(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013458
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】浮き屋根式貯蔵タンクの浮き屋根の不具合による沈降を遅延させるもしくは防止する方法およびその資機材
(51)【国際特許分類】
B65D 88/34 20060101AFI20220111BHJP
B65D 88/42 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B65D88/34 A
B65D88/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116037
(22)【出願日】2020-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】720004588
【氏名又は名称】上村 直久
(72)【発明者】
【氏名】上村直久
【テーマコード(参考)】
3E070
3E170
【Fターム(参考)】
3E070AA03
3E070AB03
3E070BB04
3E070BH02
3E070WB10
3E070WC03
3E170AA03
3E170AB03
3E170BA01
3E170BA07
3E170WA01
3E170WA14
(57)【要約】
【課題】本発明は、石油類の浮き屋根タンクの浮き屋根が損傷しタンク内の液体がポンツーンの内部に侵入しても、十分な浮力を保持して浮き屋根の沈降を防止し、浮き屋根を液面に浮いた状態に保持するための資機材を提供する。
【解決手段】本発明は、石油類の液体を貯蔵するポンツーン形式浮き屋根に配設されるポンツーンの浮力を保持して浮き屋根の沈降を防止する沈降防止資機材について、ポンツーンが損傷等により浮力を失って液体の中へ沈降する事態に陥る前に、浮力を保持させ、沈降により液面が大気にむき出しになることで油蒸気の拡散または火災の発生を防止するため、高強度、高難燃性、撥油性、帯電防止性に優れた機能を保有する気密性の袋状の物を用い、圧縮空気を充填することで可燃性雰囲気下でも迅速に浮力を保持させ、貯蔵中の石油の移送による排除時間を確保するなどの安全対策に資する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンツーン形式浮き屋根構造の屋外タンク貯蔵所の円筒形の石油タンクにおいて、浮き屋根が損傷等により浮力を失って貯油の中へ沈降する事態に陥る前に、浮力を保持させ、油面が大気中にむき出しになることに伴う油蒸気の拡散または火災の発生を防止するための方法。
【請求項2】
前記の油面を覆う資機材が、高強度、高弾性率、高摩耗性、高衝撃性、高難燃性、撥油性の性質を有する素材で作られた気密性の袋状の物であることを特徴とする物。
【請求項3】
請求項2の物の素材が、ナイロンまたはナイロンを含むラミネート加工品であることを特徴とする袋状の物。
【請求項4】
請求項3の物の素材が、帯電防止性、撥油性の両方を付与する加工が施された物であることを特徴とする物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上記のように、浮き屋根に不具合が生じた際の沈降の防止もしくは沈降が始まった事後に起こりうる火災や臭気の発生を抑制しながらタンク内の油の移送を安全に行う方法およびその資機材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでに、屋外タンク貯蔵所の円筒形の石油タンクにおいて、浮き屋根が損傷等により浮力を失って貯油の中へ沈降する事態が発生しており、今後もそのような事態が起こらないとは言い切れない現実がある。そのような事態に陥る前に、早い段階で浮き屋根の浮力を保持させ、油面が大気中にむき出しになる、もしくはその結果により油蒸気が拡散して火災に至るまでの時間を引き延ばすことができれば、その間に油を別の健全なタンクへ移送することが可能となり、火災の危険性を回避または火災の影響を最小限に抑えることが可能となる。
そのための具体的な資機材としては、あらかじめ浮き屋根のポンツーン内部に作業員が入り、
ア、発泡性樹脂の固形化物をポンツーン内に充填する。
イ、ポンツーン内部に空のペール缶を詰め込む。
ウ、耐油性、耐摩耗性を考慮したNBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)製の袋体を同室内に配置しておく、もしくは不具合発生後に前記の袋体に圧縮ガスを供給して膨張させる。
が提案されている。
いずれも、資機材の重量、資機材の帯電性、資機材の設置または交換の作業性について、さらなる改善を加えることが望ましいことから、あらたに優れた資機材を提案するものである。なお、すでにナイロン等の樹脂の提示がなされているが、当該素材単独では導電性等においての懸念があることから、より具体的な素材の構成要件を明示することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-256659号公報
【特許文献2】特開2006-143291号公報
【特許文献3】WO2012/096334
【特許文献4】特開2005-281919号公報
【特許文献5】特開2019-208899号公報
【特許文献6】WO2017/134727公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円筒形の大型石油タンクには内容液の蒸発防止のため、鋼製蓋を浮かせる浮屋根式タイプが多く採用されている。浮き屋根構造形式の中で最も基数が多いシングルデッキ型の浮き屋根は、「デッキ」と称する薄い円板の周囲に「ポンツ-ン」と称する箱型断面のリング状浮き室を取付けた構造をしている。
【0005】
この型のタンクは、2003年9月の地震において誘発されたスロッシングという現象により、7基のシングルデッキ形浮屋根が沈没した。また、2012年11月には、ポンツーンの一部が、本来の油の侵入や漏洩を防ぐ「液密構造」を維持できなくなった状況下に台風や大雨が襲来し、その影響が原因とされる浮き屋根の沈降が起きた。浮き屋根の沈降においてもっとも憂慮される事態は、揮発性の大きな油面が大気中に露出することであり、それにより引火性の石油成分が揮発して、なんらかの原因で静電気の火花でも放たれればタンク火災を引き起こしかねないということである。このような問題は台風が頻繁に通過する地域に限らず、台風が少ない地域でも中長期的に日常の強風に晒されれば同様の現象が生じる可能性を否定できない。
【0006】
このような浮屋根タンクは、消防庁の統計によれば、国内全土で約2,400あるとされ、東海地震や東南海・南海地震の発生が指摘されている中、大地震や強風などの自然現象が引き金となって、ひとたび浮き蓋の損壊が発生し沈降が始まってしまえば、その沈降現象を阻止する、あるいは引き上げるなどの方法にて蓋の役割を継続させるといった有効な手立が考えられているが、改良の余地が十分にあると考えられる。すなわち、事前の早期点検等による沈降を予見し、内容液を別の健全なタンク等に移送して当該タンクから危険物を除去するなどの未然防止の手立てはあるものの、危険物の存在下における十分な補修作業は、引火、発火のリスクを孕むことや、自然災害の直後では作業員の安全確保もあってその行為を即座に実施することは困難であり、地震時のスロッシングによる沈降が始まってしまえばタンク火災を確実に防止する対策はなく、屋根の上に現れた油面が引き起こしうる火災への懸念を抱えながら、消防車を待機させ、静かに浮屋根の沈没が終了するのを待ち、火災や臭気を懸念しながら当該タンクから別のタンクへ移送して危険物を除去し、タンクにもとの健全性を回復させるしかないのが現実である。
【0007】
浮き屋根タンクの浮き屋根の沈降を防止するための提案はなされているが、いずれも浮屋根の浮力を増強させる構造に関するものであり、その構造が破壊された場合には浮き屋根は沈降する可能性が高い。かつその手法が具体的に現場に実用されている例はほとんどない。
【0008】
このような問題は、台風が頻繁に通過する地域に限らず、台風が少ない地域でも日常の強風が複数年月をかけて吹き付けることにより生じる可能性は否定できない。強風を受けたときに浮屋根にうねりが生じ波打つように振動する挙動は、地震時のスロッシングのように浮屋根を一挙に破壊・沈没させるようなものではないと考えられるが、長期に亘る使用の間にはデッキ溶接継ぎ手部の疲労破壊の原因となることは想像に難くない。
【0009】
タンクの使用を強制的に一時停止して、あるいは定期修理の機会を捉えて頑強な構造のダブルデッキ型に更新する方法も考えられるが、相当のコストおよび時間を有するなど、経済的に実現が困難なこと、また、たとえダブルデッキ型にしたとしても経年劣化や想定外の地震強度や強風、雨量に晒された場合にどこまで破損・沈降に堪えうるかの定量的な評価基準が存在していない。すなわち、浮き蓋の沈降を確実に抑えられるか否かはストレスを与える現象の事後の点検で早期に確認し、異常を確認した場合において、早期に簡易補修または油を抜出しての本格補修工事に移る以外に回避する手立てはない。
【0010】
この点において、浮き室の点検は点検者の安全上、実施時期が天候に左右されること、点検箇所が多いほど把握時期が遅れること、点検者の点検態勢や環境が必ずしも見易いものではないことなどの制約があり、したがって異常を見逃す可能性も否定できないことを考えれば、異常が発生した後の安全を確保する手段を確立することは重要である。
【0011】
なお、最終的な火災のトリガーとなる着火を防止する手立てとして、常時油面上に炭酸ガスや窒素などの不活性ガスを吹きかけて酸素濃度を爆発下限界未満に希薄化または遮断する方法が理論上考えられるが、屋外であり、それら不活性ガスは自然通風により拡散等で除去され、タンク内の油を移送する数日にわたる期間においてとめどなく供給するのはコスト的にも効果的にも合理性に欠けることは容易に想像できる。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解消し、石油類の浮き屋根タンクの浮き屋根が損傷しタンク内の液体がポンツーンの内部に侵入しても、十分な浮力を保持して浮き屋根の沈降を防止し、浮き屋根を液面に浮上させて保持する方法およびその資機材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ポンツーン形式浮き屋根構造の屋外タンク貯蔵所において、浮き屋根が損傷等により浮力を失って貯油の中へ沈降する事態に陥る前に、浮力を保持させ、油面が大気中にむき出しになることに伴う油蒸気の拡散または火災の発生を防止する方法およびそのための資機材を用いる。
【0014】
前記の油面を覆う資機材として、高強度、高弾性率、高摩耗性、高衝撃性、高難燃性の性質を有する素材で作られた気密性の袋状の物を用いる。
【0015】
前記の油面を覆う資機材の素材として、ナイロンまたはナイロンを含むラミネート加工品を用いる。
【0016】
前記の油面を覆う資機材の素材として、親水撥油剤、帯電防止剤の両方またはいずれか一方を付与する加工が施された物を用いる。
【発明の効果】
【0017】
直径34メートル以上の浮き屋根式屋外貯蔵タンクがある事業所では、大容量泡放射システムを備え付けることが法律で義務付けられ、全面火災の消火に備えているが、火災に至る前に危険要因を排除できることがより望ましい。また、大容量泡放射システムは、個別事業所で配備するのは経済的に困難なため、広域共同防災組織を編成して共有し運用している点で、消火活動までの一定の時間的制約の存在を容認せざるを得ない。
浮屋根タンクの浮屋根が、浮き室の気密性を失い、浮き性能を欠いて沈降しはじめる、あるいは沈降している間に発生する石油ガスの大気拡散、タンクリング火災やタンク前面火災を抑制し、安全にタンクから油を移送(除去)する作業を可能とする当該資機材を個別事業所の自営防災組織または共同防災組織もしくは広域共同防災組織にて備えることができれば、より一層の安全対策の向上を図ることが可能となる。
【0018】
本方式を採用すれば、ナイロン袋の状態を視認することで、萎んでいれば油の侵入圧力に風袋が耐えられず破損した証として追加で風袋を挿入し次善の策を講ずることができる。また、この際、PID(光イオン化検出器)方式の防爆型携帯ガス検知器を併用すれば、揮発油の微量(PPMレベル)の蒸気を検出することができ、より早期に不具合を発見することができる。
【0019】
本発明は、石油類の液体を貯蔵するポンツーン形式浮き屋根に配設されるポンツーンの浮力を保持して浮き屋根の沈降を防止する沈降防止資機材について、ポンツーンが損傷等により浮力を失って液体の中へ沈降する事態に陥る前に、浮力を保持させ、沈降により液面が大気にむき出しになることで油蒸気の拡散または火災の発生を防止するため、高強度、高難燃性、親水撥油性、帯電防止性に優れた機能を有する気密性の袋状の物を用い、圧縮空気を充填することで可燃性雰囲気下でも迅速に浮力を保持させ、貯蔵中の石油の移送による排除時間を確保するなどの安全性向上に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ポンツーン形式シングルデッキ型浮き屋根タンクの平面図
【
図3】ポンツーン形式シングルデッキ型浮き屋根タンクの断面図
【
図5】ポンツーン内部に展張する袋状の物の送気弁の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明者は、鋼製の浮き屋根に不具合が発生した際の代替となる簡易軽量型の浮き袋を検討し、物理的強度と石油に耐性を有する素材を用いた浮力体を発明するに至った。これを防災資機材の一環として備置しておくことにより、有事の際に臭気やタンク火災に伴う恐怖や大気汚染を回避しながら浮き屋根の改修に向けた取り組みが可能となると考えた。
【0022】
図1は、本発明を適用するポンツーン形式シングルデッキ型浮き屋根タンクの平面図、
図2は、浮き屋根タンクの断面図、である。浮き屋根タンクの内部には液体5が貯蔵される。液体5の液面を浮遊する浮き屋根3の周囲には、内部が中空のポンツーン2が配設されており、そのポンツーン2の浮力によって、浮き屋根3が液面に浮上する構成になっている。
【0023】
図2に示すタンクから液体5をタンク外へ排出すると、浮き屋根3は液面とともに下降していく。
【0024】
図3は、ポンツーン2の内部に、その空間を占有させる袋状の物6を挿入し、その内部に空気等の気体を送気し、膨張させた状態を示している。袋状の物6は、気密性の高い袋状の形態で、ポンツーン2の内部で展張されやすいように折りたたまれた物である。その状態で袋状の物6を挿入後、その内部に空気等の気体を送気し、膨張させる。
大地震や強風等が発生したあと、ポンツーン2に亀裂や破損等の開口部が生じていると、その程度が大きい場合、ポンツーン2の内部に液体が侵入し、浮力が不足すると、浮き屋根は沈降してしまう。そのため、浮き屋根タンク管理者は、大地震や強風等が発生したあとにはポンツーン2の点検を行なう。
【0025】
袋状の物6は、万が一火災が発生した場合でも燃えにくく、また高強度、高弾性率、高摩耗性、高衝撃性、高難燃性の性質を有する素材で作られる密封性の物とする。
【0026】
袋状の物6の素材は、ナイロン樹脂を基材としたフィルムおよび布地とする。ナイロン素材は、自動車等のエアバックに採用され、小さく折りたためることから、ポンツーン内への挿入やその後の膨張が容易である。
【0027】
図4は、袋状の物6が二層構造を有することを示している。内側9には気密性を保持させるためにナイロン樹脂を基材としたフィルムを用い、外側10にはポンツーン内部部材との接触に伴う破裂を防止するためにナイロン繊維を用いる。
【0028】
袋状の物6の外側10のナイロン繊維には、ポンツーン2の内部の上板、下板、仕切り板等との接触に伴う静電気の帯電及び放電を抑制するために導電性繊維を混入させる、またはカーボンブラック、ポリウレタンをコーティングする。
【0029】
袋状の物6の外側10のナイロン繊維には、石油が含侵しないよう撥油性を保持させる薬剤をコーティングする。
【0030】
袋状の物6の内側9のナイロン樹脂を基材としたフィルムにも、カーボンブラック、ポリウレタンをコーティングは施すことも好ましい。ナイロン樹脂へ導電性を付与する工法は、特開2005-281919、特開2019-208899号公報などにより可能である。
【0031】
万が一、ナイロン繊維に石油が含侵した場合に備えて、袋状の物6の内側9のナイロン樹脂を基材としたフィルムにも撥油性を保持させる薬剤をコーティングすることが望ましい。
【0032】
上記のような袋状の物6によってポンツーン2を
図3の状態とすることで、浮き屋根の浮力を確保し維持させることができ、また、袋状の物6が侵入した油により劣化損傷し空気相の空間を失うこともなく、侵入空間を制限することで、結果的にポンツーン2の内部への油の侵入も抑えられる。
【0033】
袋状の物6の内側9のナイロン樹脂を基材としたフィルムの成形は、パウチ容器状またはガゼット袋状とし、より好ましくは、ポンツーン内部の構造に可能な限り密着する形状にカスタマイズするのがよい。
【0034】
図5は、空気等の気体を送気する部材を示す。袋状の物6のポンツーンマンホール側の一端には圧縮空気送入口を設ける。圧縮空気送入口には、三方コックとその送気側のさらに袋側には逆止弁を使用する。逆止弁は、空気供給源(エアーコンプレッサー、高圧圧縮容器)を操作して圧縮気体を注入したのち、注入気体の逆流に伴う封入気体の漏れを最小限にとどめることができる。三方コックの使用は、一端からは吸気による脱気が可能であり、当該袋状の物の回収を容易にする。
【0035】
袋状の物6には、空気または窒素もしくはヘリウム等の燃焼を妨げることができる気体を送気するが、ポンツーンの湿度を高めて帯電性を緩和するために、できる限り高湿度であることが望ましい。。
【0036】
送気する気体として、ヘリウム、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガスが考えられるが、直径84メートル程度の原油タンクにおいての使用量は大量であり、空気のほうがコンプレッサーで供給できるため桁違いに安価で経済的である。また、空気以外の期待の場合、万が一漏洩があると作業者が吸引するおそれがあるため、労働安全衛生上の配慮が必要である。
【0037】
タンクの浮き屋根において点検作業を実施する者にPID(光イオン化検出器)方式の防爆型携帯ガス検知器を所持させれば、揮発油の微量(PPMレベル)の蒸気を検出することができ、より早期に不具合を発見することができる。
【0038】
既に浮力の手段として発砲ウレタンや発砲スチロールといった発砲性樹脂を浮力材として注入する手法も提案されているが、樹脂を注入するための機材や手順の煩雑さを鑑みれば、コンプレッサーあるいはボンベ等から供給する方法が容易かつ低コストである。
【0039】
本発明によれば、ポンツーン2に開孔部が生じても、ポンツーン2内部に装てんした袋状の物に開孔部に加工してあるノズルやホース等を介して、簡便かつ短時間で空気等の気体の注入を行なうことができるので、浮き屋根3を液面に浮上させて保持することができ、液体5を別の健全なタンクに移送する時間の確保による危険の排除、もしくは、ポンツーン2の補修(たとえば開孔部の閉塞等)を容易に行なうことができる。
【実施例0040】
図4に示す袋状の物6の外側10のナイロン繊維および内側9のナイロン樹脂を基材としたフィルムのそれぞれに、撥油性を保持させる薬剤として親水撥油剤A0502(三菱マテリアル株式会社、WO2017/134727公報)を塗布し、それぞれに灯油を滴下した。その結果、常温常圧下、いずれの素材においても灯油は含侵せず、液滴状態で保持された。
本発明による資機材を配備し利用することで、石油類の液体を貯蔵するポンツーン形式浮き屋根に配設されるポンツーンが損傷等により浮力を失って液体の中へ沈降する事態に陥る前に、浮力の保持および沈降により液面が大気にむき出しになることで起こる油蒸気の拡散または火災発生の防止が可能となり、総じて安全性を向上させることができる。