(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134696
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20220908BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220908BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q5/00
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034020
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 悠子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩祐
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC332
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC642
4C083AC692
4C083AC892
4C083AD022
4C083AD321
4C083AD322
4C083BB26
4C083CC31
4C083CC33
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】
キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質(以下キチンナノ物質等ともいう)を含み、使用感にすぐれる新規毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】
キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質を含有する毛髪化粧料用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質を含む、毛髪用化粧料。
【請求項2】
前記キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質が繊維状である、請求項1に記載の毛髪用化粧料。
【請求項3】
前記キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質が、結晶化度75%以上である、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
さらに多価アルコールを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の毛髪用化粧料を含む、化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。より詳しくは、頭髪化粧料などに用いられる、キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質を含む毛髪用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
カニ殻などを原料とするキチンナノファイバーは天然由来素材であり、バイオマス資源を活用したサスティナブル原料であることや、安全性が高いために化粧品用途への適用が提案されている。例えば特許文献1では、キチンを少なくとも1回の脱蛋白工程及び、少なくとも1回の脱灰工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする方法によって得られるキチンナノファイバー又はキトサンナノファイバーがファイバーの幅約2nm~約200nmの繊維状で長さが1μm以上であることから、媒体への分散性に優れ、皮膚や肌へよく浸透し、保湿性、抗菌性、生体適合性にすぐれることから、化粧料、入浴剤、医薬品に好適に使用出来ると記載されている。
例えば特許文献2では、可溶化シルクペプチドと水溶性キトサン誘導体、及びカチオン化蛋白誘導体とを含有することを特徴とする毛髪化粧料が、洗髪や薬剤処理により損傷した毛髪に対して強化・修復作用を有し、ブラッシング等によるキューティクルの剥離や、切れ毛、裂け毛の発生を抑制しうる優れた損傷防止作用を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2012/036283
【特許文献2】特開2000-191445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、キチンナノファイバー又はキトサン化ナノファイバーを化粧料原料として使用することが提案されている。また水溶性キトサン誘導体を使用した組成物が、毛髪改善効果を有することが知られているが、さらに毛髪改善効果を有する剤が求められていた。よって、本発明は、キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質(以下キチンナノ物質等ともいう)を含む、毛髪改善効果を有する新規化粧料材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち本発明はキチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質を含む、毛髪化粧料である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の毛髪化粧料は、毛髪に使用時に感触に優れる。よって、例えば、毛髪化粧料用途に好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ダメージ毛を、走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
【
図2】製造例1で処理したダメージ毛を、走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
【
図3】製造例2で処理したダメージ毛を、走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
【
図4】製造例3で処理したダメージ毛を、走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
【
図5】比較製造例1で処理したダメージ毛を、走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
【
図6】比較製造例2で処理したダメージ毛を、走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
【
図7】比較製造例4で処理したダメージ毛を、走査型電子顕微鏡で観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本開示の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本開示の好ましい形態である。
【0009】
<キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質>
本開示において、キチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質(以下、キチンナノ構物質等ともいう)は、キチンナノ物質、キトサン化キチンナノ物質のそれぞれ単独物質又は、それぞれの混合物を表す。
本開示において、上記混合物である場合、好ましくは、キトサン化キチンナノ物質がキチンナノ物質全体に対して、10%以上含まれ、より好ましくは20%以上含まれ、更に好ましくは30%以上含まれる。
【0010】
<キチンナノ物質>
本開示において、限定されないが、例えば、キチンナノ物質は、キチンを含有する材料を少なくとも1回の脱蛋白工程及び少なくとも1回の脱灰工程に付し、次いで、粉砕工程もしくは解繊工程に付すことで製造できるものである。得られるキチンナノ物質は、粒子状又は繊維(ファイバー)状であり、粒子の場合は平均粒子径が約10nm~500nmである。繊維状の場合は繊維の直径(幅)が約2nm~200nmである。粒子径、繊維幅の測定には公知の測定装置が使用でき、例えば走査電子顕微鏡、レーザー回折式粒子径測定装置、光散乱式粒子径測定装置等が使用出来る。本開示においてキチンナノ物質は水分散体であっても良い。本開示においてキチンナノ物質は酸を含んでいても良く、好ましくはクエン酸、乳酸である。キチンナノ物質は繊維(ファイバー)状であることが好ましい。
【0011】
本開示のキチンナノ物質は、結晶性が高いことが好ましい。例えば、結晶性は結晶化度の測定で規定することが出来る。結晶化度は75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。結晶において、結晶の大きさである結晶子径を測定することができ、本開示のキチンナノ物質は、結晶子径が80Å以上であることが好ましく、90Å以上であることがより好ましい。例えば結晶化度及び、結晶子径は実施例に記載の測定方法で測定することが出来る。
【0012】
<キトサン化キチンナノ物質>
本開示において、キトサン化キチンナノ物質は、キチンを含有する材料を少なくとも1回の脱蛋白工程及び少なくとも1回の脱灰工程及び少なくとも1回の脱アセチル工程に付し、次いで、粉砕工程もしくは解繊工程に付すことで製造できるものである。得られるキトサン化キチンナノ構造体は粒子状又は繊維(ファイバー)状であり、粒子の場合は平均粒子径が約10nm~500nmである。繊維状の場合は繊維の直径が約2nm~200nmである。上記キトサン化キチンナノ構造体において、キトサン化される割合は特に限定されないが、キチン骨格中の2位炭素上のアセトアミド基が脱アセチル化され、第1級アミノ基であるキトサンとなる。このような部分的にキトサン化されている物質を部分キトサン化キチンナノ物質ともいう。部分キトサン化されるキチンナノ物質の部位は特に限定されないが、キチンナノ物質の表面の一部もしくは全体が部分キトサン化されていると好ましく、表面もしくは全体の5%から70%の範囲が部分キトサン化されているとより好ましい。粒子径、繊維幅の測定には公知の測定装置が使用でき、例えば走査電子顕微鏡、レーザー回折式粒子径測定装置、光散乱式粒子径測定装置等が使用出来る。本開示においてキトサン化キチンナノ物質は水分散体であっても良い。本開示においてキトサン化キチンナノ物質は酸を含んでいても良く、好ましくはクエン酸、乳酸である。キトサン化キチンナノ物質は繊維(ファイバー)状であることが好ましい。
【0013】
本開示のキトサン化キチンナノ物質は、結晶性が高いことが好ましい。例えば、結晶性は結晶化度の測定で規定することが出来る。結晶化度は75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。結晶において、結晶の大きさである結晶子径を測定することができ、本開示のキトサン化キチンナノ物質は、結晶子径が80Å以上であることが好ましく、90Å以上であることがより好ましい。例えば結晶化度及び、結晶子径は実施例に記載の測定方法で測定することが出来る。
【0014】
<水>
本開示において水は、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、軟水、硬水、天然水、海洋深層水、アルカリイオン水、その他各種方法によって得られる精製水等が挙げられる。
本開示の毛髪化粧料は、化粧料合計100質量%に対して、水を1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上で含むことがより好ましく、10質量%以上である含むことがより好ましい。一方、本開示の毛髪化粧料用は、化粧料合計100質量%に対して、水を99質量%以下含むことが好ましく、95質量%以下で含むことがより好ましく、90質量%以下である含むことがより好ましい。上記範囲であると、本開示の毛髪化粧料の使用感、保存安定性がより向上する傾向にある。
【0015】
<その他の構成物質>
本開示の毛髪化粧料用は、上記のキチンナノ物質及び又はキトサン化キチンナノ物質以外の物質を含んでいてもよい。例えば、アルコール、増粘剤、粉末成分、pH調整剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、油剤、シリコーン油、ワックス、高級アルコール、カチオン化ポリマー、保湿剤、芳香族アルコール、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、ビタミン、アミノ酸、有機酸、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、酸化剤、アルカリ剤、染料中間体、カプラー、酸性染料、塩基性染料、染毛色材、還元剤、糖、植物抽出物、生薬抽出物、香料等である。通常毛髪化粧料に配合されるものであれば適宜配合することが出来る。上記その他の成分の含有量は毛髪化粧料の安定性を阻害しなければ、特に制限されないが、毛髪化粧料100質量%に対して、0~50質量%であることが好ましい。
【0016】
なかでも特に多価アルコールを含むことが好ましい。本開示において多価アルコールは、分子中に2個以上のヒドロキシル基を持つアルコールである。ヒドロキシル基数によって、2価アルコール、3価以上のアルコール、多価アルコール重合体、その他ヒドロキシル基を2個以上持つ化合物などがある。2価アルコールはヒドロキシル基を1分子中に2個有するアルコールであり、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ジプロピレングリコール等である。3価以上のアルコールはヒドロキシル基を1分子中に3個以上有するアルコールであり、3価アルコールは例えばグリセリンやトリメチロールプロパン等であり、4価アルコールは例えば、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等であり、5価アルコールは例えば、キシリトール等であり、6価アルコールは例えばソルビトール、マンニトール等である。特に2価アルコール、3価アルコールが好ましく、2価アルコールでは、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコールが特に好ましく、3価アルコールではグリセリンが特に好ましい。本開示の毛髪化粧料用組成物等は、毛髪化粧料用組成物等合計100質量%に対して、多価アルコールを0.1質量%以上含むことが好ましく、1質量%以上で含むことがより好ましく、2質量%以上で含むことがさらに好ましく、20質量%以下含むことが好ましく、10質量%以下含むことがより好ましく、8質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0017】
[本開示の毛髪化粧料用組成物]
本開示の毛髪化粧料用組成物は、本開示のキチンナノ物質等を含有する毛髪用化粧料を含む化粧料用組成物である。本開示の毛髪化粧料用組成物は、本開示のキチンナノ物質等と例えば上記のその他の構成物質から構成される。本開示の毛髪化粧用組成物は、例えば洗い流すタイプの毛髪化粧料組成物(以下リンスオフタイプともいう。)があり、例えば洗い流さないタイプの毛髪化粧料組成物(以下リーブオンタイプともいう。)がある。
ここで、洗い流すタイプの毛髪化粧料組成物とは、塗布したままにせずに洗い流すことを特徴とする浴室内で使用される毛髪化粧料のことであり、いわゆるインバスタイプの毛髪化粧料である。インバスタイプの毛髪化粧料としては、例えば、シャンプー、ヘアリンス、リンスインシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック等が挙げられる。
ここで、洗い流さないタイプの毛髪化粧料組成物とは、塗布したままで洗い流さない毛髪化粧料のことであり、いわゆるアウトバスタイプの毛髪化粧料である。アウトバスタイプの化粧料としては、例えば、ヘアミスト、ヘアミルク、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアクリーム等が挙げられる。
【0018】
[本開示のキチンナノ物質等を含有する毛髪化粧料の物性等]
本開示のキチンナノ物質等を含有する毛髪化粧料用組成物は、毛髪化粧料用途において、適切に使用できる粘度であることが好ましく、1000mPa・s以上が好ましい。本開示のキチンナノ物質等はpHが2.0から8.0の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、化粧料用途として適切に使用することが出来る。
【0019】
[本開示のキチンナノ物質等を含有する毛髪化粧料の製造方法]
本開示のキチンナノ物質等を含有する毛髪化粧料の製造方法は、特に制限されず、キチンナノ物質等と毛髪化粧料に用いられる一般的な化合物を混合することで製造することが出来る。キチンナノ物質等の様々な形状(ファイバー状、粒子状、その他形態を含む)の特性から、適宜溶剤を選択することが出来る。溶剤としては、毛髪化粧料用途で通常使用できるものが選択でき、例えば、水、アルコール類、具体的にはエタノール、多価アルコール等があり、中でも水が好ましく用いられる。キチンナノ物質等と毛髪化粧料に用いられる一般的な化合物を混合する装置としては、特に制限されず、通常使用される攪拌装置を使用することが出来る。例えば、ホモミキサー、ホモディスパー、スリーワンモーター等がある。混合の際の温度条件は、特に制限されないが、キチンナノ物質等と毛髪化粧料に用いられる一般的な化合物の混合性が高まる温度で混合することが好ましく、例えば室温以上が好ましく、40℃以上が好ましく、60℃以上が好ましく、90℃以下であることが好ましい。
【0020】
[本開示のキチンナノ物質等を含有する毛髪化粧料の用途]
本開示における毛髪化粧料は人体の毛髪に直接塗布する化粧品、医薬部外品を意味し、具体的には、頭髪化粧料、頭髪外用剤、頭髪洗浄剤等が含まれる。
特に、本開示のキチンナノ物質を含有する毛髪化粧料用は、使用感に優れることから、ヘアケア化粧料用途、ヘアスタイリング剤用途等に好ましく適用できる。
本開示の毛髪化粧料を使用した毛髪の各種性状についての評価は、公知の方法が使用出来る。例えば、櫛通り(指通り)、まとまり感の評価は、コーミングテスター(株式会社テクノ・ハシモト製)型番 SK-7A、SK-5Aを用いて、荷重、静電気量を測定すること、摩擦感テスター(カトーテック株式会社製)型番 KES-SEを用いて、摩擦係数、摩擦係数の変動を測定することが出来る。例えば、ハリコシ感の評価は、一本曲げ試験機(カトーテック株式会社製)型番 KES-FB2-SHを用いて、曲げ剛性を測定すること、毛髪コシ感テスター(カトーテック株式会社製)型番 KES-FB2-S-DCを用いて、曲げ剛性を測定すること、純曲げ試験機(カトーテック株式会社製)型番 KES-FB2-Sを用いて、曲げた時のかたさ、回復性を測定すること、トライコグラム(REDKEN社製)や、AGS-X(株式会社島津製作所製)を用いて、毛髪を一定湿度のもとで力(重さ)をかけて徐々に引張り、何gの力(重さ)まで耐えることができるかを測定することが出来る。例えば、ツヤの評価は、毛束を筒に巻き付け、光源から光を当て、マイクロスコープで撮影する画像を二値化して、光沢の範囲を計測すること、三次元変角光度計 GPシリーズ(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて内部反射と外部反射を測定することが出来る。例えば、表面状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することが出来る。
【実施例0021】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0022】
<配合性>
均一に混合できたものを〇、均一に混合できなかったものを×とした
<pH測定>
pHメーター LAQUA pH/ION METER F-72(株式会社堀場製作所製)にて測定した。測定温度は25℃にて測定した。
<粘度測定条件>
B形粘度計(機種:BMII)(東機産業株式会社製)を使用し、ローター No. 3、回転数12rpm、測定時間60秒、温度25℃の条件にて測定した。
<保存安定性>
室温、5℃、50℃のインキュベーターにて一カ月間保管した。
○:分離、析出物がない状態であること
【0023】
<毛束を用いた走査型電子顕微鏡(SEM)観察、官能評価>
ダメージ毛の作成:毛束(株式会社ビューラックス製 黒髪100%、30cm、3g)を4%過酸化水素水:2.5%アンモニア水=4:1混合比のブリーチ液に室温で30分間含浸後に水道水で1分間洗い流し、100℃で20分間乾燥する工程を5回繰り返すことで、ダメージ毛を作製した。
走査型電子顕微鏡(品番JSM-7600FA 日本電子株式会社製)による観察:ダメージ毛に、製造例、比較製造例でえられた溶液を1.5g塗布した後、ただちに水道水で1分間洗い流し、コーミングをして吊るした状態で22℃、湿度50%前後の環境下で自然乾燥後にキューティクルの観察を行った。倍率は300倍で観察した。
官能評価:ダメージ毛に、製造例、比較製造例でえられた溶液を1.5g塗布した後、ただちに水道水で1分間洗い流し、コーミングをして吊るした状態で22℃、湿度50%前後の環境下で自然乾燥後に、専門パネラー5名で官能評価を行った。
ツヤ、指通り、つるつるした感じ、まとまり、ハリコシ感について、それぞれ無塗布時を1とし、5段階で評価した。(5名の評価の平均値を四捨五入した)
【0024】
<XRD測定>
装置:Smart Lab(株式会社リガク製)
X線源:Cu K-α (1.5405Å)
管電圧:45kV
管電流:200mA
測定範囲:5°~90°
測定は、上記使用原料について粉末状態にて測定した。
結晶化度は次式により算出した。
キチン結晶化度(%)=[(散乱強度A-散乱強度B)/散乱強度A]×100
散乱強度Aは、2θ=19~21にあるピークの散乱強度であり、散乱強度Bは、2θ=16のピークの散乱強度である。
結晶子径は、2θ=10°の(020)面における回折の半値幅より、シェラーの式から算出した。具体的には、X線回折測定の結果について、結晶構造の帰属を行い、最大強度を示すピークの半値幅から下記のシェラー式を用いて算出した。
結晶子径(nm)=Kλ/βcosθ
ここで、Kは形状ファクターとして0.94を代入、λは測定X線波長(CuKα:0.154nm)、βは半値幅(rad)、θはブラッグ角(回折角2θの半分;deg)である。
【0025】
<使用原料>
マリンナノファイバーS-HL-01(株式会社マリンナノファイバー製):脱アセチル化度40~50% 平均繊維径 2nm~50nm 固形分濃度1%水分散体
結晶化度 93.8%、結晶子径 90.9Å
マリンナノファイバー HL-01(株式会社マリンナノファイバー製):脱アセチル化度 10~40% 平均繊維径 2nm~50nm 固形分濃度1%水分散体
結晶化度 97.7%、結晶子径 92.1Å
マリンナノファイバー CL-01(株式会社マリンナノファイバー製):脱アセチル化度 0~10% 平均繊維径 2nm~50nm 固形分濃度1%水分散体
精製キトサンLL(株式会社キミカ製):脱アセチル化度75%以上、白色から薄黄色の粉末、60メッシュパス品
結晶化度 71%、結晶子径 17Å
キチン(東京化成工業株式会社製):脱アセチル化率10%以下、白色から薄黄色粉末もしくは結晶、0.2~1.0mm 純度90%程度
結晶化度 98.3%、結晶子径 85.2Å
キトアクア(川研ファインケミカル株式会社製):サクシニルカルボキシルメチルキトサン液、無色から薄黄色透明水溶液、pH5.5~7.5
アルコールNo.20-B(高級アルコール工業株式会社製):水添ナタネ油アルコール
NIKKOLアミドアミンMPS(日光ケミカルズ株式会社製):ステアラミドプロピルジメチルアミン
LUSPLAN SR-DM4(日本精化株式会社製):ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
ハイシュガーケインBG(高級アルコール工業株式会社製):1、3-ブチレングリコール
キレスト210PD(株式会社キレスト製):エチドロン酸、水の混合物
ムサシノ乳酸50F(株式会社武蔵野化学研究所製):乳酸、水の混合物
ネオライト100P(高級アルコール工業株式会社製):ネオペンタン酸イソデシル
フェノキシエタノール-S(四日市合成株式会社製):フェノキシエタノール
VISCARESS HPD(クローダジャパン株式会社製):ポリクオタニウム-37、水添ポリデセン、トリデセス-6の混合物
【0026】
[製造例-リンスオフタイプコンディショナーの作成]
<製造例1>
アルコールNo.20-B(高級アルコール工業株式会社製)7.0部と、NIKKOLアミドアミンMPS(日光ケミカルズ株式会社製)2.0部と、LUSPLAN SR-DM4(日本精化株式会社製)0.5部と、オリーブスクワラン(高級アルコール工業株式会社製)1.5部を混合し、攪拌しながら80℃±5℃に加温して均一になるまで溶解する。(以上の溶解混合物をaとする。)水72.7部と、ハイシュガーケインBG(高級アルコール工業株式会社製)3.0部と、キレスト210PD(株式会社キレスト製)0.1部と、ムサシノ乳酸50F(株式会社武蔵野化学研究所製)0.9部を混合し、攪拌しながら80℃±5℃に加温して均一になるまで溶解する。(以上の溶解混合物をbとする。)80℃±5℃に保ったまま、aにbをゆっくり添加し、5分間混合したのち、35℃まで冷却する。マリンナノファイバー S-HL-01(株式会社マリンナノファイバー製)10.0部を攪拌しながら混合し、さらにネオライト100P(高級アルコール工業株式会社製)2.0部とフェノキシエタノール-S(四日市合成株式会社製)0.3部添加し、室温で5分間混合し、製造例1の毛髪化粧料を得た。
<製造例2>
マリンナノファイバー S-HL-01をマリンナノファイバー HL-01に変更した以外は製造例1と同様に調整した。
<製造例3>
マリンナノファイバー S-HL-01をマリンナノファイバー CL-01に変更した以外は製造例1と同様に調整した。
<比較製造例1>
マリンナノファイバー S-HL-01をせず、水72.7gを水82.7gに変更した以外は製造例1と同様に調整した。
<比較製造例2>
マリンナノファイバー S-HL-01を精製キトサンLLに変更した以外は製造例1と同様に調整した。なお、精製キトサンLLについては、精製キトサンLL1gに対して、乳酸0.875g、イオン交換水97.25gを添加して1%水溶液(pH3.5)に調整し、10部を使用した。
<比較製造例3>
マリンナノファイバー S-HL-01をキチン(東京化成工業株式会社製)に変更した以外は製造例1と同様に調整した。
<比較製造例4>
マリンナノファイバー S-HL-01をキトアクア(川研ファインケミカル株式会社製)に変更した以外は製造例1と同様に調整した。
【0027】
製造例1から製造例3、比較製造例1から比較製造例4について、初期配合性、初期pH、初期粘度、保存安定性、各製造例を塗布処理した毛髪についての専門パネラーによる官能評価結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
表1に示すとおり、キチンナノ物質を使用した製造例1から製造例3は保存安定性に優れ、ダメージ毛に各製造例を塗布した各種官能評価について高い評価結果となり、毛髪に塗布した際に優れた感触を有することがわかった。特に、毛髪にハリコシ感を与えることに優れていることがわかった。比較製造例で使用した水溶性キトサン、キチン、キトサン誘導体については、ダメージ毛に各比較製造例を塗布した各種官能評価について、つや、指通り、つるつるした感じ、まとまり感などはキチンナノ物質と同等に優れるが、ハリコシ感ついては、無塗布と同等であり、ほとんど効果がないことがわかった。キチンを使用した比較製造例3はキチンが水に溶解もしくは均一分散せず粒状に残り、均一に混合することが出来なかった。よって適切な状態でpH測定、粘度測定を行なうことが出来なかった。
【0029】
図に示すとおり、塗布前のダメージ毛は表面の毛羽立ちがみられる。これは毛髪表面を構成するキューティクルが剥がれている状態であり、キチンナノ物質を使用した製造例1から製造例3を塗布した後には、表面の毛羽立ちが抑えられている。製造例1から製造例3使用した際には、比較製造例1、比較製造例2、比較製造例4と比較して毛羽立ちが抑えられている状態であることがわかった。
【0030】
[製造例-リーブオンタイプコンディショナーの作成]
<製造例4>
水79.95部と、ハイシュガーケインBG(高級アルコール工業株式会社製)3.0部と、VISCARESS HPD(クローダジャパン株式会社製)1.5部を室温にて、5分間混合し、均一混合液とした。マリンナノファイバー S-HL-01(株式会社マリンナノファイバー製)10.0部を加え、さらに5分間混合した。(混合液をcとする。)ネオライト100P(高級アルコール工業株式会社製)5.0部とLUSPLAN SR-DM4(日本精化株式会社製)0.25部を混合した。(混合液をdとする)混合液cに混合液dを添加して室温にて5分間混合し、さらにフェノキシエタノール-S(四日市合成株式会社製)0.3部を添加し、製造例4の毛髪化粧料を得た。
<製造例5>
マリンナノファイバー S-HL-01をマリンナノファイバー HL-01に変更した以外は製造例4と同様に調整した。
<製造例6>
マリンナノファイバー S-HL-01をマリンナノファイバー CL-01に変更した以外は製造例4と同様に調整した。
<比較製造例5>
マリンナノファイバー S-HL-01を添加せず、水79.95gを水89.95gに変更した以外は製造例1と同様に調整した。
<比較製造例6>
マリンナノファイバー S-HL-01を精製キトサンLLに変更した以外は製造例4と同様に調整した。なお、精製キトサンLLについては、精製キトサンLL1gに対して、乳酸0.875g、イオン交換水97.25gを添加して1%水溶液(pH3.5)に調整し、10部を使用した。
<比較製造例7>
マリンナノファイバー S-HL-01をキチン(東京化成工業株式会社製)に変更した以外は製造例4と同様に調整した。
<比較製造例8>
マリンナノファイバー S-HL-01をキトアクア(川研ファインケミカル株式会社製)に変更した以外は製造例4と同様に調整した。
【0031】
製造例4から製造例6、比較製造例5から比較製造例8について、初期配合性、初期pH、初期粘度、保存安定性、各製造例を塗布処理した毛髪についての専門パネラーによる官能評価結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
表2に示すとおり、キチンナノ物質を使用した製造例4から製造例6は保存安定性に優れ、ダメージ毛に各製造例を塗布した各種官能評価について高い評価結果となり、毛髪に塗布した際に優れた感触を有することがわかった。特に、毛髪にハリコシ感を与えることに優れていることがわかった。比較製造例で使用した水溶性キトサン、キチン、キトサン誘導体については、ダメージ毛に各比較製造例を塗布した各種官能評価について、つや、指通り、つるつるした感じ、まとまり感などはキチンナノ物質と同等に優れるかやや劣るが、ハリコシ感ついては、無塗布と同等であり、ほとんど効果がないことがわかった。キチンを使用した比較製造例7はキチンが水に溶解もしくは均一に分散せず粒状に残り、均一に混合することが出来なかった。よって適切な状態でpH測定、粘度測定を行なうことが出来なかった。
【0033】
製造例1から製造例3、比較製造例1から比較製造例4のリンスオフ処方と製造例5から製造例7、比較製造例5から比較製造例8のリーブオン処方を比較すると、より毛髪表面にとどまりやすいリーブオン処方において、本開示のキチンナノ物質等はハリコシ感に優れる特徴をもつことのみならず、通常の洗髪条件でのリンスオフ処方でも毛髪に優れたハリコシ感を与えることがわかった。したがって、洗い流さない処方でも、洗髪条件下であってもすなわち一般的に毛髪に用いられる化粧料の使用条件において、ハリコシ感を与える毛髪化粧料として好適に使用出来る。