(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134807
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】熱媒体貯留容器及び水素吸蔵放出システム
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20220908BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20220908BHJP
H01M 8/065 20160101ALI20220908BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220908BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20220908BHJP
【FI】
F17C11/00 C
C01B3/00 A
H01M8/065
H01M8/04 J
H01M8/04007
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034221
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 太郎
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AA09
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EB02
3E172FA23
3E172FA27
4G140AA11
4G140AA16
5H127AB04
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、設備のコンパクト化を図ると共に、加熱用熱媒体及び冷却用熱媒体の温度を適切に制御することが可能な熱媒体貯留容器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る熱媒体貯留容器は、水素吸蔵合金を加熱する加熱用熱媒体が貯留される第1貯留室と、水素吸蔵合金を冷却する冷却用熱媒体が貯留される第2貯留室と、第1貯留室と第2貯留室との間に配置され、第1貯留室から水素吸蔵合金に供給された加熱用熱媒体及び第2貯留室から水素吸蔵合金に供給された冷却用熱媒体が還流する還流室とを備え、第1貯留室と還流室、及び第2貯留室と還流室とが、それぞれ隔壁によって仕切られており、還流室に、還流された加熱用熱媒体を第1貯留室に誘導し、かつ還流された冷却用熱媒体を第2貯留室に誘導する1又は複数の誘導壁が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を加熱及び冷却する熱媒体が貯留される熱媒体貯留容器であって、
上記水素吸蔵合金を加熱する加熱用熱媒体が貯留される第1貯留室と、
上記水素吸蔵合金を冷却する冷却用熱媒体が貯留される第2貯留室と、
上記第1貯留室と上記第2貯留室との間に配置され、上記第1貯留室から上記水素吸蔵合金に供給された上記加熱用熱媒体及び上記第2貯留室から上記水素吸蔵合金に供給された上記冷却用熱媒体が還流する還流室と
を備え、
上記第1貯留室と上記還流室、及び上記第2貯留室と上記還流室とが、それぞれ隔壁によって仕切られており、
上記還流室に、還流された上記加熱用熱媒体を上記第1貯留室に誘導し、かつ還流された上記冷却用熱媒体を上記第2貯留室に誘導する1又は複数の誘導壁が配置されている熱媒体貯留容器。
【請求項2】
上記1又は複数の誘導壁が、上記還流室を、上記加熱用熱媒体が還流する第1還流室と、上記冷却用熱媒体が還流する第2還流室と、上記第1還流室と上記第2還流室との間に配置され、上記第1貯留室及び上記第2貯留室から排出された循環用の上記熱媒体が還流する第3還流室とに区画し、
上記誘導壁の下部に、上記第1還流室と上記第3還流室、及び上記第2還流室と上記第3還流室とに連通する開口が設けられている請求項1に記載の熱媒体貯留容器。
【請求項3】
一対の上記誘導壁を有しており、
上記一対の誘導壁が、当該熱媒体貯留容器内を横断し、かつ互いに並列に配置されている請求項2に記載の熱媒体貯留容器。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の熱媒体貯留容器と、
上記水素吸蔵合金が搭載されている水素吸蔵放出タンクと、
上記第1貯留室に貯留される上記加熱用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記加熱用熱媒体を上記還流室に還流させる第1ラインと、
上記第2貯留室に貯留される上記冷却用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記冷却用熱媒体を上記還流室に還流させる第2ラインと
を備える水素吸蔵放出システム。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の熱媒体貯留容器と、
上記水素吸蔵合金が搭載されている水素吸蔵放出タンクと、
上記第1貯留室に貯留される上記加熱用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記加熱用熱媒体を上記第1還流室に還流させる第1ラインと、
上記第2貯留室に貯留される上記冷却用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記冷却用熱媒体を上記第2還流室に還流させる第2ラインと、
上記第1貯留室に貯留される加熱用熱媒体又は上記第2貯留室に貯留される冷却用熱媒体を上記第3還流室に循環させる循環ラインと
を備える水素吸蔵放出システム。
【請求項6】
上記第1ラインが、上記第1貯留室に接続される第1排出路と、この第1排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する第1接続路とを有し、
上記第2ラインが、上記第2貯留室に接続されている第2排出路と、この第2排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する、上記第1ラインと共通の上記第1接続路とを有する請求項4又は請求項5に記載の水素吸蔵放出システム。
【請求項7】
上記第1ラインが、上記第1貯留室に接続される第1排出路と、この第1排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する第1接続路とを有し、
上記第2ラインが、上記第2貯留室に接続されている第2排出路と、この第2排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する、上記第1ラインと共通の上記第1接続路とを有し、
上記循環ラインが、上記第1接続路から分岐し、上記第3還流室に連通する循環路を有する請求項5に記載の水素吸蔵放出システム。
【請求項8】
上記第1ラインが、上記水素吸蔵放出タンクに接続され、上記水素吸蔵合金を加熱した後の上記加熱用熱媒体が排出される第2接続路と、この第2接続路に接続され、上記第1還流室の下部に連通する第1還流路とを有し、
上記第2ラインが、上記水素吸蔵合金を冷却した後の上記冷却用熱媒体が排出される、上記第1ラインと共通の上記第2接続路と、上記第2接続路に接続され、上記第2還流室の下部に連通する第2還流路とを有する請求項5又は請求項7に記載の水素吸蔵放出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体貯留容器及び水素吸蔵放出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池自動車、燃料電池フォークリフト等に水素を供給するための水素供給設備が開発されている。この水素供給設備における水素の吸蔵及び放出に水素吸蔵合金の使用が検討されている。水素吸蔵合金は、発熱反応によって水素を吸蔵し、吸熱反応によって水素を放出する。水素吸蔵合金は、この発熱反応と吸熱反応とを繰り返し行うことで、水素の吸蔵及び放出を可逆的に行う。
【0003】
通常、水素吸蔵合金の発熱反応は、水素吸蔵合金に冷水等の冷却用熱媒体を供給することで進行し、水素吸蔵合金の吸熱反応は、水素吸蔵合金に温水等の加熱用熱媒体を供給することで進行する。そのため、水素吸蔵合金を用いた水素供給設備では、安定した水素の吸蔵及び放出を行うことができるよう、水素吸蔵合金の加熱及び冷却を制御することが望まれる。
【0004】
水素吸蔵合金を用いた水素供給設備として、水素吸蔵合金を内蔵する水素貯蔵タンクと、水素吸蔵合金と熱交換可能な加温用の熱交換媒体を貯留する温水タンクと、水素吸蔵合金と熱交換可能な冷却用の熱交換媒体を貯留する冷水タンクとを備えるものが公知である(特開2003-254499号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に記載されているように、従来の水素供給設備では、加温用の熱媒体と冷却用の熱媒体とをそれぞれ別のタンクに貯留している。しかしながら、この構成によると、設備が大きくなると共に、設備コストが高くなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、加熱用熱媒体と冷却用熱媒体とを単一の容器に貯留することで設備のコンパクト化を図ることができると共に、加熱用熱媒体及び冷却用熱媒体の温度を適切に制御することが可能な熱媒体貯留容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る熱媒体貯留容器は、水素吸蔵合金を加熱及び冷却する熱媒体が貯留される熱媒体貯留容器であって、上記水素吸蔵合金を加熱する加熱用熱媒体が貯留される第1貯留室と、上記水素吸蔵合金を冷却する冷却用熱媒体が貯留される第2貯留室と、上記第1貯留室と上記第2貯留室との間に配置され、上記第1貯留室から上記水素吸蔵合金に供給された上記加熱用熱媒体及び上記第2貯留室から上記水素吸蔵合金に供給された上記冷却用熱媒体が還流する還流室とを備え、上記第1貯留室と上記還流室、及び上記第2貯留室と上記還流室とが、それぞれ隔壁によって仕切られており、上記還流室に、還流された上記加熱用熱媒体を上記第1貯留室に誘導し、かつ還流された上記冷却用熱媒体を上記第2貯留室に誘導する1又は複数の誘導壁が配置されている。
【0009】
当該熱媒体貯留容器は、上記1又は複数の誘導壁が上記還流室に配置されていることで、還流された上記加熱用熱媒体を上記第1貯留室に誘導し、かつ還流された上記冷却用熱媒体を上記第2貯留室に誘導することができる。そのため、当該熱媒体貯留容器は、上記第1貯留室と、上記第2貯留室と、上記還流室とを単一の容器内に配置しつつ、上記加熱用熱媒体と上記冷却用熱媒体とが容器内で混合されることを抑制することができる。従って、当該熱媒体貯留容器は、上記加熱用熱媒体及び上記冷却用熱媒体の温度を適切に制御しつつ、設備のコンパクト化を図ることができる。
【0010】
上記1又は複数の誘導壁が、上記還流室を、上記加熱用熱媒体が還流する第1還流室と、上記冷却用熱媒体が還流する第2還流室と、上記第1還流室と上記第2還流室との間に配置され、上記第1貯留室及び上記第2貯留室から排出された循環用の上記熱媒体が還流する第3還流室とに区画し、上記誘導壁の下部に、上記第1還流室と上記第3還流室、及び上記第2還流室と上記第3還流室とに連通する開口が設けられているとよい。このように、上記還流室に、上記第1貯留室及び上記第2貯留室から排出された循環用の上記熱媒体が還流する第3還流室を設けることで、上記循環用の熱媒体をミニマムフロー運転によって上記第3還流室に還流させることが可能となる。また、上記還流室が、上記1又は複数の誘導壁によって、上記第1還流室と、上記第2還流室と、上記第3還流室とに区画されており、上記誘導壁の下部に、上記第1還流室と上記第3還流室、及び上記第2還流室と上記第3還流室とに連通する開口が設けられていることによって、上記第3還流室に還流した上記循環用の熱媒体を、上記第1還流室を経て上記第1貯留室に、又は上記第2還流室を経て上記第2貯留室に少しずつ拡散することができる。これにより、上記第1貯留室に貯留されている上記加熱用熱媒体及び上記第2貯留室に貯留されている上記冷却用熱媒体の温度変化を抑制しつつ、設備の安全性を高めることができる。
【0011】
当該熱媒体貯留容器が、一対の上記誘導壁を有しており、上記一対の誘導壁が、当該熱媒体貯留容器内を横断し、かつ互いに並列に配置されているとよい。このように、一対の上記誘導壁を有しており、上記一対の誘導壁が、当該熱媒体貯留容器内を横断し、かつ互いに並列に配置されていることによって、上記還流室を、上記第1還流室、上記第2還流室及び上記第3還流室に容易かつ確実に区画すると共に、上記第3還流室に還流した上記循環用の熱媒体を上記第1還流室及び上記第2還流室に送りやすい。
【0012】
本発明の他の一態様に係る水素吸蔵放出システムは、当該熱媒体貯留容器と、上記水素吸蔵合金が搭載されている水素吸蔵放出タンクと、上記第1貯留室に貯留される上記加熱用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記加熱用熱媒体を上記還流室に還流させる第1ラインと、上記第2貯留室に貯留される上記冷却用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記冷却用熱媒体を上記還流室に還流させる第2ラインとを備える。
【0013】
当該水素吸蔵放出システムは、当該熱媒体貯留容器を備えるので、上記加熱用熱媒体及び上記冷却用熱媒体の温度を適切に制御しつつ、設備のコンパクト化を図ることができる。
【0014】
当該水素吸蔵放出システムは、当該熱媒体貯留容器と、上記水素吸蔵合金が搭載されている水素吸蔵放出タンクと、上記第1貯留室に貯留される上記加熱用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記加熱用熱媒体を上記第1還流室に還流させる第1ラインと、上記第2貯留室に貯留される上記冷却用熱媒体を上記水素吸蔵合金に供給し、かつ供給後の上記冷却用熱媒体を上記第2還流室に還流させる第2ラインと、上記第1貯留室に貯留される加熱用熱媒体又は上記第2貯留室に貯留される冷却用熱媒体を上記第3還流室に循環させる循環ラインとを備えるとよい。このように、当該水素吸蔵放出システムは、上記第1貯留室に貯留される加熱用熱媒体又は上記第2貯留室に貯留される冷却用熱媒体を上記第3還流室に循環させる循環ラインを備えることで、上記第1貯留室に貯留されている上記加熱用熱媒体及び上記第2貯留室に貯留されている上記冷却用熱媒体の温度変化を抑制しつつ、ポンプの連続運転可能な最小流量を確保することにより、ポンプの損傷を防ぎ、設備の安全性を高めることができる。
【0015】
上記第1ラインが、上記第1貯留室に接続される第1排出路と、この第1排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する第1接続路とを有し、上記第2ラインが、上記第2貯留室に接続されている第2排出路と、この第2排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する、上記第1ラインと共通の上記第1接続路とを有するとよい。このように、上記第1ラインが、上記第1貯留室に接続される第1排出路と、この第1排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する第1接続路とを有し、上記第2ラインが、上記第2貯留室に接続されている第2排出路と、この第2排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する、上記第1ラインと共通の上記第1接続路とを有することによって、流路の簡素化を図ることで設備コストを抑えつつ、上記加熱用熱媒体及び上記冷却用熱媒体を上記水素吸蔵合金に所望の温度で容易に供給することができる。
【0016】
上記第1ラインが、上記第1貯留室に接続される第1排出路と、この第1排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する第1接続路とを有し、上記第2ラインが、上記第2貯留室に接続されている第2排出路と、この第2排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する、上記第1ラインと共通の上記第1接続路とを有し、上記循環ラインが、上記第1接続路から分岐し、上記第3還流室に連通する循環路を有するとよい。このように、上記第1ラインが、上記第1貯留室に接続される第1排出路と、この第1排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する第1接続路とを有し、上記第2ラインが、上記第2貯留室に接続されている第2排出路と、この第2排出路と上記水素吸蔵放出タンクとを接続する、上記第1ラインと共通の上記第1接続路とを有し、上記循環ラインが、上記第1接続路から分岐し、上記第3還流室に連通する循環路を有することによって、流路の簡素化を図ることで設備コストを抑えつつ、上記加熱用熱媒体及び上記冷却用熱媒体を上記水素吸蔵合金に所望の温度で容易に供給すると共に、ポンプの連続運転可能な最小流量を確保することにより、ポンプの損傷を防ぎ、設備の安全性を高めることができる。
【0017】
上記第1ラインが、上記水素吸蔵放出タンクに接続され、上記水素吸蔵合金を加熱した後の上記加熱用熱媒体が排出される第2接続路と、この第2接続路に接続され、上記第1還流室の下部に連通する第1還流路とを有し、上記第2ラインが、上記水素吸蔵合金を冷却した後の上記冷却用熱媒体が排出される、上記第1ラインと共通の上記第2接続路と、上記第2接続路に接続され、上記第2還流室の下部に連通する第2還流路とを有するとよい。このように、上記第1ラインが、上記水素吸蔵放出タンクに接続され、上記水素吸蔵合金を加熱した後の上記加熱用熱媒体が排出される第2接続路と、この第2接続路に接続され、上記第1還流室の下部に連通する第1還流路とを有し、上記第2ラインが、上記水素吸蔵合金を冷却した後の上記冷却用熱媒体が排出される、上記第1ラインと共通の上記第2接続路と、上記第2接続路に接続され、上記第2還流室の下部に連通する第2還流路とを有することによって、流路の簡素化を図ることで設備コストを抑えつつ、上記第1貯留室及び上記第2貯留室の温度変化を抑制して、上記加熱用熱媒体及び上記冷却用熱媒体の温度制御に要するコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の一態様に係る熱媒体貯留容器は、加熱用熱媒体と冷却用熱媒体とを単一の容器に貯留することで設備のコンパクト化を図ることができると共に、加熱用熱媒体及び冷却用熱媒体の温度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る水素吸蔵放出システムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の水素吸蔵放出システムにおける熱媒体貯留容器を示す模式的平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の熱媒体貯留容器のIII-III線断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の熱媒体貯留容器のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の熱媒体貯留容器のV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載の数値については、記載された上限値と下限値とを任意に組み合わせることが可能である。本明細書では、組み合わせ可能な上限値から下限値までの数値範囲が好適な範囲として全て記載されているものとする。
【0021】
[水素吸蔵放出システム]
図1の水素吸蔵放出システム10は、水素吸蔵合金1aが搭載されている水素吸蔵放出タンク1と、水素吸蔵合金1aを加熱及び冷却する熱媒体(加熱用熱媒体M
1及び冷却用熱媒体M
2)が貯留される熱媒体貯留容器2と、熱媒体貯留容器2に貯留される加熱用熱媒体M
1を水素吸蔵合金1aに供給し、かつ熱媒体貯留容器2に還流させる第1ライン3と、熱媒体貯留容器2に貯留される冷却用熱媒体M
2を水素吸蔵合金1aに供給し、かつ熱媒体貯留容器2に還流させる第2ライン4と、熱媒体貯留容器2に貯留される加熱用熱媒体M
1又は冷却用熱媒体M
2を循環させる循環ライン5とを備える。循環ライン5は、加熱用熱媒体M
1又は冷却用熱媒体M
2を循環用の熱媒体(以下、「循環用熱媒体M
3」ともいう)として循環させることで、ポンプの連続運転可能な最小流量を確保し、締切運転に起因する過熱、騒音、振動等によるポンプの損傷を抑制する。熱媒体貯留容器2は、それ自体本発明の一実施形態である。当該水素吸蔵放出システム10は、例えば燃料電池に水素を供給するための水素供給設備に用いられる。この燃料電池が搭載される対象物としては、例えば燃料電池自動車及び燃料電池フォークリフトが挙げられる。加熱用熱媒体M
1としては、例えば温水を用いることができる。冷却用熱媒体M
2としては、例えば冷水を用いることができる。
【0022】
(水素吸蔵放出タンク)
水素吸蔵放出タンク1は、水素吸蔵合金1aにより水素を吸蔵可能に構成されている。また、水素吸蔵放出タンク1は、水素吸蔵合金1aが吸蔵した水素を放出することで、水素を燃料電池に供給可能に構成されている。水素吸蔵合金1aは、熱媒体貯留容器2から供給された冷却用熱媒体M2との熱交換によって冷却されることで水素導入路1bから導入された水素を吸蔵する。また、水素吸蔵合金1aは、熱媒体貯留容器2から供給された加熱用熱媒体M1との熱交換によって加熱されることで水素を放出する。この水素は、水素放出路1cから排出される。
【0023】
〔水素吸蔵合金〕
水素吸蔵合金1aは、圧力又は温度を制御することで水素を吸蔵及び放出できる合金である。水素吸蔵合金1aとしては、公知のものを用いることができ、例えば2元系合金、3元系合金、4元系合金、又は5元系合金等が挙げられる。
【0024】
上記2元系合金としては、例えばLaNi5等のLaNi系合金、TiFe系合金、MnNi系合金、CaNi系合金、TiMn系合金、TiZr系合金、又はZrMn系合金などが挙げられる。
【0025】
上記3元系合金としては、例えばTi25Cr50V25、Ti25Cr25V50、Ti20Cr45V35等のTiCrV系合金、Ti36Cr32Mn32、若しくはTi30Cr35Mn35等のTiCrMn系合金、又はTiVMo系合金などが挙げられる。
【0026】
上記4元系合金としては、例えばTi30Cr45V10Mo15、若しくはTi25Cr50V20Mo5等のTiCrVMo系合金、Ti25Cr44V25Fe6等のTiCrVFe系合金、又はTi25Cr50V20Ni5等のTiCrVNi系合金などが挙げられる。
【0027】
上記5元系合金としては、例えばTi11Cr12V71Mo5Ni1等のTiCrVMoNi合金などが挙げられる。
【0028】
(熱媒体貯留容器)
図1から
図5に示すように、熱媒体貯留容器2は、水素吸蔵合金1aを加熱する加熱用熱媒体M
1が貯留される第1貯留室11と、水素吸蔵合金1aを冷却する冷却用熱媒体M
2が貯留される第2貯留室12と、第1貯留室11と第2貯留室12との間に配置され、第1貯留室11から水素吸蔵合金1aに供給された加熱用熱媒体M
1及び第2貯留室12から水素吸蔵合金1aに供給された冷却用熱媒体M
2が還流する還流室13とを備える。第1貯留室11と還流室13、及び第2貯留室12と還流室13とは、それぞれ隔壁14によって仕切られている。還流室13には、一対の誘導壁15が配置されている。一対の誘導壁15は、還流室13に還流された加熱用熱媒体M
1を第1貯留室11に誘導する一方、還流室13に還流された冷却用熱媒体M
2を第2貯留室12に誘導する。なお、熱媒体貯留容器2は、上部開口を塞ぐ蓋部(不図示)を有していてもよい。
【0029】
図2に示すように、熱媒体貯留容器2は平面視矩形状である。熱媒体貯留容器2は、対向する一対の側壁2b、2cを有している。一対の側壁2b、2cの間には、第1貯留室11、還流室13及び第2貯留室12がこの順で並列に設けられている。すなわち、熱媒体貯留容器2は、一方の側壁2bから他方の側壁2cに向けて、第1貯留室11、還流室13及び第2貯留室12の3つの室に区画されている。なお、「矩形状」とは、完全な矩形に限定されるものではなく、例えば部分的に湾曲又は屈曲している形状、或いは対向する2辺が完全には平行でない形状等を含む。
【0030】
〔第1貯留室〕
第1貯留室11には、還流室13から加熱用熱媒体M1が導入される。より詳しくは、第1貯留室11は、還流室13から加熱用熱媒体M1が選択的に導入されるよう構成されている。つまり、第1貯留室11には、水素吸蔵合金1aを冷却した冷却用熱媒体M2の導入が防止されるよう構成されている。第1貯留室11は、冷却用熱媒体M2の導入が防止されることで、貯留されている加熱用熱媒体M1の温度変化を防止しやすい。その結果、水素吸蔵合金1aの加熱に要するエネルギーを削減しやすい。第1貯留室11には、加熱用熱媒体M1を排出可能な第1排出路3aが接続されている。
【0031】
第1貯留室11には、加熱用熱媒体M1の温度を維持するためのヒーター11aが配置されている。ヒーター11aの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば電気ヒーターを用いることができる。第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M1の液温の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、上記液温の上限としては、90℃が好ましく、80℃がより好ましい。上記液温が上記下限に満たないと、水素吸蔵合金1aの水素放出効率が不十分となるおそれがある。逆に、上記液温が上記上限を超えると、加熱用熱媒体M1の種類を変更する等により、加熱コストが高くなるおそれがある。
【0032】
〔第2貯留室〕
第2貯留室12には、還流室13から冷却用熱媒体M2が導入される。より詳しくは、第2貯留室12は、還流室13から冷却用熱媒体M2が選択的に導入されるよう構成されている。つまり、第2貯留室12には、水素吸蔵合金1aを加熱した加熱用熱媒体M1の導入が防止されるよう構成されている。第2貯留室12は、加熱用熱媒体M1の導入が防止されることで、貯留されている冷却用熱媒体M2の温度変化を防止しやすい。その結果、水素吸蔵合金1aの冷却に要するエネルギーを削減しやすい。第2貯留室12には、冷却用熱媒体M2を排出可能な第2排出路4aが接続されている。
【0033】
第2貯留室12には、冷却用熱媒体M2の温度を維持するためのクーラー12aが配置されている。クーラー12aの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば公知の熱交換器を用いることができる。第2貯留室12に貯留されている冷却用熱媒体M2の液温は、第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M1の液温よりも低い。第2貯留室12に貯留されている冷却用熱媒体M2の液温の下限としては、5℃が好ましく、10℃がより好ましい。一方、上記液温の上限としては、40℃が好ましく、35℃がより好ましい。上記液温が上記下限に満たないと、冷却用熱媒体M2の種類を変更する等により、冷却コストが高くなるおそれがある。逆に、上記液温が上記上限を超えると、水素吸蔵合金1aの水素吸蔵効率が低下するおそれがある。
【0034】
〔還流室〕
還流室13は、加熱用熱媒体M1が還流する第1還流室13aと、冷却用熱媒体M2が還流する第2還流室13bと、循環用熱媒体M3が還流する第3還流室13cとを有する。第3還流室13cには、循環用熱媒体M3がミニマムフロー運転によって還流する。第1還流室13aは、第1貯留室11と隣接して配置され、第2還流室13bは、第2貯留室12と隣接して配置され、第3還流室13cは、第1還流室13aと第2還流室13bとの間に配置されている。第1還流室13aと第1貯留室11との間、及び第2還流室13bと第2貯留室12との間には、それぞれ隔壁14が配置されている。また、第1還流室13aと第3還流室13cとの間、及び第2還流室13bと第3還流室13cとの間には、それぞれ誘導壁15が配置されている。すなわち、一対の誘導壁15が、還流室13を、加熱用熱媒体M1が還流する第1還流室13aと、冷却用熱媒体M2が還流する第2還流室13bと、第1還流室13aと第2還流室13bとの間に配置され、第1貯留室11及び第2貯留室12から排出された循環用の熱媒体(循環用熱媒体M3)が還流する第3還流室13cとに区画している。
【0035】
図1、
図4及び
図5に示すように、隔壁14は、当該熱媒体貯留容器2の底部2aに立設されている。隔壁14は、水平方向において誘導壁15と対向する領域には、加熱用熱媒体M
1及び冷却用熱媒体M
2が通過可能な開口が設けられていないことが好ましい。一方、
図3に示すように、誘導壁15の下部には、第1還流室13aと第3還流室13c、及び第2還流室13bと第3還流室13cに連通する複数の開口15aが設けられている。当該熱媒体貯留容器2は、誘導壁15の下部に開口15aが設けられていることで、第3還流室13cに還流した循環用熱媒体M
3を、第1還流室13aを経て第1貯留室11に、又は第2還流室13bを経て第2貯留室12に少しずつ拡散することができる。これにより、第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M
1及び第2貯留室12に貯留されている冷却用熱媒体M
2の急激な温度変化を抑制しつつ、ポンプの連続運転可能な最小流量を確保することにより、ポンプの損傷を防ぎ、設備の安全性を高めることができる。なお、「誘導壁の下部」とは、誘導壁の下端から上方に向けて10cmの範囲内の領域をいい、好ましくは5cmの範囲内の領域をいう。
【0036】
図3から
図5に示すように、当該熱媒体貯留容器2は、加熱用熱媒体M
1が隔壁14の上方を超えて第1貯留室11に送られ、冷却用熱媒体M
2が隔壁14の上方を超えて第2貯留室12に送られるよう構成されている。そのため、当該熱媒体貯留容器2は、少なくとも隔壁14の上端の一部は液面下に配置されるよう構成されていることが好ましい。一方で、当該熱媒体貯留容器2は、加熱用熱媒体M
1、冷却用熱媒体M
2及び循環用熱媒体M
3が、誘導壁15の上方を超えて移動できないように構成されている。つまり、誘導壁15の上端の全領域は、液面よりも上方に配置されている。これにより、第1還流室13aと第3還流室13cとの間の移動、及び第2還流室13bと第3還流室13cとの間の移動は、開口15aを通ってのみ行えるように構成されている。このように構成されていることで、第1還流室13aに還流した加熱用熱媒体M
1が第2貯留室12に流入することを容易かつ確実に抑制すると共に、第2還流室13bに還流した冷却用熱媒体M
2が第1貯留室11に流入することを容易かつ確実に抑制することができる。
【0037】
開口15aは、誘導壁15の下部に水平方向に間隔を空けて整列している。開口15aが間隔を空けて配置されていることで、第1還流室13aと第3還流室13c、及び第2還流室13bと第3還流室13cとの間の流量を比較的小さくすることができる。その結果、第3還流室13cに還流した循環用熱媒体M3を開口15aを通って第1還流室13a及び第2還流室13bに少しずつ送ることができると共に、第1還流室13aから第3還流室13cへの加熱用熱媒体M1の流入、及び第2還流室13bから第3還流室13cへの冷却用熱媒体M2の流入を抑制しやすい。
【0038】
第1排出路3aの内径断面積に対する第1還流室13aと第3還流室13cとを区画する誘導壁15に設けられている開口15aの総面積の比、及び第2排出路4aの内径断面積に対する第2還流室13bと第3還流室13cとを区画する誘導壁15に設けられている開口15aの総面積の比の下限としては、2が好ましい。一方、上記比の上限としては、4が好ましい。上記比が上記下限に満たないと、第3還流室13cに還流した循環用熱媒体M3を開口15aを通って第1還流室13a及び第2還流室13bに送り難くなるおそれがある。逆に、上記比が上記上限を超えると、第3還流室13cから第1還流室13a又は第2還流室13bへの流量が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0039】
一対の誘導壁15は、当該熱媒体貯留容器2内を横断し、かつ互いに並列に配置されている。この構成によると、還流室13を、第1還流室13a、第2還流室13b及び第3還流室13cに容易かつ確実に区画すると共に、第3還流室13cに還流した循環用熱媒体M3を第1還流室13a及び第2還流室13bに適切に拡散させやすい。
【0040】
還流室13は、第1貯留室11側から第2貯留室12側に向けて、第1還流室13a、第3還流室13c及び第2還流室13bがこの順で並列に設けられている。この構成によると、第1貯留室11と第2貯留室12との間における加熱用熱媒体M1及び冷却用熱媒体M2の移動を抑制しつつ、第1還流室13aに還流した加熱用熱媒体M1を第1貯留室11に送り、かつ第2還流室13bに還流した冷却用熱媒体M2を第2貯留室12に送りやすい。
【0041】
(第1ライン)
第1ライン3は、第1貯留室11に貯留される加熱用熱媒体M1を水素吸蔵合金1aに供給する。また、第1ライン3は、水素吸蔵合金1aに供給された後の加熱用熱媒体M1を還流室13に還流させる。より詳しくは、第1ライン3は、水素吸蔵合金1aに供給された後の加熱用熱媒体M1を第1還流室13aに還流させる。
【0042】
第1ライン3は、第1貯留室11に接続される第1排出路3aと、第1排出路3aと水素吸蔵放出タンク1とを接続する第1接続路3bとを有する。また、第1ライン3は、水素吸蔵放出タンク1に接続され、水素吸蔵合金1aを加熱した後の加熱用熱媒体M1が排出される第2接続路3cと、第2接続路3cに接続され、第1還流室13aの下部に連通する第1還流路3dとを有する。第1排出路3aには、第1バルブ16aが配置されている。第1接続路3bには、ポンプ17が配置されている。第1還流路3dには、第2バルブ16bが配置されている。なお、「第1還流室の下部」とは、例えば隔壁の上下方向の中央位置よりも下方に位置する側の領域を意味する。
【0043】
(第2ライン)
第2ライン4は、第2貯留室12に貯留される冷却用熱媒体M2を水素吸蔵合金1aに供給する。また、第2ライン4は、水素吸蔵合金1aに供給された後の冷却用熱媒体M2を還流室13に還流させる。より詳しくは、第2ライン4は、水素吸蔵合金1aに供給された後の冷却用熱媒体M2を第2還流室13bに還流させる。
【0044】
第2ライン4は、第2貯留室12に接続される第2排出路4aと、第2排出路4aと水素吸蔵放出タンク1とを接続する、第1ライン3と共通の第1接続路3bとを有する。このように、第2ライン4が、第2貯留室12に接続される第2排出路4aと、第1ライン3と共通の第1接続路3bを有していることで、流路の簡素化を図ることで設備コストを抑えつつ、加熱用熱媒体M1及び冷却用熱媒体M2を水素吸蔵合金1aに所望の温度で容易に供給することができる。
【0045】
また、第2ライン4は、水素吸蔵放出タンク1に接続され、水素吸蔵合金1aを冷却した後の冷却用熱媒体M2が排出される、第1ライン3と共通の第2接続路3cと、第2接続路3cに接続され、第2還流室13bの下部に連通する第2還流路4dとを有する。このように、第2ライン4が、第1ライン3と共通の第2接続路3cと、第2還流室13bの下部に連通する第2還流路4dとを有していることで、流路の簡素化を図ることで設備コストを抑えつつ、第1貯留室11及び第2貯留室12の温度変化を抑制して、加熱用熱媒体M1及び冷却用熱媒体M2の温度制御に要するコストを低減することができる。なお、「第2還流室の下部」とは、例えば隔壁の上下方向の中央位置よりも下方に位置する側の領域を意味する。
【0046】
第2排出路4aには、第3バルブ16cが配置されている。第2還流路4dには、第4バルブ16dが配置されている。
【0047】
(循環ライン)
循環ライン5は、第1貯留室11に貯留される加熱用熱媒体M1又は第2貯留室12に貯留される冷却用熱媒体M2を循環用熱媒体M3として第3還流室13cに循環させる。循環ライン5は、第1接続路3bから分岐し、第3還流室13cに連通する循環路5aを有する。循環ライン5は、循環路5aを有することで、流路の簡素化を図ることで設備コストを抑えつつ、ポンプの連続運転可能な最小流量を確保することにより、ポンプの損傷を防ぎ、設備の安全性を高めることができる。
【0048】
循環路5aには、第5バルブ16eが配置されている。なお、循環路5aには、第5バルブ16eと共に、又は第5バルブ16eに替えて流量を制御するためのオリフィス(不図示)が配置されていてもよい。
【0049】
<水素吸蔵合金の加熱手順>
図1及び
図5を参照して、当該水素吸蔵放出システム10における水素吸蔵合金1aの加熱手順について説明する。水素吸蔵合金1aを加熱する際には、まず第3バルブ16cが閉じられた状態で第1バルブ16aを開にする。これにより、第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M
1は、第1排出路3aを通って第1接続路3bに送られる。第1接続路3bに送られた加熱用熱媒体M
1は、ポンプ17で圧送されて水素吸蔵放出タンク1に至り、熱交換によって水素吸蔵合金1aを加熱する。また、水素吸蔵合金1aを加熱する際には、第2バルブ16bを開とし、かつ第4バルブ16dを閉とする。これにより、水素吸蔵合金1aと熱交換した後の加熱用熱媒体M
1は、第2接続路3c及び第1還流路3dを通って第1還流室13aの下部に還流する。第1還流室13aに還流した加熱用熱媒体M
1は、溜まっていくことで液面を上方に移動させていき、隔壁14の上端を超えてその隔壁14の上方から第1貯留室11に送られる。この際、誘導壁15の上端全体が液面上に位置していること、及び開口15aの総面積が小さいことから、第1還流室13aから第3還流室13cへの加熱用熱媒体M
1の流出が抑制される。第1還流室13aに還流した加熱用熱媒体M
1は、水素吸蔵合金1aとの熱交換によって、第1貯留室11から排出された時点よりも温度が低下している。また、第1還流室13aに還流される加熱用熱媒体M
1の温度変化は、水素吸蔵合金1aに送られる熱媒体が冷却用熱媒体M
2と加熱用熱媒体M
1とで切り換わる際に大きくなりやすい。しかしながら、当該熱媒体貯留容器2によると、加熱用熱媒体M
1は、第1還流室13aを上方に移動して、第1貯留室11に徐々に拡散されていくので、第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M
1の温度変化は急激とはならない。その結果、加熱用熱媒体M
1の温度制御に要するコストを低減することができ、特に水素吸蔵合金1aに送られる熱媒体が冷却用熱媒体M
2と加熱用熱媒体M
1とで切り換わる際にコスト低減効果が大きくなる。なお、水素吸蔵合金1aの加熱は、水素の放出時以外に行ってもよい。例えば水素の放出前に予め水素吸蔵合金1aを一定程度加熱しておくことで、水素吸蔵合金1aによる水素の放出効率を高めることが可能である。
【0050】
<水素吸蔵合金の冷却手順>
続いて、
図1及び
図5を参照して、当該水素吸蔵放出システム10における水素吸蔵合金1aの冷却手順について説明する。水素吸蔵合金1aを冷却する際には、まず第1バルブ16aが閉じられた状態で第3バルブ16cを開にする。これにより、第2貯留室12に貯留されている冷却用熱媒体M
2は、第2排出路4aを通って第1接続路3bに送られる。第1接続路3bに送られた冷却用熱媒体M
2は、ポンプ17で圧送されて水素吸蔵放出タンク1に至り、熱交換によって水素吸蔵合金1aを冷却する。また、水素吸蔵合金1aを冷却する際には、第2バルブ16bを閉とし、かつ第4バルブ16dを開とする。これにより、水素吸蔵合金1aと熱交換した後の冷却用熱媒体M
2は、第2接続路3c及び第2還流路4dを通って第2還流室13bの下部に還流する。第2還流室13bに還流した冷却用熱媒体M
2は、溜まっていくことで液面を上方に移動させていき、隔壁14の上端を超えてその隔壁14の上方から第2貯留室12に送られる。この際、誘導壁15の上端全体が液面上に位置していること、及び開口15aの総面積が小さいことから、第2還流室13bから第3還流室13cへの冷却用熱媒体M
2の流出が抑制される。第2還流室13bに還流した冷却用熱媒体M
2は、水素吸蔵合金1aとの熱交換によって、第2貯留室12から排出された時点よりも温度が上昇している。また、第2還流室13bに還流される冷却用熱媒体M
2の温度変化は、水素吸蔵合金1aに送られる熱媒体が加熱用熱媒体M
1と冷却用熱媒体M
2とで切り換わる際に大きくなりやすい。しかしながら、当該熱媒体貯留容器2によると、冷却用熱媒体M
2は、第2還流室13bを上方に移動して、第2貯留室12に徐々に拡散されていくので、第2貯留室12に貯留されている冷却用熱媒体M
2の温度変化は急激とはならない。その結果、冷却用熱媒体M
2の温度制御に要するコストを低減することができ、特に水素吸蔵合金1aに送られる熱媒体が加熱用熱媒体M
1と冷却用熱媒体M
2とで切り換わる際にコスト低減効果が大きくなる。なお、水素吸蔵合金1aの冷却は、水素の吸蔵時以外に行ってもよい。例えば水素の吸蔵前に予め水素吸蔵合金1aを一定程度冷却しておくことで、水素吸蔵合金1aによる水素の吸蔵効率を高めることが可能である。
【0051】
<循環用熱媒体の循環手順>
図1及び
図5を参照して、当該水素吸蔵放出システム10における循環用熱媒体M
3の循環手順を説明する。循環用熱媒体M
3の循環は、ポンプ17の機械的損傷の保護等を意図して行われる。循環用熱媒体M
3の循環は、第1貯留室11から排出された加熱用熱媒体M
1又は第2貯留室12から排出された冷却用熱媒体M
2をミニマムフロー運転によって第3還流室13cに還流させるものである。この際、加熱用熱媒体M
1又は冷却用熱媒体M
2をミニマムフロー運転によって第3還流室13cに還流できるよう、第5バルブ16eを開とする。第5バルブ16eは、当該水素吸蔵放出システム10の稼働中、常時開としていてもよい。また、ミニマムフロー運転するに当たっては、第5バルブ16eを制御することで、ポンプ17の吐出状態に応じて加熱用熱媒体M
1又は冷却用熱媒体M
2の流量を調整してもよい。当該水素吸蔵放出システム10は、循環ライン5を備えることで、ポンプ17を保護し、設備の安全性を高めることができる。また、循環ライン5が第1貯留室11から排出された加熱用熱媒体M
1又は第2貯留室12から排出された冷却用熱媒体M
2を第3還流室13cに還流させるように構成されていることで、第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M
1及び第2貯留室12に貯留されている冷却用熱媒体M
2の温度変化を抑制することができる。
【0052】
循環ライン5によって加熱用熱媒体M1を第3還流室13cに還流させる場合、第1バルブ16a及び第5バルブ16eを開、第3バルブ16cを閉として、第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M1を第1排出路3a、第1接続路3b及び循環路5aを通って第3還流室13cに還流させる。これにより、第3還流室13cの液面が第1貯留室11の液面よりも高くなる。その結果、水圧差によって第3還流室13cに還流された加熱用熱媒体M1は第1還流室13aを介して第1貯留室11に拡散される。一方、循環ライン5によって冷却用熱媒体M2を第3還流室13cに還流させる場合、第3バルブ16c及び第5バルブ16eを開、第1バルブ16aを閉として、第2貯留室12に貯留されている冷却用熱媒体M2を第2排出路4a、第1接続路3b及び循環路5aを通って第3還流室13cに還流させる。これにより、第3還流室13cの液面が第2貯留室12の液面よりも高くなる。その結果、水圧差によって第3還流室13cに還流された冷却用熱媒体M2は第2還流室13bを介して第2貯留室12に拡散される。
【0053】
<利点>
当該熱媒体貯留容器2は、一対の誘導壁15が還流室13に配置されていることで、還流された加熱用熱媒体M1を第1貯留室11に誘導し、かつ還流された冷却用熱媒体M2を第2貯留室12に誘導することができる。そのため、当該熱媒体貯留容器2は、第1貯留室11と、第2貯留室12と、還流室13とを単一の容器内に配置しつつ、加熱用熱媒体M1と冷却用熱媒体M2とが容器内で混合されることを抑制することができる。従って、当該熱媒体貯留容器2は、加熱用熱媒体M1及び冷却用熱媒体M2の温度を適切に制御しつつ、設備のコンパクト化を図ることができる。
【0054】
加熱用熱媒体を貯留する温水タンクと冷却用熱媒体を貯留する冷水タンクとが別々に設けられている従来の装置に対する当該熱媒体貯留容器2の有利な点について詳説する。
【0055】
上記温水タンクと上記冷水タンクとが別個に設けられている場合、例えば冷却用熱媒体から加熱用熱媒体に切り換えた際に、水素吸蔵合金と熱交換した後の冷却用熱媒体が温水タンクに流入する。冷却用熱媒体の流入に起因する急激な温度低下を緩和するためには温水タンクを大型化することを要する。一方で、切換後、水素吸蔵合金を内蔵したMHタンクから還流する熱媒体が加熱用熱媒体に替わるまでの間、冷却用熱媒体を冷水タンクに戻すことも可能であるが、この構成を採用する場合でもMHタンクの容量分をプラスして貯留できるように冷水タンクを大型化することを要する。これに対し、当該熱媒体貯留容器2は、第1貯留室11に貯留されている加熱用熱媒体M1を第2還流室13bに還流させたとしても、この加熱用熱媒体M1は、第3還流室13c及び第1還流室13aを通って第1貯留室11に流入する。そのため、当該熱媒体貯留容器2によると、熱媒体の急激な温度変化を緩和できる。さらに、当該熱媒体貯留容器2は、誘導壁15が開口15aを有することで、第2貯留室12と還流室13との液面が同一レベルとなるため、全体の容積を大きくすることを要しない。その結果、コンパクト化を図ることができる。加えて、当該熱媒体貯留容器2は、第1貯留室11と第2貯留室12とを一体化することで、配管、バルブ等を共用することができ、設備コストを小さくし、設備設置面積も小さくすることができる。
【0056】
当該水素吸蔵放出システム10は、当該熱媒体貯留容器2を備えるので、加熱用熱媒体M1及び冷却用熱媒体M2の温度を適切に制御しつつ、設備のコンパクト化を図ることができる。
【0057】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0058】
例えば上記還流室には、循環用熱媒体が還流する第3還流室が設けられていなくてもよい。この場合、上記還流室には、加熱用熱媒体が還流する第1還流室と冷却用熱媒体が還流する第2還流室とを区画する1つの誘導壁のみが配置されていてもよい。また、上記還流室に1つの誘導壁のみが配置されている場合、この誘導壁には開口は形成されていなくてもよい。
【0059】
当該熱媒体貯留容器は、循環用熱媒体を第1貯留室又は第2貯留室に直接還流するように構成されていてもよい。但し、循環用熱媒体の流路の簡素化を図ると共にバルブの開閉作業等の運転コストを低減する観点からは、上記循環用熱媒体は上記第3還流室に還流させることが好ましい。
【0060】
当該熱媒体貯留容器内における第1貯留室、第2貯留室及び還流室の配置は特に限定されるものではない。例えば上記還流室が第1還流室と第2還流室と第3還流室とに区画されている場合、第3還流室を平面視で円形状に構成し、第3還流室の外側に第1還流室及び第2還流室を配置してもよい。この場合、上記還流室には、第1還流室と第2還流室と第3還流室とを区画する3以上の誘導壁が配置されていてもよい。
【0061】
上記還流室に第3還流室が設けられていない場合、当該水素吸蔵放出システムは、循環用熱媒体を循環させる循環ラインを備えていなくてもよい。上記循環ラインを備えない場合、当該水素吸蔵放出システムは、ポンプの最小流量を確保できるよう、上記第2バルブ及び上記第4バルブを切換制御することが好ましい。例えば上記第2バルブ及び上記第4バルブが共に閉とならないように、一方のバルブが開であることを確認した後に、他方のバルブを閉とすることが好ましい。このような制御手順としては、例えば一方のバルブにリミットスイッチを配置し、このリミットスイッチから送られる信号を確認した後に他方のバルブを閉にする手順が挙げられる。また、当該水素吸蔵放出システムが循環ラインを備える場合でも、この循環ラインは上述の第1接続路から分岐しない構成であってもよい。この場合、当該水素吸蔵放出システムは、複数のポンプを備えていてもよい。例えば当該水素吸蔵放出システムは、上記第1貯留室に貯留されている加熱用熱媒体を圧送する第1ポンプと、上記第2貯留室に貯留されている冷却用熱媒体を圧送する第2ポンプとを備えていてもよい。
【0062】
上記第1ライン及び上記第2ラインは、共通の第1接続路を有していなくてもよい。但し、流路の簡素化を図り、設備のコンパクト化を促進する観点等からは、上記第1ライン及び上記第2ラインは共通の第1接続路を有することが好ましい。
【0063】
上記第1ライン及び上記第2ラインは、共通の第2接続路を有していなくてもよい。但し、流路の簡素化を図り、設備のコンパクト化を促進する観点等からは、上記第1ライン及び上記第2ラインは共通の第2接続路を有することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明の一態様に係る熱媒体貯留容器は、設備のコンパクト化を図ると共に、加熱用熱媒体及び冷却用熱媒体の温度を適切に制御するのに適している。
【符号の説明】
【0065】
1 水素吸蔵放出タンク
1a 水素吸蔵合金
1b 水素導入路
1c 水素放出路
2 熱媒体貯留容器
2a 底部
2b、2c 側壁
3 第1ライン
3a 第1排出路
3b 第1接続路
3c 第2接続路
3d 第1還流路
4 第2ライン
4a 第2排出路
4d 第2還流路
5 循環ライン
5a 循環路
10 水素吸蔵放出システム
11 第1貯留室
11a ヒーター
12 第2貯留室
12a クーラー
13 還流室
13a 第1還流室
13b 第2還流室
13c 第3還流室
14 隔壁
15 誘導壁
15a 開口
16a 第1バルブ
16b 第2バルブ
16c 第3バルブ
16d 第4バルブ
16e 第5バルブ
17 ポンプ
M1 加熱用熱媒体
M2 冷却用熱媒体
M3 循環用熱媒体