(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134769
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】干渉縞解析装置、干渉縞解析方法、距離測定装置および距離測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02 20220101AFI20220908BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01B9/02
G01B11/00 B
G01B11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034150
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅
(72)【発明者】
【氏名】藤井 絵理
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064AA09
2F064CC03
2F064FF01
2F064FF05
2F064GG00
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2F064HH07
2F064JJ00
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2F065FF48
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2F065GG06
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2F065HH04
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2F065JJ25
2F065LL04
2F065LL12
2F065LL42
2F065QQ16
2F065QQ18
2F065QQ24
2F065QQ29
2F065QQ31
2F065QQ33
2F065QQ44
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】光検出素子へのノイズ光の入射による計測誤差を低減する。
【解決手段】干渉縞解析装置12は、光検出素子によって検出された光強度信号のうち、光検出素子の検出面上の一部の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出する信号抽出部129と、抽出された光強度信号の位相を検出面上の位置毎に算出する位相算出部124と、複数の抽出領域のうちの1つを選択して光強度信号の位相の近似直線を求める近似直線算出部130と、近似直線算出部130によって選択された領域以外の抽出領域における光強度信号の位相と近似直線とが連続的になるように、複数の抽出領域の位相接続を行う位相接続部131と、位相接続された全ての抽出領域における光強度信号の位相に基づいて干渉縞周波数を算出する干渉縞周波数算出部125を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出素子によって検出された干渉縞の明暗パターンを示す光強度信号のうち、前記光検出素子の検出面上の一部の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出するように構成された信号抽出部と、
前記信号抽出部によって抽出された光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出するように構成された位相算出部と、
複数の前記抽出領域のうちの1つを選択して光強度信号の位相の近似直線を求めるように構成された近似直線算出部と、
前記近似直線算出部によって選択された領域以外の抽出領域における光強度信号の位相と前記近似直線とが連続的になるように、前記複数の抽出領域の位相接続を行うように構成された位相接続部と、
前記位相接続された全ての抽出領域における光強度信号の位相に基づいて光強度信号の空間周波数を示す干渉縞周波数を算出するように構成された周波数算出部とを備えることを特徴とする干渉縞解析装置。
【請求項2】
請求項1記載の干渉縞解析装置において、
前記信号抽出部は、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち光強度が所定の閾値以上の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出することを特徴とする干渉縞解析装置。
【請求項3】
請求項1記載の干渉縞解析装置において、
前記信号抽出部は、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち予め規定された領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出することを特徴とする干渉縞解析装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の干渉縞解析装置において、
前記位相算出部は、前記抽出領域における光強度信号の位相が連続的になるように位相接続を前記抽出領域毎に行うことを特徴とする干渉縞解析装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の干渉縞解析装置において、
前記周波数算出部は、前記位相接続部によって位相接続された全ての抽出領域における光強度信号の位相の近似直線の傾きから前記干渉縞周波数を求めることを特徴とする干渉縞解析装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の干渉縞解析装置において、
前記信号抽出部によって抽出された光強度信号を空間周波数領域のスペクトルに変換する処理を前記抽出領域毎に行うように構成された変換部と、
前記変換部によって変換されたスペクトルに含まれるピークのうち、強度が最大となるピークの空間周波数を基準周波数として前記抽出領域毎に検出するように構成されたピーク周波数検出部と、
前記変換部によって変換されたスペクトルのうち前記基準周波数付近の周波数帯のみを通過させるフィルタ処理を前記抽出領域毎に行うように構成されたフィルタと、
前記フィルタ処理後のスペクトルを、空間領域の光強度信号に変換する処理を前記抽出領域毎に行うように構成された逆変換部とをさらに備え、
前記位相算出部は、前記信号抽出部によって抽出された光強度信号の代わりに、前記逆変換部によって復元された光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出することを特徴とする干渉縞解析装置。
【請求項7】
請求項6記載の干渉縞解析装置において、
前記ピーク周波数検出部は、前記変換部によって変換されたスペクトルに含まれる正の空間周波数成分のうち、強度が最大となるピークの空間周波数を前記基準周波数として検出することを特徴とする干渉縞解析装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の干渉縞解析装置と、
光源からの光を測定対象に照射する照射光学系と、
前記測定対象からの反射光を受光する光検出素子と、
前記測定対象と前記光検出素子との間に設けられ、前記測定対象からの反射光を2分割して異なる入射角で前記光検出素子に入射させる干渉光学系と、
前記干渉縞解析装置によって求められた干渉縞周波数に基づいて、前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出部とを備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項9】
請求項8記載の距離測定装置において、
前記干渉光学系は、前記測定対象から反射される反射光を入射光として、前記入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折光学素子を含むことを特徴とする距離測定装置。
【請求項10】
光検出素子によって検出された干渉縞の明暗パターンを示す光強度信号のうち、前記光検出素子の検出面上の一部の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出する信号抽出ステップと、
前記信号抽出ステップで抽出した光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出する位相算出ステップと、
複数の前記抽出領域のうちの1つを選択して光強度信号の位相の近似直線を求める近似直線算出ステップと、
前記近似直線算出ステップで選択した領域以外の抽出領域における光強度信号の位相と前記近似直線とが連続的になるように、前記複数の抽出領域の位相接続を行う位相接続ステップと、
前記位相接続された全ての抽出領域における光強度信号の位相に基づいて光強度信号の空間周波数を示す干渉縞周波数を算出する周波数算出ステップとを含むことを特徴とする干渉縞解析方法。
【請求項11】
請求項10記載の干渉縞解析方法において、
前記信号抽出ステップは、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち光強度が所定の閾値以上の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出するステップを含むことを特徴とする干渉縞解析方法。
【請求項12】
請求項10記載の干渉縞解析方法において、
前記信号抽出ステップは、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち予め規定された領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出するステップを含むことを特徴とする干渉縞解析方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか1項に記載の干渉縞解析方法において、
前記信号抽出ステップで抽出した光強度信号を空間周波数領域のスペクトルに変換する処理を前記抽出領域毎に行う変換ステップと、
前記変換ステップで変換したスペクトルに含まれるピークのうち、強度が最大となるピークの空間周波数を基準周波数として前記抽出領域毎に検出する基本周波数検出ステップと、
前記変換ステップで変換したスペクトルのうち前記基準周波数付近の周波数帯のみを通過させるフィルタ処理を前記抽出領域毎に行うフィルタ処理ステップと、
前記フィルタ処理後のスペクトルを、空間領域の光強度信号に変換する処理を前記抽出領域毎に行う逆変換ステップとをさらに含み、
前記位相算出ステップは、前記信号抽出ステップで抽出した光強度信号の代わりに、前記逆変換ステップで復元した光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出するステップを含むことを特徴とする干渉縞解析方法。
【請求項14】
光源からの光を測定対象に照射する照射ステップと、
前記測定対象からの反射光を入射光として、前記入射光を2分割して異なる入射角で光検出素子に入射させる光検出ステップと、
請求項10乃至13のいずれか1項に記載の各ステップと、
前記干渉縞周波数に基づいて前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含むことを特徴とする距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉縞解析装置、干渉縞解析方法、距離測定装置および距離測定方法に関し、特に物体で反射された光の干渉縞を解析して測定対象までの対物距離を測定する光干渉計測技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光等の光の干渉を利用して、測定対象までの対物距離や形状、変位などを非接触で測定する光学的測定装置が知られている。特許文献1に開示された距離測定装置では、測定対象に光を照射し、測定対象からの反射光が回折格子を通過した際に生じる干渉縞のピッチから対物距離を求める。干渉縞のピッチを求める際には、干渉縞信号をフーリエ変換によって空間周波数領域のスペクトルに変換して周波数フィルタリングを行った後に、逆フーリエ変換によってスペクトルを空間領域の信号に変換して位相を求め、位相の傾きから干渉縞のピッチを求める。
【0003】
特許文献1に開示された距離測定装置では、干渉縞を計測する際に、ノイズ光が光検出素子に入射した場合、上記の方法で得られる位相にノイズが含まれ、計測誤差になるという課題があった。測定対象からの拡散反射光を信号光と設定した場合、ノイズ光とは、測定対象からの拡散反射光以外の光であり、例えば測定対象からの正反射光や、光学系内のレンズ等による不要な反射光や、環境光などである。特に、一例として、対象物体の表面状態によっては正反射光が強く、光検出素子が飽和するような非常に強い正反射光が入射することがあるため、大きな計測誤差の要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、光検出素子へのノイズ光の入射による計測誤差を低減することができる干渉縞解析装置、干渉縞解析方法、距離測定装置および距離測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の干渉縞解析装置は、光検出素子によって検出された干渉縞の明暗パターンを示す光強度信号のうち、前記光検出素子の検出面上の一部の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出するように構成された信号抽出部と、前記信号抽出部によって抽出された光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出するように構成された位相算出部と、複数の前記抽出領域のうちの1つを選択して光強度信号の位相の近似直線を求めるように構成された近似直線算出部と、前記近似直線算出部によって選択された領域以外の抽出領域における光強度信号の位相と前記近似直線とが連続的になるように、前記複数の抽出領域の位相接続を行うように構成された位相接続部と、前記位相接続された全ての抽出領域における光強度信号の位相に基づいて光強度信号の空間周波数を示す干渉縞周波数を算出するように構成された周波数算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の干渉縞解析装置の1構成例において、前記信号抽出部は、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち光強度が所定の閾値以上の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出することを特徴とするものである。
また、本発明の干渉縞解析装置の1構成例において、前記信号抽出部は、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち予め規定された領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出することを特徴とするものである。
また、本発明の干渉縞解析装置の1構成例において、前記位相算出部は、前記抽出領域における光強度信号の位相が連続的になるように位相接続を前記抽出領域毎に行うことを特徴とするものである。
また、本発明の干渉縞解析装置の1構成例において、前記周波数算出部は、前記位相接続部によって位相接続された全ての抽出領域における光強度信号の位相の近似直線の傾きから前記干渉縞周波数を求めることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の干渉縞解析装置の1構成例は、前記信号抽出部によって抽出された光強度信号を空間周波数領域のスペクトルに変換する処理を前記抽出領域毎に行うように構成された変換部と、前記変換部によって変換されたスペクトルに含まれるピークのうち、強度が最大となるピークの空間周波数を基準周波数として前記抽出領域毎に検出するように構成されたピーク周波数検出部と、前記変換部によって変換されたスペクトルのうち前記基準周波数付近の周波数帯のみを通過させるフィルタ処理を前記抽出領域毎に行うように構成されたフィルタと、前記フィルタ処理後のスペクトルを、空間領域の光強度信号に変換する処理を前記抽出領域毎に行うように構成された逆変換部とをさらに備え、前記位相算出部は、前記信号抽出部によって抽出された光強度信号の代わりに、前記逆変換部によって復元された光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出することを特徴とするものである。
また、本発明の干渉縞解析装置の1構成例において、前記ピーク周波数検出部は、前記変換部によって変換されたスペクトルに含まれる正の空間周波数成分のうち、強度が最大となるピークの空間周波数を前記基準周波数として検出することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の距離測定装置は、干渉縞解析装置と、光源からの光を測定対象に照射する照射光学系と、前記測定対象からの反射光を受光する光検出素子と、前記測定対象と前記光検出素子との間に設けられ、前記測定対象からの反射光を2分割して異なる入射角で前記光検出素子に入射させる干渉光学系と、前記干渉縞解析装置によって求められた干渉縞周波数に基づいて、前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の距離測定装置の1構成例において、前記干渉光学系は、前記測定対象から反射される反射光を入射光として、前記入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折光学素子を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の干渉縞解析方法は、光検出素子によって検出された干渉縞の明暗パターンを示す光強度信号のうち、前記光検出素子の検出面上の一部の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出する信号抽出ステップと、前記信号抽出ステップで抽出した光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出する位相算出ステップと、複数の前記抽出領域のうちの1つを選択して光強度信号の位相の近似直線を求める近似直線算出ステップと、前記近似直線算出ステップで選択した領域以外の抽出領域における光強度信号の位相と前記近似直線とが連続的になるように、前記複数の抽出領域の位相接続を行う位相接続ステップと、前記位相接続された全ての抽出領域における光強度信号の位相に基づいて光強度信号の空間周波数を示す干渉縞周波数を算出する周波数算出ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の干渉縞解析方法の1構成例において、前記信号抽出ステップは、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち光強度が所定の閾値以上の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の干渉縞解析方法の1構成例において、前記信号抽出ステップは、前記光検出素子の検出面上の全領域のうち予め規定された領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出するステップを含むことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の干渉縞解析方法の1構成例は、前記信号抽出ステップで抽出した光強度信号を空間周波数領域のスペクトルに変換する処理を前記抽出領域毎に行う変換ステップと、前記変換ステップで変換したスペクトルに含まれるピークのうち、強度が最大となるピークの空間周波数を基準周波数として前記抽出領域毎に検出する基本周波数検出ステップと、前記変換ステップで変換したスペクトルのうち前記基準周波数付近の周波数帯のみを通過させるフィルタ処理を前記抽出領域毎に行うフィルタ処理ステップと、前記フィルタ処理後のスペクトルを、空間領域の光強度信号に変換する処理を前記抽出領域毎に行う逆変換ステップとをさらに含み、前記位相算出ステップは、前記信号抽出ステップで抽出した光強度信号の代わりに、前記逆変換ステップで復元した光強度信号の位相を前記検出面上の位置毎に算出するステップを含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の距離測定方法は、光源からの光を測定対象に照射する照射ステップと、前記測定対象からの反射光を入射光として、前記入射光を2分割して異なる入射角で光検出素子に入射させる光検出ステップと、前記の各ステップと、前記干渉縞周波数に基づいて前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光検出素子によって検出された光強度信号のうち、光検出素子の検出面上の一部の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出し、抽出した光強度信号の位相を検出面上の位置毎に算出し、複数の抽出領域のうちの1つを選択して光強度信号の位相の近似直線を求め、選択した領域以外の抽出領域における光強度信号の位相と近似直線とが連続的になるように複数の抽出領域の位相接続を行い、位相接続した全ての抽出領域における光強度信号の位相に基づいて光強度信号の空間周波数を示す干渉縞周波数を算出することにより、光検出素子へのノイズ光の入射による計測誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係る距離測定装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係る干渉縞解析装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例に係る光学系の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施例における光検出素子上での光強度の例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施例に係る距離測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施例に係る干渉縞解析装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施例に係る光検出素子の検出面に生じた干渉縞を示す画像例である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施例に係る周波数スペクトルの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施例に係るバンドパスフィルタを説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施例に係る干渉縞信号の位相および干渉縞周波数の算出例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施例における領域間の位相接続の例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2の実施例に係る干渉縞解析装置の構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、本発明の第2の実施例に係る干渉縞解析装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の第1、第2の実施例に係る干渉縞解析装置および距離測定装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の原理]
本発明では、特許文献1に開示された手法を用いる際に、光検出素子で得られた光強度信号のうち、一部の光強度信号のみを用いて解析を行う。さらに、その光強度信号は不連続であることを特徴とする。
【0017】
一部の光強度信号のみを用いる理由は、ノイズ光が支配的な部分の光強度信号を使わずに、測定対象からの信号光(例えば拡散反射光)が支配的な部分の光強度信号のみを用いて解析することで、計測誤差を低減するためである。例えば光検出素子で得られた光強度信号の中央部分に強いノイズ光が含まれている場合に、光強度信号の中央部分を除いた両端の部分のみの、不連続な光強度信号を用いて解析する。
【0018】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。距離測定装置1は、測定対象に光を照射して反射させ、その反射光の干渉縞を解析して得られた干渉縞周波数に基づいて測定対象までの対物距離を測定する。
【0019】
距離測定装置1は、
図1に示すように、光学系10と、光検出素子11と、干渉縞解析装置12と、距離算出部13と、設定部14と、記憶装置15と、表示装置16とを備える。距離測定装置1は、例えば、
図1には図示しないケーシング内部に収納されていてもよい。
【0020】
光学系10は、
図3に示すように、光源101からの光を集光して測定対象Tに照射する照射光学系106と、測定対象Tから反射される反射光を入射光として、入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折光学素子104とを備える。回折光学素子104から出射された2つの次数の回折光により干渉縞が生ずる。
図3では、回折光学素子104における格子の一方の長手方向(紙面垂直方向)をX方向とし、格子の面内でかつ格子の長手方向に直交する方向(紙面上下方向)をY方向とし、格子面に垂直な方向(紙面左右方向)をZ方向とする。回折光学素子104は干渉光学系107を構成している。なお、光学系10の詳細は後述する。
【0021】
光検出素子11は、複数の受光素子が空間的に配列された検出面110を有し、
図3に示すように、光学系10の回折光学素子104を挟んで測定対象Tとは反対側に配置されている。光検出素子11は、望ましくは、光学系10の光軸上に、検出面110と光軸とが互いに直交するように配置されて、回折光学素子104から出射された2つの次数の回折光により生じた干渉縞による明暗パターンを検出する。
【0022】
光検出素子11としては、例えば、CCD(Charged Coupled Device)等の撮像素子や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やフォトダイオードなどの受光素子を空間的に配列したリニアイメージセンサやフォトダイオードアレイなどを用いることができる。
【0023】
干渉縞解析装置12は、光検出素子11によって検出された干渉縞の明暗パターンを示す光強度信号から干渉縞の空間周波数、すなわち干渉縞周波数を求める。干渉縞解析装置12の詳細は後述する。
【0024】
距離算出部13は、干渉縞解析装置12によって求められた干渉縞周波数に基づいて光検出素子11から測定対象Tまでの対物距離を算出する。
【0025】
設定部14は、光学系10、光検出素子11、および表示装置16の動作を制御する。また、設定部14は、干渉縞解析装置12が備えるバンドパスフィルタ122のフィルタ係数の設定などを外部からの入力に応じて行う。
【0026】
記憶装置15は、例えば、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置からなり、光検出素子11が検出した干渉縞を記憶する。また、記憶装置15は、干渉縞解析装置12によって求められた干渉縞周波数、および距離算出部13によって算出された対物距離aを記憶する。さらに、記憶装置15は、設定部14が光学系10や光検出素子11などの駆動制御を行う際の初期設定に関する情報を記憶する。
【0027】
表示装置16は、液晶画面などのディスプレイで構成され、光検出素子11によって検出された干渉縞の波形を表示する。また、表示装置16は、干渉縞解析装置12によって求められた干渉縞周波数を示す情報や、距離算出部13によって算出された対物距離を示す情報を表示する。
【0028】
[干渉縞解析装置の構成]
次に、上述した干渉縞解析装置12の機能構成について
図2を参照してより詳細に説明する。干渉縞解析装置12は、フーリエ変換部(変換部)120と、ピーク周波数検出部121と、バンドパスフィルタ(フィルタ)122と、逆フーリエ変換部(逆変換部)123と、位相算出部124と、干渉縞周波数算出部(周波数算出部)125と、記憶部126と、信号抽出部129と、近似直線算出部130と、位相接続部131とを備える。
【0029】
信号抽出部129は、光検出素子11によって検出された干渉縞の明暗パターンを示す光強度信号のうち、光検出素子11の検出面上の一部の領域を除き、残りの抽出領域の光強度信号を抽出する。例えば
図4に示すように光検出素子11で得られた光強度信号の中央部分に強いノイズ光が含まれていた場合に、光強度が所定の閾値TH以上の領域を除き、残りの抽出領域(光強度が閾値TH未満の領域であり、
図4の例では光検出素子11の両端の領域)の光強度信号を抽出する。
【0030】
フーリエ変換部120は、光強度信号を空間周波数領域のスペクトルに変換する。より詳細には、フーリエ変換部120は、空間領域の光強度信号を離散フーリエ変換して、光強度信号の空間周波数分布を示す周波数スペクトルを出力する。一般的に、フーリエ変換部120によって得られる周波数スペクトルには、直流成分および正負の周波数成分を含む複数のピークが含まれている。ただし、フーリエ変換部120は、信号抽出部129によって一部の領域の光強度信号のみが抽出された場合、抽出された領域毎に変換処理を行う。
【0031】
ピーク周波数検出部121は、フーリエ変換部120によって得られた光強度信号の周波数スペクトルに含まれるピークのうち、光強度が最大となるピークの空間周波数(以下、基準周波数frという。)を検出する。より詳細には、ピーク周波数検出部121は、周波数スペクトルに含まれる直流成分(周波数ゼロ)および負の周波数成分を除いた正の周波数成分のピークのうち、光強度が最大となるピークの空間周波数を基準周波数frとして検出する。ピーク周波数検出部121は、信号抽出部129によって一部の領域の光強度信号のみが抽出された場合、抽出された領域毎に基準周波数frの検出処理を行う。
【0032】
バンドパスフィルタ122は、フーリエ変換部120によって得られた周波数スペクトルに対して基準周波数frを透過させるフィルタである。バンドパスフィルタ122の通過帯域は基準周波数frに応じて可変とする。より詳細には、バンドパスフィルタ122は、光強度信号の周波数スペクトルに対して、基準周波数fr付近の周波数帯のみを通過させ、光強度信号に含まれる直流成分や負の周波数成分および正の高調波成分を含む他の周波数成分を除去する。バンドパスフィルタ122は、中心周波数である基準周波数frから任意の帯域幅に設計すればよく、例えば、基準周波数frに隣接するピークが排除される帯域幅を用いてもよい。これにより、光強度信号に含まれるノイズを低減させることができる。バンドパスフィルタ122は、信号抽出部129によって一部の領域の光強度信号のみが抽出された場合、抽出された領域毎にフィルタ処理を行う。
【0033】
逆フーリエ変換部123は、バンドパスフィルタ122によって基準周波数fr付近の周波数帯のみが透過された空間周波数の周波数スペクトルに基づいて、空間領域の光強度信号を復元する。より詳細には、逆フーリエ変換部123は、バンドパスフィルタ122から出力される周波数スペクトルを逆離散フーリエ変換し、複素数表現の光強度信号を復元する。逆フーリエ変換部123が出力する光強度信号は、元の光強度信号からその直流成分や負の周波数成分が除かれた信号である。上述したフーリエ変換部120と逆フーリエ変換部123とは互いに対応する構成を有する。逆フーリエ変換部123は、信号抽出部129によって一部の領域の光強度信号のみが抽出された場合、抽出された領域毎に処理を行う。
【0034】
位相算出部124は、逆フーリエ変換部123によって復元された光強度信号の位相を算出する。より詳細には、位相算出部124は、逆フーリエ変換部123によって復元された複素数表現の光強度信号の実部と虚部とに基づいて、光検出素子11の複数の受光素子(画素)のそれぞれの位置での光強度信号の位相を算出する。
【0035】
また、位相算出部124は、隣接画素間の位相の値に2πの位相とびがある場合に、位相が連続的になるように2πの整数倍を加減して位相接続を行う。例えば、隣接画素間の位相差を求め、その位相差が予め設定されている位相のしきい値(±π)を超えている場合に、位相接続を行う構成としてもよい。位相算出部124は、信号抽出部129によって一部の領域の光強度信号のみが抽出された場合、抽出された領域毎に位相算出と位相接続の処理を行う。
【0036】
干渉縞周波数算出部125は、位相算出部124が算出した、復元された光強度信号の位相に基づいて、干渉縞の空間周波数である干渉縞周波数を算出する。より詳細には、位相算出部124が算出した複数の画素について算出した光強度信号の位相φ(i)(ただし、i=1,2,・・・,N)に対する近似直線の傾きから干渉縞周波数f(i)を求める。干渉縞周波数算出部125は、例えば、最小二乗法によって位相φ(i)の近似直線を求めることができる。
このように、リニアイメージセンサなどの光検出素子11における一定の距離での光強度信号の位相に対する近似直線の傾きから干渉縞周波数を求めることで、光学系10に起因した収差などの影響を抑えた干渉縞周波数を求めることができる。
【0037】
記憶部126は、フーリエ変換部120によって得られた光強度信号の周波数スペクトル、ピーク周波数検出部121によって検出された基準周波数fr、および逆フーリエ変換部123によって復元された光強度信号を記憶する。また、記憶部126は、位相算出部124によって算出された光強度信号の位相、干渉縞周波数算出部125によって算出された干渉縞周波数fを記憶する。
【0038】
[干渉縞解析の基本原理]
次に、本実施例に係る干渉縞解析の基本原理について説明する。光検出素子11で検出された光強度信号が正弦波であると仮定して、光強度信号を関数cos(ω0x)と表す。ただし、ω0は光強度信号における基本角周波数を表し、ω0=2πf0(f0は干渉縞周波数の基本周波数)である。また、xは光検出素子11の受光素子の配列方向の距離を示す。光検出素子11で検出された光強度信号をフーリエ変換して得られる周波数スペクトルF(ω)は次式(1)で表される。
【0039】
【0040】
上式(1)において、光強度信号の空間周波数分布を示す周波数スペクトルには、+ω0と-ω0の正負の周波数成分が含まれている。
ここで、正の周波数成分+ω0だけを周波数スペクトルから取り出して逆フーリエ変換した信号は、次の式(2)で表される。
【0041】
【0042】
上式(2)の実部と虚部より、光検出素子11に含まれる複数の画素それぞれの位置における位相φは、次の式(3)で求めることができる。
【0043】
【0044】
光強度信号の位相の変化が、ここで求める干渉縞の周波数となり、干渉縞周波数f(x)は次の式(4)で求めることができる。
【0045】
【0046】
実際には、位相φにはノイズが含まれるため、上述したように光検出素子11における一定の距離での光強度信号の位相に対する近似直線の傾きから、干渉縞周波数を求めることができる。
【0047】
[光学系の構成]
次に、本実施例に係る光学系10について
図3を参照して説明する。光学系10は、光源101と、光源レンズ102と、ビームスプリッタ103と、回折光学素子104と、集光レンズ105とを備える。光学系10によって生成された干渉縞は、光検出素子11の検出面110で検出され、干渉縞解析装置12に入力される。
【0048】
光源101と、光源レンズ102と、ビームスプリッタ103とは、光源101から出射される光を測定対象Tに集光して照射する照射光学系106を構成している。
【0049】
光源101は、距離測定に用いる単一波長の光(単色光)を発する装置である。光源101としては、半導体レーザ装置、ナトリウムランプのような単色光や、白色光源と狭帯域バンドパスフィルタにより単一波長化された光を発する装置を用いることができる。
【0050】
光源レンズ102は、光源101から出射された光を集光してビームスプリッタ103へ出射する。
【0051】
ビームスプリッタ103は、集光学系の光路O上に配置されて、光源レンズ102で集光された光源101からの光を反射して、光路Oに沿って測定対象Tの光スポットAに照射する。また、ビームスプリッタ103は、光スポットAで拡散反射された反射光のうち、光路O方向に反射された反射光を回折光学素子104に入射させる。
【0052】
回折光学素子104は、光路O上に配置され、ビームスプリッタ103を透過した測定対象Tからの反射光が入射される。回折光学素子104は、予め設定された回折特性により入射光を制御し、入射光の位相を変えて回折特性に基づく、予め設定された2つの次数の回折光を出射する。
【0053】
より詳細には、回折光学素子104は、凹凸構造が2次元に、かつ周期的に配列された回折格子で構成される。本実施例では、回折光学素子104として、透過型の位相回折格子を用いる場合について説明するが、反射型の位相回折格子を用いてもよい。
【0054】
回折光学素子104は、石英やZnSeなどの光学基板表面に微細な凹凸構造が形成され、凹凸構造による光の回折現象を利用して入射光の強度分布を所望の分布に整形することができる素子である。より具体的には、回折光学素子104は、必要とされる次数の回折光、例えば、±1次の回折光のみを出力し、その他の不要な次数の回折光を出射しないことができる。
【0055】
回折光学素子104は、凹凸構造が、例えば、正弦波形状の断面形状を有していてもよい。正弦波形状の断面形状を有することにより、回折光学素子104は、±1次の回折光のみを出射し、高次の回折光を除去することができる。
【0056】
また、本実施例に係る回折光学素子104は透過型の位相回折格子であるので、0次の回折光を除去するために、正弦波形状が有する山と谷との段差Dは、光路長で次の式(5)を満たす構成とすることができる。
D=n(m+1/2)λ・cosφ ・・・(5)
上式(5)において、nは回折光学素子104の材質の屈折率、mは整数(m=0,±1,・・・)、λは、光源101から出射される光の波長、φは回折光学素子104における任意の入射角を示す。
【0057】
一方、回折光学素子104として反射型の位相回折格子を用いる場合、正弦波形状が有する山と谷との段差Dは、光路長で次の式(6)を満たす構成とすることができる。
D=(m+1/2)λ・cosφ/2 ・・・(6)
上式(6)において、mは整数(m=0,±1,・・・)、λは、光源101から出射される光の波長、φは回折光学素子104における任意の入射角を示す。
【0058】
なお、上式(5)および(6)において、位相では、πとなるような段差Dを設計すればよい。すなわち、回折光学素子104から出射される回折光の位相が互いに逆位相となることにより打ち消し合い、0次の回折光が除去されることになる。
【0059】
また、回折光学素子104である位相型格子の格子周期dは、光源101の光の波長λに比べて十分に大きく、例えば、d>10λ程度とする。これにより、位相型格子として実用に足る構成とすることができる。
【0060】
上記の条件のもと、例えば、±1次の回折光を得るためには、所望の次数の出射光の分布を逆フーリエ変換した空間的な光路分布に基づいて回折光学素子104の格子形状を設計すればよいことになる。
【0061】
集光レンズ105は、回折光学素子104による2つの次数の回折光を集光させる。本実施例では、集光レンズ105は、例えば凸レンズからなり、光路O上に配置されて、回折光学素子104から出射される2つの次数の回折光を結像面に集光させる。
【0062】
光検出素子11は、回折光学素子104から出射された2つの次数の回折光により発生した干渉縞を検出し、検出結果を出力する。より詳細には、光検出素子11は、検出面110を有し、この検出面110において干渉縞の明暗パターンを検出する。
【0063】
以上の光学系10の構成は特許文献1に開示された構成と同様であるが、本実施例では、測定対象Tからの拡散反射光を信号光として設定し、正反射光をノイズ光として扱う。正反射光と拡散反射光が生じる測定対象Tに向けて光を照射したとき、測定対象Tで正反射した光の広がり角は、照射された光の集光角(ビームスプリッタ103から測定対象Tへの光の角度)と同等である。これに対し、測定対象Tで拡散反射した光の広がり角は、照射された光の集光角より大きくなる。
【0064】
そこで、これらの反射光により生じた干渉縞を光検出素子11で受光する際に、照射する光の集光角に対し、より広い角度で反射した光も光検出素子11で受光するように光学系10を設計する。これにより、正反射光により生じた干渉縞は光検出素子11で受光した領域の一部で観測され、その外側に拡散反射光により生じた干渉縞が観測されるので、外側部分の光強度信号を用いて解析を行う。
【0065】
光検出素子11に入射する拡散反射光は光検出素子11の検出面内で比較的一定の強度となるが、正反射光は光検出素子11の面内で急激な強度分布を持っている。このため、上記のように光強度分布から正反射光が入射しているか否かを判断できる。正反射光が入射していると判断した場合、その領域の大きさは、
図3に示した「正反射光と拡散反射光が検出される領域」程度となる。測定対象Tが光軸に対して傾いた場合、「正反射光と拡散反射光が検出される領域」は移動するが、大きさは変わらない。
【0066】
[距離測定の原理]
本発明に係る距離測定装置1における距離測定の原理は特許文献1と同じである。特許文献1によれば、測定対象Tから集光レンズ105までの対物距離aは、次の式(7)のように得られる。
【0067】
【0068】
式(7)において、L1は集光レンズ105の既知の焦点距離、L2は集光レンズ105の主点から光検出素子11の検出面110までの既知の距離、dは回折光学素子104の既知の回折格子間隔、Δkは回折光学素子104を通過する、2つの次数k,k’の回折光の既知の次数差、pは検出面110に生じた干渉縞のピッチである。
【0069】
[距離測定方法]
次に、本実施例に係る干渉縞解析装置12を備える距離測定装置1の動作について、
図5のフローチャートを参照して説明する。まず、測定対象Tが光学系10の所定の測定領域に配置される。また、設定部14は、外部からの入力により、光源101の光量や露光時間などの初期調整を行う。
【0070】
その後、光源101から出射した光は、光源レンズ102によって集光されて、ビームスプリッタ103により測定対象Tに向けて照射される(
図5ステップS1)。次に、測定対象Tの表面で反射された光は、ビームスプリッタ103を透過して、回折光学素子104に入射する。回折光学素子104は、予め設定された回折特性により入射光を制御し、入射光の位相を変えてその回折特性に基づく、予め設定された2つの次数の回折光を出射する(
図5ステップS2)。
【0071】
次に、回折光学素子104から出射された2つの次数の回折光は、集光レンズ105によって集光される。そして、2つの次数の回折光により発生する干渉縞は、光検出素子11によって検出される(
図5ステップS3)。
【0072】
光検出素子11は、検出した干渉縞の明暗パターンを示す光強度信号を干渉縞解析装置12に入力する(
図5ステップS4)。そして、干渉縞解析装置12は、上述した干渉縞解析の原理に基づく演算を行い、干渉縞周波数fを求める(
図5ステップS5)。
【0073】
次に、距離算出部13は、干渉縞解析装置12によって求められた干渉縞周波数fから干渉縞のピッチpを求め、式(7)により集光レンズ105から測定対象Tまでの対物距離aを算出する(
図5ステップS6)。
【0074】
[干渉縞解析方法]
次に、干渉縞解析装置12による干渉縞の解析処理(
図5のステップS5)について、
図6のフローチャートを参照して説明する。まず、光検出素子11によって検出された、例えば、
図7に示す干渉縞の明暗パターンは、光強度信号として干渉縞解析装置12に入力される。
図7に示す干渉縞は、横軸が干渉縞に直行するY方向に沿った画像のピクセル位置を示し、縦軸が各ピクセル位置における光強度(無単位)である。得られた検出結果は、ほぼ正弦波形状をなしており、そのピーク位置が明線に相当している。
【0075】
まず、干渉縞解析装置12の信号抽出部129は、
図4で説明したように、光強度が所定の閾値TH以上の領域を除き、光強度が閾値TH未満の領域の光強度信号を抽出することにより、光検出素子11の検出面110上でノイズ光が支配的な領域の光強度信号を除く(
図6ステップS50)。
【0076】
ノイズ光が強い場合、信号抽出部129の処理により、光検出素子11の検出面110上での光強度信号の抽出領域が不連続となるが、ここでは光強度が閾値TH以上の領域がなかった場合の動作について先に説明する。
【0077】
干渉縞解析装置12のフーリエ変換部120は、光強度信号をフーリエ変換して、光強度信号の周波数スペクトルを出力する(
図6ステップS52)。
図8は、フーリエ変換部120から出力される周波数スペクトルの強度分布の一例を示す図である。
図8において、横軸は空間周波数、縦軸は光強度を示している。
図8の例に示すように、フーリエ変換部120によって光強度信号がフーリエ変換されて得られた周波数スペクトルには、周波数ゼロの直流成分のピークpk0、負の周波数のピークpk2、およびこれと対となる正の周波数のピークpk1など複数のピークを含んでいる。
【0078】
次に、干渉縞解析装置12のピーク周波数検出部121は、ステップS52で得られた光強度信号の周波数スペクトルに含まれる複数のピークのうち、直流成分のピークおよび負の周波数成分のピークを除いた正の周波数成分のピークのなかで光強度が最大となるピークの空間周波数を検出する(
図6ステップS53)。
図8の例では、ピーク周波数検出部121は、ピークpk1を検出し、この空間周波数を基準周波数frとして記憶部126に格納する。
【0079】
次に、干渉縞解析装置12のバンドパスフィルタ122は、光強度信号の周波数スペクトルに含まれる空間周波数成分のうち、基準周波数fr付近の周波数帯を透過させる(
図6ステップS54)。具体的には、
図9の線90で示すように、バンドパスフィルタ122は、基準周波数fr付近の周波数帯を透過させ、それ以外の直流成分のピークpk0および負の周波数成分のピークpk2を含む点線91で示す周波数成分を除去する。
【0080】
干渉縞解析装置12の逆フーリエ変換部123は、バンドパスフィルタ122を通過した、基準周波数fr付近の周波数帯の周波数スペクトルを逆フーリエ変換する(
図6ステップS55)。より詳細には、逆フーリエ変換部123は、上述した干渉縞解析の原理による演算(式(2))に従って逆フーリエ変換を行う。
【0081】
干渉縞解析装置12の位相算出部124は、逆フーリエ変換部123によって復元された空間領域の光強度信号の位相を算出する(
図6ステップS56)。より詳細には、位相算出部124は、逆フーリエ変換によって得られた複素数表現の光強度信号の実部および虚部(式(2))より、光検出素子11に含まれる複数の画素それぞれの位置における位相φを算出する(式(3))。
【0082】
次に、位相算出部124は、ステップS56で算出した位相φについて、隣接画素の位相差に基づいて位相接続を行う(
図6ステップS57)。i画素位置での光強度信号の位相φ(i)は-π~πの間に畳み込まれ、2π周期で不連続な値となる。そのため、位相算出部124は、隣接画素間の位相の値に2πの位相とびがある場合に、2πの整数倍を加減算して位相接続を行う。
【0083】
次に、干渉縞解析装置12の干渉縞周波数算出部125は、位相算出部124によって算出された、復元された光強度信号の位相に基づいて干渉縞周波数fを算出する(
図6ステップS58)。具体的には
図10に示すように、画素位置ごとの位相のデータから最小二乗法による近似直線の傾きを求め、この傾きを干渉縞周波数fとして求める。
【0084】
次に、ノイズ光が強く、信号抽出部129の処理により、光検出素子11の検出面110上での光強度信号の抽出領域が不連続となった場合(
図6ステップS51においてYES)の動作について説明する。
【0085】
干渉縞解析装置12のフーリエ変換部120は、信号抽出部129によって抽出された複数の領域の光強度信号についてステップS52と同じフーリエ変換の処理を光強度信号の抽出領域毎に行う(
図6ステップS59)。
【0086】
干渉縞解析装置12のピーク周波数検出部121は、ステップS59で得られた光強度信号の周波数スペクトルについてステップS53と同じ基準周波数frの検出処理を光強度信号の抽出領域毎に行う(
図6ステップS60)。これにより、領域毎に基準周波数frが得られる。
【0087】
干渉縞解析装置12のバンドパスフィルタ122は、ステップS59で得られた光強度信号の周波数スペクトルについてステップS54と同じフィルタ処理を光強度信号の抽出領域毎に行う(
図6ステップS61)。
【0088】
干渉縞解析装置12の逆フーリエ変換部123は、ステップS61で得られた周波数スペクトルについてステップS55と同じ逆フーリエ変換の処理を光強度信号の抽出領域毎に行う(
図6ステップS62)。
【0089】
干渉縞解析装置12の位相算出部124は、ステップS62によって復元された空間領域の光強度信号についてステップS56と同じ位相φの算出処理を光強度信号の抽出領域毎に行う(
図6ステップS63)。
さらに、位相算出部124は、ステップS63で算出した位相φについてステップS57と同じ位相接続の処理を光強度信号の抽出領域毎に行う(
図6ステップS64)。
【0090】
位相算出部124が抽出領域のそれぞれで求めた位相φは、抽出領域が不連続なために途中で途切れているものの、実際は空間的に連続しているので、領域間の位相接続が可能である。この領域間の位相接続について以下に説明する。
【0091】
干渉縞解析装置12の近似直線算出部130は、ステップS64で領域毎の位相接続が終了した複数の抽出領域のうち1つの領域を選択して位相φの近似直線を最小二乗法によって求める(
図6ステップS65)。このとき、任意の領域を選択してよいが、領域の長さ(
図3のY方向の長さ、
図7、
図10の横軸方向の長さ)が最も長い抽出領域を選択して位相φの近似直線を求めることが望ましい。選択する領域の長さが短いと、ノイズの影響により誤差の大きい近似直線を求めてしまうので、次に説明する領域間の位相接続を失敗する可能性が高くする。
【0092】
続いて、干渉縞解析装置12の位相接続部131は、近似直線算出部130によって選択された領域以外の抽出領域における光強度信号の位相φと近似直線との位相φの差分の絶対値がπ以下になるように、複数の抽出領域を位相接続する(
図6ステップS66)。具体的には、位相接続部131は、近似直線算出部130によって選択された領域以外の抽出領域のうち、近似直線との位相φの差分の絶対値がπを超える領域について光強度信号の位相φに2jπ(jは正の整数)の加算または減算を行うことにより、位相φの差分の絶対値がπ以下になるようにする。
【0093】
図11は領域間の位相接続の例を示す図である。
図11の例では、近似直線算出部130が左端の抽出領域A1を選択して近似直線LSを求めた後の結果を示している。右端の抽出領域A2について位相算出部124が算出した光強度信号の位相φと近似直線LSとの位相φの差分の絶対値はπを超えている。そこで、位相接続部131は、
図11に示すように右端の抽出領域A2の位相φから4πを減算することにより、位相φの差分の絶対値がπ以下になり、位相φが連続的になるようにしている。
【0094】
最後に、干渉縞解析装置12の干渉縞周波数算出部125は、位相接続した全ての抽出領域における光強度信号の位相φの近似直線の傾きを最小二乗法等により求め、求めた傾きを干渉縞周波数fとする(
図6ステップS67)。
【0095】
以上ように、本実施例では、ノイズ光が支配的な部分の光強度信号を使わずに、測定対象Tからの信号光(拡散反射光)が支配的な部分の光強度信号のみを用いて解析することで、干渉縞周波数fおよび対物距離aの計測誤差を低減することができる。
【0096】
なお、
図4、
図11の例では、抽出領域が2つの場合について説明しているが、抽出領域が3つ以上になることも有り得る。例えば正反射光以外に、環境光や、光学系10内のレンズ等による不要な反射光が、光検出素子11の別々の場所に入射すれば、光強度が閾値TH以上の領域が2つ以上になることがあるので、これらノイズ光が強い領域を除くことで抽出領域が3つ以上になる。抽出領域が3つ以上の場合も上記と同様の方法により領域間の位相接続ができることは言うまでもない。
【0097】
また、本実施例では、ピーク周波数検出部121が光強度信号の周波数スペクトルから基準周波数frを検出する場合について説明したが、これとは異なる方法により基準周波数frを取得してもよい。例えば、光検出素子11によって検出された光強度信号から直流成分を除去してゼロクロス点を検出して、そのゼロクロス点に同期した信号を基準周波数frとして求めてもよい。
【0098】
あるいは、ピーク周波数検出部121は、光検出素子11によって検出された光強度信号を微分して、微分した値における減少から増加への切り替わりを検出して基準周波数frを求めてもよい。
【0099】
[第2の実施例]
第1の実施例では、光検出素子11の検出面110上の領域のうち光強度が閾値TH以上の領域を除くようにしているが、予め規定された領域を除くようにしてもよい。
図12は本発明の第2の実施例に係る干渉縞解析装置12の構成例を示すブロック図である。
【0100】
本実施例の干渉縞解析装置12は、フーリエ変換部120と、ピーク周波数検出部121と、バンドパスフィルタ122と、逆フーリエ変換部123と、位相算出部124と、干渉縞周波数算出部125と、記憶部126と、信号抽出部129aと、近似直線算出部130と、位相接続部131とを備える。距離測定装置としての構成は第1の実施例と同じである。
【0101】
図13は本実施例の干渉縞解析装置12の動作を説明するフローチャートである。信号抽出部129aは、光検出素子11の検出面110上の全領域のうち予め規定された領域の光強度信号を除いた光強度信号を抽出する(
図13ステップS50a)。
【0102】
例えば光学系10内のレンズ等による不要な反射光が、光検出素子11の同じ場所に常に入射することがある。この場合は除くべき領域を予め規定することができるため、不要な反射光が入射する領域を信号抽出部129aによって除くことができる。同様の不要な入射は、外部からの環境光でも有り得る。また、光軸に対して測定対象Tが傾いている場合、
図3に示した「正反射光と拡散反射光が検出される領域」が光検出素子11の中央部の位置からずれることになるが、光軸に対する測定対象Tの傾きが常に一定であれば、光検出素子11の同じ場所に常に正反射光が入射するので、この正反射光が入射する領域を信号抽出部129aによって除くことができる。
図13のステップS51~S67の処理は第1の実施例で説明したとおりである。
【0103】
こうして、本実施例では、除くべき領域を予め規定することができる場合に、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
第1の実施例と同様に、予め規定された除くべき領域が2つ以上(抽出された不連続な領域が3つ以上)あってもよいことは言うまでもない。
【0104】
なお、第1、第2の実施例では、レーザ光などの光の反射光によって生ずる干渉縞の周波数を求める場合について説明したが、X線など、可視光、紫外線、および赤外線以外の電磁波の干渉計測を行うこともできる。この場合、光学系10はミラーなどを有する反射光学系で構成することができる。また、光検出素子11は、例えば、シンチレータなどを用いて構成することができる。
【0105】
また、第1、第2の実施例では、対物距離aを測定する場合について説明したが、干渉縞解析装置12によって算出された干渉縞周波数に基づいて、測定対象Tの形状や変位を測定してもよい。
【0106】
また、第1、第2の実施例では、距離測定装置1は、集光レンズ105を備え、収束光を構成する場合について説明した。しかし、距離測定装置1は、結像面においてフーリエ変換面を構成する必要はないため、集光レンズ105の代わりに、平行光や発散光を生成するレンズを用いてもよい。
【0107】
また、集光レンズ105を用いずに、回折光学素子104から出射される2つの次数の回折光により発生する干渉縞を、直接的に、光検出素子11で検出する構成を採用してもよい。この場合、距離測定装置1は、対物距離aとして、光検出素子11の検出面110から測定対象Tまでの距離を測定する。
【0108】
また、第1、第2の実施例に係る距離測定装置1において、回折光学素子104と光検出素子11との間の光路O上に、回折光学素子104の回折方向と光軸に直交する方向に2つの次数の回折光を集光する手段を設けてもよい。集光手段としては、例えば、光の屈折を利用したシリンドリカルレンズや、反射鏡などが挙げられる。また、回折光学素子104自体にレンズの機能を設け、集光手段を構成してもよい。このような集光手段をさらに備えることで、距離測定装置1において、回折光の信号強度をより大きくさせることが可能となる。
【0109】
また、第1、第2の実施例では、位相回折格子で構成される回折光学素子104を備える場合について説明した。しかし、回折光学素子104は、位相回折格子に限られず、例えば、空間光変調器を用いることができる。
【0110】
空間光変調器は、例えば、液晶層と、その液晶層の表面に沿って配置された複数の電極を有し、複数の電極のそれぞれから液晶層に個別に電圧を印加して、液晶層を入射する入射光に対して位相変調を行い、予め設定された2つの次数の回折光のみを出射する。空間光変調器を用いることにより、出射する2つの回折光の次数を用途に応じて可変とすることができる。
【0111】
第1、第2の実施例で説明した干渉縞解析装置12と距離算出部13と設定部14と記憶装置15とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図14に示す。
【0112】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、光検出素子11、表示装置16等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の干渉縞解析方法、距離測定方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU200は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、物体で反射された光の干渉縞を解析する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…距離測定装置、10…光学系、11…光検出素子、12…干渉縞解析装置、13…距離算出部、14…設定部、15…記憶装置、16…表示装置、101…光源、102…光源レンズ、103…ビームスプリッタ、104…回折光学素子、105…集光レンズ、106…照射光学系、107…干渉光学系、110…検出面、120…フーリエ変換部、121…ピーク周波数検出部、122…バンドパスフィルタ、123…逆フーリエ変換部、124…位相算出部、125…干渉縞周波数算出部、126…記憶部、129,129a…信号抽出部、130…近似直線算出部、131…位相接続部。