(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134414
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】作業現場管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20220908BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20220908BHJP
【FI】
G06Q10/10 340
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033528
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土江 慶幸
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】金澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA13
5L049CC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業内容が変化する場合でも、適切な警告を行うことができる作業現場管理システムを提供する。
【解決手段】作業機械100および作業者200を管理する作業現場管理システムにおいて、サーバ100は、入力される時刻に応じて異なるリスク低減方策を含むリスク低減計画情報を取得し、取得したリスク低減方策と、機械システム運用状況収集装置120を、作業者システム運用業況状況収集装置220によって収集されるリスク低減方策の運用状況との差異とに応じて、リスクが高いか否かを判定し、リスクが高いと判定した場合には、機械警告装置110、作業者警告装置210及び作業現場管理者警告装置310に警告を行うよう指令する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械および作業者を管理するための作業現場管理システムにおいて、
前記作業現場管理システムは、前記作業機械および作業者に備えられる警告装置と、前記作業機械および作業者に関する情報を収集する運用状況収集装置と、サーバとを備え、
前記サーバは、入力される、時刻に応じて異なるリスク低減方策を含むリスク低減計画情報を取得し、
前記リスク低減方策と、前記運用状況収集装置によって収集される前記リスク低減方策の運用状況との差異に応じて、リスクが高いか否かを判定し、リスクが高いと判定した場合には、前記警告装置に警告を行うよう指令する、
ことを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記警告装置は、
前記作業機械に対して警告を出力する機械警告装置と、
前記作業者に対して警告を出力する作業者警告装置と、
からなることを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記運用状況収集装置は、
前記作業機械に設けられる各種センサの情報から前記運用状況を収集する機械システム運用状況収集装置と、
前記作業者が所持する端末の情報から前記運用状況を収集する作業者システム運用状況収集装置とからなることを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記作業現場管理システムは、複数の前記作業機械および複数の前記作業者を管理するためのものであり、
前記リスク低減方策および前記運用状況は、複数の作業範囲に関連して定義され、
前記リスク低減方策および前記運用状況は、前記作業範囲と、前記作業者と、前記作業機械との組み合わせについて定義される、
ことを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記リスク低減方策および前記運用状況は、作業内容ごとに定義される
ことを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記運用状況は、収集時刻を表す情報を含む、
ことを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項7】
請求項4に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記サーバは、前記リスクが高いか否かを、前記作業範囲ごとに判定し、
前記サーバは、前記リスクが高いと判定された前記作業範囲について、前記警告装置に警告を行うよう指令する、
ことを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記サーバは、前記リスクが高くないと判定された前記作業範囲について、前記警告装置に警告を行うよう指令しない、
ことを特徴とする、作業現場管理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の作業現場管理システムにおいて、
前記サーバは、前記リスクが高いと判定された場合には、前記作業機械の動作を制限する
ことを特徴とする、作業現場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業現場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、作業現場管理システムの例が特許文献1に開示される。特許文献1には「コンピュータに、作業現場に取り付けられているか否かを示す取付情報を送信する送信機能を有する安全帯を装着して作業を行う作業者の事故発生状況を記憶する記憶部を参照し、前記作業者の前記安全帯から、前記取付情報を取得し、前記作業者が装着するセンサから、前記作業者の作業環境に関する環境情報を取得し、取得された前記取付情報および前記環境情報によって特定される作業状態が前記事故発生状況と類似する場合に、警告を出力する処理を実行させることを特徴とする作業判定プログラム」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の作業現場管理システムでは、時々刻々と作業者の作業内容が変化する場合に、適切な警告を行えないおそれがあるという課題があった。
【0005】
なお、警告とは、たとえば、安全帯が必要な作業において、作業者が安全帯の着用を失念した場合に行われる警告を含む。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、作業内容が変化する場合でも適切な警告を行うことができる作業現場管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業現場管理システムの一例は、
作業機械および作業者を管理するための作業現場管理システムにおいて、
前記作業現場管理システムは、前記作業機械および作業者に備えられる警告装置と、前記作業機械および作業者に関する情報を収集する運用状況収集装置と、サーバとを備え、
前記サーバは、入力される、時刻に応じて異なるリスク低減方策を含むリスク低減計画情報を取得し、
前記リスク低減方策と、前記運用状況収集装置によって収集される前記リスク低減方策の運用状況との差異に応じて、リスクが高いか否かを判定し、リスクが高いと判定した場合には、前記警告装置に警告を行うよう指令する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る作業現場管理システムは、作業内容が変化する場合でも適切な警告を行うことができる。
【0009】
効果の具体例として、作業現場の管理者の指示と、現場の運用状況とが異なっていることが検知された場合に、現場の作業者および作業機械に対して警告が行われるので、運用状況を適切に是正することができ、作業現場の事故リスクが低下する。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】実施例1の作業計画情報(作業工程に係る部分)
【
図4】実施例1の作業計画情報(人員配置に係る部分)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0013】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0014】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0015】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0016】
実施例において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0017】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【実施例0018】
本実施例に係る作業現場管理システムは、作業現場について設けられる。本実施例に係る作業現場では、機械に搭乗しない作業者4名と、ショベル2台と、ショベルを操縦する作業者2名とが、作業に従事する。また、作業現場管理者が作業進捗を管理する。作業現場管理者は作業現場の安全について責任を持つ者であってもよい。
【0019】
図1に、実施例1に係る作業現場管理システムのブロック図を示す。作業現場管理システムは、作業機械および作業者を管理するためのシステムである。作業現場管理システムは、作業機械100に設けられる機械警告装置110(警告装置)および機械システム運用状況収集装置120(運用状況収集装置)と、作業者200が所持する作業者警告装置210(警告装置)および作業者システム運用状況収集装置220(運用状況収集装置)と、作業現場管理者300が所持する作業現場管理者警告装置310(警告装置)と、サーバ400に設けられるリスク低減計画入力装置410と管理装置420とを備える。
【0020】
機械システム運用状況収集装置120は、作業機械100に搭載された各種センサやGNSS等の位置検出手段などからなり、作業機械100の操作信号やアクチュエータの負荷等の情報から動作状態や位置情報等を収集するものである。また、作業者システム運用状況収集装置220は、例えばスマートフォン等の携帯端末であり、作業者の位置情報や生体情報および作業者によって入力された情報を収集するものである。たとえば、機械システム運用状況収集装置120は、作業機械100に設けられる各種センサの情報から運用状況を収集する。また、作業者システム運用状況収集装置220は、作業者が所持する端末の情報から運用状況を収集する。
【0021】
管理装置420はサーバ400に設けられるもので公知のコンピュータによって構成することができる。管理装置420は、演算を行う演算手段と、情報を記憶する記憶手段とを備える。演算手段はたとえばプロセッサであり、記憶手段はたとえば半導体メモリおよび磁気ディスク装置である。また、管理装置420は、情報を入力するための入力手段と、情報を出力するための出力手段とを備える。入力手段はたとえばマウスおよびキーボードであり、出力手段はたとえばディスプレイ装置および印刷装置である。さらに、管理装置420は、通信ネットワークを介して情報を送受信するための通信手段を備える。
【0022】
リスク低減計画入力装置410も、管理装置420と同様に、公知のコンピュータによって構成することができ、サーバ400に設けられる。なお、リスク低減計画入力装置410は、サーバ400とは別に設けることもできる。
【0023】
リスク低減計画入力装置410は、作業計画入力部411と、リスク低減方策入力部412とを備える。管理装置420は、サイト運用状況管理部421と、リスク判定部423と、サイト運用計画生成部422と、警告内容決定部424とを備える。
【0024】
サーバ400は、リスク低減計画入力装置410、管理装置420を備え、任意の場所に配置される。管理事務所には、作業現場管理者警告装置310が配置される。作業現場の作業者200には、作業者システム運用状況収集装置220および作業者警告装置210が配置される。また、作業機械100には、機械システム運用状況収集装置120および機械警告装置110が配置される。リスク低減計画入力装置410、管理装置420および作業現場管理者警告装置310は、通信ネットワーク500、基地局700、および通信衛星600を介して、作業者システム運用状況収集装置220、作業者警告装置210、機械システム運用状況収集装置120および機械警告装置110と通信可能である。
【0025】
運用状況収集装置は、リスク低減方策の運用状況を取得する。たとえば、機械システム運用状況収集装置120は、作業機械に係る運用状況を収集するセンサを備え、作業者システム運用状況収集装置220は、作業者に係る運用状況を収集するコンピュータを備える。
【0026】
管理装置420、リスク低減計画入力装置410および作業現場管理者警告装置310を構成するハードウェアの構成単位は任意に設計可能である。たとえば、管理装置420、リスク低減計画入力装置410および作業現場管理者警告装置310を含む制御部の全体が単一のコンピュータによって構成されてもよい。または、たとえば、管理装置420の構成要素の一部と、リスク低減計画入力装置410の構成要素の一部と、作業現場管理者警告装置310の構成要素の一部とが、それぞれ別の単一のコンピュータによって構成されてもよい。
【0027】
図2は、実施例1のフローチャートであり、管理装置420およびリスク低減計画入力装置410が実行する処理の例を示す。
図1の各ブロックにおける処理を、
図2の流れに沿って説明する。
【0028】
ステップ301~303は、リスク低減計画入力装置410による処理である。ステップ301において、リスク低減計画入力装置410の作業計画入力部411により、作業計画情報が入力される。作業計画情報は、たとえば作業現場管理者によって作成され、作業現場管理者によって入力される。
【0029】
図3および
図4に、実施例1の作業計画情報を示す。
図3は作業工程に係る部分を示し、
図4は人員配置に係る部分を示す。作業計画情報は、複数の作業内容(本実施例では作業A~Gの7つ)に関連して定義される。また、作業計画情報は、1以上の作業範囲(本実施例では複数の作業範囲)について、作業範囲ごとに定義される。
【0030】
ここで、「作業計画情報は作業範囲ごとに定義される」という表現は、作業範囲が異なれば、形式的に作業計画情報が異なるということを意味する。それぞれの作業計画情報の内容は同一であってもよい。同一の作業範囲について複数の作業計画情報が定義されてもよい。以下の同様の表現についても同様である。
【0031】
なお、
図4の表において、上向き矢印が記入されているセルの内容は、そのセルのすぐ上のセルと同一である。他の図においても上向き矢印の意味は同じである。
【0032】
作業範囲とは、たとえば地理的範囲を意味する。1つの作業現場において複数の独立した作業がそれぞれの地理的範囲で同時並行で進む場合に、各作業に係る地理的範囲を作業範囲とすることができる。
【0033】
作業内容の例は、次のようなものである。水道管を埋設するための溝掘作業に関し、以下の第1作業~第3作業が定義される。なお、以下の第1~第3作業および第1~第3作業員は、
図3および
図4に示す作業A~作業Gおよび作業者A~Fと直接的に対応するものではなく、説明の便宜のために用いる例である。
‐第1作業:第1作業員がショベル(作業機械)を操作し、水道管を埋設するための溝を掘る。
‐第2作業:第2作業員が、ショベルによって掘られた土を仮置場に置く。この第2作業は、第1作業がある程度進行した段階で開始され、第1作業と並行して実行される。
‐第3作業:第3作業員が、溝内に降りて、ショベルが除去できなかった障害物を除去するとともに、底面を均す。この第3作業も、第1作業がある程度進行した段階で開始され、第1作業と並行して実行される。
【0034】
ここで、たとえば第1作業と第2作業および第3作業とがそれぞれ独立して実行される場合には、ショベルと第2作業員および第3作業員とが接触するリスクはない。しかしながら、これらがすべて並行して実行される場合には、第2作業員および第3作業員がショベルの掘削範囲に誤って侵入するリスクがあるので、このリスクを低減するための方策が必要となる。具体的には、第1作業員がショベル周辺に柵を設ける、ショベルの自動ブレーキ機能(人の存在を検知した場合に車体操作を禁止する機能)を有効にする、等のリスク低減方策が使用される。
【0035】
図3に示すように、作業計画情報は、各作業内容について、その作業内容が実施される期間を表す情報を含む。また、
図4に示すように、作業計画情報は、各作業内容について、1人以上の作業者と、0台以上の作業機械とを関連付ける。
図4に示すように、作業範囲Aでは作業A~Gが実施される。作業範囲Aでは、作業A~Cは作業者AおよびショベルAが関連して実施され、作業D,Eは作業者Bが関連して実施され、作業F,Gは作業者Cが関連して実施される。作業範囲Bでは作業A~Gが実施される。作業範囲Bでは、作業A~Cは作業者DおよびショベルBが関連して実施され、作業D,Eは作業者Eが関連して実施され、作業F,Gは作業者Fが関連して実施される。
【0036】
本実施例では、作業範囲Aおよび作業範囲Bが定義されているが、本実施例では作業範囲単位で処理が行われるため、以降では作業範囲Aについてのみ記述する。作業範囲Bについて、同様の処理が行われる場合には記述を省略する場合がある。
【0037】
ステップ302では、リスク低減計画入力装置410によってリスク低減計画情報が入力される。リスク低減計画情報は、たとえば作業現場管理者によって作成され入力される。リスク低減計画情報は、たとえばリスク低減方策入力部412を介して入力される。
【0038】
図5および
図6を用いて、実施例1の作業形態およびリスク低減計画について説明する。
図5は実施例1の作業形態を示し、
図6は実施例1のリスク低減計画を示す。
【0039】
図5に示すように、作業形態は、同一の作業範囲において、同時に並行して実施される作業内容の組み合わせを指す。本実施例では、4つの作業形態が定義される。作業形態1は作業内容として作業Aのみを含み、3月28日の第1期間および第2期間において有効である。作業形態2は作業内容として作業A,D,Fを含み、3月28日の第3期間および第4期間において有効である。作業形態3は作業内容として作業B,D,Fを含み、3月29日の第1期間および第2期間において有効である。作業形態4は作業内容として作業C,E,Gを含み、3月29日の第3期間および第4期間と、3月30日の第1期間において有効である。
【0040】
図6に示すように、リスク低減計画情報はリスク低減方策を含む。リスク低減方策は、リスクを低減するために使用されるべき方策である。リスク低減方策は、作業者について、作業機械について、または、作業者と作業機械との組み合わせについて、定義される。リスク低減方策は、作業者および作業機械によって使用される。リスク低減方策は、作業形態ごとに定義される。
図6の例では、作業形態1における作業Aは、車載機能Aを使用する。作業形態2における作業Aは、車載機能AおよびBを使用する。作業形態2における作業Dは、作業員支援機能Aを使用する。作業形態2における作業Fは、作業員支援機能Aを使用する。作業形態3における作業Bは、車載機能BおよびCを使用する。作業形態3における作業DおよびFは、作業員支援機能Aを使用する。作業形態4における作業Cは、車載機能CおよびDを使用する。作業形態4における作業Eは、作業員支援機能Bを使用する。作業形態4における作業Gは、作業員支援機能Aを使用する。このように、リスク低減方策は、車載機能のいずれかまたは作業支援機能のいずれかを特定する情報を含むことができる。
なお、車載機能とは、作業機械に搭載される各種の機能であり、例えば、警報機能や動作制限機能、速度制限機能、周囲状態を検出する障害物検知機能等である。また、作業支援機能は、作業員の体温、血圧等の生体情報に基づくアラーム機能や、必要な保護具の着用状況を監視する機能、付近に存在する他の作業員や作業機械の位置を示す位置表示機能等である。
【0041】
リスク低減方策は、たとえば作業現場管理者によって事前に決定される。作業現場管理者は、リスク低減方策を決定する際に、各作業形態において、各作業内容におけるリスクを分析すると好適である。
【0042】
リスク低減方策の具体例として、保護具(ヘルメットなど)を着用すること、作業機械の自動ブレーキ機能を有効にすること、等がある。リスクがある作業に従事する作業者および作業機械に対して、少なくとも1つのリスク低減方策を使用するようにすると好適である。また、作業現場管理者は、作業の開始前に、リスク低減方策の内容を、各作業者に通知するようにすると好適である。
【0043】
上述のように、リスク低減方策は作業形態ごとに定義されており(
図6)、作業形態は期間に応じて異なる(
図5)。すなわち、作業形態は時刻に応じて異なるということができる。このため、リスク低減方策は時刻に応じて異なる。このように、時刻に応じて作業形態が異なる場合でも、各時刻において適切なリスク低減方策を定義することができる。各時刻において定義されたリスク低減方策を使用することにより、時々刻々と変化する作業の中で、ヒューマンエラーを低減することができる。
【0044】
ここで、2つの作業が独立した異なる内容であっても、同一の作業範囲内で並行して実施される場合には、ある作業に係る作業機械と、別の作業に係る作業者とが接触する可能性がある。これに対し、
図6に示すように、作業内容ごとでなく、作業形態ごとにリスク低減方策を定義することにより、作業の組み合わせに対して柔軟にリスク低減方策を決定することができる。
【0045】
ステップ303では、管理装置420のサイト運用計画生成部422が、サイト運用計画を生成する。サイト運用計画は、たとえばステップ301および302で取得された情報に基づいて生成することができる。
【0046】
図7は、本実施例におけるサイト運用計画である。サイト運用計画とは、作業形態ごとに、かつ、作業内容ごとに、作業者および作業機械のリスク低減方策をまとめてリスク低減方策セットとしたものである。
図7では、たとえば、作業形態1における作業Aのリスク低減方策を、リスク低減方策セットSet1-Aとして示す。
図8は、本実施例におけるリスク低減方策セットの内訳である。
【0047】
ステップ304では、運用状況収集装置(たとえば機械システム運用状況収集装置120および作業者システム運用状況収集装置220)が、リスク低減方策の運用状況を取得する。リスク低減方策の運用状況は、そのリスク低減方策が使用されているか否か、または、そのリスク低減方策が適切に使用されているか否かを表す。すなわち、運用状況は、使用されているリスク低減方策を表す情報を含む。運用状況収集装置は、取得した運用状況を管理装置420に送信する。
【0048】
図9および
図10に、実施例1に係る運用状況の例を示す。
図9は、運用状況のうち自動的に収集される部分の例であり、
図10は、運用状況のうち作業者によって手動で入力される部分の例である。なお、すべての運用状況が自動で収集されてもよく、すべての運用状況が手動で入力されてもよい。
【0049】
本実施例では、
図9の自動収集される運用状況は、作業者または作業機械と、その作業者または作業機械が位置する作業範囲と、収集時点でその作業者または作業機械が使用しているリスク低減方策との組み合わせである。また、
図10の手動で入力される運用状況は、作業者と、その作業者が従事している作業内容と、入力時刻(日時)との組み合わせである。なお、入力時刻は、厳密に特定する必要はなく、
図10の例では日付と午前または午後を表す情報とによって特定される。
【0050】
運用状況収集装置(たとえば機械システム運用状況収集装置120および作業者システム運用状況収集装置220)による自動収集は、たとえば、リスク低減方策に関連する方策通信手段によって実現される。方策通信手段は、作業者によって携帯されてもよいし、作業機械に搭載されてもよい。方策通信手段は、リスク低減方策の使用状態を自動的に管理装置420に送信する。方策通信手段は、作業位置検出手段を備えてもよい。作業位置検出手段は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて構成することができる。方策通信手段から送信される作業位置に基づいて、作業者または作業機械が位置する作業範囲を決定することができる。
【0051】
作業者による手動入力は、たとえば、作業者が携帯する情報端末によって実現される。作業者は、たとえば作業を開始する際に自身の作業内容を入力する。作業者システム運用状況収集装置220は、入力された運用内容を、入力時刻とともに記憶する。
【0052】
ステップ305では、管理装置420のサイト運用状況管理部421が、自動収集された運用状況と手動入力された運用状況とを統合する。この統合された運用状況を、サイト運用状況と呼ぶ。
【0053】
図11は、本実施例におけるサイト運用状況である。サイト運用状況は、作業者および作業機械と、作業者および作業機械が位置する作業範囲と、収集または入力の時刻(日時)と、作業内容と、使用されているリスク低減方策との組み合わせである。
【0054】
ステップ306では、サイト運用状況管理部421が、サイト運用状況を監視し、変化の有無を検出する。変化がなければ、管理装置420は、本フローチャートの処理を一旦終了し、再度、本フローチャートの処理を実行する。
【0055】
ステップ307では、ステップ306でサイト運用状況の変化が検知された場合に、サイト運用状況管理部421が、変化に係る作業範囲に位置する全ての作業者および作業機械を抽出する。たとえば、ある作業者または作業機械について、作業内容または使用中のリスク低減方策が変化した場合に、その作業者または作業機械と同一の作業範囲に属する全ての作業者および作業機械を抽出する。
【0056】
ステップ308では、管理装置420のリスク判定部423が、リスク低減方策と運用状況との差異に応じて、リスクが高いか否かを判定する。ステップ307で抽出された作業者および作業機械について、まずサイト運用計画に基づいて現在有効なリスク低減方策を取得し、そのリスク低減方策とサイト運用状況とを比較する。この判定は、たとえば作業範囲ごとに行われる。
【0057】
この際に、サイト運用状況については、その取得時刻が現在有効なリスク低減方策の有効期間内であるもののみ対象としてもよい。たとえば
図5の例では、3月28日に取得された運用状況は、作業Aに係るリスク低減方策と比較されるが、3月27日または3月29日に取得された運用状況は、作業Aに係るリスク低減方策とは比較されない。
【0058】
本実施例では、リスク低減方策とサイト運用状況とが一致しているか否かに基づいてリスクが判定される。リスク低減方策とサイト運用状況とが一致していない場合(すなわち差異がある場合)には、リスク判定部423はリスクが高いと判定する。これは、予め作業現場管理者が計画したとおりにリスク低減方策が使用されていないことを意味する。このような事態は、たとえば作業者のヒューマンエラー等によって発生する。
【0059】
リスクの判定は、たとえば作業範囲ごとに行われる。たとえば、ある作業範囲に位置する作業者および作業機械のうち、リスク低減方策を使用していない作業者または作業機械が少なくとも1人(1台)存在する場合には、その作業範囲についてはリスクが高いと判定する。一方、その作業範囲に位置する作業者および作業機械が全てリスク低減方策を使用している場合には、その作業範囲についてはリスクが高くない(すなわちリスクが低い)と判定する。
【0060】
リスクが高くないと判定された場合には、ステップ309において、管理装置420の警告内容決定部424が、その作業範囲について警告を行わないと決定する。また、警告が継続している場合には、警告を解除すると決定する。警告内容決定部424は、警告を出力するよう警告装置(たとえば、機械警告装置110、作業者警告装置210、作業現場管理者警告装置310、等)に指令する。警告装置は、警告内容決定部424からの指令に応じ、警告を出力せず、または警告を解除する。
【0061】
リスクが高いと判定された場合には、ステップ310において、管理装置420の警告内容決定部424が、その作業範囲について警告を行うよう警告装置に指令する。警告装置は、警告内容決定部424からの指令に応じ、警告を出力する。
【0062】
具体例として、機械警告装置110は作業機械に設けられ、作業機械(または作業機械を操作する作業者)に警告を出力する。作業者警告装置210は作業者(または作業機械を操作していない作業者)によって携帯され、作業者に警告を出力する。作業現場管理者警告装置310は作業現場管理者の勤務場所に設置され、作業現場管理者に警告を出力する。
【0063】
警告の態様は当業者が適宜決定可能であるが、たとえば、警告ランプを点灯させる、警告音を出力する、リスク低減方策が使用されていないことを示す文を表示または音声出力する、等とすることができる。
【0064】
作業者は、警告によってリスク低減方策が使用されていないことに気づくことができ、これを適切に使用することができる。
【0065】
また、作業現場管理者も、警告によってリスク低減方策が使用されていないことに気づくことができ、作業者または作業機械に直接的に指示を出し、リスク低減方策を使用させることができる。
【0066】
また、ステップ310において、管理装置420は作業機械の動作を制限する。たとえば、作業機械を停止させる、作業機械の特定の動作を停止させる、作業機械の最大動作速度を制限する、等を行う。
【0067】
以上説明するように、実施例1に係る作業現場管理システムは、運用状況を随時取得し、各時点で有効なリスク低減方策と比較するので、作業内容が変化する場合でも適切な警告を行うことができる。
【0068】
実施例1において、ステップ306およびステップ307を省略してもよい。その場合には、ステップ308の処理はすべての作業者および作業機械を対象としてもよい。
【0069】
実施例1では、
図2に示すように警告部(警告装置)が複数設けられており、たとえば機械警告装置110は作業機械に対して警告を出力し、作業者警告装置210は作業者に対して警告を出力する。このため、個人および機械を対象とする多様なリスク低減方策について適切に警告を行うことができる。ただし、変形例として、警告部を単一とすることも可能である。
【0070】
実施例1では、
図2に示すように、運用状況収集装置が、機械システム運用状況収集装置120および作業者システム運用状況収集装置220を備えるので、作業機械および作業者の双方について適切に運用状況を収集することができる。ただし、変形例として、機械システム運用状況収集装置120および作業者システム運用状況収集装置220のいずれかを省略することも可能である。
【0071】
実施例1では、
図4および
図11等に示すように、作業現場管理システムは、複数の作業範囲に存在する複数の作業機械および複数の作業者を管理するためのものである。すなわち、リスク低減方策および運用状況は、複数の作業範囲に関連して定義され、リスク低減方策および運用状況は、作業範囲と、作業者と、作業機械との組み合わせについて定義される。このため、多数の場所における多様な作業環境を適切に管理することができる。ただし、変形例として、作業者は1人であってもよく、作業機械が1台であってもよく、作業範囲が1つであってもよい。
【0072】
実施例1では、
図6および
図11に示すように、リスク低減方策および運用状況は、作業内容ごとに定義される。このため、時刻に応じて変化する複数の多様な作業内容を、適切に管理することができる。ただし、変形例として、リスク低減方策および運用状況が、複数の作業内容に共通して定義されてもよい。
【0073】
実施例1では、
図5および
図7に示すように、リスク低減方策が時刻に応じて異なり、
図10および
図11に示すように、運用状況は収集時刻を表す情報を含む。このため、各時刻で必要なリスク低減方策に対する判定を自動的に行うことができる。ただし、変形例として、リスク低減方策は時刻によらず一律であってもよい。その場合には、作業現場管理者等が、時刻に応じてリスク低減方策を適宜変更してもよい。
【0074】
実施例1では、
図2のステップ307において、管理装置420が、リスクが高いか否かを作業範囲ごとに判定する。そして、管理装置420は、リスクが高いと判定された作業範囲については、警告装置に警告を行うよう指令するが、リスクが高くない作業範囲については、警告装置に警告を行うよう指令しない。このため、警告が必要な作業範囲においてのみ警告を行うことができ、不要な警告を省略して現場作業を効率化することができる。ただし、リスク判定を作業範囲によらず行うことも可能である。
【0075】
実施例1では、管理装置420は、リスクが高いと判定された場合に、作業機械の動作を制限する。このため、仮にリスク低減方策が使用されていない場合であっても、なおリスクを低減することができる。ただし、作業機械の動作を制限しないようにすることも可能である。