(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134725
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】自律飛行体及び飛行制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/10 20060101AFI20220908BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20220908BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220908BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20220908BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C13/18 Z
B64C39/02
B64C27/04
B64D47/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034076
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】青山 美次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一徳
(72)【発明者】
【氏名】三井 弘宜
(72)【発明者】
【氏名】本間 暁
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301AA10
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG16
5H301LL01
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】障害物の存在する環境下において自律飛行体による自律飛行を可能とする。
【解決手段】ドローン1は、飛行方向に対してなす角度が右90度又は左90度となる第1方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第1距離を測定し、第1方向から飛行方向に向けて0度より大きく90度より小さい角度をなす第2方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第2距離を測定する測域制御部と、第1距離と第2距離とに基づいてドローン1の新たな飛行方向を決定する飛行指令部と、飛行指令部により決定された新たな飛行方向に基づいてドローン1の飛行を制御する飛行制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律飛行体であって、
前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度又は左90度となる第1方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第1距離を測定し、前記第1方向から前記飛行方向に向けて0度より大きく90度より小さい角度をなす第2方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第2距離を測定する測距手段と、
前記第1距離と前記第2距離とに基づいて前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定する飛行方向決定手段と、
前記飛行方向決定手段により決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する飛行制御手段と、
を備える自律飛行体。
【請求項2】
前記飛行方向決定手段は、前記第1距離が第1設定距離以下かつ前記第2距離が第2設定距離以下であるとき、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が左90度であるときには前記自律飛行体が右方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定し、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度であるときには前記自律飛行体が左方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
請求項1に記載の自律飛行体。
【請求項3】
前記飛行方向決定手段は、前記第1距離が第3設定距離以上かつ前記第2距離が第4設定距離以上であるとき、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が左90度であるときには前記自律飛行体が左方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定し、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度であるときには前記自律飛行体が右方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
請求項1又は2に記載の自律飛行体。
【請求項4】
前記自律飛行体の新たな飛行速度を決定する飛行速度決定手段をさらに備え、
前記飛行制御手段は、前記飛行速度決定手段により決定された前記新たな飛行速度に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御し、
前記飛行速度決定手段は、前記第1方向に存在する障害物を検知でき、かつ前記第2方向に存在する障害物を検知できなかったとき、前記第2方向に存在する障害物を検知できていたときよりも前記自律飛行体の飛行速度を下げるように新たな飛行速度を決定し、
前記飛行方向決定手段は、前記第1方向に存在する障害物を検知できず、かつ前記第2方向に存在する障害物を検知できなかったとき、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が左90度であるときには前記自律飛行体が左方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定し、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度であるときには前記自律飛行体が右方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の自律飛行体。
【請求項5】
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が障害物の存在しない飛行可能空間であるか否かを判定する飛行可能判定手段をさらに備え、
前記飛行方向決定手段は、前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が前記飛行可能空間でないと前記飛行可能判定手段が判断したとき、前記自律飛行体が旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の自律飛行体。
【請求項6】
前記測距手段はさらに、前記第1方向と真逆の方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第3距離を測定し、
前記飛行方向決定手段は、前記第1距離と前記第3距離とに基づいて前記新たな飛行方向を決定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の自律飛行体。
【請求項7】
自律飛行体であって、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が障害物の存在しない飛行可能空間であるか否かを判定する飛行可能判定手段と、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が前記飛行可能空間でないと前記飛行可能判定手段が判断したとき、前記自律飛行体が旋回するように前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定する飛行方向決定手段と、
前記飛行方向決定手段により決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する飛行制御手段と、
を備える自律飛行体。
【請求項8】
自律飛行体の飛行を制御する飛行制御方法であって、
前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度又は左90度となる第1方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第1距離を測定し、
前記第1方向から前記飛行方向に向けて0度より大きく90度より小さい角度をなす第2方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第2距離を測定し、
前記第1距離と前記第2距離とに基づいて前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定し、
決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する、
飛行制御方法。
【請求項9】
自律飛行体の飛行を制御する飛行制御方法であって、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が障害物の存在しない飛行可能空間であるか否かを判定し、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が前記飛行可能空間でないとき、前記自律飛行体が旋回するように前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定し、
決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する、
飛行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律飛行体及び飛行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自律飛行を行うドローン等の自律飛行体は、測域センサ、電子コンパス、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)受信器などの各種センサが検出した情報に基づく飛行制御をすることにより、自律飛行を実現している。特に、電子コンパスが地磁気を検出して自律飛行体自身の機首方向を特定し、GNSS受信機が測位衛星からの電波信号を受信して自律飛行体自身の地球上における位置を特定することにより、精度の高い自律飛行が実現される。
【0003】
例えば特許文献1には、電子コンパスとGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信器と備え、自律飛行が可能なマルチコプターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の自律飛行体は、地下トンネルなど、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、電子コンパスが正常に地磁気を検出できない環境下において、正常に自律飛行ができないという問題がある。
【0006】
例えば、送電線を収容する地下トンネルに撮像装置を搭載した自律飛行体を送り込んで、人員を輸送することなく送電線の状態を確認したい、といった要求がある。しかし、地下トンネルでは測位衛星からの電波を受信できない可能性が高く、かつ、送電線から生じる磁気により電子コンパスも正常に地磁気を検出できない可能性が高い。そのため、このような地下トンネルにおいては、上記の自律飛行体は正常に自律飛行できない可能性が高い。
【0007】
このため、送電線を収容する地下トンネルのような環境下での自律飛行を実現するには、測位衛星、地磁気に頼らずに自律飛行を行う技術が必要となる。一方、地下トンネルのような環境下では、壁面等の障害物が存在するため、障害物への衝突を回避するための技術も必要となる。したがって、障害物への衝突を回避するための技術が必要とされている。
【0008】
本開示の目的は、上記の事情に鑑み、障害物の存在する環境下において自律飛行を可能とする自律飛行体等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示の第1の観点に係る自律飛行体は、
自律飛行体であって、
前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度又は左90度となる第1方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第1距離を測定し、前記第1方向から前記飛行方向に向けて0度より大きく90度より小さい角度をなす第2方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第2距離を測定する測距手段と、
前記第1距離と前記第2距離とに基づいて前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定する飛行方向決定手段と、
前記飛行方向決定手段により決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する飛行制御手段と、
を備える。
【0010】
前記飛行方向決定手段は、前記第1距離が第1設定距離以下かつ前記第2距離が第2設定距離以下であるとき、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が左90度であるときには前記自律飛行体が右方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定し、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度であるときには前記自律飛行体が左方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
ものであってもよい。
【0011】
前記飛行方向決定手段は、前記第1距離が第3設定距離以上かつ前記第2距離が第4設定距離以上であるとき、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が左90度であるときには前記自律飛行体が左方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定し、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度であるときには前記自律飛行体が右方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
ものであってもよい。
【0012】
前記自律飛行体の新たな飛行速度を決定する飛行速度決定手段をさらに備え、
前記飛行制御手段は、前記飛行速度決定手段により決定された前記新たな飛行速度に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御し、
前記飛行速度決定手段は、前記第1方向に存在する障害物を検知でき、かつ前記第2方向に存在する障害物を検知できなかったとき、前記第2方向に存在する障害物を検知できていたときよりも前記自律飛行体の飛行速度を下げるように新たな飛行速度を決定し、
前記飛行方向決定手段は、前記第1方向に存在する障害物を検知できず、かつ前記第2方向に存在する障害物を検知できなかったとき、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が左90度であるときには前記自律飛行体が左方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定し、前記第1方向が前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度であるときには前記自律飛行体が右方向に旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
ものであってもよい。
【0013】
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が障害物の存在しない飛行可能空間であるか否かを判定する飛行可能判定手段をさらに備え、
前記飛行方向決定手段は、前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が前記飛行可能空間でないと前記飛行可能判定手段が判断したとき、前記自律飛行体が旋回するように前記新たな飛行方向を決定する、
ものであってもよい。
【0014】
前記測距手段はさらに、前記第1方向と真逆の方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第3距離を測定し、
前記飛行方向決定手段は、前記第1距離と前記第3距離とに基づいて前記新たな飛行方向を決定する、
ものであってもよい。
【0015】
上記の目的を達成するため、本開示の第2の観点に係る自律飛行体は、
自律飛行体であって、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が障害物の存在しない飛行可能空間であるか否かを判定する飛行可能判定手段と、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が前記飛行可能空間でないと前記飛行可能判定手段が判断したとき、前記自律飛行体が旋回するように前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定する飛行方向決定手段と、
前記飛行方向決定手段により決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する飛行制御手段と、
を備える。
【0016】
上記の目的を達成するため、本開示の第3の観点に係る飛行制御方法は、
自律飛行体の飛行を制御する飛行制御方法であって、
前記自律飛行体の飛行方向に対してなす角度が右90度又は左90度となる第1方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第1距離を測定し、
前記第1方向から前記飛行方向に向けて0度より大きく90度より小さい角度をなす第2方向に存在する障害物から前記自律飛行体までの距離である第2距離を測定し、
前記第1距離と前記第2距離とに基づいて前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定し、
決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する。
【0017】
上記の目的を達成するため、本開示の第4の観点に係る飛行制御方法は、
自律飛行体の飛行を制御する飛行制御方法であって、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が障害物の存在しない飛行可能空間であるか否かを判定し、
前記自律飛行体から前方に向けた所定の空間が前記飛行可能空間でないとき、前記自律飛行体が旋回するように前記自律飛行体の新たな飛行方向を決定し、
決定された前記新たな飛行方向に基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、障害物の存在する環境下において自律飛行体による自律飛行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施の形態に係るドローンの構成を示す図
【
図2】本開示の実施の形態に係るドローンにおける飛行ルートの一例を示す図
【
図3】本開示の実施の形態に係るコンパニオンコンピュータの機能的構成を示す図
【
図4】本開示の実施の形態に係るドローンにおける第1方向、第2方向及び飛行方向の関係の一例を示す図
【
図5】本開示の実施の形態に係るドローンにおける飛行可能空間の一例を示す図
【
図6】本開示の実施の形態に係るドローンにおける、障害物までの距離と飛行制御との組み合わせのパターンを示す図
【
図7】
図6におけるパターン(1)及びパターン(2)の図例を示す図
【
図8】
図6におけるパターン(5)及びパターン(6)の図例を示す図
【
図9】本開示の実施の形態に係るフライトコントローラの機能的構成を示す図
【
図10】本開示の実施の形態に係るドローンによる飛行制御の動作の一例を示すフローチャート
【
図11】本開示の実施の形態に係るドローンが備えるコンパニオンコンピュータによる新たな飛行方向及び飛行速度の決定の動作の一例を示すフローチャート
【
図12】
図6における、本開示の実施の形態に係るドローンが備えるフライトコントローラによる飛行制御の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る自律飛行体をドローンに適用した実施の形態を説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0021】
(実施の形態)
図1を参照しながら、実施の形態に係るドローン1を説明する。ドローン1は、コンパニオンコンピュータ2とフライトコントローラ3と測域センサ4と駆動部7とを備える。コンパニオンコンピュータ2は、測域センサ4及びフライトコントローラ3に通信可能に接続されている。フライトコントローラ3は、コンパニオンコンピュータ2及び駆動部7に通信可能に接続されている。ドローン1は、本開示に係る自律飛行体の一例である。
【0022】
なお、ドローン1は、上記のほか、ジャイロセンサ、加速度センサ、気圧センサなどの各種センサを備えてもよい。
【0023】
ドローン1は、送電線を収容する地下トンネルのような、壁面が存在し、かつ測位衛星からの電波を正常に受信できず電子コンパスが正常に地磁気を検出できない環境下において自律飛行が可能な自律飛行体である。詳細は後述するが、ドローン1は、地下トンネル内の壁面を検出し、検出した壁面と、擬似的な磁束密度及び擬似的な測位情報とに基づいて自律飛行を行う。送電線を収容する地下トンネルでは、測位衛星から正常に電波を受信することも、地磁気を正常に検出することもできないことが想定されるので、ドローン1は、衛星測位及び地磁気検出に依らずに自律飛行を行う。
【0024】
また、ドローン1のユーザは、ドローン1にカメラを搭載することにより、ドローン1の飛行経路の近傍に存在する壁面を撮像することができる。例えばドローン1が、壁面に送電線が張られた地下トンネル内を飛行する場合、ドローン1に搭載されたカメラが壁面を撮像することができる。そして、ドローン1のユーザは、当該カメラにより撮像された壁面の撮像画像を確認することにより、壁面に張られた送電線を点検することができる。
【0025】
ドローン1は、例えば
図2の破線矢印に示すように、ドローン1の飛行方向から左90度となる方向についてドローン1から壁面Wまでの距離が概ね一定となるように飛行する。どのようにしてこのような移動が実現されるかについては後述する。ドローン1の飛行中はドローン1から壁面Wまでの距離が概ね一定となるため、例えば上記のようにドローン1にカメラを搭載して壁面Wを撮像するときに、安定して壁面Wを撮像することができる。ドローン1は、例えば壁面Wから2メートル程度の距離を保って飛行する。なお、
図2では、ドローン1の飛行方向から左90度となる方向についてドローン1から壁面Wまでの距離が概ね一定となるようにドローン1が飛行しているが、ドローン1の飛行方向から右90度となる方向についてドローン1から壁面Wまでの距離が概ね一定となるようにドローン1が飛行してもよい。なお、以下では、ドローン1は離陸時、着陸時を除き地平面に平行な平面上を移動するものとして説明する。また、以下では「ドローン1の飛行方向から左90度となる方向」を単に「左方向」ということがある。また、以下では、ドローン1を壁面Wから2メートル程度の距離を保って飛行させることが主目的であるものとして説明する。
【0026】
再び
図1を参照する。コンパニオンコンピュータ2は、例えばドローン1に内蔵可能な一般的なマイクロコントローラである。コンパニオンコンピュータ2は、バスB2を介して互いに接続された、プロセッサ201と、メモリ202と、インタフェース203と、二次記憶装置204と、を備える。
【0027】
プロセッサ201は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)である。プロセッサ201が、二次記憶装置204に記憶された動作プログラムをメモリ202に読み込んで実行することにより、後述する各機能部の機能が実現される。
【0028】
メモリ202は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成される主記憶装置である。メモリ202は、プロセッサ201が二次記憶装置204から読み込んだ動作プログラムを記憶する。また、メモリ202は、プロセッサ201が動作プログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。
【0029】
インタフェース203は、例えばGPIO(General-purpose input/output)、シリアルポート、USB(Universal Serial Bus)ポート、ネットワークインタフェースなどのI/O(input/output)インタフェースである。インタフェース203に測域センサ4及びフライトコントローラ3が接続されることにより、コンパニオンコンピュータ2は測域センサ4及びフライトコントローラ3に通信可能に接続される。
【0030】
二次記憶装置204は、例えばフラッシュメモリである。二次記憶装置204は、プロセッサ201が実行する動作プログラムを記憶する。
【0031】
フライトコントローラ3は、例えばマイクロコントローラにより構成されるフライトコントローラである。フライトコントローラ3として、例えば市販のフライトコントローラを採用することができる。フライトコントローラ3は、コンパニオンコンピュータ2と同様に、バスB3を介して互いに接続された、プロセッサ301と、メモリ302と、インタフェース303と、二次記憶装置304と、を備える。また、二次記憶装置304は、フライトコントローラ3の動作プログラムとして、ドライバプログラムP31と飛行プログラムP32とを備える。
【0032】
プロセッサ301は、例えばCPUである。プロセッサ301が、二次記憶装置304に記憶されたドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32をメモリ302に読み込んで実行することにより、後述する各機能部の機能が実現される。
【0033】
メモリ302は、例えば、RAMにより構成される主記憶装置である。メモリ302は、プロセッサ301が二次記憶装置304から読み込んだ動作プログラムを記憶する。また、メモリ302は、プロセッサ301がドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32を実行する際のワークメモリとして機能する。
【0034】
インタフェース303は、例えばGPIO、シリアルポート、USBポート、ネットワークインタフェースなどのI/Oインタフェースである。インタフェース303にコンパニオンコンピュータ2及び駆動部7が接続されることにより、フライトコントローラ3はコンパニオンコンピュータ2及び駆動部7に通信可能に接続される。
【0035】
二次記憶装置304は、例えばフラッシュメモリである。前述のとおり、二次記憶装置304は、プロセッサ301が実行する動作プログラムとしてドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32を記憶する。ドローン1の製造者は、ドライバプログラムP31を作成して二次記憶装置204に保存することができる。つまり、ドローン1の製造者は、自身がドライバプログラムP31を作成して保存することにより、後述する各機能部のうち一部の機能部の機能を実現できる。詳細は後述するが、コンパニオンコンピュータ2の各機能と、ドローン1の製造者が作成したドライバプログラムP31とにより、地下トンネルにおいてドローン1の自律飛行を実現できる。
【0036】
測域センサ4は、ドローン1の周囲の障害物を検出し、検出した障害物の相対位置(ドローン1の現在位置を基準とした距離及び方向)を示す情報をコンパニオンコンピュータ2に出力する。測域センサ4は、例えば水平方向の周囲360度にある障害物を検知可能なLiDAR(Light Detection and RangingもしくはLaser Imaging Detection and Ranging)である。
【0037】
駆動部7は、フライトコントローラ3による制御に基づいて揚力を発生させ、ドローン1を飛行させる。駆動部7は、例えばESC(Electric Speed Controller)とモータとプロペラとを備える。例えば、ドローン1が4つのプロペラを備えるマルチコプターであるとき、駆動部7はESCとモータとプロペラとの組を4組備える。
【0038】
次に、
図3を参照しながら、コンパニオンコンピュータ2のプロセッサ201が動作プログラムを実行したときにおける、コンパニオンコンピュータ2の機能的構成を説明する。コンパニオンコンピュータ2は、機能的構成として、地図作成部21と推定部22と機首方向出力部23と擬似測位部24と測域制御部26と飛行指令部25とを備える。
【0039】
地図作成部21は、測域センサ4が検出した障害物の相対位置に基づいて環境地図を作成する。地図作成部21は、後述の推定部22とともに、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を行う。地図作成部21は、例えば、初めに環境地図を作成する際には、任意の方向を暫定的に「北」と定めて環境地図を作成する。
【0040】
推定部22は、地図作成部21が作成した環境地図に基づいて、環境地図上におけるドローン1の位置、飛行方向及び機首方向を推定する。環境地図上におけるドローン1の位置は、例えば飛行開始時におけるドローン1の位置を原点としたときの相対座標にて表現される。環境地図上における飛行方向及び機首方向は、例えば環境地図上における位置の変化に基づいて推定される。
【0041】
機首方向出力部23は、推定部22が推定した環境地図上における機首方向を示す機首方向情報を、フライトコントローラ3に出力する。機首方向情報は、後述するフライトコントローラ3の擬似コンパス部31により処理されるため、
図3では機首方向出力部23から擬似コンパス部31に出力されるように図示している。
【0042】
擬似測位部24は、推定部22が推定した環境地図上におけるドローン1の位置を擬似的な緯度と経度と高度とにより表した擬似測位情報を求め、求めた擬似測位情報をフライトコントローラ3に出力する。フライトコントローラ3は、緯度、経度及び高度にて表された測位情報に基づいてドローン1の飛行制御を行うので、擬似測位部24はそれに合わせて、擬似的な測位情報を出力する。つまり、擬似測位部24は、擬似的な衛星測位モジュールとして機能する。擬似測位情報は、後述するフライトコントローラ3の出力部33により処理されるため、
図3では擬似測位部24から出力部33に出力されるように図示している。
【0043】
測域制御部26は、測域センサ4を制御して、ドローン1の飛行方向に対して左90度となる方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第1距離を測定する。測域制御部26は、測域センサ4を制御して、第1方向から飛行方向に向けて0度より大きく90度より小さい角度をなす第2方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第2距離を測定する。ここでいう飛行方向とは、推定部22にて推定されたドローン1の飛行方向である。また、測域制御部26は、測域センサ4を制御して、ドローン1から前方に向けた所定の空間が障害物の存在しない飛行可能空間であるか否かを判定する。測域制御部26は、本開示に係る測距手段及び飛行可能判定手段の一例である。
【0044】
以下、第1方向、第2方向、第1距離、第2距離及び飛行可能空間について説明する。まず、
図4を参照しながら、第1方向、第2方向、第1距離及び第2距離について説明する。なお、
図4は、
図2のように、ドローン1の飛行方向から左90度となる方向についてドローン1から壁面Wまでの距離が概ね一定となるようにドローン1が飛行する場合の図である。ドローン1の飛行方向から右90度となる方向についてドローン1から壁面Wまでの距離が概ね一定となるようにドローン1が飛行する場合は、
図4を左右反転させたものとなる。
【0045】
図4に示すように、第1方向は、ドローン1の飛行方向から左90度となる方向である。ドローン1を基準として第1方向に存在する障害物からドローン1までの距離が第1距離となる。第2方向は、第1方向からドローン1の飛行方向に向けて60度の角度をなす方向である。第2方向は、ドローン1の飛行方向から左30度となる方向と言い換えることもできる。ドローン1を基準として第2方向に存在する障害物からドローン1までの距離が第2距離となる。なお、第2方向は、第1方向からドローン1の飛行方向に向けてなす角度が0度より大きく90度より小さいような方向であれば必ずしも60度でなくてもよい。
【0046】
次に、
図5を参照しながら、飛行可能空間について説明する。
図5に示す破線の正方形で示された領域が飛行可能空間である。飛行可能空間は、飛行方向を基準として、ドローン1の前方にある所定の空間であって障害物の存在しない空間をいう。
図5に示す例では、上記の「所定の空間」は、ドローン1の位置を基準として左右1メートル、前方2メートルの範囲に存在する空間である。この空間内に障害物が存在しないとき、当該空間は飛行可能空間となる。この「所定の空間」は、ドローンの飛行速度、旋回速度等に基づいて適宜定められる。
【0047】
再び
図3を参照する。飛行指令部25は、測域制御部26により測定された第1距離及び第2距離に基づいて、ドローン1の新たな飛行方向を決定する。また、飛行指令部25は、後述する特定の条件を満たしたとき、新たな飛行速度を決定する。また、飛行指令部25は、測域制御部26により所定の空間が飛行可能空間でないと判定されたとき、ドローン1が旋回するようにドローン1の新たな飛行方向を決定する。飛行指令部25は、決定した飛行方向及び飛行速度に基づいて、ドローン1が飛行移動すべき位置を決定し、決定した位置への飛行をフライトコントローラ3に指令する。飛行指令部25は、本開示に係る飛行方向決定手段及び飛行速度決定手段の一例である。以下詳細に説明する。
【0048】
まず、
図6、
図7及び
図8を参照しながら、第1距離及び第2距離に基づいてドローン1の新たな飛行方向を決定することについて説明する。なお、第1方向と第2方向のなす角は、
図4で示すように60度であるものとする。
【0049】
飛行指令部25は、
図6に示すような、第1距離と第2距離との組み合わせのパターンごとに飛行制御を行う。ここでいう飛行制御とは、新たな飛行方向の決定と新たな飛行速度の決定の双方を含むことを意図する。パターン(5)及び(6)の「障害物を検知できず」とは、第1方向、第2方向において測域センサ4の検知範囲内に障害物が存在せず障害物を検知できない場合をいう。なお、詳細は後述するが、測域制御部26によりドローン1の前方の所定の空間が飛行可能空間でないと判定されたときには、
図6のパターンに基づく飛行制御は行われない。
【0050】
まず、
図6のパターン(1)-(4)からわかるとおり、第1距離については2メートルを閾値とし、第2距離については4メートルを閾値としている。第1距離についての閾値が2メートルとなっているのは、ドローン1と壁面Wとの距離を2メートル程度に保ってドローン1を飛行させることが主目的だからである。第2距離についての閾値が4メートルとなっているのは、上述のとおり第1方向と第2方向のなす角が60度であることから、第1距離が2メートルかつ第2距離が4メートルのときに、第1方向に存在する障害物から第2方向に存在する障害物へのベクトルの向きが飛行方向と一致するからである。この2メートルの閾値は、本開示に係る第1設定距離及び第3設定距離の一例であり、4メートルの閾値は、本開示に係る第2設定距離及び第4設定距離の一例である。
【0051】
例えば第1距離が2メートル程度であるとき、第2距離が4メートル以下であるときにはそのままドローン1が直進すると壁面Wに衝突する可能性が高く、第2距離が4メートル以上であるときにはそのままドローン1が直進すると壁面Wから離れすぎてしまう可能性が高い。以下、
図7に示す例を参照して説明する。
【0052】
まず、
図7に示すパターン(1)の場合を説明する。これは、
図6のパターン(1)に該当する一例を図にて示したものである。
図7のパターン(1)の図例に示すとおり、現在の飛行方向のままドローン1が直進すると、ドローン1は壁面Wに衝突してしまう。そのため、ドローン1は右方向に旋回をする必要がある。パターン(2)の場合は、現在の飛行方向のままドローン1が直進すると、ドローン1と壁面Wとの距離が2メートルより大きくなってしまう。そのため、ドローン1は左方向に旋回する必要がある。
【0053】
図6に示すパターン(3)は、ドローン1の左側については壁面Wから十分に離れているものの、直進を続けると壁面Wに衝突する可能性が高いパターンであるため、パターン(1)と同様に右方向に旋回することが一例として挙げられる。ただし、パターン(3)の場合、左方向に通路が広がっている可能性もある。そのため、地図作成部21により作成された環境地図に基づいて飛行制御をすることも考えられる。
【0054】
パターン(4)については、第1距離が短い点を除いて概ねパターン(2)と同様であるため、現在の飛行方向のままドローン1が直進してもドローン1が壁面Wと衝突する可能性は低く、また、そのまま直進するとそのうち第1距離が2メートル以上となる可能性も高い。したがって、パターン(4)については現状維持となる飛行制御をすればよい。
【0055】
パターン(5)の例として、
図8に示すように、例えばドローン1の左側には壁面Wが存在するものの、ドローン1の前方には壁面Wが存在しない場合が考えられる。この場合、ドローン1の前方には広い空間が存在する可能性が高く、このまま直進を続けるとドローン1の左側についても急に障害物を検知できなくなる可能性が高い。ドローン1の左側について障害物を検知できない状態のままある程度の距離を飛行してしまうと、適切な飛行制御ができなく可能性がある。そのため、パターン(5)の場合には、一時的に飛行速度を低下させることが好ましい。この場合、飛行速度を低下させた状態で他のパターンに該当したときには、飛行速度を元に戻す。
【0056】
パターン(6)は、
図8に示すように、パターン(5)の状態でドローン1が直進を続けた場合に該当することが考えられる。ドローン1は、左方向について壁面Wからドローン1までの距離が2メートル程度となるように飛行を続けていたことから、左方向に旋回することにより再び左方向について壁面Wを検知できる可能性が高い。そのため、パターン(6)の場合は左方向に旋回することが好ましい。
【0057】
図6に示すパターンのほか、例えば第1距離が2メートル程度かつ第2距離が4メートル程度であればそのまま直進してもほぼ壁面Wに沿って飛行することとなるから、この場合には現状維持としてもよい。また、第1方向については障害物が検知できず第2方向については障害物が検知できる場合も一応考えられるが、上記のとおりドローン1は、左方向について壁面Wからドローン1までの距離が2メートル程度となるように飛行をするため、このような状態となる可能性は低い。この状態となった場合も、パターン(6)と同様に左方向に旋回することにより再び左方向について壁面Wを検知できる可能性が高い。
【0058】
次に、測域制御部26によりドローン1の前方の所定の空間が飛行可能空間でないと判定された場合について説明する。この場合、
図6に示すパターンに従った飛行制御をしようとしても、所定の空間内に存在する障害物により支障が生じる可能性が高い。この場合、例えばドローン1の前方の所定の空間が飛行可能空間となるまで右方向に旋回することが考えられる。ドローン1は、左方向について壁面Wからドローン1までの距離が2メートル程度となるように飛行をしてきているため、左方向に旋回しても前方の所定の空間が飛行可能空間となる可能性は低いからである。なお、ドローン1が現在飛行している地点までは飛行可能空間を通過して到達していることから、飛行してきた経路を逆走する飛行ルート上においては、ドローン1の前方の所定の空間は必ず飛行可能空間となる。したがって、ドローン1の前方の所定の空間が飛行可能空間でないときに右方向の旋回を続けると、そのうち必ずドローン1の前方の所定の空間が飛行可能空間となる。したがって、上記の飛行可能空間に関する動作により、ドローン1は飛行開始地点まで戻ることができる。
【0059】
次に、
図9を参照しながら、フライトコントローラ3のプロセッサ301がドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32を実行したときにおける、フライトコントローラ3の機能的構成を説明する。フライトコントローラ3は、機能的構成として、擬似コンパス部31と出力部33と飛行制御部34とを備える。これらの機能部のうち、擬似コンパス部31及び出力部33の機能は、プロセッサ301がドライバプログラムP31を実行することにより実現され、飛行制御部34の機能は、プロセッサ301が飛行プログラムP32を実行することにより実現される。
【0060】
擬似コンパス部31は、コンパニオンコンピュータ2の機首方向出力部23が出力した、環境地図上におけるドローン1の機首方向を示す機首方向情報に基づいて擬似的な磁束密度である擬似磁束密度を求める。具体的には、擬似コンパス部31は、現実において機首方向情報が示す方向にドローン1の機首が向いていると仮定したときの、ドローン1を通過する磁気を示す磁束密度を擬似磁束密度として求める。例えば、機首方向情報が示す方向が「北」であるとき、ドローン1の機首が現実に「北」を向いているときにドローン1を通過する磁気の磁束密度を、擬似磁束密度として求める。つまり、擬似コンパス部31は、環境地図上における機首方向に基づいて磁気を検出する擬似的な電子コンパスモジュールとして機能する。擬似コンパス部31は、本開示に係る擬似コンパス手段の一例である。
【0061】
出力部33は、擬似コンパス部31が求めた擬似磁束密度と擬似測位部24が求めた測位情報とを飛行制御部34に出力する。上述のとおり、擬似コンパス部31及び出力部33の機能は、フライトコントローラ3のプロセッサ301がドライバプログラムP31を実行することにより実現される。プロセッサ301がドライバプログラムP31を実行することにより、最終的には出力部33の機能によって擬似磁束密度と擬似測位情報とが飛行制御部34に出力される。そのため、飛行制御部34からは、あたかも仮想的な電子コンパスモジュール及び仮想的な衛星測位モジュールから、磁束密度及び測位情報が出力されているように見える。
【0062】
飛行制御部34は、出力部33から出力された、擬似磁束密度及び擬似測位情報と、コンパニオンコンピュータ2の飛行指令部25からの飛行指令とに基づいて駆動部7を制御して、ドローン1の飛行を制御する。上述のとおり、飛行指令部25からの飛行指令は、新たな飛行方向として決定された飛行方向及び新たな飛行速度として決定された飛行速度に基づくものであるため、飛行制御部34は、新たな飛行方向及び新たな飛行速度に基づいてドローン1の飛行を制御するものである。飛行制御部34自身は、擬似磁束密度及び擬似測位情報と、現実の磁束密度及び測位情報とを区別することもなく、単に出力部33から出力された磁束密度及び測位情報に基づいて駆動部7を制御する。飛行制御部34は、本開示に係る飛行制御手段の一例である。
【0063】
上述のとおり、飛行制御部34の機能は、フライトコントローラ3のプロセッサ301が飛行プログラムP32を実行することにより実現される。飛行プログラムP32は、例えばフライトコントローラ3の製造者により作成されたプログラムである。飛行プログラムP32は、地磁気と地球上における位置とが正常に検出されることを前提として作成されているので、飛行制御の際に何らかのドライバプログラムから磁束密度及び測位情報が出力されることを必須としている。したがって、飛行プログラムP32(により機能する飛行制御部34)は、擬似磁束密度及び擬似測位情報と、現実の磁束密度及び測位情報とを区別することがない。
【0064】
したがって、ドローン1のユーザは、フライトコントローラ3として市販のフライトコントローラを採用する場合において、フライトコントローラ3のハードウェア構成を変更することも、飛行プログラムP32を変更することもなく、ドライバプログラムP31を作成することにより、フライトコントローラ3の各機能を実現できる。
【0065】
次に、
図10を参照しながら、ドローン1による飛行制御の動作の一例を説明する。
【0066】
ドローン1の測域センサ4は、ドローン1の周囲の障害物を検出し、検出した障害物の相対位置を示す情報をコンパニオンコンピュータ2に出力する(ステップS1)。
【0067】
ドローン1のコンパニオンコンピュータ2の地図作成部21は、ステップS1にて検出した障害物の相対位置に基づいて環境地図を作成する(ステップS2)。
【0068】
コンパニオンコンピュータ2の推定部22は、ステップS2にて作成した環境地図上におけるドローン1の位置と飛行方向と機首方向とを推定する(ステップS3)。
【0069】
コンパニオンコンピュータ2の機首方向出力部23は、ステップS3にて推定された機首方向を示す機首方向情報をフライトコントローラ3に出力する(ステップS4)。
【0070】
コンパニオンコンピュータ2の擬似測位部24は、ステップS3にて推定された位置を擬似的な緯度、経度及び高度によりに表した擬似測位情報を求めてフライトコントローラ3に出力する(ステップS5)。
【0071】
コンパニオンコンピュータ2の測域制御部26及び飛行指令部25は、
図11に示す動作を実行して新たな飛行方向及び飛行速度の決定を行う(ステップS6)。以下、
図11に示す動作を説明する。
【0072】
測域制御部26は、ドローン1の前方の所定の領域が飛行可能空間であるか否か判定する(ステップS61)。
【0073】
ドローン1の前方の所定の領域が飛行可能空間であるとき(ステップS61:Yes)、測域制御部26は、第1方向に存在する障害物までの距離である第1距離を測定し(ステップS62)、第2方向に存在する障害物までの距離である第2距離を測定する(ステップS63)。
【0074】
飛行指令部25は、ステップS62にて測定された第1距離と、ステップS63にて測定された第2距離とに基づいて、ドローン1の新たな飛行方向及び飛行速度を決定する(ステップS64)。上記のとおり、新たな飛行方向及び飛行速度は、例えば
図6に示すパターンにしたがって決定される。そしてコンパニオンコンピュータ2は、新たな飛行方向及び飛行速度の決定の動作を終了し、
図10のステップS7からの動作を実行する。
【0075】
ドローン1の前方の所定の領域が飛行可能空間でないとき(ステップS61:No)、飛行指令部25は、ドローン1が右方向に旋回するようにドローン1の新たな飛行方向を決定する(ステップS65)。そしてコンパニオンコンピュータ2は、新たな飛行方向及び飛行速度の決定の動作を終了し、
図10のステップS7からの動作を実行する。
【0076】
再び
図10を参照する。飛行指令部25は、ステップS6にて決定された新たな飛行方向及び飛行速度に基づいて、ドローン1が飛行移動すべき位置を決定し、決定した位置への飛行をフライトコントローラ3に指令する(ステップS7)。
【0077】
ドローン1のフライトコントローラ3は、
図12に示す動作を実行してドローン1の飛行制御を行う(ステップS8)。そしてドローン1は、ステップS1からの動作を繰り返す。以下、
図12に示す動作を説明する。
【0078】
フライトコントローラ3の擬似コンパス部31は、
図10のステップS4にて出力された機首方向情報に基づいて、擬似的な磁束密度である擬似磁束密度を求める(ステップS81)。
【0079】
出力部33は、ステップS81にて求められた擬似磁束密度と、
図10のステップS5にて求められた擬似測位情報とを飛行制御部34に出力する(ステップS82)。
【0080】
フライトコントローラ3の飛行制御部34は、ステップS82にて出力部33から出力された擬似磁束密度及び擬似測位情報と、
図10のステップS7での飛行指令部25からの飛行指令とに基づいて駆動部7を制御する(ステップS83)。飛行制御部34が駆動部7を制御することにより、飛行指令部25による飛行指令に従ってドローン1は飛行移動する。そしてドローン1は、
図10のステップS1からの動作を繰り返す。
【0081】
以上、実施の形態に係るドローン1を説明した。ドローン1は、第1方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第1距離と、第2方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第2距離とに基づいて、新たな飛行方向及び飛行速度を決定する。また、ドローン1は、ドローン1の前方の所定の空間が飛行可能空間でないときには、ドローン1が旋回するように新たな飛行方向を決定する。そのため、ドローン1によれば、障害物の存在する環境下において自律飛行体による自律飛行が可能となる。
【0082】
特に、ドローン1は、第1距離と第2距離とに基づいて、
図6に示すパターンにしたがって新たな飛行方向及び新たな飛行速度を決定するので、
図2に示すような、ドローン1から第1方向における壁面Wまでの距離が概ね一定となるような飛行をすることができる。
【0083】
(変形例)
実施の形態において、ドローン1は、ドローン1から第1方向における壁面Wまでの距離が概ね一定となるような飛行をした。しかし、以下に説明するように、常にこのような飛行をする必要はない。
【0084】
例えば、ドローン1が地下トンネル内を1往復するような飛行を考える。また、飛行の際、往路では壁面Wをカメラにて撮像し、復路では撮像をしない場合を考える。この場合、往路においては壁面Wを撮像することから、安定した撮像のためにドローン1から第1方向における壁面Wまでの距離が概ね一定となるような飛行が好ましいが、復路においては壁面Wの撮像が行われないので、必ずしもこのような飛行をする必要はない。例えば、復路においては、第1方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第1距離を測定するのみでなく、第1方向と真逆の方向に存在する障害物からドローン1までの距離である第3距離を測定し、ドローン1の位置がこれらの障害物の中間の位置となるように新たな飛行方向が決定されるものであってもよい。障害物が壁面Wであるとき、ドローン1が左右の壁面Wの中間に位置するように新たな飛行方向が決定されることとなる。
【0085】
ドローン1から第1方向における壁面Wまでの距離が概ね一定となるような飛行においては、ドローン1はある程度壁面に近づく飛行をするため、例えば駆動部に多少の不具合が生じたときに壁面Wに衝突する、あるいはドローン1の一部が壁面Wをこすってしまう、といったトラブルが考えられる。そのため、復路において上記のように新たな飛行方向を決定することにより、少なくとも復路においては上記のトラブルを軽減できる。ドローン1は電池で動作することが通常であるため、復路では往路よりも電力不足に陥る可能性が高く、駆動部に不具合が生じる可能性も復路のほうが往路よりも高くなる。そのため、復路において上記のように新たな飛行方向を決定することは有益である。
【0086】
実施の形態において、ドローン1は、前方の所定の空間が飛行可能空間か否かを判定し、前方の所定の空間が飛行可能空間であるときには、第1距離と第2距離とに基づいて新たな飛行方向を決定した。しかし、ドローン1は、前方の所定の空間が飛行可能空間であるときに、単に直進を続けるものであってもよい。この場合、
図2に示すような飛行は困難となるが、前方の所定の空間が飛行可能空間であるか否かの判定は行われることから、障害物への衝突を回避することは可能となる。つまり、この場合においても、ドローン1によれば、障害物の存在する環境下において自律飛行体による自律飛行が可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1 ドローン、2 コンパニオンコンピュータ、3 フライトコントローラ、4 測域センサ、7 駆動部、21 地図作成部、22 推定部、23 機首方向出力部、24 擬似測位部、25 飛行指令部、26 測域制御部、31 擬似コンパス部、33 出力部、34 飛行制御部、201 プロセッサ、202 メモリ、203 インタフェース、204 二次記憶装置、301 プロセッサ、302 メモリ、303 インタフェース、304 二次記憶装置、B2,B3 バス、P31 ドライバプログラム、P32 飛行プログラム、W 壁面