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  • 特開-ビル外壁の洗浄方法及び洗浄装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134483
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ビル外壁の洗浄方法及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20220908BHJP
   E04G 23/08 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
B08B3/02 F
E04G23/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033623
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】509136563
【氏名又は名称】株式会社アシレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田所 康弘
【テーマコード(参考)】
2E176
3B201
【Fターム(参考)】
2E176DD28
3B201AA31
3B201AB51
3B201BB21
3B201BB93
3B201CD33
(57)【要約】
【課題】飛散防止のための養生シートを用いることなく、ビルから吊り下げたゴンドラから高圧水を吹き付ける洗浄であっても、廃水飛散を抑制でき、円滑な排水を可能とする。
【解決手段】養生シートでビル外壁を覆うことなくゴンドラ11をビル外壁に沿って配置し、ゴンドラ側から高圧水を吹き付けて洗浄する方法である。ゴンドラ11の足場板におけるビル外壁側に水受けフラップ13を折り畳み可能に設け、水受けフラップ13を折り畳み状態から斜め下方に展開させた状態とし、ビル外壁から流れ落ちる高圧水の廃液を水受けフラップ13で受けた後、排水する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養生シートでビル外壁を覆うことなくゴンドラをビル外壁に沿って配置し、ゴンドラ側から高圧水を吹き付けて洗浄する方法であって、
前記ゴンドラの足場板における前記ビル外壁側に水受けフラップを折り畳み可能に設け、前記水受けフラップを折り畳み状態から斜め下方に展開させた状態とし、前記ビル外壁から流れ落ちる高圧水の廃液を水受けフラップで受けた後、排水することを特徴とするビル外壁の洗浄方法。
【請求項2】
前記ビル外壁が集合住宅のバルコニーの外壁であって、前記水受けフラップを前記足場板から下層階のバルコニー空間に入り込むように斜め下方を向いて展開させた状態とし、前記バルコニーの外壁から流れ落ちる高圧水の廃液を前記水受けフラップで受けた後、下層階のバルコニーに導いて排水することを特徴とする請求項1に記載のビル外壁の洗浄方法。
【請求項3】
バルコニーを備えた集合住宅に沿って上下移動するゴンドラと、
高圧水を前記バルコニーの外壁に吹き付ける高圧水吹き付け手段と、
前記ゴンドラの足場板における前記バルコニーの外壁側に折り畳み可能に設けた水受けフラップと、を備え、
前記水受けフラップが下層階のバルコニー空間内に入り込むように斜め下方を向いて展開させた状態としてバルコニーの外壁から流れ落ちる高圧水の廃液を前記水受けフラップから下層階のバルコニーに導いて排水することを特徴とするビル外壁の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層ビル、特に高層集合住宅のビル外壁を高圧水によって洗浄する方法及びこの洗浄に用いる洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高層ビルのビル外壁に対する洗浄は高圧水を吹き付けて行うが、高圧水から生じた汚れ飛沫を含む廃水が周囲に飛散することを抑制する必要がある。このため、メッシュシート等の養生シートでビル周囲を覆って飛散を防止することがなされているが、養生シートで覆うためにはビル周囲に枠組み足場を組み付ける必要がある。しかしながら枠組み足場を組み付けるためには、多くの足場機材を用いると共に足場機材を組み付ける必要があり、複雑な作業を伴って工期が長く、洗浄のための工費も高くなる問題がある。
【0003】
先行技術として、特許文献1には、養生シートでビル外壁を覆うことなく、ビルにゴンドラを吊り下げ、作業者がゴンドラ上で水や洗浄剤を含浸させたブラシを用いた手拭きによってビル外壁を洗浄する洗浄方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-320320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による洗浄では、作業者のブラシ手拭きによる拭き取り作業のため、作業者に多大の作業負担がかかるばかりでなく、洗浄に長時間を要する問題がある。作業の省力化、迅速化や工費削減の観点からは、高圧水をゴンドラから吹き付けて洗浄することが良好であるが、吹き付け後の廃水の飛散や排水が周囲への悪影響となるため実用化できない問題となっている。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、飛散防止のための養生シートを用いることなく、ビルから吊り下げたゴンドラから高圧水を吹き付ける洗浄であっても、廃水飛散を抑制でき、しかも円滑な排水を可能として周囲への悪影響を防止することができるビル外壁の洗浄方法及び洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のビル外壁の洗浄方法は、養生シートでビル外壁を覆うことなくゴンドラをビル外壁に沿って配置し、ゴンドラ側から高圧水を吹き付けて洗浄する方法であって、前記ゴンドラの足場板における前記ビル外壁側に水受けフラップを折り畳み可能に設け、前記水受けフラップを折り畳み状態から斜め下方に展開させた状態とし、前記ビル外壁から流れ落ちる高圧水の廃液を水受けフラップで受けた後、排水することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記ビル外壁が集合住宅のバルコニーの外壁であって、前記水受けフラップを前記足場板から下層階のバルコニー空間に入り込むように斜め下方を向いて展開させた状態とし、前記バルコニーの外壁から流れ落ちる高圧水の廃液を前記水受けフラップで受けた後、下層階のバルコニーに導いて排水することを特徴とする。
【0009】
本発明の洗浄装置は、バルコニーを備えた集合住宅に沿って上下移動するゴンドラと、高圧水を前記バルコニーの壁面に吹き付ける高圧水吹き付け手段と、前記ゴンドラの足場板における前記バルコニーの外壁側に折り畳み可能に設けた水受けフラップと、を備え、前記水受けフラップが下層階のバルコニー空間内に入り込むように斜め下方を向いて展開させた状態としてバルコニーの外壁から流れ落ちる高圧水の廃液を前記水受けフラップから下層階のバルコニーに導いて排水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴンドラから高圧水を吹き付けて行う洗浄であっても、廃水の飛散を抑制でき、しかも円滑な排水が可能で周囲への悪影響を防止することができる。このため、養生シートを用いる必要がなく、洗浄作業の省力化、迅速化や工費削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の洗浄状態を示す側面図である。
図2】(A)、(B)は図1の洗浄手順を示す側面図である。
図3】本発明に用いるゴンドラの背面からの斜視図である。
図4】水受けフラップの作動を示すゴンドラの側面図である。
図5】高圧水吹き付け手段の一例を示す断面図である。
図6】本発明の別の実施形態に用いる水受けフラップを示す斜視図である。
図7】本発明の別の実施形態の洗浄状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図5は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、ビルが集合住宅1の場合に適用される形態である。
【0013】
図1に示すように、集合住宅1における上下の階層の居室2a、2bの屋外にはバルコニー3a、3bが設けられている。バルコニー3a、3bは居室2a、2bの床面4a、4bを屋外側に延長することにより形成されている。バルコニー3a、3bの屋外側には、見附壁や手摺り壁となる外壁5a、5bが立ち上がり状に設けられている。この実施形態では、バルコニー3a、3bの外壁5a、5bを洗浄対象としてのビル外壁とするものである。なお、床面4a、4bには、同じ階の全居室に共通使用可能な排水溝(図示省略)が紙面貫通方向に沿って形成されている。
【0014】
バルコニー3a、3bの外壁5a,5bに対し、洗浄装置10が高圧水を吹き付けて洗浄する。洗浄装置10は、ゴンドラ11(図1図3図4)と、外壁5a、5bに高圧水を吹き付ける高圧水吹き付け手段12(図5)と、水受けフラップ13(図1図3図4)とを備えている。
【0015】
図3に示すように、ゴンドラ11は集合住宅1の屋上から垂下されたワイヤー16に吊り下げられることにより集合住宅1の外側に配置されている。ゴンドラ11は作業者6が乗り込むゴンドラ本体14と、ゴンドラ本体14の左右に取り付けられた昇降駆動装置15とを備え、昇降駆動装置15を駆動させることによりゴンドラ11が集合住宅1に沿って上下移動する。
【0016】
水受けフラップ13は、ゴンドラ本体14(ゴンドラ11)の足場板17における外壁5a,5b側に取り付けられている。図4に示すように、水受けフラップ13は足場板17における外壁5a、5b側に設けたヒンジ18に回動可能に取り付けられており、その回動によってゴンドラ本体14に折り畳み及びゴンドラ本体14から展開可能となっている。
【0017】
水受けフラップ13はゴンドラ本体14の足場板17の全長とほぼ同じ幅を有している。幅方向と直交する水受けフラップ13の長さとしては、水受けフラップ13を展開したときに、その下部が下層階のバルコニー3bの空間に入り込むように設定される(図1参照)。このような水受けフラップ13を展開状態とすることにより、洗浄時における高圧水の廃液を受け止めた後、下層階のバルコニー3bに流し落とすことができる。
【0018】
図5は、高圧水吹き付け手段12を示し、一側が開放された枠体19と、枠体19の開放側の端部の全体に取り付けられたブラシ20と、枠体19内に差し込まれた噴射ノズル21と、洗浄時に作業者が把持するためのハンドル22とを有している。噴射ノズル21にはホース23が接続されており、ホース23が図1に示す高圧洗浄車24に連結されている。
【0019】
この高圧水吹き付け手段12では、作業者6がハンドル22を把持した状態で、ブラシ20をバルコニー3a、3bの外壁5aに押し当て、噴射ノズル21から高圧水を噴射して外壁5aに吹き付けることにより外壁5aを洗浄する。洗浄後の高圧水は外壁5aからの汚れ飛沫を含んだ廃水となって外壁5aを伝って流れ落ち、水受けフラップ13に受け止められた後、下層階のバルコニー3bに流れ落ち、下層階のバルコニー3bの排水溝から排水される。
【0020】
この実施形態による洗浄を説明する。
図2(A)で示すように、ゴンドラ11を洗浄対象となっている階層のバルコニー3aに移動させる。このとき、水受けフラップ13はゴンドラ本体14に折り畳んだ状態となっている。
次に、図2(B)で示すように、水受けフラップ13を回動して斜め下方を向いて展開させることにより、下層階のバルコニー3bの空間に入り込ませる。この状態で、高圧水吹き付け手段12の噴射ノズル21から上層階のバルコニー3aの外壁5aに高圧水を吹き付けて外壁5aを洗浄する。高圧水の吹き付けによって外壁5aから生じた汚れ飛沫を含んだ廃水は破線矢印で示すように、外壁5aから流れ落ちて水受けフラップ13で受けられた後、下層階のバルコニー3bに落下し、同バルコニー3bの排水溝から排水される。
【0021】
このような実施形態では、ゴンドラ11からの高圧水の吹き付けによって外壁5aを洗浄し、洗浄によって生じた廃水を水受けフラップ13で下層階のバルコニー3bに導いて排水するため、廃水の周囲への飛散を防止することができる。このため、廃水の飛散を防止するための養生シートを用いる必要がなく、養生シート設置のための枠組み足場の組み付けが不要となり、工期の短縮及び工費の削減が可能となる。
【0022】
図6及び図7は、本発明の別の実施形態を示し、図1図5の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してある。この実施形態は、屋外にバルコニーを有することのないオフィスビルやホテルビルのビル外壁の洗浄に適用される。これらのビル31では図7に示すように、ビル外壁32が最外側に立ち上がった状態となっている。
【0023】
図6はゴンドラ11の足場板17に設けた水受けフラップ33を示す。図1図4と同様に水受けフラップ33はゴンドラ11の足場板17におけるビル外壁32側に折り畳み可能及び展開可能に設けられている。水受けフラップ33には先端側に向かって徐々に高くなる樋壁34が形成されており、樋壁34には排水口35が複数開口されている。排水口35からはチェーンやロープ等からなる長尺な導水体36が吊り下げられている。導水体36は洗浄時に高圧水から生じた廃水が伝って落下させるための部材である。
【0024】
この実施形態では、図7に示すように、ゴンドラ11をビル外壁32に沿って上下動するように配置し、高圧水吹き付け手段12からビル外壁32に高圧水を吹き付けて洗浄する。このとき水受けフラップ33は折り畳み状態から斜め下方に展開させてビル外壁32に沿わせておく。高圧水から生じた廃液は水受けフラップ33で受けられた後、水受けフラップ33の排水口35から導水体36に沿って流れ落ち、地上に落下する。このため廃水が周囲に飛散することなく円滑に排水することができる。
【0025】
この実施形態においても、ビルから吊り下げたゴンドラ11から高圧水をビル外壁32に吹き付けて洗浄する際に、洗浄で生じた廃水が周囲へ飛散することを防止できる。従って、廃水の飛散を防止するための養生シートを用いる必要がなく、養生シート設置のための枠組み足場の組み付けが不要となり、工期の短縮及び工費の削減が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 集合住宅
3a、3b バルコニー
5a、5b 外壁
10 洗浄装置
11 ゴンドラ
12 高圧水吹き付け手段
13 水受けフラップ
17 足場板
31 ビル
32 ビル外壁
33 水受けフラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7