(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134776
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】運搬用台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/04 20060101AFI20220908BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20220908BHJP
B62B 5/06 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B62B3/04 B
B62B3/02 B
B62B5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034167
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】390002691
【氏名又は名称】株式会社カナツー
(74)【代理人】
【識別番号】100110179
【弁理士】
【氏名又は名称】光田 敦
(72)【発明者】
【氏名】河中 聡
(72)【発明者】
【氏名】亀田 亜矢子
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050BB03
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG02
3D050KK12
(57)【要約】
【課題】繊維製収容ネットによる物品の収容空間を備え、しかも繊維製収容ネットを取り外すような手間をかけずに手持ちハンドルを簡単に折りたたみ、積み重ねて収納可能な運搬用台車を実現する。
【解決手段】運搬用台車1は、荷台6、手押し用の前後のハンドル7及びキャスタ8を具備した台車本体2と、荷台6上に積載用の収容空間9を形成する繊維製収容ネット3を備えており、前後のハンドル7は、それぞれ繊維製収容ネットを取り外すことなく、荷台6上に向けて回転して折りたたみ可能であり、繊維製収容ネット3は、平面視で矩形の周面部36を有し、前後のハンドル7を外側から覆うように荷台6の周縁部に沿って取り付けられ、収容空間9は、繊維製収容ネット3で囲まれた空間として形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台、手押し用の前後のハンドル及びキャスタを具備した台車本体と、荷台上に積載用の収容空間を形成する繊維製収容ネットを備えた運搬用台車であって、
前後のハンドルは、荷台の前端部及び後端部に、それぞれ起立し、かつ荷台上に向けて回転して折りたたみ可能に取り付けられており、
繊維製収容ネットは、左右の側面と前後の端面とから成る周面部を有し、平面視で矩形であり、前後のハンドルを外側から覆うように荷台上での周縁部に沿って、台車本体取り付けられており、
積載用の収容空間は、荷台上に繊維製収容ネットで囲まれた空間として形成されている構成であることを特徴とする運搬用台車。
【請求項2】
荷台の左右の側縁に沿って、荷台上の左右の側縁の内側に前後方向に延びるネット装着用帯板が固定されており、
該ネット装着用帯板は、長手方向に複数の装着孔が一定の間隔で形成されており、
繊維製収容ネットの左右の側面の下端が、装着孔に挿通される装着具及び装着紐の両方又はいずれかを介して取り付けられている構成であることを特徴とする請求項1に記載の運搬用台車。
【請求項3】
前後のハンドルは、それぞれ左右に支柱を有し、左右の支柱の上部と下部にネット取付具が設けられており、該ネット取付具によって、繊維製収容ネットの前後の端面が前後のハンドルに取り付けられている構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬用台車。
【請求項4】
繊維製収容ネットの周面部の一部を挟む又は囲むように、ファスナが取り付けられており、該ファスナの開閉によって、繊維製収容ネットの周面部の一部が開閉可能である構成であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の運搬用台車。
【請求項5】
請求項2に記載の運搬用台車における繊維製収容ネット及びネット装着用帯板を含むことを特徴とする運搬用台車に繊維製収容ネットを取り付けるためのネット取付キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬用台車に関し、詳しくは、物品積載用の収容空間を形成する繊維製収容ネットを備えた運搬用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運搬用台車に設けられた手押し用のハンドルを折りたたみ可能とする構成は周知である。また、積載用の空間を形成するために、金属製のネット又格子から成る囲い枠(周壁)を備えた運搬用台車は、周知である。
【0003】
そして、網体から成り、底面部と、それぞれ底面部に回転可能に取り付けられ内側に回転して折り畳める4つの周壁部を備え、かつ折りたたみ可能な手押し用のハンドルを備えたカーゴキャリーは知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、運搬用台車に積載された荷物を、運搬用台車とともに全体的に覆うようにして、荷崩れを防止するネット状の荷崩れ防止具は知られている(特許文献2、3参照)。
【0005】
また、金属製の格子状の囲い枠の一部に取り付けて荷崩れ防止するための、樹脂製のメッシュ生地の覆い体、網み織りの樹脂製のネット等が知られている(特許文献4、5、6参照)。
【0006】
また、運搬用台車上に載置し、運搬物を収容しかつ折りたたみ可能な樹脂製のシートから成る収容箱は知られている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-057125号公報
【特許文献2】特開2009-023623号公報
【特許文献3】特開2004-189310号公報
【特許文献4】特開2020-059409号公報
【特許文献5】実用新案登録第3137396号公報
【特許文献6】特開2020-157941号公報
【特許文献7】特開2008-006908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
折りたたみ可能な手押しハンドルを備えた運搬用台車は、その不使用時には、複数の運搬用台車は、それぞれ手押しハンドルを折りたたんでから、上方に積み重ねて、例えば、工場等の使用施設の隅に収納することができる。
【0009】
しかしながら、積載用の空間を形成するため取り付ける金属製のネット又は格子、或いは樹脂製のシート等から成る通常の囲い枠を備えた運搬用台車では、手押しハンドルを折りたたむことはできないという問題が生じる。
【0010】
特許文献1に記載のカーゴキャリーは、網体から成る4つの周壁部を内側に折りたたんでからハンドルを折り畳むことができる構成であるが、4つの周壁部はそれぞれ底面部に回転可能に取付る等の複雑な構成が必要であり、カーゴキャリーの折りたたみに際しても、4つの周壁部を内側に折りたたむ等の面倒な作業が必要となる等の問題がある。
【0011】
特許文献2、3に記載の荷崩れ防止具は、運搬用台車自体ではなく、運搬用台車に積載された積載物の荷崩れを防止する手段にすぎず、運搬用台車とは別に準備しなくてはならず、荷崩れ防止のために運搬用台車と積載物を覆う作業も面倒となるという問題がある。
【0012】
特許文献4~6に記載のネットは、特許文献2、3に記載の荷崩れ防止具と同様に、運搬用台車ではなく、運搬用台車に積載された積載物の荷崩れを防止する手段にすぎず、運搬用台車とは別に準備しなくてはならず、運搬用台車に取り付けるという作業も面倒となるという問題がある。
【0013】
特許文献7に記載の収容箱は、運搬用台車の収納時には、樹脂製のシートの折りたたみの線に沿って折り畳む等の面倒な作業が必要となり、仮に折り畳み可能なハンドルを備えた運搬用台車に適用しても、運搬用台車の台上に折りたたんだ収容箱が折りたたむハンドルの邪魔となる等の問題がある。
【0014】
本発明は、従来技術の上記問題を解決することを目的とするものであり、物品を積載して運搬する使用時には、積載物品を収容する収容空間を備え、しかも、不使用時には、収容空間を形成する部材を取り外すような手間をかけずに、つけたまま、手持ちハンドルを簡単に折りたたみ、積み重ねて収納可能な運搬用台車を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するために、荷台、手押し用の前後のハンドル及びキャスタを具備した台車本体と、荷台上に積載用の収容空間を形成する繊維製収容ネットを備えた運搬用台車であって、前後のハンドルは、荷台の前端部及び後端部に、それぞれ起立し、かつ荷台上に向けて回転して折りたたみ可能に取り付けられており、繊維製収容ネットは、左右の側面と前後の端面とから成る周面部を有し、平面視で矩形であり、前後のハンドルを外側から覆うように荷台上での周縁部に沿って、台車本体取り付けられており、積載用の収容空間は、荷台上に繊維製収容ネットで囲まれた空間として形成されている構成であることを特徴とする運搬用台車を提供する。
【0016】
荷台の左右の側縁に沿って、荷台上の左右の側縁の内側に前後方向に延びるネット装着用帯板が固定されており、該ネット装着用帯板は、長手方向に複数の装着孔が一定の間隔で形成されており、繊維製収容ネットの左右の側面の下端が、装着孔に挿通される装着具及び装着紐の両方又はいずれかを介して取り付けられている構成とすることが好ましい。
【0017】
前後のハンドルは、それぞれ左右に支柱を有し、左右の支柱の上部と下部にネット取付具が設けられており、該ネット取付具によって、繊維製収容ネットの前後の端面が前後のハンドルに取り付けられている構成とすることが好ましい。
【0018】
繊維製収容ネットの周面部の一部を挟む又は囲むように、ファスナが取り付けられており、該ファスナの開閉によって、繊維製収容ネットの周面部の一部が開閉可能である構成とすることが好ましい。
【0019】
本発明は上記課題を解決するために、運搬用台車におけるネット装着用帯板を含むことを特徴とする運搬用台車に繊維製収容ネットを取り付けるためのネット取付キットを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る運搬台車用によれば、次の効果が生じる。
(1)運搬用台車を不使用の際には、単に、前後のハンドルを荷台上に回転して折りたためば、それに従って、繊維製収容ネットを、台車から取り外すようなことなく、付けたまま荷台上に折り重なるようにして折りたたむことが可能となる。従って、不使用の際に、複数の運搬用台車を積み重ねて簡単に収納できる。
【0021】
(2)繊維製収納ネットを備えた運搬用台車によれば、収納空間を形成するために、金属製や樹脂製等、剛性を有するネットやシートから成る周壁部を備えた運搬用台車等に比較して、構成が簡単で製造が容易であり、繊維製収納ネットは、材料も安価であり、古くなったら取り換えも簡単であり、収容する物品に応じて選択可能で、経済性、メインテナンス性も良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る運搬用台車の実施例の全体構成を説明する図であり、(a)は斜視図及び要部拡大図であり、(b)は運搬用台車の側面図である。
【
図3】上記実施例の台車本体を説明するための図であり、(a)は使用状態であり、(b)はハンドルの支柱をロック杆でロックする状態示し、(c)は手押し用のハンドルを折りたたんだ状態を示す図であり、(d)はハンドルの支柱のロックを解除する状態を示す。
【
図4】台車本体に繊維製収納ネットを取り付けるために部品を示す図であり、(a)はネット装着用帯板の平面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は(a)のC-C断面図であり、(d)、(e)、(f)はそれぞれ装着具の斜視図、平面図、側面図であり、(g)、(h)はそれぞれ繊維製収容ネットの取付具の平面図、側面図を示す。
【
図5】(a)は繊維製収納ネットがネット装着用帯板に取り付けられている構成を説明する図であり、(b)は(a)の要部拡大図であり、(c)繊維製収容ネットが紐等を使用することなく装着具で直接取り付けられた構成を示す図である。
【
図6】(a)は繊維製収納ネットが、ネット装着用帯板及びロック杆にそれぞれ取り付けられた構成を示す図であり、(b)は本発明に係る運搬用台車が折りたたまれた状態を示す図である。
【
図7】ファスナを設けた繊維製収納ネットの変形例を説明する図であり、(a)はファスナを閉じ運搬可能な状態を示し、(b)はファスナを開く状態を示す図である。
【
図8】ファスナを設けた繊維製収納ネットの別の変形例を説明する図であり、(a)はファスナを閉じ運搬可能な状態を示し、(b)はファスナを開く状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る運搬用台車を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例0024】
本発明に係る運搬用台車の実施例を、
図1~
図8を参照して以下に説明する。本発明に係る運搬用台車1は、
図1に示すように、台車本体2と繊維製収容ネット3を備えている。
【0025】
台車本体2は、
図1~
図3に示すように、荷台6、手押し用のハンドル7及びキャスタ8を具備している。繊維製収容ネット3は、
図1に示すように、荷台6上に積載用の収容空間9を形成する部材である。
【0026】
本明細書の記載及び特許請求の範囲記載の発明では、運搬用台車1の進行方向側、後退方向側及び進行方向に向かって左右を、それぞれ前側、後側及び左右側と定義する。なお、前側及び後側は、あくまでも説明の都合上であり、実際は、使用者は前側から後側に向かって押して進行させてもよい。
【0027】
ハンドル7としては、
図1、
図2に示すように、荷台6の前端部及び後端部に、それぞれ前側ハンドル7及び後側ハンドル7(以下、前後のハンドル7とも言う)が設けられている。前後のハンドル7は、互いに同じ構造であり、左右の支柱12と、左右の支柱12の上端を橋絡する水平把持部13と、を備えている。
【0028】
また、前後のハンドル7には、それぞれ左右の支柱12間に、
図1、
図2に示すように、ハンドル7を補強する背板14が固定されている。この背板14は、必要に応じて、製造番号、機種、使用場所、広告等が適宜表示される構成としてもよい。
【0029】
荷台6の4隅には、
図1~
図3に示すように、支柱12を回転可能に取り付ける支柱取付ブラケット17が固定されている。支柱取付ブラケット17は、前後方向から見て略U字型であり、枢軸18を介して、支柱12の下端部が回転可能に取り付けられている。
【0030】
支柱取付ブラケット17には、その左右の側部に上下方向に向けて長孔19が形成され、長孔19内には、上下方向に摺動可能なロック杆22の左右の端部が挿通され、バネ23によって上方に付勢されて設けられている(
図3(b)、(d)参照)。ロック杆22は、
図2に示すように、左右の支柱取付ブラケット17にわたって、水平に設けられている。
【0031】
図1、
図2、
図3(a)のように、ハンドル7が起立している状態では、
図3(b)に示すように、支柱12の下端部がバネ23で上方に付勢されたロック杆22に係合し、支柱12を起立状態に維持する。
【0032】
ロック杆22を、
図3(d)に示すように、バネ23の弾力に抗して下方に押すと、支柱12の下端部がロック杆22との係合が解除されて、
図3(c)に示すように、支柱12を、枢軸18を中心にして、荷台6方向に回転し折りたたむことが可能となる。
【0033】
荷台6の左右端部には、それぞれ前後方向に延びるネット装着用帯板25が、
図1、
図2に示すように、適宜カ所においてネジ24で、荷台6に固定されて取り付けられている。ネット装着用帯板25は、
図4(b)~(c)に示すように、前後方向に対して直交する垂直断面は、略上下逆凹字形であり、その頂部には、前後方向(長手方向)に一定間隔で複数の装着孔26が形成されている。
【0034】
複数の装着孔26から、例えば隣接する2つの装着孔を通して、装着具27が取り付けられている。このように2つの装着孔から成る組を、収容される物品の大きさ等を考慮しして、複数組選択し、それぞれに装着具27が取り付けられている。
【0035】
装着具27としては、例えば
図4(d)~(f)に示すように、無端状ではなく、線材が2~3回巻き付けられたスプリング状のリング等が使用され、その一端から装着孔26に挿入し、
図5(a)、(b)、
図6(a)に示すように、ネット装着用帯板25に取り付けられる。
【0036】
ネット装着用帯板25の装着孔26に取り付けられた装着具27に、
図5(a)、(b)、
図6(a)に示すように、装着紐28を介して繊維製収容ネット3の左右の側面31の下部が、ネット装着用帯板25に取り付けられる。
【0037】
この場合、
図5(a)、(b)に示すように、繊維製収容ネット3の下側の支持紐32に装着紐28をかけると、支持紐32は繊維製収容ネット3の他の部分より強度があるので、破損はしにくい。
【0038】
なお、装着紐28を用いることなく、
図5(c)に示すように、装着具27を、ネット装着用帯板25の装着孔26を通して繊維製収容ネット3の左右の側面31の下部に掛けて、繊維製収容ネット3をネット装着用帯板25に取り付ける構成としてもよい。
【0039】
又は、図示しないが、装着具27を用いることなく、装着紐28をネット装着用帯板25の装着孔26を通して繊維製収容ネット3の左右の側面31の下部に掛けて、繊維製収容ネット3をネット装着用帯板25に取り付ける構成としてもよい。
【0040】
前後のハンドル7における左右の支柱12には、それぞれその上部及び下部に、
図2、
図3に示すように、ネット取付具35(
図4(g)、(h)参照)がネジで固定されて取り付けられている。ネット取付具35は、後記するが、繊維製収容ネット3を、取付紐37を介して支柱12に取り付ける部品である(
図6(a)参照)。
【0041】
繊維製収容ネット3は、荷台6上において、
図1(a)に示すように、前後のハンドル7における左右の支柱12に外側から覆い荷台6の上方を囲うように取り付けて、荷台6上に積載用の収容空間9を形成するものである。繊維製収容ネット3は、周面部36を備え、平面視で荷台6と同じ矩形状であり、その矩形寸法は荷台6と略同じである。
【0042】
繊維製収容ネット3の周面部36は、
図1に示すように、前後の端面33と左右の側面31を備えており、周面部36の上端及び下端には、それぞれ周囲にわたって上下の支持紐32が挿通されている。支持紐32は、繊維製収容ネット3の網目を構成する部分より太い。
【0043】
平面視で矩形の繊維製収容ネット3は、前記し
図1(a)に示すように。台車本体2の周囲かつ前後のハンドル7及び荷台6を囲うように、外側に被せられている。そして、繊維製収容ネット3の前後の端面33において、それぞれ上下の支持紐32は、
図6(a)に示すように、取付紐37を介してネット取付具35及びロック杆37に取り付けられている。
【0044】
また、繊維製収容ネット3は、その左右の側面31において、それぞれ下側の支持紐32が、その長手方向に間隔をあけた複数箇所において、前記したように、装着具27と装着紐28を介して、ネット装着用帯板25に取り付けられている。
【0045】
図7、
図8は、繊維製収容ネットの変形例を示す図である。
図7、
図8に示す変形例の繊維製収容ネット41、42は、それぞれ繊維製収容ネットの周面部36の一側面31にファスナを設け、ファスナにより周面部36の一側面31を開閉可能とするファスナ付き繊維製収容ネットである。
【0046】
図7(a)に示す繊維製収容ネット41は、上開きタイプ(繊維製収容ネットの一側面31の上側から下方に向けて開くタイプ)であり、一側面31の前端側及び後端側に、それぞれ下方から上端まで延びるファスナ43が設けられている。
【0047】
このファスナ43を開くと、
図7(b)に示すように、一側面31における上端に設けられた支持紐32も含めて、前後のファスナ43の間の部分44が、下端側を中心に上側から下方に向けて開き、積載する物品の載せ降ろしに便利となる。
【0048】
図8(a)に示す繊維製収容ネット42は、下開きタイプ(繊維製収容ネットの一側面31の下側から上方に向けて開くタイプ)であり、一側面31の前端側、下端側及び後端側を通して、側面視で全体として凹字形に延びるファスナ48が設けられている。
【0049】
このファスナ48を開くと、
図8(b)に示すように、一側面31におけるファスナ48で囲まれた部分49が、上端側を中心に下側から上方に向けて開き、積載する物品の載せ降ろしに便利となる。
【0050】
以上の運搬用台車1は、製造当初から繊維製収容ネット3、41、42を備えた構成としてもよいが、前後に手押し用のハンドル7を備えており、繊維製収容ネットを備えていない既存の運搬用台車1に、ネット取付キットを使用して、後付けで繊維製収容ネット3、41、42を設けて本発明に係る運搬用台車1を形成してもよい。
【0051】
ここで、ネット取付キットとは、前記した繊維製収容ネット3(又は繊維製収容ネット41、若しくは繊維製収容ネット42)、ネット装着用帯板25、装着具27、ネット取付具35、装着紐28、取付紐37等の全て又は一部を含むものである。このようなネット取付キットを使用すれば、前記説明をしたとおり、既存の台車本体2であっても、繊維製収容ネット3、42、42を被せて取り付けることによって本発明に係る運搬用台車1は形成される。
【0052】
(作用)
以上の構成から成る本発明に係る運搬用台車1の作用について、以下説明する。運搬用台車1の使用に際しては、前後のハンドル7を上方に起立し、ハンドル7の左右の支柱12におけるそれぞれの下端を、上方に付勢されたロック杆22でロックし、
図1に示すように、起立状態を維持する。
【0053】
本発明に係る運搬用台車1は、荷台6の左右に、それぞれ側縁に沿って前後方向に延び、かつ前後方向に一定間隔で形成された複数の装着孔26を有するネット装着用帯板25がネジで固定されている。
【0054】
従って、運搬用台車1で運搬する物品の寸法の大小に応じて、複数の装着孔26を適宜選択して装着具27を挿通し、装着紐28を介して、繊維製収容ネット3の下端を容易に取り付けることが可能となる。
【0055】
即ち、運搬用台車1で運搬する物品の寸法が小さい場合は、装着孔の選択間隔を狭めて数多くの装着具27を装着し、物品の寸法が大きい場合は、装着孔の選択間隔を広めて数少ない装着具27を装着する。
【0056】
このようにして、収容し運搬する物品の大きさに応じて、ネット装着用帯板25への取付箇所の疎密を調整すれば、物品がネットから抜け出すようなことがなく、物品を荷台6上に載置し、繊維製収容ネット3で囲まれた収容空間9内に収容して運搬することができる。
【0057】
なお、
図7、
図8に示すファスナ付き繊維製収容ネット41、42を備えた運搬用台車1の使用に際しては、それぞれ繊維製収容ネット41、42に設けられたファスナ43、48を閉じた状態で使用する。
【0058】
運搬用台車1の不使用時に、例えば、工場等のような事業所の隅に収納する場合は、物品が荷台6上にない状態で、次のように、前後のハンドル7を荷台6上に折りたためばよい。
【0059】
ハンドル7を荷台6上に折りたたむ場合は、バネ23の弾力に抗してロック杆22を下方に押圧する。すると、ハンドル7の下端部はロック杆22から係合がはずれる(
図3(b)、(d)参照)。
【0060】
その結果、ハンドル7の左右の支柱12は、枢軸18を中心にハンドル7を荷台6上の方向に回転可能となり、
図6(b)に示すように、前後のハンドル7は、互いに折り重なるようにして折りたたむことができる。
【0061】
前後のハンドル7を荷台6上に折りたたむと、それに従って、繊維製収容ネット3も、
図6(b)に示すように、自然に荷台6上に折り重なるようにして折りたたむことができるので、繊維製収容ネット3を台車本体2に取り付けたまま、複数の運搬用台車1を積み重ねて、収納可能である。
【0062】
以上のとおり、本発明に係る運搬用台車1によれば、運搬用台車1を不使用の際には、単に、前後のハンドル7を荷台6上に回転して折りたためば、それに従って、繊維製収容ネット3を、台車本体2から取り外すようなことなく、取付けたまま荷台6上に折り重なるようにして折りたたむことが可能となる。従って、不使用の際に、複数の運搬用台車1を積み重ねて簡単に収納できる。
【0063】
また、本発明に係る運搬用台車1によれば、収容空間の形成のための周壁部として、金属製のネット等の剛性のネットを備えた従来の運搬用台車(特許文献1参照)に比較して、構成が簡単で製造が容易であり、繊維製収容ネット3の材料は安価であり経済性が良い。
【0064】
そして、本発明に係る運搬用台車1の繊維製収容ネット3は、材料は安価であり、着脱もし易いので、取り換えするには都合が良い。従って、定常的に運搬する物品の大きさに最適な網目の大きさを備えた繊維製収容ネット3を選択して取り付けることができ、また古くなったら容易に取り替えができ、メインテナンス性も良い。
【0065】
また、本発明に係る運搬用台車1は、繊維製収容ネット3は、可撓性を有するので、収容空間9が若干拡がる等の融通がきき、金属製のネット等の剛性の周壁部を備えた従来の運搬用台車に比べて、運搬すべき物品の収納性に優れている。
【0066】
さらに、繊維製収容ネット3を備えていない既存の運搬用台車についても、手押し用の前後のハンドルを備えていれば、ネット取付キットを使用して、後付けで繊維製収容ネット3を設けて本発明に係る運搬用台車1が形成可能である。
【0067】
そして、従来行われていた、運搬用台車に載置した荷物を包み込んで荷崩れ防止を行うネット等(特許文献2~6参照)に比較して、荷物を包み込むような作業が不要であるので、積載ないし運搬作業が容易となる。
【0068】
従来は、運搬用台車における収容空間を形成するネット等の周壁部は、収容する物品が確実に荷台上に載置され外方にはみ出さない等のために、剛性の材料で形成することが常識であり、本発明に係る運搬用台車1のような可撓性を有する繊維製収容ネット3を備えるという発想は全くなかった。
【0069】
しかしながら、本発明者等は、前記した課題を解決するために鋭意検討した結果、繊維製収容ネット3を設け、しかも取り付け易く、収容空間を形成し易いという本発明の想到に至ったのであり、その結果、上記のとおりきわめて顕著な効果が生じるものである。
【0070】
以上、本発明に係る運搬台車を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。