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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134777
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】バルブ開閉装置及びロボット
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/44 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
F16K31/44 F
F16K31/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034169
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チン チン ウェン
(72)【発明者】
【氏名】田中 基康
【テーマコード(参考)】
3H063
【Fターム(参考)】
3H063AA05
3H063BB07
3H063DB31
3H063DB46
3H063GG16
(57)【要約】
【課題】例えばロボットに搭載されることで、作業者がアクセスすることが困難な場所まで搬送可能であり、適切にバルブを開閉できるバルブ開閉装置及びロボットを提供する。
【解決手段】パイプPP内で揺動する開閉バルブに連結され、前記パイプPPに固定された軸受装置BRに対して回動可能なレバーLVを操作するバルブ開閉装置10は、アクチュエータ14と、前記アクチュエータ14により回転駆動される駆動ギヤ15と、前記駆動ギヤ15に噛合して回動し、前記レバーLVに係合する第1ピン16を備えた従動ギヤ13と、前記軸受装置BRを収容する開放部を備え、前記扇状ギヤ13を回動可能に保持するケース12と、を有し、前記扇状ギヤ13は、第1ピン16を起点に前記レバーLVを越えて扇状ギヤ13の回転中心回りに90度を超え、360度未満の角度で延在する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部に対して変位する開閉バルブに連結された回動可能な操作部材を操作するバルブ開閉装置であって、
アクチュエータと、
前記アクチュエータにより回転駆動される駆動ギヤと、
前記駆動ギヤに噛合して回動し、前記操作部材に係合する係合部を備えた従動ギヤと、
前記基部を収容する開放部を備え、前記基部の周囲にて前記従動ギヤを回動可能に保持するケースと、を有し、
前記従動ギヤは、前記係合部を起点に前記操作部材を越えて前記従動ギヤの回転中心回りに90度を超え、360度未満の角度で延在する、
ことを特徴とするバルブ開閉装置。
【請求項2】
前記係合部は、前記従動ギヤの回動に応じて、前記操作部材に係合する位置に移動する第1ピン及び第2ピンである、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ開閉装置。
【請求項3】
前記ケースに配設される当接部材と、
前記従動ギヤに設置されるピン制御装置と、を有し、
前記第1ピンが第1の方向から接近して前記当接部材に当接したときは、前記ピン制御装置は、前記従動ギヤに対して前記第1ピンを傾動させる、
ことを特徴とする請求項2に記載のバルブ開閉装置。
【請求項4】
前記第1ピンが前記第1の方向とは異なる第2の方向から接近して前記当接部材に当接したときは、前記ピン制御装置は、前記当接部材に対して前記第1ピンをスライドさせる、
ことを特徴とする請求項3に記載のバルブ開閉装置。
【請求項5】
前記ケース及び前記従動ギヤはC字形状を有する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のバルブ開閉装置。
【請求項6】
前記従動ギヤは、その回転中心回りに270度以上の角度で延在する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のバルブ開閉装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のバルブ開閉装置を搭載したことを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ開閉装置及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所などにおいて、何らかの不具合が生じた場合に、冷却機能及び隔離機能を発動して安全停止させるためのバルブが設置されている。しかしながら、不具合の状況によっては、作業者がバルブまで安全にアクセスできないことも懸念される。 これに対し、特許文献1には、バルブを電動アクチュエータにより開閉する技術が開示されている。バルブを電動アクチュエータにより開閉することができれば、遠隔操作により作業者の安全を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-100894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、構内において予備電源を含む全電源が喪失するような最悪の事態が生じた場合、バルブを開閉する電動アクチュエータが動作しなくなるおそれがある。これに対し、ロボットにバルブ開閉装置を搭載し、万が一全電源が喪失したような場合には、遠隔操作または自律動作によりロボットをバルブにアクセスさせて、バルブ開閉装置によりバルブを開閉させることも提案されている。
【0005】
ここで、バルブにアクセスするためには狭い場所を通過せざるを得ない場合もあり、そのためロボットの小型化・軽量化を図る必要がある。一方、ロボットの小型化・軽量化を図ると、バルブ操作時の反力をロボットにより支持することが困難となり、たとえバルブにアクセスできたとしても、バルブ開閉動作を適切に行えないおそれがある。
【0006】
本発明は,かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、例えばロボットに搭載されることで、作業者がアクセスすることが困難な場所まで搬送可能であり、適切にバルブを開閉できるバルブ開閉装置及びロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のバルブ開閉装置の一つは、
基部に対して変位する開閉バルブに連結された回動可能な操作部材を操作するバルブ開閉装置であって、
アクチュエータと、
前記アクチュエータにより回転駆動される駆動ギヤと、
前記駆動ギヤに噛合して回動し、前記操作部材に係合する係合部を備えた従動ギヤと、
前記基部を収容する開放部を備え、前記基部の周囲にて前記従動ギヤを回動可能に保持するケースと、を有し、
前記従動ギヤは、前記係合部を起点に前記操作部材を越えて前記従動ギヤの回転中心回りに90度を超え、360度未満の角度で延在する、ことにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えばロボットに搭載されることで、作業者がアクセスすることが困難な場所まで搬送可能であり、適切にバルブを開閉できるバルブ開閉装置及びロボットを提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態にかかるバルブ開閉装置を、ロボットに搭載した状態で示す斜視図である。
図2図2は、バルブ開閉装置の平面図である。
図3A図3Aは、バルブ開閉装置の斜視図である。
図3B図3Bは、異なる角度から見たバルブ開閉装置の斜視図である。
図4A図4Aは、ピン制御装置とピンとを拡大して示す斜視図である。
図4B図4Bは、当接部材の斜視図である。
図4C図4Cは、駆動ギヤ側から見た当接部材の斜視図である。
図5図5は、ピン制御装置を分解して示す図である。
図6図6は、本実施形態のバルブ開閉装置により開閉可能なバルブを備えたパイプの一例を示す側面図である。
図7図7は、本実施形態のバルブ開閉装置により開閉可能なバルブを備えたパイプの一例を示す平面図である。
図8図8は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図9図9は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図であるが、ここでは第1ピンの動作を時系列的に説明している。
図10図10は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図11図11は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図12図12は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図13図13は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図14図14は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図15図15は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図16図16は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図17図17は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図18図18は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図であるが、ここでは第1ピンの動作を時系列的に説明している。
図19図19は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図20図20は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図21図21は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
図22図22は、バルブ開閉装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる実施形態を、具体的に説明する。
図1は、本実施形態にかかるバルブ開閉装置10を、ロボットRBに搭載した状態で示す斜視図である。ロボットRBは、モータを搭載したシャーシSSと、シャーシSSに対して回転可能であって、モータにより回転駆動される駆動輪DW1と、シャーシSSに対して回転可能である従動輪DW2と、シャーシSSに取り付けられ複数の関節を備えたアームAMとを有する。アームAMは、アクチュエータによって屈伸・回転可能であり、その先端にバルブ開閉装置10が取り付けられている。したがって、アームAMはバルブ開閉装置10を任意の姿勢で、任意の位置へと変位させることができる。
【0011】
図2は、バルブ開閉装置10の平面図であるが、ケースの一部を省略して示している。図3Aは、バルブ開閉装置10の斜視図であるが、一部簡略化して図示している。図3Bは、異なる角度から見たバルブ開閉装置10の斜視図である。
【0012】
図において、金属板11上にケース12が取り付けられている。金属板11は、ロボットRBのアームAMに固定されるとともに、ケース12を支持する機能を有する。金属板11は、ケース12のC字形状の開口部に対応して、切欠11aを備える。ケース12は、軽量化を図るべく樹脂製であると好ましいが、金属製であってもい。
【0013】
ケース12は、金属板11に固定され凡そθ=270度にわたって延在する平面視でC字形状の底板12aと、底板12aの内周に接合された部分円筒状の内側壁12bと、底板12aの外周に接合された部分円筒状の外側壁12cと、内側壁12bから径方向外側に向かって張り出した内側上部壁12dと、外側壁12cから径方向内側に向かって張り出した外側上部壁12eと、外側壁12cの中央から径方向外側に配設されたギヤケース部12fとを有する。内側壁12bと外側壁12cとは、互いに離間している。また、ケース12における周方向両端は、図3A,3Bに示すように開放している。内側壁12bの内側が開放部を構成する。
【0014】
内側壁12bと外側壁12cとの間に、金属板製の扇状ギヤ(従動ギヤともいう)13が配置されている。扇状ギヤ13も、凡そθ=270度にわたって延在する平面視でC字形状を有する。したがって、扇状ギヤ13がケース12に収容された状態で、その周方向端部(以下、略して端ともいう)はケース12の周方向両端からはみ出さない。扇状ギヤ13の外周には、歯13aが形成されている。
【0015】
扇状ギヤ13の内周は、部分円形状であって、ケース12の内側壁12bにより摺動可能に支持されている。内側壁12bは、扇状ギヤ13の回動を案内する機能を有する。
【0016】
ギヤケース部12f内には、図2に点線で示すアクチュエータ14と、駆動ギヤ15が配置されている。アクチュエータ14の回転軸は駆動ギヤ15に連結され、アクチュエータ14の回転駆動に応じて駆動ギヤ15が回転する。駆動ギヤ15の歯15aは、扇状ギヤ13の歯13aに噛合している。アクチュエータ14は、外部の制御装置に接続され、入力された駆動信号により回転動作する。
【0017】
扇状ギヤ13の上面には、その一端近傍において、円筒状の第1ピン16及び第1ピン16の姿勢を制御するピン制御装置17が配置され、また第1ピン16から離間した位置に、円筒状の第2ピン19が立設された状態で配置されている。さらに、ケース12の一端近傍に、当接部材18が配置されている。第1ピン16及び第2ピン19が係合部を構成する。
【0018】
図4Aは、ピン制御装置17と第1ピン16とを拡大して示す斜視図である。図4B、4Cは、当接部材18の斜視図である。図5は、ピン制御装置17を分解して示す図である。
当接部材18は、図4B,4Cに示すように、ブロック状の本体18aと、本体18aの上端に連設され一部が庇状に突き出した矩形板部18bとを有する。本体18aがケース12に取り付けられた状態で、突き出した矩形板部18bの1つの角部18cが、扇状ギヤ13の回転中心に最も近づくように配置される(図3B参照)。
【0019】
図5において、ピン制御装置17は、第1ピン16の下端を保持する保持板17aと、保持板17aに連結される基板17bと、シャフト17cと、巻きバネ17dと、コイルバネ17eとを有する。ここで、シャフト17cの軸線方向をr方向とし、シャフト17c回りの方向をφ方向とする。r方向は、扇状ギヤ13の径方向とすると望ましい。
【0020】
保持板17aは、第1ピン16の下端に形成された雄ねじ16aに螺合する雌ねじ孔17fと、一対のアーム状に延在する第1連結部17gとを有する。第1連結部17gは、貫通孔17hを有する。
【0021】
基板17bは、一対のアーム状に延在する第2連結部17iと、扇状ギヤ13に固定するボルト等を挿通する穴17kとを有する。第2連結部17iは、第1連結部17gよりも間隔をあけて配置され、貫通孔17jを有する。
【0022】
ピン制御装置17の組付け時には、雌ねじ孔17fに雄ねじ16aを螺合させて、第1ピン16を保持板17aに取り付ける。その後、一対の第1連結部17g間に巻きバネ17dを配置し、また一方の第1連結部17gの外側にコイルバネ17eを配置して、さらに第1連結部17gを第2連結部17iで挟むようにして、保持板17aと基板17bを接近させる。かかる状態で、シャフト17cを、貫通孔17j、コイルバネ17e、貫通孔17h、巻きバネ17d、貫通孔17h、貫通孔17jという順序で挿通させ、不図示のクリップ等で抜け止めを図る。これにより保持板17aと基板17bとが、シャフト17cを介して回動可能に連結される。基板17bは、穴17kに挿通される不図示のボルト等にて扇状ギヤ13に固定される。
【0023】
図4に示すように組付けられた状態で、第1連結部17gと第2連結部17iとの間には、コイルバネ17eが完全に縮長しないクリアランスが設けられている。コイルバネ17eの付勢力によって、第1連結部17gすなわち保持板17aは、第2連結部17iすなわち基板17bに対して、r方向外方(扇状ギヤ13の径方向外方)に常に付勢されている。しかし、第1ピン16が逆方向に押圧力を受けたとき、第1ピン16とともに保持板17aは、コイルバネ17eの付勢力に抗してr方向内方に変位する。
【0024】
また、巻きバネ17dの一端は、保持板17aに当接し、その他端は基板17bに当接している。巻きバネ17dの付勢力によって、保持板17aは、基板17bに対してφ方向反時計回りに常に付勢されている。このため、自由状態で保持板17aは扇状ギヤ13の上面に設置した状態、即ち第1ピン16が扇状ギヤ13に対して直立した状態に維持される。しかし、第1ピン16が傾動方向に押圧力を受けたとき、第1ピン16とともに保持板17aは、巻きバネ17dの付勢力に抗してφ方向時計回りに変位する。
【0025】
(バルブ開閉装置の動作)
図6は、本実施形態のバルブ開閉装置により開閉可能なバルブを備えたパイプの一例を示す側面図である。図7は、本実施形態のバルブ開閉装置により開閉可能なバルブを備えたパイプの一例を示す平面図である。
【0026】
図において、ガスまたは液体が通過するパイプPPの内側に、揺動可能なバタフライバルブBV(開閉バルブともいう)が配設されている。バタフライバルブBVに取り付けられた回転軸RSの一端は、パイプPPの外壁を貫通して外部に露出しており、パイプPPの外壁に設置された軸受装置(基部ともいう)BRにより回転可能に保持されるとともに、レバー(操作部材ともいう)LVの一端に連結固定されている。
【0027】
レバーLVを回動させることで、回転軸RSを介してバタフライバルブBVが回転変位させられる。図6,7に示すように、レバーLVがパイプPPの軸線と平行になる位置では、バタフライバルブBVがパイプPPの軸線に沿った方向となり、パイプPP内で流体の通過を許容するバルブ開の状態となる。
【0028】
これに対し、レバーLVが図6に点線で示す位置に回動すると、バタフライバルブBVの外周がパイプPPの内周に当接し、パイプPP内で流体の通過を阻止するバルブ閉の状態となる。
【0029】
図6に示すように、軸受装置BRを設置するために、一般的にパイプPPとレバーLVとの間には、一定の隙間Cがある。本実施形態のバルブ開閉装置10は、この隙間C内に進入できるよう、薄形の形状となってる。
【0030】
図面を参照して、バルブ開閉装置10の動作について説明する。図8~22は、バルブ開閉装置10の動作を説明するための図であるが、理解しやすいようにロボットなどは省略して簡潔的に図示している。
【0031】
(バルブ閉動作)
以下、開いた状態のバルブを閉じる動作について説明する。まず、図1を参照して、バルブ開閉装置10を搭載したロボットRBは、駆動輪DW1を駆動して、遠隔操作または自律移動によりバルブが設置された場所まで自走する。バルブが設置された場所に到達した後、ロボットRBはアームAMを駆動して、図8に示すように、バルブ開閉装置10を、切欠11a側よりレバーLVとパイプPPとの隙間C(図6)に向かって接近させる。ただし、金属板11の裏面から、直立した第1ピン16の上端までの距離は、パイプPPとレバーLVとの隙間C(図6参照)より大きいため、このままではバルブ開閉装置10の接近が阻まれる。
【0032】
そこで、バルブ開閉装置10がレバーLVとパイプPPとの隙間Cに近づいた時、アクチュエータ14により駆動ギヤ15を時計回りに回転させる。これにより、図9に示すように、ケース12に対して扇状ギヤ13が反時計回りに回動し、その一端がケース12から露出する。このとき、ピン制御装置17は、第1ピン16が当接部材18に当接して傾動するように機能する。
【0033】
(第1ピンの傾動動作)
第1ピン16の傾動動作について、図10の模式図を参照して詳細に説明する。当接部材18の矩形板部18bは、パイプPPとレバーLVとの隙間C(図6参照)を通過可能な程度に、低い高さ位置に配置されている。図10において矢印で示すように、第1ピン16が右方から左方に向かう方向を、第1の方向という。
【0034】
図10(a)において、ケース12に対して扇状ギヤ13が相対変位して、第1ピン16が当接部材18に接近すると、当接部18aが第1ピン16の上部に当接する。これにより、ピン制御装置17の保持板17aに対してモーメントが付与されるため、図10(b)に示すように、巻きバネ17d(図4A参照)の付勢力に抗して、保持板17aとともに第1ピン16が、基板17b側に向かって傾動する。第1ピン16が傾動したことは、駆動ギヤ15の回転角度を監視することで検出できる。第1ピン16が所定量傾動した時点で、制御装置は駆動ギヤ15の回転を中止する。
【0035】
第1ピン16が傾動することで、金属板11の裏面から第1ピン16の上端までの距離は、パイプPPとレバーLVとの隙間C(図6参照)より小さくなる。そこで、ロボットRBはアームAMを動かして、バルブ開閉装置10を軸受装置BRに接近させる。これにより、図11に示すように、第1ピン16がパイプPPとレバーLVとの間を通過し、金属板11の切欠11a内に軸受装置BRを収容する位置にバルブ開閉装置10が到達する。金属板11の切欠11a内に軸受装置BRを収容する位置に到達した時点で、扇状ギヤ13の回転中心は、レバーLVの回動中心と略一致する。
【0036】
傾動した第1ピン16がパイプPPとレバーLVとの間を通過した後、制御装置は駆動ギヤ15を逆回転させ、扇状ギヤ13を時計回りに回動させる。これにより、当接部材18による拘束が解かれるため、図10(a)に示すように巻きバネ17dの付勢力に従って第1ピン16が直立姿勢に戻る。第1ピン16が直立姿勢に戻ったことは、駆動ギヤ15の回転角度を監視することで検出できる。
【0037】
さらに、制御装置は駆動ギヤ15の逆回転を続行し、扇状ギヤ13を時計回りに回動させる。すると、図12に示すように、直立した第1ピン16がレバーLVの下面に当接係合するが、第1ピン16は基板17bとは逆方向には傾動しないため、レバーLVの下面に当接係合したままとなる。かかる状態を維持したまま、扇状ギヤ13が時計回りにさらに回動すると、第1ピン16がレバーLVを押圧して時計回りに回動させる。
【0038】
このとき、第1ピン16にはレバーLVからの反力RFが伝達される。具体的には、パイプPPの軸線直交方向下方に向かって、第1ピン16にレバーLVから反力RFが付与される。本実施形態によれば、反力RFを受ける第1ピン16を起点に、扇状ギヤ13の回転中心回りにレバーLVを越え、90度を超える角度で扇状ギヤ13が延在している。このため、第1ピン16が受ける反力RFを、第1ピン16から90度の位置にある扇状ギヤ13の内周がケース12を介して軸受装置BRに当接することにより支持することができる。なお、第1ピン16の反力RFを受けるためには、扇状ギヤ13は、その回転中心回りに90度を超えている必要があり、またバルブ開閉装置10が軸受装置BRに接近するためには、扇状ギヤ13は360度未満(好ましくは300度以下)の角度で延在する必要がある。
さらにケース12及び扇状ギヤ13がC字状を有するため、その切欠部にレバーLVを合わせることで、レバーLVの正面側(図6で紙面垂直方向)からバルブ開閉装置10を挿入して、軸受装置BRの外側に配置することもできる。
【0039】
図13に示すように、第1ピン16に押されてレバーLVがパイプPPの軸線に直交する位置まで移動して、バルブ閉の状態となったとき、制御装置は駆動ギヤ15の回転を中止する。その間、第1ピン16は反力RFを受け続けるが、第1ピン16と共に扇状ギヤ13も回動するため、その反力RFを適切に支持することができる。これによりバルブ開閉装置10が軸受装置BRから脱落することが抑制される。レバーLVがパイプPPの軸線に直交する位置まで移動したことは、駆動ギヤ15の回転角度を監視することで検出できる。
【0040】
図13に示す状態では、扇状ギヤ13がケース12の他端側から露出し、一端側近傍まで延在しているので、バルブ開閉装置10を軸受装置BRから離脱させることができない。そこで、図13に示す状態から、アクチュエータ14により駆動ギヤ15を時計回りに回転させると、扇状ギヤ13が反時計回りに回動する。これにより図14に示すように、第1ピン16がレバーLVから離間するとともに、扇状ギヤ13の他端がケース12内へと引き込まれる。扇状ギヤ13の他端がケース12内へと引き込まれたことは、駆動ギヤ15の回転角度を監視することで検出できる。
【0041】
そこで、ロボットRBのアームAMが、バルブ開閉装置10を上昇させる。これにより、バルブ開閉装置10を軸受装置BRから離間させることができる。バルブ開閉装置10を軸受装置BRから上方に離間させた状態を、図15に示す。
【0042】
(バルブ開動作)
次に、閉じた状態のバルブを開く動作について説明する。図15に示すように、レバーLVがパイプPPの軸線に直交する位置にある場合、レバーLVと第1ピン16及び第2ピン19との干渉が生じないため、ロボットRBはアームAMを動かして、レバーLVに沿ってバルブ開閉装置10を軸受装置BRに接近させることができる。
【0043】
図16に示すように、バルブ開閉装置10が、金属板11の切欠11a内に軸受装置BRを収容する位置に到達した時点で、扇状ギヤ13の回転中心は、レバーLVの回動中心と略一致する。
【0044】
その後、制御装置は駆動ギヤ15を時計回りに回転させ、扇状ギヤ13を反時計回りに回動させる。すると、図17に示すように、第2ピン19がレバーLVの右側に当接係合し、さらに扇状ギヤ13が回動することで、第2ピン19に押されて、レバーLVは反時計回りに回動する。
【0045】
このとき、第2ピン19にはレバーLVからの反力RFが伝達される。本実施形態によれば、反力RFを受ける第2ピン19を起点に、扇状ギヤ13の回転中心回りにレバーLVを越え、90度を超える角度(ここでは180度)で扇状ギヤ13が延在している。このため、第2ピン19の反力RFを、扇状ギヤ13の内周が軸受装置BRに当接することで支持することができる。なお、扇状ギヤ13の内周により第2ピン19からの反力を受けるためには、扇状ギヤ13は、その回転中心回りにレバーLVを挟む側において第2ピン19から端部まで180度以上で延在することが好ましい。また、扇状ギヤ13は、バルブ開となるまで駆動ギヤ15と噛合し続けるために、レバーLVを挟まない側において第2ピン19から端部まで90度以上で延在していることが好ましい。以上を勘案すると、扇状ギヤ13の一端から他端までの角度は、270度以上であると好ましい。またバルブ開閉装置10が軸受装置BRに接近するためには、扇状ギヤ13は360度未満(好ましくは300度以下)の角度で延在する必要がある。
【0046】
また、バルブ開閉のためレバーLVを90度移動させることを考慮すると、第1ピン16と第2ピン19とは、90度以上の角度で周方向に離間していることが望ましい。
【0047】
この時、第1ピン16が当接部材18に当接するが、扇状ギヤ13が反時計回りに回動する場合は、図10を参照して説明したように、第1ピン16が傾動可能であり、傾動することにより第1ピン16が当接部18aの下方を通過できる。
【0048】
図18に示すように、第2ピン19に押されてレバーLVがパイプPPの軸線に平行になる位置まで移動して、バルブ開の状態となったとき、制御装置は駆動ギヤ15の回転を中止する。その間、第2ピン19は反力RFを受け続けるが、第2ピン19と共に扇状ギヤ13も回動するため、その反力RFを適切に支持することができる。これによりバルブ開閉装置10が軸受装置BRから脱落することが抑制される。レバーLVがパイプPPの軸線に平行になる位置まで移動したことは、駆動ギヤ15の回転角度を監視することで検出できる。
【0049】
図18に示す状態では、扇状ギヤ13がケース12の一端側から露出し、他端側近傍まで延在しているので、バルブ開閉装置10を離脱させることができない。そこで、図18に示す状態から、アクチュエータ14により駆動ギヤ15を反時計回りに回転させる。これにより、扇状ギヤ13が時計回りに回動するが、それに伴い第1ピン16が当接部材18の裏面側(駆動ギヤ15から遠い側)から当接する。上述したように、第1ピン16は、基板17bとは反対側には傾動できず、そのままでは当接部材18と干渉する。そこで、ピン制御装置17は、第1ピン16が当接部材18の矩形板部18bに当接してスライドするように機能する。
【0050】
(第1ピンのスライド動作)
第1ピン16のスライド動作について、図19の模式図を参照して詳細に説明する。なお、図19において、矩形板部18bの前縁が扇状ギヤ13の移動方向に平行になるように示されているが、実際には矩形板部18bの駆動ギヤ15側の角部18c(図4B)が最も扇状ギヤ13の回転中心に近くなるように配置されている。このため、矩形板部18bの前縁は、角部18cに近づくにつれて扇状ギヤ13の回転中心に接近するように傾斜している(図3B参照)。図19において、矢印で示すように第1ピン16が左方から右方に向かう方向を、第2の方向という。
【0051】
図19(a)において、ケース12に対して扇状ギヤ13が相対変位して、第1ピン16が当接部材18の裏側(駆動ギヤ15とは反対側)から接近し、図19(b)に示すように、当接部18bの前縁が第1ピン16の中心よりも当接部材18に近い位置で、第1ピン16の円筒外周面に当接する。これにより第1ピン16が、ピン制御装置17の保持板17aに対して当接部18bから離間する側に力を受けるため、コイルバネ17e(図4A参照)の付勢力に抗して、基板17bに対して保持板17aとともに第1ピン16が、扇状ギヤ13の回転中心に向かってスライドする。
【0052】
第1ピン16がスライドして、当接部材18との干渉が回避されれば、時計回りに回動する扇状ギヤ13とともに、第1ピン16は直立したまま摺動しつつ当接部材18を回り込んで通過できる。当接部材18を通過した後、図19(c)、図20に示すように、コイルバネ17eの付勢力に従い第1ピン16は逆方向にスライドして元の位置に戻る。第1ピン16が当接部材18を通過したことは、駆動ギヤ15の回転角度を監視することで検出できる。
【0053】
しかし、第1ピン16が直立したままでは、パイプPPの軸線と平行なレバーLVを通過できないため、バルブ開閉装置10を軸受装置BRから離脱させることができない。
【0054】
(第1ピンの傾動動作)
そこで、バルブ開閉装置10を軸受装置BRから離脱させるため、第1ピン16を傾動させる。まず、制御装置が駆動ギヤ15の駆動を中止した後、時計回りに回転させ、扇状ギヤ13を反時計回りに回動させると、図10(b)に示すように、当接部18aが第1ピン16の上部に当接する。これにより、ピン制御装置17の保持板17aに対してモーメントが付与されるため、巻きバネ17d(図4A参照)の付勢力に抗して、保持板17aとともに第1ピン16が、基板17b側に向かって傾動する。第1ピン16が傾動したことは、駆動ギヤ15の回転角度を監視することで検出できる。第1ピン16が所定量傾動した時点で、制御装置は駆動ギヤ15の回転を中止する。
【0055】
図21に示すように第1ピン16が傾動することで、レバーLVとパイプPPとの間を第1ピン16が通過できるようになる。そこで、ロボットRBはアームAMを動かして、バルブ開閉装置10を上方に変位させる。これにより、第1ピン16がパイプPPとレバーLVとの間を通過し、図22に示すように、バルブ開閉装置10を軸受装置BRから離間させることができる。その後、制御装置は駆動ギヤ15を逆回転させ、扇状ギヤ13を時計回りに回動させる。これにより、当接部材18による拘束が解かれるため、図10(a)に示すように巻きバネ17dの付勢力に従って第1ピン16が直立姿勢に戻る。
【0056】
本実施形態のバルブ開閉装置10は小型で軽量であるため、ロボットRBに搭載して搬送可能であり、また薄形であるため、パイプPPとレバーLVとの間の隙間Cに容易に進入可能であり、さらにレバーLVの操作時の反力を自身で受けることができる。このため、バルブ開閉装置10を搭載するロボットRBの小型化・軽量化を図れ、内蔵電池で動作する自律型ロボットである場合、その稼働時間の延長を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 バルブ開閉装置
11 金属板
12 ケース
13 扇状ギヤ(従動ギヤ)
14 アクチュエータ
15 駆動ギヤ
16 第1ピン(係合部)
17 ピン制御装置
18 当接部材
19 第2ピン(係合部)
RB ロボット
AM アーム
PP パイプ
BR 軸受装置(基部)
LV レバー(操作部材)
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22