(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013480
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】UVC照射処理容器
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20220111BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20220111BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61L9/20
C02F1/32
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020125801
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】520274792
【氏名又は名称】大山 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 宣夫
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058EE23
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK25
4C058KK33
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH17
4C180HH19
4C180LL04
4D037AA00
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】外部より光学的に遮断された容器内でのUVC照射による流体の連続滅菌に於いて、単位当たりのUVCエネルギーが流体中の殺菌分解対象を照射する割合を大幅に高くする為に、UVC光源よりの照射を受ける流体の奥行きを大幅に大きくし、流入する流体中の全ての殺菌分解対象への均一な量でのUVCエネルギー照射を行う。
【解決手段】上記容器へ流入する流体全体を同一の容器内移動時間で容器から流出させる為に、容器内に、単数又は複数のUVC高透過材よりなる隔壁をUVC光源からの放射を最大限に受ける角度で、一方の端部には流体の通過する開口部を、流体の流出入口を含め、隣り合う間で互いに反対側の端部に位置するように設置することにより、係る容器へ流入する流体は、隔壁に沿う層を形成して流れ、隔壁の開口部より、さらなる流れの層へと次々と折れ曲がり、互いに重なり合う一繋がりの流れの層を容器の全域に亘り形成し、これらの層を透してUVCを照射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C領域紫外線(以下「UVC」と記す)ランプ又はUVC LEDランプ又はUVC LEDチップ等のUVC光源を、内側の基本形状が直方体で、外部より光学的に遮断された容器の1つの内壁(以下「光源取り付け面」と記す)のほぼ全面に亘り、UVC放射の中心方向を光源取り付け面に対向する内壁(以下「光源部対向内壁」と記す)に向け並べて取り付け、係る光源のUVC放射側の並び面(以下「光源並び面」と記す)と光源部対向内壁との間に、UVC高透過材よりなり、その面が直方形の複数又は単数の隔壁を光源取り付け面に平行に且つ、光源並び面と光源部対向内壁の夫々からと、隔壁相互間で所定の間隔を為し、各隔壁の1つの端面は内壁との間に所定の幅の開口部を、隣り合う隔壁間では互いに反対側の端面側に持ち、光源並び面に直近の隔壁との間に開口部を形成する内壁に対向する内壁に於ける係る隔壁と光源取り付け面との間、及び光源部対向内壁に直近の隔壁との間に開口部を持つ内壁に対向する内壁に於ける係る隔壁と光源部対向内壁との間、或いはこれに替り、光源部対向内壁に直近の隔壁の開口部側と反対側の光源部対向内壁の端部に、容器の外側に通じる開口部を持ち、これらのいずれか一方を流体の容器からの流出口、他方を流体の容器への流入口とする容器内を連続的に通過する流体に対するUVC照射を行う上記機能構造を特徴とするUVC照射処理容器。
【請求項2】
請求項1に於ける、隔壁との間に開口部を形成しない一対の内壁に於いて、光源並び面とその直近の隔壁との間、隔壁相互の間、光源部対向内壁とその直近の隔壁との間の各内壁部にUVC高反射加工を施した面を持つアルミニュームシート(以下「反射シート」と記す)の反射面を係る容器の内側へ向かって、所定の高さ立ち上げて取り付けることにより、各内壁部の係る反射シート相互の間に形成される溝に隔壁を差し込む仕組みを持つUVC照射処理容器。
【請求項3】
請求項2に述べる各内壁部の反射シートに当該反射シートの反射面の反対側に90度折り曲げた所定の幅の端部1と係る折り曲げ角の稜線より所定の幅を採った線で、さらに内側に90度、即ち容器内面に向く反射面からの折り曲げ角度を含めて180度折り曲げた端部2を設け、これを当該反射シートの請求項2に述べる内壁部への取り付け部とし、直接或いはスペーサーを介して取り付けることにより、請求項2に述べる反射シートの立ち上がりを得る方法。
【請求項4】
請求項1及び請求項2に於いて隔壁と開口部を形成する一対の内壁と光源並び面、隔壁、光源部対向内壁の夫々とにより形成される入隅に挟まれる、又は入隅を一端に持つ上記内壁の各部毎に請求項2に述べる反射シートを取り付ける場合、夫々の反射シートの入隅側の端部に、係る入隅線に沿って、係る反射シートの反射面側となる容器の内側に反り返る曲面部を設けて反射シートを取り付ける方法。
【請求項5】
外部より光学的に遮断された円筒形状の内壁を持つ容器の円筒の中心部に円柱形状のUVCランプを持ち、係るランプと容器の内周壁との間に単数又は複数のUVC高透過材よりなる円筒形状の隔壁を持ち、係る隔壁の一端は容器の端部内壁との間に開口部を持ち、他端は容器の反対側の端部内壁と密着し、複数の係る隔壁を持つ場合は、容器の端部内壁との開口部の位置が隔壁間で交互に逆になる容器内を連続的に通過する流体に対するUVC照射を行う上記の機能構造を特徴とするUVC照射処理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気又は水へのC領域紫外線(以下「UVC」と記す)照射によるこれらの流体の連続滅菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内の空気や配管輸送中の水を外部環境から光学的に遮断された円筒形状の容器の中心部に1本の円柱状のUVCランプを据え、これと円筒形状の容器の内壁との間に流体を連続的に通過させ、その通過時間に亘る流体へのUVC照射による流体滅菌装置が2020年4月現在、市販されている。但し、係る装置はそのエネルギー効率の低さより、極めて小さな処理容量の装置に限られている。
【0003】
一方、我が国の研究機関、大学、企業等ではUVC LEDの高効率化と長寿命化の研究開発を進めており、その成功例も公表されている。UVC LEDはその形状と放射方向より、上記の円筒形状の容器に於いてUVC照射を行う滅菌装置には不向きであり、その放射方向の特性を活かすUVC照射を行う容器として、その内側の基本形状が直方体である容器を用いる滅菌方法が考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国立研究開発法人 理化学研究所 平山量子光素子研究室 主任研究員 平山秀樹著 「殺菌用・深紫外線LEDの開発」
【非特許文献2】株式会社ワイズカンパニー 「紫外線照射みず殺菌装置(配管型)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体の滅菌装置に於いて、滅菌対象流体を上記[0002]に述べる小径の円筒形状の容器内を連続的に通過させながらUVC照射を行う方法では、流体中の細菌その他の微生物やウイルス(以下「殺菌分解対象」と記す)の流体中に占める体積の割合が極めて微小であり、水及び空気のUVC吸収率は係る容器の構造材に比べて極めて低いことより、係る流体に照射されるUVCエネルギーの殆どはこのUVC照射処理を行う円筒形状の容器(以下「円筒型処理容器」又は「処理容器」と記す)内で反射吸収を繰り返し、処理容器の構造材に吸収される。
【0006】
このような目的外の物質にUVCエネルギーが吸収される割合を小さくする為に、処理容器の径を拡げ、その内壁の面積の増える率に比べ容積の増える率を大きくする。このことは、処理容器内に存在する流体量も、その流体と共に処理容器内に存在する殺菌分解対象の量も同率で増える一方、照射されるUVCエネルギーが処理容器の内壁に吸収される割合が減ることになり、これらの殺菌分解対象を照射するエネルギー量が増えることになる。
【0007】
但し、[0006]に述べる如く,円筒型処理容器の内径を大きくし、処理容器内の流体量を多くした場合、処理容器の内径と流体流出口の内径との差が拡がるに従い、係る流出口と流入口とを結ぶ「流れの通」と呼ばれる、処理容器内の大部分の流体より流速の大きい部分的流れが生じ易くなる。
【0008】
この「流れの通」が生じた場合は、流体の処理容器内を通過する速度をUVCの照射強度に合わせることは不可能であることより、流体の処理容器内の流れに乱流を起こし、係る「流れの通」の発生を防ぐ事はできるが、処理容器の内径と流出口の内径との差が大きくなるに従い、処理容器内全体に亘り十分な乱流を起こすことは難しくなり、他の方法による対処が必要になる。
【0009】
一方、上記[0003]で言及した流体滅菌装置の処理容器は、外部環境から光学的に遮断され、その内側の基本形状が直方体であるUVC照射処理容器(以下「直方体型処理容器」又は「処理容器」と記す)であり、その内面の1つの面の全面に並べ取り付けた多数のUVC LEDチップ又はUVC LEDランプ又は従来の円柱型のUVCランプ等の光源(以下「UVC光源」又は「光源」と記す)による、係る処理容器内を連続的に通過する流体へのUVC照射により、係る流体の滅菌を行う。
【0010】
直方体型処理容器に於いて、上記[0005]と同様の問題を軽減し、[0006]と同様の効果を得る方法として、上記[0009]に於ける光源のUVC放射側の並び面(以下「光源並び面」と記す)とこれに対向する内壁(以下「光源部対向内壁」と記す)との間隔を大幅に拡げることにより処理容器内の流体量を大幅に増やし、[0006]に述べると同様の効果を得ることに於いても[0007]に述べる難点が生じる。
【0011】
本発明は係る直方体型処理容器及び円筒型処理容器に於ける[0007]並びに[0010]に述べる難点を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記[0009]に述べる直方体型処理容器に於ける本課題の解決手段は、光源並び面と光源部対向内壁との間を大幅に拡げ、当該処理容器の一端から流入する流体が光源の並び面に平行に、且つその全面とほぼ同じ広さに広がる流れの層を形成し、さらなる同様の流れの層へと次々に折れ曲がり、互いに重なり合う一繋がりの流れの層を処理容器の全域に亘り形成して流れながら光源並び面からのUVC照射を係る折り重なる複数の流れの層を透して受ける機能構造を持つことである。
【0013】
円筒型処理容器に於ける課題解決手段としては、係る処理容器の一端から流入する流体が、処理容器の中心部に据えられた円柱形状のUVCランプを囲む環状体形状の流れの層を為してさらなる同様の流れの層へと次々に折れ曲がり、互いに重なり合う一繋がりの流れの層を処理容器の全域に亘り形成して流れながら、上記ランプからのUVC照射を係る折り重なる複数の流れの層を透して受ける機能構造を持つことである。
【0014】
直方体型処理容器に於いて、上記[0012]に述べる流体の流れを得る為には、光源並び面6と光源部対向内壁との間に板状のUVC高透過材よりなる直方形の面を持つ隔壁7a、或いはシート又はフィルム状のUVC高透過材を剛性の高い直方形の枠に取り付けた隔壁7aを、光源並び面6に平行に、且つ、光源並び面6と光源部対向内壁の夫々との間に所定の間隔を持つ寸法を処理容器の筐体(以下「筐体1a」と記す)に与え、隔壁7aの3つの端面は筐体1aの内壁又は処理容器の内壁と密着させ、残る端面は内壁との間に所定の間隔を空け、流体の通る開口部を形成し、係る隔壁7aが複数となる場合は、光源並び面6とその直近の隔壁7aとの間、隔壁7a相互の間、光源部対向内壁とその直近の隔壁7aとの間の夫々で、互いに平行で所定の間隔を持つ寸法を処理容器の筐体1aに与え、隣り合う隔壁7a間では、上記の開口部が互いに反対側の端部と内壁との間に形成されるように、これらを上記の所定の間隔で当該処理容器の筐体1aに取り付ける。
【0015】
さらに、光源並び面6に直近の隔壁7aの開口部側の内壁に対向する内壁面上の、UVC光源を全面に並べ取り付けた内壁面(以下「光源取り付け面5」と記す)又は光源並び面6とその直近の隔壁7aの面に挟まれる部分に、当該部分と同形同寸の、或いは、概ね同面積の、処理容器の外側に通じる開口部を設ける。
【0016】
一方、光源部対向内壁に直近の隔壁7aの開口部の反対側の内壁上の光源部対向内壁とその直近の隔壁7aに挟まれた部分に、当該部分と同形同寸の、或いは、概ね同面積の、処理容器の外側に通じる開口部を設ける。或いは、これに替り、光源部対向内壁上の係る隔壁7aの開口部側と反対側の端部に、同様の、当該容器の外側に通じる開口部を設ける。
【0017】
上記[0015]及び[0016]に述べる処理容器の外側に通じる夫々の開口部のいずれか一方を流体の処理容器からの流出口2a、他方を流体の処理容器への流入口4aとし、この流入口4aに処理容器の外側に回り込むダクトを繋ぎ、このダクトの先に流体の取り入れ口3aを設ける。
【0018】
図1はUVC照射による滅菌対象流体(以下「対象流体」と記す)が空気である場合の直方体型処理容器の概念図であり、筐体1aの1つの内壁に光源取り付け面5及び光源並び面6、2つの隔壁7a、空気の流出口2a、空気の流入口4a、空気の取り入れ口3aを持つ。
図2はこれらの隔壁7aに沿って空気が折り重なる層を作って流れる大まかな様子を示す。
【0019】
直方体型処理容器の対象流体が水である場合は、流体流出口を処理容器内の最高水位以上の高さに設置し、取り入れ口の位置を係る流出口の位置より高くすることにより、処理容器内での流体の移動に要する動力を不要にすることが出来る。
【0020】
円筒型処理容器に於いて、上記[0013]に述べる流体の流れを得る為には、筐体の主たる円筒部の内壁の中心軸上に円柱形状のUVCランプを持つ円筒型処理容器に於いては、
図3及び
図4の如く、係るUVCランプと処理容器の主たる円筒部の内壁との間に、UVC高透過材よりなる円筒形状の単数の隔壁又は複数の異なる所定の径を持つ隔壁を処理容器の主たる円筒部の中心軸を中心とする同心円上に持ち、隔壁の一方の端面は処理容器の内側の一方の端面に密着し、当該隔壁の他方の端面は処理容器の内側の他方の端面との間に流体が通る所定の間隔の開口部を持ち、複数の隔壁を持つ場合は、隣り合う隔壁間では、係る開口部を互いに反対側の端面と処理容器の内側の端面との間に持つ。
【0021】
図3は対象流体が空気である場合の円筒型処理容器の略図あり、円筒形状の筐体1b、筐体1bの円の中心軸上に1本のUVCランプ10b、係る中心軸の同心円上に1つの円筒状の隔壁7b、筐体1bの一方の端面の中心部に空気流出口2b、筐体1bの外周壁上の全周に亘る空気取り入れ口3bを持つ。
【0022】
図4は対象流体が水である場合の円筒型処理容器の略図であり、円筒形状の筐体1cの円の中心軸上に1本のUVCランプ10c、係る中心軸の互いに異なる同心円上に2つの円筒形状の隔壁7c、筐体1cの一方の端面の中心部に水流出口2c、他方の端面の中心部に水取り入れ口3cを持つ。
【0023】
これらの直方体型処理容器及び円筒型処理容器に於いては、流体の流出口迄に受ける流体の単位体積当たりのUVCエネルギー量は、流体が各流体層で単位体積当たり受けたUVC エネルギー量の積算量となる。
【0024】
一方、各流体層でのUVC照射強度は、光源の並び面、或いは光源から放射されたUVCが各流体層に至る迄に、処理容器の内側の及び流体の流出入口から外部に至る構造物に吸収され減衰するが、係る減衰の大きな割合を、各流体層に於いて、その厚さを増すことにより流速を遅くし、当該層内で流体がUVC照射を受ける時間を長くし、流体の単位体積当たり受けるUVCエネルギー量を増やすことにより、補填する。但し、隣り合う流体層間の厚さの差は、上記[0007]に述べる流れの通や滞留部が発生しない範囲に留める。
【0025】
係る処理容器の製作に於いては、筐体の内壁のUVCの反射率が十分でない場合は、90パーセント前後のUVC反射加工を施した面を持つアルミニュームシート(以後「反射シート」と呼ぶ)をその反射面を筐体の内側に向けて筐体内壁に取り付ける。
【0026】
係る反射シートの取り付けに於いては、隔壁を取り付ける部品、又は、薄手の隔壁材を用いる場合の隔壁材を保持する枠によるUVC照射の妨げを最小限にすることを兼ねる方法を採る。
【0027】
その方法として、本発明に於いては、隔壁との間に開口部を形成しない一対の筐体内壁に於いて、光源並び面とその直近の隔壁との間、隔壁相互の間、光源部対向内壁とその直近の隔壁との間の係る内壁の各部の反射シートの反射面を、保持枠を有しない隔壁を用いる場合は5mmから15mm程、保持枠を有する隔壁を用いる場合は保持枠を覆う位置迄、筐体の内側に出し、又は立ち上げて取り付けることにより、これらの隣り合う反射シート相互の間に、隔壁の側端部を差し込む溝を形成する。但し、反射シートを筐体の内側へ立ち上げる寸法は、上記の各間で等しくする。
【0028】
このように反射シートを筐体の内側に立ち上げて取り付ける一つの方法としては、上記[0025]に述べる内壁の各部の反射シートに、
図5の(a)の如く、当該反射シートの反射面の反対側に90度折り曲げた所定の幅の端部1と係る折り曲げ角の稜線より所定の幅を採った線で、さらに内側に90度、即ち、筐体の内側に向く反射面からの折り曲げ角度を含めて180度折り曲げた端部2を設け、この端部2を上記内壁の各部へのねじ止め部に用いる。この端部2の幅は、このように形成される反射シートの各折り曲げ構造体(以下「反射体」と記す)を上記内壁の各部に厚さ1から2mm程のスペーサーを介してねじ止めする際に、端部2への折り曲げ角とスペーサーとの間に5mm以上のスペースが残る寸法とする。又、反射体の係る折り曲げを持たない端部にも、
図5の(b)の如く、反射体の反射面の反対側に90度折り曲げられた小幅な面を持つことは、反射体の剛性を向上させる効果を持つ。
【0029】
上記[0028]に述べる如く成形され、係る内壁に取り付けられた反射体は、隣り合う反射体との間に各隔壁の一対の端部と、
図6の(a)に示す直交横断面がT字型の一対の位置止め具のいずれをも差し込める溝を形成し、係る位置止め具を隔壁の先に又は後に
図6の(b)に示すように溝に差し込むことにより、隔壁の位置を固定することが出来る。
【0030】
直方体型及び円筒型の双方の処理容器とも、隔壁の開口部側と反対側の端面に接する処理容器の内壁と隔壁の2つの面に90度の角度で挟まれることにより形成され、流体の流れに直交する方向に延びるこれらの入隅は
図1、
図3、
図4に於いて、夫々符号8a、8b、8cにより示され、「直交入隅」と記される。又、直方体型処理容器及び対象流体を空気とする円筒型処理容器に於いては、
図1及び
図3に於いて符号9a及び9cにより示される流体の流入口の構成の一部となるこれらの筐体の端部及び隔壁の開口部側の端部は流体の流れに直交する方向に延びる突条であり、「出隅」と呼ばれている。対象流体を水とする円筒型処理容器に於いては、隔壁の開口部側の端部のみが出隅となり、
図4に於いて符号9cにより示される。
【0031】
これらの直交入隅及び直交出隅はこれらの近傍の流体の流れの小さな部分での滞留又は遅れを生じさせ得る。
【0032】
上記[0030]の直方体型処理容器に形成される直交入隅の中で、隔壁との間に開口部を形成する処理容器の内壁又は係る内壁に対向する内壁と光源並び面、隔壁、光源部対向内壁の夫々との間に形成される直交入隅は光源並び面とその直近の直交入隅との間、直交入隅相互の間、或いは一端に直交入隅持つ内壁区間の区間毎に[0025]に述べる反射シートを取り付ける場合、係る直交入隅の入隅線に沿って、反射シートの反射面側となる筐体の内側に反り返る曲面又は平面部を各区間の反射シートの直交入隅側の端部に設け、係る曲面部或いは平面部で直交入隅を覆うように反射シートを取り付ける。
【0033】
係る直交入隅への対処としては、上記[0032]に述べる対処の他、係る直交入隅による流体の急激な方向転換を緩和する種々の断面形状を持つ長軸体により直方体型処理容器の直交入隅を、或いは
図7の(a)に示す環状体と同様の環状体により
図7の(b)に示す如く円筒型処理容器の直交入隅を、夫々に覆うことも選択肢となる。
【0034】
直交出隅については、係る出隅での流体の急激な方向転換を緩めると共に、係る直交出隅の近傍で渦上の或いは隔壁に向かって回り込む小さな流れを発生させる為に係る直交出隅に当該出隅の伸び方向への直交断面形状が円又はこれに近い形状の長軸体又は環状体に、係る直交出隅の先端を差し込むように取り付けることも選択肢のひとつとなる。
【0035】
係る直交入隅、直交出隅での流れの滞留又は遅れの防止又は軽減には、上記[0032]、[0033]、[0034]に述べる対処方法の他、種々の断面形状の構造体を係る直交入隅及び直交出隅の流体の流れに於ける手前に設置することにより、或いは隔壁と処理容器の内壁との間に形成される開口部に替り、その開口部の面積も含む大きさの隔壁の係る開口部を含む範囲適切な範囲に亘り、多数の穴を設けることにより、乱流,枝流を引き起こすことにより、出隅近傍の流体或いは入隅の流体を夫々これらの乱流又は枝流に巻き込むことが考えられる。
【0036】
直交入隅の構成に隔壁が入る場合、及又は直交出隅が隔壁による場合は、上記[0033]、[0034]、[0035]に述べる構造材には出来る限りUVC透過率の高い材料か、或いは、出来る限りUVC反射率の高い材料を用いる。
【発明の効果】
【0037】
上記[0012]及び[0013]で求める機能構造は[0014]から[0036]に亘って述べるUVC照射処理容器の基本構造と、これに基づく処理容器の製作方法、処理容器の機能補強方法により実現する。それは、高いエネルギー利用効率で流体を連続的にUVC照射処理する機能構造を提供するものであり、これによりUVC照射を利用する種々の滅菌装置、滅菌システムの開発に大きく道を開くものと考える。
【0038】
それは、UVC照射強度の光源からの距離による差を係る各層に分割し、各層内でのUVC照射強度の差を小さくし、流体内の細菌その他の微生物及びウイルスが受けるUVC照射強度の均一化を進める。その受けるエネルギー量は各層での流体の流速によって決まる照射時間と照射強度の積であることより、所定の処理速度と各層の厚さ或いは体積により、各層の流体の流速が決まり、これにより、所定の処理量の流体が係る層内を通過する時間、そして、これと係る層内での照射強度との積が、係る層に於いて、所定の処理量の流体が受ける照射エネルギー量になる。所定の処理量の流体が受ける紫外線エネルギーの総量は、本発明の機能構造により、各層に於いて同量の流体が受ける紫外線エネルギー量の総和となる。
【0039】
これは、上記処理容器に於ける各層の厚さの設定により、光源より所定量の流体が所定の時間内に受ける紫外線エネルギー量を、同じ光源より従来の単層の処理容器により、同量の流体が同時間内に受けるエネルギー量に比べ大幅に増やすことが出来ることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図5】(a)は反射体の俯瞰図 (b)は追加折り曲げ付き反射体俯瞰図
【
図6】(a)はT字型留め具俯瞰図 (b)はT字型留め具差し込み図
【
図7】(a)は環状体入り隅カバー兼隔壁留め俯瞰図 (b)は環状体取り付け俯瞰図
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の円筒型処理容器及び直方体型処理容器の対象流体が空気である場合は、前者の流体流出口には軸流ファン、後者の流体流出口にはクロスファンを取り付けることにより、夫々の容器はUVC照射空気滅菌装置となる。
【0042】
又、直方体型処理容器はその空気流出口を空気調和記の空気取り入れ口にダクトで繋ぐことにより滅菌空調機とすることも出来る。
【0043】
これらの容器の対象流体が水である場合は、円筒形、直方形型のいずれの容器も、水処理システムに於いて、配管輸送されて来る水の滅菌部として利用される。
【0044】
この場合、円筒型処理容器の流体の流出入口は、夫々に配管に繋がれ、直方体処理容器の流体の流出入口は上記[0020]に述べる位置に設定され、係る流入口に水が注ぎ込まれる形態となる。
【実施例0045】
本実施例は、対象流体を空気とするもので、内寸850mmx950mmx440mmのステンレススチール製の容器に於いて、850mmx950mmの寸法を持つ内壁を光源取り付け面とし、850mmx440mmの内壁を容器の上面とし、当該内壁の光源取り付け面側の端部に上記[0015]及び[0016]に述べる空気の流出口を設け、同じ内壁の光源部対向内壁側の端部に、同じく[0015]及び[0016]に述べる空気の流入口を設ける。
【0046】
UVC光源には、フィリップス社のUVCランプ、G30 T8 Bulb 30Watt UVC Tube UV Output:253.7nm、10本を用いる。係るランプと同じ長さのUVC光源用の反射体で、その長軸方向に直交する横断面が楕円の一方の焦点を含む局面であり、係る反射体の開口部の外側の幅が80mmであり、反射面の深さ方向の外寸が55mmである射体10本を横並びに繋げ、850mmx950mmの直方形部の外形寸法と55mmの外形の厚さを持つ反射体に一体成形する。係る反射体を光源取り付け面に、その各辺より25mmの幅を残して取り付け、これに10本の上記UVCランプを取り付ける。
【0047】
AGCの製品で、ETFEを材料とする商品名「エフクリーン」の厚さ50μmのフィルムを縁幅25mm、外形寸法950mm x 850mmのステンレススチール製の枠に取り付けたものを隔壁として、これを3枚用いる。その第一の隔壁は光源の並び面より80mm、第2の隔壁は第1の隔壁より90mm、第3の隔壁は第2の隔壁より100mm、光源部対向内壁からは115mmの位置に取り付けられる。
【0048】
容器内壁への反射シートの取り付けは、上記[0026]、[0027]、[0028]に於いて、反射面の立ち上げ高さを25mmにした反射体を、空気流出口を持つ内壁に於いては光源の並び面に直近の第1の隔壁と第3の隔壁との間を埋め、当該内壁に対向する内壁に於いては、係る内壁とランプの反射体の端部との間の25mmの隙間に差し込み、光源取り付け面と第2の隔壁の端部との間を埋め、同様の反射体の第2の隔壁の端部と光源部対向内壁の間への取り付けルことにより、第2の隔壁の端部が差し込まれる溝を形成する。
【0049】
隔壁との間に開口部を持たない一対の内壁に取り付ける反射体は、[0029]に述べるT字型の隔壁位置止め具を差し込む形状で25mmの立ち上げの高さにし、これを係る内壁とランプの反射体の側端の25mmの隙間に差し込み、第1の隔壁の枠の位置との間を埋める寸法で同位置に取り付け、第1隔壁の枠と第2の隔壁の枠、第2の隔壁の枠と第3の隔壁の枠、第3の隔壁の枠と光源部対向内壁との各間を埋めて、且つこれらの隔壁の枠及び上記T字型留め具を差し込む溝を形成し、T字型の隔壁位置止め具に続いて隔壁を差し込み、又は隔壁に続いて同留め具を差し込んで隔壁を取り付ける。
【0050】
空気の流入口は容器の外壁に沿って光源部対向内壁の外側に回り込む当該流入口と同じ直行断面形状と寸法を持つダクトに繋ぎ、係る外壁沿って30cm下がった位置で、係るダクトを容器の外側に向け45度に切り、これにフィルターを取り付け、空気取り入れ口とし、空気の流出口にはクロスファンを取り付け、連続的に容器内の空気を吸い上げ、外に噴き出す機能を付け、空気滅菌装置とする。
実施例の処理容器の筐体は、内径120mm、高さ890mmのステンレススチール製の円筒形の容器の内側の周面と底の平面部に[0025]に述べる反射シートを張り付け、当該容器の上部に、内径150mm、高さ100mmの円筒部に続き、内径80mm、高さ50mmの円筒部を持つ蓋を、円筒の中心軸を同じにして、当該容器の口から14mm浮かせて取り付けた構造を持つ。その内部構造は、同中心軸上に、上記[0045]に於いて用いたUVCランプと同じ仕様のランプを一灯、当該ランプと容器内壁の間の同心円上に内径80mm、外径86mm、高さ890mmの石英パイプの隔壁を容器底面と14mmの間隔を開けて持つ。
UVC ランプの取り付けは、容器の底の中心部に差し込み固定したランプ用のソケットカバーと蓋の内径80mmの円筒部の中心部にソケットカバーより係る円筒部の内壁に120度毎に伸びる板状の腕を係る円筒部の外側よりねじ止めし、リード線は係る腕と共に外側に出す。
内径80mmの円筒部の上の端部に軸流ファンを取り付け、容器内の空気を吸いだす機能を持つことにより、容器と蓋との間の開口部は空気の取り入れ口となり、この全体を縦に支える架台に取り付け、UVC照射空気滅菌装置する。