(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134658
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ブラシローラ
(51)【国際特許分類】
B08B 1/04 20060101AFI20220908BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20220908BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B08B1/04
B08B3/04 A
H01L21/304 644G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033945
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】500004069
【氏名又は名称】アイオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】大久保 絵里
(72)【発明者】
【氏名】真野 稔正
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
5F157
【Fターム(参考)】
3B116AA03
3B116AB33
3B116BA02
3B116BA15
3B116BB22
3B201AA03
3B201AB33
3B201BA02
3B201BA15
3B201BB22
3B201BB93
5F157AA96
5F157BA03
5F157BA07
5F157BA14
5F157DB02
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】被洗浄面上での洗浄液の滞留を抑制する。
【課題手段】ブラシローラ2は、略円筒形状のロール体3とロール体3の外周面4上に一体形成された複数の突起5とを有し、ロール体3の軸心7を中心として回転することにより突起5が被洗浄面に回転接触して被洗浄面を洗浄する。複数の突起5は、ロール体3の外周面4のうち軸心7に沿った長手方向8の両端部4Aに千鳥状に配列される千鳥配列突起群5Aと、両端部4Aの間の中間部4Bに千鳥配列突起群5Aよりも低密度で螺旋状に配列される螺旋配列突起群5Bとから構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤状態で弾性を有する多孔質素材によって構成され、略円筒形状のロール体と前記ロール体の外周面上に一体形成された複数の突起とを有し、前記ロール体の軸心を中心として回転することにより前記突起が被洗浄面に回転接触して前記被洗浄面を洗浄するブラシローラであって、
前記複数の突起は、前記ロール体の外周面のうち前記軸心に沿った長手方向の両端部に千鳥状に配列される千鳥配列突起群と、前記両端部の間の中間部に前記千鳥配列突起群よりも低密度で螺旋状に配列される螺旋配列突起群とから構成される
ことを特徴とするブラシローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシローラであって、
前記螺旋配列突起群が配列される前記中間部は、前記ロール体の外周面の前記長手方向の中央を含む中央部である
ことを特徴とするブラシローラ。
【請求項3】
ポリビニルアセタール系多孔質素材によって構成された請求項1に記載のブラシローラであって、
前記ロール体の前記長手方向の全長に対する前記中央部の前記長手方向の長さの割合は、5%以上95%以下である
ことを特徴とするブラシローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体電子デバイスウエハ、シリコンウエハ、ハードディスク等のエレクトロニクス部品の製造工程のうち、主に洗浄工程のスクラブ洗浄で用いられるブラシローラに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミハードディスク、ガラスディスク、ウエハ、フォトマスク、或いは液晶ガラス基板等の製造工程では、その表面を極めて精度の高い面に仕上るために、シリカ、アルミナ、セリア等の各種砥粒を用いた高精度研磨、いわゆるポリッシング加工が行われる。ポリッシング加工された被研磨物の表面には、砥粒や研磨屑が付着しており、これらを除去するために、ポリッシング加工後に十分な洗浄を施す必要がある。
【0003】
ポリッシング加工後の洗浄方法としては、超音波洗浄やジェット水流を用いる方法があるが、高い洗浄効果を得るため、また基板へのダメージを低減するため、弾性多孔質体(例えばポリビニルアセタール系多孔質体)からなるスポンジ体によるスクラブ洗浄が広く用いられている。また、洗浄液としては、通常DI水だけでなく、酸、アルカリ、溶剤といった各基板に適した各種薬剤も使用される。例えば、シリコンウエハの洗浄液としては、アンモニア水と過酸化水素水の混合液、希弗酸、塩酸と過酸化水素水の混合液等が知られている。
【0004】
弾性多孔質体のスポンジ体の形状は多様であるが、その中でも円筒の外周面に多数の突起を有するブラシローラ形状のスポンジ体(以下、ブラシローラと称する)がスクラブ洗浄(洗浄工程)に好適に用いられている。ブラシローラを回転させながら、その突起の頭頂部を被洗浄体の洗浄面に連続的に接触させることによって、良好な洗浄効果を得ることができる。被洗浄体がブラシローラの突起のみと接触するため、突起を有さないフラットなスポンジ体に比べて、摩擦が小さく被洗浄体へのダメージが少ないという利点や、洗浄液とともに夾雑物が突起の間を容易に通過して被洗浄体から除去されるという利点がある。このようなブラシローラとして、円筒の外周面の全域に複数の突起を千鳥状に配列したもの(例えば、特許文献1参照)が公知である。
【0005】
洗浄工程では、通常それぞれの基板に対応した専用の洗浄装置が使用され、スポンジ体とコアとによって洗浄用スポンジローラが構成される。コアはスポンジ体の内径部を挿通し、スポンジ体の内周面を固定的に支持する。コアの両端部を洗浄装置の回転駆動部に取付けて洗浄用スポンジローラを洗浄装置に装着し、スポンジ体と被洗浄体(ブラシローラの場合には突起と被洗浄体)とを接触させた状態でコアとともにスポンジ体を回転させる。例えば、被洗浄体がディスク形状の基板であり、ブラシローラによって基板の表面(被洗浄面)を洗浄する場合、基板とブラシローラの双方を回転させながらブラシローラの突起を被洗浄面に接触させることにより、洗浄効率を高めることができる。
【0006】
また、洗浄工程では、洗浄液を供給しながらスポンジ体と被洗浄体とを接触させる。洗浄液は、被洗浄体或いはスポンジ体にその上部や側面からノズル等によって供給してもよく、コア内部からスポンジ体の内側に供給してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスク形状の基板の表面(被洗浄面)をブラシローラによってスクラブ洗浄する場合、例えば、円形状の被洗浄面の中心を通る径方向に沿ってブラシローラを配置し、基板を回転させながらブラシローラを回転させて、突起を被洗浄面に連続的に接触させる。基板の回転軸は、被洗浄面の中心を通り、ブラシローラの回転軸は、スポンジ体の円筒の軸心を通る。被洗浄面上の洗浄液は、基板とともに回転するため、遠心力によって外周側へ移動して、被洗浄面の外周縁から系外へ排出される。
【0009】
しかし、被洗浄面上の洗浄液に作用する遠心力は、被洗浄面の中心から外周に向かうほど強くなるため、被洗浄面の中心を含む中央域では外周側への洗浄液の移動速度が遅く、洗浄液が中央域に滞留してしまう可能性がある。洗浄液が滞留すると、夾雑物が被洗浄面から除去されず、被洗浄面に残留してしまう可能性がある。また、洗浄液の滞留によって洗浄力が強くなりすぎてしまい、被洗浄面にダメージを与えてしまう可能性もある。このように、洗浄液の滞留は、洗浄性能の低下を招くおそれがある。
【0010】
そこで本発明は、被洗浄面上での洗浄液の滞留を抑制することが可能なブラシローラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明のブラシローラは、湿潤状態で弾性を有する多孔質素材によって構成され、略円筒形状のロール体とロール体の外周面上に一体形成された複数の突起とを有する。ブラシローラは、ロール体の軸心を中心として回転することにより突起が被洗浄面に回転接触して被洗浄面を洗浄する。複数の突起は、ロール体の外周面のうち軸心に沿った長手方向の両端部に千鳥状に配列される千鳥配列突起群と、両端部の間の中間部に千鳥配列突起群よりも低密度で螺旋状に配列される螺旋配列突起群とから構成される。
【0012】
ブラシローラは、ポリビニルアセタール系多孔質素材によって構成されてもよく、螺旋配列突起群が配列される中間部は、ロール体の外周面の長手方向の中央を含む中央部であってもよい。ロール体の長手方向の全長に対する中央部の長手方向の長さの割合は、5%以上95%以下が好適であり、30%以上60%以下がさらに好適である。
【0013】
上記構成のブラシローラによってディスク形状の基板の表面(被洗浄面)をスクラブ洗浄する場合、例えば、円形状の被洗浄面の中心を通る径方向に沿って被洗浄面を横断するようにブラシローラを配置し、基板を回転させながらブラシローラを回転させて、突起を被洗浄面に連続的に接触させる。ブラシローラは、被洗浄面の中心を含む基板中央域に中間部の螺旋配列突起群が対向し、基板中央域よりも径方向外側の基板外周域に両端部の千鳥配列突起群が対向するように配置される。
【0014】
被洗浄面上の洗浄液は、基板とともに回転しながら、遠心力によって外周側へ移動する。被洗浄面上の洗浄液に作用する遠心力は、被洗浄面の中心から外周に向かうほど強くなるため、基板中央域と基板外周域とを比較すると、基板外周域の洗浄液は、外周側への移動速度が速く、滞留せずに被洗浄面の外周縁から系外へ円滑に排出され易い。また、基板外周域と対向する千鳥配列突起群では、螺旋配列突起群よりも高密度に突起が配置されているので、被洗浄面の洗浄効率を高めることができる。
【0015】
一方、基板中央域と対向する螺旋配列突起群では、複数の突起が、千鳥配列突起群よりも低密度で螺旋状に配列されている。換言すると、螺旋配列突起群では、複数の突起がロール体の長手方向及び周方向に対して傾斜して並び、長手方向に隣接する2つの突起間の間隙は、螺旋配列突起群の方が千鳥配列突起群よりも大きい。このため、基板中央域の洗浄液には、ブラシローラが配置される被洗浄面の径方向に対して傾斜する方向に沿って、ブラシローラを境とした被洗浄面の一方側から他方側へ向かう液流れ(螺旋配列突起群による液流れ)が生じる。基板中央域の洗浄液は、外周側への移動速度が基板外周域よりも遅いため滞留し易いが、螺旋配列突起群による上記液流れによって基板中央域に行き渡るとともに、基板中央域から基板外周域へ移動して系外へ排出される。従って、洗浄液の滞留に起因した洗浄性能の低下を抑制することができる。また、螺旋配列突起群では、突起が螺旋状に配列されているので、基板中央域の全域において突起を均等の頻度で被洗浄面に接触させることができ、突起との接触頻度のばらつきに起因した洗浄性能の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被洗浄面上での洗浄液の滞留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブラシローラの斜視図である。
【
図3】ロール体の外周面を平面状に展開した場合の突起の配列図である。
【
図4】ブラシローラの使用状態を示す平面図である。
【
図6】第1の変形例のブラシローラの使用状態を示す平面図である。
【
図7】第2の変形例のブラシローラの斜視図である。
【
図8】第3の変形例のブラシローラのロール体の外周面を平面状に展開した場合の突起の配列図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るブラシローラを、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ブラシローラ2は、略円筒形状のロール体3と、ロール体3の外周面4上に一体成形された円柱形状の複数の突起5とを有する。ロール体3の内径部には、金属やプラスチックなどの硬質な材料によって形成された軸部材であるコア6が装着される。ブラシローラ2とコア6とによって洗浄用スポンジローラ1が構成され、ロール体3をコア6に装着した状態で、両者の軸心7は略一致する。なお、突起5の形状は、円柱形状に限定されるものではない。
【0020】
図4に示すように、スクラブ洗浄の対象となる被洗浄体11は、薄厚円盤状のウエハ(基板)である。洗浄用スポンジローラ1は、コア6の両端部を洗浄装置(図示省略)の回転駆動部(図示省略)に取付けることにより洗浄装置に装着される。被洗浄体11は、略水平に洗浄装置に装着され、被洗浄体11の円形状の上面(被洗浄面12)は、鉛直方向と略直交する。ブラシローラ2は、被洗浄面12の上方に、被洗浄面12の中心を通る径方向に沿って被洗浄面12を横断するように配置される。
【0021】
被洗浄体11を回転させながら洗浄用スポンジローラ1(ブラシローラ2及びコア6)を回転させて、突起5を被洗浄面12に連続的に接触させることにより(
図5参照)、スクラブ洗浄が行なわれる。被洗浄体11の回転方向を
図4に矢印21で、ブラシローラ2の回転方向を
図5に矢印20でそれぞれ示す)。被洗浄体11の回転軸13は、被洗浄面12の中心を通り、ブラシローラ2は、ロール体3及びコア6の軸心7を中心として回転する。回転軸13と軸心7とは略直交し、回転軸13は略鉛直方向に延び、軸心7は略水平方向に延びる。被洗浄面12上には、ノズル等の洗浄液供給部14から洗浄液が供給される。
図4の例では、2箇所の洗浄液供給部14から洗浄液が供給される。被洗浄面12上の洗浄液は、被洗浄体11とともに回転するため、遠心力によって外周側へ移動して、被洗浄面12の外周縁から系外へ排出される。なお、ブラシローラ2の回転方向及び被洗浄体11の回転方向は、任意に設定可能である。
【0022】
ブラシローラ2(ロール体3及び突起5)は、含水状態で弾性を有するポリビニルアセタール系多孔質素材(PVAt系多孔質素材)から成る。PVAt系多孔質素材は、乾燥状態で硬化し、湿潤状態で軟化する。また、PVAt系多孔質素材は、吸水性及び保水性に優れ、湿潤時に好ましい柔軟性と適度な反発弾性を示し、耐磨耗性にも優れている。コア6はロール体3の内径部に挿通され、ロール体3を固定的に支持する。例えば、コア6の外周面とロール体3の内周面とを接着剤によって固着してもよく、また、コア6の外径をロール体3の内径よりも大きく形成し、コア6をロール体3の内径部に圧入することにより、ロール体3の弾性力によってロール体3をコア6に固定的に支持させてもよい。さらには、ブラシローラ2を製造する際にコア6を型内に設置し、反応後のブラシローラ2(ロール体3)を、コア6を伴った状態のまま型から取り出してもよい。このような固定的な支持により、ロール体3は、コア6と共に回転する。
【0023】
図1~
図4に示すように、複数の突起5は、ロール体3の外周面4のうち軸心7に沿った長手方向8の両端部4Aに千鳥状に配列される千鳥配列突起群5Aと、両端部の間の中央部(中間部)4Bに千鳥配列突起群5Aよりも低密度で螺旋状に配列される螺旋配列突起群5Bとから構成される。螺旋配列突起群5Bが配列される中央部4Bは、ロール体3の外周面4の長手方向8の中央10(
図2参照)を含む領域である。なお、外周面4の中央10を含まない中間部に、螺旋配列突起群5Bを配列してもよい。
【0024】
本実施形態では、両端部4Aの一方の長手方向8の長さLA1と他方の長手方向8の長さLA2とが略等しく設定されている。ロール体3の長手方向8の全長(LA1+LA2+LB)に対する中央部4Bの長手方向8の長さLBの割合は、5%以上95%以下が好適であり、30%以上60%以下がさらに好適である。
【0025】
図3に示すように、「千鳥配列」とは、ロール体3の外周面4に周方向9に沿った円環状の複数の列FAを長手方向8に等間隔に並ぶように設定し、各列FAに複数の突起5を等ピッチで配置し、且つ隣接する2つの列FAの突起5同士が周方向9にずれるように(実施形態では半ピッチずれるように)配置した状態を意味する。一方、「螺旋配列」とは、ロール体3の長手方向8及び周方向9に対して傾斜する複数の螺旋状の列FBを長手方向8に等間隔に複数並ぶように設定し、各列FBに複数の突起5を等ピッチで配置し、且つ隣接する2つの列FBの突起5間の距離(間隙)D1が同一の列FB上で隣接する2つの突起5間の距離(間隙)D2よりも長くなる(間隙が大きくなる)ように配置して、隣接する2つの列FBの突起5間に螺旋状の溝を設けた状態を意味する。また、螺旋配列突起群5Bの方が千鳥配列突起群5Aよりも低密度であるため、長手方向8に隣接する2つの突起5間の距離(間隙)は、螺旋配列の距離D3の方が千鳥配列の距離D4よりも長くなる(間隙が大きくなる)。
【0026】
被洗浄面12をブラシローラ2によってスクラブ洗浄する場合、
図4に示すように、被洗浄面12の中心(回転軸13)を通る径方向に沿って被洗浄面12を横断するようにブラシローラ2を配置し、被洗浄体11を回転させながらブラシローラ2を回転させて、突起5を被洗浄面12に連続的に接触させる。ブラシローラ2は、被洗浄面12の中心(回転軸13)を含む円形状の基板中央域12Bに中央部4Bの螺旋配列突起群5Bが対向し、基板中央域12Bよりも径方向外側のドーナツ状の基板外周域12Aに両端部4Aの千鳥配列突起群5Aが対向するように配置される。洗浄液供給部14は、基板中央域12Bの外周側や基板外周域12Aの内周側へ洗浄液を供給する。
図4の例では、基板外周域12Aの内周側に洗浄液が供給される。
【0027】
被洗浄面12上の洗浄液は、被洗浄体11とともに回転しながら、遠心力によって外周側へ移動する。被洗浄面12上の洗浄液に作用する遠心力は、被洗浄面12の中心(回転軸13)から外周に向かうほど強くなるため、基板中央域12Bと基板外周域12Aとを比較すると、基板外周域12Aの洗浄液は、外周側への移動速度が速く、滞留せずに被洗浄面12の外周縁から系外へ円滑に排出され易い。また、基板外周域12Aと対向する千鳥配列突起群5Aでは、螺旋配列突起群5Bよりも高密度に突起5が配列されているので、被洗浄面12の洗浄効率を高めることができる。
【0028】
一方、基板中央域12Bと対向する螺旋配列突起群5Bでは、複数の突起5が、千鳥配列突起群5Aよりも低密度で螺旋状に配列されている。すなわち、螺旋配列突起群5Bでは、複数の突起5がロール体3の長手方向8及び周方向9に対して傾斜して並び、長手方向8に隣接する2つの突起5間の間隙は、螺旋配列突起群5Bの方が千鳥配列突起群5Aよりも大きい(
図3参照)。このため、基板中央域12Bの洗浄液には、ブラシローラ2が配置される被洗浄面12の径方向(ロール体3の長手方向8)に対して傾斜する方向に沿って、ブラシローラ2を境とした被洗浄面12の一方側(洗浄液の供給側)から他方側(洗浄液の非供給側)へ向かう液流れ15(螺旋配列突起群5Bによる液流れ)が生じる。基板中央域12Bの洗浄液は、外周側への移動速度が基板外周域12Aよりも遅く、基板中央域12Bに滞留し易いが、螺旋配列突起群5Bによる上記液流れ15によって、洗浄液は、洗浄液の供給位置(洗浄液供給部14)よりも径方向内側の基板中央域12Bに流れ、基板中央域12Bに行き渡るとともに、基板中央域12Bから基板外周域12Aへ移動して系外へ排出される。従って、洗浄液の滞留に起因した洗浄性能の低下を抑制することができる。また、螺旋配列突起群5Bでは、突起5が螺旋状に配列されているので、基板中央域12Bの全域において突起5を均等の頻度で被洗浄面12に接触させることができ、突起5との接触頻度のばらつきに起因した洗浄性能の低下を抑制することができる。
【0029】
なお、本発明は、一例として説明した上述の実施形態、実施例及びその変形例に限定されることはなく、上述の実施形態等以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0030】
例えば、ブラシローラ2の素材はPVAt系多孔質素材に限定されず、連続気孔を有し、湿潤状態で弾性を有する多孔質素材であればよい。
【0031】
また、ブラシローラ2の形態は上記実施形態に限定されず、ロール体3の外周面4のうち軸心7に沿った長手方向8の両端部4Aに千鳥配列突起群5Aを設け、千鳥配列突起群5Aの間に螺旋配列突起群5Bを設けたものであればよい。例えば、
図6に示すブラシローラ30のように、螺旋配列突起群5Bを上記実施形態とは反対の方向に傾斜させてもよい。また、
図7に示すブラシローラ31のように、両端部4Aの一方の長手方向8の長さLA1と他方の長手方向8の長さLA2とを相違させてもよい(
図7の例では、LA1>LA2)。また、
図8に示すように、ロール体3の外周面4の両端部4Aと中央部4Bとの間の境界領域4Cに、千鳥配列及び螺旋配列以外の突起群(
図8の例では、千鳥配列と螺旋配列とが混在する混成配列突起群5C)を設けてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、被洗浄体11を略水平に(被洗浄面12が鉛直方向と略直交するように)配置する横置きの洗浄装置について説明したが、スクラブ洗浄時の被洗浄体11の姿勢は上記に限定されず、任意の姿勢の被洗浄面12に対してブラシローラ1を略平行に配置すればよい。例えば、2本のブラシローラの間に被洗浄体11を略鉛直に(被洗浄面12が水平方向と略直交するように)配置し、被洗浄体の表裏両面を2本のブラシローラによってそれぞれ洗浄する縦置きの洗浄装置において、2本のブラシローラの各々に本発明のブラシローラ1を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、スクラブ洗浄を行うブラシローラとして広く用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1:洗浄用スポンジローラ
2:ブラシローラ
3:ロール体
4:ロール体の外周面
4A:ロール体の外周面の両端部
4B:ロール体の外周面の中央部(中間部)
4C:境界領域
5:突起
5A:千鳥配列突起群
5B:螺旋配列突起群
5C:混成配列突起群
6:コア
7:軸心
8:ロール体の長手方向
9:ロール体の周方向
10:ロール体の外周面の長手方向の中央
11:被洗浄体
12:被洗浄面
12A:基板外周域
12B:基板中央域
13:被洗浄体の回転軸
14:洗浄液供給部
15:液流れ