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特開2022-134730水酸基含有重合体及び水酸基含有重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134730
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】水酸基含有重合体及び水酸基含有重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/28 20060101AFI20220908BHJP
   C08F 20/58 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08F20/28
C08F20/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034084
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】小林 直記
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AJ02Q
4J100AL09P
4J100AL09Q
4J100AL63R
4J100AL66R
4J100AM17P
4J100BA03P
4J100BA03R
4J100CA04
4J100CA05
4J100EA05
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC32
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】
親水性と金属などへの密着性を有する水酸基含有重合体を提供すること。
【解決手段】
1~1000nmの平均粒子径を有する水酸基含有重合体であって、下記式(I)で表される基を有する水酸基含有重合体。
*-O-Z・・・(I)
(式(I)中、Zは、炭素数3~8個の一価の炭化水素基の水素原子の2つ以上を水酸基で置換した一価の基であり、*は、当該一価の基の結合位置を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~1000nmの平均粒子径を有する水酸基含有重合体であって、下記式(I)で表される基を有する水酸基含有重合体。
*-Y-Z・・・(I)
(式(I)中、Zは、炭素数3~8個の一価の炭化水素基の水素原子の2つ以上を水酸基で置換した一価の基であり、Yは、酸素原子又は―NH-であり、*は、当該一価の基の結合位置を表す。)
【請求項2】
前記重合体が、式(I)で表される基およびエチレン性不飽和基を有する単量体(I)に由来する構造単位(A)を含み、当該重量体の総量に対して構造単位(A)を50質量%以上含む、請求項1に記載の水酸基含有重合体。
【請求項3】
前記重合体が架橋性単量体に由来する構造単位を含む、請求項1又は2に記載の水酸基含有重合体。
【請求項4】
前記構造単位(A)が、グリセロール(メタ)アクリレート又はジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドに由来する、請求項2又は3の水酸基含有重合体。
【請求項5】
水酸基含有重合体の製造方法であって、式(I)で表される基およびエチレン性不飽和基を有する単量体(I)と架橋性単量体を含む単量体成分を沈殿重合または分散重合する重合工程を備えた前記水酸基含有重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性に優れた樹脂粒子およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性の重合体を含む微粒子は、様々な分野で使用されている。透明性等の観点から微粒子化が求められているが、サブミクロンオーダーに微粒子化した樹脂としてカルボキシル基を有する架橋重合体が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6150031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討したところ、カルボキシル基を有する架橋重合体は親水性は十分であるものの、金属などへの密着性が不十分であり、医用、化粧品、工業などの各種用途に使用する上では、未だ改善の余地があることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において、範囲を示す「α~β」は「α以上、β以下」を意味する。本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0006】
本発明の水酸基含有重合体は、1~1000nmの平均粒子径を有し、下記式(I)で表される基を有する。
*-Y-Z・・・(I)
(式(I)中、Zは、炭素数3~8個の一価の炭化水素基の水素原子の2つ以上を水酸基で置換した一価の基であり、Yは、酸素原子又は―NH-であり、*は、当該一価の基の結合位置を表す。)
【0007】
上記重合体は、式(I)で表される基およびエチレン性不飽和基を有する単量体(I)に由来する構造単位(A)を含み、当該重量体の総量に対して構造単位(A)を50質量%以上含むと好ましい。
【0008】
上記重合体は、架橋性単量体に由来する構造単位を含むと好ましい。
【0009】
当該重合体の前記構造単位(A)が、グリセロール(メタ)アクリレート又はジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドに由来すると好ましい。
【0010】
上記水酸基含有重合体は、式(I)で表される基およびエチレン性不飽和基を有する単量体(I)と架橋性単量体を含む単量体成分を沈殿重合する重合工程を備えるとこのましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、親水性を有し、基材への密着性に優れたサブミクロンオーダーの水酸基含有重合体、および、当該水酸基含有重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(水酸基含有重合体)
本実施形態の水酸基含有重合体は、1~1000nmの平均粒子径を有するが、均一な塗膜を形成するために10~900nmであると好ましく、50~800nmであるとさらに好ましく、100~700nmであると特に好ましい。水酸基含有重合体の平均粒子径は重合粒子の体積平均粒子径、つまり重合粒子径であり、具体的には実施例に記載の動的光散乱法により測定することができる。本明細書において重合粒子とは各種の重合方法で製造した際の反応媒体中に反応後に存在する粒子のことを意味し、反応後に乾燥して得られる乾燥粉体粒子とは異なる。乾燥粉体粒子では、分散溶媒による膨潤や2次凝集などによる影響が大きくなるが、それらの乾燥粉体粒子の体積平均粒子径、つまり乾燥粉体粒子径の場合は、水に分散した場合の粒子径は、0.1μm~10μmとなり、好ましくは0.2μm~5μmである。重合粒子径と同様に実施例に記載の動的光散乱法により測定することができる。
【0013】
なお、水酸基含有重合体の粒子径についての変動係数(CV値、粒子径の標準偏差を個数平均粒子径で除したもの)は1~20%が好ましく、1~10%が好ましい。
【0014】
本実施形態の水酸基含有重合体は、親水性と基材への密着性を有することから、工業用途における、防曇性及び/又は親水を付与する添加剤、結露防止用添加剤、防汚材、増粘剤、キレート剤(イオン吸着剤)、塗料、電気電子材料の各種添加剤及びバインダー用途の他、化粧品に用いられる増粘剤、保水剤、薬剤の担体、医用分野における、ドラッグデリバリーシステムのキャリア、ナノゲル材料等としても利用することができる。
【0015】
本実施形態の水酸基含有重合体は、水酸基含有重合体を含有する。
【0016】
本実施形態の水酸基含有重合体は、上記式(I)で表される基を有するものである。
式(I)において、Zの炭素数は、3~6個であると好ましく、3~5個であるとより好ましい。また、Zが有する水酸基の数は、2又は3個であると好ましく、2個であるとより好ましい。
【0017】
水酸基含有重合体は、上記式(I)で表される基を有する重合体であれば特に限定されない。水酸基含有重合体は、ポリエステル化合物、ポリエーテル化合物、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド化合物、ポリアミド酸化合物、ポリビニル化合物及びこれらの組み合わせであってよい。また、水酸基含有重合体は、ホモポリマーであってもよく、共重合体であってもよい。式(I)で表される基は、水酸基含有重合体(I)の末端に結合していてもよく、末端以外の部分に結合していてもよい。水酸基含有重合体(I)が主鎖とグラフト鎖を有する場合、式(I)で表される基は、主鎖に結合していても、グラフト鎖に結合していてもよい。また、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸等の天然高分子に式(I)で表される基を導入したものも水酸基含有重合体として使用できる。
【0018】
水酸基含有重合体は、式(I)で表される基を0.0001mol/g以上含むと好ましく、0.001mol/g以上含むとより好ましく、0.0025mol/g以上含むと更に好ましく、0.005mol/g以上含むとさらになお好ましい。なお、単位mol/gは、水酸基含有重合体1g当たりの式(I)で表される基のモル数である。
【0019】
水酸基含有重合体は、式(I)で表される基及びエチレン性不飽和基を有する単量体(以下、単量体(I)とも呼ぶ)に由来する構造単位を含むと好ましい。なお、「単量体(I)に由来する構造単位」とは、単量体(I)を重合することによって得られる構造単位だけでなく、単量体(I)を重合する以外の方法で得られた構造単位であっても、当該構造単位が単量体(I)を重合することによって得られる構造単位と同じ構造であれば、「単量体(I)に由来する構造単位」に含まれる。例えば、単量体(I)のZ基における水酸基が保護基により保護されており、単量体(I)を重合した後に脱保護した場合に得られる構造単位は、単量体(I)を重合した場合と同じ構造単位が得られるため、「単量体(I)に由来する構造単位」に含まれる。また、単量体(I)のZ基が複数の水酸基を有している場合、それらの水酸基のうち二つが分子内脱水により環状エーテル構造を形成している単量体を重合した後で、当該環状エーテル構造を酸等により加水分解して水酸基に戻し得られる構造単位は、単量体(I)を重合した場合と同じ構造であるため、「単量体(I)に由来する構造単位」に含まれる。
【0020】
単量体(I)は、以下の式(IA)で表される化合物であると好ましい。
【0021】
【化1】
(IA)
【0022】
(式(IA)において、ZおよびYは、式(I)のZおよびYとそれぞれ同じ意味であり、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
Zは、以下の式(II)で表される基であると好ましい。
【0023】
【化2】
(II)
【0024】
(式(II)において、Rは-CH(OH)CHOH又は-CHOHであり、Rは、水素原子又は-CHOHであり、Rは、水素原子又は-CHOHであり、*は式(II)で表される基の結合位置を表す。)
単量体(I)としては、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、1,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドが好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0025】
なお、単量体(I)に由来する構造単位としては、以下の単量体(IB)のように、(共)重合した後に加水分解処理して水酸基を生じさせることができる単量体に由来する構造単位も含まれる。
【0026】
【化3】
(IB)
【0027】
(式(IB)中、R11は、水素原子又はメチル基を表し、R13及びR14は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)
単量体(IB)を重合した後で酸処理を行うと、ジオキソラン環が加水分解され、構造単位内に水酸基が2つ生じる。
【0028】
水酸基含有重合体は、単量体(I)と架橋性単量体を含む他の単量体との共重合体であってもよい。
【0029】
(架橋性単量体)
架橋性単量体としては、2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体、及び加水分解性シリル基等の自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体等が挙げられる。
上記多官能重合性単量体は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの内でも、均一な架橋構造を得やすい点で多官能アルケニル化合物が好ましく、分子内に複数のアリルエーテル基を有する多官能アリルエーテル化合物が特に好ましい。
【0030】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性体のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート;メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等のビスアミド類等を挙げることができる。
【0031】
多官能アルケニル化合物としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース等の多官能アリルエーテル化合物;ジアリルフタレート等の多官能アリル化合物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等を挙げることができる。
(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等を挙げることができる。
【0032】
上記自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体の具体的な例としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、加水分解性シリル基を少なくとも1個有するビニル単量体であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有メタクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。
【0034】
粉体としての扱いやすさと柔軟性を備えた粒子を得るために2価アルコールのジ(メタ)アクリレート類、3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0035】
本発明の水酸基含有重合体が架橋性単量体により架橋されたものである場合、上記架橋性単量体の使用量は、架橋性単量体以外の単量体(非架橋性単量体)の総量に対して0.01~40モル%であることが好ましく、0.1~10モル%であることがより好ましい。架橋性単量体の使用量が0.01モル%以上であれば結着性及び合剤層スラリーの安定性がより良好となる点で好ましい。40モル%以下であれば、水酸基含有重合体の安定性が高くなる傾向がある。 また、上記架橋性単量体の使用量は、水酸基含有重合体の全構成単量体中、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは0.1~25質量%であり、さらに好ましくは0.5~20質量%であり、一層好ましくは1~105質量%である。本明細書中で、全構成単量体とは具体的には当該重合に使用する単量体(I)を含む単量体の総量である。
【0036】
(架橋性単量体以外のその他の単量体)
他の単量体としては、架橋性単量体エチレン性不飽和基と、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を有する化合物が挙げられる。
【0037】
また、他の単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド類(例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド)、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジノン、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の中性親水性単量体、(メタ)アクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、フマル酸又はその塩、イタコン酸又はその塩、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸又はその塩、ビニルホスホン酸又はその塩、ビニル安息香酸又はその塩等のアニオン性親水性単量体、3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド(APMA)、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチル塩化アンモニウム(MAPTAC)、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のカチオン性親水性単量体も挙げることができる。
【0038】
他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン等の疎水性単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、イソプロペニルオキサゾリン、ビニルオキサゾリン、無水マレイン酸等の反応性基含有単量体なども挙げることができる。
【0039】
他の単量体は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0040】
なお、水酸基含有重合体における、カルボキシ基及びエチレン性不飽和基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、水酸基含有重合体(I)の総量に対して50質量%未満であってよく、25質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。なお、カルボキシ基及びエチレン性不飽和基を有する単量体に由来する構造単位は、当該単量体を重合して得られた構造単位であってもよいが、同じ化学構造を有するのであれば、当該単量体を重合する以外の方法で得られた構造単位(例えば、対応するエステル化合物を重合した後、エステル基を加水分解し、カルボキシ基とした構造単位等)であってもよい。
【0041】
エチレン性不飽和基と、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を有する化合物としては、以下の式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化4】

(III)
【0043】
上記式(III)中、Aは水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、Xは-C(=O)-、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-又は単結合を表し、Qは炭素数2~20のアルキレン基を表し、nはアルキレンオキシド基の繰り返し単位であって1~200の数を表し、Aは水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1~20の有機基を表す。
【0044】
上記A、及びAは、それぞれ、水素原子もしくは炭素数1~12の有機基であることが好ましく、水素原子もしくは炭素数1~8の有機基であることがより好ましく、水素原子若しくは炭素数1~4の有機基であると好ましい。当該有機基が、置換基を有する場合には、置換基を含めた炭素数が上記の範囲であることがより好ましい。上記A、及びAは、それぞれ、水素原子もしくはメチル基であることがよりさらに好ましい。
【0045】
上記Qは、炭素数2~5のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基であることがより好ましい。なお、Qは、1種類のアルキレン基のみを含んでいてもよいが、2種以上のアルキレン基を含んでいてもよい。Qがエチレン基を含む場合、ポリアルキレングリコール基における全アルキレングリコール単位に対して50~100モル%がエチレン基であることが好ましく、80~100モル%がエチレン基であることがより好ましく、90~100モル%がエチレン基であることが好ましい。
【0046】
mは、式(III)で表される化合物全体についての平均付加モル数であってよい。mは、1~100であると好ましく、5~80であるとより好ましく、10~60であると更に好ましい。
【0047】
Xが-C(=O)-で表される場合は、(メタ)アクリル酸への炭素原子数1~100のアルキレンオキシド付加物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール等の炭素原子数1~30のアルキルアルコール類に炭素原子数1~100のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸とのエステル化物;等が挙げられる。
【0048】
Xが-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-で表される場合は、アリルアルコール、メタリルアルコール、2-ブテン-1-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1~100モル付加した構造の化合物を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0049】
また、式(III)で表される化合物としては、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等のポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステル、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0050】
水酸基含有重合体における単量体(I)に由来する構造単位の含有量は、架橋性単量体を含む場合、25~99.9質量%であってよく、40~99.5質量%であってよい。架橋性単量体を含まない場合25~100質量%であってよく、50~99.9質量%出会ってよい。水酸基含有重合体がエチレン性不飽和基と、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を有する化合物に由来する構造単位を含む場合、当該構造単位の含有量は、水酸基含有重合体(I)の総量に対して0.01~25質量%であってよい。
【0051】
(水酸基含有重合体の製造方法)
本発明の水酸基含有重合体は、溶液重合、沈殿重合及び分散重合、懸濁重合、並びに逆相乳化重合等の公知の重合方法を使用することが可能であるが、生産性の点で沈殿重合、分散重合及び懸濁重合(逆相懸濁重合)が好ましい。結着性等に関してより良好な性能が得られる点で、沈殿重合法または分散重合法がより好ましく、沈殿重合法が特に好ましい。
【0052】
沈殿重合は、原料である不飽和単量体を溶解するが、生成する重合体を実質溶解しない溶媒中で重合反応を行うことにより重合体を製造する方法である。重合の進行とともにポリマー粒子は凝集及び成長により大きくなり、数十nm~数百nmの一次粒子が数μm~数十μmに二次凝集したポリマー粒子の分散液が得られる。
【0053】
尚、分散安定剤や重合溶剤等を選定することにより上記二次凝集を抑制することもできる。一般に、二次凝集を抑制した沈殿重合を分散重合と呼び、両者は区別されることもあるが広義では沈殿重合といえる。
【0054】
沈殿重合の場合、重合溶媒は、使用する単量体の種類等を考慮して水及び各種有機溶剤等から選択される溶媒を使用することができる。より一次鎖長の長い重合体を得るためには、連鎖移動定数の小さい溶媒を使用することが好ましい。
【0055】
具体的な重合溶媒としては、メタノール、t-ブチルアルコール、アセトン、アセトニトリル及びテトラヒドロフラン等の水溶性溶剤の他、ベンゼン、酢酸エチル、ジクロロエタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゾニトリル及びn-ヘプタン等が挙げられ、これらの1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。又は、これらと水との混合溶媒として用いてもよい。本発明において水溶性溶剤とは、20℃における水への溶解度が10g/100mlより大きいものを指す。
【0056】
上記の内、粗大粒子の生成や反応器への付着が小さく重合安定性が良好であること、析出した重合体微粒子が二次凝集しにくい(若しくは二次凝集が生じても水媒体中で解れやすい)こと、連鎖移動定数が小さく重合度(一次鎖長)の大きい重合体が得られること、及び後述する工程中和の際に操作が容易であること等の点で、アセトニトリルが好ましい。
【0057】
また、同じく工程中和において中和反応を安定かつ速やかに進行させるため、重合溶媒中に高極性溶媒を少量加えておくことが好ましい。係る高極性溶媒としては、好ましくは水及びメタノールが挙げられる。高極性溶媒の使用量は、媒体の全質量に基づいて好ましくは0.05~10.0質量%であり、より好ましくは0.1~5.0質量%、さらに好ましくは0.1~1.0質量%である。高極性溶媒の割合が0.05質量%以上であれば、上記中和反応への効果が認められ、10.0質量%以下であれば重合反応への悪影響も見られない。
【0058】
分散重合の場合、沈殿重合と同様に重合溶媒は、使用する単量体の種類等を考慮して水及び各種有機溶剤等から選択される溶媒を使用することができるが、二次凝集を抑制するための分散安定剤を使用することができる。
【0059】
具体的な分散安定剤としては、高分子型分散剤やノニオン性乳化剤などが使用できる。
高分子型分散剤としては、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ビニルフェノール-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ビニルフェノール-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリスチレン誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポチエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル誘導体;セルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル等のポリ酢酸ビニル誘導体;ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリ-2-メチル-2-オキサゾリン等の含窒素ポリマー誘導体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル誘導体;ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン誘導体等の各種疎水性または親水性の分散剤、安定剤が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリエチレングリコールジイソステアレート等)、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物などが挙げられる。これらは一種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明の製造方法では、単量体(I)を50~100質量%、架橋性単量体を0~20質量%含む単量体成分を沈殿重合または分散重合する重合工程を備えることが好ましい。該重合工程により、架橋重合体には、単量体(I)に由来する構造単位(A)が50~100質量%導入される。
【0062】
単量体(I)の質量比は、架橋性単量体を含む場合、全構成単量体中25~99.9質量%であってよく、40~99.5質量%であってよい。架橋性単量体を含まない場合25~100質量%であってよく、50~99.9質量%であってよい。
【0063】
架橋性単量体を含む場合、その質量比は、全構成単量体中、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは0.1~25質量%であり、さらに好ましくは0.5~20質量%であり、一層好ましくは、1~15質量%である。
【0064】
カルボキシ基及びエチレン性不飽和基を有する単量体の質量比は、全構成単量体中、50質量%未満であってよく、25質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
【0065】
エチレン性不飽和基と、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を有する化合物(単量体)の質量比は、全く含まなくともよく、全構成単量体中、0.01~25質量%であってよい。
上記以外の重合可能な単量体は全く含まなくてもよく、含む場合の質量比は0.01~25質量%であって良い。
【0066】
また、上記製造方法により、得られる水酸基含有重合体の平均粒子径は、重合粒子径として1~1000nmの平均粒子径であり、均一な塗膜を形成するために10~900nmが好ましく、さらに好ましくは50~800nm、特に好ましくは100~700nmである。
【0067】
重合開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等の公知の重合開始剤を用いることができるが、特に限定されるものではない。熱開始、還元剤を併用したレドックス開始、UV開始等、公知の方法で適切なラジカル発生量となるように使用条件を調整することができる。一次鎖長の長い架橋重合体を得るためには、製造時間が許容される範囲内で、ラジカル発生量がより少なくなるように条件を設定することが好ましい。
【0068】
上記アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0069】
上記有機過酸化物としては、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油社製、商品名「パーテトラA」)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサHC」)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサC」)、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート(同「パーヘキサV」)、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(同「パーヘキサ22」)、t-ブチルハイドロパーオキサイド(同「パーブチルH」)、クメンハイドロパーオキサイド(日油社製、商品名「パークミルH」)、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(同「パーオクタH」)、t-ブチルクミルパーオキサイド(同「パーブチルC」)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(同「パーブチルD」)、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(同「パーヘキシルD」)、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(同「パーロイル355」)、ジラウロイルパーオキサイド(同「パーロイルL」)、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(同「パーロイルTCP」)、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルOPP」)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルSBP」)、クミルパーオキシネオデカノエート(同「パークミルND」)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーオクタND」)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート(同「パーヘキシルND」)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーブチルND」)、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート(同「パーブチルNHP」)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(同「パーヘキシルPV」)、t-ブチルパーオキシピバレート(同「パーブチルPV」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)ヘキサン(同「パーヘキサ250」)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同「パーオクタO」)、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同「パーヘキシルO」)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同「パーブチルO」)、t-ブチルパーオキシラウレート(同「パーブチルL」)、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(同「パーブチル355」)、
t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーヘキシルI」)、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーブチルI」)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(同「パーブチルE」)、t-ブチルパーオキシアセテート(同「パーブチルA」)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(同「パーヘキシルZ」)及びt-ブチルパーオキシベンゾエート(同「パーブチルZ」)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0070】
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0071】
また、レドックス開始の場合、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、亜硫酸ガス(SO2)、硫酸第一鉄等を還元剤として用いることができる。
【0072】
重合開始剤の好ましい使用量は、用いる単量体成分の総量を100質量部としたときに、0.001~2質量部であり、より好ましくは0.005~1質量部であり、さらに好ましくは0.01~0.1質量部である。重合開始剤の使用量が0.001質量部以上であれば重合反応を安定的に行うことができ、2質量部以下であれば一次鎖長の長い重合体を得やすい。
【0073】
重合時の単量体成分の濃度については、より一次鎖長の長い重合体を得る観点から高い方が好ましい。ただし、単量体成分の濃度が高すぎると、重合体粒子の凝集が進行し易い他、重合熱の制御が困難となり重合反応が暴走する虞がある。このため、重合開始時の単量体濃度は、2~30質量%程度の範囲が一般的であり、好ましくは5~30質量%の範囲である。
【0074】
重合温度は、使用する単量体の種類及び濃度等の条件にもよるが、0~100℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。重合温度は一定であってもよいし、重合反応の期間において変化するものであってもよい。また、重合時間は1分間~20時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましい。
【0075】
重合工程を経て得られた架橋重合体分散液は、乾燥工程において減圧及び/又は加熱処理等を行い溶媒留去や凍結乾燥することにより、目的とする架橋重合体を粉末状態で得ることができる。この際、上記乾燥工程の前に、未反応単量体(及びその塩)を除去する目的で、重合工程に引き続き、透析膜による精製や、遠心分離及び濾過等の固液分離工程、有機溶剤又は有機溶剤/水の混合溶剤を用いた洗浄工程を備えることが好ましい。
【0076】
上記洗浄工程を備えた場合、架橋重合体が二次凝集した場合であっても使用時に解れやすく、さらに残存する未反応単量体が除去されることにより結着性や電池特性の点でも良好な性能を示す。
【実施例0077】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部、質量%を意味する。
【0078】
(製造例1)
ガス導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、グリセロールモノアクリレート50部、アクリル酸50部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートPE-3A)15部、溶媒としてアセトニトリル1000部を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌と昇温を開始した。内温60℃で2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製、商品名:V-65)を加えて重合を開始した。重合開始から5分でポリマー粒子の析出による白濁が認められ、さらに7時間攪拌を継続して反応を行った。反応液を室温に冷却後、遠心分離により粒子を沈降させ、上清を除いた。得られた粒子に、仕込みのアクリル酸に対して70%の中和率となるように2%水酸化ナトリウムエタノール溶液を加え5分間超音波分散させたのち、再び遠心分離して粒子を回収し、さらにエタノールを加えて分散と遠心分離を2回繰り返し、残存モノマーと過剰の水酸化ナトリウムを除去するための洗浄操作を行った。得られた粒子スラリーを80℃の熱風乾燥機で乾燥し、乳鉢で粉砕して目的とする樹脂粒子A-1の乾燥粉体を得た。
【0079】
(製造例2~8)
原料モノマーの種類と使用量、及び中和率を表1に示すとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、樹脂粒子A-2~A-6及びB-1~B-2を得た。
【0080】
【表1】
【0081】
(製造例9)攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、滴下ろうとを付した反応容器にシクロヘキサン140部および分散剤としてのソルビタンモノステアレート10部を仕込み、溶解させた後窒素ガスを吹きこんで溶存酸素を除去した。別の容器にアクリル酸ナトリウム28.2部、アクリル酸7.2部、グリセロールジメタクリレート5部、N-メチレンビスアクリルアミド0.006部をイオン交換水60部に溶解し、次いで過硫酸カリウム0.05部を加え、溶解させた後、ソルビタンモノステアレート10部を含むシクロヘキサン140部に添加し、ホモミキサーで5分間攪拌し、プレエマルションを調製した。このプレエマルションを60℃に昇温した上記反応容器にゆっくりと滴下し、逆相懸濁重合を行った。2時間60℃で反応させた後、共沸脱水により水を留去した。室温に冷却した反応液から遠心分離及びデカンテーションによりシクロヘキサン相を除去した。得られたスラリーを80℃の熱風乾燥機で乾燥し、乳鉢で解砕して樹脂粒子B-3を得た。樹脂粒子B-3の平均粒子径は15μmであった。
【0082】
GLMA:グリセロールモノアクリレート
GLMM:グリセロールモノメタクリレート
DHPMA:2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリルアミド
AA:アクリル酸
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
PE-3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート
GLDM:グリセロールジメタクリレート
【0083】
(樹脂粒子の体積平均粒子径)
樹脂粒子の重合粒子径は、反応液をアセトニトリルで質量比で1000倍希釈したものを測定試料とした。乾燥粉体粒子径は、得られた粉体樹脂粒子0.001質量部に、精製水10質量部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。各測定試料について、粒度分布測定装置(マルバーン社製、「ゼータサイザーUltraZSU5700」)を用いて動的光散乱法により測定し、体積平均粒子径を求めた。
【0084】
(実施例1~6、比較例1~3)
樹脂粒子A-1~A6及びB-1~B-3について、金属密着性評価及び防曇性評価を実施した。結果を表2に示す。

【0085】
(金属密着性評価)
樹脂粒子0.3部に精製水9.7部を加え、超音波で10分間分散させた3%粒子分散液を調製した。粒子分散液を銅試験板(銅板JIS H3100)に200μmの厚みで塗布し80℃のオーブン中で乾燥させ塗膜を作製した。
得られた塗膜に粘着テープを付着後剥離させて、剥離の程度を評価した。AまたはBであることが好ましい。
A:はがれがない。
B:塗膜の一部がはがれる。
C:全面的に大はがれを生じている。
【0086】
(防曇性評価)
3%粒子分散液をガラス板表面にアプリケーターを用いて200μmの厚みで塗布し、80℃のオーブン中で乾燥させコーティング基材を作製した。
コーティング基材に常温で呼気を吹きかけ、表面に生じる曇りの有無を目視で評価した
以下の評価基準に基づいて防曇性を評価した。AまたはBであることが好ましい。
A:曇りがなかった
B:曇りがわずかに見られた
C:コーティングの全面が曇った