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特開2022-134401複合材料、および複合材料の製造方法
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  • 特開-複合材料、および複合材料の製造方法 図1
  • 特開-複合材料、および複合材料の製造方法 図2
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  • 特開-複合材料、および複合材料の製造方法 図4
  • 特開-複合材料、および複合材料の製造方法 図5
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  • 特開-複合材料、および複合材料の製造方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134401
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】複合材料、および複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/10 20060101AFI20220908BHJP
   B22D 19/00 20060101ALI20220908BHJP
   B22D 17/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C22C1/10 F
B22D19/00 E
B22D17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033504
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】515243372
【氏名又は名称】アドバンスコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(74)【代理人】
【識別番号】100152098
【弁理士】
【氏名又は名称】林 剛史
(72)【発明者】
【氏名】シィンタビーウォン スバ
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁
【テーマコード(参考)】
4K020
【Fターム(参考)】
4K020AA21
4K020AA24
4K020AC01
(57)【要約】
【課題】新規な複合材料を提供する。
【解決手段】マトリックス材と、前記マトリックス材中に配置される鱗片状粒子と、を含む複合材料において、前記鱗片状粒子が、その内部に積層構造を有するとともに、その外形は積層方向に垂直な方向に広がる上面および下面と、前記上面と下面との間に立直する側面と、を有し、前記マトリックス材中において、前記鱗片状粒子が、その上面および下面が所定の方向に向くように配向して配置されており、かつ、前記マトリックス材が、前記鱗片状粒子の周囲のみならず、その粒子内部の積層構造間にも存在している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス材と、前記マトリックス材中に配置される鱗片状粒子と、を含む複合材料であって、
前記鱗片状粒子は、その内部に積層構造を有するとともに、その外形は積層方向に垂直な方向に広がる上面および下面と、前記上面と下面との間に立直する側面と、を有し、
前記マトリックス材中において、前記鱗片状粒子は、その上面および下面が所定の方向に向くように配向して配置されており、かつ、
前記マトリックス材が、前記鱗片状粒子の周囲のみならず、その粒子内部の積層構造間にも存在する、ことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記鱗片状粒子が、グラファイトまたは六方晶系窒化ホウ素(h-BN)である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
複合材料全体に対する前記鱗片状粒子の体積率(VF値)が80%より大きく95%以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
マトリックス材と、前記マトリックス材中に配置される鱗片状粒子と、を含む複合材料の製造方法であって、
その内部に積層構造を有するとともに、その外形は積層方向に垂直な方向に広がる上面および下面と、前記上面と下面との間に立直する側面と、を有する鱗片状粒子を用い、
前記鱗片状粒子を、その上面および下面が所定の方向に向くように配向した状態にて所望の形状に成形することでプリフォームとする工程と、
前記プリフォームを金型内に設置し、溶融状態のマトリックス材を金型内に充填する鋳造法によって、プリフォームを構成する鱗片状粒子内部の積層構造間にまでマトリックス材を含浸させる工程と、
を含む、ことを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記鱗片状粒子をプリフォームとする工程が、プレス成形、押出成形、圧延ロール成形、吸引ろ過成形、沈降成形、および加圧フィルタープレスの何れかである、ことを特徴とする請求項4に記載の複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記鱗片状粒子が、グラファイトまたは六方晶系窒化ホウ素(h-BN)である、ことを特徴とする請求項4または5に記載の複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記鋳造法が、高圧を付加する高圧鋳造法、またはダイキャスト法である、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料、および複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1に開示されているように、従来から、金属や合金の中に黒鉛を配置して一体化した複合材料が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/051094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合材料は、これを構成するマトリックス材と、その中に配置される材料との組合せによって種々の優れた作用効果を発揮することができるため注目を集めており、未だ開発の余地がある。このような状況において、新規な複合材料およびその製造方法を提供することを主たる課題とする。より具体的には、たとえば、所定の方向のみにおける熱伝導性に優れた複合材料およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本開示の複合材料は、マトリックス材と、前記マトリックス材中に配置される鱗片状粒子と、を含む複合材料であって、前記鱗片状粒子は、その内部に積層構造を有するとともに、その外形は積層方向に垂直な方向に広がる上面および下面と、前記上面と下面との間に立直する側面と、を有し、前記マトリックス材中において、前記鱗片状粒子は、その上面および下面が所定の方向に向くように配向して配置されており、かつ、前記マトリックス材が、前記鱗片状粒子の周囲のみならず、その粒子内部の積層構造間にも存在する、ことを特徴とする。
【0006】
上記の複合材料にあっては、前記鱗片状粒子が、グラファイトまたは六方晶系窒化ホウ素(h-BN)であってもよい。
【0007】
また、上記の複合材料にあっては複合材料全体に対する前記鱗片状粒子の体積率(VF値)が80%より大きく95%以下であってもよい。
【0008】
上記課題を解決するための本開示の複合材料の製造方法は、マトリックス材と、前記マトリックス材中に配置される鱗片状粒子と、を含む複合材料の製造方法であって、その内部に積層構造を有するとともに、その外形は積層方向に垂直な方向に広がる上面および下面と、前記上面と下面との間に立直する側面と、を有する鱗片状粒子を用い、前記鱗片状粒子を、その上面および下面が所定の方向に向くように配向した状態にて所望の形状に成形することでプリフォームとする工程と、前記プリフォームを金型内に設置し、溶融状態のマトリックス材を金型内に充填する鋳造法によって、プリフォームを構成する鱗片状粒子内部の積層構造間にまでマトリックス材を含浸させる工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0009】
上記の複合材料の製造方法にあっては、前記鱗片状粒子をプリフォームとする工程が、プレス成形、押出成形、圧延ロール成形、吸引ろ過成形、沈降成形、および加圧フィルタープレスの何れかであってもよい。
【0010】
また、上記の複合材料の製造方法にあっては、前記鱗片状粒子が、グラファイトまたは六方晶系窒化ホウ素(h-BN)であってもよい。
また、上記の複合材料の製造方法にあっては、前記鋳造法が、高圧を付加する高圧鋳造法、またはダイキャスト法であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の複合材料は、これを構成する鱗片状粒子が積層構造を有しており、マトリックス材が鱗片状粒子内部の積層構造間にも存在していることから、複合材料の強度を向上できるとともに、熱伝導度も向上できる。また、鱗片状粒子は、マトリックス材中において配向して配置されているため、複合材料の熱伝導性に方向性を付与できる。また、本開示の複合材料の製造方法は、積層構造を有する鱗片状粒子を用い、これを配向させた状態にてプリフォーム成形し、溶融状態のマトリックス材を使用する鋳造法(特に、高圧を付加する高圧鋳造法が好適)によって一体化させていることから、本開示の複合材料を、簡便に、安定的に、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態にかかる複合材料の断面拡大写真である。具体的には、複合材料を構成する鱗片状粒子の短軸(厚さ)方向の断面拡大写真である。
図2図1に示す複合材料に用いられる鱗片状粒子の上面写真である。
図3図1に示す複合材料に用いられる鱗片状粒子の短軸方向の断面写真である。
図4】鱗片状粒子の形状を説明するための模式図である。
図5】鱗片状粒子の積層構造を説明するための模式図である。
図6】本開示の複合材料中の鱗片状粒子の状態を説明するための図である。
図7図3に示すグラファイトを用いた本開示の実施形態にかかる複合材料の電子顕微鏡写真である。
図8】本開示の実施形態にかかる複合材料の製造方法の工程順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態を、図面などを参照しながら説明する。なお、本開示は多くの異なる態様で実施でき、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各要素の幅、厚さ、形状などについて模式的に表す場合がある。しかしながら、図面は一例であり、本開示の解釈を限定しない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上または下などという語句を用いて説明するが、上下方向が逆転してもよい。左右方向についても同様である。
【0014】
<複合材料>
本開示の実施形態にかかる複合材料について説明する。
【0015】
図1は、本開示の実施形態にかかる複合材料の断面拡大写真である。具体的には、複合材料を構成する鱗片状粒子の短軸(厚さ)方向の断面拡大写真である。
【0016】
図1に示すように、本開示の実施形態にかかる複合材料は、図1の写真において白色に写っているマトリックス材と、当該マトリックス材中に複合化(配置)され、黒色に写っている鱗片状粒子を含む。なお、図1に示す複合材料におけるマトリックス材はアルミニウム合金であり、強化材としての鱗片状粒子はグラファイトである。以下にそれぞれについて詳細に説明する。
【0017】
・マトリックス材
本開示の実施形態にかかる複合材料10を構成するマトリックス材1は特に限定されず、従来の複合材料において用いられている金属や合金から適宜選択できる。具体的には、たとえば、金属としては、アルミニウム、銅、マグネシウムなどを挙げることができ、合金としては、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金を挙げることができる。これらの中でも、アルミニウム合金は軽量・高強度・高熱伝導度であり、溶解温度も700℃程度で比較的低温であることから好ましい。アルミニウム合金としては、たとえば、Al-Si系、Al-Si-Cu系、Al-Si-Mg系、およびAl-Mg系などの鋳造用合金を挙げることができる。
【0018】
・鱗片状粒子(強化材)
図2は、図1に示す複合材料に用いられる、強化材としての鱗片状粒子の上面写真である。図3は、図1に示す複合材料に用いられる鱗片状粒子の短軸方向の断面写真である。図4は、鱗片状粒子の形状を説明するための模式図である。図5は、鱗片状粒子の積層構造を説明するための模式図である。なお、図2および図3に示す鱗片状粒子はグラファイトである。また、図3における細長い明灰色の部分が短軸方向断面からみた鱗片状粒子であり、暗灰色の部分が鱗片状粒子を固定するために使用した樹脂であり、黒色の部分が空隙である。
【0019】
本開示の実施形態にかかる複合材料を構成する鱗片状粒子は、図2~5、特に図4に示すように、上面、下面、およびこれらの間に立直する側面を有する鱗片形状を呈している。つまり、鱗片状粒子とは、魚の鱗状の薄片状の粒子であり、広さのある平面の長さである長軸と、薄い厚さ方向の長さである短軸と、を有する形状の粒子である。
【0020】
ここで、鱗片状粒子を上面および下面側から見た形状については特に限定されない。つまり、図2図4においては、略楕円形状を呈しているが、この形状に限定されることはなく、より円に近い形状であってもよく、より矩形に近い形状であってもよい。
【0021】
また、鱗片状粒子は薄片であるため、図4に示す長軸の長さと短軸の長さの比、すなわちアスペクト比についても特に限定することはないが、たとえば2~50の範囲であり、4~20の範囲が好ましい。アスペクト比が50を超えると、プリフォーム成形する際に鱗片状粒子が破損したり、折れたりして配向が乱れる原因となるおそれがある。
【0022】
鱗片状粒子は、図5に示すように、その内部に積層構造を有している。つまり、薄層が数十から数千枚積層された構造となっており、各層の間には微小な空隙が存在している。ここで、「薄層」とは、六方晶結晶構造に由来する原子レベルの非常に薄い厚さの平板(層)構造体を意味する。また、「積層」とは、六方晶結晶構造に由来する薄層が、鱗片状粒子内に同じ方向に揃って重なった状態をいう。
【0023】
図6は、本開示の複合材料中の鱗片状粒子の状態を説明するための図である。
【0024】
本開示の実施形態にかかる複合材料は、図1図6に示すように、前記鱗片状粒子は、前記マトリックス材の中に、その上面および下面が所定の方向に向くように配向して成形されている。具体的には、図1図6においては、上面および下面はそれぞれ図の上下方向に配向するように成形されている。ここで、「配向」とは、鱗片状粒子が上面(下面)を同じ方向に揃えて並んでいる状態をいう。揃えて並ぶ方向は、図6に示した二つの矢印の方向(実線矢印で示す水平方向と、点線矢印で示す垂直方向)があるが、本明細書においては、垂直方向、つまり厚さ方向を重ねて揃えることを意味する。
【0025】
また本開示の実施形態にかかる複合材料は、前記マトリックス材が、前記鱗片状粒子の周囲のみならず、その粒子内部の積層構造間、つまり図5に示す鱗片状粒子の各層の間にも存在することに特徴を有している。このように、鱗片状粒子内部の積層構造の間にもマトリックス材が存在することにより、マトリックス材と鱗片状粒子との密着度を強固にでき、複合材料全体の強度を向上できるとともに、積層構造中の空隙の量を減らすことができるため、熱伝導度も向上できる。
【0026】
なお、前述のとおり、特許文献1には金属や合金の中に黒鉛を配置して一体化した複合材料が記載されている。しかしながら、当該文献に記載されている複合材料は、黒鉛粉と金属粉とをプレス成形などで固めた焼結前駆体を作製し、これを焼結することによって得られたものである。ここで、「焼結」とは融点以下の温度で加熱することであることから、金属粉は溶融しておらず、本開示の実施形態にかかる複合材料とは異なり、マトリックスとなる金属が、強化材としての黒鉛粉の周囲のみに存在して、黒鉛粉の内部に存在する(内部にまで含浸する)ことはない点において、本開示の複合材料とは大きく異なっている。
【0027】
ここで、鱗片状粒子内部の積層構造間にもマトリックス材が存在することは、電子顕微鏡写真により確認することができる。
【0028】
図7は、図3に示すグラファイトを用いた本開示の実施形態にかかる複合材料の電子顕微鏡写真である。
【0029】
図3に示すように、グラファイトの電子顕微鏡写真を用いて、ランダムに複数のグラファイトの厚さを測定することで、グラファイトの最小の厚さを得る。この写真の場合、最小の厚さは10.6μmであった。ついで、図7に示すように、このグラファイトを用いた本開示の実施形態にかかる複合材料の電子顕微鏡写真において、グラファイトとマトリックス材とが細かく重なる方向のマトリックス材の間隔を測定する。この写真においては、22.48μmの中に4つのマトリックス材の筋が確認できる部分が存在する。前記のとおり、グラファイトの最小の厚さは10.6μm(図中の四角枠の短辺の長さ)であったことから、グラファイトの周囲のみならず、その粒子内部の積層構造間にまでマトリックス材が存在(含浸)していることが確認できる。
【0030】
本開示の実施形態にかかる複合材料にあっては、上記で説明した、強化材としてのグラファイト粒子などの鱗片状粒子に加え、これ以外の添加材を含んでもよい。添加材としては、たとえば、シリカゾル、アルミナゾル、水ガラス、シリコーンなどの無機バインダーやポリエチレングリコール、アクリル樹脂などの有機バインダーなどがあげられる。これらの添加材の添加量については、特に限定しないが、複合材料の特性への影響を考慮し、少量であることが好ましい。
【0031】
<複合材料の製造方法>
次に、本開示の実施形態にかかる複合材料の製造方法について説明する。
【0032】
図8は、本開示の実施形態にかかる複合材料の製造方法の工程順を示すフロー図である。
【0033】
図8に示すように、本開示の実施形態にかかる複合材料の製造方法は、その内部に積層構造を有するとともに、その外形は積層方向に垂直な方向に広がる上面および下面と、前記上面と下面との間に立直する側面と、を有する鱗片状粒子を準備する工程(S1)と、前記鱗片状粒子を、その上面および下面が所定の方向に向くように配向した状態にて所望の形状に成形することでプリフォームとする工程(S2)と、前記プリフォームを金型内に設置し、溶融状態のマトリックス材を金型内に充填する鋳造法によって、プリフォームを構成する鱗片状粒子内部の積層構造間にまでマトリックス材を含浸させる工程(S3)と、を含んでいる。以下に各工程について説明する。
【0034】
・鱗片状粒子の準備(S1)
ここで準備される鱗片状粒子は、上記本開示の実施形態にかかる複合材料を構成する鱗片状粒子であり、詳細な説明は省略する。
【0035】
・プリフォーム成形工程(S2)
この工程は、準備された鱗片状粒子を、その上面および下面が所定の方向に向くように配向した状態にて、所望の形状に成形してプリフォームとする工程である。
【0036】
このような配向性を有するプリフォームを得る具体的な方法としては、たとえば、プレス成形、押出成形、圧延ロール成形、吸引ろ過成形、沈降成形、および加圧フィルタープレスを挙げることができる。
【0037】
プレス成形においては、プレス型内に鱗片状粒子を入れて上からパンチで圧縮成形により、強化材としての鱗片状粒子の体積率(VF値)を大きくする。この際に、鱗片状粒子が移動して密な状態となるが、鱗片状粒子の上面または下面がプレスの加圧方向に対して垂直な方向に揃って配向される。鱗片状粒子は薄片(平板)状であるため、重ねたトランプカードが横滑りするように上面および下面が同じ方向を向く(配向する)よう移動して圧縮成形される。
【0038】
押出成形においては、狭い金型穴に鱗片状粒子のスラリーを加圧して押し出して成形する。狭い金型を通る際に上記プレス成形と同様の圧力が掛かり、押出し方向に鱗片状粒子の上面および下面が揃って配向される。
【0039】
圧延ロール成形においては、複数の円筒状のローラーの狭い間を鱗片状粒子のスラリーや粘土状のものが通る際に、押出成形と同様にロールの押出方向に鱗片状粒子の上面および下面が揃って配向する。
【0040】
吸引ろ過成形においては、鱗片状粒子を水などに分散させて液状にしたものを、底面がフィルターになった型に入れ、フィルター面から液体の分散媒の水などを負圧で吸引して、鱗片状粒子のみを残して固めて成形する。吸引により鱗片状粒子が移動して密になる際に、落ち葉が地面に敷かれるように、吸引する方向に対して垂直な方向に鱗片状粒子の上面および下面が揃って配向する。
【0041】
沈降成形においては、強制的に負圧吸引する吸引ろ過成形と異なり、重力で比重の重い鱗片状粒子が下に沈降して密になるように成形される。その際に吸引ろ過成形と同様に重力方向に対して垂直な方向に鱗片状粒子の上面および下面が揃って配向する。
【0042】
加圧フィルタープレスにおいては、吸引で水などの溶媒を排出する吸引ろ過成形と異なり、加圧することでフィルター面から溶媒を排出する方法であるが、吸引ろ過成形と同様に、加圧する方向に対して垂直な方向に鱗片状粒子の上面および下面が揃って配向する。
【0043】
・鋳造(S3)
この工程は、前記プリフォームを金型内に設置し、溶融状態のマトリックス材を金型内に充填する鋳造法を実施して、プリフォームを構成する鱗片状粒子内部の積層構造間にまでマトリックス材を含浸させる工程である。
【0044】
鋳造法の種類や種々の条件については限定されることはなく適宜調整すればよい。特に、高圧を付加する高圧鋳造法やダイキャスト法が好ましい。なお、ここで言う「高圧」とは、30~150MPaを意味し、特に50~100MPaの範囲で行うことが好ましい。
【0045】
・仕上げ(S4)
本開示の実施形態にかかる複合材料の製造方法にあっては、プリフォームを構成する鱗片状粒子内部の積層構造間にまでマトリックス材を含浸させた後に、種々の仕上げ工程を行ってもよい。仕上げ工程としては、たとえば、切削加工や研磨加工などがあげられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8