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  • 特開-珊瑚の再生方法 図1
  • 特開-珊瑚の再生方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134650
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】珊瑚の再生方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/00 20170101AFI20220908BHJP
【FI】
A01K61/00 301
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033913
(22)【出願日】2021-03-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】504383531
【氏名又は名称】株式会社宇宙環境保全センター
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】西銘 生義
(72)【発明者】
【氏名】立石 一郎
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA38
2B104BA03
2B104FA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化粧品原料や食品にも使用されている酸化チタンを活用し、自然環境を損なうことがなく、また非常に安価で、取り扱いにも手間がかからない珊瑚の再生方法を提供する。
【解決手段】1)酸化チタン光触媒液Aに死滅した珊瑚塊B1を浸漬し、その後天日乾燥させた珊瑚塊部材を海域に戻して設置することを特徴とする珊瑚の再生方法。
2)酸化チタン光触媒液Aに天然素材、または化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材B2を浸漬し、その後天日乾燥させた部材を海域に戻すことを特徴とする珊瑚の再生方法。
3)海域に生息する天然珊瑚の産卵時に合わせ、上記珊瑚塊部材ないし繊維状の被覆部材を入れた生簀等の水槽を内蔵した船で漕ぎ付け、卵と共に海水を水槽に投入し、上記部材への珊瑚の卵の定着を図ることを特徴とする珊瑚の再生方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン光触媒液に死滅した珊瑚塊を浸漬し、その後天日乾燥させた珊瑚塊部材を海域に戻して設置することを特徴とする珊瑚の再生方法。
【請求項2】
酸化チタン光触媒液に天然素材からなる繊維状の被覆部材を浸漬し、その後天日乾燥させた被覆部材を海域に設置することを特徴とする珊瑚の再生方法。
【請求項3】
酸化チタン光触媒液に繊維状の被覆部材、例えば縄や漁網、その他の天然素材、または化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材を浸漬し、その後天日乾燥させた被覆部材を海域に設置することを特徴とする珊瑚の再生方法。
【請求項4】
前記部材を単体、または組み合わせて海域に設置することを特徴とする請求項1から3に記載の珊瑚の再生方法。
【請求項5】
海域に生息する天然珊瑚の産卵時に合わせ、前記部材を入れた生簀等の水槽を内蔵した船で漕ぎ付け、卵と共に海水を水槽に投入し、部材への珊瑚の卵の定着を図ることを特徴とした請求項1から4に記載の珊瑚の再生方法。
【請求項6】
前記酸化チタン光触媒液は、酸化チタン単体、アパタイト被覆二酸化チタン、シルク含有アパタイト被覆二酸化チタン、酸化チタンアパタイトの一つ以上を含む酸化チタン溶液であることを特徴とする請求項1から5に記載の珊瑚の再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、死滅した珊瑚の石くれ(珊瑚塊)等を利用して酸化チタン光触媒液により光触媒加工した部材を活用することにより珊瑚を再生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
死滅した珊瑚の石くれ(珊瑚塊)は単に放棄されているのが実情である。
ところで、このような死んだ珊瑚礫を生分解素材で略格子状または網状に形成された被覆部材で被覆したものを使用する珊瑚礁再生方法が特開2014-212702号公報(特許文献1)に提案されている。
このような生分解性素材の例として、例えば、ポリブチレンサクシネート系樹脂( 例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/ アジペート、ポリブチレンサクシネート/ テレフタレートなど) 、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、デンプン、酢酸セルロースなどが挙げられている。
【0003】
しかしながら、このような生分解性素材は自然に分解して自然環境に悪影響を及ぼさないものとして提案されているものの、天然素材ではないゆえにやはり自然環境を損なうものであるうえ、非常に高価であったり、取り扱いに手間がかかるという問題があった。
また、珊瑚の苗を人の手により一つ一つ海域に定植する作業は時間もコストもかかり、それに見合った効果が必ずしも出ていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-212702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで解決しようとする問題点は、化粧品原料や食品にも使用されている酸化チタンを活用し、自然環境を損なうことがなく、また非常に安価で、取り扱いにも手間がかからない珊瑚の再生方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明の珊瑚の再生方法は、酸化チタン光触媒液に死滅した珊瑚塊を漬け込み(いわゆる「どぶ漬け」)浸漬し、その後天日乾燥させた珊瑚塊部材を活用することを特徴とするものである。
【0007】
また本発明の珊瑚の再生方法は、酸化チタン光触媒液の希釈液に天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材を浸漬し、その後天日乾燥させた被覆部材を活用することをも特徴とするものである。
【0008】
さらに本発明の珊瑚の再生方法は、酸化チタン光触媒液の希釈液に、天然素材、ないし化学繊維からなる繊維状の被覆部材、例えば縄や漁網、その他の天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材を浸漬し、その後天日乾燥させた被覆部材を活用することをも特徴とするものである。
【0009】
さらに本発明の珊瑚の再生方法は、酸化チタン光触媒液の希釈液に浸漬して乾燥させた上記部材を、単体、または組み合わせて海域に設置することをも特徴とするものである。
【0010】
さらに、生簀等の水槽を内蔵した船の水槽中に上記の珊瑚塊部材や被覆部材を入れ、海域に生息する天然珊瑚の産卵時に合わせて漕ぎつけ、卵と共に海水を水槽に投入して上記部材に珊瑚の卵の定着を図った後、しかるべき海域に上記部材を単体、または組み合わせて設置することで珊瑚再生の効率アップを図ることも特徴とするものである。
【0011】
上記の酸化チタン光触媒液としてはシルク含有アパタイト配合二酸化チタンなどのバインダー(例えば株式会社宇宙環境保全センター製造の光触媒トリニティーゼット)を使用しない酸化チタン光触媒溶液が適している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の珊瑚の再生方法は、化粧品や食品の原材料としても使用されるほど安全性が高く安心な酸化チタンを活用した酸化チタン光触媒液を使用するため、珊瑚群体が形成されていた海底、またはその近隣の海底に設置しても極めて安全性が高く、しかも珊瑚が速やかに再生するという非常に顕著な作用効果を発揮するものである。
【0013】
しかも、酸化チタン光触媒液の40倍程度の希釈液や死滅した珊瑚、縄や漁網、その他の天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材を使用しており、コストの非常にかかりにくい形式の珊瑚の再生方法を提供することが可能となったものである。
【0014】
キクメイシの化石に代表されるように死んだ珊瑚の骸は多孔質を形成し、珊瑚の産卵時にその多孔へ卵を着床させた珊瑚塊部材を活用することで、より効率的に大規模な珊瑚再生活動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】珊瑚の再生方法の実施方法を示した説明図である。
図2】珊瑚の再生方法の実施方法を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の珊瑚の再生方法は、図1に示すように、酸化チタン光触媒液の希釈液(トリニティーゼット(シルク含有アパタイト配合二酸化チタン)の希釈液)Aに天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材B2を浸漬し、その後天日乾燥させるものである。
なお、前記酸化チタン光触媒液の希釈液(トリニティーゼット(シルク含有アパタイト配合二酸化チタン)の希釈液類)とは、酸化チタン単体、アパタイト被覆二酸化チタンやアパタイト配合二酸化チタン、酸化チタンアパタイトの一つ以上を含むものである。
【0017】
さらに本発明の珊瑚の再生方法は、図2に示すように、天然素材からなる繊維状の被覆部材、例えば縄や漁網、その他の天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材B2を、酸化チタン光触媒液(トリニティーゼット(シルク含有アパタイト配合二酸化チタン)の希釈液)Aに漬け込み(いわゆる「どぶ漬け」)浸漬し、その後天日乾燥したものであり、台風などの暴波浪などにより樹枝状珊瑚などが折れ、珊瑚礁が荒廃した場合、その珊瑚礁のあった場所やその近隣の海底などにそれらの珊瑚断片が多数堆積することにより、それらの領域に珊瑚断片集合群が形成される。
【0018】
また、近年の大規模な珊瑚の白化現象により死滅した珊瑚塊が多数堆積し、それらの珊瑚塊は天然珊瑚の卵を着床させる部材として活用することができる。
【0019】
その上で、酸化チタン光触媒液(例えば、トリニティーゼット(シルク含有アパタイト配合二酸化チタン)の40倍程度の希釈液)Aに死滅した珊瑚塊B1や、天然素材からなる繊維状の被覆部材、例えば縄や漁網、その他の天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材B2を浸漬し、その後天日乾燥させたものを海底等に設置して、それらの領域に長期間保持することにより、珊瑚を再生することが可能になる。
【0020】
さらに、生簀等の水槽を内蔵した船の水槽中に、光触媒液に浸漬した乾燥後の上記珊瑚塊部材や被覆部材を入れ、海域に生息する天然珊瑚の産卵時に合わせて産卵海域に漕ぎつけ、卵を含んだ海水を水槽に投入して上記部材に珊瑚の卵の定着を図った後、しかるべき海域に上記部材を、単体、または組み合わせて設置することで珊瑚再生の効率アップを図ることが可能になる。
【0021】
さらに本発明の珊瑚の再生方法は、酸化チタン光触媒液Aに天然素材からなる繊維状の被覆部材、例えば縄や漁網、その他の天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材B2を1漬け込み(いわゆる「どぶ漬け」)浸漬し、その後天日乾燥させたものであり、酸化チタン光触媒液Aや死滅した珊瑚塊B1、縄や漁網、その他の天然素材や化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材B2を単体、または組み合わせて使用しており、非常に低コストで効率的に珊瑚を再生させることができる。
【0022】
ちなみに天然繊維は、その名の通り綿、麻、絹、羊毛のように天然に繊維として存在しているものを取りだし利用したものを言う。綿や麻などの植物を由来とする「植物質」、羊毛(=ウール)や絹などの動物を由来とする「動物質」、石綿を由来とする「鉱物質」に分かれる。一般的な繊維素材としてみると、植物質や動物質の繊維に馴染みがあるかもしれない。
また前記天然繊維に代えて親水系ないし疎水系の化学繊維素材と使用することもできる。
【実施例0023】
死滅した珊瑚塊を酸化チタン光触媒液に3~20分位漬け込み(いわゆる「どぶ漬け」浸漬)後、天日乾燥させた珊瑚塊部材を入れた生簀等の水槽を内蔵する船により、海域に生息する天然珊瑚の産卵時に合わせて漕ぎつけ、卵と共に海水を水槽に投入して珊瑚塊部材への珊瑚の卵の定着を図り、その後、しかるべき海域に珊瑚塊部材を設置する例である。
これを珊瑚群体が形成されていた海底またはその近隣の海底に設置した場合、2から3年程度の期間で珊瑚群体の再生が見られた。
【実施例0024】
天然素材からなる繊維状の被覆部材、例えば縄や漁網、その他の天然素材を酸化チタン光触媒液に3~20分位浸漬後、天日乾燥させた被覆部材を入れた生簀等の水槽を内蔵する船により、海域に生息する天然珊瑚の産卵時に合わせて漕ぎつけ、卵と共に海水を水槽に投入して被覆部材への珊瑚の卵の定着を図り、その後、しかるべき海域に被覆部材を設置する例である。
これを珊瑚群体が形成されていた海底またはその近隣の海底に設置した場合、2から3年程度の期間で珊瑚群体の再生が見られた。
【実施例0025】
繊維状の被覆部材、例えば化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材を酸化チタン光触媒液に3~20分位浸漬後、天日乾燥させた被覆部材を入れた生簀等の水槽を内蔵する船により、海域に生息する天然珊瑚の産卵時に合わせて漕ぎつけ、卵と共に海水を水槽に投入して被覆部材への珊瑚の卵の定着を図り、その後、しかるべき海域に被覆部材を設置する例である。
これを珊瑚群体が形成されていた海底またはその近隣の海底に設置した場合、2から3年程度の期間で珊瑚群体の再生が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の珊瑚の再生方法によれば、海中等の環境に無害な酸化チタン光触媒液に、死滅した珊瑚塊や天然素材、または化学繊維素材からなる繊維状の被覆部材(例えば縄や漁網など)を3~20分位浸漬し、その後天日乾燥させて珊瑚群体が形成されていた海底、またはその近隣の海底に設置するものであって、非常に環境に易しく、かつ低コストで効率的に珊瑚を再生することができて非常に有用である。
なお、繊維状の被覆部材の酸化チタン光触媒液への浸漬時間を3~20分位と記述しているが、厳密にはこのように記述した時間に縛られるものではない。
【0027】
また、アオサの養殖において、天然素材、または化学繊維素材からなる漁網を(トリニティーゼット(シルク含有アパタイト配合二酸化チタン)の40倍程度の希釈液)に付け込んで乾燥後に浅瀬に設置したところ、アオサの養殖のできなかった海域でアオサの収穫ができたという報告があった。
【符号の説明】
【0028】
A 酸化チタン光触媒液の希釈液
B1 死滅した珊瑚塊
B2 天然素材からなる繊維状の被覆部材

図1
図2