(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134768
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】検査結果分析装置および検査結果分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/906 20190101AFI20220908BHJP
【FI】
G06F16/906
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034149
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有村 泰
(72)【発明者】
【氏名】西尾 瑞華
(72)【発明者】
【氏名】吉永 幸生
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA10
5B175FA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な操作で検査結果を高精度に分類できる検査結果分析装置および検査結果分析プログラムを提供する。
【解決手段】検査結果分析装置1は、分解部22と、関連付け部23と、を備える。分解部22は、第1分布の群に対して非負値行列因子分解を実行することによって、各第1分布を第2分布の群と各第2分布に対応する重みの群とに分解する。各第1分布は、基板に対する検査によって得られた数値データの基板面内における分布である。関連付け部23は、第3分布に対して当該第3分布に対応する重みを乗算することによって第4分布を生成し、第4分布を構成する数値データの群の代表値を取得する。関連付け部23は、代表値がしきい値を越える場合、第5分布を前記第3分布に関連付ける。第5分布は第1分布の群のうちの1つの第1分布である。第3分布は、第5分布から分解された第2分布の群のうちの1つの第2分布である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対する検査によって得られた数値データの基板面内における分布である第1分布の群に対して非負値行列因子分解を実行することによって、各第1分布を第2分布の群と各第2分布に対応する重みの群とに分解する分解部と、
第3分布に対して当該第3分布に対応する重みを乗算することによって第4分布を生成し、前記第4分布を構成する数値データの群の代表値を取得し、前記代表値がしきい値を越える場合、第5分布を前記第3分布に関連付け、前記代表値が前記しきい値に満たない場合、前記第5分布を前記第3分布に関連付けず、前記第5分布は前記第1分布の群のうちの1つの第1分布であり、前記第3分布は前記第5分布から分解された前記第2分布の群のうちの1つの第2分布である、関連付け部と、
を備える検査結果分析装置。
【請求項2】
前記関連付け部は、各第1分布を前記第5分布として順次選択し、前記第5分布を選択する毎に各第2分布を前記第3分布として順次選択し、選択された前記第5分布と選択された前記第3分布との対毎に前記しきい値に基づく関連付けの判定を実行する、
請求項1に記載の検査結果分析装置。
【請求項3】
第6分布と前記第6分布に関連付けられた1以上の第1分布とを対にして出力し、前記第6分布は前記第2分布の群のうちの1つの第2分布である、出力部
をさらに備える請求項2に記載の検査結果分析装置。
【請求項4】
前記代表値は、前記第4分布を構成する数値データの群の最大値、平均値、中央値、95%信頼区間の上限値、第3四分位数、またはこれらの何れかに定数を乗算して得られる値である、
請求項1から3の何れか一項に記載の検査結果分析装置。
【請求項5】
コンピュータを、
基板に対する検査によって得られた数値データの基板面内における分布である第1分布の群に対して非負値行列因子分解を実行することによって、各第1分布を第2分布の群と各第2分布に対応する重みの群とに分解する分解部と、
第3分布に対して当該第3分布に対応する重みを乗算することによって第4分布を生成し、前記第4分布を構成する数値データの群の代表値を取得し、前記代表値がしきい値を越える場合、第5分布を前記第3分布に関連付け、前記代表値が前記しきい値に満たない場合、前記第5分布を前記第3分布に関連付けず、前記第5分布は前記第1分布の群のうちの1つの第1分布であり、前記第3分布は前記第5分布から分解された前記第2分布の群のうちの1つの第2分布である、関連付け部と、
として機能させるための検査結果分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、検査結果分析装置および検査結果分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路が基板に形成される過程において、または半導体集積回路が基板に形成された後、各基板に対する検査が実行される。当該検査によって、基板内の広範囲のエリアに不良(failure)が検出される場合がある。
【0003】
基板の広範囲のエリアに不良が発生した場合、当該基板の検査の結果には、当該不良の発生の原因に依存する特徴が現れる場合がある。よって、当該不良の発生の原因を究明したり、同一の原因によって不良が発生した基板を特定したりするために、検査結果に現れた特徴を特定するとともに、複数の基板を特徴毎に分類するといった処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-7553号公報
【特許文献2】特開2020-107138号公報
【特許文献3】米国特許第9970983号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yukako Tanaka and Sho Saiki, “Robust Estimation of Mixed Type Wafer Map Similarity Utilizing Non negative Matrix Factorization”, [online], AEC/APC Symposium Asia 2019, [retrieved on 2021-2-25], retrieved from the Internet: <URL: https://www.semiconportal.com/AECAPC/abstract/TDA-022.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一つの実施形態は、簡単な操作で検査結果を高精度に分類できる検査結果分析装置および検査結果分析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、検査結果分析装置は、分解部と、関連付け部と、を備える。分解部は、第1分布の群に対して非負値行列因子分解を実行することによって、各第1分布を第2分布の群と各第2分布に対応する重みの群とに分解する。各第1分布は、基板に対する検査によって得られた数値データの基板面内における分布である。関連付け部は、第3分布に対して当該第3分布に対応する重みを乗算することによって第4分布を生成し、前記第4分布を構成する数値データの群の代表値を取得する。関連付け部は、前記代表値がしきい値を越える場合、第5分布を前記第3分布に関連付ける。関連付け部は、前記代表値が前記しきい値に満たない場合、前記第5分布を前記第3分布に関連付けない。前記第5分布は前記第1分布の群のうちの1つの第1分布である。前記第3分布は前記第5分布から分解された前記第2分布の群のうちの1つの第2分布である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる検査結果分析装置のハードウェア構成の一例を示す模式的な図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる原マップのデータ構成例を示す模式的な図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる検査結果群を説明するための模式的な図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる検査結果分析装置によって実行されるNMFの処理の詳細を説明するための模式的な図である。
【
図5】
図5は、
図4に説明されたNMFの処理例によって1つの原マップが3つの特徴マップの重み付き和に近似されたことを説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる検査結果分析装置の機能構成の一例を示す模式的な図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる分類結果の出力例を示す模式的な図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかる検査結果分析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる検査結果分析装置および検査結果分析プログラムを詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態にかかる検査結果分析装置のハードウェア構成の一例を示す模式的な図である。
【0011】
検査結果分析装置1は、コンピュータプログラムを実行することができる通常のコンピュータと同様の構成を備える。
図1に示される例では、検査結果分析装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、ROM(Read Only Memory)12、ストレージ装置13、入力装置14、および表示装置15を備える。CPU10、RAM11、ROM12、ストレージ装置13、入力装置14、および表示装置15はバス16を介して互いに電気的に接続されている。
【0012】
入力装置14は、情報入力用のHMI(Human Machine Interface)である。入力装置14は、例えばポインティングデバイスまたはキーボードによって構成される。オペレータが入力装置14を操作することによって入力された情報は、CPU10に送られる。
【0013】
表示装置15は、情報を画像として出力できるHMIである。表示装置15は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ、またはプラズマディスプレイなどの、画像表示装置である。
【0014】
CPU10は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサである。
【0015】
RAM11は、ROM12またはストレージ装置13よりも高速に動作する揮発性のメモリである。RAM11は、CPU10に、キャッシュまたはバッファとしての領域を提供する。
【0016】
ROM12およびストレージ装置13は、データまたはコンピュータプログラムなど、情報を不揮発に記憶することができるメモリである。ストレージ装置13は、ROM12に比べて多くの情報を記憶することができる。ストレージ装置13は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせによって構成され得る。
【0017】
なお、ストレージ装置13は、検査結果分析装置1の外部に設けられ、検査結果分析装置1とストレージ装置13とはネットワークなどを介して接続されてもよい。また、ストレージ装置13は、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、または外付けHDDなどの、着脱可能な装置であってもよい。
【0018】
実施形態では、コンピュータプログラムである検査結果分析プログラム100がストレージ装置13に格納されている。例えば、CPU10は、検査結果分析プログラム100をストレージ装置13からRAM11にロードして、RAM11にロードされた検査結果分析プログラム100を実行する。そして、CPU10は、RAM11にロードされた検査結果分析プログラム100に基づいて、検査結果分析装置1としての機能を実現する。
【0019】
ストレージ装置13には、さらに、基板の群に対する検査によって得られた検査結果群200が格納されている。
【0020】
基板は、ここでは一例として、多数のチップが形成される円形のシリコンウェハであり、各チップの個片化が行われる前のシリコンウェハである。各チップは、半導体集積回路のチップである。なお、基板の材質はシリコンに限定されない。基板の形状は円形でなくてもよい。基板は、個片化された後のチップであってもよい。以降、基板としてのシリコンウェハを、単に、ウェハと表記する。
【0021】
以降、各ウェハを、ウェハIDで区別する。Wx(ただしxは数値)というウェハIDが与えられたウェハを、ウェハWxと表記する。
【0022】
検査は、ここでは一例として、欠陥(defect)を検出する検査である。1つのウェハに対する検査では、ウェハ面内の複数位置のそれぞれにおいて、欠陥の検出および検出された欠陥の数の集計が実行され、取得された欠陥数が位置と対応づけて記録される。これによって、欠陥数のウェハ面内における分布が得られる。以降、検査によって得られた欠陥数のウェハ面内の分布を、原マップ(original map)と表記する。原マップは、第1分布の一例である。
【0023】
図2は、実施形態にかかる原マップのデータ構成例を示す模式的な図である。この例によれば、原マップは、チップ毎に集計された欠陥数がチップ位置と対応付けて記録されたデータ形式を有している。チップ位置は、ウェハ内におけるチップの位置を表し、ウェハ内の所定位置を原点とした2次元の座標値として表現される。本図では便宜的に、チップ位置は、当該チップ位置に配置されるチップ名で表現されている。C1、C2などは、チップ名である。
【0024】
検査結果群200は、複数のウェハに対する単一の検査によってウェハ毎に得られた原マップの群である。
【0025】
図3は、実施形態にかかる検査結果群200を説明するための模式的な図である。本図には、ウェハW1に対する検査によって得られた原マップB1、ウェハW2に対する検査によって得られた原マップB2、ウェハW3に対する検査によって得られた原マップB3、およびウェハW4に対する検査によって得られた原マップB4がグラフィカルな表現形式で図示されている。そして、検査結果群200は、原マップB1、原マップB2、原マップB3、および原マップB4によって構成されている。
【0026】
図3によれば、1つの原マップにおいて、各チップ位置における欠陥数は、対応する位置でのコントラスト値によって表現されている。欠陥数が多いほど、黒く描画され、欠陥数が少ないほど白く描画されている。各原マップに点線で描かれた円は、ウェハの境界を表す。
【0027】
なお、
図3では検査結果群200を構成する原マップの数は、理解を簡単にするために4個としているが、検査結果群200を構成する原マップの数は、4個に限定されない。例えば、100個のウェハから得られた100個の原マップによって検査結果群200が構成されてもよい。検査結果群200を構成する原マップの数が多いほど、特徴を特定する処理の精度が向上する。なお、特徴を特定する処理については後述される。
【0028】
以降、ウェハWx(ただしxは数値)に対する検査によって得られた原マップを、ウェハWxの原マップと表記する。
【0029】
ウェハに対する検査によって、ウェハ内の広範囲のエリアに不良が検出される場合がある。不良は、特性が基準を満たさない事象をいう。例えば、チップ単位の欠陥数が所定値以上である事象が、不良と見なされる。ウェハ内の広範囲のエリアに不良が発生した場合、当該ウェハの原マップには、当該不良の発生原因に依存する特徴が現れる場合がある。不良の発生原因が異なれば、原マップに現れる特徴も異なり得る。また、発生した不良の発生原因が複数存在する場合には、原マップには、不良の発生原因毎に異なる特徴が現れ得る。
【0030】
よって、原マップに1以上の特徴が含まれている場合、各特徴を個別に特定して、特徴毎に原マップを分類できれば、オペレータは、分類結果に基づき、不良の発生原因を特定したり、同一の原因によって不良が発生したウェハの数を把握したり、分類結果を加工プロセスにおける各種設定の見直しに利用したりすることが可能となる。
【0031】
実施形態では、原マップに含まれる特徴を精度よく特定するために、非負値行列因子分解(Non-negative Matrix Factorization:NMF)が実行される。検査結果分析装置1は、検査結果群200に対してNMFを実行することによって、各原マップを、特徴マップの群と、特徴マップごとの重みの群と、に分解する。特徴マップは、単一の特徴を表すウェハ面内における欠陥数の分布である。特徴マップは、第2分布の一例である。
【0032】
図4は、実施形態にかかる検査結果分析装置1によって実行されるNMFの処理の詳細を説明するための模式的な図である。NMFは、非負の数値データの群によって構成された行列Vを、それぞれは非負の数値データの群によって構成された行列Wおよび行列Hの積で近似する処理である。本図では、理解を簡単にするために、表現方法の置き換えおよび構造の簡略化を施している。例えば、各行列はテーブルの形式で描画されている。さらに、検査結果群200を構成する原マップの数を5つとし、1つの原マップを構成する数値データのデータ点数を6つとしている。ここでは原マップを構成する数値データはチップ単位の欠陥数である。
【0033】
行列Vは、検査結果群200を行列構造で表した行列である。行列Vは、検査結果群200を構成する原マップの数と同数の行(row)と、1つの原マップを構成する数値データのデータ点数と同数の列(column)とを備えている。即ち、この例では、行列Vは、5行×6列の行列である。なお、図示されているv11~v16、v21~v26、v31~v36、v41~v46、およびv51~v56のそれぞれは、非負の数値データである。
【0034】
行列Vを構成する6つの列のそれぞれは、チップ位置に一対一に対応する。チップ位置C11に対応する列、チップ位置C12に対応する列、チップ位置C13に対応する列、チップ位置C14に対応する列、チップ位置C15に対応する列、およびチップ位置C16に対応する列、がこの順番で行方向に配置されている。
【0035】
行列Vを構成する5つの行のそれぞれは、1つの原マップを構成する数値データの群を表す。ここでは、ウェハW11の原マップを表す行、ウェハW12の原マップを表す行、ウェハW13の原マップを表す行、ウェハW14の原マップを表す行、およびウェハW15の原マップを表す行が、この順番で列方向に配列されている。
【0036】
行列Hは、複数の特徴マップを行列構造で表した行列である。行列Hは、特徴マップの数と同数の行と、1つの特徴マップを構成する数値データのデータ点数と同数の列とを備えている。この例では、3つの特徴マップが特定されることとする。よって、行列Hは、3行×6列の行列である。なお、図示されているh11~h16、h21~h26、およびh31~h36のそれぞれは、非負の数値データである。
【0037】
行列Hを構成する6つの列のそれぞれは、チップ位置に対応する。各列とチップ位置との対応関係は、行列Vと同様である。即ち、チップ位置C11に対応する列、チップ位置C12に対応する列、チップ位置C13に対応する列、チップ位置C14に対応する列、チップ位置C15に対応する列、およびチップ位置C16に対応する列、がこの順番で行方向に配置されている。
【0038】
行列Hを構成する3つの行のそれぞれは、1つの特徴マップを構成する数値データの群を表す。即ち、行列Hは、3つの特徴マップを表している。行列Hの1行目が表す特徴マップを特徴マップF1、行列Hの2行目が表す特徴マップを特徴マップF2、行列Hの3行目が表す特徴マップを特徴マップF3と表記する。
【0039】
行列Hの構成から明らかなように、各特徴マップは、原マップと同様、チップ位置毎の数値データの群として構成されている。
【0040】
行列Wは、特徴マップ毎の重みの群を全ての原マップの分だけ集めた構造を有する。行列Hは、原マップの数と同数の行と、特徴マップの数と同数の列とを備えている。よって、この例では、行列Wは、5行×3列の行列である。なお、図示されているw11~w13、w21~w23、w31~w33、w41~w43、およびw51~w53のそれぞれは、非負の数値データである。
【0041】
行列Wの1列目は、特徴マップF1に対応する。行列Wの2列目は、特徴マップF2に対応する。行列Wの3列目は、特徴マップF3に対応する。
【0042】
行列Wの1行目は、ウェハW11の原マップを、特徴マップF1、特徴マップF2、および特徴マップF3の重み付き和に近似したときの、重みの群を表す。行列Wの2行目は、ウェハW12の原マップを、特徴マップF1、特徴マップF2、および特徴マップF3の重み付き和に近似したときの、重みの群を表す。行列Wの3行目は、ウェハW13の原マップを、特徴マップF1、特徴マップF2、および特徴マップF3の重み付き和に近似したときの、重みの群を表す。行列Wの4行目は、ウェハW14の原マップを、特徴マップF1、特徴マップF2、および特徴マップF3の重み付き和に近似したときの、重みの群を表す。行列Wの5行目は、ウェハW15の原マップを、特徴マップF1、特徴マップF2、および特徴マップF3の重み付き和に近似したときの、重みの群を表す。
【0043】
図5は、
図4に説明されたNMFの処理例によって1つの原マップが3つの特徴マップの重み付き和に近似されたことを説明するための図である。ここでは一例として、ウェハW15の原マップ(原マップB15と表記する)について説明する。
【0044】
各特徴マップを構成する数値データの群は、行列Hの対応する行から取得できる。
図5に示される例では、各特徴マップは、各チップ位置における数値データが、対応する位置でのコントラスト値によって表現されている。数値が大きいほど黒く描画され、数値が小さいほど白く描画されている。各特徴マップに点線で描かれた円は、ウェハの境界に対応する。
【0045】
図5に示される例では、特徴マップF1は、ウェハの中央エリアにおける数値が、他のエリアにおける数値に比べて著しく大きいという特徴を表している。特徴マップF2は、ウェハの紙面右下の三日月型のエリアにおける数値が、他のエリアにおける数値に比べて著しく大きいという特徴を表している。特徴マップF3は、ウェハの中心を取り囲むリング状のエリアにおける数値が、他のエリアにおける数値に比べて著しく大きいという特徴を表している。
【0046】
また、
図5には、原マップB15の例が、各特徴マップと同様の表現形式で描画されている。
【0047】
図4に示された行列Wによれば、原マップB15にかかる重みの群は、w51、w52、およびw53によって構成されている。よって、原マップB15は、
図5に示されるように、特徴マップF1に重みw51を乗算して得られるマップと、特徴マップF2に重みw52を乗算して得られるマップと、特徴マップF3に重みw53を乗算して得られるマップと、の和に近似できることがわかる。なお、特徴マップに重みを乗算することは、当該特徴マップを構成する全ての数値データに当該重みを乗算することである。
【0048】
このように、NMFによれば、各原マップは、特徴マップの群と、特徴マップ毎の重みの群と、に分解される。よって、1つの原マップに複数の特徴が出現した場合、各特徴を分離して検出することが可能である。
【0049】
実施形態と比較される技術として、階層型クラスタリングによって特徴を特定する技術が考えられる。この技術を第1の比較例と表記する。階層型クラスタリングでは、類似する要素同士でクラスタを形成する処理が実行される。原マップ間の類似度に基づき検査結果群200が1以上のクラスタに分類され、当該1以上のクラスタのそれぞれは、同一の特徴が出現している原マップの集まりとして扱われる。
【0050】
しかしながら、第1の比較例によれば、1つの原マップに複数の特徴が出現した場合、階層型クラスタリングの原理上、当該複数の特徴のそれぞれを分離することができない。仮に1つの原マップに複数の特徴が出現した場合、当該複数の特徴をあわせたものが単一の特徴として扱われる可能性がある。
【0051】
実施形態では、1つの原マップに複数の特徴が出現した場合であってもNMFによって、当該複数の特徴のそれぞれを分離することが可能であるので、第1の比較例に比べて高い精度で特徴を特定できる。
【0052】
NMFによって特定された各特徴マップは、不良の発生原因に対応すると考えることができる。以降では、発生原因が異なる複数の不良のそれぞれを、それぞれ異なるモードの不良として区別する。つまり、NMFによって特定されたそれぞれの特徴マップは、それぞれ異なるモードを表すと考えることとする。モードは不良モードと表記される場合がある。
【0053】
検査結果分析装置1は、検査結果群200を構成する原マップの群をNMFによって特定された特徴マップの群に分類する。なお、本明細書において、分類は、各原マップを、特徴マップの群のうちの1以上の特徴マップに関連付けることである。分類の処理によって、何れの特徴マップにも関連付けられない原マップがあってもよい。
【0054】
分類は、各特徴マップが表すモードの不良が発生しているか否かの判定に基づいて実行される。或る原マップに或るモードの不良が発生していると推定される場合、当該或る原マップは、当該或るモードに関連付けられる。
【0055】
実施形態と比較される別の技術について説明する。当該技術を第2の比較例と表記する。第2の比較例によれば、重みとしきい値との比較に基づいて原マップが分類される。つまり、各特徴マップが表すモードの不良が発生しているか否かは、重みとしきい値との比較によって判定される。実施形態で使用されるしきい値と第2の比較例で使用されるしきい値とを区別するために、実施形態で使用されるしきい値をしきい値ThA、第2の比較例で使用されるしきい値をしきい値ThBと表記する。
【0056】
例えばウェハW15の原マップに対しては、第2の比較例によれば、w51、w52、およびw53のそれぞれがしきい値ThBと比較される。w51がしきい値ThBを越えた場合、ウェハW15の原マップは特徴マップF1に関連付けられる。w51およびw52がともにしきい値ThBを越えた場合、ウェハW15の原マップは、特徴マップF1および特徴マップF2のそれぞれに関連付けられる。
【0057】
特徴マップは、1つの特徴を欠陥数の分布として表して構成されている。重みは、対応する特徴マップが表す欠陥数の分布が原マップに出現している度合いを表す無次元量である。そして、特徴マップが表す欠陥数の分布のスケールは、特徴マップ毎に異なり得る。つまり、重みのスケールは、特徴マップが表す欠陥数の分布のスケールに応じて異なり得る。
【0058】
しきい値ThBの設定が適切でなければ、各特徴マップが表すモードの不良が発生しているか否かが正確に判断できなくなる。第2の比較例では、重みのスケールは、特徴マップが表す欠陥数の分布のスケールに応じて異なるため、しきい値ThBを適切に設定することが困難である。また、特徴マップ毎に個別にしきい値ThBを設定する必要があり、しきい値ThBの設定に要するオペレータの操作負担が大きい。
【0059】
実施形態では、検査結果分析装置1は、重みと特徴マップとを乗算することによって、原マップを表す欠陥数の分布のうちの、当該特徴マップに対応した欠陥数の分布を再現する。重みと特徴マップとの乗算によって得られる分布を、再現マップ(reproduced map)と表記する。
【0060】
図5に示された例に従えば、検査結果分析装置1は、特徴マップF1にw51を乗算することによって、特徴マップF1に対応する再現マップ(再現マップR1と表記する)を生成する。また、検査結果分析装置1は、特徴マップF2にw52を乗算することによって、特徴マップF2に対応する再現マップ(再現マップR2と表記する)を生成する。また、検査結果分析装置1は、特徴マップF3にw53を乗算することによって、特徴マップF3に対応する再現マップ(再現マップR3と表記する)を生成する。
【0061】
原マップは、再現マップR1、再現マップR2、および再現マップR3の和で表すことができる。即ち、再現マップR1、再現マップR2、および再現マップR3のそれぞれは、ウェハW15の原マップから特徴単位で分離された正味の欠陥数の分布として考えることができる。
【0062】
検査結果分析装置1は、各再現マップから、任意の方法で代表値を取得し、代表値としきい値ThAとの比較に基づいて原マップの分類を行う。この方法によれば、しきい値ThAを用いた比較は、正味の欠陥数の分布に対して実行されるため、第2の比較例に比べて簡単にしきい値ThAを設定することができる。また、設定されたしきい値ThAを全ての特徴マップに共通に使用することが可能である。
【0063】
例えば、チップあたり10個以上の欠陥が生じた事象が不良と見なされる場合、オペレータは、「9」をしきい値ThAとして設定する。再現マップR1の代表値が「9」を越えた場合、検査結果分析装置1は、ウェハW15の原マップを特徴マップF1に関連付ける。再現マップR1の代表値および再現マップR2の代表値がともに「9」を越えた場合、検査結果分析装置1は、ウェハW15の原マップを特徴マップF1および特徴マップF2のそれぞれに関連付ける。
【0064】
なお、オペレータは、過去に得られた知見などに基づいてしきい値ThAを設定することができる。例えば、欠陥を検出する検査では、ウェハ表面に付着したダストが欠陥として誤検出される場合がある。チップあたり平均して5個のダストが欠陥として検出することが経験からわかっている場合、オペレータは、「5」をしきい値ThAとして設定することができる。なお、しきい値ThAの設定方法はこれに限定されない。オペレータは、任意の方法でしきい値ThAを設定することができる。
【0065】
再現マップの代表値は、任意の方法で取得され得る。ここでは一例として、再現マップの代表値は、当該再現マップを構成する数値データの群の最大値であることとする。
【0066】
図6は、実施形態にかかる検査結果分析装置1の機能構成の一例を示す模式的な図である。本図に示されるように、検査結果分析装置1は、データ取得部21と、分解部22と、関連付け部23と、出力部24と、を備える。データ取得部21、分解部22、関連付け部23、および出力部24の機能は、CPU10が検査結果分析プログラム100を実行することによって実現される。
【0067】
データ取得部21は、ストレージ装置13から検査結果群200を取得する。前述したように、検査結果群200は、複数のウェハに対する単一の検査によってウェハ毎に得られた原マップの群である。また、データ取得部21は、分類に使用されるしきい値を取得する。
【0068】
分解部22は、検査結果群200に対してNMFを実行することによって、各原マップを、特徴マップの群と、特徴マップごとの重みの群と、に分解する。
【0069】
関連付け部23は、再現マップの生成と、生成された再現マップを構成する数値データの代表値の取得と、代表値としきい値とに基づく分類と、を実行する。
【0070】
出力部24は、分類結果を表示装置15に出力する。
【0071】
図7は、実施形態にかかる分類結果の出力例を示す模式的な図である。本図に示される例では、分類結果は、特徴マップと、当該特徴マップに関連付けられた1以上の原マップと、の対が、特徴マップ毎に含まれたテーブル300が分析結果として出力される。テーブル300の各行のフィールド31には、1つの特徴マップが、特徴マップのIDとともにグラフィカルに表示される。テーブル300の各行のフィールド32には、フィールド31に表示された特徴マップに関連付けられた1以上の原マップが、ウェハIDとともにグラフィカルに表示される。テーブル300は、さらに、各特徴マップに関連付けられたウェハの枚数が表示されるフィールド33を備える。
【0072】
図7に示された例では、特徴マップF11には、ウェハW1の原マップ、ウェハW2の原マップ、およびウェハW3の原マップが関連付けられており、特徴マップF11に関連付けられたウェハの枚数として「3」が表示されている。また、特徴マップF12には、ウェハW3の原マップおよびウェハW4の原マップが関連付けられており、特徴マップF12に関連付けられたウェハの枚数として「2」が表示されている。
【0073】
オペレータは、このテーブル300から、ウェハW1、ウェハW2、およびウェハW3には、特徴マップF11が表すモードの不良が発生していることを読み取ることができる。また、オペレータは、ウェハW3およびウェハW4には、特徴マップF12が表すモードの不良が発生していることを読み取ることができる。また、オペレータは、特徴マップF11が表すモードの不良が発生したウェハの枚数は「3」であり、特徴マップF12が表すモードの不良が発生したウェハの枚数は「2」であることを読み取ることができる。
【0074】
なお、
図7に示されたテーブル300は、一例である。出力部24は、特徴マップと、当該特徴マップに関連付けられた1以上の原マップと、の対を任意の方法で出力することができる。また、テーブル300は、必ずしもフィールド33を備えていなくてもよい。また、テーブル300に、他の任意の情報を表示するためのフィールドが追加されてもよい。
【0075】
また、出力部24は、特徴マップと、当該特徴マップに関連付けられた1以上の原マップと、の対を、所定の基準に基づいて配列することによってテーブル300を生成し得る。所定の基準は、例えば、集計によって得られた枚数の順番である。なお、所定の基準はこれに限定されない。
【0076】
また、出力部24は、NMFによって得られた特徴マップの群のうちの必ずしも全てについて表示しなくてもよい。例えば、出力部24は、集計によって得られた枚数が所定数以上である特徴マップがあれば、当該特徴マップと、当該特徴マップに関連付けられた1以上の原マップと、の対を表示してもよい。
【0077】
なお、テーブル300に表示された各特徴マップは、第6分布の一例である。
【0078】
図8は、実施形態にかかる検査結果分析装置1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、データ取得部21は、ストレージ装置13から検査結果群200を取得する(S101)。また、データ取得部21は、しきい値ThAを取得する(S102)。例えば、データ取得部21は、表示装置15にしきい値ThAの入力を促す設定画面を表示し、オペレータが当該設定画面に応じて数値を入力すると、入力された数値をしきい値ThAとして取得する。なお、しきい値ThAの取得方法はこれに限定されない。
【0079】
分解部22は、データ取得部21によって取得された検査結果群200に対してNMFを実行することによって、各原マップを、特徴マップの群と、特徴マップごとの重みの群と、に分解する(S103)。特徴マップの群と、重みの群と、は例えばRAM11などに格納される。
【0080】
続いて、関連付け部23は、検査結果群200から1つの原マップを選択する(S104)。S104によって選択された原マップを、対象の原マップと表記する。なお、対象の原マップは、第5分布の一例である。
【0081】
続いて、関連付け部23は、特徴マップの群から1つの特徴マップと、当該特徴マップに対応する重みと、を選択する(S105)。S105において選択された特徴マップを、対象の特徴マップと表記する。なお、対象の特徴マップは、第3分布の一例である。
【0082】
続いて、関連付け部23は、選択された重みを対象の特徴マップに乗算することによって、再現マップを生成する(S106)。なお、S106によって生成された再現マップは、第4分布の一例である。
【0083】
続いて、関連付け部23は、再現マップを構成する数値データの群から、代表値を取得する(S107)。関連付け部23は、例えば、再現マップを構成する数値データの群の最大値を代表値とする。
【0084】
続いて、関連付け部23は、代表値がしきい値ThAを越えているか否かを判定する(S108)。
【0085】
代表値がしきい値ThAを越えている場合(S108:Yes)、関連付け部23は、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付ける(S109)。これによって、対象の原マップが対象の特徴マップに分類される。
【0086】
代表値がしきい値ThAを越えていない場合(S108:No)、S109の処理がスキップされる。
【0087】
S109の後、または代表値がしきい値ThAを越えていない場合(S108:No)、関連付け部23は、特徴マップの群のうちに未だ選択されていない特徴マップが存在するか否かを判定する(S110)。
【0088】
未だ選択されていない特徴マップが存在する場合(S110:Yes)、制御がS105に遷移して、関連付け部23は、未だ選択されていない特徴マップのうちから1つの特徴マップを新たに選択し、当該新たに選択された特徴マップに対応する重みを選択する。そして、関連付け部23は、当該新たに選択された特徴マップを対象の特徴マップと見なして、S105からS110までの処理を実行する。
【0089】
未だ選択されていない特徴マップが存在しない場合(S110:No)、関連付け部23は、検査結果群200のうちに未だ選択されていない原マップが存在するか否かを判定する(S111)。
【0090】
未だ選択されていない原マップが存在する場合(S111:Yes)、制御がS104に遷移して、関連付け部23は、未だ選択されていない原マップのうちから1つの原マップを選択する。そして、関連付け部23は、新たに選択された原マップを対象の原マップと見なして、S104からS111までの処理を実行する。なお、制御がS111からS104に遷移したとき、関連付け部23は、特徴マップの選択の履歴をクリアし、全ての特徴マップを未選択と見なされる状態にする。
【0091】
未だ選択されていない原マップが存在しない場合(S111:No)、関連付け部23による分類が完了する。そして、関連付け部23は、各特徴マップに関連付けられた原マップの数を集計する(S112)。
【0092】
続いて、出力部24は、分類結果を出力する(S113)。例えば、出力部24は、
図7に示されたテーブル300のような形式で、分類結果を表示装置15に出力する。
【0093】
そして、実施形態にかかる一連の動作が完了する。
【0094】
なお、
図8を用いて説明された動作の例では、代表値がしきい値ThAと等しい場合、関連付け部23は、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付けないこととした。代表値がしきい値ThAと等しい場合の扱いはこれに限定されない。例えば、代表値がしきい値ThA以上である場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付け、代表値がしきい値ThAに満たない場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付けないように関連付け部23が構成されてもよい。
【0095】
また、以上では、ウェハの群に対する検査の一例として、欠陥を検出する検査を挙げて説明した。ウェハの群に対する検査は、欠陥を検出する検査に限定されない。また、検査の実行タイミングは、特定のタイミングに限定されない。
【0096】
半導体集積回路のチップは、ウェハに対して複数の加工プロセスが実行されることで形成される。複数の加工プロセスのそれぞれは、例えば、洗浄、成膜、レジストコーティング、露光、またはエッチング、等である。複数の加工プロセスのうちのいくつかにおいて、各ウェハに対し、検査が実施される。各検査では、1種類の物理指標が取得される。物理指標は、例えば、寸法、膜厚、欠陥数、欠陥の有無を表すバイナリデータ、トップビュー、密度、波長の反射率(または減衰率)、または表面凹凸の度合い、等である。
【0097】
ウェハに半導体集積回路のチップが形成された後においても、各ウェハに対して1回以上の検査が実施される。チップが形成された後における各検査では、1種類の品質指標が取得される。品質指標は、例えば、動作速度、スタンドバイ電流値、トリミング電圧値、不良ビット数、使用リダンダンシ数、等である。
【0098】
検査結果群200は、加工プロセスにおいて実行される検査によって得られたものであってもよい。その場合、各原マップを構成する数値データの群は、検査によって得られた物理指標を表す。また、検査結果群200は、ウェハに半導体集積回路のチップが形成された後において実行される検査によって得られたものであってもよい。その場合、各原マップを構成する数値データの群は、検査によって得られた品質指標を表す。
【0099】
また、以上では、不良と見なされる事象を検出するための値がしきい値ThAとして設定された。しきい値ThAの設定方法はこれに限定されない。単に特徴の出現を検出できればよい場合、オペレータは、特徴の出現の判断のための値をしきい値ThAとして設定することができる。
【0100】
また、以上では、関連付け部23は、再現マップを構成する数値データの群の最大値を、代表値として取得する、として説明した。代表値として取得される統計量は最大値に限定されない。代表値は、平均値、中央値、95%信頼区間の上限値、第3四分位数、またはこれらの何れかに定数を乗算して得られる値であってもよい。
【0101】
また、オペレータが、最大値、平均値、中央値、95%信頼区間の上限値、第3四分位数、またはこれらの何れかに定数を乗算して得られる値から代表値を選択できるように、検査結果分析装置1が構成されてもよい。例えば、データ取得部21は、代表値の選択肢として最大値、平均値、中央値、95%信頼区間の上限値、第3四分位数、などを表示装置15に表示するとともにオペレータに代表値の選択を促し、これらの選択肢の何れかを選択する入力を受けると、当該選択された種類の統計量を代表値とすることができる。オペレータは、原マップを構成する数値データのばらつきなどに基づき、所望の統計量を代表値として選択することができる。
【0102】
また、関連付け部23は、複数種類の統計量のそれぞれを代表値として取得し、各代表値としきい値ThAとを比較し、代表値毎の比較結果の組み合わせに基づいて関連付けの実行/非実行を判断してもよい。
【0103】
一例では、関連付け部23は、最大値と平均値とのそれぞれを代表値として取得し、当該2つの代表値をしきい値ThAと比較する。関連付け部23は、2つの代表値が共にしきい値ThAを越えた場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付け、2つの代表値が共にしきい値ThA以下であるかまたは2つの代表値のうちの一方のみがしきい値ThAを越えた場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付けない、ように構成され得る。または、関連付け部23は、2つの代表値のうちの少なくとも一方がしきい値ThAを越えた場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付け、2つの代表値が共にしきい値ThA以下である場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付けない、ように構成されてもよい。
【0104】
また、しきい値ThAは、整数であってもよいし、小数点以下の桁を有する実数であってもよい。原マップを構成する各数値データが整数であっても、再現マップを構成する各数値データが整数であるとは限らない。再現マップを構成する各数値データは、小数点以下の桁を有する実数である場合がある。そのような場合、小数点以下の桁を有する実数をしきい値ThAとして選択することで、精緻な分類を行うことが可能となる。
【0105】
以上述べたように、実施形態によれば、検査結果分析装置1は、分解部22と、関連付け部23と、を備える。分解部22は、検査結果群200に対してNMFを実行することによって、各原マップを特徴マップの群と特徴マップ毎の重みの群とに分解する。関連付け部23は、対象の特徴マップに対して対応する重みを乗算することによって再現マップを生成し、再現マップを構成する数値データの群の代表値を取得する。そして、関連付け部23は、代表値がしきい値ThAを越える場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付け、代表値がしきい値ThAに満たない場合、対象の原マップを対象の特徴マップに関連付けない。
【0106】
よって、たとえ1つの原マップに複数の特徴が出現していたとしても、各特徴を精度良く特定できる。よって、第1の比較例に比べ、精度が高い分類が可能となる。また、しきい値ThAは、原マップから特徴単位で分離された正味の欠陥数の分布(即ち再現マップ)との比較に使用されるものであるため、オペレータは、第2の比較例と比べて簡単に、適切な値をしきい値ThAとして設定することができる。また、オペレータは、特徴毎に個別にしきい値ThAを設定する必要がない。つまり、検査結果分析装置1は、簡単な操作で検査結果を高精度に分類できる。
【0107】
なお、関連付け部23は、
図8のS104からS111までの処理によって構成されるループ処理を繰り返すことによって、各原マップを対象の原マップとして順次選択する。そして、関連付け部23は、対象の原マップを選択する毎に、同図のS105からS110までの処理によって構成されるループ処理を繰り返すことによって、各特徴マップを対象の特徴マップとして順次選択する。そして、関連付け部23は、対象の原マップと対象の特徴マップとの対毎に、しきい値ThAに基づく関連付けの判定を実行する。
【0108】
よって、検査結果群200を構成する原マップの群を特徴マップの群に分類することが可能となる。
【0109】
また、出力部24は、特徴マップと、当該特徴マップに関連付けられた1以上の原マップと、を対にして出力する。
【0110】
よって、不良が発生した場合に、オペレータは、当該不良の発生の原因と同じ原因で不良が発生したウェハを特定することが可能である。
【0111】
また、関連付け部23は、特徴マップに関連付けられた1以上の原マップを集計し、出力部24は、集計結果を、当該特徴マップと当該特徴マップに関連付けられた1以上の原マップとの対に関連付けて出力する。
【0112】
よって、オペレータは、同一の原因で不良が発生したウェハの数を読み取ることが可能となる。
【0113】
なお、再現マップを構成する数値データの群の最大値、平均値、中央値、95%信頼区間の上限値、第3四分位数、またはこれらの何れかに定数を乗算して得られる値を、当該再現マップを構成する数値データの群の代表値とすることができる。
【0114】
実施形態の検査結果分析装置1で実行される検査結果分析プログラム100は、ストレージ装置13に予め格納されて提供され得る。ストレージ装置13は、非一時的な有形のコンピュータ可読記録媒体の一例である。検査結果分析プログラム100は、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD:Flexible Disc)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カードなどの非一時的な有形のコンピュータ可読記録媒体(a non-transitory, tangible computer-readable storage medium)に記録して提供するように構成してもよい。
【0115】
さらに、検査結果分析プログラム100を、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、検査結果分析プログラム100を、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0116】
また、実施形態では、プロセッサであるCPU10が検査結果分析プログラム100を実行することによって、データ取得部21、関連付け部23、および出力部24としての機能が実現される、として説明した。データ取得部21、関連付け部23、および出力部24の機能のうちの一部または全部は、論理回路によって実現されてもよい。データ取得部21、関連付け部23、および出力部24の機能のうちの一部または全部は、アナログ回路によって実現されてもよい。データ取得部21、関連付け部23、および出力部24の機能のうちの一部または全部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって実現されてもよい。
【0117】
また、実施形態では、検査結果群200は予めストレージ装置13に格納されているとして説明した。検査結果群200は、外部の装置に格納されていてもよい。検査結果分析プログラム100は当該外部の装置から検査結果群200を取得するように構成されてもよい。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 検査結果分析装置、10 CPU、11 RAM、12 ROM、13 ストレージ装置、14 入力装置、15 表示装置、16 バス、21 データ取得部、22 分解部、23 関連付け部、24 出力部、31,32,33 フィールド、100 検査結果分析プログラム、200 検査結果群。