(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134455
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】反転装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/08 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B66C13/08 R
B66C13/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033581
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 友伸
(57)【要約】
【課題】1機のクレーンで箱体の反転作業を可能とする反転装置を提供する。
【解決手段】箱体40を縦置状態から横置状態または横置状態から縦置状態へと反転させる反転装置1は、反転治具10と、反転治具10に支持された吊上機器20とを備えている。反転治具10は、長手方向を有するビーム部材11と、ビーム部材11の下部に設けられ、吊上機器20が吊り下げられる下吊り部18と、ビーム部材11の長手方向における下吊り部18が設けられる位置とは異なる位置でビーム部材11の上部に設けられ、クレーンフック30が係合する上吊り部16とを有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体を縦置状態から横置状態または横置状態から縦置状態へと反転させる反転装置であって、
反転治具と、
前記反転治具に支持された吊上機器とを備え、
前記反転治具は、
長手方向を有するビーム部材と、
前記ビーム部材の下部に設けられ、前記吊上機器が吊り下げられる下吊り部と、
前記ビーム部材の前記長手方向における前記下吊り部が設けられる位置とは異なる位置で前記ビーム部材の上部に設けられ、クレーンフックが係合する上吊り部とを有する、反転装置。
【請求項2】
前記上吊り部に前記クレーンフックが係合して前記ビーム部材が上方から吊り下げられた状態で、前記箱体の下縁部に前記吊上機器を係合させ、前記吊上機器で前記下縁部を吊り上げることにより、前記箱体を反転させる、請求項1に記載の反転装置。
【請求項3】
前記反転装置は、前記箱体の上部に取り付けられる上治具と、前記箱体の下部に取り付けられる下治具とをさらに備え、
前記上治具と前記下治具とは前記箱体から同じ方向に張り出した張出部を有する、請求項1または請求項2に記載の反転装置。
【請求項4】
前記ビーム部材は、長手方向に間隔を置いて配置された第1回転装置と第2回転装置とを備え、
一端が天井に固定され、他端が床に固定された索条が、前記第1回転装置の下側を経由し、前記第2回転装置の上側に掛け回される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の反転装置。
【請求項5】
前記ビーム部材または前記クレーンフックから吊り下げられ、前記箱体の上縁部に係合する索体をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の反転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、箱体を縦置状態から横置状態または横置状態から縦置状態へと反転させる反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-35624号公報(特許文献1)には、圧力容器に用いられる筒体を縦置状態から横置状態へと反転させる反転作業に用いられる、筒体用反転治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献には、大型の筒体を反転するために筒体用反転治具と複数のクレーンとを用いることが記載されている。反転作業に複数のクレーンを必要とするので、複数のクレーンが揃わなければ反転作業ができないという設備的制約が生じるとともに、複数の操作者がタイミングを合わせてクレーンを操作するという熟練技能が求められていた。
【0005】
本開示では、1機のクレーンで箱体の反転作業を可能とする反転装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、箱体を縦置状態から横置状態または横置状態から縦置状態へと反転させる反転装置が提案される。反転装置は、反転治具と、反転治具に支持された吊上機器とを備えている。反転治具は、長手方向を有するビーム部材と、ビーム部材の下部に設けられ、吊上機器が吊り下げられる下吊り部と、ビーム部材の長手方向における下吊り部が設けられる位置とは異なる位置でビーム部材の上部に設けられ、クレーンフックが係合する上吊り部とを有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る反転装置によれば、1機のクレーンを用いて箱体を反転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る反転装置を構成する反転治具の正面図である。
【
図4】第一実施形態に係る反転装置の正面図である。
【
図5】第一実施形態に係る反転装置を用いた箱体の反転作業を示す模式図である。
【
図6】第二実施形態に係る反転装置の構成を示す模式図である。
【
図7】第二実施形態に係る反転装置を用いた箱体の反転作業を示す第1の模式図である。
【
図8】第二実施形態に係る反転装置を用いた箱体の反転作業を示す第2の模式図である。
【
図9】第三実施形態に係る反転装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る反転装置を構成する反転治具10の正面図である。
図2は、
図1に示される反転治具10の平面図である。
図3は、
図1に示される反転治具10の側面図である。
図2には、
図1中に示される矢印II方向から見た反転治具10が図示されている。
図1には、
図2中に示される矢印I方向から見た反転治具10が図示されている。
図3には、
図1,2中に示される矢印III方向から見た反転治具10が図示されている。
【0011】
図1~3に示されるように、反転治具10は、ビーム部材11と、上吊り部16と、下吊り部18とを主に有している。
【0012】
ビーム部材11は、長手方向を有している。ビーム部材11の長手方向は、
図1,2においては図中の左右方向、
図3においては紙面垂直方向である。ビーム部材11は、直線上に延びている。ビーム部材11は、金属材料で形成されている。ビーム部材11は、鉄鋼材料で形成されている。ビーム部材11は、形鋼を用いて形成されている。
図1~3に示されるビーム部材11は、上フランジ12、ウェブ13、および下フランジ14を有するI形鋼である。ビーム部材11は、T形鋼、山形鋼などの他の種類の形鋼で形成されてもよい。ビーム部材11は、形鋼に限られず、管材などの他の形状を有してもよい。ビーム部材11は、その一部または全部が湾曲または屈曲した形状を有してもよい。
【0013】
下吊り部18は、ビーム部材11の下部に設けられている。下吊り部18は、たとえばビーム部材11の下フランジ14に溶接されて、ビーム部材11の下部に固定されている。下吊り部18は、環状の形状を有している。
図1に示される下吊り部18は、円環状の形状を有している。下吊り部18は、円環形状に限られず、後述する吊上機器20と係合して吊上機器20を下吊り部18から吊り下げることができる形状であれば、任意の形状を有していてもよい。
【0014】
図2に示されるように、下吊り部18の径方向がビーム部材11の長手方向と平行とされている。下吊り部18は、ビーム部材11の長手方向に直交する短手方向に向いて、開口している。下吊り部18が開口する向きは、ビーム部材11の短手方向に限られず、任意の方向であってもよい。
【0015】
上吊り部16は、ビーム部材11の上部に設けられている。上吊り部16は、たとえばビーム部材11の上フランジ12に溶接されて、ビーム部材11の上部に固定されている。上吊り部16は、環状の形状を有している。
図3に示される上吊り部16は、円環状の形状を有している。上吊り部16は、円環形状に限られず、後述するクレーンフック30に上吊り部16が係合してクレーンフック30から反転治具10を吊り下げることができる形状であれば、任意の形状を有していてもよい。
【0016】
図3に示されるように、上吊り部16は、ビーム部材11の長手方向に向いて開口している。上吊り部16の径方向が、ビーム部材11の長手方向に直交している。
【0017】
上吊り部16と下吊り部18とは、ビーム部材11の長手方向において、互いに異なる位置でビーム部材11に取り付けられている。
図1~3に示される例では、上吊り部16は、ビーム部材11の一方の端部の上部に設けられており、下吊り部18は、ビーム部材11の他方の端部の下部に設けられている。
【0018】
図4は、第一実施形態に係る反転装置1の正面図である。反転装置1は、
図1~3を参照して説明した反転治具10と、反転治具10に支持された吊上機器20とを有している。吊上機器20は、反転治具10の下吊り部18から吊り下げられている。吊上機器20は、本体部22と、本体部22から上方に延びる掛止部23と、本体部22から下方に延びる索状部24とを有している。掛止部23がビーム部材11の下吊り部18に係合することにより、吊上機器20は反転治具10に吊り下げられている。
【0019】
掛止部23は、下吊り部18に係合するフック形状を有していてもよい。索状部24は、たとえばワイヤ、ロープ、チェーンなどで形成されており、可撓性を有している。索状部24は、本体部22から下方に延びる長さを調節可能に構成されている。索状部24は、その下端にフック形状を有していてもよい。
【0020】
吊上機器20は、チェーンブロック、レバーホイスト、電動ホイストなどの、対象物を吊り上げて運搬する揚重機であればよい。典型的には、吊上機器20としてチェーンブロックを用いることができ、安価なチェーンブロックを採用することで反転治具10のコストを低減できる。
【0021】
反転治具10の上吊り部16に、クレーンフック30が係合している。
図4に示されるクレーンフック30は、円環形状の上吊り部16を貫通している。クレーンフック30は、ワイヤロープ32によって吊り下げられている。ワイヤロープ32の下端に、クレーンフック30が取り付けられている。クレーンフック30は、ワイヤロープ32が建屋の天井部に設けられたガーダから吊り下げられた天井クレーンを構成するものであってもよい。またはクレーンフック30は、トラッククレーンなどの他の種類のクレーンを構成するものであってもよい。
【0022】
反転治具10の上吊り部16にクレーンフック30を通した後、クレーンフック30の下面に反転治具10のビーム部材11が当接することにより、ビーム部材11が略水平に延びるように反転治具10が吊り下げられた状態を維持することが可能とされている。
【0023】
図4および以下の図では、クレーンフック30が環状の上吊り部16に直接係合する例が示されている。クレーンフック30は、シャックル、ワイヤなどの介在部材を介して、上吊り部16に係合してもよい。クレーンフック30が係合する上吊り部16、の概念は、介在部材を介しての上吊り部16へのクレーンフック30の係合も含むものである。
【0024】
図5は、第一実施形態に係る反転装置1を用いた箱体40の反転作業を示す模式図である。実施形態の反転装置1によって縦置状態から横置状態に90°反転される箱体40は、略直方体状の形状を有しており、上縁部42と、下縁部44とを有している。箱体40は、たとえば制御盤の筐体である。箱体40は、配電盤の筐体などの他の任意の箱体であってもよい。箱体40の上縁部42の四隅の各々に、アイボルトが取り付けられていてもよい。箱体40には、下縁部44に、箱体40をチャンネルベースに固定するためのボルト穴が形成されていてもよい。
【0025】
図5に示されるように、クレーンフック30から、2本の索体50,50が吊り下げられる。索体50はたとえば、ワイヤロープである。反転治具10の上吊り部16よりもクレーンフック30の根元側に索体50を配置することで、索体50が反転治具10と干渉することが回避されている。
【0026】
箱体40の縦置状態から横置状態への反転作業は、以下の手順で行われる。縦置状態の箱体40の上縁部42の2箇所に、索体50を係合させる。たとえば、上述した四隅のアイボルトのうちの2つに索体50を結び付ける。この状態でクレーンを巻き上げてクレーンフック30を上昇させることで、箱体40を斜めに吊り上げる。
【0027】
斜めに吊り上げられた箱体40の下縁部44のうち、床面から離れている箇所にある上記のボルト穴に、ナイロンスリングを通し、ナイロンスリングを吊上機器20の索状部24に係合させる。たとえば、索状部24の下端のフック形状に、ナイロンスリングを引っ掛ける。この状態で索状部24の長さを短くすることで、箱体40の下縁部44を吊上機器20によって吊り上げる。吊上機器20の索状部24の長さを調整して、箱体40を横置状態にする。クレーンを巻き下げて、横置状態にした箱体40を床面に下ろす。このようにして、箱体40を反転させる。
【0028】
[第二実施形態]
図6は、第二実施形態に係る反転装置1の構成を示す模式図である。第二実施形態に係る反転装置1は、反転治具10と、第一実施形態と同様の吊上機器20とを備えている。
【0029】
反転治具10は、第一実施形態と同様のビーム部材11および下吊り部18を有している。第二実施形態の上吊り部16は、第一実施形態と配置が異なっている。上吊り部16と下吊り部18とは、ビーム部材11の長手方向において、互いに異なる位置でビーム部材11に取り付けられている。上吊り部16は、ビーム部材11の長手方向における中央部の上部に設けられている。第一実施形態と同様に、上吊り部16には、クレーンフック30が係合している。
【0030】
第二実施形態の反転治具10は、第2下吊り部19をさらに有している。第2下吊り部19は、ビーム部材11の下部に設けられている。第2下吊り部19は、たとえばビーム部材11の下フランジ14に溶接されて、ビーム部材11の下部に固定されている。第2下吊り部19は、環状の形状を有している。
図6に示される第2下吊り部19は、円環状の形状を有している。第2下吊り部19は、円環形状に限られず、後述する索体50を第2下吊り部19から吊り下げることができる形状であれば、任意の形状を有していてもよい。
【0031】
第2下吊り部19の径方向がビーム部材11の長手方向と平行とされている。第2下吊り部19は、ビーム部材11の長手方向に直交する短手方向に向いて、開口している。第2下吊り部19が開口する向きは、ビーム部材11の短手方向に限られず、任意の方向であってもよい。
【0032】
第2下吊り部19は、ビーム部材11の長手方向において、上吊り部16および下吊り部18とは異なる位置でビーム部材11に取り付けられている。
図6に示される例では、第2下吊り部19は、ビーム部材11の一方の端部の上部に設けられており、下吊り部18は、ビーム部材11の他方の端部の下部に設けられている。
【0033】
反転装置1によって反転される箱体40の上縁部42に、上治具60が取り付けられている。上治具60は、縦置状態の箱体40の天井面を上方から略覆うように、箱体40に固定されている。上治具60は、箱体40の上縁部42を側方から覆うように箱体40に固定されてもよい。上治具60は、箱体40に対して横方向に張り出した張出部62を有している。
図6においては、張出部62は、箱体40の左側に張り出している。
【0034】
上治具60は、1つまたは複数のアイボルト68を有している。アイボルト68は、張出部62とは反対側の上治具60の縁部に設けられている。
図6においては、アイボルト68は箱体40に対して上方に突き出るように配置されている。この配置に限られず、アイボルト68は、箱体40に対して横方向(
図6においては右方)に突き出るように配置されてもよい。上治具60は、アイボルト68により箱体40の上部に共締めで固定されてもよい。
【0035】
箱体40の下縁部44に、下治具70が取り付けられている。下治具70は、縦置状態の箱体40の底面を下方から略覆うように、箱体40に固定されている。下治具70は、箱体40の下縁部44を側方から覆うように箱体40に固定されてもよい。
図6に示される縦置状態の箱体40は、下治具70を介して、床面100上に置かれている。
【0036】
下治具70は、箱体40に対して横方向に張り出した張出部72,74を有している。下治具70の張出部72は、上治具60の張出部62の下方に配置されている。上治具60の張出部62と、下治具70の張出部72とは、箱体40から同じ方向に張り出している。張出部74は、張出部72とは反対の方向に、箱体40から横方向に張り出している。
図6においては、上治具60の張出部62と下治具70の張出部72とは箱体40に対して左方向に出っ張り、下治具70の張出部74は箱体40に対して右方向に出っ張っている。
【0037】
張出部72は、円筒面76を有している。円筒面76は、滑らかな曲面形状を有している。典型的には円筒面76は、円筒の外周面の一部形状を有している。
【0038】
下治具70は、1つまたは複数のアイボルト78を有している。アイボルト78は、張出部74に設けられている。
図6においては、アイボルト78は箱体40に対して横方向(
図6においては右方)に突き出るように配置されている。この配置に限られず、アイボルト78は、床面100から離れる方向(上方)に突き出るように配置されてもよい。
【0039】
図6に示されるように、吊上機器20の索状部24の下端が、アイボルト78に取り付けられている。索体50は、反転治具10の第2下吊り部19から吊り下げられている。索体50の上端が第2下吊り部19に取り付けられ、索体50の下端がアイボルト68に取り付けられている。
【0040】
図7は、第二実施形態に係る反転装置1を用いた箱体40の反転作業を示す第1の模式図である。
図8は、第二実施形態に係る反転装置1を用いた箱体40の反転作業を示す第2の模式図である。第二実施形態における、箱体40の縦置状態から横置状態への反転作業は、以下の手順で行われる。
【0041】
図7中に矢印AR1で示されるように、アイボルト78に結びつけられた吊上機器20の索状部24の長さを短くする。これにより、箱体40の下縁部44が吊上機器20によって吊り上げられ、
図7中に矢印AR2で示されるように、箱体40は床面100に対して斜めに吊り上げられた状態になる。
【0042】
箱体40の下縁部44を吊上機器20で吊り上げた後、
図8中に矢印AR3で示されるように、クレーンを横方向にスライド移動させる。これにより、箱体40が横置状態に反転される。
図8に示されるように、横置状態の箱体40は、上治具60の張出部62および下治具70の張出部72を介して、床面100上に置かれている。箱体40は、反転する動作中に、床面100に直接当たらない構成とされている。張出部62と張出部72とにより、箱体40の側面が直接床面100に接することがないので、箱体40の側面を傷めることが抑制されている。
図6~8に示される箱体40の反転動作中に、下治具70および箱体40は、下治具70の円筒面76に沿ってなめらかに回転することができ、これにより床面100を傷めることも抑制されている。
【0043】
[第三実施形態]
図9は、第三実施形態に係る反転装置1の構成を示す模式図である。第三実施形態に係る反転装置1は、反転治具10と、第一実施形態と同様の吊上機器20とを備えている。
【0044】
第三実施形態の反転治具10は、ギヤ86,88を有している。ギヤ86は、ビーム部材11の一方の端部に設けられており、ギヤ88は、ビーム部材11の他方の端部に設けられている。ギヤ86,88は、ビーム部材11の長手方向に間隔を置いて配置されている。ギヤ86は第1回転装置の一例であり、ギヤ88は第2回転装置の一例である。上吊り部16は、ギヤ88の設けられているビーム部材11の他方の端部の上部に設けられている。上吊り部16は、ギヤ88の上方に配置されている。第一実施形態と同様に、上吊り部16には、クレーンフック30が係合している。
【0045】
下吊り部18と第2下吊り部19とは、ビーム部材11の下部に設けられている。ビーム部材11の長手方向において、下吊り部18と第2下吊り部19とは間隔を置いて配置されている。第2下吊り部19とギヤ86との距離は、下吊り部18とギヤ86との距離よりも短い。下吊り部18とギヤ88との距離は、第2下吊り部19とギヤ88との距離よりも短い。
【0046】
ビーム部材11の長手方向において、ギヤ86とギヤ88との間の位置に、下吊り部18と第2下吊り部19とは配置されている。ビーム部材11の長手方向において、ビーム部材11の中央部と、ギヤ86の設けられている一方の端部との間に、第2下吊り部19が配置されている。ビーム部材11の長手方向において、ビーム部材11の中央部と、ギヤ88の設けられている他方の端部との間に、下吊り部18が配置されている。下吊り部18はギヤ88よりもビーム部材11の端部側にあってもよい。第2下吊り部19はギヤ86よりもビーム部材11の端部側にあってもよい。
【0047】
ギヤ86,88には、チェーン80が架け回されている。チェーン80の下端82は、ギヤ88の下方において、床面100に固定されている。チェーン80の図示しない上端は、ギヤ86の上方において、天井に固定されている。チェーン80は、索条の一例である。チェーン80の上端は、天井に対して相対移動不能とされている。一方、クレーンフック30は、天井に対して鉛直方向および水平方向に相対移動可能とされている。チェーン80は、天井からギヤ86の下側を経由し、さらにギヤ88の上側に掛け回され、床面100に固定されている。
【0048】
反転装置1によって反転される箱体40には、第二実施形態と同様に、上治具60と下治具70とが取り付けられている。
【0049】
第三実施形態における、箱体40の縦置状態から横置状態への反転作業は、以下の手順で行われる。アイボルト78に結びつけられた吊上機器20の索状部24の長さを短くする。これにより、箱体40の下縁部44が吊上機器20によって吊り上げられ、箱体40は床面100に対して斜めに吊り上げられた状態になる。索状部24の長さをさらに短くすることで、箱体40を横置状態にする。クレーンを巻き下げて、横置状態にした箱体40を床面に下ろす。このようにして、箱体40を反転させる。なお、吊上機器20の操作前に、クレーンを巻き上げてビーム部材11を吊り上げることにより、箱体40を床面100から持ち上げてもよい。
【0050】
第三実施形態の反転装置1では、ビーム部材11がチェーン80を介して床面100および天井面に係合している。これにより、箱体40の反転動作中に、ビーム部材11に吊り下げられる箱体40の重心の位置が変化しても、ビーム部材11を水平に保つことができる。なお、ギヤ86,88は滑車などの他の種類の回転装置でもよく、その場合、チェーン80はワイヤロープなどの他の種類の索条でもよい。
【0051】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本開示の実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0052】
図4~9に示されるように、反転装置1は、反転治具10と、反転治具10に支持された吊上機器20とを備えている。反転治具10は、長手方向を有するビーム部材11と、ビーム部材11の下部に設けられ、吊上機器20が吊り下げされる下吊り部18と、ビーム部材11の長手方向における下吊り部18が設けられる位置とは異なる位置でビーム部材11の上部に設けられ、クレーンフック30が係合する上吊り部16とを有している。
【0053】
クレーンによって反転治具10が吊られた状態で、反転治具10に支持された吊上機器20を箱体40に係合させて、吊上機器20を介して箱体40を反転治具10から吊り下げる。箱体40の反転作業をする際に、箱体40を吊り上げるために必要なクレーンの数を1機にできる。1機のクレーンを用いて箱体40を反転させることができるので、設備的制約を解消することができ、クレーンの操作者に熟練技能を求めることもなくなる。
【0054】
図5~9に示されるように、上吊り部16にクレーンフック30が係合してビーム部材11が上方から吊り下げられた状態で、箱体40の下縁部44に吊上機器20を係合させ、吊上機器20で下縁部44を吊り上げることにより、箱体40を反転させる。このようにして、1機のクレーンを用いて箱体40を確実に反転させることができる。
【0055】
図1に示されるように、下吊り部18は、環状の形状を有している。環状の下吊り部18に吊上機器20を係合させることにより、吊上機器20を下吊り部18から容易に吊り下げることができる。
【0056】
図3に示されるように、上吊り部16は、ビーム部材11の長手方向に向いて開口する環状の形状を有している。環状の上吊り部16にクレーンフック30を係合させることにより、クレーンフック30から反転治具10を容易に吊り下げることができる。
【0057】
図6~9に示されるように、反転装置1は、箱体40の上部に取り付けられる上治具60と、箱体40の下部に取り付けられる下治具70とをさらに備えている。上治具60は、箱体40から張り出した張出部62を有している。下治具70は、箱体40から張り出した張出部72を有している。張出部62と張出部72とは、箱体40から同じ方向に張り出している。箱体40の反転動作中に、箱体40が直接床面100に接することがないので、箱体40の表面を傷めることを抑制することができる。
【0058】
図9に示されるように、ビーム部材11は、長手方向に間隔を置いて配置されたギヤ86,88を備えている。チェーン80の上端は天井に固定されている。チェーン80の下端82は床面100に固定されている。チェーン80は、ギヤ86の下側を経由して、ギヤ88の上側に掛け回されている。ビーム部材11がチェーン80を介して床面100および天井に固定されているので、箱体40の反転動作中に、ビーム部材11に吊り下げられる箱体40の重心の位置が変化しても、ビーム部材11を水平に保つことができる。
【0059】
図5~9に示されるように、反転装置1は、箱体40の上縁部42に係合する索体50をさらに備えている。
図5に示されるように、索体50は、クレーンフック30から吊り下げられてもよい。
図6~9に示されるように、索体50は、ビーム部材11から吊り下げられてもよい。箱体40の上縁部42を、索体50を介してビーム部材11またはクレーンフック30から吊り下げ可能とし、箱体40の下縁部44を、吊上機器20を介してビーム部材11から吊り下げ可能とすることで、反転作業中の箱体40の姿勢を安定させ、確実に箱体40を反転させることができる。
【0060】
以上のように実施形態について説明を行ったが、各実施形態において互いに組み合わせ可能な構成を適宜組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 反転装置、10 反転治具、11 ビーム部材、12 上フランジ、13 ウェブ、14 下フランジ、16 上吊り部、18 下吊り部、19 第2下吊り部、20 吊上機器、22 本体部、23 掛止部、24 索状部、30 クレーンフック、32 ワイヤロープ、40 箱体、42 上縁部、44 下縁部、50 索体、60 上治具、62,72,74 張出部、68,78 アイボルト、70 下治具、76 円筒面、80 チェーン、82 下端、86,88 ギヤ、100 床面。