。
【0053】
(変形例2)
本実施形態では、図4及び図5に示すようなチャネル12の中心軸が第1の主面12aの法線Cを中心に螺旋状であるマイクロチャネルプレート10Bを用いてもよい。図4は、マイクロチャネルプレート10Bの平面図である。図5は、図4のマイクロチャネルプレート10B中のチャネル12の部分断面図である。なお、図4及び図5は、チャネル12の中心軸が螺旋状に角度S回転したときの図であり、ここでは第1の主面12aから180°回転したときの図である。チャネル12の中心C12cは、チャネル12の中心C12aの状態から180°回転したときのものである。また、チャネル12の中心C12bは、チャネル12の中心C12aの状態から360°回転したときのものである。
【0054】
中心軸が螺旋状のチャネル12における螺旋の半径rは、チャネル12のチャネル径D以上、且つチャネル径Dの2倍以下であると、入射光が必ずチャネル12の内壁面に衝突し、光電子を増幅させることができるため好ましい。また、チャネル12の第1の主面12aの面内方向において、中心軸が螺旋状のチャネル12における螺旋は、30°以上回転していればよい。
【0055】
また、本変形例では、チャネル12は、入射側の第1の主面12aからMaCEを用いて形成され、当該エッチングはチャネル12が第1の主面12aの法線Cを中心に螺旋状になるように調整しながら行われる。出射側の第2の主面12b付近の単結晶シリコンからなる基材は、回転しながらエッチングされる。これにより、エッチングされた基材の形状が始めは真円に近いものであったとしても、回転しながらエッチングされるため、第2の主面12bは楕円形になる。
<マイクロチャネルプレートの製造方法>
【0056】
はじめに、本実施形態のマイクロチャネルプレート10の製造方法について簡単に説明する。
【0057】
まず、図6に示すように、対向する第1の主面22a及び第2の主面22bを有する基材(一部が外周部11となる)を用意する。当該基材は、単結晶シリコンからなる。
【0058】
次に、図7に示すように、第2の主面22bをエッチングして複数の第2の部分(第2の溝)12Bを形成する。
【0059】
次に、図8に示すように、第1の主面22aをエッチングして複数の第1の部分(第1の溝)12Aを形成する。第1の部分(第1の溝)12Aの底部と第2の部分(第2の溝)12Bの底部と接続することにより、第1の主面12aと第2の主面12bの間を貫通する複数のチャネル12を形成する。第1の部分12Aのバイアス角Vが第2の部分12Bのバイアス角Vと異なるように第1の部分12Aを形成する。つまり、第1の部分(第1の溝)12Aの延伸方向は、第2の部分(第2の溝)12Bの延伸方向と異なるように形成される。
【0060】
第1の主面12aの法線方向において、第1の部分12Aの長さは、第2の部分12Bの長さより短いことが好ましい。先に第2の部分12Bを形成した後に第1の部分12Aを形成することにより、第1の部分12Aを形成する長さが短い分、第1の部分12Aの端部の一方と第2の部分12Bの端部の一方との接続箇所の位置合わせを精度よく行うことができる。さらにこのような構成であることにより、第1の部分12Aに光が入射するとしたとき、仮に入射側の第1の部分12Aの軸方向と入射光の入射方向とが一致したとしても出射側の第2の部分12Bの内壁面に早く衝突するため、光電子をより増幅させることができる。
【0061】
以上の工程により、マイクロチャネルプレート10を製造することができる。
【0062】
次に、本実施形態の変形例1のマイクロチャネルプレート10Aの製造方法について簡単に説明する。
【0063】
まず、図9に示すように、対向する第1の主面22a及び第2の主面22bを有する基材(一部が外周部11となる)を用意する。その後、第1の主面22aに金属層21を形成する。金属層21は、チャネル12を形成するために行うMaCEに用いられる。金属層21は、例えば、金、白金などを用いることができる。金属層21の厚さは、例えば、10nm程度である。
【0064】
MaCEとは、金属層が形成された領域のみに混合溶液等でエッチングする技術である。本実施形態では、フッ酸及び過酸化水素の混合溶液を用いた。混合溶液中の過酸化水素が金属層21を介して基材(一部が外周部11となる)であるシリコンの電子を引き抜き、過酸化水素が水となるため、混合溶液中の過酸化水素の濃度が変化する。
【0065】
次に、図10に示すように、基材(一部が外周部11となる)と金属層21との界面に酸化膜11Aが形成される。酸化膜11Aは、酸化シリコン膜である。
【0066】
次に、図11に示すように、混合溶液中のフッ酸により酸化膜11Aを除去する。除去の際、ヘキサフルオロケイ酸及び水素が放出されるため、混合溶液中のフッ酸の濃度が変化する。
【0067】
この工程(酸化膜11A形成及び除去)を繰り返すことにより、図12に示すように、基材(一部が外周部11となる)の第2の主面22bまで貫通するようにエッチングすることができる。混合溶液中の過酸化水素及びフッ酸の濃度は逐次変化するため、必要に応じてこれらの濃度を調整する。上記工程により、複数のチャネル12を形成することができる。
【0068】
また、チャネル12の中心軸は非直線形であり、チャネル12を形成する際、第1の主面22aと第2の主面22bの間においてチャネル12となる溝の中心軸の延伸方向が変化している。例えば、基材としてシリコン(111)基板を使用した場合、過酸化水素が高濃度であるとシリコン(111)方向にエッチングが進行し、過酸化水素が低濃度であるとシリコン(100)方向にエッチングが進行する。
【0069】
また、MaCEにおいて金属層21の厚さを不均一にすることにより、螺旋状にエッチングを進行させることも可能である。
【0070】
以上の工程により、マイクロチャネルプレート10Aを製造することができる。
【0071】
本実施形態によれば、中心軸が非直線形であるチャネルを有する、モノリシック型のマイクロチャネルプレートを用いることにより、製造コストを抑制しつつ、入射光が必ずチャネルの内壁面に衝突し、光電子を増幅させることができる。
【0072】
(その他の実施形態)
上述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【0073】
例えば、本実施形態のマイクロチャネルプレートは、電子増倍管に用いることができ、当該電子増倍管は、分析装置及び検出器等に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
10、10A、10B マイクロチャネルプレート
11 外周部
11A 酸化膜
12 チャネル
12A 第1の部分
12B 第2の部分
12a、22a 第1の主面
12b、22b 第2の主面
21 金属層
12a、C12b、C12c 中心
法線
、D、D、D チャネル径
r 半径
S 角度
、 V バイアス角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12