(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134462
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】重合体の製造方法並びに感放射線性樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/16 20060101AFI20220908BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08F220/16
G03F7/039 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033592
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 研
(72)【発明者】
【氏名】山下 達也
(72)【発明者】
【氏名】福永 知己
【テーマコード(参考)】
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AF24P
2H225AF48P
2H225AF53P
2H225AF68P
2H225AF71P
2H225AF99P
2H225AH17
2H225AH19
2H225AJ13
2H225AJ48
2H225AJ54
2H225AJ60
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225EA01P
4J100AB07Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100BA03P
4J100BA10P
4J100BA56R
4J100BC03P
4J100BC09P
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC53P
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA36
4J100FA47
4J100GC35
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】感度やLWR性能、パターン矩形性等を十分なレベルで発揮可能で、欠陥が改善された感放射線性樹脂組成物及びその製造方法、並びにそれに用いる重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体と重合開始剤との共存下でのラジカル重合により重合体を得る、重合体の製造方法であって、
上記ラジカル重合は、導入部と、排出部と、導入部と排出部との間に設けられた加熱部とを備える流路内において、上記導入部から上記排出部への一方向流動状態で連続的に行われる、重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体と重合開始剤との共存下でのラジカル重合により重合体を得る、重合体の製造方法であって、
上記ラジカル重合は、導入部と、排出部と、導入部と排出部との間に設けられた加熱部とを備える流路内において、上記導入部から上記排出部への一方向流動状態で連続的に行われる、重合体の製造方法。
【請求項2】
上記流路は、上記加熱部の加熱により100℃~150℃の領域を有する、請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
上記フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体は、下記式(1)で表される、請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【化1】
(上記式(1)中、
R
αは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Lは、単結合、-COO-
*又は-O-
*である。*は芳香環側の結合手である。
R
11は、水素原子、炭素数2~20のアシル基又は炭素数2~20のアルコキシカルボニル基である。R
11が複数存在する場合、複数のR
11は互いに同一又は異なる。
R
12は、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。R
12が複数存在する場合、複数のR
12は互いに同一又は異なる。
n
1は0~2の整数であり、m
1は1~8の整数であり、m
2は0~8の整数である。ただし、1≦m
1+m
2≦2n
1+5を満たす。)
【請求項4】
上記ラジカル重合は、さらに酸解離性基を有する構造単位の共存下で行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の重合体の製造方法で得られた重合体及び溶媒を含む、感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の重合体の製造方法で得られた重合体と溶媒を混合する工程を含む、感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にレジスト用として好適に使用可能な重合体の製造方法並びに上記重合体を含む感放射線性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子における微細な回路形成にレジスト組成物を用いるフォトリソグラフィー技術が利用されている。代表的な手順として、例えば、レジスト組成物の被膜に対するマスクパターンを介した放射線照射による露光で酸を発生させ、その酸を触媒とする反応により露光部と未露光部とにおいて樹脂のアルカリ系や有機系の現像液に対する溶解度の差を生じさせることで、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
上記フォトリソグラフィー技術ではArFエキシマレーザー等の短波長の放射線を利用したり、さらに露光装置のレンズとレジスト膜との間の空間を液状媒体で満たした状態で露光を行う液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィー)を用いたりしてパターン微細化を推進している。
【0004】
さらなる技術進展に向けた取り組みが進む中、レジスト組成物にクエンチャー(拡散制御剤)を配合し、未露光部まで拡散した酸を塩交換反応により捕捉してArF露光によるリソグラフィー性能を向上させる技術が提案されている(特許文献1)。また、次世代技術として、電子線、X線及びEUV(極端紫外線)等のより短波長の放射線を用いたリソグラフィーも検討されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした次世代技術への取り組みの中でも、感度やレジストパターンの線幅のバラつきを示すラインウィドゥスラフネス(LWR)性能、パターンの断面形状の矩形性(以下、パターン矩形性等ともいう)等の点で従来と同等以上のレジスト諸性能が要求される。しかしながら、既存の感放射線性樹脂組成物ではそれらの特性は十分なレベルで得られていない。
【0007】
本発明は、感度やLWR性能、パターン矩形性等を十分なレベルで発揮可能で、欠陥が改善された感放射線性樹脂組成物及びその製造方法、並びにそれに用いる重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記構成を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一実施形態において、
フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体(以下、「単量体1」ともいう。)と重合開始剤との共存下でのラジカル重合により重合体を得る、重合体(以下、「重合体A」ともいう。)の製造方法であって、
上記ラジカル重合は、導入部と、排出部と、導入部と排出部との間に設けられた加熱部とを備える流路内において、上記導入部から上記排出部への一方向流動状態で連続的に行われる、重合体の製造方法に関する。
【0010】
本発明の重合体の製造方法は、フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体と重合開始剤との共存下でのラジカル重合が、導入部と、排出部と、導入部と排出部との間に設けられた加熱部とを備える流路内において、上記導入部から上記排出部への一方向流動状態で連続的に行われるため、感放射線性樹脂組成物に好適な重合体が得られる。上記効果発現の作用機序として、必ずしもこの推察によって本発明の権利範囲を限定するものではないが、上記製造方法を用いることによりモノマーの反応性が制御された重合体が得られる等の結果、得られた重合体をレジスト用樹脂として用いた際に欠陥低減等のレジスト諸性能を好適に向上させていると推察される。
【0011】
また、本発明の重合体の製造方法は、一実施形態において、
上記流路は、上記加熱部の加熱により100℃~150℃の領域を有することが好ましい。上記構成を有することにより、より好適にモノマーの反応性が制御された重合体となる等の結果、得られた重合体をレジスト用樹脂として用いた際に欠陥低減等のレジスト諸性能を好適に向上させることができる。
【0012】
また、本発明の重合体の製造方法は、一実施形態において、
上記フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体は、下記式(1)で表されることが好ましい。
【化1】
(上記式(1)中、
R
αは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Lは、単結合、-COO-
*又は-O-
*である。*は芳香環側の結合手である。
R
11は、水素原子、炭素数2~20のアシル基又は炭素数2~20のアルコキシカルボニル基である。R
11が複数存在する場合、複数のR
11は互いに同一又は異なる。
R
12は、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。R
12が複数存在する場合、複数のR
12は互いに同一又は異なる。
n
1は0~2の整数であり、m
1は1~8の整数であり、m
2は0~8の整数である。ただし、1≦m
1+m
2≦2n
1+5を満たす。)
上記構成を有することにより、得られた重合体をレジスト用樹脂として用いた際に、同じモノマーを用いてバッチ合成をした場合等に比べて、欠陥低減等のレジスト諸性能を好適に向上させることができる。
【0013】
また、本発明の重合体の製造方法は、一実施形態において、
上記ラジカル重合は、さらに酸解離性基を有する構造単位(以下、「単量体2」ともいう。)の共存下で行われることが好ましい。上記構成を有することにより、得られた重合体をレジスト用樹脂として用いた際に、酸解離性基を有する構造単位を含む同じモノマーを用いてバッチ合成をした場合等に比べて、欠陥低減等のレジスト諸性能を好適に向上させることができる。
【0014】
一方、本発明は、他の実施形態として、
上記重合体の製造方法で得られた重合体及び溶媒を含む感放射線性樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記製造方法で得られた重合体を含むため、フォトレジスト工程において欠陥低減等のレジスト諸性能を好適に向上したものとなる。
【0016】
また、本発明は、他の実施形態として、
重合体の製造方法で得られた重合体と溶媒(以下、「溶媒1」ともいう。)を混合する工程を含む、感放射線性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0017】
本発明の感放射線性樹脂組成物の製造方法は、上記製造方法で得られた重合体を含むため、得られる感放射線性樹脂組成物はフォトレジスト工程において欠陥低減等のレジスト諸性能を好適に向上したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例における合成方法を示す模式図である。
【
図2】実施例における反応時間毎の単量体組成変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<重合体A>
本発明の重合体Aは、フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体を構成単位として含み、フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体と重合開始剤との共存下でのラジカル重合により得られうる重合体である。
【0021】
(単量体1)
本発明において、フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体(単量体1)とは、上記構造中にフェノール性水酸基又はフェノール性水酸基が保護された保護体を含むものである。単量体1としては、フェノール性水酸基又はそれが保護基により保護された構造を有する限り特に限定されない。フェノール性水酸基の保護は公知の保護基を適宜用いることができる。
【0022】
単量体1は、例えば、単量体2等との重合の後、後述する脱保護工程にて例えば、アルカリの作用によりフェノール性水酸基の保護基が脱保護され、重合体にフェノール性水酸基を与える。
【0023】
単量体1は、下記式(1)で表されることが好ましい。
【0024】
【化2】
(上記式(1)中、
R
αは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Lは、単結合、-COO-
*又は-O-
*である。*は芳香環側の結合手である。
R
11は、水素原子、炭素数2~20のアシル基又は炭素数2~20のアルコキシカルボニル基である。R
11が複数存在する場合、複数のR
11は互いに同一又は異なる。
R
12は、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。R
12が複数存在する場合、複数のR
12は互いに同一又は異なる。
n
1は0~2の整数であり、m
1は1~8の整数であり、m
2は0~8の整数である。ただし、1≦m
1+m
2≦2n
1+5を満たす。)
【0025】
Rαとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0026】
Lとしては、単結合又は-COO-*であることが好ましい。
【0027】
R11で表される炭素数2~20のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基及びアクリロイル基等の炭素数2~12の脂肪族又は芳香族のアシル基があげられる。中でも、アセチル基が好ましい。
【0028】
R11で表される炭素数2~20のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基及びアダマンチルメチルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数2~16の鎖状又は脂環のアルコキシカルボニルオキシ基があげられる。等があげられる。中でも、t-ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0029】
R12で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基があげられる。フッ素化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1~8の直鎖又は分岐のフッ素化アルキル基があげられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基及びアダマンチルメチルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数2~16の鎖状又は脂環のアルコキシカルボニルオキシ基があげられる。アシル基としては、R11で例示したアシル基があげられる。アシロキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基及びアクリロイルオキシ基等の炭素数2~12の脂肪族又は芳香族のアシロキシ基等があげられる。
【0030】
上記m1としては、1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0031】
上記m2としては、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましい。
【0032】
上記式(1)で表される単量体1としては、例えば、下記式(1-1)~(1-12)で表される単量体等があげられる。
【0033】
【0034】
【0035】
上記式(1-1)~(1-12)中、Rαは上記式(1)と同義である。
【0036】
単量体1の含有割合(単量体1が複数種存在する場合は合計)としては、重合体Aを形成する全単量体中、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。一方、上記含有割合は、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましく、55モル%以下が特に好ましい。単量体1の含有割合を上記範囲とすることで、重合体Aを含む感放射線性樹脂組成物は、感度やLWR性能能のさらなる向上を図ることができる。
【0037】
(単量体2)
本発明の重合体Aは、さらに酸解離性基を有する構造単位(単量体2)を含むことが好ましい。
【0038】
単量体2としては、酸解離性基を有する限り特に限定されないものの、レジスト性能やパターン形成性等の点から、酸解離性基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体でることが好ましい。なお、「酸解離性基」とは、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、スルホンアミド基等のアルカリ可溶性基が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。従って、酸解離性基は、これらの官能基中の上記水素原子と結合していた酸素原子と結合していることになる。
【0039】
上記単量体2は、下記式(2)で表されることが好ましい。
【0040】
【化5】
(上記式(2)中、
R
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
8は、ハロゲン置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、ハロゲン置換又は非置換の炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基を表す。)
【0041】
R7としては、単量体2の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0042】
R8で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等があげられる。これらの基が有する水素原子の一部又は全部はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されていてもよい。
【0043】
R8~R10で表される炭素数1~10の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖飽和炭化水素基、又は炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖不飽和炭化水素基があげられる。これらの基が有する水素原子の一部又は全部はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されていてもよい。
【0044】
R8~R10で表される炭素数3~20の脂環式炭化水素基としては、単環若しくは多環の飽和炭化水素基、又は単環若しくは多環の不飽和炭化水素基があげられる。単環の飽和炭化水素基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が好ましい。多環のシクロアルキル基としてはノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の有橋脂環式炭化水素基が好ましい。なお、有橋脂環式炭化水素基とは、脂環を構成する炭素原子のうち互いに隣接しない2つの炭素原子間が1つ以上の炭素原子を含む結合連鎖で結合された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0045】
R8で表される炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等があげられる。
【0046】
R8としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0047】
R9及びR10で表される鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基は、上記炭素数の単環又は多環の脂環式炭化水素の炭素環を構成する同一炭素原子から2個の水素原子を除いた基であれば特に限定されない。単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基のいずれでもよく、多環式炭化水素基としては、有橋脂環式炭化水素基及び縮合脂環式炭化水素基のいずれでもよく、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれでもよい。なお、縮合脂環式炭化水素基とは、複数の脂環が辺(隣接する2つの炭素原子間の結合)を共有する形で構成された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0048】
単環の脂環式炭化水素基のうち飽和炭化水素基としては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基等が好ましく、不飽和炭化水素基としてはシクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基、シクロヘプテンジイル基、シクロオクテンジイル基、シクロデセンジイル基等が好ましい。多環の脂環式炭化水素基としては、有橋脂環式飽和炭化水素基が好ましく、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,2-ジイル基(ノルボルナン-2,2-ジイル基)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,2-ジイル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-2,2-ジイル基(アダマンタン-2,2-ジイル基)等が好ましい。
【0049】
これらの中で、R8は炭素数1~4のアルキル基であり、R9及びR10が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される脂環構造が多環又は単環のシクロアルカン構造であることが好ましい
【0050】
単量体2としては、例えば、下記式(2-1)~(2-6)で表される単量体等があげられる。
【0051】
【0052】
上記式(2-1)~(2-6)中、R7~R10は上記式(2)と同義である。i及びjは、それぞれ独立して、1~4の整数である。k及びlは0又は1である。
【0053】
i及びjとしては、1が好ましい。R8としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はフェニル基が好ましい。R9及びR10としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0054】
さらに、単量体2として、上記式(2-1)~(2-6)で表される単量体とともに、又はこれらに代えて、下記式(2-7)~(2-9)で表される単量体等を含んでいてもよい。
【0055】
【0056】
上記式(2-7)~(2-9)中、R7は上記式(2)と同義である。Rβfは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5の鎖状アルキル基である。複数のRβfは互いに同一又は異っていてもよい。h1は、1~4の整数である。
【0057】
上記Rβfとしては、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましい。h1としては1又は2が好ましい。
【0058】
単量体2の含有割合(単量体2が複数種存在する場合は合計)としては、重合体Aを形成する全単量体中、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が特に好ましい。一方、上記含有割合は、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましく、75モル%以下が特に好ましい。単量体2の含有割合を上記範囲とすることで、重合体Aを含む感放射線性樹脂組成物のパターン形成性を向上させることができる。
【0059】
(他の単量体)
他の単量体として、極性基を有する単量体(以下、「単量体3」ともいう。)を適宜含んでいてもよい。極性基としては、例えば、フッ素原子、アルコール性水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等をあげることができる。単量体3の中で、フッ素原子を有する単量体、アルコール性水酸基を有する単量体及びカルボキシ基を有する単量体が好ましく、フッ素原子を有する単量体及びアルコール性水酸基を有する単量体がより好ましい。
【0060】
単量体3としては、例えば、下記式で表される単量体等があげられる。
【0061】
【0062】
上記式中、RAは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0063】
単量体3を用いる場合、単量体3の含有割合(単量体3が複数種存在する場合は合計)としては、重合体Aを形成する全単量体中、2モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上がさらに好ましく、8モル%以上が特に好ましい。一方、上記含有割合は、40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましく、25モル%以下が特に好ましい。単量体2の含有割合を上記範囲とすることで、重合体Aの現像液への溶解性を適度に制御させることができる。
【0064】
(他の成分)
本発明において、例えば、重合体Aを含む感放射線性樹脂組成物の保存安定性を妨げない範囲で連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、1-オクタンチオール、1-デカンチオール、1-テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、1-チオグリセロール等があげられる。
【0065】
(重合体Aの性状)
重合体Aの分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上がさらに好ましく、4,000以上が特に好ましい。一方、上記重量平均分子量としては、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、15,000以下がさらに好ましく、12,000以下が特に好ましい。重合体AのMwが上記下限未満だと、感放射線性樹脂組成物より得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。重合体AのMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0066】
重合体AのGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0067】
本明細書における重合体AのMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0068】
<重合体Aの製造方法>
本発明の重合体Aの製造方法は、フェノール性水酸基又はその保護体を有する単量体と重合開始剤との共存下でのラジカル重合により重合体を得るものであって、
上記ラジカル重合は、導入部と、排出部と、導入部と排出部との間に設けられた加熱部とを備える流路内において、上記導入部から上記排出部への一方向流動状態で連続的に行われる。
【0069】
上記製造方法は、流路を有する反応器を用い、上記流路の始端(例えば、導入部)から単量体成分、重合開始剤及び溶媒(以下「溶媒2」ともいう。)を連続的に供給し、上記流路内にて単量体成分をラジカル重合させて重合体とし、上記流路の終端(例えば、排出部)から重合体溶液を排出する。
【0070】
反応器は、流路を有しており、導入部及び排出部を備える。
【0071】
流路は、始端から単量体成分、重合開始剤及び溶媒が供給され、終端から重合体溶液が排出される。
【0072】
流路内で、単量体成分をラジカル重合させて重合体が製造される。
【0073】
流路の形態としては、例えば、管、溝等があげられる。管の断面形状としては、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形等があげられる。管の断面の寸法(円形の場合は内径)は、所望の流量となるように断面積の範囲を満足するように適宜決めることができる。溝の幅及び深さは、所望の流量となるように断面積の範囲を満足するように適宜決めることができる。
【0074】
流路の本数は、単独で使用してもよく、また2本以上を組み合わせて使用してもよい。また、複数の流路を途中で合流させてもよく、1本の流路2を途中で複数に分岐してもよい。
【0075】
導入部は、単量体成分、重合開始剤及び溶媒を連続的に供給する部位であり、流路の始端であってもよい。
【0076】
導入部としては、例えば、シリンジポンプ、プランジャーポンプ、チューブポンプ、ダイアフラムポンプ等があげられる。
【0077】
導入部は、1つの供給導入からなるものであってもよく、複数の導入手段からなるものであってもよい。導入部内での重合反応を抑える点から、例えば、溶媒中に単量体成分を含む液又は溶媒を含まず単量体成分を含む液を供給する第1の導入手段と、溶媒中に重合開始剤を含む液を供給する第2の導入手段とからなるものが好ましい。
【0078】
加熱部は、流路の所定領域(以下、「領域H」ともいう)の温度を所定の温度に加熱するものである。
【0079】
加熱部は、例えば、オイルバス、リボンヒーター、マントルヒーター等があげられる
【0080】
上記加熱部の加熱により領域Hが100℃~150℃の領域を有することが好ましい。上記領域Hは、例えば、105℃~145℃であってもよく、110℃~140℃であってもよい。
【0081】
加熱部は、流路の所定領域の温度を所定の温度に保持するための温調手段を有することが好ましい。温調手段としては、例えば、温度計と、ヒータと、温度計からの温度情報に基づいてヒータの出力を調整する制御装置とを有するものがあげられる。
【0082】
また、冷却部を備えることが好ましい。冷却部は、流路の所定領域の温度を所定の温度まで冷却するものである。
【0083】
冷却部としては、例えば、氷浴、水浴、循環式冷却器等があげられる。
【0084】
排出部は、重合体溶液が排出される部位であり、流路の終端であってもよい。
【0085】
回収部は、流路の終端から排出される、重合体溶液を回収するものである。排出部と一体であってもよい。
【0086】
回収部は、冷却手段によって冷却されていることが好ましい。
【0087】
重合体Aを得るためには、重合開始剤が効率よく分解しラジカルを発生し、かつ短時間で単量体成分を重合させることが好ましい。このためには、5分間半減期温度が60~120℃である重合開始剤を用いて、5分間半減期温度以上の温度に保持された領域(R)で、滞在時間が5~60分で重合することが好ましい。
【0088】
領域Hの温度は、重合開始剤の5分間半減期温度以上であり、5分間半減期温度+10℃以上が好ましい。領域(R)の温度は、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。領域(R)の温度が重合開始剤の5分間半減期温度以上であれば、高分子鎖ごとの構成単位の割合のばらつきが小さく、かつ分子量分布が狭い重合体を、高い収率で得ることができる。また、領域(R)の温度が140℃以下であれば、重合体の熱分解が抑えられるため、分子量分布が十分に狭い重合体Aを得やすい。
【0089】
領域Hにおける滞在時間(すなわち反応時間)は、5~60分であることが好ましい。
【0090】
上記滞在時間が5分以上であれば、重合開始剤が効率よく分解し、十分なラジカルを発生し、高分子鎖ごとの構成単位の割合のばらつきが小さく、質量平均分子量が小さく、かつ分子量分布が狭い重合体Aが得られる。上記滞在時間が60分以内であれば、重合時間が短縮でき生産性が向上する。
【0091】
流路における、上記単量体成分、重合開始剤及び溶媒の供給速度は、例えば、0.01~100mL/分が好ましく、0.1~10mL/分がより好ましい。
【0092】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、5分間半減期温度が60~120℃のものを用いることが好ましい。5分間半減期温度が60℃以上であれば、重合開始剤が効率よく分解しラジカルを発生し、より反応速度を速め、高分子鎖ごとの構成単位の割合のばらつきが小さく、かつ分子量分布がより狭い重合体Aを生成することができる。5分間半減期温度が120℃以下であれば、領域(R)の温度が低く抑えられ、重合体の分解が発生しない。
【0093】
5分間半減期温度は、重合開始剤の分解率が5分で50%となる温度である。5分間半減期温度は、重合開始剤の10時間半減期温度と活性化エネルギーをもとに反応速度定数、アレニウスの式から求めることができる。
【0094】
5分間半減期温度が60~120℃の重合開始剤としては、例えば、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(5分間半減期温度:107℃)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(5分間半減期温度:90℃)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(5分間半減期温度:66℃)、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル(5分間半減期温度:104℃)等があげられる。
【0095】
重合開始剤の量は、単量体成分の100モル%に対して、0.1~30モル%が好ましく、1~25モル%がより好ましい。
【0096】
(溶媒2)
溶媒2としては、例えば、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、環状エーテル類(THF、1,4-ジオキサン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等。)、アミド類(N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等。)、脂肪族炭化水素(ヘキサン等)、脂環式炭化水素(シクロヘキサン等)等があげられる。
【0097】
(後処理)
例えば、得られた重合体溶液を、必要に応じて、良溶媒で適当な溶液粘度に希釈した後、多量の貧溶媒(メタノール、水、ヘキサン、ヘプタン等)中に滴下し、重合体Aを析出させることが好ましい。上記工程(一般に再沈殿と呼ばれる)は重合体溶液中に残存する未反応の単量体、重合開始剤等を取り除くために非常に有効である。上記未反応物は、そのまま残存しているとレジスト膜の性能に悪影響を及ぼす可能性があるため、できるだけ取り除くことが好ましい。再沈殿工程は、場合により不要となることもある。
【0098】
その後、析出物を濾別し、十分に乾燥して重合体Aを得る。また、濾別した後、乾燥せずに湿粉のまま用いてもよい。
【0099】
また、重合体溶液をそのまま感放射線性樹脂組成物として用いてもよく、重合体溶液を適当な溶媒で希釈して感放射線性樹脂組成物として用いてもよく、重合体溶液を濃縮して感放射線性樹脂組成物として用いてもよい。その際、保存安定剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0100】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記重合体A及び溶媒を含む。感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の任意成分を含んでいてもよい。
【0101】
(重合体A)
重合体Aとしては、上記重合体Aの製造方法により得られる重合体Aを好適に採用することができる。
【0102】
重合体Aの含有量としては、上記感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0103】
(他の重合体)
本発明の感放射線性樹脂組成物は、他の重合体として、上記重合体Aよりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体(以下、「高フッ素含有量重合体」ともいう。)を含んでいてもよい。上記感放射線性樹脂組成物が高フッ素含有量重合体を含有する場合、上記重合体Aに対してレジスト膜の表層に偏在化させることができ、その結果、レジスト膜表面の状態やレジスト膜中の成分分布を所望の状態に制御することができる。
【0104】
高フッ素含有量重合体としては、例えば、必要に応じて上記重合体Aにおける単量体2に由来する構造単位を有するとともに、下記式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位G」ともいう。)を有することが好ましい。
【化9】
【0105】
上記式(3)中、R13は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。GLは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SO2ONH-、-CONH-又は-OCONH-である。R14は、炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0106】
上記R13としては、構造単位Gを与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0107】
上記GLとしては、構造単位Gを与える単量体の共重合性の観点から、単結合及び-COO-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0108】
上記R14で表される炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0109】
上記R14で表される炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、炭素数3~20の単環又は多環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0110】
上記R14としては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基及び5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基がさらに好ましい。
【0111】
高フッ素含有量重合体が構造単位Gを有する場合、構造単位Gの含有割合としては、高フッ素含有量重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。上記含有割合としては、60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。構造単位Gの含有割合を上記範囲とすることで、高フッ素含有量重合体のフッ素原子の質量含有率をより適度に調整してレジスト膜の表層への偏在化をさらに促進することができる。
【0112】
高フッ素含有量重合体は、構造単位G以外に、下記式(f-1)で表されるフッ素原子含有構造単位(以下、構造単位Hともいう。)を有していてもよい。高フッ素含有量重合体は構造単位Hを有することで、アルカリ現像液への溶解性が向上し、現像欠陥の発生を抑制することができる。
【化10】
【0113】
構造単位Hは、(x)アルカリ可溶性基を有する場合と、(y)アルカリの作用により解離してアルカリ現像液への溶解性が増大する基(以下、単に「アルカリ解離性基」とも言う。)を有する場合の2つに大別される。(x)、(y)双方に共通して、上記式(f-1)中、RCは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RDは単結合、炭素数1~20の(s+1)価の炭化水素基、この炭化水素基のRE側の末端に酸素原子、硫黄原子、-NRdd-、カルボニル基、-COO-若しくは-CONH-が結合された構造、又はこの炭化水素基が有する水素原子の一部がヘテロ原子を有する有機基により置換された構造である。Rddは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。sは、1~3の整数である。
【0114】
構造単位Hが(x)アルカリ可溶性基を有する場合、RFは水素原子であり、A1は酸素原子、-COO-*又は-SO2O-*である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合、炭素数1~20の炭化水素基又は2価のフッ素化炭化水素基である。A1が酸素原子である場合、W1はA1が結合する炭素原子にフッ素原子又はフルオロアルキル基を有するフッ素化炭化水素基である。REは単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位Hが(x)アルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像液に対する親和性を高め、現像欠陥を抑制することができる。(x)アルカリ可溶性基を有する構造単位Hとしては、A1が酸素原子でありW1が1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-メタンジイル基である場合が特に好ましい。
【0115】
構造単位Hが(y)アルカリ解離性基を有する場合、RFは炭素数1~30の1価の有機基であり、A1は酸素原子、-NRaa-、-COO-*又は-SO2O-*である。Raaは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合又は炭素数1~20の2価のフッ素化炭化水素基である。REは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。A1が-COO-*又は-SO2O-*である場合、W1又はRFはA1と結合する炭素原子又はこれに隣接する炭素原子上にフッ素原子を有する。A1が酸素原子である場合、W1、REは単結合であり、RDは炭素数1~20の炭化水素基のRE側の末端にカルボニル基が結合された構造であり、RFはフッ素原子を有する有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位Hが(y)アルカリ解離性基を有することにより、アルカリ現像工程においてレジスト膜表面が疎水性から親水性へと変化する。この結果、現像液に対する親和性を大幅に高め、より効率的に現像欠陥を抑制することができる。(y)アルカリ解離性基を有する構造単位Hとしては、A1が-COO-*であり、RF若しくはW1又はこれら両方がフッ素原子を有するものが特に好ましい。
【0116】
RCとしては、構造単位Hを与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0117】
REが2価の有機基である場合、ラクトン構造を有する基が好ましく、多環のラクトン構造を有する基がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0118】
高フッ素含有量重合体が構造単位Hを有する場合、構造単位Hの含有割合としては、高フッ素含有量重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が特に好ましい。上記含有割合としては、90モル%以下が好ましく、75モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。構造単位Hの含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時のレジスト膜の撥水性をより向上させることができる。
【0119】
高フッ素含有量重合体のMwとしては、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上がさらに好ましく、5,000以上が特に好ましい。上記Mwとしては、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましく、15,000以下が特に好ましい。
【0120】
高フッ素含有量重合体のMw/Mnとしては、通常1以上であり、1.1以上がより好ましい。上記Mw/Mnとしては、通常5以下であり、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.7以下がさらに好ましい。
【0121】
高フッ素含有量重合体の含有量としては、上記重合体A100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。上記含有量としては、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0122】
高フッ素含有量重合体の含有量を上記範囲とすることで、高フッ素含有量重合体をレジスト膜の表層へより効果的に偏在化させることができ、その結果、液浸露光時におけるレジスト膜の表面の撥水性をより高めることができる。上記感放射線性樹脂組成物は、高フッ素含有量重合体を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0123】
(高フッ素含有量重合体の合成方法)
高フッ素含有量重合体は、上述の重合体Aの合成方法と同様の方法により合成することができる。
【0124】
(感放射線性酸発生剤)
本発明の感放射線性樹脂組成物は、感放射線性酸発生剤を含むことが好ましい。感放射線性酸発生剤は、露光により酸を発生する成分である。感放射線性酸発生剤は、下記式(p-1)で表されることが好ましい。
【化11】
(上記式(p-1)中、R
p1は、環員数6以上の環構造を含む1価の基である。
R
p2は、2価の連結基である。
R
p3及びR
p4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
R
p5及びR
p6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
n
p1は、0~10の整数である。n
p2は、0~10の整数である。n
p3は、0~10の整数である。ただし、n
p1+n
p2+n
p3は、1以上30以下の整数である。
n
p1が2以上の場合、複数のR
p2は互いに同一又は異なる。
n
p2が2以上の場合、複数のR
p3は互いに同一又は異なり、複数のR
p4は互いに同一又は異なる。
n
p3が2以上の場合、複数のR
p5は同一又は異なり、複数のR
p6は同一又は異なる。
Z
+は、1価のオニウムカチオンである。)
【0125】
Rp1で表される環構造を含む1価の基としては、例えば、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香族複素環構造を含む1価の基等をあげることができる。
【0126】
上記環員数5以上の脂環構造としては、例えば、
シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環のシクロアルカン構造;
シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環のシクロアルケン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造;
ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環のシクロアルケン構造等をあげることができる。
【0127】
上記環員数5以上の脂肪族複素環構造としては、例えば、
ペンタノラクトン構造、ヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造;
ペンタノスルトン構造、ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造;
オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造;
アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造;
チアシクロペンタン構造、チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造のイオウ原子含有複素環構造等をあげることができる。
【0128】
上記環員数6以上の芳香環構造としては、例えば、ベンゼン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、アントラセン構造等をあげることができる。
【0129】
上記環員数6以上の芳香族複素環構造としては、例えば、フラン構造、ピラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造等をあげることができる。
【0130】
Rp1の環構造の環員数の下限としては、6であってもよく、7が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。一方、上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで、上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、上記化学増幅型レジスト材料の各種性能をより向上させることができる。
【0131】
Rp1の環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等をあげることができる。これらの中でヒドロキシ基が好ましい。
【0132】
Rp1としては、これらの中で、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、環員数6以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基がより好ましく、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基がさらに好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン-イル基、ノルボルナンスルトン-イル基及び5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン-イル基がさらに好ましく、アダマンチル基が特に好ましい。
【0133】
Rp2で表される2価の連結基としては、例えば、カルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等をあげることができる。Rp2で表される2価の連結基としては、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基及びシクロアルカンジイル基が好ましく、カルボニルオキシ基及びシクロアルカンジイル基がより好ましく、カルボニルオキシ基及びノルボルナンジイル基がさらに好ましく、カルボニルオキシ基が特に好ましい。
【0134】
Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基等をあげることができる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のフッ素化アルキル基等をあげることができる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0135】
Rp5及びRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のフッ素化アルキル基等をあげることができる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0136】
np1としては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、0~2の整数がさらに好ましく、0及び1が特に好ましい。
【0137】
np2としては、0~2の整数がより好ましく、0及び1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0138】
np3としては、0~5の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1及び2が特に好ましい。np3を1以上とすることで、上記式(p-1)の化合物から生じる酸の強さを高めることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をより向上させることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0139】
なお、上記式(p-1)において、np1+np2+np3は、1以上30以下の整数である。np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0140】
上記Z+で表される1価のオニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む放射線分解性オニウムカチオンがあげられ、例えば、スルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等があげられる。中でも、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンは、好ましくは下記式(X-1)~(X-6)で表される。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
上記式(X-1)中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数3~12の単環若しくは多環のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、-OSO2-RP、-SO2-RQ若しくは-S-RTであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。当該環構造は骨格を形成する炭素-炭素結合間にOやS等のヘテロ原子を含んでいてもよい。RP、RQ及びRTは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5~25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0~5の整数である。Ra1~Ra3並びにRP、RQ及びRTがそれぞれ複数の場合、複数のRa1~Ra3並びにRP、RQ及びRTはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0148】
上記式(X-2)中、Rb1は、置換若しくは非置換の炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2~8のアシル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~8の芳香族炭化水素基、又はヒドロキシ基である。nkは0又は1である。nkが0のとき、k4は0~4の整数であり、nkが1のとき、k4は0~7の整数である。Rb1が複数の場合、複数のRb1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。Rb2は、置換若しくは非置換の炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。LCは単結合又は2価の連結基である。k5は、0~4の整数である。Rb2が複数の場合、複数のRb2は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。qは、0~3の整数である。式中、S+を含む環構造は骨格を形成する炭素-炭素結合間にOやS等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0149】
上記式(X-3)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。
【0150】
上記式(X-4)中、Rg1は、置換若しくは非置換の炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2~8のアシル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~8の芳香族炭化水素基、又はヒドロキシ基である。nkは0又は1である。nk2が0のとき、k10は0~4の整数であり、nk2が1のとき、k10は0~7の整数である。Rg1が複数の場合、複数のRg1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRg1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。Rg2は及びRg3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数3~12の単環若しくは多環のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられ構成される環構造を表す。k11及びk12は、それぞれ独立して0~4の整数である。Rg2は及びRg3がそれぞれ複数の場合、複数のRg2は及びRg3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0151】
上記式(X-5)中、Rd1及びRd2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、ニトロ基であるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。k6及びk7は、それぞれ独立して0~5の整数である。Rd1及びRd2がそれぞれ複数の場合、複数のRd1及びRd2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0152】
上記式(X-6)中、Re1及びRe2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k8及びk9は、それぞれ独立して0~4の整数である。
【0153】
上記式(p-1)で表される感放射線性酸発生剤としては、例えば、下記式(p-1-1)~(p-1-35)で表される感放射線性酸発生剤(以下、「感放射線性酸発生剤(p-1-1)~感放射線性酸発生剤(p-1-35)」ともいう。)等があげられる。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
上記式(p-1-1)~(p-1-35)中、Z+は、1価のオニウムカチオンである。
【0158】
これらの中でも、上記式(p-1-1)、(p-1-9)、(p-1-11)、(p-1-13)、(p-1-17)、(p-1-23)、(p-1-25)及び(p-1-35)で表される感放射線性酸発生剤が好ましい。
【0159】
これらの感放射線性酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。感放射線性酸発生剤の含有量の下限は、樹脂100質量部に対して0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限は、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。これによりレジストパターン形成の際に優れた感度やLWR性能を発揮することができる。
【0160】
(酸拡散制御剤)
本発明の感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、酸拡散制御剤を含有してもよい。酸拡散制御剤は、露光により感放射線性酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。また、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する。さらに、レジストパターンの解像度がさらに向上すると共に、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0161】
酸拡散制御剤としては、例えば、下記式(4)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等があげられる。
【0162】
【0163】
上記式(4)中、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基である。
【0164】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n-ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等があげられる。
【0165】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等があげられる。
【0166】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等があげられる。
【0167】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン等があげられる。
【0168】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等があげられる。
【0169】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン等のピリジン類;N-プロピルモルホリン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン類、ピラゾール類等があげられる。
【0170】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N-t-ブトキシカルボニルピペリジン、N-t-ブトキシカルボニルイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニル-2-フェニルベンズイミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)ジ-n-オクチルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン、N-t-アミルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等があげられる。
【0171】
また、酸拡散制御剤として、放射線の照射により、上記感放射線性酸発生剤から発生する酸よりpKaが高い酸を発生するオニウム塩化合物(以下、便宜上「感放射線性弱酸発生剤」ともいう。)を好適に用いることもできる。上記感放射線性弱酸発生剤より発生する酸は、上記樹脂中の酸解離性基を解離させる条件では上記酸解離性基の解離を誘発しない弱酸である。なお、本明細書において、酸解離性基の「解離」とは、110℃で60秒間ポストエクスポージャーベークした際に解離することをいう。
【0172】
感放射線性弱酸発生剤としては、例えば、下記式(4-1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(4-2)で表されるヨードニウム塩化合物等があげられる。
【0173】
【0174】
上記式(4-1)及び式(4-2)中、J+はスルホニウムカチオンであり、U+はヨードニウムカチオンである。J+で表されるスルホニウムカチオンとしては、上記式(X-1)~(X-4)で表されるスルホニウムカチオンがあげられ、U+で表されるヨードニウムカチオンとしては、上記式(X-5)~(X-6)で表されるヨードニウムカチオンがあげられる。E-及びQ-は、それぞれ独立して、OH-、Rα-COO-、Rα-SO3
-で表されるアニオンである。Rαは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。Rαで表されるアルキル基の水素原子、又はアリール基若しくはアラルキル基の芳香環の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0175】
上記感放射線性弱酸発生剤としては、例えば、下記式で表される化合物等があげられる。
【0176】
【0177】
【0178】
酸拡散制御剤の含有量としては、感放射線性酸発生剤の合計モル数に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましい。上記含有量としては、200モル%以下が好ましく、100モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のリソグラフィー性能をより向上させることができる。当該感放射線性樹脂組成物は、酸拡散制御剤を1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0179】
(溶媒1)
溶媒1は、少なくとも重合体A、及び存在する場合には感放射線性酸発生剤、並びに所望により含有される添加剤等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0180】
溶媒1としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等があげられる。
【0181】
アルコール系溶媒としては、例えば、
iso-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等の炭素数1~18のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒;
上記多価アルコール系溶媒が有するヒドロキシ基の一部をエーテル化した多価アルコール部分エーテル系溶媒等があげられる。
【0182】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒;
上記多価アルコール系溶媒が有するヒドロキシ基をエーテル化した多価アルコールエーテル系溶媒等があげられる。
【0183】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、ブタノン、メチル-iso-ブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等があげられる。
【0184】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等があげられる。
【0185】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;
ジ酢酸プロピレングリコール、酢酸メトキシトリグリコール、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、フタル酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒があげられる。
【0186】
炭化水素系溶媒としては、例えば、
n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、ジ-iso-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等があげられる。
【0187】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒、環状ケトン系溶媒、ラクトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンがさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、溶媒1を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0188】
(その他の任意成分)
上記感放射線性樹脂組成物は、上記成分以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、架橋剤、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等をあげることができる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0189】
<感放射線性樹脂組成物の製造方法>
本発明の感放射線性樹脂組成物の製造方法は、重合体Aの製造方法で得られた重合体Aと溶媒1を混合する工程を含む。
【0190】
上記工程において、重合体A及び溶媒1、並びに、例えば、必要に応じて感放射線性酸発生剤や高フッ素含有量重合体等を所定の割合で混合することにより製造できる。上記感放射線性樹脂組成物は、混合後に、例えば、孔径0.05μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。上記感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%~50質量%であり、0.5質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0191】
<レジストパターン形成方法>
レジストパターン形成方法は、
上記感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び、
露光された上記レジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)を含む。
【0192】
上記レジストパターン形成方法によれば、欠陥抑制性等に優れた上記感放射線性樹脂組成物を用いているため、高品位のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0193】
[レジスト膜形成工程]
本工程では、上記感放射線性樹脂組成物でレジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等をあげることができる。また、例えば、特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等をあげることができる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃~140℃であり、80℃~120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm~1,000nmが好ましく、10nm~500nmがより好ましい。
【0194】
液浸露光を行う場合、上記感放射線性樹脂組成物における上記高フッ素含有量重合体等の撥水性重合体添加剤の有無にかかわらず、上記形成したレジスト膜上に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を避ける目的で、液浸液に不溶性の液浸用保護膜を設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば、特開2006-227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005-069076号公報、WO2006-035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。ただし、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0195】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光する。露光に用いる放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV(極端紫外線)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線等をあげることができる。これらの中でも、遠紫外線、電子線、EUVが好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、電子線、EUVがより好ましく、次世代露光技術として位置付けされる波長50nm以下の電子線、EUVがさらに好ましい。
【0196】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等をあげることができる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0197】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により感放射線性酸発生剤から発生した酸による樹脂等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃~180℃であり、80℃~130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。
【0198】
[現像工程]
本工程では、上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0199】
上記現像に用いる現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等をあげることができる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0200】
また、有機溶媒現像の場合、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒をあげることができる。上記有機溶媒としては、例えば、上述の感放射線性樹脂組成物の溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等をあげることができる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチル、酢酸アミルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等をあげることができる。
【0201】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等をあげることができる。
【実施例0202】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0203】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
東ソー社のGPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:THF、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0204】
[低分子量部分の含有割合]
重合体の低分子量部分(分子量1,000未満の部分)の含有割合(質量%)は、HPLCカラム(Intersil ODS-25μm、4.6mmφ×250mm、ジーエルサイエンス社)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:アクリロニトリル/0.1質量%リン酸水溶液、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、検出器:示差屈折計の分析条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0205】
<重合体の合成>
重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。なお、以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部として場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0206】
【0207】
[合成例1]重合体(A-1)の合成
単量体として化合物(M-1)及び化合物(M-2)をモル比率が45/55となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテル20質量部に溶解させ、単量体溶液を得た。同様に重合開始剤として2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル13.2質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル30質量部に溶解させ、重合開始剤溶液を得た。
【0208】
図1に示すように、試料導入側にT字型配管及び圧力計、定量ポンプ、出口側にはニードルバルブ及び氷浴に浸漬した回収容器を備えた構成にて、オイルバス中にSUS316製コイル状チューブ(オイルバス浸漬部長さ23.7m、内径2.17mm)を浸漬し反応場とした。オイルバス温度を118℃に調整し一定に保温した状態で、単量体溶液及び重合開始剤溶液を別々の定量ポンプを用いてそれぞれ3.6mL/min、1.4mL/minの流量にて連続的に送液を行い、出口側回収容器にて急冷することで反応を停止させ重合体(A-1)を含む溶液を得た。この時、試料導入側の圧力が0.8MPaとなるように出口側のバルブ開度を調整し一定圧力に調整した。なお、オイルバス中に浸漬したコイル状チューブの滞在時間(すなわち反応時間)は17.5分である。
【0209】
得られた重合溶液についてプロピレングリコールモノメチルエーテル量が300質量部となるように希釈後、n-ヘキサン(1,000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別し、重合体を精製した。次いで、得られた重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル(150質量部)を加えた。更に、メタノール(150質量部)、トリエチルアミン(化合物(M-1)の使用量に対し1.5モル当量)及び水(化合物(M-1)の使用量に対し1.5モル当量)を加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。上記反応終了後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン(150質量部)に溶解した。これを水(2,000質量部)中に滴下して凝固させ、生成した白色固体を濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて白色固体の重合体(A-1)を得た。
【0210】
[合成例2](重合体(A-2)の合成)
単量体として化合物(M-2)に代えて化合物(M-3)を用いること以外は、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A-2)を得た。
【0211】
[合成例3](重合体(A-3)の合成)
単量体として化合物(M-2)に代えて化合物(M-4)を用いること以外は、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A-3)を得た。
【0212】
[合成例4](重合体(A-4)の合成)
単量体として化合物(M-1)に代えて化合物(M-5)を用いること以外は、合成例1と同様の重合反応を行った。得られた重合溶液についてプロピレングリコールモノメチルエーテル量が300質量部となるように希釈後、n-ヘキサン(1,000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて重合体(A-4)を得た。
【0213】
[合成例5](重合体(A-5)の合成)
単量体として化合物(M-5)、化合物(M-3)、及び化合物(M-6)をモル比率が45/45/10となるような単量体溶液を用い、合成例1と同様の操作にて重合反応を行った。得られた重合溶液についてプロピレングリコールモノメチルエーテル量が300質量部となるように希釈後、n-ヘキサン(1000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて重合体(A-5)を得た。
【0214】
[合成例6](重合体(A-6)の合成)
単量体として化合物(M-5)、化合物(M-2)、及び化合物(M-7)をモル比率が45/45/10となるような単量体溶液を用い、合成例1と同様の操作にて重合反応を行った。得られた重合溶液についてプロピレングリコールモノメチルエーテル量が300質量部となるように希釈後、n-ヘキサン(1,000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて重合体(A-6)を得た。
【0215】
[比較合成例1]重合体(B-1)の合成
単量体として化合物(M-1)及び化合物(M-2)を、それらのモル比率が45/55となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテル(200質量部)に溶解した。次いで、この溶液に重合開始剤として2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(12モル%)を加えて混合溶液を調製した。空の反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル(100質量部)を入れ、攪拌しながら85℃に加熱した。ここに、上記調製した混合溶液を滴下した。滴下開始を0時間とし、3時間かけて混合溶液を滴下した。滴下終了後さらに85℃で3時間加熱することで、重合反応を合計6時間実施した。
【0216】
得られた重合溶液をn-ヘキサン(1,000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別し、重合体を精製した。次いで、得られた重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル(150質量部)を加えた。更に、メタノール(150質量部)、トリエチルアミン(化合物(M-1)の使用量に対し1.5モル当量)及び水(化合物(M-1)の使用量に対し1.5モル当量)を加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。上記反応終了後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン(150質量部)に溶解した。これを水(2,000質量部)中に滴下して凝固させ、生成した白色固体を濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて白色粉固体の重合体(B-1)を得た。
【0217】
[比較合成例2](重合体(B-2)の合成)
単量体として化合物(M-2)に代えて化合物(M-3)を用いること以外は、比較合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(B-2)を得た。
【0218】
[比較合成例3](重合体(B-3)の合成)
単量体として化合物(M-2)に代えて化合物(M-4)を用いること以外は、比較合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(B-3)を得た。
【0219】
[比較合成例4](重合体(B-4)の合成)
単量体として化合物(M-1)に代えて化合物(M-5)を用いること以外は、比較合成例1と同様の重合反応を行った。得られた重合溶液をn-ヘキサン(1,000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて重合体(B-4)を得た。
【0220】
[比較合成例5](重合体(B-5)の合成)
単量体として化合物(M-5)、化合物(M-3)、及び化合物(M-6)をモル比率が45/45/10となるような単量体溶液を用い、比較合成例1と同様の操作にて重合反応を行った。得られた重合溶液をn-ヘキサン(1,000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて、重合体(B-5)を得た。
【0221】
[比較合成例6](重合体(B-6)の合成)
単量体として化合物(M-5)、化合物(M-2)、及び化合物(M-7)をモル比率が45/45/10となるような単量体溶液を調製し、比較合成例1と同様の操作にて重合反応を行った。得られた重合溶液をn-ヘキサン(1,000質量部)中に投入して、析出した白色固体を濾別した。濾別した白色固体を上記重合溶液100質量部に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、濾別した。次いで、50℃で17時間乾燥させて、重合体(B-6)を得た。
【0222】
合成例1及び比較合成例1により得られた重合体(A-1及びB-1)のMw、Mw/Mn、樹脂組成を以下に表1に示す。A-1とB-1のMw、Mw/Mn、及び樹脂組成は概ね同等であった。
【表1】
【0223】
<反応時間毎の単量体組成変化>
合成例1において反応場(SUSコイルチューブのオイルバス浸漬部長さ)を19m、14.2m、9.3m、4.6mに変更した以外は合成例1と同様に操作して、各反応時間の重合体を得た。これらを、合成例1における重合反応途中の重合体サンプルと見なす。一方、比較合成例1において重合開始から1時間、2時間、3時間、4時間、及び5時間の時点でサンプリングを行った。これらをHPLCで分析し、モノマー消費率から重合体中の単量体組成比率を算出した。得られた結果を
図2に示す。
図2において「規格化反応時間」とは、合成例1及び比較合成例1が完結する時間をそれぞれ1.0とした相対反応時間である。
【0224】
図2より、比較合成例1では反応初期に最終組成比率から大きく逸脱した重合体が生成して単量体組成範囲が広いのに対し、合成例1では重合反応の初期から最終を通してほぼ一定組成の重合体が得られたことが分かる。
【0225】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
実施例及び比較例の感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[C]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤、[E]溶媒について、以下に示す。
【0226】
[[C]酸発生剤]
構造式を以下に示す。
【化26】
【0227】
[[D]酸拡散制御剤]構造式を以下に示す。
【化27】
【0228】
[[E]溶媒]
E-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0229】
[実施例1]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、感放射線性酸発生剤としての(C-1)17質量部、[D]酸拡散制御剤としての(D-1)を5質量部、さらに溶剤としての(E-1)2,240質量部及び(E-2)960質量部を混合し、孔径20nmのメンブランフィルターでろ過し、感放射線性樹脂組成物(F-1)を調製した。
【0230】
[実施例2~6](感放射線性樹脂組成物(F-2)~(F-6))
重合体として(A-2)~(A-6)を用いた以外は、実施例1と同様な操作にて、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0231】
[比較例1~6](感放射線性樹脂組成物(F-7)~(F-12))
重合体として(B-1)~(B-6)を用いた以外は、実施例1と同様な操作にて、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0232】
【0233】
<レジストパターンの形成>
12インチのシリコンウェハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT8」)を使用して、膜厚20nmのAL412(ブルワーサイエンス社)を塗工した。その後上記スピンコーターを使用して上記にて調製した感放射線性樹脂組成物を塗工し、130℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ55nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、EUV露光装置(ASML社の「NXE3300」)を用い、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89、マスク:imecDEFECT32FFR02にて露光した。露光後、120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液としての2.38質量%TMAH水溶液を用いて上記レジスト膜をアルカリ現像し、現像後に水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のレジストパターン(32nmラインアンドスペースパターン)を形成した。
【0234】
<評価>
感放射線性樹脂組成物の欠陥抑制性、感度及びLWR性能を、下記方法により評価した。感度及びLWR性能におけるレジストパターンの測長には、高分解能FEB測長装置(日立ハイテクノロジーズ(株)の「CG5000」)を用いた。
【0235】
[欠陥抑制性]
上記形成されたラインアンドスペースパターンについて、欠陥検査装置(KLA-Tencor社の「KLA2925」)により測定面積当たりの欠陥の数(個/cm2)を測定した。欠陥抑制性は、100個/cm2以下の場合は「良好」と、100個/cm2を超える場合は「不良」と評価できる。
【0236】
[感度]
上記レジストパターンの形成において、32nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm2)とした。
【0237】
[LWR性能]
上記形成した32nmラインアンドスペースパターンを、パターン上部から観察し、線
幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、この3シグマ値をLWR性能(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど、線幅のバラつきが小さく良いことを示す。LWR性能は、3.4nm以下の場合は「良好」と、3.4nmを超える場合は「不良」と評価できる。
【0238】
【0239】
上記表3の結果からわかるように、実施例の感放射線性樹脂組成物はいずれも単量体組成が同等の放射線性樹脂組成物を用いた比較例と比べ、感度、LWR性能を維持しつつ欠陥抑制性に優れたレジストパターンを得た。
以上説明したように、本発明の感放射線性樹脂組成物及びその製造方法、並びにそれに用いる重合体Aの製造方法等によれば、従来と同等の感度とLWR性能であり、且つ欠陥抑制に優れたレジストパターンを得ることが可能である。本発明の感放射線性樹脂組成物及びその製造方法、並びにそれに用いる重合体Aの製造方法等は、半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程における微細なレジストパターン形成等に好適に用いることができる。