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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134793
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】磁性シート
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220908BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20220908BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220908BHJP
   B32B 25/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H01F1/26
B32B27/18 H
B32B25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034194
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】大宮 忠志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正和
【テーマコード(参考)】
4F100
5E041
5E321
【Fターム(参考)】
4F100AB10E
4F100AB17E
4F100AB31A
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK27A
4F100AK41B
4F100AK54B
4F100AL05A
4F100AN02A
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA08A
4F100CA20A
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100DE02A
4F100GB46
4F100JD08
4F100JG06A
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00E
5E041AA11
5E041BB03
5E041BD12
5E041CA10
5E041CA13
5E041NN06
5E321AA23
5E321BB21
5E321CC16
5E321GG05
5E321GG09
(57)【要約】
【課題】ケーブルのノイズ対策に適した磁性シートを提供する。
【解決手段】磁性シート10は、ケーブル用のノイズ対策手段として用いられるものである。磁性シート10の幅は、5~15mmである。磁性シート10は、磁性層100と、保護層300とを備えている。磁性層100は、軟磁性体粉末110と、バインダ120とを備えている。軟磁性体粉末110は、扁平形状を有している。磁性層100における軟磁性体粉末110の割合は、磁性層100全体の体積に対して、35~40体積%である。バインダ120は、アクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物である。バインダ120は、軟磁性体粉末110を結合している。磁性層100におけるバインダ120の割合は、磁性層100全体の体積に対して、35~65体積%である。保護層300は、磁性層100を補強している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル用のノイズ対策手段として用いられる磁性シートであって、
前記磁性シートの幅は、5~15mmであり、
前記磁性シートは、磁性層と、保護層とを備えており、
前記磁性層は、軟磁性体粉末と、バインダとを備えており、
前記軟磁性体粉末は、扁平形状を有しており、
前記磁性層における前記軟磁性体粉末の割合は、前記磁性層全体の体積に対して、35~40体積%であり、
前記バインダは、アクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物であり、
前記バインダは、前記軟磁性体粉末を結合しており、
前記磁性層における前記バインダの割合は、前記磁性層全体の体積に対して、35~65体積%であり、
前記保護層は、前記磁性層を補強している
磁性シート。
【請求項2】
請求項1記載の磁性シートであって、
前記磁性層は、難燃剤を更に含んでおり、
前記磁性層における前記難燃剤の割合は、前記磁性層全体の体積に対して、20体積%以下である
磁性シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の磁性シートであって、
前記磁性層の厚さは、20~100μmである
磁性シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の磁性シートであって、
前記軟磁性体粉末の体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が55~90μmである
磁性シート。
【請求項5】
請求項4記載の磁性シートであって、
前記軟磁性体粉末の体積粒度分布における累積体積百分率が10体積%の粒子径D10が25~55μmであり、
前記軟磁性体粉末の体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90が100~150μmである
磁性シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の磁性シートであって、
前記磁性シートは、接着層を更に備えており、
前記接着層は、前記磁性層と前記保護層とを互いに接着している
磁性シート。
【請求項7】
請求項6記載の磁性シートであって、
前記接着層は、ポリエーテル系接着剤又はポリエステル系接着剤からなる
磁性シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の磁性シートであって、
前記保護層は、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなり、
前記保護層の厚さは、12μm以上である
磁性シート。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の磁性シートであって、
前記磁性シートは、金属層と、付加的接着層とを更に備えており、
前記金属層の材質は、Al又はCuであり、
前記金属層の厚さは、7μm以上であり、
前記付加的接着層は、前記金属層と前記保護層とを互いに接着している
磁性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル用の磁性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルのノイズ対策としては、フェライトビーズやフェライトコアをケーブルに取り付ける方法が広く知られている。しかしながら、フェライトコア等は嵩張るため、フェライトコア等を取り付けた多数のケーブルを纏める場合、取り付けられたフェライトコア等が大きなスペースを占めるという問題がある。また、上述のような場合、フェライトコア等が取り付けられた部分がケーブルの他の部分と比較して大型化するため、ケーブル全体のデザイン性が損なわれるという問題もある。
【0003】
上述の問題を回避するため、特許文献1のようなシート状の電磁干渉抑制体をケーブルのノイズ対策のために用いたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-44069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ケーブルのノイズ対策に適した磁性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の磁性シートとして、
ケーブル用のノイズ対策手段として用いられる磁性シートであって、
前記磁性シートの幅は、5~15mmであり、
前記磁性シートは、磁性層と、保護層とを備えており、
前記磁性層は、軟磁性体粉末と、バインダとを備えており、
前記軟磁性体粉末は、扁平形状を有しており、
前記磁性層における前記軟磁性体粉末の割合は、前記磁性層全体の体積に対して、35~40体積%であり、
前記バインダは、アクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物であり、
前記バインダは、前記軟磁性体粉末を結合しており、
前記磁性層における前記バインダの割合は、前記磁性層全体の体積に対して、35~65体積%であり、
前記保護層は、前記磁性層を補強している
磁性シートを提供する。
【0007】
また、本発明は、第2の磁性シートとして、第1の磁性シートであって、
前記磁性層は、難燃剤を更に含んでおり、
前記磁性層における前記難燃剤の割合は、前記磁性層全体の体積に対して、20体積%以下である
磁性シートを提供する。
【0008】
また、本発明は、第3の磁性シートとして、第1又は第2の磁性シートであって、
前記磁性層の厚さは、20~100μmである
磁性シートを提供する。
【0009】
また、本発明は、第4の磁性シートとして、第1から第3までのいずれかの磁性シートであって、
前記軟磁性体粉末の体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径D50が55~90μmである
磁性シートを提供する。
【0010】
また、本発明は、第5の磁性シートとして、第4の磁性シートであって、
前記軟磁性体粉末の体積粒度分布における累積体積百分率が10体積%の粒子径D10が25~55μmであり、
前記軟磁性体粉末の体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90が100~150μmである
磁性シートを提供する。
【0011】
また、本発明は、第6の磁性シートとして、第1から第5までのいずれかの磁性シートであって、
前記磁性シートは、接着層を更に備えており、
前記接着層は、前記磁性層と前記保護層とを互いに接着している
磁性シートを提供する。
【0012】
また、本発明は、第7の磁性シートとして、第6の磁性シートであって、
前記接着層は、ポリエーテル系接着剤又はポリエステル系接着剤からなる
磁性シートを提供する。
【0013】
また、本発明は、第8の磁性シートとして、第1から第7までのいずれかの磁性シートであって、
前記保護層は、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなり、
前記保護層の厚さは、12μm以上である
磁性シートを提供する。
【0014】
また、本発明は、第9の磁性シートとして、第1から第8までのいずれかの磁性シートであって、
前記磁性シートは、金属層と、付加的接着層とを更に備えており、
前記金属層の材質は、Al又はCuであり、
前記金属層の厚さは、7μm以上であり、
前記付加的接着層は、前記金属層と前記保護層とを互いに接着している
磁性シートを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の磁性シートは、以下のような構成を有している:前記磁性層における前記軟磁性体粉末の割合は、前記磁性層全体の体積に対して、35~40体積%であり;バインダは、アクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物である;磁性層におけるバインダの割合は、磁性層全体の体積に対して、35~65体積%である。これにより、本発明の磁性シートは、フェライトコアのように嵩張ることなくケーブルのノイズ対策に効果を発揮することができるようになっている。即ち、本発明の磁性シートは、ケーブルのノイズ対策に適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態による磁性シートを示す断面図である。
図2図1の磁性シートをケーブルに巻き付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(磁性シート)
図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態による磁性シート10は、ケーブル700用のノイズ対策手段として用いられるものである。磁性シート10の幅Wは、ケーブル700の直径Dに対して、2.5≦W/Dを満たしている。W/D<2.5の場合、磁性シート10をケーブル700に巻き付けた際に磁性シート10の幅Wに対する重なり部分の割合が大きくなるため、磁性シート10のケーブル700への巻き付けが困難となり好ましくない。また、磁性シート10を巻き付けたケーブル700を屈曲させた際のケーブル700の柔軟性を確保する場合には、W/D≦7.5を満たすことが好ましい。具体的には、磁性シート10の幅Wは、5~15mmである。磁性シート10の幅Wが5mm未満の場合、磁性シート10を直径Dが2mmのケーブル700に巻き付けた際に磁性シート10の幅Wに対する重なり部分の割合が大きくなるため、磁性シート10のケーブル700への巻き付けが困難となり好ましくない。また、磁性シート10の幅Wが15mm以上の場合、磁性シート10を巻き付けた直径Dが2mmのケーブル700を屈曲させた際のケーブル700の柔軟性が確保できないため、好ましくない。
【0018】
図1に示されるように、本発明の実施の形態による磁性シート10は、磁性層100と、保護層300とを備えている。
【0019】
(磁性層)
図1を参照して、本実施の形態の磁性層100の厚さT1は、20~100μmである。磁性層100の厚さT1が100μmを超える場合、磁性シート10を巻き付けた直径Dが2mmのケーブル700における磁性シート10の重なり部分にひび割れが発生するため好ましくない。
【0020】
図1に示されるように、磁性層100は、軟磁性体粉末110と、バインダ120とを備えている。
【0021】
(軟磁性体粉末)
図1に示されるように、本実施の形態の軟磁性体粉末110は、扁平形状を有している。なお、軟磁性体粉末110の形状は特に限定しないが、扁平形状であることが好ましく、磁性層100において、扁平形状の軟磁性体粉末110の大半が、磁性層100の主面と概ね平行になるように向きを揃えて配列していることが望ましい。
【0022】
軟磁性体粉末110の材質としては、磁性ステンレス(Fe-Cr-Al-Si系合金)、センダスト(登録商標)等のFe-Si-Al系合金、パーマロイ(Fe-Ni系合金)、ケイ素銅(Fe-Cu-Si系合金)、Fe-Si系合金、Fe-Si-B(-Cu-Nb)系合金、Fe-Ni-Cr-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al-Ni-Cr系合金、Mo-Ni-Feやアモルファス合金等などが好ましい。特に、軟磁性体粉末110の材質は、センダストがより好ましい。このような軟磁性体粉末110は一種単独で用いても、または複数種組み合わせて用いても良い。特に、透磁率特性の向上には、磁化が大きい金属合金が望ましい。
【0023】
本実施の形態の磁性シート10において、磁性層100における軟磁性体粉末110の割合は、磁性層100全体の体積に対して、35~40体積%である。
【0024】
本実施の形態の磁性シート10において、軟磁性体粉末110の体積粒度分布における累積体積百分率が10体積%の粒子径D10は、25~55μmである。また、本実施の形態の磁性シート10において、軟磁性体粉末110の体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径D50は、55~90μmである。更に、本実施の形態の磁性シート10において、軟磁性体粉末110の体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90は、100~150μmである。
【0025】
(バインダ)
図1を参照して、本実施の形態のバインダ120は、アクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物である。なお、バインダ120としてポリウレタンを用いた磁性シート10は、弾性が大きくコシがあるため、直径Dが2mm程度の小径のケーブル700に対して巻きにくい。また、直径Dが2mm程度のケーブル700にバインダ120としてポリウレタンを用いた磁性シート10を巻き付けた場合、同径のケーブル700にバインダ120としてアクリルゴムを用いた磁性シート10を巻き付けた場合と比較して、磁性シート10にひび割れが発生しやすい。これらのことから、バインダ120としてポリウレタンは好ましくない。
【0026】
図1に示されるように、バインダ120は、軟磁性体粉末110を結合している。ここで、磁性層100におけるバインダ120の割合は、磁性層100全体の体積に対して、35~65体積%である。即ち、磁性層100において、軟磁性体粉末110の割合は、磁性層100全体の体積に対して35~40体積%となっており、バインダ120の割合は磁性層100全体の体積に対して35~65体積%となっている。この軟磁性体粉末110及びバインダ120の磁性層100における割合は、バインダ120としてアクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物を用いたときに、軟磁性体粉末110の磁性層100中での密度が最も高くなる割合である。磁性シート10の磁気特性向上のためには、磁性層100における軟磁性体粉末110の割合をできるだけ高くしたほうが良いが、磁性層100における軟磁性体粉末110の割合が40体積%を越えると、軟磁性体粉末110がバインダ120によって結着されにくくなるため、作製された磁性シート10から軟磁性体粉末110の粒子が脱落しやすくなり、磁性シート10の使用中に磁性層100における軟磁性体粉末110の割合が低下するため、好ましくない。
【0027】
(難燃剤)
図1を参照して、本実施の形態の磁性層100は、難燃剤130を更に含んでいる。本実施の形態の難燃剤130は、メラミンシアヌレートである。なお、本発明はこれに限定されず、難燃性の材料としては、難燃性を有するものであればよいが、300℃以上の分解温度を有する窒素系化合物が好ましい。難燃剤130の材料に好適な窒素系化合物としては、例えば、テトラゾール系化合物、メラミン系化合物、或いは、これらの混合物を挙げることができる。難燃剤130に特に好ましい材料の例として、テトラゾール系化合物ではビステトラゾール・ジアンモニウム(C10)を挙げることができ、メラミン系化合物ではメラミンシアヌレートを挙げることができる。
【0028】
磁性層100における難燃剤130の割合は、磁性層100全体の体積に対して、20体積%以下である。
【0029】
(保護層)
図1に示されるように、本実施の形態の保護層300は、磁性層100を補強している。本実施の形態の保護層300は、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる。なお、本発明はこれに限定されず、可撓性を有するシート状の部材であればよく、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)等のPET以外の樹脂であってもよい。
【0030】
図1を参照して、保護層300の厚さT3は、12μm以上である。保護層300の厚さT3が12μm未満の場合、保護層300が伸びやすく、取り扱いが不便であるため好ましくない。また、保護層300の厚さT3は、小径のケーブル700への巻き付けやすさを考慮して、100μm以下が好ましい。
【0031】
図1に示されるように、本実施の形態の磁性シート10は、接着層200を更に備えている。なお、本発明はこれに限定されず、磁性シート10は、接着層200を有さなくてもよい。即ち、磁性シート10において、磁性層100と保護層300とが直接接着されていてもよい。より詳しくは、軟磁性体粉末110とバインダ120とを混合して作製したスラリーを、ドクターブレード法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法及びスクリーン印刷法のいずれかの方法により保護層300上に直接塗布して作製された、磁性層100と保護層300とが密着した磁性シート10であってもよい。但し、この場合、磁性層100が接着層200を介さずに保護層300上に直接形成されているため、磁性層100が保護層300から剥離する恐れがある。従って、磁性層100と保護層300との間に接着力を生じさせるため、磁性シート10は接着層200を有することが好ましい。
【0032】
(接着層)
図1に示されるように、本実施の形態の接着層200は、磁性層100と保護層300とを互いに接着している。接着層200は、ポリエーテル系接着剤又はポリエステル系接着剤からなる。また、バインダ120としてアクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物を用いた磁性層100との接着性を考慮して、接着層200はポリエーテル系接着剤が特に好ましい。なお、アクリル系接着剤は、バインダ120としてアクリルゴム、又はアクリルゴムとニトリルゴムとの混合物を用いた磁性層100との接着性に劣るため、接着層200の材料として好ましくない。
【0033】
接着層200が薄い磁性シート10は、小径のケーブル700により巻き付けやすくなるため、接着層200の厚みはできるだけ薄い方がよい。即ち、接着層200の厚みは、上限が5μmであり、例えば、1μm未満であることが好ましい。ただし、磁性層100の保護層300上への形成が良好に行われ、且つ、磁性層100と保護層300との密着性を高めるためには、接着層200はある程度の厚み有していることが好ましく、例えば、接着層200の厚みは、0.5μm以上であることが好ましい。
【0034】
図1に示されるように、本実施の形態の磁性シート10は、金属層500と、付加的接着層400とを更に備えている。
【0035】
(金属層)
図1を参照して、本実施の形態の金属層500の材質は、Al又はCuである。金属層500の厚さT5は、7μm以上である。金属層500の厚さT5が7μmより薄い場合、十分なシールド性能が得られないため、好ましくない。また、金属層500の厚さT5は、小径のケーブル700への巻き付けやすさを考慮して、30μm以下であることが好ましい。
【0036】
(付加的接着層)
図1に示されるように、本実施の形態の付加的接着層400は、金属層500と保護層300とを互いに接着している。付加的接着層400が薄い磁性シート10は、小径のケーブル700により巻き付けやすくなるため、付加的接着層400の厚みはできるだけ薄い方がよい。即ち、付加的接着層400の厚みは、上限が5μmであり、例えば、1μm未満であることが好ましい。
【0037】
(磁性シートの製造方法)
磁性シート10の製造方法の一例を以下に詳述する。
【0038】
まず、軟磁性体粉末110として、扁平形状のセンダスト(登録商標)粉末を用意し、バインダ120として、アクリルゴムを用意した。ここで、センダスト(登録商標)粉末において、体積粒度分布における累積体積百分率が10体積%の粒子径D10は、40μmであり、体積粒度分布における累積体積百分率が50体積%の粒子径D50は、75μmであり、体積粒度分布における累積体積百分率が90体積%の粒子径D90は、130μmであった。次に、センダスト(登録商標)粉末とアクリルゴムとを混合して粘性を有するスラリーを作製した。PET樹脂製のキャリアフィルム上に上記スラリーをドクターブレード法で塗布して乾燥し、乾燥後の塗膜をローラーで圧延してから塗膜をキャリアフィルムから剥離して、磁性薄膜を得た。なお、本発明はこれに限定されず、乾燥後の塗膜をローラーで圧延せずにそのままキャリアフィルムから剥離して磁性薄膜としてもよい。
【0039】
作製された磁性薄膜を、PETフィルムにポリエーテル系接着剤で接着する。これにより、磁性薄膜は磁性層100となり、PETフィルムは保護層300となり、ポリエーテル系接着剤は、接着層200となる。
【0040】
作製された磁性層100、接着層200及び保護層300からなる複合薄膜を、Alからなる金属薄膜にポリエーテル系接着剤で接着する。これにより、金属薄膜は金属層500となり、複合薄膜と金属層500とを介在するポリエーテル系接着剤は、付加的接着層400となり、磁性シート10が製造される。
【0041】
作製された磁性シート10において、幅Wは5mmであり、磁性層100の厚さT1は50μmであり、保護層300の厚さT3は12μmであり、金属層500の厚さT5は7μmであった。また、作製された磁性シート10において、磁性層100における軟磁性体粉末110の割合は、磁性層100全体の体積に対して38体積%であり、磁性層100におけるバインダ120の割合は、磁性層100全体の体積に対して45体積%であり、残分は空隙であった。
【0042】
なお、上述の磁性シート10は、ドクターブレード法により作製された磁性薄膜をキャリアフィルムとは異なる別のPETフィルムに接着して製造していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁性薄膜をPETフィルムに接着剤で接着する工程を経ずに、磁性薄膜がキャストされたキャリアフィルムを金属薄膜に接着剤で接着することにより、磁性シート10を製造してもよい。なお、このように製造された磁性シート10は、接着層200を有さない。即ち、このように製造された磁性シート10においては、磁性薄膜からなる磁性層100と、キャリアフィルムからなる保護層300とが直接接着されることとなる。
【0043】
また、上記の製造方法に代えて、以下のように磁性シート10を製造してもよい。まず初めに、軟磁性体粉末110とバインダ120とを混合して作製したスラリーを、剥離剤を有さないPETフィルム上にドクターブレード法等で塗布して乾燥し、乾燥後の塗膜をローラーで圧延する。これにより、保護層300であるPETフィルム上に、直接、磁性層100が形成された複合薄膜を得る。次に、得られた複合薄膜のPETフィルムに対して、ポリエーテル系接着剤が塗布された銅からなる金属薄膜を接着する。これにより、金属薄膜は金属層500となり、複合薄膜と金属層500とを介在するポリエーテル系接着剤は、付加的接着層400となり、接着層200を有さない磁性シート10が製造される。なお、この製造方法においては乾燥後の塗膜をローラーで圧延していたが、乾燥後の塗膜をローラーで圧延せずにそのまま複合薄膜としてもよい。
【0044】
以上、本発明について実施の形態を掲げて具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 磁性シート
100 磁性層
110 軟磁性体粉末
120 バインダ
130 難燃剤
200 接着層
300 保護層
400 付加的接着層
500 金属層
700 ケーブル
D 直径
T1 厚さ
T3 厚さ
T5 厚さ
W 幅
図1
図2