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特開2022-134611白金族金属回収剤及び白金族金属回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134611
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】白金族金属回収剤及び白金族金属回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/00 20060101AFI20220908BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20220908BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/44 101Z
C22B3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033855
(22)【出願日】2021-03-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費「特異的イオン対形成を利用した白金族金属リサイクル技術の開発」による委託研究業務 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】寺境 光俊
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA41
4K001BA22
4K001DB22
4K001DB38
(57)【要約】
【課題】白金及びロジウムをそれぞれ選択的かつ高回収率で回収することができる白金族金属回収剤及び白金族金属回収方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される白金族金属回収剤、及び該白金族金属回収剤を用いて、白金またはロジウムを含む塩酸溶液から白金またはロジウムを回収する方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、白金またはロジウムを沈殿させる、白金族金属回収方法である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される白金族金属回収剤。
【化1】
【請求項2】
m-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の白金族金属回収剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の白金族金属回収剤を用いて、白金を含む塩酸溶液から白金を回収する方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、白金を沈殿させる、白金族金属回収方法。
【請求項4】
前記塩酸溶液が、パラジウム及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項3に記載の白金族金属回収方法。
【請求項5】
前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれる白金とのモル比[白金族金属回収剤/白金]を5以上40未満とする、請求項3または4に記載の白金族金属回収方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の白金族金属回収剤を用いて、ロジウムを含む塩酸溶液からロジウムを回収する方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、ロジウムを沈殿させる、白金族金属回収方法。
【請求項7】
前記塩酸溶液がパラジウムを含む、請求項6に記載の白金族金属回収方法。
【請求項8】
前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれるロジウムとのモル比[白金族金属回収剤/ロジウム]を15以上とする、請求項6または7に記載の白金族金属回収方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の白金族金属回収剤を用いて、白金及びロジウムを含む塩酸溶液から白金及びロジウムを分離回収する白金族金属回収方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、白金を含む沈殿物とロジウムを含む溶液を得、白金を回収する白金回収工程、前記白金族金属回収剤と前記ロジウムを含む溶液を混合し、ロジウムを含む沈殿物を得、ロジウムを回収するロジウム回収工程を含む、白金族金属回収方法。
【請求項10】
前記塩酸溶液がパラジウムを含み、前記白金回収工程が、白金を含む沈殿物とロジウムとパラジウムを含む溶液を得るものであり、前記ロジウム回収工程が、ロジウムを含む沈殿物とパラジウムを含む溶液を得るものである、請求項9に記載の白金族金属回収方法。
【請求項11】
前記ロジウム回収工程において、前記白金族金属回収剤と前記ロジウムを含む溶液に加え、更に結晶核剤を混合する、請求項9または10に記載の白金族金属回収方法。
【請求項12】
結晶中の白金原子と請求項1または2に記載の白金族金属回収剤のモル比[白金原子:白金族金属回収剤]が1:1である結晶を含む沈殿物。
【請求項13】
結晶中のロジウム原子と請求項1または2に記載の白金族金属回収剤のモル比[ロジウム原子:白金族金属回収剤]が1:2である結晶を含む沈殿物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
白金族金属回収剤、及び白金族金属回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金族金属は工業的に極めて重要な金属であり、そのなかでも白金、パラジウム、ロジウムは主に自動車排ガス浄化触媒として用いられている。そのため、使用済み触媒からの白金族金属の選択的な分離回収は重要である。
一般に貴金属の回収には電解析出法やセメンテーション法、イオン交換法、沈殿法、溶媒抽出法等の方法が用いられる。これらの方法のなかでは、経済性や操作性に優れた沈殿法や溶媒抽出法が広く用いられている。
沈殿法による選択的な白金族金属の回収方法として、アミンを用いる方法が検討されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ロジウムを低コストで効率的に回収することを目的として、アミド結合とフェニレンジアミン構造を有し、特定濃度の塩酸に対して不溶の固体であるロジウム回収剤が開示されている。
また、特許文献2には、特にロジウムを効率よく分離することを目的として、白金族金属を含む塩酸溶液にジアミノジフェニル構造を有する化合物を加えることで白金族金属を沈殿回収できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-179409号公報
【特許文献2】特開2019-206747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、沈殿法や溶媒抽出法による白金族金属の回収においては、パラジウムが優先的に回収され、白金やロジウムを先に選択的に回収することは困難であった。特許文献1及び2においては、ロジウムを回収する方法は開示されているものの、白金を優先的かつ選択的に回収することはできていない。そのため、パラジウム、ロジウムの存在下においても白金を優先的かつ選択的に回収し、更にパラジウムの存在下においてロジウムを選択的に回収できる方法が求められている。
そこで、本発明は、白金及びロジウムをそれぞれ選択的かつ高回収率で回収することができる白金族金属回収剤及び白金族金属回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、キシリレンジアミンが白金族金属回収剤として優れることを見出し、該白金族金属回収剤を用いることで、白金及びロジウムをそれぞれ選択的かつ高回収率で回収することができ、更には、従来困難であったパラジウム、ロジウムの存在下においても白金を優先的かつ選択的に回収し、次にロジウムを選択的に回収する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される白金族金属回収剤、及び該白金族金属回収剤を用いて、白金またはロジウムを含む塩酸溶液から白金またはロジウムを回収する方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、白金またはロジウムを沈殿させる、白金族金属回収方法である。
【化1】
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、白金及びロジウムをそれぞれ選択的かつ高回収率で回収することができる白金族金属回収剤及び白金族金属回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の白金の回収における塩酸濃度の影響を示す図である。
図2】実施例2の白金の回収における振とう時間の影響を示す図である。
図3】実施例3の白金の回収における白金族金属回収剤と白金とのモル比の影響を示す図である。
図4】実施例4のロジウムの回収における白金族金属回収剤とロジウムとのモル比の影響を示す図である。
図5】実施例5のロジウムの回収における振とう時間の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[白金族金属回収剤]
本発明の白金族金属回収剤は、下記一般式(1)で示される。
【化2】
【0011】
すなわち、本発明の白金族金属回収剤は、キシリレンジアミンである。白金族金属回収剤としては、キシリレンジアミンのなかでも、好ましくはm-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくはm-キシリレンジアミンである。
キシリレンジアミン、特にm-キシリレンジアミンを白金族金属回収剤として用いることで、白金及びロジウムをそれぞれ選択的かつ高回収率で回収することができる。更には、従来困難であったパラジウム、ロジウムの存在下においても白金を優先的かつ選択的に回収でき、パラジウムの存在下においてもロジウムを優先的かつ選択的に回収できる。
本発明の白金族金属回収剤を用いることで、白金及びロジウムをそれぞれ選択的に回収することができる理由は定かではないが、白金族金属の塩酸溶液と混合した際に、それぞれの白金族金属と特定構造の結晶を生成し、選択的に沈殿させることができるためと考えられる。
前記キシリレンジアミンは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。キシリレンジアミンを混合して用いる場合には、m-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンからなることが好ましい。
【0012】
本発明の白金族金属回収剤は、キシリレンジアミンであるが、キシリレンジアミンのハロゲン化水素酸塩の形態も含まれる。キシリレンジアミンのハロゲン化水素酸塩としては、キシリレンジアミンの塩酸塩が好ましい。本発明の白金族金属回収剤がキシリレンジアミンの塩酸塩であることによって、白金族金属を含む塩酸溶液と混合する際に、中和反応による発熱や塩酸濃度変化を防ぐことができる。
なお、本明細書における白金族金属回収方法に用いられる塩酸溶液の塩酸濃度は、本発明の白金族金属回収剤を混合した後の塩酸濃度である。ただし、本発明の白金族金属回収剤としてキシリレンジアミンの塩酸塩を用いた場合には、塩酸濃度の変化がないため、本発明の白金族金属回収剤を混合する前の塩酸濃度であってもよい。
【0013】
[白金族金属回収方法(白金の回収)]
本発明の白金族金属回収方法は、白金及びロジウムをそれぞれ選択的に回収するものであるが、特に白金を優先的に回収することができる。
本発明の白金族金属回収方法の第一の実施形態は、前記白金族金属回収剤を用いて、白金を含む塩酸溶液から白金を回収する方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、白金を沈殿させる方法である。
【0014】
本発明の白金族金属回収方法によれば、白金族金属として白金のみを含む塩酸溶液から白金を回収することができるばかりでなく、前記塩酸溶液がパラジウム及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む場合にも白金を選択的に回収することができる。
具体的な方法を以下に示す。
【0015】
まず、少なくとも白金を含む塩酸溶液に、前記白金族金属回収剤を添加する。
本発明の白金族金属回収剤を用いることで、あらゆる塩酸濃度の塩酸溶液からも白金を選択的に回収することができるが、白金を含む塩酸溶液の塩酸濃度は、好ましくは1~12mol/Lであり、より好ましくは4~10mol/Lであり、更に好ましくは5~9mol/Lである。
また、塩酸溶液に含まれる白金の濃度には制限はないが、効率的に回収する観点から、好ましくは100~10000mg/Lであり、より好ましくは300~5000mg/Lであり、更に好ましくは500~2000mg/Lである。
【0016】
白金族金属回収剤を添加する際には、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれる白金とのモル比[白金族金属回収剤/白金(モル/モル)]を、1以上100未満とすることが好ましく、2以上40未満とすることがより好ましく、5以上40未満とすることが更に好ましい。
前記のモル比の範囲であれば、白金の回収率が高まり、沈殿中にロジウムやパラジウムが含まれにくく、白金を高純度で回収できる。
白金族金属回収剤と塩酸溶液を混合する方法には制限はないが、塩酸溶液中に白金族金属回収剤を添加し、所定時間撹拌又は振とうすることで、白金を沈殿させる。
本発明の白金族金属回収剤を用いると塩酸溶液との混合後、迅速に沈殿が生じるため、短時間で白金を回収することができるが、撹拌又は振とうする時間は、好ましくは1分間以上であり、より好ましくは5分間以上である。上限には制限はないが、効率性の観点から、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましい。撹拌又は振とうする時間は、各成分の濃度や温度にもよって適宜調整すればよい。
撹拌又は振とうする際の温度は、0~100℃であればよく、好ましくは10~50℃である。
【0017】
前記のようにして、得られた白金を含む沈殿物は、ろ過、遠心分離等の固液分離によって回収することができる。
前記沈殿物は白金をイオンとして含み、塩化物イオンやキシリレンジアミンである白金族金属回収剤を含むことから、空気中で焼成することにより、白金を金属又は酸化物として得ることができる。焼成温度は、好ましくは400~1000℃であり、より好ましくは500~700℃である。焼成時間は、好ましくは5~100分間であり、より好ましくは10~80分間である。これら焼成条件を調整することにより、白金を金属、好ましくは金属単体で得ることができる。
【0018】
[白金族金属回収方法(ロジウムの回収)]
本発明の白金族金属回収方法は、ロジウムも選択的に回収することができる。
本発明の白金族金属回収方法の第二の実施形態は、前記白金族金属回収剤を用いて、ロジウムを含む塩酸溶液からロジウムを回収する方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、ロジウムを沈殿させる方法である。
【0019】
本発明の白金族金属回収方法によれば、白金族金属としてロジウムのみを含む塩酸溶液からロジウムを回収することができるばかりでなく、前記塩酸溶液がパラジウムを含む場合にもロジウムを選択的に回収することができる。
具体的な方法を以下に示す。
【0020】
まず、少なくともロジウムを含む塩酸溶液に、前記白金族金属回収剤を添加する。
本発明の白金族金属回収剤を用いることで、幅広い塩酸濃度の塩酸溶液からもロジウムを選択的に回収することができるが、ロジウムを含む塩酸溶液の塩酸濃度は、好ましくは3~12mol/Lであり、より好ましくは4~10mol/Lであり、更に好ましくは5~9mol/Lである。
また、塩酸溶液に含まれるロジウムの濃度には制限はないが、効率的に回収する観点から、好ましくは100~10000mg/Lであり、より好ましくは300~5000mg/Lであり、更に好ましくは500~2000mg/Lである。
【0021】
白金族金属回収剤を添加する際には、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれるロジウムとのモル比[白金族金属回収剤/ロジウム(モル/モル)]を、10以上とすることが好ましく、15以上とすることがより好ましく、40以上とすることが更に好ましく、50以上とすることがより更に好ましい。上限には制限はないが、効率性の点から、200以下とすることが好ましい。
前記のモル比の範囲であれば、ロジウムの回収率が高まり、沈殿中にパラジウムが含まれにくく、ロジウムを高純度で回収できる。
【0022】
本方法においては、ロジウムを含む塩酸溶液に、前記白金族金属回収剤に加え、更に結晶核剤を混合してもよい。結晶核剤を混合することによってより少ない量の白金族金属回収剤を用いてもより選択的にロジウムを回収できる。
結晶核剤を用いた場合の前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれるロジウムとのモル比[白金族金属回収剤/ロジウム(モル/モル)]は、5以上とすることが好ましく、10以上とすることがより好ましく、15以上とすることが更に好ましく、20以上とすることがより更に好ましい。上限には制限はないが、効率性の点から、100以下とすることが好ましい。
結晶核剤は、塩酸溶液に不溶又は難溶である微粒子であることが好ましく、たとえば、無機酸化物粒子、有機化合物結晶等が挙げられる。本方法で得られた沈殿物を結晶核剤として用いることがより好ましく、なかでも結晶中のロジウム原子と前記白金族金属回収剤のモル比[ロジウム原子:白金族金属回収剤]が1:2である結晶を含む沈殿物を用いることが更に好ましい。
結晶核剤の大きさは、5mm以下が好ましい。結晶核剤の大きさの下限には制限はないが、0.001mm以上が好ましい。
結晶核剤の使用量には特に制限はないが、前記の塩酸溶液中のロジウム1molに対して、好ましくは0.1~50gであり、より好ましくは0.5~20gであり、更に好ましくは3~15gである。
【0023】
白金族金属回収剤と塩酸溶液を混合する方法には制限はないが、塩酸溶液中に白金族金属回収剤を添加し、所定時間撹拌又は振とうすることで、ロジウムを沈殿させる。
撹拌又は振とうする時間は、好ましくは5分間以上であり、より好ましくは10分間以上である。上限には制限はないが、効率性の観点から、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましい。撹拌又は振とうする時間は、各成分の濃度や温度にもよって適宜調整すればよい。
撹拌又は振とうする際の温度は、0~100℃であればよく、好ましくは10~50℃である。
【0024】
前記のようにして、得られたロジウムを含む沈殿物は、ろ過、遠心分離等の固液分離によって回収することができる。
前記沈殿物はロジウムをイオンとして含み、塩化物イオンやキシリレンジアミンである白金族金属回収剤を含むことから、空気中で焼成することにより、ロジウムを金属又は酸化物として得ることができる。焼成温度は、好ましくは400~1500℃であり、より好ましくは450~1200℃である。焼成時間は、好ましくは5~100分間であり、より好ましくは10~80分間である。これら焼成条件を調整することにより、ロジウムを金属、好ましくは金属単体で得ることができる。
【0025】
[白金族金属回収方法(白金及びロジウムの逐次回収)]
本発明の白金族金属回収方法によれば、前記の通り、白金及びロジウムをそれぞれ選択的に回収することができるが、白金及びロジウムを含む塩酸溶液からそれぞれを分離して回収することができる。
つまり、本発明の白金族金属回収方法の第三の実施形態は、前記白金族金属回収剤を用いて、白金及びロジウムを含む塩酸溶液から白金及びロジウムを分離回収する白金族金属回収方法であって、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、白金を含む沈殿物とロジウムを含む溶液を得、白金を回収する白金回収工程、前記白金族金属回収剤と前記ロジウムを含む溶液を混合し、ロジウムを含む沈殿物を得、ロジウムを回収するロジウム回収工程を含む。
本方法によれば、塩酸溶液がパラジウムを含んでいる場合も、白金及びロジウムを含む塩酸溶液からそれぞれを分離して回収することができる。すなわち、本発明の白金族金属回収方法の別の実施形態は、前記塩酸溶液がパラジウムを含み、前記白金回収工程が、白金を含む沈殿物とロジウムとパラジウムを含む溶液を得るものであり、前記ロジウム回収工程が、ロジウムを含む沈殿物とパラジウムを含む溶液を得るものである。
【0026】
本実施形態の最初の工程は、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液を混合し、白金を含む沈殿物とロジウムを含む溶液を得る白金回収工程である。
この工程は、上述の[白金族金属回収方法(白金の回収)]の項に示した方法及び条件で行うことが好ましく、特にロジウムの沈殿を防ぎつつ、白金を含む沈殿物を得る観点から以下の条件で行うことが好ましい。
【0027】
白金及びロジウムを含む塩酸溶液の塩酸濃度は、好ましくは1~12mol/Lであり、より好ましくは4~10mol/Lであり、更に好ましくは5~9mol/Lである。
また、塩酸溶液に含まれる白金及びロジウムの濃度には制限はないが、効率的に回収する観点から、塩酸溶液に含まれる白金の濃度は、好ましくは100~10000mg/Lであり、より好ましくは300~5000mg/Lであり、更に好ましくは500~2000mg/Lである。また、塩酸溶液に含まれるロジウムの濃度は、好ましくは100~10000mg/Lであり、より好ましくは300~5000mg/Lであり、更に好ましくは500~2000mg/Lである。
【0028】
白金族金属回収剤を添加する際には、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれる白金とのモル比[白金族金属回収剤/白金(モル/モル)]を、1以上40未満とすることが好ましく、2以上40未満とすることがより好ましく、5以上40未満とすることが更に好ましい。
前記のモル比の範囲、特に40未満とすることで、白金の回収率が高まり、沈殿中にロジウムが含まれにくく、白金を高純度で回収できる。
白金族金属回収剤と塩酸溶液を混合する方法には制限はないが、塩酸溶液中に白金族金属回収剤を添加し、所定時間撹拌又は振とうすることで、白金を沈殿させる。
本発明の白金族金属回収剤を用いると塩酸溶液との混合後、迅速に沈殿が生じるため、短時間で白金を回収することができるが、撹拌又は振とうする時間は、好ましくは1分間以上であり、より好ましくは5分間以上である。上限には制限はないが、効率性の観点から、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましい。撹拌又は振とうする時間は、各成分の濃度や温度にもよって適宜調整すればよい。
撹拌又は振とうする際の温度は、0~100℃であればよく、好ましくは10~50℃である。
前記のようにして、得られた白金を含む沈殿物は、ろ過、遠心分離等の固液分離によって回収することができ、沈殿物回収後にロジウムを含む溶液を得る。
【0029】
前記沈殿物は白金をイオンとして含み、塩化物イオンやキシリレンジアミンである白金族金属回収剤を含むことから、空気中で焼成することにより、白金を金属又は酸化物として得ることができる。焼成温度は、好ましくは400~1000℃であり、より好ましくは500~700℃である。焼成時間は、好ましくは5~100分間であり、より好ましくは10~80分間である。これら焼成条件を調整することにより、白金を金属、好ましくは金属単体で得ることができる。
【0030】
本実施形態の第二の工程は、前記白金族金属回収剤と、前記白金回収工程で得られたロジウムを含む溶液を混合し、ロジウムを含む沈殿物を得、ロジウムを回収するロジウム回収工程である。
この工程は、上述の[白金族金属回収方法(ロジウムの回収)]の項に示した方法及び条件で行うことが好ましく、特にパラジウムの沈殿を防ぎつつ、ロジウムを含む沈殿物を得る観点から以下の条件で行うことが好ましい。
【0031】
ロジウムを含む塩酸溶液の塩酸濃度は、好ましくは3~12mol/Lであり、より好ましくは4~10mol/Lであり、更に好ましくは5~9mol/Lである。
また、塩酸溶液に含まれるロジウムの濃度には制限はないが、効率的に回収する観点から、好ましくは100~10000mg/Lであり、より好ましくは300~5000mg/Lであり、更に好ましくは500~2000mg/Lである。
【0032】
白金族金属回収剤を添加する際には、前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれるロジウムとのモル比[白金族金属回収剤/ロジウム(モル/モル)]を、10以上とすることが好ましく、15以上とすることがより好ましく、40以上とすることが更に好ましく、50以上とすることがより更に好ましい。上限には制限はないが、効率性の点から、200以下とすることが好ましい。このモル比は、本工程で用いられるロジウムを含む塩酸溶液中に、前工程で添加した白金族金属回収剤が残存する場合、それを含めたモル比である。
前記のモル比の範囲であれば、ロジウムの回収率が高まり、沈殿中にパラジウムが含まれにくく、ロジウムを高純度で回収できる。
【0033】
本方法においては、ロジウムを含む塩酸溶液に、前記白金族金属回収剤に加え、更に結晶核剤を混合してもよい。結晶核剤を混合することによってより少ない量の白金族金属回収剤を用いてもより選択的にロジウムを回収できる。
結晶核剤を用いた場合の前記白金族金属回収剤と前記塩酸溶液に含まれるロジウムとのモル比[白金族金属回収剤/ロジウム(モル/モル)]は、5以上とすることが好ましく、10以上とすることがより好ましく、15以上とすることが更に好ましく、20以上とすることがより更に好ましい。上限には制限はないが、効率性の点から、100以下とすることが好ましい。
結晶核剤は、塩酸溶液に不溶又は難溶である微粒子であることが好ましく、たとえば、無機酸化物粒子、有機化合物結晶等が挙げられる。本方法で得られた沈殿物を結晶核剤として用いることがより好ましく、なかでも結晶中のロジウム原子と前記白金族金属回収剤のモル比[ロジウム原子:白金族金属回収剤]が1:2である結晶を含む沈殿物を用いることが更に好ましい。
結晶核剤の大きさは、5mm以下が好ましい。結晶核剤の大きさの下限には制限はないが、0.001mm以上が好ましい。
結晶核剤の使用量には特に制限はないが、前記の塩酸溶液中のロジウム1molに対して、好ましくは0.1~50gであり、より好ましくは0.5~20gであり、更に好ましくは3~15gである。
【0034】
白金族金属回収剤と塩酸溶液を混合する方法には制限はないが、塩酸溶液中に白金族金属回収剤を添加し、所定時間撹拌又は振とうすることで、ロジウムを沈殿させる。
撹拌又は振とうする時間は、好ましくは5分間以上であり、より好ましくは10分間以上である。上限には制限はないが、効率性の観点から、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましい。撹拌又は振とうする時間は、各成分の濃度や温度にもよって適宜調整すればよい。
撹拌又は振とうする際の温度は、0~100℃であればよく、好ましくは10~50℃である。
【0035】
前記のようにして、得られたロジウムを含む沈殿物は、ろ過、遠心分離等の固液分離によって回収することができる。
前記沈殿物はロジウムをイオンとして含み、塩化物イオンやキシリレンジアミンである白金族金属回収剤を含むことから、空気中で焼成することにより、ロジウムを金属又は酸化物として得ることができる。焼成温度は、好ましくは400~1500℃であり、より好ましくは450~1200℃である。焼成時間は、好ましくは5~100分間であり、より好ましくは10~80分間である。これら焼成条件を調整することにより、ロジウムを金属、好ましくは金属単体で得ることができる。
【0036】
[沈殿物]
前記のように本発明の白金族金属回収剤を用いることによって、塩酸溶液中の白金族金属を沈殿物として回収することができるが、得られた沈殿物には、白金族金属原子(白金族金属イオン)に加え、前記白金族金属回収剤、塩酸、塩化物イオン、水等が含まれ、これらが結晶として沈殿物に含まれる。
【0037】
本発明の白金族金属回収方法の第一の実施形態及び第三の実施形態の白金回収工程では、前記白金族金属回収剤と白金を含む塩酸溶液を混合し、白金を沈殿させる。
本発明の沈殿物は、これらの方法によって得られ、結晶中の白金原子と前記白金族金属回収剤のモル比[白金原子:前記白金族金属回収剤]が1:1である結晶を含む。
白金原子と前記白金族金属回収剤のモル比が1:1である結晶を形成することで、他の白金族金属原子がその結晶から排除され、沈殿物に取り込まれることがないと考えられる。したがって、前記方法で得られる沈殿物には、白金が選択的に存在することができるものと考えられる。
【0038】
本発明の白金族金属回収方法の第二の実施形態及び第三の実施形態のロジウム回収工程では、前記白金族金属回収剤とロジウムを含む塩酸溶液を混合し、ロジウムを沈殿させる。
本発明の沈殿物は、これらの方法によって得られ、結晶中のロジウム原子と前記白金族金属回収剤のモル比[ロジウム原子:前記白金族金属回収剤]が1:2である結晶を含む。
ロジウム原子と前記白金族金属回収剤のモル比が1:2である結晶を形成することで、パラジウム等がその結晶から排除され、沈殿物に取り込まれることがないと考えられる。したがって、前記方法で得られる沈殿物には、ロジウムが選択的に存在することができるものと考えられる。
【実施例0039】
以下に示す実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0040】
[白金の回収]
<実施例1:塩酸濃度の影響>
パラジウムを500mg/L、白金を1000mg/L、ロジウムを500mg/L含む、図1に示す塩酸濃度である塩酸溶液に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンを白金に対して15倍量(mol/mol)添加した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。その後、25℃で1時間振とうして沈殿物を得た。得られた沈殿物と溶液を遠心分離により固液分離した。固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。
図1に塩酸濃度と金属回収率の関係を示す。図1から明らかなように、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンを用いることで、1mol/L以上の広い塩酸濃度範囲で白金が選択的に沈殿物として回収できることがわかる。
【0041】
<実施例2:振とう時間の影響>
塩酸溶液の塩酸濃度を8mol/Lとし、振とう時間を図2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、沈殿物と溶液を得、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。
図2に振とう時間と金属回収率の関係を示す。図2から明らかなように、1分間の振とうで白金を92%回収することができ、10分間以上の振とうでは白金を95%以上、沈殿物として回収できた。また、パラジウムやロジウムは沈殿物として回収されなかった。
【0042】
<実施例3:白金族金属回収剤と白金とのモル比の影響>
塩酸溶液の塩酸濃度を8mol/Lとし、振とう時間を10分間とし、白金族金属回収剤(m-キシリレンジアミン)の添加量を図3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、沈殿物と溶液を得、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。
図3にm-キシリレンジアミン添加量と金属回収率の関係を示す。図3から明らかなように、m-キシリレンジアミンの添加量が白金に対して5倍量(mol/mol)以上となる条件では、白金を86%以上、沈殿物として回収でき、高い白金回収率であることがわかる。また、m-キシリレンジアミンの添加量が白金に対して40倍量(mol/mol)以下となる条件では、白金を選択的に沈殿物として回収できることがわかる。
【0043】
[ロジウムの回収]
<実施例4:白金族金属回収剤とロジウムとのモル比の影響>
パラジウムを500mg/L、ロジウムを500mg/L含む塩酸溶液(塩酸濃度8mol/L)に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンを図4に示す添加量で添加した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。その後、25℃で1時間振とうして沈殿物を得た。得られた沈殿物と溶液を遠心分離により固液分離した。固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。
図4にm-キシリレンジアミン添加量と金属回収率の関係を示す。図4から明らかなように、m-キシリレンジアミンの添加量がロジウムに対して75倍量(mol/mol)以上となる条件では、ロジウムが沈殿物として90%以上回収することができ、高いロジウム回収率であった。また、m-キシリレンジアミンの添加量に関わらずパラジウムは回収されず、ロジウムを選択的に沈殿物として回収できることがわかる。
【0044】
<実施例5:振とう時間の影響>
振とう時間を図5に示すように変更した以外は、実施例4と同様にして、沈殿物と溶液を得、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。
図5にm-キシリレンジアミンをロジウムに対して100倍量(mol/mol)添加したときの振とう時間と金属回収率の関係を示す。図5から明らかなように、10分間以上の振とうでロジウムを90%以上沈殿物として回収でき、パラジウムは回収されなかった。
【0045】
[白金族金属原子と白金族金属回収剤を含む結晶(沈殿物)]
<実施例6:白金原子と白金族金属回収剤を含む結晶(沈殿物)>
白金を1000mg/L含む塩酸溶液(塩酸濃度8mol/L)に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンを白金に対して2倍量(mol/mol)添加した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。その後、25℃で振とうして沈殿物を得た。沈殿物を含む塩酸溶液を数日間静置し、結晶を得た。得られた結晶(約2mm)と溶液をろ過より固液分離した。結晶に対して、熱重量分析、単結晶X線構造解析、粉末X線回折分析を行ったところ、結晶中の白金原子と前記白金族金属回収剤のモル比[白金原子:白金族金属回収剤]が1:1である結晶であることがわかった。
【0046】
<実施例7:ロジウム原子と白金族金属回収剤を含む結晶(沈殿物)>
ロジウムを500mg/L含む塩酸溶液(塩酸濃度8mol/L)に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンをロジウムに対して50倍量(mol/mol)添加した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。その後、25℃で振とうして沈殿物を得た。沈殿物を含む塩酸溶液を数日間静置し、結晶を得た。得られた結晶(約2mm)と溶液をろ過より固液分離した。結晶に対して、熱重量分析、単結晶X線構造解析、粉末X線回折分析を行ったところ、結晶中のロジウム原子と前記白金族金属回収剤のモル比[ロジウム原子:白金族金属回収剤]が1:2である結晶であることがわかった。
【0047】
[白金及びロジウムの逐次回収]
<実施例8>
(白金回収工程:第一工程)
パラジウムを500mg/L、白金を1000mg/L、ロジウムを500mg/L含む塩酸溶液(塩酸濃度8mol/L)に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンを白金に対して15倍量(mol/mol)添加した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。その後、25℃で10分間振とうして沈殿物を得た。得られた沈殿物と溶液をろ過より固液分離した。
固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。沈殿物には、最初の塩酸溶液に含まれていた量の96%の白金が含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の3%のロジウムが含まれ、パラジウムは含まれていなかった。
沈殿物に対して、熱重量分析、粉末X線回折分析を行ったところ、結晶中の白金原子と前記白金族金属回収剤のモル比[白金原子:白金族金属回収剤]が1:1である結晶を含むことがわかった。
【0048】
(ロジウム回収工程:第二工程)
次に、前工程の固液分離後に得られた溶液に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンをロジウムに対して90倍量(mol/mol)添加し、25℃で10分間振とうし、得られた沈殿物と溶液をろ過により固液分離した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。
固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。沈殿物には、最初の塩酸溶液に含まれていた量の86%のロジウムが含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の3%の白金が含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の5%のパラジウムが含まれていた。
沈殿物に対して、熱重量分析、粉末X線回折分析を行ったところ、結晶中のロジウム原子と前記白金族金属回収剤のモル比[ロジウム原子:白金族金属回収剤]が1:2である結晶を含むことがわかった。
固液分離後に得られた溶液には、最初の塩酸溶液に含まれていた量の1%の白金が含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の11%のロジウムが含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の95%のパラジウムが含まれていた。
【0049】
実施例8の結果からわかるように、本発明の白金族金属回収剤を用いることで、パラジウム、白金及びロジウムを含む塩酸溶液から、白金を選択的かつ高回収率で回収することができ、パラジウム及びロジウムを含む塩酸溶液から、ロジウムを選択的かつ高回収率で回収することができる。
【0050】
<実施例9:ロジウム回収工程に結晶核剤を用いた例>
(白金回収工程:第一工程)
パラジウムを500mg/L、白金を1000mg/L、ロジウムを500mg/L含む塩酸溶液(塩酸濃度8mol/L)に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンを白金に対して15倍量(mol/mol)添加した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。その後、25℃で10分間振とうして沈殿物を得た。得られた沈殿物と溶液をろ過により固液分離した。
固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。沈殿物には、最初の塩酸溶液に含まれていた量の96%の白金が含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の3%のロジウムが含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の0.7%のパラジウムが含まれていた。
【0051】
(ロジウム回収工程(結晶核剤を用いた例):第二工程)
次に、前工程の固液分離後に得られた溶液に、白金族金属回収剤としてm-キシリレンジアミンをロジウムに対して20倍量(mol/mol)添加し、更に結晶核剤として実施例7で得られたロジウム原子と白金族金属回収剤を含む結晶(大きさ約2mm)を5粒添加して、25℃で10分間振とうし、得られた沈殿物と溶液をろ過により固液分離した。なお、ここで用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。
固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。沈殿物には、最初の塩酸溶液に含まれていた量の93%のロジウムが含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の2%の白金が含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の0.6%のパラジウムが含まれていた。
固液分離後に得られた溶液には、最初の塩酸溶液に含まれていた量の2%の白金が含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の4%のロジウムが含まれ、最初の塩酸溶液に含まれていた量の99%のパラジウムが含まれていた。
【0052】
実施例9の結果からわかるように、ロジウム回収工程において、結晶核剤を用いることで、少量の白金族金属回収剤を用いてもより選択的にロジウムを回収できる。
【0053】
[触媒浸出模擬溶液からの回収]
<実施例10>
使用済み自動車排ガス浄化触媒からの白金族金属の回収を想定し、表1に示す種々の金属を含む浸出模擬溶液(塩酸濃度8mol/L)を用いて、実施例9と同様の操作で、白金回収工程(第一工程)及びロジウム回収工程(第二工程)を行い、各工程の固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる各金属の量を求め、金属回収率を算出した。なお、前記第一工程及び前記第二工程で用いたm-キシリレンジアミンは塩酸塩である。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、白金族金属以外の種々の金属を含む塩酸溶液を用いた場合にも、第一工程では白金を選択的に沈殿物として回収することができ、第二工程ではロジウムを選択的に沈殿物として回収することができた。
【0056】
<実施例11:白金の回収(白金族金属回収剤としてp-キシリレンジアミンを用いた例)>
パラジウムを500mg/L、白金を1000mg/L、ロジウムを500mg/L含む8mol/Lの塩酸溶液に、白金族金属回収剤としてp-キシリレンジアミンを白金に対して15倍量(mol/mol)添加した。なお、ここで用いたp-キシリレンジアミンは塩酸塩である。その後、25℃で1時間振とうして沈殿物を得た。得られた沈殿物と溶液を遠心分離により固液分離した。固液分離後に得られた溶液をICPにて分析し、沈殿物に含まれる白金族金属の量を算出した。
その結果、白金を74%沈殿物として回収することができた。また、沈殿物としてパラジウムは4%、ロジウムは1%のみ回収され、選択的に沈殿物として白金を回収できることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5