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特開2022-134766設備稼働支援装置及びプログラム、フェーズ特定ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134766
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】設備稼働支援装置及びプログラム、フェーズ特定ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220908BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G05B19/418 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034145
(22)【出願日】2021-03-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】517091447
【氏名又は名称】株式会社ハイテックシステム
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151161
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 彩
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃昌
(72)【発明者】
【氏名】金田 龍貴
(72)【発明者】
【氏名】高峰 尚
(72)【発明者】
【氏名】宮森 直樹
【テーマコード(参考)】
2G024
3C100
【Fターム(参考)】
2G024AD23
2G024AD33
2G024BA19
2G024BA27
2G024CA26
2G024CA30
2G024FA01
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA59
3C100BB13
3C100BB33
(57)【要約】
【課題】安定フェーズにおける潤滑液の液面の状況が容易に把握できるように報知する液面状況報知装置及び液面状況報知プログラムを提供する。
【解決手段】液面状況報知装置21は、偏差算出部31と回転速度判定部32と偏差判定部33と相違度算出部36と画像生成部38とを備える。偏差算出部31は、液高データが入力される毎に、液面高さの移動標準偏差を算出する。回転速度判定部32は、最新液高データの回転速度が回転速度基準値以上であるか否かを判定する。偏差判定部33は、移動標準偏差が閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した最新液高データを特定フェーズデータとする。相違度算出部36は、第1所定時間分の複数の特定フェーズデータが入力される毎に、これらの各々と、履歴特定フェーズデータに基づく履歴基準との相違度を求める。画像生成部38は相違度を表す画像を生成して表示部に表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の前記潤滑液の液面高さと時刻と前記回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される前記所定個数の前記液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する移動標準偏差算出部と、
前記最新液高データに示される前記回転速度を予め設定された回転速度基準値と比較して、前記回転速度基準値以上であるか否かを判定する回転速度判定部と、
前記回転速度判定部により肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、前記移動標準偏差算出部により算出された前記移動標準偏差を予め設定された閾値と比較して、前記閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した前記移動標準偏差が算出された前記最新液高データを、前記設備の稼働状態のうちの特定フェーズに属する特定フェーズデータとする移動標準偏差判定部と、
過去の直近の前記特定フェーズ以前における複数の特定フェーズデータである履歴特定フェーズデータを記憶する履歴データ記憶部と、
第1所定時間分の複数の前記特定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された前記複数の特定フェーズデータの各々と、前記履歴特定フェーズデータに示される複数の前記液面高さから算出される履歴基準との相違度を求める相違度算出部と、
前記相違度を表す画像を生成する画像生成部と
を備える設備稼働支援装置。
【請求項2】
前記特定フェーズデータは、前記特定フェーズとしての安定フェーズに属する安定フェーズデータである請求項1に記載の設備稼働支援装置。
【請求項3】
前記回転速度判定部により肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、前記最新液高データに先行して入力された直近の液高データである先行液高データが前記特定フェーズデータとして特定されたか否かを判定する先行フェーズ判定部をさらに備え、
前記移動標準偏差判定部は、前記先行データ判定部で肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、算出された前記移動標準偏差を前記閾値と比較する請求項1または2に記載の設備稼働支援装置。
【請求項4】
前記回転速度判定部により肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、前記回転体の回転速度が上昇して前記回転速度基準値に達した時点から前記時刻までの経過時間と、前記移動標準偏差の窓とを比較し、前記経過時間が窓よりも短い第2所定時間以上であるか否かを判定する経過時間判定部をさらに備え、
前記移動標準偏差判定部は、前記経過時間判定部で肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、入力された前記最新液高データの移動標準偏差と前記閾値と比較する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の設備稼働支援装置。
【請求項5】
前記回転速度判定部で肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、過去の直近の液高データが前記回転速度判定部において肯定判定されたか否かを判定する直前状態判定部をさらに備え、
前記移動標準偏差判定部は、前記直前状態判定部で肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、算出された前記移動標準偏差と前記閾値とを比較する請求項4に記載の設備稼働支援装置。
【請求項6】
前記履歴データ記憶部は、前記第1所定時間よりも長い第3所定時間における複数の前記履歴特定フェーズデータを記憶する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の設備稼働支援装置。
【請求項7】
第1所定時間の複数の前記特定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された複数の特定フェーズデータである最新特定フェーズデータ群に示される複数の前記液面高さの各々と、先行して入力された直近の前記第1所定時間の複数の安定フェーズデータである先行安定フェーズデータ群に示される複数の前記液面高さの傾向を示す第1の傾向値とに基づいて、前記最新特定フェーズデータ群に示される複数の前記液面高さの各々に対する第1の評価値を算出する第1評価値算出部と、
複数の前記履歴特定フェーズデータのうち、前記第1所定時間分の履歴特定フェーズデータ群に示される複数の前記液面高さの各々と、前記履歴特定フェーズデータ群に先行した前記第1所定時間分の直近の複数の特定フェーズデータである先行履歴特定データ群に示される複数の前記液面高さの傾向を示す第2の傾向値とに基づいて、前記履歴特定フェーズデータ群に示される複数の前記液面高さの各々に対する第2の評価値を算出する第2評価値算出部とを備え、
前記相違度算出部は、前記第1の評価値と前記第2の評価値とに基づいて前記相違度を求める請求項1ないし6のいずれか1項に記載の設備稼働支援装置。
【請求項8】
潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の前記潤滑液の液面高さと時刻と前記回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される前記所定個数の前記液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する移動標準偏差算出ステップと、
前記最新液高さデータに示される前記回転速度を回転速度基準値と比較して、前記回転速度基準値以上であるか否かを判定する回転速度判定ステップと、
前記回転速度判定ステップにより肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、前記移動標準偏差算出ステップにより算出された前記移動標準偏差を予め設定された閾値と比較して、前記閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した前記移動標準偏差が算出された前記最新液高データを、前記設備の稼働状態のうちの特定フェーズに属する特定フェーズデータとする移動標準偏差判定ステップと、
過去の直近の前記特定フェーズ以前における複数の特定フェーズデータである履歴特定フェーズデータを記憶する履歴データ記憶ステップと、
第1所定時間分の複数の前記特定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された前記複数の特定フェーズデータの各々と前記履歴特定フェーズデータに示される複数の前記液面高さから算出される履歴基準との相違度を求める相違度算出ステップと、
前記相違度を表す画像を生成して表示部に表示させる画像生成ステップと
をコンピュータに実行させる設備稼働支援プログラム。
【請求項9】
潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の前記潤滑液の液面高さと時刻と前記回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される前記所定個数の前記液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する移動標準偏差算出部と、
前記最新液高データに示される前記回転速度を予め設定された回転速度基準値と比較して、前記回転速度基準値以上であるか否かを判定し、否定判定した前記回転速度を示す前記最新液高データを前記設備の停止フェーズに属する停止フェーズデータとして特定する回転速度判定部と、
前記回転速度判定部により肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、前記移動標準偏差算出部により算出された前記移動標準偏差を予め設定された閾値と比較して、前記閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した前記移動標準偏差が算出された前記最新液高データを、前記設備の安定フェーズに属する安定フェーズデータとして特定する移動標準偏差判定部と、
を備えるフェーズ特定ユニット。
【請求項10】
潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の前記潤滑液の液面高さと時刻と前記回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される前記所定個数の前記液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する移動標準偏差算出ステップと、
前記最新液高データに示される前記回転速度を予め設定された回転速度基準値と比較して、前記回転速度基準値以上であるか否かを判定し、否定判定した前記回転速度を示す前記最新液高データを前記設備の停止フェーズに属する停止フェーズデータとして特定する回転速度判定ステップと、
前記回転速度判定ステップにより肯定判定された前記最新液高データが入力された場合に、前記移動標準偏差算出部により算出された前記移動標準偏差を予め設定された第1閾値と比較して、前記第1閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した前記移動標準偏差が算出された前記最新液高データを、前記設備の安定フェーズに属する安定フェーズデータとして特定する移動標準偏差判定ステップと、
をコンピュータに実行させるフェーズ特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備稼働支援装置及び設備稼働支援プログラム、フェーズ特定ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電設備などの各種発電設備や石油精製設備などでは、設備の各部に備えられる検出機器からの検出信号に基づいて、異常の検出を図ることが行われている。例えば、水力発電設備の水車や発電機等には、回転体の回転軸を支持する軸受が潤滑油や水などで液浴状態になっているものが多くあり、潤滑液の液面の高さや液温を検出している。
【0003】
ところで液面の高さを検出する手法としては、従来より多くの提案がされており、例えば、特許文献1は、液面レベルを測定する液体に対して浮力を有する部材で形成されたフロートの、前記液面レベルに応じた移動にともなって回転する磁石の磁束密度を検出して、これを電気信号に変換する磁電変換素子を有し、この電気信号に基づいて前記液面レベルを測定する液面レベルセンサを開示している。液面の高さを検出するこのような液面高さ検出器は、精度よく液面の高さを検出することができるので有効である。
【0004】
潤滑液の液面の高さは、設備の稼働状態や、水車などの回転体の回転状態の他に、設備によっても大きく異なる。そのため、対象とする設備の稼働に詳しい者が、液面の高さ及びその推移から、異常であるか否かを判定している場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-116775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1などに開示される液面高さ検出器は、液面高さを精度良く検出することができるが、検出された液面高さ及びその推移が設備にとっての異常であるか否かの判定には、上記のように熟練を要する。また、液面高さは、停止や運転といった設備の稼働状態毎に異なる値あるいは推移を示すことが多い。しかし、停止と運転との境界は明確ではなく、また、一の場面の中でも液面高さの挙動は一様ではないことから、稼働において重要である運転の場面についてだけみても、液面高さ及びその推移が異常であるか否かの判定をすることは熟練者にとっても容易ではない。
【0007】
そこで、本発明は、軸受が潤滑液に液浴状態にされた回転軸を有する回転体を備える設備について、運転場面における潤滑液の液面の状況が容易に把握できる設備稼働支援装置及び設備稼働支援プログラム、フェーズ特定ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の設備稼働支援装置は、移動標準偏差算出部と、回転速度判定部と、移動標準偏差判定部と、履歴データ記憶部と、相違度算出部と、画像生成部とを備える。移動標準偏差算出部は、潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の潤滑液の液面高さと時刻と回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。回転速度判定部は、最新液高データに示される回転速度を予め設定された回転速度基準値と比較して、回転速度基準値以上であるか否かを判定する。移動標準偏差判定部は、回転速度判定部により肯定判定された最新液高データが入力された場合に、移動標準偏差算出部により算出された移動標準偏差を予め設定された閾値と比較して、閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した移動標準偏差が算出された最新液高データを、設備の稼働状態のうちの特定フェーズに属する特定フェーズデータとする。履歴データ記憶部は、過去の直近の特定フェーズ以前における複数の特定フェーズデータである履歴特定フェーズデータを記憶する。相違度算出部は、第1所定時間分の複数の特定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された複数の特定フェーズデータの各々と、履歴特定フェーズデータに示される複数の液面高さから算出される履歴基準との相違度を求める。画像生成部は、相違度を表す画像を生成する。
【0009】
特定フェーズデータは、特定フェーズとしての安定フェーズに属する安定フェーズデータであることが好ましい。
【0010】
回転速度判定部により肯定判定された最新液高データが入力された場合に、最新液高データに先行して入力された直近の液高データである先行液高データが特定フェーズデータとして特定されたか否かを判定する先行フェーズ判定部をさらに備えることが好ましい。この場合に、移動標準偏差判定部は、先行データ判定部で肯定判定され記最新液高データが入力された場合に、算出された移動標準偏差を閾値と比較することが好ましい。
【0011】
回転速度判定部により肯定判定された最新液高データが入力された場合に、回転体の回転速度が上昇して回転速度基準値に達した時点から時刻までの経過時間と、移動標準偏差の窓とを比較し、経過時間が窓よりも短い第2所定時間以上であるか否かを判定する経過時間判定部をさらに備えることが好ましい。この場合には、移動標準偏差判定部は、経過時間判定部で肯定判定された最新液高データが入力された場合に、入力された最新液高データの移動標準偏差と閾値と比較する。
【0012】
回転速度判定部で肯定判定された最新液高データが入力された場合に、過去の直近の液高データが回転速度判定部において肯定判定されたか否かを判定する直前状態判定部をさらに備えることが好ましい。この場合には、移動標準偏差判定部は、直前状態判定部で肯定判定された最新液高データが入力された場合に、算出された移動標準偏差と閾値とを比較する。
【0013】
履歴データ記憶部は、第1所定時間よりも長い第3所定時間における複数の履歴安定フェーズデータを記憶することが好ましい。
【0014】
第1評価値算出部と第2評価値算出部とを備えることが好ましい。第1評価値算出部は、第1所定時間の複数の特定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された複数の特定フェーズデータである最新特定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々と、先行して入力された直近の第1所定時間の複数の安定フェーズデータである先行安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの傾向を示す第1の傾向値とに基づいて、最新特定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々に対する第1の評価値を算出する。第2評価値算出部は、複数の履歴特定フェーズデータのうち、第1所定時間分の履歴特定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々と、履歴特定フェーズデータ群に先行した第1所定時間分の直近の複数の安定フェーズデータである先行履歴安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの傾向を示す第2の傾向値とに基づいて、履歴安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々に対する第2の評価値を算出する。この場合に、相違度算出部は、第1の評価値と第2の評価値とに基づいて相違度を求める。
【0015】
本発明の設備稼働支援プログラムは、移動標準偏差算出ステップと、回転速度判定ステップと、移動標準偏差判定ステップと、履歴データ記憶ステップと、相違度算出ステップと、画像生成ステップとをコンピュータに実行させる。移動標準偏差算出ステップは、潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の潤滑液の液面高さと時刻と回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。回転速度判定ステップは、最新液高さデータに示される回転速度を回転速度基準値と比較して、回転速度基準値以上であるか否かを判定する。移動標準偏差判定ステップは、回転速度判定ステップにより肯定判定された最新液高データが入力された場合に、移動標準偏差算出部により算出された移動標準偏差を閾値と比較して、閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した移動標準偏差が算出された最新液高データを、設備の稼働状態のうちの特定フェーズに属する特定フェーズデータとする。履歴データ記憶ステップは、過去の直近の特定フェーズ以前における複数の特定フェーズデータである履歴特定フェーズデータを記憶する。相違度算出ステップは、第1所定時間分の複数の特定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された複数の特定フェーズデータの各々と履歴特定フェーズデータに示される複数の液面高さから算出される履歴基準との相違度を求める。画像生成ステップは、相違度を表す画像を生成して表示部に表示させる。
【0016】
本発明のフェーズ特定ユニットは、移動標準偏差算出部と、回転速度判定部と、移動標準偏差判定部とを備える。移動標準偏差算出部は、潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の潤滑液の液面高さと時刻と回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。回転速度判定部は、最新液高データに示される回転速度を予め設定された回転速度基準値と比較して、回転速度基準値以上であるか否かを判定し、否定判定した回転速度を示す最新液高データを設備の停止フェーズに属する停止フェーズデータとして特定する。移動標準偏差判定部は、回転速度判定部により肯定判定された最新液高データが入力された場合に、移動標準偏差算出部により算出された移動標準偏差を予め設定された閾値と比較して、閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した移動標準偏差が算出された最新液高データを、設備の安定フェーズに属する安定フェーズデータとして特定する。
【0017】
本発明のフェーズ特定プログラムは、移動標準偏差算出ステップと、回転速度判定ステップと。移動標準偏差判定ステップとをコンピュータに実行させる。移動標準偏差算出ステップは、潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の潤滑液の液面高さと時刻と回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。回転速度判定ステップは、最新液高データに示される回転速度を予め設定された回転速度基準値と比較して、回転速度基準値以上であるか否かを判定し、否定判定した回転速度を示す最新液高データを設備の停止フェーズに属する停止フェーズデータとして特定する。移動標準偏差判定ステップは、回転速度判定ステップにより肯定判定された最新液高データが入力された場合に、移動標準偏差算出部により算出された移動標準偏差を予め設定された第1閾値と比較して、第1閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した移動標準偏差が算出された最新液高データを、設備の安定フェーズに属する安定フェーズデータとして特定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軸受が潤滑液に液浴状態にされた回転軸を有する回転体を備える設備について、運転場面における潤滑液の液面の状況が容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】発電システムの概略図である。
図2】発電システムの状態フェーズの説明図である。
図3】液面状況報知装置の機能ブロック図である。
図4】履歴データ処理部の機能ブロック図である。
図5】履歴データ処理部における標準偏差の算出方法の説明図である。
図6】液面状況報知方法のフロー図である。
図7】フェーズ判定工程のフロー図である。
図8】履歴データ処理工程のフロー図である。
図9】表示部に表示される画像の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示す発電システム10は、本発明の一実施形態である。発電システム10は、例えば発電所に設けられた発電プラント11と、発電プラント11に接続された液面状況報知アセンブリ(以下、報知アセンブリと称する)12とを備える。発電プラント11は、設備の一例である発電設備15と、発電設備15の各部を統括的に制御するコントローラ16とを備える。なお、発電プラント11と報知アセンブリ12との接続は、ネットワークなどを介して通信可能な接続であればよく、有線接続(電気的な接続)であっても無線接続であってもよい。また、ひとつのコンピュータ(図示無し)に所定のプログラムを実行させてコントローラ16と報知アセンブリ11として機能させてもよい。
【0021】
発電設備15は、この例では水力発電を行う設備となっており、水車発電機(以下、単に「発電機」と称する)18A、入口弁18B、水車18C、送電部18D等から構成されている。入口弁18Bは、たとえばダムの取水口(図示無し)と水車18Cとのそれぞれに接続し、開閉することにより、水車18Cへの水の案内と案内停止とを切り替える。
【0022】
水車18Cは、水車本体19a、回転軸19b、潤滑液終了部19c等から構成されている。水車本体10aは回転体の一例であり、案内されてくる水により回転する。回転軸19bは、水車本体19aの回転中心であり、水車本体19aに固定されることで水車本体19aと一体に周方向に回転する。潤滑液収容部19cは、回転軸19bの水車軸受(図示無し)の潤滑液(図示無し)を収容する。水車軸受は潤滑液収容部19cにおいて潤滑液に液浴状態とされている。水車18Cに備えられる軸受としては、水車軸受の他に、スラスト軸受、上部軸受、下部軸受などがあり、また水車の型式によっては他の軸受もあり、潤滑液に液浴状態とされる軸受を備える場合のいずれであっても、報知アセンブリ12は用いることができる。軸受の潤滑液は、潤滑油の場合もあるし、水の場合もある。
【0023】
発電機18Aは、水車18Cの回転の力により発電する。送電部18Dは、発電機18Aで発生させた電気を、例えば、発電システム10が設けられている発電所(図示無し)の外部等へ送出する。
【0024】
コントローラ16は、発電設備15の各部を統括的に制御することで、発電設備15を稼働(停止も含む)させ、例えば起動や停止においては所定のシーケンスを実行させる。コントローラ16は、発電設備15から機器群の各機器の動作を示す動作信号を取得して、取得した動作信号に基づき発電設備15に対してフィードバック制御を行う場合もある。
【0025】
また、コントローラ16は、発電設備15に備えられている各種の検出機器等からの検出信号を取得し、これらのうちの一部の検出信号を、報知アセンブリ12の液面状況報知装置(以下、報知装置と称する)21に出力する。コントローラ16は検出機器等からの検出信号を、予め設定された一定の時間間隔(タイミング)で取得している(本例での時間間隔は1分)が、時間間隔は一定でなくてもよい。
【0026】
検出機器からの検出信号は、回転軸19bの軸受が浸漬されている水車18Cの回転速度(単位時間あたりの回転数)、潤滑液の液面高さ(以下、単に「液面高さ」と称する)、潤滑液の温度などを示す各信号である。検出信号は、発電設備15の各検出機器から、コントローラ16を介さずに、報知装置21へ直接出力してもよい。
【0027】
この例の発電システム10は、報知装置21と複数の端末22a~22cとで構成されている報知アセンブリ12を備えるが、複数の端末22a~22cは無くてもよい。すなわち、発電プラント11と報知装置21とで構成される発電システムでもよい。なお、以下の説明において端末22a~22cを区別しない場合には、端末22と記載する。
【0028】
報知装置21は、発電プラント11から入力された検出信号、この例ではコントローラ16から入力された検出信号に基づき、運転中の発電設備における水車18Cの軸受における潤滑液の液面の状況(以下、液面状況と称する)を報知する。報知装置21は、具体的には、運転中の発電設備15における液面高さが異常である可能性、または異常であった可能性の確率を、液面状況として報知する。
【0029】
この例の報知装置21と複数の端末22a~22cの各々とは通信可能に構成されており、報知装置21はシーケンスの実行状況を端末22に送信することで、端末22により報知することもできるようになっている。報知装置21から端末22への送信は、例えば、端末22から報知装置21に対する送信指示を報知装置21が取得した場合に、その取得に応答して行う。この例の端末22は、液晶ディスプレイなどの表示部(図示無し)を備える例えばパーソナルコンピュータ(以下、PCと称する)であり、PCとしては、デスクトップ型PC,モバイルPC(タブレット端末,スマートフォン等を含む)などが挙げられる。なお、報知アセンブリ12が備える端末22の数は本例の3個に限られない。
【0030】
本例では、発電設備15の稼働場面を、図2に示すように、停止フェーズと変動フェーズと安定フェーズとの少なくとも3つのフェーズに分割(以下、フェーズ分割と称する)する。停止フェーズは、水車本体19a(図1参照)の回転が停止中であるとみなすフェーズである。安定フェーズは、水車本体19aが回転している状態において発電設備15が発電を行い、液面高さが安定した安定状態であるとみなすフェーズである。変動フェーズは、水車本体19aが回転している状態において、液面高さの変動が過度に大きい不安定状態であるとみなすフェーズであり、安定状態とはみなさないフェーズである。発電設備15の稼働場面は、従来、例えば主機運転指令や発電機18Aの起動信号及び停止信号に基づいてフェーズが特定される手法があったが、本例では上記のように、回転体の回転速度と液面高さの変動状態に基づいてフェーズを分割して特定する。
【0031】
発電設備15は、停止フェーズから変動フェーズを経て安定フェーズになり、水車本体19aの回転速度が低下することにより停止フェーズに戻る。なお、一旦安定フェーズに移行しても、液面高さが不安定になる場合があり、そのような場合には、安定フェーズから変動フェーズにフェーズが移行する。また、停止フェーズから安定フェーズに移行する際や、安定フェーズから停止フェーズに移行する際に、変動フェーズを介して移行する場合もある。報知装置21(図1参照)は、設備の稼働を支援する設備稼働支援装置の一例であり、上記のフェーズのうち安定フェーズにおける液面状況を報知する安定フェーズ液面状況報知装置としての機能をもち、さらに、停止フェーズにおける液面状況を報知する停止フェーズ液面状況報知装置としての機能ももってもよい。
【0032】
図3に示すように、水車18Cは、回転速度計24aと、液面高さ検出器24bとを有する。回転速度計24aは、水車本体19a(図1参照)の回転速度を検出し、タイムスタンプにより送信日時を付加して、検出した回転速度を信号としてコントローラ16に出力する。液面高さ検出器24bは、液面高さを検出し、回転速度計24aと同様にタイムスタンプにより送信日時を付加して、検出した液面高さを信号としてコントローラ16に出力する。このように、回転速度と液面高さとの各信号には時刻の情報が含まれている。コントローラ16は、入力された回転速度と液面高さとを関連付け、タイムスタンプにより時刻(日時を含む)を付加し、これらを含む液高データとし、信号として報知装置21に出力する。このように、液高データは、回転速度と液面高さと時刻とが関連付けられたデータである。なお、液高データにおいては、回転速度と液面高さとの一組に対してひとつの時刻が情報として関連付けられる。コントローラ16は、本例では、予め設定された一定の時間間隔(タイミング)でタイムスタンプによる時刻の付加を行って、液高データを生成し、報知装置21へ出力しており、時間間隔を1分としている。しかし、時間間隔は1分に限られず、また、一定でなくてもよい。
【0033】
コントローラ16を介さずに、回転速度計24aと液面高さ検出器24bとのそれぞれから報知装置21にこれらを出力する場合には、回転速度計24aと液面高さ検出器24bとがそれぞれタイムスタンプにより送信日時を付加して、回転速度と液面高さとのそれぞれを時刻と関連付けて出力するとよい。この場合には、報知装置21が、これらの入力に応答して、タイムスタンプにより時刻を付加して、液高データを生成すればよい。
【0034】
信号化された回転速度と液面高さとが入力される報知装置21は、移動標準偏差算出部(以下、単に「偏差算出部」と称する)31と、回転速度判定部32と、移動標準偏差判定部(以下、単に「偏差判定部」と称する)33と、相違度算出部36と、履歴データ記憶部37と、画像生成部38とを備える。報知装置21は、表示部41を備えてもよく、本例でもそのようにしている。報知装置21は、本例のように、さらに、フィルタ42と、現行データ記憶部43と、直前状態判定部46と、先行フェーズ判定部47と、経過時間判定部48と、第1評価値算出部51と、履歴データ処理部52とを備えることが好ましい。第1評価値算出部51と相違度算出部36と画像生成部38と表示部41とは、安定フェーズ液面状況報知ユニット55を構成している。
【0035】
本例の報知装置21は、停止フェーズにおける水車18Cの軸受における潤滑液の液面状況を報知する停止フェーズ液面状況報知ユニット56を備えるが、必ずしも備える必要はない。停止フェーズ液面状況報知ユニット56は、具体的には、停止フェーズ、すなわち積極的には運転していないとみなすことができる非運転状態の発電設備15における液面高さが異常である可能性、または異常であった可能性の確率を、液面状況として報知する。
【0036】
偏差算出部31は、コントローラ16に接続し、コントローラ16から出力された液高データが入力される。偏差算出部31は、コントローラ16に直接接続してもよいし、入力された液高データのうち所定の条件を満たす液高データのみを出力するフィルタ42を介して、コントローラ16に接続してもよい。本例ではフィルタ42を介して接続している。
【0037】
フィルタ42は、コントローラ16に、直接接続する第1フィルタ部としての規格データ抽出部57と、規格データ抽出部57と偏差算出部31とのそれぞれに直接接続する第2フィルタ部としての時刻チェッカ58とを有する。規格データ抽出部57は、入力された液高データと、予め定められた条件としての規格とを比較し、液高データが規格を満たすか否かを判定し、肯定(規格を満たす)判定をした液高データのみを時刻チェッカ58に出力する。規格データ抽出部は、否定(規格を満たさない)判定をした液高データを破棄する。本例での規格は、無効と予め決定した無効値と、液面高さの予め設定した上限及び下限としているがこれに限定されず、例えば、潤滑液の温度の上限及び下限、回転速度の上限及び下限などでもよい。
【0038】
時刻チェッカ58は、入力された液高データの時刻が正常であるか否かを判定する。時刻チェッカ58は肯定(時刻が正常である)判定をした場合には、肯定判定した時刻を含む液高データを、偏差算出部31に出力し、否定(時刻が正常ではない)判定をした場合にはその液高データを破棄する。時刻が正常であるとは、直前の液高データに示される時刻から今回入力された液高データに示される時刻までの時間が予め設定した規定時間であることとしている。直前の液高データとは、前回入力された液高データである。例えば、本例の場合には前述のように1分という一定の時間間隔で時刻を付加して液高データを生成しているので、上記の規定時間を1分として判定を行う。時刻チェッカ58には上記の規定時間と直前の液高データに示される時刻が記憶されていることで上記の判定を行っているが、判定の手法は特に限定されない。なお、フィルタ42は、規格データ抽出部57と時刻チェッカ58とのいずれか一方のみを有するものでもよいし、これらの代わりに他のフィルタ部を有するものでもよい。
【0039】
偏差算出部31は、液高データが入力された場合に、入力に応答して、この入力された液高データ(以下、最新液高データと称する)を含む直近の液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を算出する。例えば、順次入力される液高データをP(N=1,2,3,・・・i-2,i-1,i)とし、最新液高データをPとし、上記の所定個数を20個とするときに、これら20個の液面高さの標準偏差は、最新液高データPとこの最新液高データPに先行した液高データPi-1,Pi-2,・・・,Pi-18,Pi-19とに含まれる液面高さの標準偏差である。また、次回の最新液高データが入力された場合の標準偏差は、最新液高データPi+1とこの最新液高データPi+1に先行した液高データP,Pi-1,・・・,Pi-17,Pi-18とに含まれる液面高さの標準偏差である。このように、偏差算出部31は、最新液高データの入力に応答して標準偏差を求めるので、最新液高データが入力される毎に求めることになり、また、部分時系列データである所定個数の液高データにそれぞれ示される液面高さの標準偏差を求めるので、この標準偏差は移動標準偏差である。このように、偏差算出部31は、液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。
【0040】
最新液高データ以外の直近の液高データ、すなわち上記所定個数から最新液高データの1個を減算した個数の液高データは、現行データ記憶部43に記憶されており、偏差算出部31は現行データ記憶部43に接続する。偏差算出部31は、最新液高データの入力に応答して、現行データ記憶部43に記憶されている複数の液高データのそれぞれに含まれる時刻に基づいて、最新液高データ以外の直近の液高データを、所定個数から1個減算した個数分特定して、それぞれの液面高さを読み出す。読み出した液面高さと最新液高データの液面高さとから、移動標準偏差を算出する。
【0041】
偏差算出部31は、最新液高データを、現行データ記憶部43に液高データとして記憶し、さらに、算出した移動標準偏差を最新液高データに関連付けて記憶する。なお、現行データ記憶部43への最新液高データの記憶は、偏差算出部31以外の、例えば本例においては時刻チェッカ58が行ってもよい。偏差算出部31は、移動標準偏差を算出した最新液高データを、回転速度判定部32に出力する。偏差算出部31は、算出した移動標準偏差を、回転速度判定部32への出力に加えて現行データ記憶部43に記憶し、この現行データ記憶部43を、履歴データ処理部52の学習演算部73(図4参照)によって読み取ってもよい。また、移動標準偏差は、現行データ記憶部43から履歴データ記憶部37に複写(コピー)され、学習演算部73が履歴データ記憶部37を読み込んでもよいし、偏差算出部31から学習演算部73に出力してもよい。なお、現行データ記憶部43に対して新たな情報が記憶された場合には、記憶された新たな情報が履歴データ記憶部37に複写あるいは他の情報と関連付けるなどして記憶されるように構成してもよい。
【0042】
移動標準偏差を算出するための液面高さの個数、すなわち上記の「所定個数」は、特に限定されず、算出される移動標準偏差の確からしさ及び異常の可能性をより精緻に求めて報知することと、偏差算出部31における処理の負荷とのバランスを図って設定すればよい。本例では20個としている。
【0043】
移動標準偏差の移動幅(ずらし量)は、最新液高データと、前回入力された液高データとの時間的間隔となり、偏差算出部31の処理の負荷と、異常の可能性を精緻に求めて報知することとのバランスが図って設定することが好ましい。本例では、移動標準偏差の移動量を60秒、すなわち1分としている。
【0044】
移動標準偏差の窓は、適宜決定することができ、移動標準偏差の窓は、液高データの取得間隔や液面高さの変化率に基づいて決定することが好ましい。本例では、移動標準偏差の窓を20分としている。移動標準偏差の窓は、報知装置21に備えられるキーボードやタッチパネルディスプレイなどの入力部(図示無し)によって入力されることで設定されてもよいし、コンピュータを報知装置21として機能させるプログラムにおいて予め設定されていてもよい。
【0045】
回転速度判定部32は、発電プラント11(図1参照)から報知装置21に送信された液高データを、停止フェーズに属する停止液高データと、停止フェーズに属さない、すなわち、変動フェーズと安定フェーズとのいずれかに属する液高データとに振り分けるためのものである。報知装置21が、安定フェーズに属する安定フェーズデータについて、異常の可能性を報知する安定フェーズ液面状況報知装置として機能する場合には、回転速度判定部32は、報知装置21に送信された液高データから停止フェーズデータを取り除くデータ除去部としても機能する。
【0046】
回転速度判定部32は、最新液高データに示される回転速度を、予め設定された回転速度基準値と比較して、最新液高データに示される回転速度が回転速度基準値以上であるか否かを判定する。回転速度判定部32は、肯定(回転速度が回転速度基準値以上である)判定をした場合には、肯定判定した回転速度を示す最新液高データを、直前状態判定部46に出力する。回転速度判定部32は、否定(回転速度が回転速度基準値未満である)判定をした場合にはその最新液高データを停止フェーズ液面状況報知ユニット56に出力し、所定の処理を行う。回転速度判定部32は、また、停止フェーズデータとして特定した最新液高データを示す現行データ記憶部43内の液高データに停止フェーズデータを関連付けて記憶する。このように、停止フェーズデータは、設備の稼働状態の特定フェーズのひとつである停止フェーズに属するデータである。
【0047】
回転速度判定部32は前述の通り、発電プラント11からの液高データを停止フェーズデータと、変動フェーズデータ及び安定フェーズデータとに振り分けるためのものであるから、回転速度基準値以上であるか否かを判定する態様に限られない。例えば、回転速度基準値未満であるか否かを判定し、肯定判定した回転速度を示す最新液高データを停止フェーズデータとし、否定判定した回転速度を示す最新液高データを直前状態判定部46に出力してもよい。また、例えば、最新液高データの回転速度が回転速度基準値以上であるか回転速度基準値未満であるかを特定し、回転速度基準値未満と特定した回転速度を示す最新液高データを停止フェーズデータとし、回転速度基準値以上と特定した回転速度を示す最新液高データを直前状態判定部46に出力してもよい。なお、後述のように、最新液高データは、停止フェーズデータとして特定されると現行データ記憶部43に記憶され、そのため、過去に最新液高データとされた液高データのうち停止フェーズデータとして特定された液高データは、停止フェーズデータと関連付けて現行データ記憶部43に記憶されている。
【0048】
回転速度基準値は、水車本体19a(図1参照)の大きさや、水車18Cのエネルギ変換率、発電機18Aにおける発電効率等など、異常の可能性を報知する対象の発電設備15に応じて、適宜設定される。回転速度基準値は、報知装置21に備えられるキーボードやタッチパネルディスプレイなどの入力部(図示無し)によって入力されることで設定されてもよいし、コンピュータを報知装置21として機能させるプログラムにおいて予め設定されていてもよい。
【0049】
直前状態判定部46は、回転速度判定部32で肯定判定された最新液高データが入力された場合に、この最新液高データに先行して入力された直近の液高データである先行液高データが回転速度判定部32において肯定判定されたものであるか否かを判定する。具体的には、最新液高データが入力された場合に、直前状態判定部46は、先行液高データに示される回転速度が回転速度基準値以上であったか否かを判定する。直前状態判定部46は、肯定(先行液高データの回転速度が回転速度以上である)判定した場合には、最新液高データを、先行フェーズ判定部47に出力する。否定(先行液高データの回転速度が回転速度以上ではない)判定した場合には、その最新液高データを、変動フェーズに属する変動フェーズデータとして特定する。なお、先行液高データの特定は、現行データ記憶部43に記憶されている複数の液高データの各々に含まれる時刻に基づき、最新液高データの時刻に最も時間的に近い時刻を含む液高データを先行液高データとすることで行う。
【0050】
先行フェーズ判定部47は、回転速度判定部32により肯定判定され、この例ではさらに直前状態判定部46で肯定判定された最新液高データが入力された場合に、上記の先行液高データを、現行データ記憶部43に記憶されている複数の液高データの中から特定する。特定は、直前状態判定部46の場合と同様に、現行データ記憶部43に記憶されている複数の液高データの各々に含まれる時刻に基づき、行うとよい。そして、先行フェーズ判定部47は、特定した先行液高データが安定フェーズデータとして特定されたか否かを判定する。なお、後述のように、最新液高データは、安定フェーズデータとして特定されると安定フェーズデータと関連付けて現行データ記憶部43に記憶されるので、過去に最新液高データとされた液高データのうち安定フェーズデータとして特定された液高データは、安定フェーズデータと関連付けて現行データ記憶部43に記憶されている。なお、直前状態判定部46を設けない場合には、回転速度判定部32により肯定判定された最新液高データが、回転速度判定部32から入力される。
【0051】
先行フェーズ判定部47は、肯定(先行液高データが安定フェーズデータである)判定した場合には、最新液高データを偏差判定部33に出力する。否定(先行液高データが安定フェーズデータではない)判定した場合には、最新液高データを経過時間判定部48に出力する。
【0052】
偏差判定部33は、回転速度判定部32により肯定判定され、この例ではさらに直前状態判定部46で肯定判定され、先行フェーズ判定部47で肯定判定された最新液高データが入力された場合に、偏差算出部31により算出された移動標準偏差を予め設定された閾値と比較して、閾値以下であるか否かを判定する。肯定判定、すなわち、最新液高データを部分時系列データの最後の液高データとして算出した移動標準偏差が閾値以下であると判定した場合には、その最新液高データを、安定フェーズに属する安定フェーズデータとして特定する。このように、安定フェーズデータは、設備の稼働状態の特定フェーズのひとつである安定フェーズに属するデータである。偏差判定部33は、安定フェーズデータとして特定した最新液高データを示す現行データ記憶部43内の液高データに安定フェーズデータを関連付けて記憶する。偏差判定部33は、肯定判定した場合には、その最新液高データを、第1評価値算出部51に出力する。
【0053】
偏差判定部33は、否定判定、すなわち、最新液高データを部分時系列データの最後の液高データとして算出した移動標準偏差が閾値以下であると判定した場合には、その最新液高データを、変動フェーズに属する変動フェーズデータとして特定する。なお、直前状態判定部46と先行フェーズ判定部47とを設けない場合には、回転速度判定部32により肯定判定された最新液高データは、回転速度判定部32から入力される。偏差判定部33に加えて、この偏差判定部と同様に構成される偏差判定部(図示無し)を設けてもよく、本例においても、先行フェーズ判定部47と偏差判定部33との間に設けてある。ただしこの偏差判定部で判定に用いる閾値は、偏差判定部33で用いる閾値よりも大きい。この偏差判定部は移動標準偏差が閾値以下であると肯定判定した場合には、肯定判定した最新液高データを偏差判定部33に出力し、閾値以下ではないと否定判定した場合には、否定判定した最新液高データを、変動フェーズデータとして特定する。
【0054】
上記の閾値は、報知装置21に備えられるキーボードやタッチパネルディスプレイなどの入力部(図示無し)によって入力されることで設定されてもよいし、コンピュータを報知装置21として機能させるプログラムにおいて予め設定されていてもよい。また、閾値は、履歴データ処理部52で求めた後述の閾値TA,TBを履歴データ処理部52から入力し、これらを閾値として用いてもよい。本例では、履歴データ処理部52で求めた閾値TBを偏差判定部33に入力して、この値TBを偏差判定部33で用いる閾値としている。そして、偏差判定部33に加えて設けた図示しない偏差判定部には、履歴データ処理部52で求めた閾値TAを入力して、この値TAを閾値としている。
【0055】
経過時間判定部48は、回転速度判定部により肯定判定され、この例ではさらに、直前状態判定部46で肯定判定され、先行フェーズ判定部47で否定判定された最新液高データが入力された場合に、回転体の回転速度が上昇して回転速度基準値に達した時点から最新液高データに示される時刻までの経過時間と、移動標準偏差の窓とを比較する。具体的には、まず、上記のように先行フェーズ判定部47で否定判定された最新液高データが入力された場合に、経過時間判定部48は、最新液高データに先行して入力された直近の複数の液高データの中から、回転速度基準値以上になった最先(最も過去)の液高データに示される時刻を、回転体の回転速度が上昇して回転速度基準値に達した時点とする。そして、回転速度基準値に達した時点から最新液高データに示される時刻までの経過時間を算出し、算出した経過時間と、移動標準偏差の窓とを比較する。回転速度基準値以上になった最先の液高データの特定は、例えば、現行データ記憶部43に記憶されている複数の液高データを、個々の液高データに示される時刻が直近であるものから順次読み込むとともに、個々の読み込みにおいては回転速度も読み込む。そして、読み込んだ回転速度が回転速度基準値以上である液高データPi-m(mはi-1より小さい自然数)の次に読み込んだ液高データPi-m-1に示される回転速度が回転速度基準値未満である場合に、液高データPi-mを回転速度基準値以上になった最先の液高データとする。現行データ記憶部43から初回に読み出した液高データPi-1に示される回転速度が回転速度未満である場合には、経過時間は0(ゼロ)となる。
【0056】
経過時間判定部48は、経過時間が移動標準偏差の窓よりも短い第2所定時間以上であるか否かを判定する。肯定(経過時間が第2所定時間以上である)判定をした場合には、その最新液高データを偏差判定部33へ出力し、偏差判定部33は、前述の処理と同じ処理を行う。否定判定した場合には、その最新液高データを変動フェーズデータとして特定する。経過時間判定部48は、回転速度判定部32と直前状態判定部46と先行フェーズ判定部47と移動標準偏差判定部33とともに、液高データを安定フェーズデータと停止フェーズデータと変動フェーズデータとのいずれかに特定する第1フェーズ特定ユニット61を構成している。
【0057】
第2所定時間は、移動標準偏差の窓よりも短く設定することにより、窓以上である場合と比べて、液面高さの変化と変化の程度とがより早く検出できるからより好ましい。第2所定時間は、移動標準偏差の変化時間の観点から、窓の1/2以上であることが好ましい。ここで、最新液高データの液面高さをPとし、変化のあったデータをPi-mとし、移動標準偏差はP,Pi-1,...,Pi-nのデータ群を標準偏差の計算によって得られるとし、液面高さが理想的な変化である場合(P,・・・,Pi-m+1=0,Pi-m,・・・,Pi-n=1となるとき)とする。このとき、移動標準偏差はmに関して上に凸で軸が窓の1/2であるn/2の2次関数となる。よって移動標準偏差の最大値、すなわち変化を最も反映している箇所は、窓の1/2の経過時間となるので、最大値になるまで待機時間として最も好ましい第2所定時間は窓の1/2となる。第2所定時間が窓の1/2以上であれば閾値との判定を行う移動標準偏差は最大値より小さな値となるが、第2所定時間はより小さい値であれば早く判定することができる。そのため、本例では第2所定時間を窓の1/2である10分としている。第2所定時間は、報知装置21に備えられるキーボードやタッチパネルディスプレイなどの入力部(図示無し)によって入力されることで設定されてもよいし、コンピュータを報知装置21として機能させるプログラムにおいて予め設定されていてもよい。
【0058】
第1評価値算出部51は、安定フェーズデータが入力された場合に、現行履歴データ記憶部43において、安定フェーズデータに関連付けられた液高データの時刻を読み込む。そして、第1評価値算出部51は、入力された上記の最新の安定フェーズデータ(最新安定フェーズデータと称する)を含めて複数の安定フェーズデータが直近の第1所定時間継続して入力されたか否かを判定する。過去の直近の第1所定時間、安定フェーズデータが得られていない、すなわち継続して入力された安定フェーズデータのうち最先の安定フェーズデータに示される時刻から最新安定フェーズデータに示される時刻までの時間が第1所定時間未満である場合には、この最新安定フェーズデータを破棄し、次の安定フェーズデータの入力を待つ。次の安定フェーズデータが最新安定フェーズデータとして入力された場合も同様に処理し、過去の直近の第1所定時間分の安定フェーズデータが入力されるまでこの処理を繰り返す。過去の直近の第1所定時間分の安定フェーズデータが入力されたと判定した場合に、第1評価値算出部51は、これらの最新安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々に対する第1の評価値を算出する。第1の評価値は、最新安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々と、先行して入力された直近の第1所定時間の複数の安定フェーズデータである先行安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの傾向を示す第1の傾向値とに基づいて、算出する値である。第1の評価値は、ホテリング理論により求めるいわゆる異常値とすることが好ましく、本例でもそのようにしている。
【0059】
ホテリング理論では、実測値y’に対する異常値a(y’)は、既に取得された取得済データyから推定した平均値からのずれを分散値で割った値であり、下記式(1)~(3)により求められる。取得済データyを、先行安定フェーズデータ群に示される液面高さとし、ホテリング理論での異常値である第1の評価値を算出する。平均値と分散値とが第1の傾向値に対応する。
【0060】
【数1】
【0061】
第1所定時間は、判定したい異常の性質の観点から設定することが好ましい。本例では、液面高さが総合的にみて過度に変化している場合にのみ異常と判定したいという目的のため、ある程度の時間として30分を第1所定時間としている。これにより、短かすぎる時間を第1所定時間として設定した場合と比べて、一瞬(一時的に)変化したもののその後、元の液面高さに戻ったケースであっても異常値a(y’)が低く抑えられるので、誤検知となってしまうことが抑制される。第1所定時間は、報知装置21に備えられるキーボードやタッチパネルディスプレイなどの入力部(図示無し)によって入力されることで設定されてもよいし、コンピュータを報知装置21として機能させるプログラムにおいて予め設定されていてもよい。
【0062】
相違度算出部36は、前述の第1所定時間分の複数の安定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された複数の安定フェーズデータの各々と、過去の運転において取得された履歴安定フェーズデータに示される複数の液面高さから算出される履歴基準との相違度を求める。本例では、第1の評価値と履歴基準の一例である以下の第2の評価値とに基づいて相違度を求める。相違度算出部36は、求めた相違度を、画像生成部38へ出力する。
【0063】
第2の評価値は、本例では履歴データ処理部52に備えられる後述の第2評価値算出部70(図4参照)により求めている。第2の評価値も第1の評価値と同様に、ホテリング理論により求めるいわゆる異常値とすることが好ましく、本例でもそのようにしている。第2の評価値は、履歴データ記憶部37に記憶されている複数の履歴安定フェーズデータを用いて第1の評価値と同様に算出する。第2の評価値は、複数の履歴特定フェーズデータのうち、第1所定時間分の履歴安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々と、履歴安定フェーズデータ群に先行した第1所定時間分の直近の複数の安定フェーズデータである先行履歴安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの傾向を示す第2の傾向値とに基づいて、算出される。第2の傾向値は、履歴安定フェーズデータの平均値と分散値とであり、前述の第1の傾向値を求める場合と同様に算出される。なお、履歴データ記憶部37には、発電設備15の過去の液高データである履歴液高データが複数記憶され、これらのうち、発電設備15の前回以前の運転において安定フェーズデータと特定された履歴液高データには、履歴安定フェーズデータと関連付けられて記憶している。
【0064】
画像生成部38は、相違度が入力された場合に、相違度を表す画像G(図9参照)を生成し、表示部41に表示させる。
【0065】
図4において、履歴データ処理部52は、偏差判定部33(図3参照)及び偏差判定部(図示無し)でそれぞれ用いる閾値と、相違度算出部36で用いる第2の評価値の算出及び確率モデルの生成を行うためのものである。履歴データ処理部52は、回転速度判定部71と、標準偏差算出部72と、学習演算部73と、移動標準偏差算出部(以下、偏差算出部と称する)74と、第2フェーズ特定ユニット75と、第2評価値算出部70と、外れ値除去部77と、評価値分布生成部78と、確率モデル生成部79とを備える。
【0066】
回転速度判定部71は、回転速度判定部32と同様に構成されており、履歴データ記憶部37に記憶されている履歴液高データが入力される。履歴データ記憶部37は、相違度の精度、すなわち異常の可能性の精度がより高くなる観点から第1所定時間よりも長い第3所定時間における複数の履歴液高データを記憶することが好ましく、本例では第3所定時間を1か月以上1年以内の範囲内で設定している。回転速度判定部71は、第3所定時間における履歴液高データが入力された場合に、回転速度判定部32と同様にして、肯定判定した履歴液高データを標準偏差算出部72と偏差算出部74とのそれぞれに出力する。
【0067】
標準偏差算出部72は、第3所定時間における履歴液高データのうち、回転速度判定部71により肯定判定された履歴液高データに示される液面高さの標準偏差を求め、求めた標準偏差を学習演算部73に出力する。本例では、標準偏差として、標準偏差Aと標準偏差Bとの2種の標準偏差を求めている。標準偏差Aは、安定フェーズから変動フェーズに変化したとみなす判定をするために用いる標準偏差であり、標準偏差は変動フェーズから安定フェーズに変化したとみなす判定をするために用いる標準偏差である。
【0068】
標準偏差Aは、以下のようにして求める。まず、回転速度判定部71から入力された履歴液高データの時刻に基づいて、回転速度が回転速度基準値以上で所定時間(本例では100分)以上継続した期間を図5の期間DS,DS,・・・,DSで示すように特定し、その期間の履歴液高データを特定する。第3所定期間において発電設備15(図1参照)が運転と停止とを繰り返した場合には、回転速度が回転速度基準値以上で100分以上継続した期間は、図5に示すように、通常複数認められる。なお、図5において横軸は時間の経過を示し、紙面右に向かうに従い時間が経過したことを意味する。この例では、第3所定期間における履歴液高データは、過去に液高データとして1分毎に生成されたものとしており、1分前の時刻を示す履歴液高データがない履歴液高データを、期間の開始に対応する履歴液高データとし、1分後の時刻を示す履歴液高データがない履歴液高データを、期間の最終に対応する液高データとしている。
【0069】
特定した期間DSについて、図5の(B)に示すように開始から所定時間(本例では50分)D内に属する時刻を示す履歴液高データを、履歴液高データが示す時刻に基づいて、図5の(C)に示すように特定する。特定した履歴液高データに示される液面高さの標準偏差a1を求める。同様に、特定した期間DS,DS,・・・,DSの各々についても、各期間の開始から所定時間(本例では50分)Dの時間内に属する履歴液高データP1,P2,・・・を特定し、特定した複数の履歴液高データの各々に示される液面高さから、これらの標準偏差a2,a3,・・・,anを求める。このようにして求めた標準偏差a1~anの各々が標準偏差Aである。
【0070】
標準偏差Bは、以下のようにして求める。上記の期間DS,DS,・・・,DSの中から、これらを特定するために設定した期間(本例では100分)よりも長い所定時間(本例では300分)以上を示した期間を特定し、その期間の履歴液高データを特定する。例えば期間DSが300分以上である場合には、図5の(B)に示すように最終から所定時間(本例では150分)前の時刻をtbとするときに、この時刻tbから所定時間(本例では50分)D内の時刻を示す履歴液高データを特定する。特定した複数の履歴液高データの各々に示される液面高さから、これらの標準偏差b1を求める。期間DSの他にも、期間DS,DS,・・・,DSを特定するために設定した期間よりも長い所定時間(本例では300分)以上を示した期間がある場合には、それら期間についても期間DSについてと同様にして処理を行い、標準偏差b2,b3,・・・bm(mはnよりも小さい自然数)を求める。このようにして求めた標準偏差b1~bmの各々が標準偏差Bである。
【0071】
学習演算部73は、標準偏差算出部72から標準偏差Aと標準偏差Bとが入力された場合に、標準偏差A,Bに基づいて移動標準偏差の閾値TA,TBを求める。すなわち、学習演算部73は、標準偏差a1~anが入力されると、移動標準偏差の閾値TAを出力する学習を行い、標準偏差b1~bmが入力されると、移動標準偏差の閾値TBを出力する学習を行う。学習演算部73は、閾値TA,TBを、第2フェーズ特定ユニット75の移動標準偏差判定部(図示無し)に出力するとともに、履歴データ記憶部37に記憶する。学習演算部73は本例ではOne-Class SVMを用いている。学習演算部73は、さらに、偏差算出部31(図3参照)において移動標準偏差が算出された場合にその移動標準偏差を取得し、さらなる学習によって新たに閾値TA,TBを求めてもよい。そのようにして求めた新たな閾値TA,TBは、次に取得された最新液高データが移動標準偏差判定部33により判定される場合の閾値TA,TBとして用い、本例でもそのようにしている。このように、閾値TA,TBは、偏差算出部31に移動標準偏差が求められるたびに、この移動標準偏差を取得することにより、学習される。
【0072】
偏差算出部74と第2フェーズ特定ユニット75と第2評価値算出部70とは、入力されるデータが履歴液高データであるものの、偏差算出部31、第1フェーズ特定ユニット61、及び第1評価値算出部51と同様に構成されている。偏差算出部74は、回転速度判定部71において肯定判定された履歴液高データが入力された場合に、この入力された履歴液高データを含むこれより過去の直近の履歴液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を、移動標準偏差として算出する。このようにして、一の履歴液高データに着目した場合にこの一の履歴液高データとこれより過去の時刻を示す複数の履歴液高データとの各液面高さから、液面高さの標準偏差を求め、この処理を、履歴液高データ毎に行う。
【0073】
第2フェーズ特定ユニット75は、第1フェーズ特定ユニット61と同様に構成されている。第2フェーズ特定ユニット75は、入力された履歴液高データ毎に、その履歴液高データを停止フェーズデータと変動フェーズデータと安定フェーズデータとのいずれかに振り分ける。なお、本例の第2フェーズ特定ユニット75は、第1フェーズ特定ユニット61と同様に、2つの偏差判定部(図示無し)を備え、履歴液高データの送り方向における上流側の一方は閾値TAを、下流側の他方は閾値TBをそれぞれ用いて判定する。
【0074】
第2評価値算出部70は、履歴安定フェーズデータが入力された場合に時刻を読み込み、第1評価値算出部51での上記第1所定時間分の継続した履歴安定フェーズデータがあるか否かを判定する。肯定判定された履歴安定フェーズデータ群がある場合には、第2評価値算出部70は、これらの履歴安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々に対する第2の評価値を第1の評価値と同様の算出方法で算出する。このように、第2評価値算出部70は、入力された履歴安定フェーズデータを第1所定時間ごとに区分けし、区分けされた履歴安定フェーズデータ群ごとに第2の評価値を求める。時刻が連続した履歴安定フェーズデータ群が第1所定時間分に満たない場合には、それらの履歴安定フェーズデータを破棄する。
【0075】
第2の評価値は、第1の評価値と同様に、ホテリング理論により求めるいわゆる異常値とすることが好ましく、本例でもそのようにしている。第2の評価値は、履歴安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々と、先行した直近の第1所定時間の時刻を示す複数の履歴安定フェーズデータである先行履歴安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの傾向を示す第2の傾向値とに基づいて、第1の評価値と同様の算出方法により算出する。
【0076】
外れ値除去部77は、第2評価値算出部70により生成された複数の第2の評価値(以下、第2評価値群と称する)が入力された場合に、第2評価値群から外れ値を取り除く。外れ値除去部77として、本例ではOne-Class SVMを用いている。外れ値を取り除くために閾値(以下、外れ値除去閾値と称する)を予め求め、One-Class SVMを2回用いて外れ値を取り除く。第2の評価値の過度に大きな外れ値を、One-Class SVMの1度目の適用で取り除き、小さくて見分けにくい外れ値を、One-Class SVMの2度目の適用で取り除くことが好ましい。なお、One Class SVMを用いる場合は、計算上、本来は正常値である値もいくつか除外されてしまうことがあるが、そのような除外は問題ないものと本例ではみなしている。
【0077】
評価値分布生成部78は、外れ値を取り除いた第2評価値群の分布を求める。確率モデル生成部79は、外れ値を取り除いた第2評価値群の分布に基づいて、確率モデルを生成して履歴データ記憶部37に記憶させる。
【0078】
報知装置21は、コンピュータで構成されており、コンピュータに所定のプログラムを実行させることにより、コンピュータは上記の各部として機能する。プログラムは、移動標準偏差算出ステップと、回転速度判定ステップと、移動標準偏差判定ステップと、履歴データ記憶ステップと、相違度算出ステップと、画像生成ステップとをコンピュータに実行させる。移動標準偏差算出ステップは、潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の潤滑液の液面高さと時刻と回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。
【0079】
回転速度判定ステップは、最新液高さデータに示される回転速度を回転速度基準値と比較して、回転速度基準値以上であるか否かを判定する。移動標準偏差判定ステップは、回転速度判定ステップにより肯定判定された最新液高データが入力された場合に、移動標準偏差算出部により算出された移動標準偏差を閾値と比較して、閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した移動標準偏差が算出された最新液高データを、設備の稼働状態のうちの特定フェーズ(本例では安定フェーズ)に属する特定フェーズデータ(本例では安定フェーズデータ)として特定する。履歴データ記憶ステップは、過去の直近の特定フェーズ以前における複数の特定フェーズデータ(本例では安定フェーズデータ)である履歴特定フェーズデータ(本例では履歴安定フェーズデータ)を記憶する。
【0080】
相違度算出ステップは、第1所定時間分の複数の特定フェーズデータが入力される毎に、これらの入力された複数の特定フェーズデータの各々と履歴特定フェーズデータに示される複数の液面高さから算出される履歴基準との相違度を求める。画像生成ステップは、相違度を表す画像を生成して表示部に表示させる。
【0081】
なお、移動標準偏差算出ステップと回転速度判定ステップと移動標準偏差判定ステップをコンピュータに実行させることにより、第1フェーズ特定ユニット61の各部としてコンピュータを機能させることもできる。移動標準偏差算出ステップは、潤滑液により回転軸の軸受が液浴状態とされている回転体を備える設備の潤滑液の液面高さと時刻と回転体の回転速度とを有する液高データが入力される毎に、この入力された液高データである最新液高データを含む直近の所定個数の液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。回転速度判定ステップは、最新液高データに示される回転速度を予め設定された回転速度基準値と比較して、回転速度基準値以上であるか否かを判定し、否定判定した回転速度を示す最新液高データを設備の停止フェーズに属する停止フェーズデータとして特定する。移動標準偏差判定ステップは、回転速度判定ステップにより肯定判定された最新液高データが入力された場合に、移動標準偏差算出部により算出された移動標準偏差を予め設定された第1閾値と比較して、第1閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定した移動標準偏差が算出された最新液高データを、設備の安定フェーズに属する安定フェーズデータとして特定する。
【0082】
上記構成の作用を説明する。報知装置21には、発電設備15から、ほぼリアルタイムで液高データが順次送られてくる。報知装置21は、図6に示すように、液高データをコントローラ16から取得すると、規格データ抽出部57が液高データの入力に応答して規格を満たすか否かを判定し、肯定判定した場合にはその液高データを、時刻チェッカ58に出力する。時刻チェッカ58は、液高データの入力に応答して、液高データの時刻が正常であるか否かを判定し、肯定判定した場合にはその液高データを偏差算出部31に出力する。規格データ抽出部57と時刻チェッカ58とは、それぞれ、否定判定した場合には、その液高データを破棄する。これにより破棄された液高データは、異常の可能性を報知するための対象データから除外される。
【0083】
偏差算出部31は、液高データが入力される毎に、この最新液高データを現行データ記憶部43に液高データとして記憶させる。偏差算出部31は、また、液高データが入力される毎に、この最新液高データと過去の直近の複数の液高データを合わせて所定個数の液高データを部分時系列データとして特定し、これらのそれぞれに示される液面高さの標準偏差を移動標準偏差として算出する。偏差算出部31は、移動標準偏差を算出すると、最新液高データを回転速度判定部32に出力する。本例の偏差算出部31は、算出した移動標準偏差を、さらに学習演算部73に出力しており、学習演算部での標準偏差A,Bの学習に用いている。
【0084】
回転速度判定部32は、図7に示すように、最新液高データに示される回転速度が回転速度基準値以上であるか否かを判定し、肯定判定をすると、その肯定判定した回転速度を示す最新液高データを、直前状態判定部46に出力する。一方、否定判定をすると、その否定判定した回転速度を含む最新液高データを、停止フェーズに属する停止液高データとして特定し、停止フェーズ液面状況報知ユニット56に出力する。このように、発電プラント11から報知装置21に送信された液高データは、回転速度判定部32により、停止液高データであるか否かに振り分けられる。
【0085】
直前状態判定部46は、最新液高データが入力されると、過去の直近の液高データ、すなわち前回入力された液高データの回転速度が回転速度判定部32で肯定判定されたか否かを判定する。肯定判定された回転速度を示す最新液高データは先行フェーズ判定部47に出力され、否定判定された回転速度を示す最新液高データは、変動フェーズデータとされる。これにより、先行液高データが停止フェーズデータである場合に、後の先行フェーズ判定部47で例外となってしまう処理が事前に省かれる。
【0086】
先行フェーズ判定部47は、最新液高データが入力されると、現行データ記憶部43から先行液高データを特定し、先行液高データが安定フェーズデータであるか否かを判定する。肯定判定すると、入力された最新液高データを図示しない偏差判定部に出力し偏差判定部33に出力し、一方、否定判定すると、入力された最新液高データを経過時間判定部48に出力する。図示しない偏差判定部を設けない場合には、先行フェーズ判定部47は、肯定判定すると、入力された最新液高データを偏差判定部33に出力する。
【0087】
図示しない偏差判定部は、先行フェーズ判定部47で肯定判定された最新液高データが入力されると、この入力に応答して、履歴データ記憶部37から閾値TAを読み出し、算出された移動標準偏差が閾値TA以下であるか否かを判定する。肯定判定すると、その最新液高データを、偏差判定部33に出力する。一方、否定判定すると、その最新液高データを、変動フェーズデータとして特定し、異常の可能性を報知する対象データから除外する。偏差判定部33は、回転速度判定部32により肯定判定され、この例ではさらに直前状態判定部46で肯定判定され、先行フェーズ判定部47で肯定判定され、図示しない偏差判定部により肯定された最新液高データが入力されると、その入力に応答して、履歴データ記憶部37から閾値TBを読み出し、算出された移動標準偏差が閾値TB以下であるか否かを判定する。肯定判定すると、その最新液高データを安定フェーズデータとして特定し、現行データ記憶部43内の最新液高データである液高データに安定フェーズデータを関連付けて記憶するとともに、その最新液高データを第1評価値算出部51に出力する。一方、否定判定すると、その最新液高データを、変動フェーズデータとして特定し、異常の可能性を報知する対象データから除外する。
【0088】
経過時間判定部48は、先行フェーズ判定部47で否定判定された最新液高データが入力されると、現行データ記憶部43から先行して入力された複数の液高データを時刻が最新のものから順次読み込んで回転速度を読み出し、回転速度が回転速度基準値以上である最先の液高データに示される時刻から最新液高データに示される時刻までの経過時間を算出して、経過時間が第2所定時間以上であるか否かを判定する。肯定判定をすると、その最新液高データを偏差判定部33へ出力し、最新液高データは偏差判定部33による処理に供される。経過時間判定部48が否定判定した場合には、その最新液高データは変動フェーズデータとして特定され、異常の可能性を報知する対象データから除外される。
【0089】
このようにして、発電プラント11から報知装置21へ送信された液高データから、安定フェーズデータのみが抽出されて、第1評価値算出部51へ送信される。このように、回転速度判定部32と直前状態判定部46と、先行フェーズ判定部47と、移動標準偏差判定部33と経過時間判定部48とは、液高データを安定フェーズデータと停止フェーズデータと変動フェーズデータとのいずれかに特定する第1フェーズ特定ユニット61を構成している。また、報知装置21へ送信された液高データは、回転体である水車本体19aの回転速度と液高データの部分時系列データの移動標準偏差に基づいて、安定フェーズデータとして特定されて抽出されるから、得られた液面データが停止、変動、安定のどのフェーズに属するかの判定がなされた状態で、安定フェーズにおける液面高さの異常である可能性がより正確に報知される。
【0090】
また、第1フェーズ特定ユニット61は、リアルタイムで生成された液高データを取得し、取得する毎に液高データが属するフェーズを特定するので、液高データに含まれる回転速度や液面高さなどの情報に基づく種々の解析及び判定を動的に行うことが可能となり、また、フェーズ分割自体の精度が高い。これにより、本例のように液面高さを含む液高データを用いた場合には、同様の状態である液面高さのみを評価値の算出対象とすることで、小さな変化でも、後述の異常確率が高めに算出されやすくなる。また、発電設備15の稼働場面は、回転速度と液面高さの変動状態とに基づいてフェーズ分割される。これにより、従来の、例えば主機運転指令や発電機18Aの起動及び停止などの各信号に基づいて稼働場面を判断する手法と比較して、発電設備15の異常の可能性が稼働場面に応じたものとしてより的確に報知される。変化が大きい液面高さが取得された場合でも、報知の対象の情報として生かされたり、液面高さが過度に変動している場合にはそのような液面高さが報知対象からノイズとして除去されるなどの効果がある。
【0091】
第1評価値算出部51は、安定フェーズデータが入力されると、図6に示すように、直近の第1所定時間分の安定フェーズデータが既に入力されているか否かを判定し、否定判定の場合には、入力された最新の安定フェーズデータを破棄する。肯定判定、すなわち、最新安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々と、先行安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの傾向を示す第1の傾向値とに基づいて、最新安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々に対する第1の評価値を算出する。このように、第1評価値算出部51は、第1所定時間の複数の安定フェーズデータが入力される毎に、最新安定フェーズデータ群に示される複数の液面高さの各々に対する第1の評価値を算出する。
【0092】
第1評価値算出部51は第1の評価値を算出すると、第1の評価値を相違度算出部36へ出力する。相違度算出部36は、第1の評価値が入力されると、この入力に応答して、第1の評価値と第2評価値算出部70により予め求められてある第2の評価値とに基づいて相違度を算出する。画像生成部38は、算出された相違度が入力されると、相違度を示す画像を生成して表示部41に表示させる。相違度は、表示部41に表示されることで、液面高さの状況が異常の可能性として報知される。
【0093】
移動標準偏差の閾値と確率モデルとを生成する履歴データ処理部52は、図8に示すように、過去の第3所定時間としての例えば1か月の履歴液高データを取得すると、回転速度判定部71が、回転速度判定部32と同様に、予め設定された回転速度基準値以下であるか否かを判定する。否定判定すると、その履歴液高データを停止フェーズデータと特定し、肯定判定すると、その履歴液高データを、標準偏差算出部72と偏差算出部74とのそれぞれに出力する。なお、回転速度判定部71には、第3所定期間の履歴液高データは、一度だけ入力されてもよいし、二度繰り返して入力されてもよい。一度だけ入力する場合には、回転独度判定部71は、上記のように、肯定判定した履歴液高データを、標準偏差算出部72と偏差算出部74とのそれぞれに出力する。一方、二度入力する場合には、一度目の判定により肯定判定した履歴液高データを標準偏差算出部72に入力し、その後の二度目の入力により肯定判定した履歴液高データを偏差算出部74に出力する。履歴データ処理部52に対するは過去の第3所定時間分の履歴液高データの入力は、報知装置21の初回の使用開始前にのみ行えばよい。
【0094】
標準偏差算出部72は、第3所定時間における履歴液高データのうち、回転速度判定部71により肯定判定された履歴液高データに示される液面高さの標準偏差を求め、求めた標準偏差A,Bを学習演算部73に出力する。標準偏差Aは、前述の期間DS1,DS2,・・・,DSnの各々において各期間の開始時点を基準に履歴液高データを選択することで、変動が比較的大きい液面の高さ群から求めてある。そのため、安定フェーズから変動フェーズに変化したとみなす判定の基準として好ましいものとなっている。また、標準偏差Bは、前述の期間DS1,DS2,・・・,DSnの各々において各期間の終了時点を基準に履歴液高データを選択することで、変動が少ない液面の高さ群から求めてある。そのため、変動フェーズから安定フェーズに変化したとみなす判定の基準として好ましいものとなっている。
【0095】
学習演算部73は、標準偏差算出部72から標準偏差Aと標準偏差Bとを取得すると、標準偏差A,Bに基づいて移動標準偏差の閾値TA,TBを求める。閾値TA,TBは、履歴液高データの学習により求めているから、精度が高いフェーズ分割が行われるとともに、異常の可能性もより精緻なものとして報知される。学習演算部73は、さらに、偏差算出部31から移動標準偏差を取得すると、その移動標準偏差から閾値TA,TBをさらに学習し、閾値TA,TBを更新する。更新後の新たな閾値TA,TBは、履歴データ記憶部37に出力され、次に取得された最新液高データが移動標準偏差判定部33により判定される際の閾値TA,TBとして用いる。このように、新たに求めた異常標準偏差から閾値TA,TBを学習して更新することで、フェーズ分割の精度はより向上していくとともに、報知される異常の可能性もより精緻になっていく。閾値TA及びTBは、第2フェーズ特定ユニット75に出力されるとともに、履歴データ記憶部37に記憶され、履歴データ記憶部37に記憶された閾値TAは第1フェーズ特定ユニット61の図示しない偏差判定部に、閾値TBは偏差判定部33に、それぞれ読み出されて処理に用いられる。
【0096】
偏差算出部74は、回転速度判定部71で肯定判定された履歴液高データ群が入力されると、この入力された履歴液高データを含むこれより過去の直近の履歴液高データに示される所定個数の液面高さの標準偏差を、移動標準偏差として算出する。偏差算出部74は、この算出処理を、履歴液高データ毎に行う。
【0097】
第2フェーズ特定ユニット75は、入力された履歴液高データ毎に、その履歴液高データを第1フェーズ特定ユニット61と同様にして、停止フェーズデータと変動フェーズデータと安定フェーズデータとのいずれかに振り分ける。本例の第2フェーズ特定ユニット75は、前述のように2つの偏差判定部(図示無し)を備え、履歴液高データの送り方向における上流側の一方においては閾値TAを用いて、下流側の他方においては閾値TBを用いて、それぞれフェーズの振り分け処理を行う。
【0098】
第2評価値算出部70は、履歴安定フェーズデータが入力されると、第1評価値算出部51での上記第1所定時間分の継続した履歴安定フェーズデータがあるか否かを判定する。肯定判定された履歴安定フェーズデータ群がある場合には、第2評価値算出部70は、これらに示される複数の液面高さの各々に対する第2の評価値を第1の評価値と同様の算出方法で算出する。時刻が連続している履歴安定フェーズデータ群が第1所定時間分に満たない場合には、それらの履歴安定フェーズデータを破棄する。
【0099】
外れ値除去部77は、第2評価値群が入力されると、予め求めた外れ値除去閾値により外れ値を除去する。第2の評価値の過度に大きな外れ値が、One-Class SVMの1度目の適用で取り除かれ、小さくて見分けにくい外れ値が、One-Class SVMの2度目の適用で取り除かれる。このように、外れ値が除去されることにより、第2の評価値の分布がより精度よく生成される。なお、本例では外れ値除去の前に、第2の評価値の個数が予め設定された設定個数以上であるか否かを判定し、肯定判定であると外れ値の除去を行い、否定判定であると、ノイズを用いて第2の評価値の数を増加させてから、外れ値除去を行っている。
【0100】
評価値分布生成部78は、外れ値を取り除いた第2評価値群の分布を求める。この例では、外れ値を取り除いた第2評価値群のそれぞれを学習データとし、第2の評価値から、ノンパラメトリックな密度推定の手法であるカーネル密度推定を用いて第2の評価値の分布を求めている。
【0101】
確率モデル生成部79は、得られた第2の評価値の分布に基づいて確率モデルを生成する。本例では、上記の第2の評価値の分布から、第2の評価値α1、α2と分布の標準偏差sを求める。α1を例えば65%の分布に対応する第2の評価値、α2を95%の分布に対応する第2の評価値とする。これらのα1,α2,標準偏差から確率モデルの生成に用いる基準値として、第1基準値xと、第1基準値xよりも高い異常確率に対応付けた第2基準値xとをそれぞれ下記式(4),(5)で算出する。第1基準値xでとる異常確率yを例えば2%とし、第2基準値xでとる異常確率yを例えば3.5%と設定する。第1基準値xでとる異常確率y、第2基準値xでとる異常確率yは、本例に限定されず、異常値の分布において異常確率を設定したい値に基づいて設定するとよい。
=α1 ・・ ・(4)
={(α2-α1)/s}+α1 ・・・(5)
【0102】
そして、式(6)を用いてA,Bを算出することにより、式(4)で示される確率モデルが生成する。すなわち定数A,Bを求めることにより確率モデルが生成される。
y=1/(1+eAx+B) ・・・・(6)
【0103】
得られた確率モデルは、履歴データ記憶部37に記憶され、相違度算出部36により読み取られ、相違度の算出に用いられる。安定フェーズデータの液面高さと履歴液高データの液面高さとの両方を部分時系列データである移動標準偏差にして相違度算出が行われるから、得られる相違度の確からしさはより高い。
【0104】
以上のように、軸受の潤滑液の液面高さに関して相違度の画像が表示されるから、液面高さに関連する発電設備15の潜在的な異常について熟練者でなくても把握しやすい。さらに、上記構成によると、所定時間(この例では30分)毎に、相違度が表示されるから、運転中の異常に迅速に対処できる。また、前述のように、この例の端末22は表示部を備えており、相違度を表す画像G(図9参照)が端末22の表示部にも表示される。このため、端末22においても異常確率が表示される。その結果、運転場面における潤滑液の液面の状況が、熟練者でなくても容易に把握できる。
【0105】
例えば、図9に示すように、表示部には、液面高さと、異常確率としての異常の可能性とが関連付けられた画像Gが表示される。図9に示すデータは、発電プラント11として、北海道電力株式会社のX発電所Xa号機を使用した場合(データ取得日は、2020年2月12日)のものである。液面高さは水車軸受けの水面の高さである。図9において、縦軸は液面高さを示し、横軸は時刻を示す。この例では、液面高さは、予め設定した基準の液面高さを0mmとし、この基準に対して高い場合には+として上方向に、低い場合には-として下方向に、基準に対する差分を示してある。液面高さLは、液高データの取得に応じて表示してもよいし、または、フェーズの特定毎、第1所定時間分の複数の安定フェーズデータが入力される毎など、液高データの取得後の任意の時点で個別あるいは複数をまとめて表示してもよい。14:52~概ね15:00の時間領域での液面高さの上昇は、給水によるものである。
【0106】
フェーズの特定はリアルタイムに行っているが、特定したフェーズの表示のタイミングは、適宜設定してよく、また、すべてのフェーズを表示する必要はない。また、この例では、安定フェーズデータについての異常の可能性を報知するために、安定フェーズデータと特定された領域にのみ、異常の可能性を示しており、異常の可能性は、グラフにおける背景の色の濃淡(明度)で示している。色が淡いほど異常の可能性が低く、濃いほど異常の可能性が高い。横軸方向において、背景の色に縦軸方向での濃淡が示された領域である13:52~14:52及び15:22~16:48(グラフの右端)の領域が安定フェーズとして特定された領域である。このように、異常の可能性を報知する対象領域のみ背景を縦軸方向での濃淡で示すことにより、報知の対象領域が視覚的に把握される。なお、縦軸方向での濃淡が示されていない14:52~15:22のうち、14:52~概ね14:59の領域と、概ね14:59~15:22の領域とは、この例では互いに異なるフェーズとして特定されたものであり、前者は安定フェーズデータ、後者は変動フェーズデータと判定されている。このような場合には、図9に示すように、液面高さを示す縦軸方向においては均等な濃さで示し、互いに異なるフェーズについては互いに異なる濃さに表示するなどしてもよい。この例では、前述のように、第1所定時間を30分としている。そのため、安定フェーズデータとして特定されても30分継続した安定フェーズデータ群を構成しなかった液高データについては、報知の対象から除外されるので、縦軸方向での色の濃淡が表示されない構成としている。なお、色の濃淡を、色相、彩度に代えてもよい。
【0107】
報知の対象領域に属する液面高さが、縦軸方向での濃淡の濃色領域にある場合には、異常の可能性が高いものとして、淡色領域にある場合には異常の可能性が低いものとして示される。このようにして異常の可能性が報知される。また、図9に示すように、異常の可能性の数値を、例えば%で示す表示をすることで報知してもよい。例えば図9においては、マウスなどの入力部(図示無し)により、目的とする液面高さの部分にカーソルCを位置決めすることで、異常の可能性が「2.1%」と非常に低い値で表示された状態を示している。従来では、フェーズの特定がなされておらず、異常の可能性がない正常な液面高さとみなす閾値として、例えば上限を+15mm、下限を-10mmと設定し、正常とみなす領域を広めに設定していた。これは、停止の場面での低い液面高さを基準に下限を設定し、変動及び/または安定の場面の高い液面高さを基準に上限を設定するからである。これに対し、本例の上記の構成によると、フェーズを特定した上で、異常の可能性の基準となる程度がそのフェーズに応じて求められる。さらに、異常の可能性の基準となる程度が、履歴液高データに基づいて、または履歴液高データと直前の第1所定時間の液高データとに基づいて求められる。そのため、図9における各30分毎の各報知対象領域のように、異常の可能性が低い領域がより狭く設定されるとともに、報知対象領域ごとに、異常の可能性の基準となる程度が求められる。その結果、より精緻に、異常の可能性が把握され、報知される。
【0108】
また、上記構成によると、第1所定時間である30分ごとに、異常の可能性の基準となる程度が求められるので、仮に異常の程度が高すぎるあるいは低すぎるとして報知された場合でも、次に続く第1所定時間の30分については、異常の可能性の基準となる程度が補正される。例えば、図9における15:22~15:52の時間領域においては、取得された液面高さが、異常の可能性が高い濃色領域に位置しているが、続く第1所定時間領域である15:52~16:22の時間領域は、直前の第1所定時間領域である15:22~15:52の液面高さにより異常の可能性の基準となる程度が補正されて、異常の可能性が低い適正な結果として表れている。このように、異常の可能性の基準となる程度が第1所定時間毎に補正されるので、報知結果に対して迅速な対応が可能となったり、発電設備15における機器などが他のものに交換された場合や、検出機器が他のものに交換された場合でも、的確な結果が報知される。さらに、上記構成によると、精度の高いフェーズ特定を行うことにより、短い第1所定時間で液高データの液面高さをまとめて異常の可能性の対象データとすることができるから、取得した液面高さのうち変動フェーズデータの占める割合が減り、安定フェーズデータのより多くが、報知対象のデータとして扱えることになり、これらを生かして報知することができる。
【0109】
本実施形態では、安定フェーズでの軸受液面の異常の可能性を報知する対象設備として、水車発電機を備える発電設備15を用いている。しかし、設備はこれに限らず、軸受が潤滑液に液浴状態とされて回転する回転体を備えれば、他の設備であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
10 発電システム
11 発電プラント
12 液面状況報知アセンブリ
15 発電設備
16 コントローラ
18C 水車
19a 水車本体
19b 回転軸
19c 潤滑油収容部
21 液面状況報知装置
22a~22c 端末
24a 回転速度計
24b 液面高さ検出器
31,74 移動標準偏差算出部(偏差算出部)
32,71 回転速度判定部
33 移動標準偏差判定部(偏差判定部)
36 相違度算出部
37 履歴データ記憶部
38 画像生成部
41 表示部
46 直前状態判定部
47 先行フェーズ判定部
48 経過時間判定部
51 第1評価値算出部
52 履歴データ処理部
56 停止フェーズ液面状況報知ユニット
61,75 第1フェーズ特定ユニット,第2フェーズ特定ユニット
70 第2評価値算出部
73 学習演算部
78 評価値分布生成部
79 確率モデル生成部
図1
図2
図3
図4
図5
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図9