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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134640
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/37 20180101AFI20220908BHJP
   F21S 41/36 20180101ALI20220908BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20220908BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20220908BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20220908BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20220908BHJP
   F21V 7/04 20060101ALI20220908BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20220908BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20220908BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20220908BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220908BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20220908BHJP
   F21W 102/19 20180101ALN20220908BHJP
【FI】
F21S41/37
F21S41/36
F21S41/33
F21S41/663
F21S41/153
F21S41/147
F21V7/04 110
F21V7/09 500
F21V19/00 150
F21W102:155
F21Y115:10
F21W102:30
F21W102:19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033900
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】藤村 俊之
【テーマコード(参考)】
3K013
【Fターム(参考)】
3K013BA01
3K013CA05
3K013CA16
(57)【要約】
【課題】投影レンズを備えた車両用灯具において、略均一な明るさで灯具前方の近距離路面を照射可能とする。
【解決手段】車両用灯具10として、リフレクタ30で反射した光源20からの光を投影レンズ40を介して灯具前方へ向けて照射する構成とする。その上で、リフレクタ30の反射面として、灯具前方5m以内の近距離路面を照射するための反射領域30Aa2を備えた構成とする。その際、反射領域30Aa2として、光源20からの出射光を拡散反射させるための光拡散処理(シボ加工E)が施された構成とする。これにより、反射領域30Aa2からの反射光によって灯具前方の近距離路面を配光ムラの少ない略均一な明るさで照射可能とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源とリフレクタと投影レンズとを備え、上記リフレクタで反射した上記光源からの光を上記投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、
上記リフレクタの反射面は、灯具前方5m以内の近距離路面を照射するための反射領域を備えており、
上記反射領域に、上記光源からの出射光を拡散反射させるための光拡散処理が施されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記光源は、基板に搭載された発光素子で構成されており、
上記基板は、上記発光素子の発光面が灯具前方へ向けて斜め上向きとなるように傾斜した状態で配置されており、
上記リフレクタは、上記発光素子を上方側から覆うように配置されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記発光素子として、ロービーム照射時に点灯する第1発光素子と、ハイビーム照射時に追加点灯する第2発光素子とを備えており、
上記第2発光素子は、上記第1発光素子から灯具前方側に離れた位置に配置されており、
上記リフレクタとして、上記第1発光素子からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させる第1リフレクタと、上記第2発光素子からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させる第2リフレクタとを備えており、
上記第2リフレクタは、上記第1および第2発光素子の間に位置するように配置されており、
上記反射領域は、上記第1リフレクタの反射面に形成されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記第1および第2リフレクタは一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項3記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記第1および第2発光素子は共通の基板に搭載されている、ことを特徴とする請求項3または4記載の車両用灯具。
【請求項6】
上記車両用灯具は二輪車用前照灯として構成されている、ことを特徴とする請求項1~5いずれか記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、投影レンズを備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、例えば「特許文献1」に記載されているように、リフレクタで反射した光源からの光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成されたものが知られている。
【0003】
また「特許文献2」には、このような車両用灯具として、リフレクタからの反射光のみならず光源からの直射光についても投影レンズに入射させるように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-95480号公報
【特許文献2】特開2019-207774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が二輪車やワンボックスカーのような四輪車である場合には、一般的なセダンタイプの四輪車に比して搭乗者の視野を遮るものが少ないので、灯具前方の近距離路面を視認しやすい。
【0006】
したがって、このような車両に装着されるヘッドランプやフォグランプ等の前照灯においては、灯具前方の近距離路面を照射し得る構成とすることが望ましく、その際できるだけ配光ムラの少ない略均一な明るさで照射することが望まれる。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、投影レンズを備えた車両用灯具において、略均一な明るさで灯具前方の近距離路面を照射することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、リフレクタの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
光源とリフレクタと投影レンズとを備え、上記リフレクタで反射した上記光源からの光を上記投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、
上記リフレクタの反射面は、灯具前方5m以内の近距離路面を照射するための反射領域を備えており、
上記反射領域に、上記光源からの出射光を拡散反射させるための光拡散処理が施されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「車両用灯具」の種類は特に限定されるものではなく、例えばヘッドランプ、フォグランプ、コーナリングランプ等が採用可能である。
【0011】
上記「反射領域」は、灯具前方5m以内の近距離路面の少なくとも一部を照射し得る領域であれば、その具体的な配置や外形形状等は特に限定されるものではない。
【0012】
上記「光拡散処理」は、光源からの出射光を拡散反射させ得るものであれば、特定の処理に限定されるものではなく、例えばシボ加工やフロスト加工等が採用可能である。
【発明の効果】
【0013】
本願発明に係る車両用灯具は、リフレクタで反射した光源からの光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射する構成となっているが、リフレクタの反射面は灯具前方5m以内の近距離路面を照射するための反射領域を備えており、この反射領域には光源からの出射光を拡散反射させるための光拡散処理が施されているので、この反射領域からの反射光によって灯具前方の近距離路面を配光ムラの少ない略均一な明るさで照射することができる。
【0014】
このように本願発明によれば、投影レンズを備えた車両用灯具において、略均一な明るさで灯具前方の近距離路面を照射することができる。
【0015】
上記構成において、さらに、光源が基板に搭載された発光素子で構成されており、かつ、その発光面が灯具前方へ向けて斜め上向きとなるように基板が傾斜した状態で配置された構成とした上で、リフレクタが発光素子を上方側から覆うように配置された構成とすれば、灯具前方の近距離路面を照射するための反射領域を容易に確保することができる。しかも、リフレクタからの反射光のみならず発光素子からの直射光についても投影レンズに効率良く入射させることが可能となるので、これにより灯具効率を高めることができる。
【0016】
このような構成を採用した場合において、発光素子として、ロービーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時に追加点灯する第2発光素子とを備え、かつ、第2発光素子が第1発光素子から灯具前方側に離れた位置に配置された構成とし、また、リフレクタとして、第1発光素子からの出射光を投影レンズへ向けて反射させる第1リフレクタと、第2発光素子からの出射光を投影レンズへ向けて反射させる第2リフレクタとを備え、かつ、第2リフレクタが第1および第2発光素子の間に位置するように配置された構成とした上で、上記反射領域が第1リフレクタの反射面に形成された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】
すなわち、ロービーム照射時には灯具前方の近距離路面の視認性を十分に確保することが特に必要となるが、この近距離路面に配光ムラが発生すると非常に目立ってしまうので、第1リフレクタの反射面に上記反射領域が形成された構成とすることが効果的である。また、第2リフレクタが第1および第2発光素子の間に位置するように配置された構成とすることにより、第1および第2リフレクタをスペース効率良く配置することができる。
【0018】
その際、第1および第2リフレクタが一体的に形成された構成とすれば、車両用灯具の部品点数の削減を図ることができる。
【0019】
また、第1および第2発光素子が共通の基板に搭載された構成とすれば、両者の位置関係精度を容易に確保することができるので、配光制御の精度を高めることができ、かつ、車両用灯具の部品点数の削減を図ることができる。
【0020】
上記構成において、さらに、車両用灯具が二輪車用前照灯として構成されている場合には、灯具前方の近距離路面が二輪車の直前領域まで視認しやすくなるので、上記構成を採用することが特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す斜視図
図2図1のII方向矢視図
図3図2のIII-III線断面図
図4図2のIV-IV線断面図
図5図2の要部詳細図
図6図3の要部詳細図
図7図6の要部詳細図
図8】上記車両用灯具を、投影レンズとその以外の灯具構成部材とに分離して示す分解斜視図
図9】上記灯具構成部材を、リフレクタと基板アッシーおよびヒートシンクとに分離した状態で示す分解斜視図
図10】上記灯具構成部材を、リフレクタと基板アッシーとヒートシンクとに分離した状態で示す分解斜視図
図11図8のXI-XI線断面図
図12】上記車両用灯具からの照射光によって形成される配光パターンを透視的に示す図
図13】上記実施形態の第1変形例を示す、図4と同様の図
図14】上記実施形態の第2変形例を示す、図2と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本願発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す斜視図である。また、図2図1のII方向矢視図であり、図3図2のIII-III線断面図であり、図4図2のIV-IV線断面図である。
【0024】
これらの図において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0025】
車両用灯具10は、二輪車の前端部に装着された状態で用いられる二輪車用前照灯であって、ロービーム照射とハイビーム照射とを選択的に行い得る構成となっている。
【0026】
まず、車両用灯具10の構成の概要について説明する。
【0027】
図3に示すように、車両用灯具10は、光源20とリフレクタ30と投影レンズ40とを備えたプロジェクタ型の灯具であって、リフレクタ30で反射した光源20からの光を投影レンズ40を介して灯具前方(すなわち車両前方)へ向けて照射するように構成されている。
【0028】
図2に示すように、光源20は、ロービーム照射時に点灯する4つの第1発光素子20Aと、ハイビーム照射時に追加点灯する4つの第2発光素子20Bとで構成されている。
【0029】
4つの第1発光素子20Aおよび4つの第2発光素子20Bは、共通の基板22に搭載されており、これにより基板アッシー60が構成されている。
【0030】
基板アッシー60は、基板22においてヒートシンク50に支持されている。また、リフレクタ30および投影レンズ40もヒートシンク50に支持されている。
【0031】
車両用灯具10は、投影レンズ40とヒートシンク50とによって形成される灯室12内に、基板アッシー60とリフレクタ30とが収容された構成となっている。
【0032】
図5図2の要部詳細図であり、図6図3の要部詳細図であり、図7図6の要部詳細図である。
【0033】
図5~7にも示すように、基板22は、4つの第1発光素子20Aおよび4つの第2発光素子20Bの各々の発光面20Aa、20Baが灯具前方へ向けて斜め上向きとなるように傾斜した状態(すなわち水平面に対して後上がりに傾斜した状態)で配置されている。
【0034】
図5に示すように、4つの第1発光素子20Aは左右方向に並んだ状態で配置されており、4つの第2発光素子20Bは、4つの第1発光素子20Aから灯具前方側に離れた位置(具体的には基板22の上面に沿って灯具前方斜め下方側に離れた位置)において左右方向に並んだ状態で配置されている。
【0035】
リフレクタ30は、4つの第1発光素子20Aからの出射光を投影レンズ40へ向けて反射させる第1リフレクタ30Aと、4つの第2発光素子20Bからの出射光を投影レンズ40へ向けて反射させる第2リフレクタ30Bとが一体的に形成された構成となっている。
【0036】
第1リフレクタ30Aは、4つの第1発光素子20Aを上方側から覆うように配置されており、第2リフレクタ30Bは、第1リフレクタ30Aの下方において、4つの第2発光素子20Bを上方側から覆うように配置されている。その際、第2リフレクタ30Bは、4つの第1発光素子20Aと4つの第2発光素子20Bとの間に位置するように配置されている。
【0037】
これを実現するため、リフレクタ30には、左右方向に細長く延びる開口部32が、第1リフレクタ30Aと第2リフレクタ30Bとの間に位置するようにした状態で形成されている。また、第1リフレクタ30Aの反射面30Aaは、第2リフレクタ30Bの反射面30Baよりも大きいサイズで形成されている。そして、4つの第1発光素子20Aからの出射光は、開口部32を介して第1リフレクタ30Aに入射し、4つの第2発光素子20Bからの出射光は、開口部32の下方において第2リフレクタ30Bに入射するようになっている。
【0038】
なお、図3、4、6、7においては、第1発光素子20Aからの出射光の光路を実線で示しており、第2発光素子20Bからの出射光の光路を破線で示している。
【0039】
投影レンズ40は、灯具前後方向に延びる光軸Axを有しており、その後側焦点Fを含む仮想鉛直面上に形成される投影用画像を反転投影することによりロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターン(これらについては後述する)を形成するようになっている。この投影レンズ40の後側焦点Fの位置は、4つの第1発光素子20Aの左右方向の中心位置でかつ発光面20Aaに対してやや下方の位置(すなわち第2発光素子20Bの発光面20Baよりも上方の位置)に設定されている。
【0040】
次に、車両用灯具10の構成の詳細について説明する。
【0041】
図8は、車両用灯具10を、投影レンズ40とその以外の灯具構成部材とに分離して示す分解斜視図である。また、図9は、上記灯具構成部材を、リフレクタ30と基板アッシー60およびヒートシンク50とに分離した状態で示す分解斜視図であり、図10は、上記灯具構成部材を、リフレクタ30と基板アッシー60とヒートシンク50とに分離した状態で示す分解斜視図である。
【0042】
まず、投影レンズ40の構成について説明する。
【0043】
図8にも示すように、投影レンズ40は、無色透明の部材(例えばアクリル樹脂製部材)であって、投影レンズ40としての光学的な機能を果たすレンズ本体部42と、このレンズ本体部42の外周縁部から灯具後方へ向けて延びる筒状部44とを備えている。
【0044】
レンズ本体部42は、前面が凸面状に形成された平凸非球面レンズとして構成されており、灯具正面視において円形の外形形状を有している。
【0045】
筒状部44は、その前端部がレンズ本体部42よりもひと回り大きい円形の外形形状を有しており、その前端面44aは円環状に形成されている。筒状部44は、灯具後方へ向けて徐々に径が大きくなるように形成されており、その後端部は略八角形の外形形状を有している。なお、筒状部44は、その上端部から下端部にかけて徐々に肉厚が増大するように形成されている。
【0046】
筒状部44の後端部には、その全周にわたって外周フランジ部44Aが形成されている。外周フランジ部44Aは、略八角形の外形形状を有しており、略一定幅で形成されているが、下部領域においてはその幅が狭くなっている。また、外周フランジ部44Aは、外周側へ向けて徐々に肉厚が減少するように形成されている。外周フランジ部44Aの後面は光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びており、この後面には灯具後方へ向けて延びる環状突起部44Bが形成されている。
【0047】
外周フランジ部44Aには、その左右2箇所に平坦部44Aaが形成されている。各平坦部44Aaは、外周フランジ部44Aの前面を部分的に平面状に凹ませることによって形成されている。
【0048】
図2に示すように、左右1対の外周フランジ部44Aには、光軸Axと略同じ高さ位置に、水平方向に延びるU字形の切欠き部44Ab、44Acがそれぞれ形成されている。また、左側(灯具正面視では右側)の切欠き部44Abの下方には、円形の貫通孔44Adが形成されており、右側の切欠き部44Acの下方には、水平方向に延びるU字形の切欠き部44Aeが形成されている。
【0049】
投影レンズ40には、そのレンズ本体部42の前面にハードコートによる表面処理が施されており、また、その筒状部44の外周面には遮光処理が施されている。この遮光処理は、前端面44aとの接続位置から外周フランジ部44Aとの接続位置までの範囲の全周にわたって黒色塗装膜46を形成することによって行われている。
【0050】
次に、ヒートシンク50の構成について説明する。
【0051】
図3、4に示すように、ヒートシンク50は、灯具後方へ延びる複数の放熱フィン56を備えた金属製部材(例えばアルミダイカスト成形品)として構成されている。
【0052】
ヒートシンク50には、投影レンズ40の環状突起部44Bに対応する位置にU溝状の環状凹部52が形成されている。そして、この環状凹部52に接着剤等のシール剤62が充填された状態で、灯具前方側から投影レンズ40の環状突起部44Bが環状凹部52に挿入されることにより、灯室12内の気密性を維持し得る状態でヒートシンク50に対して投影レンズ40が支持されるようになっている。
【0053】
図8に示すように、環状凹部52は、その外周壁部52aの左右両側部が厚肉で形成されている。この外周壁部52aの前端面には、光軸Axと略同じ高さ位置に左右1対のネジ穴52b、52cが形成されており、その下方には左右1対の位置決めピン52d、52eが形成されている。また、外周壁部52aの前端面には、左右1対のネジ穴52b、52cの周縁領域に円環状の突出面52fが形成されており、4箇所のコーナ部にも突出面52gがそれぞれ形成されている。
【0054】
投影レンズ40は、その左右2箇所においてヒートシンク50に対してネジ締め固定されている。
【0055】
具体的には、投影レンズ40は、その外周フランジ部44Aの後面がヒートシンク50の外周壁部52aに形成された複数の突出面52f、52gに押し当てられた状態で、左右1対の切欠き部44Ab、44Acを介してヒートシンク50の左右1対のネジ穴52b、52cに挿入されたネジ48が締め付けられることによって固定されている。
【0056】
その際、投影レンズ40の外周フランジ部44Aに形成された貫通孔44Adおよび切欠き部44Aeに対して、ヒートシンク50に形成された左右1対の位置決めピン52d、52eが挿入されることにより、光軸Axと直交する鉛直面に沿った方向に関して投影レンズ40とヒートシンク50との位置決めが行われるようになっている。
【0057】
次に、基板アッシー60の構成について説明する。
【0058】
図5に示すように、4つの第2発光素子20Bは、投影レンズ40の光軸Axを含む鉛直面を中心にして互いに僅かな間隔をおいて配置されている。一方、4つの第1発光素子20Aも、光軸Axを含む鉛直面を中心にして配置されているが、中央部に位置する2つの第1発光素子20Aは、第2発光素子20B相互の間隔よりも多少広い間隔をおいて配置されており、両端部に位置する2つの第1発光素子20Aは、その内側に隣接する第1発光素子20Aに対して中央部に位置する2つの第1発光素子20A相互の間隔よりもさらに広い間隔をおいて配置されている。
【0059】
各第1および第2発光素子20A、20Bは、いずれも同様の構成を有しており、その発光面20Aa、20Baは横長矩形状に形成されているが、両者は前後逆向きに配置されている。すなわち、各第1発光素子20Aは、その発光面20Aaが前端縁寄りに位置するように配置されており、各第2発光素子20Bは、その発光面20Baが後端縁寄りに位置するように配置されている。
【0060】
基板22は、金属板(例えばアルミニウム板)の上面に絶縁層(図示せず)を介して導電層24が所定の配線パターンで形成された構成となっている。各第1および第2発光素子20A、20Bは、2つの導電層24に跨るように配置された状態で、その灯具後方側において基板22の上面に搭載されたコネクタ26と電気的に接続されている。そして、このコネクタ26に対して電源側コネクタ70が装着されることにより、各第1および第2発光素子20A、20Bに対して電力が供給されるようになっている。
【0061】
次に、リフレクタ30の構成について説明する。
【0062】
図5、9に示すように、リフレクタ30は、金属製部材(例えばアルミダイカスト成形品)であって、第1および第2リフレクタ30A、30Bと共にこれらを繋ぐように形成された周辺構造部34を備えた構成となっている。
【0063】
第1リフレクタ30Aは、その反射面30Aaとして4つの反射領域を備えている。すなわち、反射面30Aaは、開口部32の上方に位置する2つの反射領域30Aa1、30Aa2と、開口部32の左右両側に位置する1対の反射領域30Aa3とを備えている。
【0064】
反射領域30Aa1は、その下端縁において開口部32に臨むように形成されている。反射領域30Aa2は、反射領域30Aa1を上方側から囲むようにして形成されており、灯具正面視において略扇形の外形形状を有している。左右1対の反射領域30Aa3は、その内側縁において開口部32に臨むように形成されている。
【0065】
反射領域30Aa2には、4つの第1発光素子20Aからの出射光を拡散反射させるための光拡散処理が施されている。この光拡散処理は、反射領域30aAにシボ加工Eを施すことによって行われている。
【0066】
第2リフレクタ30Bは、その反射面30Baとして3つの反射領域を備えている。すなわち、反射面30Baは、開口部32の下方に位置する反射領域30Ba1と、この反射領域30Ba1の左右両側に位置する1対の反射領域30Ba2とを備えている。反射領域30Ba1は、4つの第2発光素子20Bの左右両側において4つの第2発光素子20Bよりも下方側の位置まで回り込んで延びるように形成されている。左右1対の反射領域30Ba2は、反射領域30Ba1の左右1対の回り込み部分に対して隣接するように形成されている。
【0067】
第2リフレクタ30Bは、その上端面が水平面に対してやや上向きに湾曲した凸曲面として形成されている。具体的には、第2リフレクタ30Bの上端面は、灯具前方へ向けて僅かに下向きで直線状に延びるとともに光軸Axを含む鉛直面を中心にして左右両側に垂れ下がるように形成されており、その後端縁が開口部32の下端縁形状を規定している。
【0068】
次に、ヒートシンク50による基板アッシー60およびリフレクタ30の支持構造について説明する。
【0069】
図3に示すように、ヒートシンク50は、基板アッシー60の基板22を支持するための基板支持部54を備えている。
【0070】
基板支持部54は、基板22を後上がりに傾斜させた状態で支持するように斜面状に形成された基板支持面54aを備えている。この基板支持面54aの水平面に対する上向き傾斜角度は、20~50°程度(より好ましくは25~45°程度(例えば35°程度))の値に設定されている。
【0071】
図9、10に示すように、基板22は、リフレクタ30の周辺構造部34によって灯具前方側から基板支持面54aに押し付けられた状態でヒートシンク50に支持されている。その際、基板支持面54aはその周辺領域よりも僅かに突出した平面で構成されており、これにより基板22が基板支持面54aに対して確実に面接触するようになっている。
【0072】
図8に示すように、リフレクタ30は、その周辺構造部34の2箇所においてヒートシンク50に対してネジ締め固定されている。
【0073】
具体的には、図9に示すように、ヒートシンク50には、その右下コーナ部および左上コーナ部にボス部58が形成されている。また、リフレクタ30には、その周辺構造部34の右下部および左上部にネジ挿通孔34aが形成されている。そして、リフレクタ30は、その周辺構造部34が基板22および2箇所のボス部58の先端面に押し当てられた状態で、各ネジ挿通孔34aを介して各ボス部58のネジ穴にネジ38が挿入されて締め付けられることによってヒートシンク50に固定されている。
【0074】
図10に示すように、ヒートシンク50の基板支持部54には、基板支持面54aの左右両側に1対の位置決め用突起部54b、54cが形成されている。また、基板支持部54の灯具後方側には、左右1対の位置決め用突起部54b、54cに対応する位置に、上下方向に延びる左右1対の位置決め用梁部54d(右側のみ図示)が形成されている。
【0075】
左右1対の位置決め用突起部54b、54cおよび左右1対の位置決め用梁部54dは、基板22が基板支持面54aに載置される際、基板22の前端面22aおよび後端面22bと係合することによりガイド機能を果たすとともに、基板支持面54aに載置されたときに基板22を車両方向に関して略位置決めし得るようになっている。
【0076】
さらに、ヒートシンク50の基板支持部54には、ヒートシンク50に対して基板アッシー60およびリフレクタ30を位置決めするための位置決めピン54eが形成されている。
【0077】
図11は、図8のXI-XI線断面図である。
【0078】
図10、11に示すように、位置決めピン54eは、右側に位置する位置決め用突起部54cおよび位置決め用梁部54dよりもさらに右側において、灯具前方へ向けて延びるように形成されている。
【0079】
位置決めピン54eの下端部には鉛直リブ54fが形成されている。この鉛直リブ54fは、位置決めピン54eに沿って灯具前方へ向けて延びており、その前端縁は位置決めピン54eの先端面よりも灯具後方側に位置している。
【0080】
基板22には、位置決めピン54eおよび鉛直リブ54fを挿通させるための挿通孔22cが形成されている。この挿通孔22cは、傾斜した基板22に沿って灯具前後方向に延びる長孔で構成されており、その左右幅は位置決めピン54eの外径よりも僅かに大きい値に設定されている。
【0081】
リフレクタ30の周辺構造部34には、位置決めピン54eと係合する係合部としてのピン挿通孔34bが形成されている。このピン挿通孔34bは、位置決めピン54eより僅かに大径の円形孔で構成されている。
【0082】
また、リフレクタ30の周辺構造部34には、基板支持面54aに載置された基板22に対して灯具前方側から当接する基板当接部34cが形成されている。この基板当接部34cは、ピン挿通孔34bの下方側に位置するように形成されている。
【0083】
このように、ヒートシンク50の位置決めピン54eが基板22の挿通孔22cおよびリフレクタ30のピン挿通孔34bに灯具後方側から挿通された状態で、ヒートシンク50の基板支持面54aに載置されている基板22に対してリフレクタ30の基板当接部34cが灯具前方側から当接することにより、ヒートシンク50に対して基板アッシー60およびリフレクタ30が灯具前後方向およびこれと直交する鉛直面に沿った方向に関して位置決めされるようなっている。
【0084】
その際、基板22は、リフレクタ30の基板当接部34cが灯具前方側から当接することによって、ヒートシンク50の基板支持面54aに面接触した状態で基板支持面54aに沿って灯具後方側に変位し、その後端面22bがヒートシンク50の位置決め用梁部54dに当接するようなっている。そしてこれにより、灯具前後方向に関する基板アッシー60の位置決め精度が十分に確保されるようなっている。さらにその際、基板22は、その挿通孔22cの後端壁が位置決めピン54eと係合した状態となり、これにより灯具前後方向の位置決めがより一層確実に行われるようになっている。
【0085】
図10に示すように、基板22の前端面22aは、左右方向の中心位置へ向けて灯具前方側に階段状に変位するように形成されている。一方、リフレクタ30の周辺構造部34には、基板22の前端面22aの左右方向の中心部を灯具前方側に突出させるための開口部34dが形成されている。
【0086】
図3に示すように、電源側コネクタ70には、車体側の電源(図示せず)まで延びるコード72が接続されており、このコード72の途中部分にはブッシング74が装着されている。
【0087】
ヒートシンク50の基板支持部54の下端部には、コード72を挿通させて灯室12の外部空間まで引き回すためのコード挿通部54gが形成されており、このコード挿通部54gには貫通孔(図示せず)が形成されている。そして、コード72に装着されたブッシング74が灯具前方側から上記貫通孔に圧入されることによって、灯室12内の気密性が維持されるようになっている。
【0088】
図3において2点鎖線で示すように、車両用灯具10は、ヒートシンク50においてボルト等の取付具102を介して車体側ブラケット100に取り付けられ得る構成となっている。また、この車体側ブラケット100に対して、投影レンズ40の筒状部44の外周フランジ部44Aを灯具前方側から覆うためのカバー部材104が、取付具106を介して取り付けられ得る構成となっている。
【0089】
次に、車両用灯具10の具体的な配光制御機能について説明する。
【0090】
図12は、車両用灯具10から灯具前方(すなわち車両前方)へ照射される光により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを二輪車2と共に透視的に示す図であって、(a)はロービーム用配光パターンPLを示しており、(b)はハイビーム用配光パターンPHを示している。
【0091】
図12(a)に示すロービーム用配光パターンPLは、4つの第1発光素子20Aが点灯したときに形成される配光パターンであって、第1リフレクタ30Aで反射した4つの第1発光素子20Aから光が投影レンズ40を介して灯具前方へ向けて照射されることによって形成されるようになっている。
【0092】
ロービーム用配光パターンPLは、基本配光パターンPL0と近距離用配光パターンPLaとの合成配光パターンとして形成されている。
【0093】
基本配光パターンPL0は、第1リフレクタ30Aの反射面30Aaのうち反射領域30Aa1および左右1対の反射領域30Aa3からの反射光によって形成される配光パターンであって、H-Vを通る水平線であるH-H線よりも下方側においてH-Vを通る鉛直線であるV-V線を中心にして左右両側に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0094】
なお、このように基本配光パターンPL0が横長の配光パターンとして形成されるのは、4つの第1発光素子20Aが互いに間隔をおいて配置されており、かつ、第1リフレクタ30Aが左右1対の反射領域30Aa3を備えていることによるものである。
【0095】
基本配光パターンPL0は、その上端縁がH-H線の下方近傍において略水平方向に延びるカットオフラインCLとして形成されており、また、V-V線を中心とする高光度領域HZLがカットオフラインCLに沿って形成されている。
【0096】
近距離用配光パターンPLaは、第1リフレクタ30Aの反射面30Aaのうち反射領域30Aa2からの反射光によって形成される配光パターンであって、基本配光パターンPL0の手前側に位置した状態で灯具前方5m以内の近距離路面を照射する横長の配光パターンとして形成されている。その際、反射領域30Aa2にはシボ加工による光拡散処理が施されているので、近距離用配光パターンPLaは略均一な明るさを有する配光パターンとして形成される。なお、近距離用配光パターンPLaが比較的横長の配光パターンとして形成されるのは、主として4つの第1発光素子20Aが互いに間隔をおいて配置されていることによるものである。
【0097】
図12(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、4つの第1発光素子20Aが点灯している状態で4つの第2発光素子20Bが追加点灯したときに形成される配光パターンであって、ロービーム用配光パターンPLに対して、そのカットオフラインCLを跨ぐようにして上方側まで拡がる付加配光パターンPAが付加されたものとなっている。
【0098】
付加配光パターンPAは、第2リフレクタ30Bで反射した4つの第2発光素子20Bから光が投影レンズ40を介して灯具前方へ向けて照射されることによって形成される配光パターンであって、H-V付近を中心にして左右両側に大きく拡がるとともに上下方向にも多少拡がる横長の配光パターンとして形成されており、H-V付近を中心とする高光度領域を有している。
【0099】
なお、この付加配光パターンPAは、ロービーム用配光パターンPLの基本配光パターンPL0よりも小さい左右拡散角で比較的明るい配光パターンとして形成されるが、これは主として4つの第2発光素子20Bが互いに近接した状態で配置されていることによるものである。
【0100】
そして、このようにしてロービーム用配光パターンPLと付加配光パターンPAとが重畳されることにより、H-V付近を中心とする高光度領域HZHを有する横長のハイビーム用配光パターンPHが形成されるようになっている。
【0101】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0102】
本実施形態に係る車両用灯具10は、リフレクタ30で反射した光源20からの光を投影レンズ40を介して灯具前方へ向けて照射する構成となっているが、リフレクタ30の反射面は灯具前方5m以内の近距離路面を照射するための反射領域30Aa2を備えており、この反射領域30Aa2には光源20からの出射光を拡散反射させるための光拡散処理が施されているので、この反射領域30Aa2からの反射光によって灯具前方の近距離路面を配光ムラの少ない略均一な明るさで照射することができる。
【0103】
このように本実施形態によれば、投影レンズ40を備えた車両用灯具10において、略均一な明るさで灯具前方の近距離路面を照射することができる。
【0104】
特に本実施形態においては、反射領域30Aa2に施された光拡散処理がシボ加工Eによって行われているので、反射領域30Aa2からの反射光を全方向へ拡散させることができ、これにより光拡散機能を十分に確保することができる。
【0105】
本実施形態においては、光源20として基板22に搭載された第1発光素子20Aを備えており、かつ、その発光面20Aaが灯具前方へ向けて斜め上向きとなるように基板22が傾斜した状態で配置されており、その上で、リフレクタ30として、第1発光素子20Aを上方側から覆うように配置された第1リフレクタ30Aを備えているので、灯具前方の近距離路面を照射するための反射領域30Aa2を容易に確保することができる。しかも、第1リフレクタ30Aからの反射光のみならず第1発光素子20Aからの直射光についても投影レンズ40に効率良く入射させることが可能となるので、これにより灯具効率を高めることができる。
【0106】
さらに本実施形態においては、光源20として、ロービーム照射時に点灯する第1発光素子20Aとハイビーム照射時に追加点灯する第2発光素子20Bとを備えており、かつ、第2発光素子20Bは第1発光素子20Aから灯具前方側に離れた位置に配置されており、また、リフレクタ30として、第1発光素子20Aからの出射光を投影レンズ40へ向けて反射させる第1リフレクタ30Aと、第2発光素子20Bからの出射光を投影レンズ40へ向けて反射させる第2リフレクタ30Bとを備えており、かつ、第2リフレクタ30Bは第1および第2発光素子20A、20Bの間に位置するように配置されており、その上で、反射領域30Aa2は第1リフレクタ30Aの反射面30Aaに形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0107】
すなわち、ロービーム照射時には灯具前方の近距離路面の視認性を十分に確保することが特に必要となるが、この近距離路面に配光ムラが発生すると非常に目立ってしまうので、本実施形態のように第1リフレクタ30Aの反射面30Aaに近距離路面を照射するための反射領域30Aa2が形成された構成とすることが効果的である。また、本実施形態のように第2リフレクタ30Bが第1および第2発光素子20A、20Bの間に位置するように配置された構成とすることにより、第1および第2リフレクタ30A、30Bをスペース効率良く配置することができる。
【0108】
しかも本実施形態においては、第1および第2リフレクタ30A、30Bがリフレクタ30として一体的に形成されているので、車両用灯具10の部品点数の削減を図ることができる。
【0109】
また本実施形態においては、4つの第1発光素子20Aが互いに間隔をおいて配置されているので、ロービーム用配光パターンPLの基本配光パターンPL0を左右拡散角が大きい配光パターンとして形成することができ、また、同時に形成される近距離用配光パターンPLaについても左右拡散角が比較的大きい配光パターンとして形成することができ、これによりロービーム照射時の車両前方視認性を十分に確保することができる。一方、4つの第2発光素子20Bは、互いに近接した状態で配置されているので、ハイビーム照射時に形成される付加配光パターンPAを明るい配光パターンとして形成することができ、これによりハイビーム用配光パターンPHを遠方視認性に優れたものとすることができる。
【0110】
特に、本実施形態に係る車両用灯具10は二輪車用前照灯として構成されており、このため灯具前方の近距離路面が二輪車2の直前領域まで視認しやすくなるので、上記構成を採用することが極めて効果的である。
【0111】
上記実施形態においては、近距離用配光パターンPLaが横長の配光パターンとして形成されるものとして説明したが、これ以外の形状の配光パターンとして形成することも可能であり、その際、灯具前方5m以内の近距離路面における具体的な光照射範囲は特に限定されるものではない。また、近距離用配光パターンPLaとして、灯具前方5m以内の近距離路面のみを照射する配光パターンとしてもよいし、上記近距離路面を含むより広い領域を照射する配光パターンとしてもよい。
【0112】
上記実施形態においては、第1リフレクタ30Aの反射領域30Aa2に施された光拡散処理がシボ加工Eによって行われているものとして説明したが、これ以外の光拡散処理(例えばフロスト加工等)を採用した場合であっても反射領域30Aa2からの反射光を全方向へ拡散させることができ、これにより光拡散機能を十分に確保することができる。
【0113】
上記実施形態においては、光源20として4つの第1発光素子20Aと4つの第2発光素子20Bとがそれぞれ左右方向に配置されているものとして説明したが、その以外の個数や配置を採用することも可能である。
【0114】
上記実施形態においては、車両用灯具10が二輪車用前照灯として構成されているものとして説明したが、ワンボックスカーやトラック等の四輪車用前照灯として構成されている場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより上記実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。また、ヘッドランプ以外にも、車両前方を照射するフォグランプや車両の斜め前方や側方を照射するコーナリングランプ等において、上記実施形態と同様の構成を採用することも可能である。
【0115】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0116】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0117】
図13は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、図4と同様の図である。
【0118】
図13に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、投影レンズ140の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0119】
すなわち本変形例においても、投影レンズ140はレンズ本体部142と筒状部144とを備えており、そのレンズ本体部142の外周面には上記実施形態の場合と同様の黒色塗装膜46が形成されている。また本変形例においても、投影レンズ140のレンズ本体部142は、その前面が凸面状に形成された平凸非球面レンズとして構成されているが、その後面に複数の拡散レンズ素子142sが形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0120】
複数の拡散レンズ素子142sは、いずれも上下方向に延びる凸シリンドリカルレンズとして構成されており、これによりリフレクタ30からの反射光を左右方向に多少拡散する光としてレンズ本体部142に入射させるようになっている。
【0121】
本変形例の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0122】
すなわち、ロービーム照射時に形成される基本配光パターンPL0および近距離用配光パターンPLaならびにハイビーム照射時に追加形成される付加配光パターンPAを、上記実施形態の場合よりも多少大きい左右拡散角を有する配光パターンとして形成することができ、かつ、上記実施形態の場合よりもさらに配光ムラの少ない配光パターンとして形成することができる。
【0123】
上記第1変形例においては、複数の拡散レンズ素子142sが、いずれも上下方向に延びる凸シリンドリカルレンズとして構成されているものとして説明したが、凹シリンドリカルレンズや凹凸が交互に配置された波形シリンドリカルレンズとして構成されたものとすることも可能であり、また、これらがレンズ本体部142の後面における一部領域に形成された構成とすることも可能である。
【0124】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0125】
図14は、本変形例に係る車両用灯具210を示す、図2と同様の図である。
【0126】
図14に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、リフレクタ230の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0127】
すなわち本変形例においても、リフレクタ230として第1リフレクタ230Aと第2リフレクタ230Bとを備えており、また、第1リフレクタ230Aには灯具前方の近距離路面を照射するための反射領域230Aa2が形成されているが、この反射領域230Aa2に施された光拡散処理が複数の拡散反射素子230Aa2sの形成によって行われている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0128】
複数の拡散反射素子230Aa2sは、いずれも灯具正面視において上下方向に延びる細幅の凸シリンドリカル反射素子として構成されており、これにより4つの第1発光素子20Aからの出射光を左右方向に多少拡散する光として反射させるようになっている。
【0129】
本変形例の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0130】
すなわち、4つの第1発光素子20Aは左右方向に互いに間隔をおいて配置されているので、灯具前方の近距離路面に形成される近距離用配光パターンPLa(図12参照)においては左右方向に関して配光ムラが発生しやすくなるが、本変形例のように反射領域230Aa2に4つの第1発光素子20Aからの出射光を左右方向に拡散反射させる複数の拡散反射素子230Aa2sが形成された構成とすることにより、このような配光ムラの発生を効果的に抑制することができる。
【0131】
上記第2変形例においては、複数の拡散反射素子230Aa2sが、いずれも上下方向に延びる凸シリンドリカル反射素子として構成されているものとして説明したが、凹シリンドリカル反射素子や凹凸が交互に配置された波形シリンドリカル反射素子として構成されたものとすることも可能である。
【0132】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0133】
また本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0134】
2 二輪車
10、110、210 車両用灯具
12 灯室
20 光源
20A 第1発光素子
20Aa、20Ba 発光面
20B 第2発光素子
22 基板
22a 前端面
22b 後端面
22c 挿通孔
24 導電層
26 コネクタ
30、230 リフレクタ
30A、230A 第1リフレクタ
30Aa、30Ba 反射面
30Aa1、30Aa3、30Ba1、30Ba2 反射領域
30Aa2、230Aa2 反射領域(近距離路面を照射するための反射領域)
30B、230B 第2リフレクタ
32 開口部
34 周辺構造部
34a ネジ挿通孔
34b ピン挿通孔
34c 基板当接部
34d 開口部
38 ネジ
40、140 投影レンズ
42、142 レンズ本体部
44、144 筒状部
44a 前端面
44A 外周フランジ部
44Aa 平坦部
44Ab、44Ac、44Ae 切欠き部
44Ad 貫通孔
44B 環状突起部
46 黒色塗装膜
48 ネジ
50 ヒートシンク
52 環状凹部
52a 外周壁部
52b、52c ネジ穴
52d、52e 位置決めピン
52f、52g 突出面
54 基板支持部
54a 基板支持面
54b、54c 位置決め用突起部
54d 位置決め用梁部
54e 位置決めピン
54f 鉛直リブ
54g コード挿通部
56 放熱フィン
58 ボス部
60 基板アッシー
62 シール剤
70 電源側コネクタ
72 コード
74 ブッシング
100 車体側ブラケット
102、106 取付具
104 カバー部材
142s 拡散レンズ素子
230Aa2s 拡散反射素子(光拡散処理)
Ax 光軸
CL カットオフライン
E シボ加工(光拡散処理)
F 後側焦点
HZH、HZL 高光度領域
PA 付加配光パターン
PH ハイビーム用配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
PL0 基本配光パターン
PLa 近距離用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14