(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134420
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】鼻呼吸測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/087 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A61B5/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033535
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520089716
【氏名又は名称】株式会社サイエンスエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】笹原 一将
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宜史
(72)【発明者】
【氏名】槇 宏太郎
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SU04
4C038SU06
4C038SX02
4C038VB40
(57)【要約】
【課題】廃棄量が少なく、低コストで繰り返し使用できる鼻呼吸測定装置の提供。
【解決手段】鼻呼吸測定装置1は、患者の鼻呼吸に関する情報を測定する測定部2と、測定部2を支持し、患者の鼻に装着される装着部5と、を備え、少なくとも、測定部2を含む電装部31と、装着部5を含む人体接触部32に分離可能である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の鼻呼吸に関する情報を測定する測定部と、
前記測定部を支持し、前記患者の鼻に装着される装着部と、を備え、
少なくとも、前記測定部を含む電装部と、前記装着部を含む人体接触部に分離可能である、鼻呼吸測定装置。
【請求項2】
前記電装部と前記人体接触部との間に介在し、前記患者の鼻孔に流体連通して前記測定部を配置する測定流路を形成する測定流路形成部をさらに備え、
前記電装部と、前記人体接触部と、前記測定流路形成部に分離可能である、請求項1に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項3】
前記電装部、前記人体接触部、及び前記測定流路形成部は、互いに材質が異なる、請求項2に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項4】
前記人体接触部と前記測定流路形成部とを分離可能に接合する第1接合部と、
前記測定流路形成部と前記電装部とを分離可能に接合する第2接合部と、を備える、請求項2または3に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項5】
前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方は、化学的接合手段を備える、請求項4に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項6】
前記化学的接合手段は、溶解可能な接着剤である、請求項5に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項7】
前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方は、機械的接合手段を備える、請求項4に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項8】
前記機械的接合手段は、嵌め込みによる嵌合である、請求項7に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項9】
前記機械的接合手段は、ねじによる締結である、請求項7に記載の鼻呼吸測定装置。
【請求項10】
前記第2接合部には、前記測定流路形成部と前記電装部とを接合したときの気密性を確保するシール材が配置されている、請求項4~9のいずれか一項に記載の鼻呼吸測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻呼吸測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に記載の呼吸監視デバイスが知られている。この呼吸監視デバイスは、鼻カニューレおよび鼻錐状突起を介して患者の鼻と流体接続状態にある圧力変換器と、前記鼻錐状突起に取り付けられている温度センサと、を備えている(特許文献1の
図1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者の鼻呼吸に関連する生体情報を取得する際、衛生面や測定精度の観点から、デバイスは使い捨てにすることが望まれる。上記呼吸監視デバイスにおいては、患者の鼻に接触する鼻カニューレごと廃棄することとなるが、鼻カニューレには長いチューブが使用されているため、必然的に廃棄量が多くなる。したがって、日常的に患者の鼻呼吸に関連する生体情報を取得するには、廃棄量及びコストの面で適していない。Nasal cycleに代表される、鼻の生理学的周期性を持つ現象に関連する調査のためには、廃棄量が少なく、低コストで繰り返し使用できるデバイスが必要である。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、廃棄量が少なく、低コストで繰り返し使用できる鼻呼吸測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置は、患者の鼻呼吸に関する情報を測定する測定部と、前記測定部を支持し、前記患者の鼻に装着される装着部と、を備え、少なくとも、前記測定部を含む電装部と、前記装着部を含む人体接触部に分離可能である。
【0007】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記電装部と前記人体接触部との間に介在し、前記患者の鼻孔に流体連通して前記測定部を配置する測定流路を形成する測定流路形成部をさらに備え、前記電装部と、前記人体接触部と、前記測定流路形成部に分離可能である。
【0008】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記電装部、前記人体接触部、及び前記測定流路形成部は、互いに材質が異なる。
【0009】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記人体接触部と前記測定流路形成部とを分離可能に接合する第1接合部と、前記測定流路形成部と前記電装部とを分離可能に接合する第2接合部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方は、化学的接合手段を備える。
【0011】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記化学的接合手段は、溶解可能な接着剤である。
【0012】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方は、機械的接合手段を備える。
【0013】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記機械的接合手段は、嵌め込みによる嵌合である。
【0014】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記機械的接合手段は、ねじによる締結である。
【0015】
本発明の一態様に係る鼻呼吸測定装置において、前記第2接合部には、前記測定流路形成部と前記電装部とを接合したときの気密性を確保するシール材が配置されている。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の一態様によれば、廃棄量が少なく、低コストで繰り返し使用できる鼻呼吸測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置が患者の鼻に装着されている様子を示す正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置の背面側斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置の断面構成図である。
【
図5】第1実施形態に係る測定流路形成部の底面図である。
【
図6】第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置を分離したときの図である。
【
図7】第2実施形態に係る鼻呼吸測定装置の断面構成図である。
【
図8】第2実施形態に係る鼻呼吸測定装置の側面図である。
【
図9】第3実施形態に係る鼻呼吸測定装置の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置1が患者100の鼻110に装着されている様子を示す正面図である。
図1に示すように、鼻呼吸測定装置1は、測定部2と、電源部3と、通信部4と、装着部5と、を備えている。
【0020】
なお、
図1中、符号100は患者、符号110は患者の鼻、符号120は患者の口を示している。鼻110は、左右の鼻孔111、左右の鼻孔111を隔てる鼻中隔112、鼻110の先端である鼻尖113、及び鼻110の左右に膨らむ鼻翼114を備えている。口120は、上唇121、下唇122を備えている。
【0021】
測定部2は、患者100の鼻呼吸に関する情報を測定する。本実施形態の測定部2は、圧力センサである。圧力センサは、患者100の鼻呼吸に伴うデバイス周囲の気流の流れによる圧力変化を測定する。この圧力センサは、絶対圧センサが好ましい。なお、測定部2は、温度センサであってもよい。温度センサは、患者100の鼻呼吸に伴うデバイス周囲の気流の流れによるデバイスの温度変化を測定する。また、測定部2は、その他のセンサ、例えば、湿度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、脈波センサ、あるいは流量センサであっても構わない。また、測定部2は、複数種のセンサを併用していても構わない。
【0022】
電源部3は、測定部2や通信部4に電力を供給する。本実施形態の電源部3は、空気電池である。空気電池は、正極活物質として空気中の酸素、負極活物質として金属を用いる電池であり、正極側の活物質が酸素なので、電池容器内に正極活物質を充填する必要が無く、小型且つ長時間の使用に適している。なお、電源部3は、電池容器内に正極活物質を充填した通常の一次電池や、充電可能な二次電池であっても構わない。
【0023】
通信部4は、図示しない外部装置と無線通信する無線通信モジュールである。外部装置は、例えば、測定部2の測定結果を受信し、患者100の鼻呼吸の状態(流量など)を演算するデータ処理装置である。鼻呼吸測定装置1は、通信部4の代わりに、または、通信部4と共に、測定部2の測定結果を記憶する記憶部を備えてもよい。記憶部は、例えば、不揮発性メモリであり、デバイスを患者100から取り外したときに、当該メモリに記憶された測定結果を取り出すようにしても構わない。
【0024】
測定部2、電源部3、及び通信部4は、基板6に実装されている。装着部5は、基板6を介して測定部2、電源部3、及び通信部4を支持し、患者100の鼻110に装着される。装着部5は、患者100の鼻110の一部を挟み込む。本実施形態の装着部5は、患者100の左右の鼻孔111に差し込まれ、鼻孔111内で鼻中隔112を挟み込む。なお、装着部5は、患者100の鼻尖113を挟み込んでもよいし、患者100の鼻翼114を挟み込む構成であっても構わない。
【0025】
図1に示すように、鼻呼吸測定装置1は、装着部5が患者100の鼻110に装着された状態において当該鼻110の外に露出する装置部分が、患者100の鼻110と上唇121との間に収まる大きさとなっている。すなわち、当該露出部分は、患者100の人中の長さ(例えば20mm)以下の大きさとなっている。好ましくは、当該露出部分が、10mm程度で、装置の全高(上下方向の寸法)が20mm程度であるとよい。これにより、患者100の鼻110に装着された鼻呼吸測定装置1が、患者100の口120を塞いだり、食事や発声の邪魔になることを抑制できる。
【0026】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の構成及び位置関係について説明する。なお、X軸方向は、左右方向である。Y軸方向は、前後方向である。Z軸方向は、上下方向である。また、X軸方向の+側は、人体の左側とし、-側は右側とする。Y軸方向の+側は、人体の背面側とし、-側は正面側とする。Z軸方向の+側は、人体の上側とし、-側は下側とする。
【0027】
図2は、第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置1の背面側斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置1の断面構成図である。
図4は、第1実施形態に係る装着部5の平面図である。
図5は、第1実施形態に係る測定流路形成部33の底面図である。
図2に示すように、鼻呼吸測定装置1は、電装部31と、人体接触部32と、測定流路形成部33と、を備えている。
【0028】
電装部31には、
図3に示すように、上述した測定部2、電源部3、通信部4、及び基板6が含まれている。人体接触部32には、上述した装着部5が含まれている。測定流路形成部33は、電装部31と人体接触部32との間に介在し、患者100の鼻孔111に流体連通して測定部2を配置する測定流路12を形成している。
【0029】
電装部31、人体接触部32、及び測定流路形成部33は、互いに材質が異なる。例えば、電装部31の基板6は、ガラス布基材エポキシ樹脂(FR-4)や複合基材エポキシ樹脂(CEM-3)などのリジッド基板、あるいはポリイミドなどのフレキシブル基板から形成されている。
【0030】
測定流路形成部33は、例えば、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂など、ある程度の剛性を有する材料から形成されている。人体接触部32(装着部5)は、例えば、フッ素樹脂(PTFE)やPEEK樹脂、シリコーンゴムなどの生体適合性を有し、かつ弾性を有する材料から形成されている。
【0031】
なお、人体接触部32は、例えば、測定やデバイスの取り付けの安定性を要求する場合には、測定流路形成部33と同じく、ある程度の剛性を有する材料から形成されていてもよい。この場合には、装着部5と測定流路形成部33とが一体型として形成しても構わない。すなわち、人体接触部32が、装着部5と測定流路形成部33とを含んでいても構わない。あるいは、測定流路形成部33が、電装部31と分離不可能に接合されていてもよいく、この場合、電装部31が測定流路形成部33を含んでいても構わない。
【0032】
装着部5は、略U字状に形成されている。装着部5は、一対の突起部10と、一対の突起部10の間を接続する接続部11と、を備えている。接続部11は、X軸方向に延びている。一対の突起部10は、X軸方向に間隔をあけて配置され、接続部11から上側(+Z側)に向かって延びている。一対の突起部10は、上側に向かうに従って、X軸方向の寸法(
図3参照)及びY軸方向の寸法(
図2及び
図4参照)が小さくなる先細り形状を有している。
【0033】
図3に示す、一対の突起部10がX軸方向で互いに対向する対向面10aは、患者100の鼻中隔112に接触する。一方、接続部11の上面11aは、患者100の鼻孔111外の鼻中隔112の先端面に接触する。つまり、装着部5の患者100の鼻110への装着時において、一対の突起部10は、鼻孔111内に配置され、接続部11は、鼻孔111外に配置される。
【0034】
突起部10の対向面10aは、第1平面10a1と、第2平面10a2とを含む。第1平面10a1は、Y-Z平面に平行な平面であり、突起部10の対向面10aにおける先端部に形成されている。第1平面10a1は、鼻中隔112と接触する。なお、突起部10の対向面10aにおける先端部は、鼻中隔112を形成する皮膚や粘膜と接触するため、丸みを帯びた曲面になっていても構わない。
【0035】
第2平面10a2は、第1平面10a1に対し角度θ1で、X軸方向外側に向かって傾斜している。第2平面10a2は、第1平面10a1の下端から、接続部11の上面11aまで延びている。第2平面10a2は、鼻中隔112と接触してもよいし、鼻中隔112から離れ、第1平面10a1における鼻中隔112に対する接触圧を高める構成であってもよい。
【0036】
突起部10の鼻中隔112と接触しない非接触部分の少なくとも一部は、流線型に形成されている。つまり、突起部10の第1平面10a1ないし第2平面10a2以外は、全て流線型であってもよい。
図3に示すように、一対の突起部10のX軸方向で互いに背向する側面10bは、第1曲面10b1と、第2曲面10b2と、を含む。
【0037】
第1曲面10b1は、突起部10の側面10bにおける先端部から略中腹部にかけて形成されている。第1曲面10b1は、下側(-Z側)に向かうに従って、Y-Z平面に対する角度θ2が漸次大きくなる形状を有する。これにより、患者100の鼻孔111内の気流が、鼻中隔112の側面から突起部10の側面10bに滑らかに流れ、突起部10の先端部において気流の剥離や淀み、渦などが発生し難くなる。
【0038】
第2曲面10b2は、第1曲面10b1の下端に連なり、突起部10の側面10bにおける略中腹部から突起部10の根本部(接続部11と交わる部分)にかけて形成されている。第1曲面10b1は、下側(-Z側)に向かうに従って、Y-Z平面に対する角度θ3が漸次小さくなる形状を有する。これにより、一対の突起部10の左右の広がりを抑制し、一対の突起部10が挿入される鼻孔111が狭くならないようにしている。
【0039】
装着部5(人体接触部32)の一対の突起部10と反対側には、測定流路形成部33が接合されている。測定流路形成部33には、患者100の鼻孔111に流体連通する測定流路12が形成されている。なお、「鼻孔に流体連通する」とは、測定流路12が、鼻孔111内に限らず、本実施形態のように、鼻孔111外に配置される場合であっても、鼻呼吸による流体の流れの影響を受ける位置に連通していることをいう。
【0040】
測定流路12は、測定部2が配置される測定室13と、測定室13から測定流路形成部33の側面11bまで延びる接続流路14と、を備えている。測定室13は、測定流路形成部33の下面11cに形成されている。接続流路14は、Z軸方向に延び測定室13に接続される第1流路14aと、X軸方向に延び第1流路14aと直角に交わって測定流路形成部33の側面11bに接続される第2流路14bと、を備えている。なお、第2流路14bは、必ずしも第1流路14aに対し、直角に交わらなくてもよい。測定流路形成部33の左右の側面11bは、下側(-Z側)に向かうに従って、接続部11のX軸方向の寸法が小さくなるように傾斜している。
【0041】
図5に示すように、測定室13は、底面視で円形に形成されている。なお、測定室13の形状は、底面視で円形に限らず、矩形や多角形などであっても構わない。接続流路14(第1流路14a)は、測定室13に対し偏心した位置で接続されている。接続流路14の第1流路14aの軸と、測定部2のセンシング部分の軸とが一致する位置関係にすることで、測定部2の感度を高めることができる。それに対して、両者の軸を一致させないことで、測定部2の耐久性や安定性を高めることもできる。これは、デバイスの設計者が任意に設定するとよい。
【0042】
測定流路12の開口15は、測定流路形成部33の側面11bに形成されている。測定流路12の開口15は、患者100の鼻呼吸による流体の流れに略直交する向きに形成されている。これにより、患者100の鼻呼吸による流体が、測定流路12の開口15を介して第2流路14bに流入し難くなり、測定部2(圧力センサ)が静圧を測定することが可能となる。静圧は、周知のように流量に変換し易い。なお、患者100の鼻呼吸による流体が、測定流路12に流入する場合、測定部2が全圧を測定する構成であっても構わない。
【0043】
測定流路12の開口15は、測定流路形成部33の側面11bにおいて、装着部5の背面側(+Y側)に配置されている。
図5に示すように、鼻孔111は、個人差にもよるが背面側に広がっている場合が多いため、測定流路12の開口15を背面側(+Y側)に配置することで、鼻孔111の略中心を流れる流体の静圧や全圧を測定し易くなり、鼻呼吸の測定精度を高めることができる。
【0044】
測定流路形成部33には、上記測定流路12として、患者100の左側の鼻孔111に流体連通する第1測定流路12Aと、第1測定流路12Aと独立し、患者100の右側の鼻孔111に流体連通する第2測定流路12Bと、が形成されている。測定部2は、
図3に示すように、第1測定流路12Aに配置された第1測定部2Aと、第2測定流路12Bに配置された第2測定部2Bと、を備えている。第1測定流路12A及び第2測定流路12Bの開口15は、測定流路形成部33の左右の側面11bに背向して形成されている。
【0045】
上記構成の鼻呼吸測定装置1は、
図3に示すように、人体接触部32と測定流路形成部33とを分離可能に接合する第1接合部41と、測定流路形成部33と電装部31とを分離可能に接合する第2接合部42と、を備えている。第1接合部41及び第2接合部42は、化学的接合手段を備えている。化学的接合手段は、例えば、アセトンなどの溶解剤で溶解可能なシアノアクリレート系の接着剤20である。なお、接着剤20としては、お湯、トルエン、ラッカーシンナー、アルコールや酢酸エチルなどで溶解可能なものを使用してもよい。
【0046】
人体接触部32(装着部5)と測定流路形成部33は、溶解可能な接着剤20で接合されている。また、測定流路形成部33と電装部31(基板6)は、溶解可能な接着剤20で接合されている。基板6は、測定室13の底面を封止している。第2接合部42には、測定流路形成部33と電装部31とを接合したときの気密性を確保するシール材21が、測定室13の周囲に配置されている。シール材21は、Z軸方向に延びる円筒状に形成され、装着部5と基板6とを接合したときに圧縮されて測定室13の気密性を確保している。
【0047】
上記構成の鼻呼吸測定装置1によれば、患者100が鼻呼吸すると、流体が装着部5の側面11bに沿って流れる。装着部5の側面11bには、測定流路12の開口15が形成されており、測定部2は、鼻呼吸の主流から離れた位置で、鼻呼吸に伴うデバイス周囲の圧力変化(例えば静圧の変化)を測定することができる。また、装着部5には、患者100の左右の鼻孔111に流体連通する、互いに独立した第1測定流路12A及び第2測定流路12Bが形成されており、第1測定部2A及び第2測定部2Bにおいて左右の鼻呼吸情報をそれぞれ独立して取得することができる。このような小型の鼻呼吸測定装置1は、装着された患者100に与える不快感が少なく、日常的に、長時間違和感なく使用できる。
【0048】
図6は、第1実施形態に係る鼻呼吸測定装置1を分離したときの図である。
図6に示すように、鼻呼吸測定装置1は、接着剤20を溶解させることにより、人体接触部32、測定流路形成部33、及び電装部31に分離可能である。例えば、人体接触部32のみを分離し使い捨てすることで、衛生面が担保され、廃棄量が少なくなる。さらに、人体接触部32の形状を患者100の鼻110に合わせて調整することも可能になる。
【0049】
また、デバイスで一番コストが高い電装部31を、同一の患者100や他の患者100でも使い回すことができるため、大幅なコスト削減が図れる。さらに、電装部31と共に測定流路形成部33を同一の患者100で使い回すことで、コスト削減が図れるだけでなく、鼻呼吸に関連する生体情報の測定条件の揺らぎを抑えることができる。加えて、電装部31と測定流路形成部33との間の接合方法を規格化することで、測定条件を同一に揃えた状態で容易に他のセンサに切り替えることが可能になる。
【0050】
このように、上述した第1実施形態の鼻呼吸測定装置1は、患者100の鼻呼吸に関する情報を測定する測定部2と、測定部2を支持し、患者100の鼻に装着される装着部5と、を備え、少なくとも、測定部2を含む電装部31と、装着部5を含む人体接触部32に分離可能である。この構成によれば、人体接触部32のみを廃棄し、コストが高い測定部2を含む電装部31を使い回すことができるため、廃棄量が少なく、低コストで繰り返し使用できる鼻呼吸測定装置1が得られる。
【0051】
また、第1実施形態の鼻呼吸測定装置1は、電装部31と人体接触部32との間に介在し、患者100の鼻孔111に流体連通して測定部2を配置する測定流路12を形成する測定流路形成部33をさらに備え、電装部31と、人体接触部32と、測定流路形成部33に分離可能である。この構成によれば、測定流路形成部33も使い回すことができるため、鼻呼吸に関連する生体情報の測定条件の揺らぎを抑えることができる。加えて、電装部31と測定流路形成部33との間の接合方法を規格化することで、測定条件を同一に揃えた状態で容易に他のセンサに切り替えることが可能になる。
【0052】
また、第1実施形態の鼻呼吸測定装置1は、電装部31、人体接触部32、及び測定流路形成部33は、互いに材質が異なる。このように、電装部31、人体接触部32、及び測定流路形成部33の材質を使い分けることで、デバイスの最適化に加えて患者100への負担を低減させることができる。
【0053】
また、第1実施形態の鼻呼吸測定装置1は、人体接触部32と測定流路形成部33とを分離可能に接合する第1接合部41と、測定流路形成部33と電装部31とを分離可能に接合する第2接合部42と、を備える。
【0054】
また、第1実施形態の鼻呼吸測定装置1において、第1接合部41及び第2接合部42は、化学的接合手段を備える。この構成によれば、人体接触部32と測定流路形成部33との間、及び、測定流路形成部33と電装部31との間の接合の安定性を高めることができる。なお、第1接合部41及び第2接合部42の少なくとも一方は、後述する機械的接合手段を備えていても構わない。
【0055】
また、第1実施形態の鼻呼吸測定装置1において、化学的接合手段は、溶解可能な接着剤20である。この構成によれば、人体接触部32と測定流路形成部33とを溶解剤を用いて容易に分離でき、また、測定流路形成部33と電装部31とを溶解剤を用いて容易に分離できる。
【0056】
また、本実施形態の鼻呼吸測定装置1は、第2接合部42には、測定流路形成部33と電装部31とを接合したときの気密性を確保するシール材21が配置されている。この構成によれば、第2接合部42において外部からの流体の流入を抑制し、測定部2に対する干渉を減らすことができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0058】
図7は、第2実施形態に係る鼻呼吸測定装置1の断面構成図である。
図8は、第2実施形態に係る鼻呼吸測定装置1の側面図である。
図7及び
図8に示すように、第2実施形態においては、第1接合部41及び第2接合部42が、機械的接合手段を備えている。
【0059】
第1接合部41は、
図7に示すように、測定流路形成部33側に設けられた嵌合溝51と、人体接触部32側に設けられた嵌合突起52と、を備えている。嵌合溝51は、断面視台形の蟻溝形状を有する。嵌合突起52は、嵌合溝51に嵌合可能な断面視逆さ台形のほぞ形状を有する。嵌合溝51は、Y軸方向に貫通していても構わない。この場合、嵌合溝51のY軸方向の端部から嵌合突起52を挿入することができる。なお、嵌合溝51が、Y軸方向に貫通しておらず、人体接触部32が弾性部材である場合、嵌合突起52を弾性変形させて嵌合溝51に挿入しても構わない。
【0060】
第2接合部42は、
図8に示すように、電装部31側に設けられた回動フック61と、測定流路形成部33側に設けられた係止溝62と、を備えている。回動フック61は、基板6に対し回動軸61a回りに回動可能に支持されている。係止溝62は、略L字状の回動フック61の先端部(屈曲部)が係止可能に形成されている。
図8に示す例では、回動フック61及び係止溝62が、鼻呼吸測定装置1の正面及び背面に設けられているが、鼻呼吸測定装置1の左右の側面に設けられていても構わない。また、接合安定性を確保できれば、回動フック61及び係止溝62が一組だけ設けられていても構わない。
【0061】
上述したように、第2実施形態の鼻呼吸測定装置1において、第1接合部41及び第2接合部は、機械的接合手段を備える。この構成によれば、接着剤20などを使用せずに、電装部31、人体接触部32、及び測定流路形成部33を分離可能に接合できる。また、第2実施形態の機械的接合手段は、嵌め込みによる嵌合であるため、ねじなどの固定部品を使用せずに済む。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0063】
図9は、第3実施形態に係る鼻呼吸測定装置1の断面構成図である。
図9に示すように、第3実施形態においては、第1接合部41が、機械的接合手段を備えている。第3実施形態の機械的接合手段は、ねじ72による締結である。
【0064】
第1接合部41は、
図7に示すように、測定流路形成部33側に設けられたねじ孔71と、ねじ孔71に螺合するねじ72と、人体接触部32側に設けられ、ねじ72のヘッド部が収容される座ぐり孔73と、を備えている。ねじ孔71は、Z軸方向に対して斜めに形成されている。このねじ孔71にねじ72が螺合することで、人体接触部32と測定流路形成部33との締結力を高めることができる。つまり、ねじ72の本数を削減できる。
【0065】
座ぐり孔73は、装着部5の接続部11に形成されている。座ぐり孔73は、接続部11の上面11a以下にねじ72を配置する。これにより、ねじ72が患者100の鼻中隔112と接触しないようにすることができる。
上述したように、第3実施形態の鼻呼吸測定装置1において、第1接合部41は、機械的接合手段を備える。この第3実施形態の機械的接合手段は、ねじ72による締結であるため、ねじ回し(工具)を使用すれば、人体接触部32と測定流路形成部33とを容易に分離できる。なお、第3実施形態の機械的接合手段は、第2接合部42に適用しても構わない。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0067】
1…鼻呼吸測定装置、2…測定部、2A…第1測定部、2B…第2測定部、3…電源部、4…通信部、5…装着部、6…基板、10…突起部、10a…対向面、10a1…第1平面、10a2…第2平面、10b…側面、10b1…第1曲面、10b2…第2曲面、11…接続部、11a…上面、11b…側面、11c…下面、12…測定流路、12A…第1測定流路、12B…第2測定流路、13…測定室、14…接続流路、14a…第1流路、14b…第2流路、15…開口、20…接着剤、21…シール材、31…電装部、32…人体接触部、33…測定流路形成部、41…第1接合部、42…第2接合部、51…嵌合溝、52…嵌合突起、61…回動フック、61a…回動軸、62…係止溝、71…孔、73…孔、100…患者、110…鼻、111…鼻孔、112…鼻中隔、113…鼻尖、114…鼻翼、120…口、121…上唇、122…下唇、θ1…角度、θ2…角度、θ3…角度