(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134722
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】金属部品
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20220908BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01L23/50 V
C23C28/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034072
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健斗
(72)【発明者】
【氏名】宮内 義仁
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 和則
(72)【発明者】
【氏名】久保 公彦
【テーマコード(参考)】
4K044
5F067
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB10
4K044BA06
4K044BA08
4K044BB02
4K044BB04
4K044BB05
4K044BB06
4K044BC14
4K044CA18
5F067AB03
5F067DC17
5F067DC19
5F067DC20
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】半導体装置の製造に用いられる金属部品において、良好な特性を維持しつつニッケル層の厚みを減らすこと。
【解決手段】金属部品は、半導体装置の製造に用いられる金属部品において、基材と、ニッケル層と、貴金属層と、を備える。基材は、導電性を有する。ニッケル層は、基材の表面に形成され、ニッケルを主成分とする。パラジウム層は、ニッケル層の表面に形成される。また、ニッケル層は、リンを含有しない第1ニッケル層と、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造に用いられる金属部品において、
導電性を有する基材と、
前記基材の表面に形成され、ニッケルを主成分とするニッケル層と、
前記ニッケル層の表面に形成される貴金属層と、
を備え、
前記ニッケル層は、
リンを含有しない第1ニッケル層と、
0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層と、
を有する金属部品。
【請求項2】
前記第2ニッケル層は、0.01(wt%)~0.5(wt%)のリンを含有する
請求項1に記載の金属部品。
【請求項3】
半導体装置の製造に用いられる金属部品において、
導電性を有する基材と、
前記基材の表面に形成され、ニッケルを主成分とするニッケル層と、
前記ニッケル層の表面に形成される貴金属層と、
を備え、
前記ニッケル層は、
リンを含有しない第1ニッケル層と、
リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層と、
を有する金属部品。
【請求項4】
前記第1ニッケル層の表面は、粗面である
請求項1~3のいずれか一つに記載の金属部品。
【請求項5】
前記第1ニッケル層は、前記基材の表面に形成され、
前記第2ニッケル層は、前記第1ニッケル層の表面に形成される
請求項1~4のいずれか一つに記載の金属部品。
【請求項6】
前記第2ニッケル層は、前記基材の表面に形成され、
前記第1ニッケル層は、前記第2ニッケル層の表面に形成される
請求項1~4のいずれか一つに記載の金属部品。
【請求項7】
別の前記第2ニッケル層は、前記第1ニッケル層の表面に形成される
請求項6に記載の金属部品。
【請求項8】
前記第2ニッケル層の厚みは、0.1(μm)以上である
請求項1~7のいずれか一つに記載の金属部品。
【請求項9】
前記ニッケル層における前記第2ニッケル層の厚みの比率が50(%)以下である
請求項1~8のいずれか一つに記載の金属部品。
【請求項10】
前記貴金属層は少なくとも1層からなり、前記貴金属層はパラジウム、金、銀のうちすくなくとも1つからなる
請求項1~9のいずれか一つに記載の金属部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、金属部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造に用いられるリードフレーム等の金属部品において、金属基材の表面にニッケルめっき層を形成する技術が知られている。また、その一例として、リードフレームの金属基材の表面にニッケルめっき層、パラジウムめっき層および金めっき層をこの順に形成するPd-PPF(Pre Plated lead Frame)と呼ばれる技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのニッケル層は、膜厚が比較的大きいことから、製造コストが上昇してしまうという課題があった。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、良好な特性を維持しつつニッケル層の厚みを減らすことができる半導体装置の製造に用いられる金属部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る金属部品は、半導体装置の製造に用いられる金属部品において、基材と、ニッケル層と、貴金属層と、を備える。基材は、導電性を有する。ニッケル層は、前記基材の表面に形成され、ニッケルを主成分とする。貴金属層は、前記ニッケル層の表面に形成される。また、前記ニッケル層は、リンを含有しない第1ニッケル層と、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、半導体装置の製造に用いられる金属部品において、良好な特性を維持しつつニッケル層の厚みを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るリードフレームの模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態および実施形態の変形例1、2に係るリードフレームの拡大断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の変形例3~5に係るリードフレームの拡大断面図である。
【
図5】
図5は、実施例4に係るリードフレームの断面形態のSEM写真を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例8に係るリードフレームの断面形態のSEM写真を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例4に係るリードフレームの断面形態のSEM写真を示す図である。
【
図8】
図8は、比較例8に係るリードフレームの断面形態のSEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する半導体装置の製造に用いられる金属部品のうち、その一例としてリードフレームについて説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
従来、半導体装置の製造に用いられるリードフレームにおいて、金属基材の表面にニッケルめっき層、パラジウムめっき層および金めっき層をこの順に形成するPd-PPFと呼ばれる技術が知られている。
【0011】
このPd-PPFでは、はんだの濡れ性とボンディングワイヤの接合特性とを両立させることができることから、かかるPd-PPFを用いることによって、半導体装置を簡便な工程で製造することができる。
【0012】
しかしながら、従来の技術では、ニッケルめっき層の厚みを単純に小さくすると、基材に含まれる銅がPd-PPFの表面まで拡散しやすくなるため、はんだの濡れ性などが悪化してしまう場合があった。一方で、ニッケルめっき層の厚みを大きくすると、かかるニッケルめっき層を形成する際のタクトタイムが長くなってしまうことから、製造コストが増大してしまう恐れがあった。
【0013】
そこで、上述の問題点を克服し、Pd-PPFにおいて良好な特性を維持しつつニッケル層の厚みを減らすことができる技術の実現が期待されている。
【0014】
<リードフレームおよび半導体装置>
最初に、
図1および
図2を参照しながら、実施形態に係るリードフレーム1および半導体装置100について説明する。
図1は、実施形態に係るリードフレーム1の模式図であり、
図2は、実施形態に係る半導体装置100を示す断面図である。
【0015】
図1に示すリードフレーム1は、QFP(Quad Flat Package)タイプの半導体装置100の製造に用いられるリードフレームについて示している。なお、本開示の技術は、その他のタイプ、たとえばSOP(Small Outline Package)や半導体装置の裏面にリードが露出するQFN(Quad Flat Non-lead package)などの半導体装置の製造に用いられるリードフレームに適用してもよい。
【0016】
実施形態に係るリードフレーム1は、たとえば平面視で帯形状を有し、長手方向に沿って複数の単位リードフレーム10が並んで形成されている。かかる単位リードフレーム10は、リードフレーム1を用いて製造される半導体装置100の一つ一つに対応する部位である。なお、リードフレーム1の長手方向に沿ってだけでなく、幅方向にも沿って複数の単位リードフレーム10が並んで形成されていてもよい。
【0017】
図1に示すように、単位リードフレーム10は、ダイパッド11と、複数のリード12と、ダムバー13とを有する。なお、
図1には図示していないが、リードフレーム1における長辺側の側面にパイロット孔が並んで設けられていてもよい。
【0018】
ダイパッド11は、たとえば、単位リードフレーム10の中央部分に設けられる。かかるダイパッド11のおもて面側には、
図2に示すように、半導体素子101が搭載可能である。
【0019】
ダイパッド11は、ダイパッド支持部11aによって単位リードフレーム10の外縁部との間が連結され、単位リードフレーム10に支持される。かかるダイパッド支持部11aは、たとえば、ダイパッド11の四隅にそれぞれ設けられる。
【0020】
複数のリード12は、ダイパッド11の周囲に並んで配置されており、それぞれの先端部12aが単位リードフレーム10の外縁部からダイパッド11に向かって伸びている。かかるリード12は、
図2に示すように、半導体装置100の接続端子として機能する。
【0021】
リード12は、先端部12aおよび基端部12bを有する。
図2に示すように、半導体装置100において、リード12の先端部12aにはCuやCu合金、Au、Au合金などで構成されるボンディングワイヤ102が接続される。そのため、リードフレーム1には、ボンディングワイヤ102との高い接合特性が求められる。ダムバー13は、隣接するリード12同士の間を接続する。
【0022】
半導体装置100は、リードフレーム1、半導体素子101およびボンディングワイヤ102に加えて、封止樹脂103を有する。封止樹脂103は、たとえば、エポキシ樹脂などで構成され、モールド工程などにより所定の形状に成型される。封止樹脂103は、半導体素子101やボンディングワイヤ102、ダイパッド11などを封止する。
【0023】
また、リード12の基端部12bは、半導体装置100の外部端子(アウターリード)として機能し、基板にはんだ接合される。また、ダイパッド11の裏面が封止樹脂103から露出するタイプやヒートスラグを設けるタイプの半導体装置100においては、それらの裏面が基板にはんだ接合される。そのため、リードフレーム1には、はんだに対する高い濡れ性が求められる。
【0024】
なお、ダムバー13は、封止樹脂103を成型するモールド工程において、使用している樹脂が基端部12b(アウターリード)側に漏れ出さないためのダムの機能を有し、半導体装置100の製造工程において最終的に切断される。
【0025】
<実施形態>
つづいて、実施形態に係るリードフレーム1の詳細について、
図3の(a)を参照しながら説明する。
図3の(a)は、実施形態に係るリードフレーム1の拡大断面図である。
【0026】
図3の(a)に示すように、実施形態に係るリードフレーム1は、基材2と、ニッケル層3と、貴金属層4とを備える。基材2は、導電性を有する材料(たとえば、銅や銅合金などの金属材料)で構成される。貴金属層4は、ニッケル層3の表面に形成され、パラジウム、金、銀のうち少なくとも一つを主成分とする。なお、貴金属層は、一層であってもよいし、複数の層であってもよい。
【0027】
リードフレーム1において、基材2の表面2aには、ニッケル層3が形成される。ニッケル層3は、ニッケル(Ni)を主成分として含み、たとえば、ニッケルめっき処理で形成可能である。
【0028】
また、ニッケル層3は、第1ニッケル層31および第2ニッケル層32を含む。第1ニッケル層31は、リン(P)を含有しないニッケル層である。なお、本開示において、「リンを含有しない」には、不可避不純物であるリンを含有する場合も含まれる。
【0029】
第2ニッケル層32は、所定の比率のリンを含有するニッケル層である。第2ニッケル層32は、たとえば、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する。また、第2ニッケル層32は、たとえば、所定の比率のリンを含有し、柱状結晶構造を有する。
【0030】
なお、本開示において、第1ニッケル層31にはニッケル以外の元素が含まれていてもよいし、第2ニッケル層32にはニッケルおよびリン以外の元素が含まれていてもよい。
【0031】
実施形態では、
図3の(a)に示すように、ニッケル層3が第1ニッケル層31と第2ニッケル層32との2層で構成される。また、実施形態では、基材2の表面2aに第1ニッケル層31が配置され、第1ニッケル層31の表面31aに第2ニッケル層32が配置される。
【0032】
また、ニッケル層3の表面3a(実施形態では、第2ニッケル層32の表面32a)には、貴金属層4が形成される。貴金属層4は、パラジウム層41および金層42を含む。パラジウム層41は、パラジウム(Pd)を主成分として含み、たとえば、パラジウムめっき処理で形成可能である。金層42は、金(Au)を主成分として含み、たとえば、金めっき処理で形成可能である。
【0033】
貴金属層4は酸化しにくい貴金属で構成されることから、実施形態に係るリードフレーム1では、かかるリードフレーム1の表面1aにおいて酸化物が形成されることを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102(
図2参照)の接合特性とが両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0034】
なお、実施形態に係る貴金属層4は、パラジウム層41と金層42とで構成される場合に限られず、さらに銀(Ag)を主成分として含む銀層とで構成されてもよい。また、実施形態に係る貴金属層4は、銀層のみで構成されてもよい。
【0035】
ここで、実施形態では、ニッケル層3が0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層32を含むことにより、かかる第2ニッケル層32内で基材2に含まれる銅が拡散することを抑制することができる。
【0036】
なぜなら、第2ニッケル層32の内部において、隣接する結晶粒の界面に濃縮したリンがピン止めされ、かかるリンが銅の拡散を阻害するからである。
【0037】
また、実施形態では、ニッケル層3が、リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層32を含むことにより、かかる第2ニッケル層32内で基材2に含まれる銅が拡散することを抑制することができる。
【0038】
なぜなら、第2ニッケル層32の内部においてニッケルが柱状結晶であるため、ニッケルが微結晶である場合に比べて結晶粒界の面積が小さく、かつ面積が小さい結晶粒界に存在するリンが銅の拡散を阻害するからである。
【0039】
そして、実施形態では、ニッケル層3が第2ニッケル層32を含むことにより、ニッケル層3全体の厚みを小さくしたとしても、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することを抑制することができる。
【0040】
そのため、ニッケル層3全体の厚みを小さくしたとしても、表面1aで銅が酸化することを抑制することができることから、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102の接合特性とが両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0041】
すなわち、実施形態では、ニッケル層3が第2ニッケル層32を含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0042】
また、実施形態では、ニッケル層3がリンを含有しない第1ニッケル層31を含むことにより、リンを含有する第2ニッケル層32のみでニッケル層3を構成する場合と比べて、第2ニッケル層32の厚みを減らすことができる。
【0043】
なぜなら、第2ニッケル層32の厚みを減らしたとしても、厚みが減った分の機能を第1ニッケル層31で代替することにより、第2ニッケル層32のみでニッケル層3を構成した場合と同等の機能をニッケル層3に付与することができるからである。
【0044】
そして、第2ニッケル層32の厚みを減らすことにより、比較的製造コストが高い第2ニッケル層32の製造コストを低減することができる。すなわち、実施形態によれば、ニッケル層3がリンを含有しない第1ニッケル層31を含むことにより、ニッケル層3全体の製造コストを低減することができる。
【0045】
また、実施形態では、
図3の(a)に示すように、第1ニッケル層31が基材2の表面2aに形成され、第2ニッケル層32が第1ニッケル層31の表面31aに形成されてもよい。すなわち、実施形態では、第2ニッケル層32が第1ニッケル層31よりもリードフレーム1の表面1a側に配置されてもよい。
【0046】
これにより、第1ニッケル層31に含まれるニッケルがリードフレーム1の表面1aまで拡散することを、第2ニッケル層32によって抑制することができる。なぜなら、第2ニッケル層32の内部において、隣接する結晶粒の界面に濃縮したリンが存在し、かかるリンがニッケルの拡散も阻害するからである。
【0047】
すなわち、実施形態では、第2ニッケル層32が第1ニッケル層31よりもリードフレーム1の表面1a側に配置されることにより、表面1aでニッケルが酸化することを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102の接合特性とが高いレベルで両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0048】
また、実施形態では、第2ニッケル層32が、0.01(wt%)~0.5(wt%)のリンを含有してもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができるとともに、ニッケル層3の外観を良好に維持することができる。
【0049】
また、実施形態では、ニッケル層3における第2ニッケル層32の厚みの比率が50(%)以下であってもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができる。
【0050】
また、実施形態では、第2ニッケル層32の厚みが0.1(μm)以上であってもよい。これにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0051】
<変形例1>
つづいて、実施形態に係るリードフレーム1の各種変形例について、
図3および
図4を参照しながら説明する。
図3の(b)は、実施形態の変形例1に係るリードフレーム1の拡大断面図である。この変形例1は、ニッケル層3における第1ニッケル層31および第2ニッケル層32の配置が上述の実施形態と異なる。
【0052】
具体的には、
図3の(b)に示すように、基材2の表面2aに第2ニッケル層32が形成され、第2ニッケル層32の表面32aに第1ニッケル層31が形成される。そして、第1ニッケル層31の表面31aに、貴金属層4のパラジウム層41が形成される。
【0053】
この変形例1では、上述の実施形態と同様に、ニッケル層3が、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層32を含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0054】
また、変形例1では、上述の実施形態と同様に、ニッケル層3が、リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層32を含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0055】
また、変形例1では、上述の実施形態と同様に、ニッケル層3がリンを含有しない第1ニッケル層31を含むことにより、ニッケル層3全体の製造コストを低減することができる。
【0056】
また、変形例1では、第2ニッケル層32が、0.01(wt%)~0.5(wt%)のリンを含有してもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができるとともに、ニッケル層3の外観を良好に維持することができる。
【0057】
また、変形例1では、ニッケル層3における第2ニッケル層32の厚みの比率が50(%)以下であってもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができる。
【0058】
また、変形例1では、第2ニッケル層32の厚みが、0.1(μm)以上であってもよい。これにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0059】
<変形例2>
図3の(c)は、実施形態の変形例2に係るリードフレーム1の拡大断面図である。この変形例2は、ニッケル層3の構成が上述の実施形態および変形例1と異なる。具体的には、
図3の(c)に示すように、基材2の表面2aに第2ニッケル層32Aが形成され、第2ニッケル層32Aの表面32Aaに第1ニッケル層31が形成される。
【0060】
さらに、第1ニッケル層31の表面31aに第2ニッケル層32Bが形成され、第2ニッケル層32Bの表面32Baに貴金属層4のパラジウム層41が形成される。第2ニッケル層32Bは、別の第2ニッケル層の一例である。
【0061】
このように、本開示の技術では、ニッケル層3が2層である場合に限られず、3層以上の構成であってもよい。
【0062】
この変形例2では、上述の実施形態と同様に、ニッケル層3が、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層32A、32Bを含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0063】
また、変形例2では、上述の実施形態と同様に、ニッケル層3が、リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層32A、32Bを含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0064】
また、変形例2では、上述の実施形態と同様に、ニッケル層3がリンを含有しない第1ニッケル層31を含むことにより、ニッケル層3全体の製造コストを低減することができる。
【0065】
また、変形例2では、上述の実施形態と同様に、第2ニッケル層32Bが第1ニッケル層31よりもリードフレーム1の表面1a側に配置されることにより、表面1aでニッケルが酸化することを抑制することができる。したがって、変形例2によれば、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102(
図2参照)の接合特性とが高いレベルで両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0066】
また、変形例2では、第2ニッケル層32A、32Bが、0.01(wt%)~0.5(wt%)のリンを含有してもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができるとともに、ニッケル層3の外観を良好に維持することができる。
【0067】
また、変形例2では、ニッケル層3における第2ニッケル層32A、32Bのトータルの厚みの比率が50(%)以下であってもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができる。
【0068】
また、変形例2では、第2ニッケル層32A、32Bのトータルの厚みが、0.1(μm)以上であってもよい。これにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0069】
<変形例3>
図4の(a)は、実施形態の変形例3に係るリードフレーム1の拡大断面図である。この変形例3は、第1ニッケル層31の表面形状が上述の実施形態と異なる。具体的には、
図4の(a)に示すように、基材2の表面2aに形成される第1ニッケル層31において、表面31aが粗面である。この粗面化された表面31aは、第1ニッケル層31のニッケルめっき処理を適切なめっき液およびめっき形成条件で実施することにより形成することができる。
【0070】
そして、変形例3では、かかる表面31aに順に形成される第2ニッケル層32、パラジウム層41および金層42の表面32a、41a、42aを粗面にすることができることから、リードフレーム1の表面1aを粗面にすることができる。
【0071】
これにより、変形例3では、いわゆるアンカー効果によって、リードフレーム1と封止樹脂103(
図2参照)との密着性を向上させることができる。すなわち、変形例3によれば、封止樹脂103との密着性に優れたリードフレーム1を実現することができるとともに、ニッケル層3が、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層32を含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を得ることができる。
【0072】
また、変形例3では、ニッケル層3が、粗面化された表面31aを有する第1ニッケル層31と、リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層32を含むことにより、封止樹脂103との密着性に優れるとともに、Pd-PPFにおいて良好な特性を得ることができる。
【0073】
また、変形例3では、上述の実施形態と同様に、第2ニッケル層32が第1ニッケル層31よりもリードフレーム1の表面1a側に配置されることにより、表面1aでニッケルが酸化することを抑制することができる。したがって、変形例3によれば、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102(
図2参照)の接合特性とが高いレベルで両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0074】
また、変形例3では、ニッケル層3における第2ニッケル層32の厚みの比率が50(%)以下であってもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができる。
【0075】
また、変形例3では、第2ニッケル層32の厚みが、0.1(μm)~0.4(μm)の範囲であってもよい。第2ニッケル層32の厚みを0.1(μm)以上にすることにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0076】
また、第2ニッケル層32の厚みを0.4(μm)以下にすることにより、リードフレーム1の表面1aの凹凸形状を良好に維持することができることから、封止樹脂103との良好な密着性を維持することができる。
【0077】
<変形例4>
図4の(b)は、実施形態の変形例4に係るリードフレーム1の拡大断面図である。この変形例4は、ニッケル層3における第1ニッケル層31および第2ニッケル層32の配置が上述の変形例3と異なる。
【0078】
具体的には、
図4の(b)に示すように、基材2の表面2aに第2ニッケル層32が形成され、第2ニッケル層32の表面32aに粗面化された第1ニッケル層31が形成される。そして、粗面化された第1ニッケル層31の表面31aに、貴金属層4のパラジウム層41が形成される。
【0079】
そして、変形例4では、上述の変形例3と同様に、第1ニッケル層31の表面31aが粗面に形成されていることから、リードフレーム1の表面1aを粗面にすることができる。これにより、変形例4では、封止樹脂103との密着性に優れたリードフレーム1を実現することができる。
【0080】
また、変形例4では、第1ニッケル層31が第2ニッケル層32よりもリードフレーム1の表面1a側に配置されることにより、粗面である第1ニッケル層31の表面31aをリードフレーム1の表面1aに近づけることができる。
【0081】
そのため、変形例4では、リードフレーム1の表面1aを、第1ニッケル層31の表面31aに形成される凹凸形状に近い(すなわち、粗さの大きい)凹凸形状にすることができる。したがって、変形例4によれば、封止樹脂103との密着性がさらに優れたリードフレーム1を実現することができるとともに、ニッケル層3が、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層32を含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を得ることができる。
【0082】
また、変形例4では、ニッケル層3が、粗面化された表面31aを有する第1ニッケル層31と、リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層32を含むことにより、封止樹脂103との密着性に優れるとともに、Pd-PPFにおいて良好な特性を得ることができる。
【0083】
また、変形例4では、第2ニッケル層32が、0.01(wt%)~0.5(wt%)のリンを含有してもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができるとともに、ニッケル層3の外観を良好に維持することができる。
【0084】
また、変形例4では、ニッケル層3における第2ニッケル層32の厚みの比率が50(%)以下であってもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができる。
【0085】
また、変形例4では、第2ニッケル層32の厚みが、0.1(μm)以上であってもよい。これにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0086】
<変形例5>
図4の(c)は、実施形態の変形例5に係るリードフレーム1の拡大断面図である。この変形例2は、ニッケル層3の構成が上述の変形例3および変形例4と異なる。具体的には、
図4の(c)に示すように、基材2の表面2aに第2ニッケル層32Aが形成され、第2ニッケル層32Aの表面32Aaに粗面化された第1ニッケル層31が形成される。
【0087】
さらに、粗面化された第1ニッケル層31の表面31aに第2ニッケル層32Bが形成され、第2ニッケル層32Bの表面32Baに貴金属層4のパラジウム層41が形成される。
【0088】
そして、変形例5では、第1ニッケル層31の表面31aが粗面に形成されていることから、リードフレーム1の表面1aを粗面にすることができる。これにより、変形例5では、上述の変形例3と同様に、封止樹脂103との密着性に優れたリードフレーム1を実現することができるとともに、ニッケル層3が、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層32A、32Bを含むことにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を得ることができる。
【0089】
また、変形例5では、ニッケル層3が、粗面化された表面31aを有する第1ニッケル層31と、リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層32A、32Bを含むことにより、封止樹脂103との密着性に優れるとともに、Pd-PPFにおいて良好な特性を得ることができる。
【0090】
また、変形例5では、第2ニッケル層32Aが、0.01(wt%)~0.5(wt%)のリンを含有してもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができるとともに、ニッケル層3の外観を良好に維持することができる。
【0091】
また、変形例5では、上述の実施形態と同様に、第2ニッケル層32Bが第1ニッケル層31よりもリードフレーム1の表面1a側に配置されることにより、表面1aでニッケルが酸化することを抑制することができる。したがって、変形例5によれば、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102(
図2参照)の接合特性とが高いレベルで両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0092】
また、変形例5では、ニッケル層3における第2ニッケル層32A、32Bのトータルの厚みの比率が50(%)以下であってもよい。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができる。
【0093】
また、変形例5では、第2ニッケル層32A、32Bのトータルの厚みが、0.1(μm)以上であってもよい。これにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0094】
また、変形例5では、第2ニッケル層32Aの厚みが、0.1(μm)以上であってもよい。これにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0095】
また、変形例5では、第2ニッケル層32Bの厚みが、0.1(μm)~0.4(μm)の範囲であってもよい。第2ニッケル層32Bの厚みを0.1(μm)以上にすることにより、リードフレーム1の表面1aまで銅が拡散することをさらに抑制することができることから、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0096】
また、第2ニッケル層32Bの厚みを0.4(μm)以下にすることにより、リードフレーム1の表面1aの凹凸形状を良好に維持することができることから、封止樹脂103との良好な密着性を維持することができる。
【実施例0097】
以下、実施例および参考例を参照しながら本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0098】
<評価1>
[実施例1]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。
【0099】
この第1ニッケル層は、ワット浴(硫酸Ni:240(g/L)、塩化Ni:45(g/L)、ホウ酸濃度:35(g/L)、電流密度5(A/dm2)、浴温:50(℃)、pH=3.5、アノード:Ni板)を用いて形成した。なお、本開示では、以下の実施例1~48、参考例1~12および比較例1~14においても、第1ニッケル層は同様の条件で形成した。
【0100】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。
【0101】
この第2ニッケル層は、ワット浴(硫酸Ni:240(g/L)、塩化Ni:45(g/L)、ホウ酸濃度:35(g/L)、P濃度:20(mg/L)、電流密度5(A/dm2)、浴温:50(℃)、pH=3.5、アノード:Ni板)を用いて形成した。なお、本開示では、以下の実施例1~48および参考例1~12においても、第2ニッケル層はP濃度を除いて同様の条件で形成した。
【0102】
また、この第2ニッケル層に含まれるリンの濃度は、以下の手法で測定した。まず、試料表面のニッケル箔を約80(mg)量り取り、かかるニッケル箔を61(%)硝酸(13(mol/L))10(mL)に溶解させ、100(mL)メスフラスコを用いて全量を100(mL)に定容する。
【0103】
次に、上記にて調製したリン濃度測定用試料溶液5(mL)に61(%)硝酸10(mL)を加え、100(mL)メスフラスコを用いて全量を100(mL)に定容する。
【0104】
次に、上記にて調製したリン濃度測定用試料溶液に対して、市販のICP発光分析装置(株式会社堀場製作所製、製品名ULTIMA2)を用いて、リンの濃度を測定した。なお、本開示では、以下の実施例1~48および参考例1~12においても、第2ニッケル層に含まれるリンの濃度は同様の条件で測定した。
【0105】
実施例1のリードフレームの製造工程の説明に戻る。第2ニッケル層の形成処理につづいて、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。
【0106】
このパラジウム層は、Pd濃度:1.6(g/L)、電流密度1.0(A/dm2)、浴温:50(℃)、pH=6.7、アノード:酸化イリジウム、の条件で形成した。なお、本開示では、以下の実施例1~48、参考例1~12および比較例1~14においても、パラジウム層は同様の条件で形成した。
【0107】
次に、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例1のリードフレームを得た。
【0108】
この金層は、Au濃度:0.8(g/L)、電流密度3(A/dm2)、浴温:50(℃)、pH=6.4、アノード:酸化イリジウム、の条件で形成した。なお、本開示では、以下の実施例1~48、参考例1~12および比較例1~14においても、金層は同様の条件で形成した。
【0109】
[実施例2~4]
上述の実施例1と同様な方法を用いて、実施例2~4のリードフレームを得た。なお、実施例2~4では、第1ニッケル層および第2ニッケル層の膜厚が、表1に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0110】
[実施例5]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。
【0111】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例5のリードフレームを得た。
【0112】
[実施例6~8]
上述の実施例5と同様な方法を用いて、実施例6~8のリードフレームを得た。なお、実施例6~8では、第2ニッケル層および第1ニッケル層の膜厚が、表1に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0113】
[比較例1]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.2(μm)の厚みで形成した。
【0114】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、比較例1のリードフレームを得た。
【0115】
[比較例2~4]
上述の比較例1と同様な方法を用いて、比較例2~4のリードフレームを得た。なお、比較例2~4では、第1ニッケル層の膜厚が、表1に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0116】
[比較例5]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、第2ニッケル層よりもリンを高い比率(本開示では6.7(wt%)))で含有するニッケルリン(NiP)層を0.2(μm)の厚みで形成した。
【0117】
このニッケルリン層は、ワット浴(硫酸Ni:150(g/L)、塩化Ni:150(g/L)、キザイ株式会社製ナイホロイプロセス:200(mL/L)、電流密度7.5(A/dm2)、浴温:60(℃)、pH=0.3、アノード:Ni板)を用いて形成した。
【0118】
また、このニッケルリン層に含まれるリンの濃度は、市販の蛍光X線式測定装置(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製、製品名XDV-μ)を用いて測定した。
【0119】
次に、電解めっき処理によって、ニッケルリン層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、比較例5のリードフレームを得た。
【0120】
[比較例6~8]
上述の比較例5と同様な方法を用いて、比較例6~8のリードフレームを得た。なお、比較例6~8では、ニッケルリン層の膜厚が、表1に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0121】
つづいて、上記にて得られた実施例4、8および比較例4、8のリードフレームに対して、市販の走査電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクフィールディング製、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800)を用いて、表面近傍の断面形態を評価した。
【0122】
図5~
図8は、実施例4、8および比較例4、8に係るリードフレームの断面形態のSEM写真を示す図である。
【0123】
図5および
図6に示すように、本開示の第2ニッケル層は、比較的結晶粒が大きい柱状結晶構造を有していることがわかる。また、
図5および
図6に示した実施例4、8と、
図7に示した比較例4との比較により、本開示の第2ニッケル層は、リンを含有しない第1ニッケル層と同様の結晶構造(比較的結晶粒が大きい柱状結晶構造)を有していることがわかる。
【0124】
また、
図5および
図6に示した実施例4、8と、
図8に示した比較例8との比較により、本開示の第2ニッケル層は、リンをより多く含有するニッケルリン層とは全く異なる結晶構造(ニッケルリン層は結晶粒が小さい微結晶構造)を有していることがわかる。
【0125】
つづいて、上記にて得られた実施例1~8および比較例1~8のリードフレームに対して、市販のソルダ-チェッカー(株式会社レスカ製、製品名SAT-S100)を用いて、はんだの濡れ性を評価した。具体的には、以下に記載の測定条件において、メニスコグラフ法によるゼロクロスタイム(ZCT)の評価を行った。
・浸漬速度:5(mm/s)
・浸漬深さ:1(mm)
・フラックス:ロジンフラックス(R-type)
・はんだ:Sn-37Pb(230℃)
・サンプル加熱装置:アズワン株式会社製ホットプレート 製品名HHP-411
・サンプル加熱条件:400(℃)、30(秒)
【0126】
このゼロクロスタイムが短いほど、リードフレームに対するはんだの濡れ性が良好である。また、本開示において、ゼロクロスタイムが「NG」とは、ゼロクロスタイムが10秒以上であることを意味する。
【0127】
ここで、実施例1~8および比較例1~8について、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚、第2ニッケル層の膜厚およびニッケルリン層の膜厚と、ゼロクロスタイムの測定結果とを表1に示す。
【0128】
【0129】
実施例1~8のリードフレームは、ゼロクロスタイムがすべて1(秒)以内であることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.1(wt%)含有し、膜厚が0.1(μm)以上の第2ニッケル層をニッケル層に含めることにより、はんだの濡れ性に優れたリードフレームを実現することができる。
【0130】
また、実施例1~8と比較例1~4との比較により、リンを含有しない第1ニッケル層と、リンを含有する第2ニッケル層とでニッケル層を構成することによって、はんだの濡れ性が改善していることがわかる。
【0131】
また、実施例1~8と比較例5~8との比較により、微結晶構造であるニッケルリン層ではなく、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層を用いることによって、はんだの濡れ性が改善していることがわかる。
【0132】
<評価2>
[実施例9]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。
【0133】
次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例9のリードフレームを得た。
【0134】
[実施例10~12および参考例1、2]
上述の実施例9と同様な方法を用いて、実施例10~12および参考例1、2のリードフレームを得た。なお、実施例10~12および参考例1、2では、第1ニッケル層および第2ニッケル層の膜厚が、表2に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0135】
[実施例13]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。
【0136】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例13のリードフレームを得た。
【0137】
[実施例14~16および参考例3、4]
上述の実施例13と同様な方法を用いて、実施例14~16および参考例3、4のリードフレームを得た。なお、実施例14~16および参考例3、4では、第2ニッケル層および第1ニッケル層の膜厚が、表2に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0138】
[比較例9]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.05(μm)の厚みで形成した。
【0139】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、比較例9のリードフレームを得た。
【0140】
[比較例10~14]
上述の比較例9と同様な方法を用いて、比較例10~14のリードフレームを得た。なお、比較例10~14では、第1ニッケル層の膜厚が、表2に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0141】
つづいて、上記にて得られた実施例9~16、参考例1~4および比較例9~14のリードフレームに対して、上述の評価1と同様の手法ではんだの濡れ性(メニスコグラフ法によるゼロクロスタイム)を評価した。
【0142】
ここで、実施例9~16、参考例1~4および比較例9~14について、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚および第2ニッケル層の膜厚と、ゼロクロスタイムの測定結果とを表2に示す。
【0143】
【0144】
実施例9~16のリードフレームは、ゼロクロスタイムがすべて1(秒)以内であることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.1(wt%)含有し、膜厚が0.1(μm)以上の第2ニッケル層をニッケル層に含めることにより、はんだの濡れ性に優れたリードフレームを実現することができる。
【0145】
<評価3>
[実施例17]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を1.0(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、リンを0.01(wt%)含有する第2ニッケル層を1.0(μm)の厚みで形成した。
【0146】
次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例17のリードフレームを得た。
【0147】
[実施例18~23および参考例5]
上述の実施例17と同様な方法を用いて、実施例18~23および参考例5のリードフレームを得た。なお、実施例18~23および参考例5では、第2ニッケル層におけるリンの含有率が、表3に記載の含有率となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0148】
つづいて、上記にて得られた実施例17~23および参考例5のリードフレームに対して、目視によって外観が良好か否かを評価した。外観上、リードフレームの色調にムラがあるものを外観不良とした。
【0149】
ここで、実施例17~23および参考例5について、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚および第2ニッケル層の膜厚と、外観の評価結果とを表3に示す。
【0150】
【0151】
実施例17~23のリードフレームは、外観がすべて良好であることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.01(wt%)~0.5(wt%)の範囲で含有する第2ニッケル層を第1ニッケル層よりもリードフレームの表面側に配置することにより、外観が良好なリードフレームを実現することができる。
【0152】
<評価4>
[実施例24]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを0.01(wt%)含有する第2ニッケル層を1.0(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を1.0(μm)の厚みで形成した。
【0153】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例24のリードフレームを得た。
【0154】
[実施例25~30および参考例6]
上述の実施例24と同様な方法を用いて、実施例25~30および参考例6のリードフレームを得た。なお、実施例25~30および参考例6では、第2ニッケル層におけるリンの含有率が、表4に記載の含有率となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0155】
つづいて、上記にて得られた実施例24~30および参考例6のリードフレームに対して、目視によって外観が良好か否かを評価した。外観上、リードフレームの色調にムラがあるものを外観不良とした。
【0156】
ここで、実施例24~30および参考例6について、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚および第2ニッケル層の膜厚と、外観の評価結果とを表4に示す。
【0157】
【0158】
実施例24~30のリードフレームは、外観がすべて良好であることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.01(wt%)~0.5(wt%)の範囲で含有する第2ニッケル層を第1ニッケル層よりも基材の表面側に配置することにより、外観が良好なリードフレームを実現することができる。
【0159】
<評価5>
[実施例31]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。
【0160】
次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.005(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例31のリードフレームを得た。
【0161】
[実施例32~36および参考例7~9]
上述の実施例31と同様な方法を用いて、実施例32~36および参考例7~9のリードフレームを得た。なお、実施例32~36および参考例7~9では、第1ニッケル層、第2ニッケル層およびパラジウム層の膜厚が、表5に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0162】
つづいて、上記にて得られた実施例31~36および参考例7~9のリードフレームに対して、上述の評価1と同様の手法ではんだの濡れ性(メニスコグラフ法によるゼロクロスタイム)を評価した。
【0163】
ここで、実施例31~36および参考例7~9について、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚、第2ニッケル層の膜厚およびパラジウム層の膜厚と、ゼロクロスタイムの測定結果とを表5に示す。
【0164】
【0165】
実施例31~36のリードフレームは、ゼロクロスタイムがすべて1(秒)以内であることがわかる。さらに、パラジウム層を薄くした場合でも、はんだの濡れ性を良好に維持できることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.1(wt%)含有し、膜厚が0.1(μm)以上の第2ニッケル層を第1ニッケル層よりもリードフレームの表面側に配置することにより、はんだの濡れ性に優れたリードフレームを実現することができる。
【0166】
<評価6>
[実施例37]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。
【0167】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.005(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例37のリードフレームを得た。
【0168】
[実施例38~42および参考例10~12]
上述の実施例37と同様な方法を用いて、実施例38~42および参考例10~12のリードフレームを得た。なお、実施例38~42および参考例10~12では、第2ニッケル層、第1ニッケル層およびパラジウム層の膜厚が、表6に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0169】
つづいて、上記にて得られた実施例37~42および参考例10~12のリードフレームに対して、上述の評価1と同様の手法ではんだの濡れ性(メニスコグラフ法によるゼロクロスタイム)を評価した。
【0170】
ここで、実施例37~42および参考例10~12について、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚、第2ニッケル層の膜厚およびパラジウム層の膜厚と、ゼロクロスタイムの測定結果とを表6に示す。
【0171】
【0172】
実施例37~42のリードフレームは、ゼロクロスタイムがすべて1(秒)以内であることがわかる。さらに、パラジウム層を薄くした場合でも、はんだの濡れ性を良好に維持できることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.1(wt%)含有し、膜厚が0.1(μm)以上の第2ニッケル層を第1ニッケル層よりも基材の表面側に配置することにより、はんだの濡れ性に優れたリードフレームを実現することができる。
【0173】
また、実施例37、38と上述の評価5に示した実施例31、32との比較により、第2ニッケル層を第1ニッケル層よりもリードフレームの表面側に配置することによって、はんだの濡れ性をさらに良好にすることができることがわかる。
【0174】
<評価7>
[実施例43]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.2(μm)の厚みで形成した。
【0175】
次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例43のリードフレームを得た。
【0176】
[実施例44、45]
上述の実施例43と同様な方法を用いて、実施例44、45のリードフレームを得た。なお、実施例44、45では、第1ニッケル層および第2ニッケル層の膜厚が、表7に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0177】
つづいて、上記にて得られた実施例43~45のリードフレームに対して、上述の評価1と同様の手法ではんだの濡れ性(メニスコグラフ法によるゼロクロスタイム)を評価した。
【0178】
ここで、実施例43~45について、第2ニッケル層の膜厚比率、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚、第2ニッケル層の膜厚およびパラジウム層の膜厚と、ゼロクロスタイムの測定結果とを表7に示す。
【0179】
【0180】
実施例43~45のリードフレームは、ゼロクロスタイムがすべて1(秒)以内であることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.1(wt%)含有し、膜厚比率が33(%)~67(%)の範囲の第2ニッケル層を第1ニッケル層よりもリードフレームの表面側に配置することにより、はんだの濡れ性に優れたリードフレームを実現することができる。
【0181】
<評価8>
[実施例46]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.1(μm)の厚みで形成した。次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.2(μm)の厚みで形成した。
【0182】
次に、電解めっき処理によって、第1ニッケル層の表面に、パラジウム層を0.020(μm)の厚みで形成した。そして、電解めっき処理によって、パラジウム層の表面に、金層を0.004(μm)~0.006(μm)の範囲の厚みで形成した。これにより、実施例46のリードフレームを得た。
【0183】
[実施例47、48]
上述の実施例46と同様な方法を用いて、実施例47、48のリードフレームを得た。なお、実施例47、48では、第2ニッケル層および第1ニッケル層の膜厚が、表8に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0184】
つづいて、上記にて得られた実施例46~48のリードフレームに対して、上述の評価1と同様の手法ではんだの濡れ性(メニスコグラフ法によるゼロクロスタイム)を評価した。
【0185】
ここで、実施例46~48について、第2ニッケル層の膜厚比率、ニッケル層の全膜厚、第1ニッケル層の膜厚、第2ニッケル層の膜厚およびパラジウム層の膜厚と、ゼロクロスタイムの測定結果とを表8に示す。
【0186】
【0187】
実施例46~48のリードフレームは、ゼロクロスタイムがすべて1(秒)以内であることがわかる。したがって、実施形態によれば、リンを0.1(wt%)含有し、膜厚比率が33(%)~67(%)の範囲の第2ニッケル層を第1ニッケル層よりも基材の表面側に配置することにより、はんだの濡れ性に優れたリードフレームを実現することができる。
【0188】
<評価9>
[実施例49]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.7(μm)の厚みで形成した。この第1ニッケル層は、スルファミン酸浴(Ni濃度:145(g/L)、Cl濃度:100(g/L)、ホウ酸濃度:30(g/L)、電流密度6(A/dm2)、浴温:45(℃)、pH=3.7、アノード:Ni板)を用いて形成した。なお、かかる第1ニッケル層は、表面が粗面である。
【0189】
次に、電解めっき処理によって、粗面化された第1ニッケル層の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.05(μm)の厚みで形成した。これにより、実施例49のリードフレームを得た。
【0190】
[実施例50~53]
上述の実施例49と同様な方法を用いて、実施例50~53のリードフレームを得た。なお、実施例50~53では、第1ニッケル層の膜厚及び第2ニッケル層の膜厚が、表9に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0191】
[比較例15]
実施例49と同様な方法を用いて、リンを含有しない第1ニッケル層を0.7(μm)の厚みで形成した。これにより、比較例15のリードフレームを得た。
【0192】
[比較例16]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.8(μm)の厚みで形成した。この第1ニッケル層は、ワット浴(硫酸Ni:240(g/L)、塩化Ni:45(g/L)、ホウ酸濃度:35(g/L)、電流密度5(A/dm2)、浴温:50(℃)、pH=3.5、アノード:Ni板)を用いて形成した。なお、かかる第1ニッケル層は、表面が平滑面である。これにより、比較例16のリードフレームを得た。
【0193】
つづいて、上記にて得られた実施例49~53および比較例15、16のリードフレームに対して、市販の試験機(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー株式会社製、製品名DAGE4000plus)を用いて、樹脂の密着性を評価した。具体的には、以下に記載の測定条件において、カップシアテストによるせん断力の評価を行った。
・モールド樹脂:EME-G631H
・成形温度:175(℃)
・アフターキュア:175(℃)、4(時間)
【0194】
このカップシアテストによるせん断力の値が大きいほど、リードフレームに対する樹脂の密着性が良好である。
【0195】
次に、実施例49~53及び比較例15のリードフレームの表面に、パラジウム層と金層を形成した。これらのリードフレームに対して、メニスコグラフ法によるゼロクロスタイムが1秒以下を達成するとなるパラジウム層の最小の膜厚を評価した。なお、金層の厚みは、0.004(μm)~0.006(μm)の範囲で形成した。
【0196】
ここで、実施例49~53及び比較例15、16について、第1ニッケル層および第2ニッケル層の膜厚と、ゼロクロスタイムが1秒以下を達成するパラジウム層の最小膜厚、樹脂密着力評価、リードフレームの表面形態及び断面形態のSEM写真とを表9に示す。
【0197】
【0198】
実施例49~53と比較例15との比較により、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を第1ニッケル層よりもリードフレームの表面側に配置することによって、パラジウム層を薄くした場合でも、はんだの濡れ性を良好に維持できることがわかる。
【0199】
また、実施例49~53と比較例16との比較により、第1ニッケル層の表面を粗面にすることによって、リードフレームに対する樹脂の密着性を向上させることができることがわかる。
【0200】
<評価10>
[実施例54]
最初に、銅を主成分とするリードフレームの基材を準備した。次に、基材の脱脂及び酸洗浄を行った後、電解めっき処理によって、基材の表面に、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を0.05(μm)の厚みで形成した。
【0201】
次に、電解めっき処理によって、第2ニッケル層の表面に、リンを含有しない第1ニッケル層を0.7(μm)の厚みで形成した。この第1ニッケル層は、スルファミン酸浴(Ni濃度:145(g/L)、Cl濃度:100(g/L)、ホウ酸濃度:30(g/L)、電流密度6(A/dm2)、浴温:45(℃)、pH=3.7、アノード:Ni板)を用いて形成した。なお、かかる第1ニッケル層は、表面が粗面である。これにより、実施例54のリードフレームを得た。
【0202】
[実施例55~58]
上述の実施例54と同様な方法を用いて、実施例55~58のリードフレームを得た。なお、実施例55~58では、第2ニッケル層の膜厚及び第1ニッケル層の膜厚が、表10に記載の膜厚となるように電解めっき処理の条件を調整した。
【0203】
つづいて、上記にて得られた実施例54~58のリードフレームに対して、上述の評価9と同様の手法で樹脂の密着性(カップシアテストによるせん断力)を評価した。
【0204】
次に、実施例54~58のリードフレームの表面に、パラジウム層と金層を形成した。これらのリードフレームに対して、メニスコグラフ法によるゼロクロスタイムが1秒以下を達成するとなるパラジウム層の最小の膜厚を評価した。なお、金層の厚みは、0.004(μm)~0.006(μm)の範囲で形成した。
【0205】
実施例54~58及び上述した比較例15、16について、第1ニッケル層及び第2ニッケル層の膜厚と、ゼロクロスタイムが1秒以下を達成するパラジウム層の最小膜厚、樹脂密着力評価、リードフレームの表面形態及び断面形態のSEM写真とを表10に示す。
【0206】
【0207】
実施例54~58と比較例15との比較により、リンを0.1(wt%)含有する第2ニッケル層を第1ニッケル層よりも基材の表面側に配置することによって、パラジウム層を薄くした場合でも、はんだの濡れ性を良好に維持できることがわかる。
【0208】
また、実施例54~58と比較例16との比較により、第1ニッケル層の表面を粗面にすることによって、リードフレームに対する樹脂の密着性を向上させることができることがわかる。
【0209】
また、実施例54~58と上述の評価9に示した実施例49~53との比較により、粗面化された第1ニッケル層を第2ニッケル層よりもリードフレームの表面側に配置することによって、樹脂の密着性をさらに向上させることができることがわかる。
【0210】
また、実施例54~58と実施例49~53との比較により、第2ニッケル層を粗面化された第1ニッケル層よりもリードフレームの表面側に配置することによって、パラジウム層をさらに薄くした場合でも、はんだの濡れ性を良好に維持できることがわかる。
【0211】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、銅を主成分とするリードフレームの基材の脱脂、酸洗浄を行った後、化学研磨や電解研磨等の表面処理を行ってもよい。また、リードフレーム基材とニッケル層との間に、別の金属層があってもよい。
【0212】
以上のように、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)は、半導体装置の製造に用いられる金属部品において、基材2と、ニッケル層3と、貴金属層4と、を備える。基材2は、導電性を有する。ニッケル層3は、基材2の表面2aに形成され、ニッケルを主成分とする。貴金属層4は、ニッケル層3の表面3aに形成される。また、ニッケル層3は、リンを含有しない第1ニッケル層31と、0.01(wt%)~1(wt%)のリンを含有する第2ニッケル層32と、を有する。これにより、半導体装置100の製造に用いられる金属部品において、良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0213】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、第2ニッケル層32は、0.01(wt%)~0.5(wt%)のリンを含有する。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができるとともに、ニッケル層3の外観を良好に維持することができる。
【0214】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)は、半導体装置の製造に用いられる金属部品において、基材2と、ニッケル層3と、貴金属層4と、を備える。基材2は、導電性を有する。ニッケル層3は、基材2の表面2aに形成され、ニッケルを主成分とする。貴金属層4は、ニッケル層3の表面3aに形成される。また、ニッケル層3は、リンを含有しない第1ニッケル層31と、リンを含有し、柱状結晶構造を有する第2ニッケル層32と、を有する。これにより、半導体装置100の製造に用いられる金属部品において、良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0215】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、第1ニッケル層31の表面31aは、粗面である。これにより、封止樹脂103との密着性に優れたリードフレーム1を実現することができる。
【0216】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、第1ニッケル層31は、基材2の表面2aに形成され、第2ニッケル層32は、第1ニッケル層31の表面31aに形成される。これにより、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102の接合特性とが高いレベルで両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0217】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、第2ニッケル層32は、基材2の表面2aに形成され、第1ニッケル層31は、第2ニッケル層32の表面32aに形成される。これにより、Pd-PPFにおいて良好な特性を維持しつつニッケル層3の厚みを減らすことができる。
【0218】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、別の第2ニッケル層(第2ニッケル層32B)は、第1ニッケル層31の表面31aに形成される。これにより、はんだの濡れ性とボンディングワイヤ102の接合特性とが高いレベルで両立したリードフレーム1を実現することができる。
【0219】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、第2ニッケル層32の厚みは、0.1(μm)以上である。これにより、リードフレーム1の表面1aにおいてはんだの濡れ性を良好に維持することができる。
【0220】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、ニッケル層3における第2ニッケル層32の厚みの比率が50(%)以下である。これにより、ニッケル層3全体の製造コストをさらに低減することができる。
【0221】
また、実施形態に係る金属部品(リードフレーム1)において、貴金属層4は少なくとも1層からなり、貴金属層4はパラジウム、金、銀のうちすくなくとも1つからなる。これにより、リードフレーム1の表面1aにおいて酸化物が形成されることを抑制することができる。
【0222】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。