(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134831
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】アドレス設定器およびアドレス設定方法
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034258
(22)【出願日】2021-03-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】梅原 義之
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405CA30
5G405CA55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】感知器などの端末器を備える監視システムにおいて、人為的な入力ミスを低減する端末器へのアドレス設定器及びアドレス設定方法を提供する。
【解決手段】通信アドレスを書込み可能な記憶手段を備える監視システムにおいて、所定エリアもしくは対象設備に分散設置される複数の端末器(火災感知器)に夫々通信アドレスを設定するためのアドレス設定器12は、端末器の配置を示す設備図面に表記されている少なくとも通信アドレスを含む2次元コードを読取り可能なコード読取り部21と、コード読取り部により読み取られた2次元コードをバイナリコードに変換するコード変換部31と、コード変換部により変換されたバイナリコードより通信アドレスを抽出する通信アドレス抽出手段(情報抽出部32)と、通信アドレス抽出手段により抽出された通信アドレスを信号として端末器へ送出可能なデータ送出手段(送信処理部34)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信アドレスを書込み可能な記憶手段を備え監視システムの所定エリアもしくは対象設備に分散設置される複数の端末器にそれぞれ通信アドレスを設定するためのアドレス設定器であって、
前記監視システムの所定エリアもしくは対象設備に設置される複数の端末器の配置を示す設備図面に表記されている少なくとも通信アドレスを含む2次元コードを読取り可能なコード読取り手段と、
前記コード読取り手段により読み取られた2次元コードをバイナリコードに変換するコード変換手段と、
前記コード変換手段により変換されたバイナリコードより通信アドレスを抽出する通信アドレス抽出手段と、
前記通信アドレス抽出手段により抽出された通信アドレスを信号として前記端末器へ送出可能なデータ送出手段と、
を備えることを特徴とするアドレス設定器。
【請求項2】
表示部を備え、前記コード変換手段により変換されたバイナリコードに基づく情報を前記表示部に表示する機能を有することを特徴とする請求項1に記載のアドレス設定器。
【請求項3】
前記データ送出手段は、
前記端末器の端子が接続可能な接続端子部と、前記通信アドレス抽出手段により抽出された通信アドレスを信号に変換する通信処理手段と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアドレス設定器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のアドレス設定器を用いて、通信アドレスを書込み可能な記憶手段を備え監視システムの所定エリアもしくは対象設備に分散設置される複数の端末器に、通信アドレスをそれぞれ設定するアドレス設定方法であって、
前記監視システムの所定エリアもしくは対象設備に設置される複数の端末器に設定するためのそれぞれ異なる通信アドレスを割り当てる第1ステップと、
少なくとも前記通信アドレスを含む各端末器の情報を2次元コードに変換する第2ステップと、
生成された前記2次元コードを前記監視システムの所定エリアもしくは対象設備に設置される複数の端末器の配置を示す設備図面に表記する第3ステップと、
前記設備図面に表記されている前記2次元コードを前記アドレス設定器により読み取る第4ステップと、
前記アドレス設定器により読み取った前記2次元コードを変換して前記通信アドレスを抽出し、対応する前記端末器へ送出して設定する第5ステップと、
を含むことを特徴とするアドレス設定方法。
【請求項5】
通信アドレスが設定された前記複数の端末器にそれぞれどの通信アドレスを設定したかを示す情報を付記する第6ステップと、
前記設備図面および各端末器に付記された前記情報を参照して前記複数の端末器を所定位置にそれぞれ取り付ける第7ステップと、
前記複数の端末器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の端末器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得する第8ステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のアドレス設定方法。
【請求項6】
前記設備図面を参照しながら端末器を取り付ける位置にて、前記第4ステップと前記第5ステップを実行した後、
前記通信アドレスが設定された前記端末器を所定位置に順次取り付ける第7ステップと、 前記複数の端末器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の端末器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得する第8ステップを順に実行することを特徴とする請求項4に記載のアドレス設定方法。
【請求項7】
第1の作業者が、前記設備図面を参照しながら端末器を取り付ける位置にて、前記第4ステップと前記第5ステップを実行して、当該端末器を取付け位置に置いた後、
第2の作業者が、前記取付け位置に置かれた前記端末器を取付け面に取り付ける第7ステップを実行し、
前記複数の端末器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の端末器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得する第8ステップを実行することを特徴とする請求項4に記載のアドレス設定方法。
【請求項8】
前記受信機は、ネットワークを介して前記第8ステップにおいて取得した前記通信アドレスを含む情報を他のデータ処理装置へ送信する機能を備えており、
前記第8ステップにおいて取得した前記通信アドレスを含む情報を受信した前記データ処理装置は、表示部に表示する前記設備図面の対応する端末器の近傍に、受信した前記通信アドレスを表記することを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載のアドレス設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知設備のような監視システムを構成する火災感知器などの端末器に対して、その端末器に備わるアドレス記憶部に通信アドレスを書き込み設定するアドレス設定器およびアドレス設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災報知設備における火災感知器などの端末器には、受信機等からのアドレスに基づく呼出し信号に呼応して、自器に設定されているアドレスとの一致を検出し、一致していたならば呼び出し側の受信機等との間で情報交換を行うように構成されているものがある。かかる端末器に設定されるアドレスは、以前はロータリスイッチ等を設けて機械的に設定していたが、近年はEEPROM等のアドレス情報を記憶する不揮発性メモリを設けて電気的に設定するものが多い。電気的にアドレスを設定する方式の端末器を使用する場合には、端末器に接続してアドレス設定を行うアドレス設定器が必要であり、アドレス設定器に関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
しかしながら、火災報知設備が設置される施設の規模が大きくなると、そこに設置される火災感知器などの端末器の数も膨大となり、アドレス設定器を用いて各端末器1つ1つに間違いなくアドレスを設定するのは大変な作業となる。この設定作業は、予め各端末器の設置場所とアドレスとが表示されているリストや設備図面などを準備し、それらを参照しながら、アドレス設定器を用いて施工現場で設定することにより行われる。
【0004】
具体的には、リストや設備図面などを参照して、その設置場所に設置する端末器と同じ種別の端末器を選別してアドレス設定器に接続し、リストや設備図面などに指定されたアドレスを作業者が操作部のテンキーを使用して入力し設定していた。そのため、作業者への負荷が大きくアドレス設定に時間がかかるとともに、人為的な入力ミスが発生するおそれがあるという課題があった。
なお、ここで、端末器の種別とは、火災感知器であれば煙感知器、熱式感知器等の機種の区分であり、制御端末であれば警報用音響装置、防排煙ダンパー、防火戸閉鎖装置等の機種の区分である。
【0005】
そこで、QRコードを利用して防災機器にアドレスを設定できるようにして、作業負荷を小さくするとともに、人為的な入力ミスを低減するようにした発明が提案されている(特許文献2)。
また、端末器によりアドレスを設定する都度、当該アドレスが設定済みアドレス記憶部や端末器データ記憶部の中に有るかチェックすることやアドレスが符合する端末の種別と一致するかチェックする手段を設けるようにした発明も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-171687号公報
【特許文献2】特開2007-323379号公報
【特許文献3】特開2010-44598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載されているアドレス設定器によれば、端末器に設定したアドレスや種別をチェックする手段を備えるため、人為的な入力ミスによる誤設定をなくすことができるという利点があるものの、アドレスの設定は手作業であるため作業者への負担が大きいという課題がある。
一方、特許文献2に記載されている防災機器へのアドレス設定方法によれば、作業負荷を小さくするとともに人為的な入力ミスを低減できるという利点があるものの、端末器としての防災機器に予めICタグを実装しておく必要があるため、コストアップを招くという課題がある。なお、特許文献2に記載されている発明との差異については、実施形態の欄で詳しく説明する。
【0008】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、感知器などの端末器を備えた監視システムにおいて、人為的な入力ミスを低減することができる端末器へのアドレス設定器を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、汎用性を高めたとしても端末器の取付け施工にかかる工数を削減することができる端末器へのアドレス設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明は、
通信アドレスを書込み可能な記憶手段を備え監視システムの所定エリアもしくは対象設備に分散設置される複数の端末器にそれぞれ通信アドレスを設定するためのアドレス設定器において、
前記監視システムの所定エリアもしくは対象設備に設置される複数の端末器の配置を示す設備図面に表記されている少なくとも通信アドレスを含む2次元コードを読取り可能なコード読取り手段と、
前記コード読取り手段により読み取られた2次元コードをバイナリコードに変換するコード変換手段と、
前記コード変換手段により変換されたバイナリコードより通信アドレスを抽出する通信アドレス抽出手段と、
前記通信アドレス抽出手段により抽出された通信アドレスを信号として前記端末器へ送出可能なデータ送出手段と、を備えるようにしたものである。
【0010】
上記手段によれば、設備図面に表記されている2次元コードを読み取って端末器(火災感知器)の記憶手段(メモリ)に書き込むだけで、容易に通信アドレスを端末器に設定することができ、アドレス設定に要する作業負荷を小さくするとともに、人為的な入力ミスによる通信アドレスの誤設定を低減することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、上記アドレス設定器は表示部を備え前記コード変換手段により変換されたバイナリコードに基づく情報を前記表示部に表示する機能を有するようにする。
かかる構成によれば、端末器へ通信アドレスを設定する際に、設定しようとする通信アドレスなどの情報を表示部に表示することができるため、読み込むべき2次元コードを取り違えることによって生じるアドレスの設定ミスを防止することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記データ送出手段は、
前記端末器の端子が接続可能な接続端子部と、前記通信アドレス抽出手段により抽出された通信アドレスを信号に変換する通信処理手段と、を備えるようにする。
かかる構成によれば、アドレス設定器に端末器の端子が接続可能な接続端子部が設けられているため、端末器に対して通信アドレスを確実に設定することができる。
【0013】
本出願に係る他の発明は、上記のような構成を有するアドレス設定器を用いて、通信アドレスを書込み可能な記憶手段を備え監視システムの所定エリアもしくは対象設備に分散設置される複数の端末器に通信アドレスをそれぞれ設定するアドレス設定方法において、
前記監視システムの所定エリアもしくは対象設備に設置される複数の端末器に設定するためのそれぞれ異なる通信アドレスを割り当てる第1ステップと、
少なくとも前記通信アドレスを含む各端末器の情報を2次元コードに変換する第2ステップと、
生成された前記2次元コードを前記監視システムの所定エリアもしくは対象設備に設置される複数の端末器の配置を示す設備図面に表記する第3ステップと、
前記設備図面に表記されている前記2次元コードを前記アドレス設定器により読み取る第4ステップと、
前記アドレス設定器により読み取った前記2次元コードを変換して前記通信アドレスを抽出し、対応する前記端末器へ送出して設定する第5ステップと、
を含むようにしたものである。
【0014】
上記方法によれば、端末器にICタグなどの余分な部品を設けることなく通信アドレスを設定することができるため、端末器の汎用性を高めることができるとともに、アドレス設定および取付け施工にかかる工数を削減することができる。
【0015】
また、望ましくは、 通信アドレスが設定された前記複数の端末器にそれぞれどの通信アドレスを設定したかを示す情報を付記する第6ステップと、
前記設備図面および各端末器に付記された前記情報を参照して前記複数の端末器を所定位置にそれぞれ取り付ける第7ステップと、
前記複数の端末器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の端末器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得する第8ステップと、をさらに含むようにする。
これにより、取得した情報を端末器の配置を示すフロア図上に表示することができるため、表示部に表示されたフロア図とPCが作成した設備図面とを比較することによって、通信アドレスや位置情報が各端末器に正しく設定されているか容易に確認することができる。
【0016】
あるいは、前記設備図面を参照しながら端末器を取り付ける位置にて、前記第4ステップと前記第5ステップを実行した後、
前記通信アドレスが設定された前記端末器を所定位置に順次取り付けるステップと、 前記複数の端末器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の端末器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得するステップを順に実行するようにする。
これにより、通信アドレスを設定した端末器にどのような通信アドレスを設定したメモを付記しておく必要がないとともに、端末器と設備図面との照合も不要なため、アドレス設定および取付けに要する作業負荷を小さくするとともに作業に要する時間を短縮することができる。
【0017】
あるいは、第1の作業者が、前記設備図面を参照しながら端末器を取り付ける位置にて、前記第4ステップと前記第5ステップを実行して、当該端末器を取付け位置に置いた後、
第2の作業者が、前記取付け位置に置かれた前記端末器を取付け面に取り付けるステップを実行し、
前記複数の端末器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の端末器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得するステップを実行するようにする。
これにより、施工を複数の作業員が分担して実施することができるため、作業可能な時間内での効率的なアドレス設定および取付けが可能となる。
【0018】
さらに、望ましくは、前記受信機は、ネットワークを介して前記第8ステップにおいて取得した前記通信アドレスを含む情報を他のデータ処理装置へ送信する機能を備えており、
前記第8ステップにおいて取得した前記通信アドレスを含む情報を受信した前記データ処理装置は、表示部に表示する前記設備図面の対応する端末器の近傍に、受信した前記通信アドレスを表記するようにする。
あるいは、前記受信機は、表示部および該表示部に端末器の配置を示す図面を表示する機能を備えており、
前記第8ステップにおいて取得した前記通信アドレスを含む情報を、前記表示部に表示されている前記図面上の対応する端末器の近傍に表示するようにしても良い。
上記のような方法によれば、受信機が取得した情報を、端末器の配置を示す設備図面またはフロア図上に表示することができるため、表示部に表示された設備図面またはフロア図とPCが作成した設備図面とを比較することによって、通信アドレスや位置情報が各端末器に正しく設定されているか容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るアドレス設定器によれば、感知器などの端末器を備えた監視システムにおいて、端末器へ通信アドレスを設定する際における作業負荷を小さくするとともに、人為的な入力ミスを低減することができる。また、本発明に係るアドレス設定方法によれば、端末器の汎用性を高めることができるとともに施工にかかる工数を削減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るアドレス設定器を使用して火災感知システムを構成する端末器としての火災感知器にアドレスを設定するシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係るアドレス設定器の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図3】アドレス設定器によりアドレスの設定を行う火災感知器等の端末器が設置されているフロアのレイアウトを示す設備図面(フロア図)の一例を示す図である。
【
図4】フロア図上の端末器にQRコードが付記された設備図面の一例を示す図である。
【
図5】実施形態のアドレス設定器を用いた通信アドレスの設定および端末器の取付け施工の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態のアドレス設定器を用いた通信アドレスの設定および端末器の取付け施工の手順の第2の例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態のアドレス設定器を用いた通信アドレスの設定および端末器の取付け施工の手順の第3の例を示すフローチャートである。
【
図8】先行発明におけるアドレスの設定および端末器の取付け施工の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るアドレス設定器およびそれを用いたアドレス設定方法の実施形態について説明する。
図1には、本発明に係るアドレス設定器を使用して火災感知システムを構成する端末器に通信アドレスを設定するためのシステムの概略構成を示されている。
【0022】
本実施形態のアドレス設定システムは、
図1に示すように、建物内部の所定エリア内の複数の箇所に設置されている火災感知器10と、火災感知器10からの火災検出信号を受信可能な火災受信機11、火災感知器10に対して通信アドレスの設定を行うアドレス設定器12、ビルのフロアなどのエリア内での火災感知器10の配置を示す設備図面に基づいてQRコードのような2次元コードを生成するパーソナルコンピュータなどのデータ処理装置(PC)13、上記設備図面等を記憶する記憶装置14などから構成されている。また、火災受信機11は、ゲートウェイ(中継器)17を介してインターネット等の通信ネットワーク16に接続され、PC13は通信ネットワーク16を介して火災受信機11との間でデータ通信可能に構成されている。
【0023】
火災感知器10は、例えば、熱、煙、炎、有害ガスなどの異常現象の発生を検出すると、火災検出信号を感知器回線15を介して火災受信機11へ送信する機能を備える。本実施形態における火災感知器10は、火災検出信号に自己の通信アドレスを付加するタイプの感知器であり、通信アドレス等を記憶するEEPROMのような不揮発性メモリを内蔵する。火災受信機11は、火災感知器10との間で通信を行う機能や、火災感知器10から火災検出信号を受信した場合に表示部DSPに火災報知表示を行うとともに地区ベルの鳴動や防排煙装置の作動などの連動制御を行う機能を有する。
なお、PC13はノート型やタブレット型の情報処理端末であっても良い。また、記憶装置14はサーバによって構成されていても良い。
【0024】
図2には、アドレス設定器12の構成例が示されている。
図2に示すように、アドレス設定器12は、QRコードを画像として撮影してコードを読取り可能なカメラ21、火災感知器等の設定対象の端末器と通信を行うために端末器が接続可能なソケットもしくはコネクタなどの接続端子部22、CPU(中央処理ユニット)などからなるデータ処理部23、アプリケーション・プログラムなどを記憶した不揮発性メモリ、作業用のRAM(Random Read Memory)などからなる記憶部24、テンキーやコマンドキーなどからなる入力操作部25および液晶表示パネルなどからなり設定する通信アドレスや結果を表示する表示部26、電源電圧を供給する電池27などを備えている。入力操作部25および表示部26はタッチパネルディスプレイで一体に構成しても良い。
【0025】
上記データ処理部23は、カメラ21により撮影したQRコード画像をバイナリコードに変換するコード変換部31、変換されたコードから火災感知器10の通信アドレスや配設位置(棟、階、フロア内XY座標)などの情報を抽出する情報抽出部32、抽出された情報から端末器に設定する情報を生成する設定情報生成部33、生成された設定情報を信号として接続端子部22を介して火災感知器10へ送信する送信処理部34などを備えている。
図2のアドレス設定器12は、入力操作部25に設けられている設定を指令するコマンドキーが操作されると、カメラ21により読み込んだQRコードをコード変換部31で変換して通信アドレスおよび位置情報を抽出し、接続端子部22に接続されている火災感知器10内の不揮発性メモリへそれらの情報を書き込むことで設定を行う。
【0026】
図3は、アドレス設定器によりアドレス設定を行う火災感知器等の端末器が設置されているフロアにおける端末器の配置の一例を示す設備図面である。
図3において、符号10A,10B,10C……が付されているのが端末器であり、各ブロック内に記されている「D」は端末器の種別(火災感知器)を表す符号、「24h」,「25h」,「26h」……は各火災感知器に付与された通信アドレスである。
【0027】
本実施形態においては、PC13が記憶装置14から
図3の設備図面のデータを読み込んで、設備図面に記載されている各端末器の種別、通信アドレス、設置位置(棟、階、フロア内XY座標)などの情報を抜き出してQRコードを生成する機能と、生成したQRコードを端末器の位置情報に基づいて
図4に示すように設備図面の対応する端末器のブロックの近傍に表記する機能を備えている。
【0028】
なお、図面に記載されている情報からQRコードを生成したり、生成したQRコードを図面上の所定位置に表記したりする機能は、そのような機能を有するツール(CADソフト)が提供されているので、そのようなCADソフトを入手してPC13にインストールすることで容易に実現することができる。かかるCADソフトに関する発明は、特開2006-79290号公報に記載されている。また、PC13がQRコードを追記した
図4に示す設備図面のデータは記憶装置14に記憶される。
【0029】
次に、上記実施形態のアドレス設定器12を用いてビル等に設置される火災感知システムを構成する火災感知器10(以下、端末器と記す)に通信アドレスを設定する施工手順の例について説明する。なお、施工手順には3パターンのやり方が考えられるので、以下、
図5~
図7に示すフローチャートを用いて順番に説明する。なお、いずれの手順による施工も、営業店での作業と現場での作業とから構成される。
【0030】
第1の施工パターンでは、
図5に示すように、先ず、営業店で、PC13によって
図3に示す設備図面を作成もしくは記憶装置から読み出し、各端末器(10)に設定するための通信アドレスと位置情報(XY座標)を付与する(ステップS1)。続いて、作成した設備図面から端末器の情報(種別、通信アドレス、顧客データに必要な情報等)と棟および階の情報を抜き出してQRコードを生成し(ステップS2)、生成したQRコードを端末器の位置情報を元に
図3に示す設備図面上に配置して
図4に示す設備図面を作成する(ステップS3)。
次に、設備図面上のQRコードをアドレス設定器12のカメラ21を用いて読み込み、種別、通信アドレスおよび位置情報を抽出して端末器(10)へ送信することで、設定を行う(ステップS4)。続いて、どの通信アドレスを設定したかを端末器にメモするとともに、必要に応じてステップS3で作成した設備図面をプリントアウトする(ステップS5)。
【0031】
その後、作業者は設置する端末器とプリントアウトした設備図面または設備図面データを格納したタブレット端末を携えて端末器(10)を設置するフロアへ移動して、設備図面と端末器(10)のメモ書きを照合して所定の位置に取り付ける(ステップS6)。そして、全ての端末器の取付けが終了すると、火災受信機11が自己の記憶装置に別途格納された顧客データ(端末器の通信アドレスリスト等)を用いて設置済みの端末器を呼び出して端末器の通信アドレスを含む設定情報を取得するなどの処理を行う(ステップS7)。
なお、上記施工処理が完了すると、火災受信機11は、フロア図面の表示要求に応じて、取得した各端末器に設定された通信アドレスおよび位置情報を、表示部DSPに表示したフロア図上に自動配置して表示することもできる。従って、表示された図面と持参した設備図面と比較することで、設定ミスがないか容易に判断することができる。
【0032】
また、火災受信機11の記憶装置に顧客データを別途格納することなく、例えばポーリング等の機能により感知器回線を介して各端末器(10)に順番に問い合わせを行うことで、端末器に設定されている通信アドレスを含む情報を取得するようにしても良い。これにより、顧客データを別途作成して受信機11に格納する作業が不要になり工数の削減が可能になるとともに、各端末器から取得した情報に基づいて顧客データ(端末器の通信アドレスや位置情報のリスト等)を自動作成することも可能になる。なお、ポーリングによる端末器からのアドレスの吸上げは、ロータリスイッチやディップスイッチのような設定手段を使用してアドレスを設定するタイプの感知器を使用した従来のシステムで行われている方法と同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0033】
以上説明したように、上記施工パターンによれば、設備図面に表記されたQRコードをアドレス設定器12で読み取って送信することで簡単に各端末器に通信アドレスを設定できるため、端末器に設けたロータリスイッチやディップスイッチを操作したり、設定する通信アドレスをテンキーよりいちいち入力したりする手間を省くことができるとともに、入力ミスによるアドレスの誤設定を防止することができるという利点がある。
また、アドレス設定器12は表示部26を備えているため、読み取ったQRコードから変換した通信アドレスを含む情報を表示させることができるため、設備図面に表記されている通信アドレスと比較することで誤りがないか容易に確認することができる。
【0034】
また、火災受信機11の表示部DSPに表示されたフロア図とPC13が作成した
図4に示す設備図面とを比較することによって、通信アドレスや位置情報が各端末器(10)に正しく設定されているか容易に確認することができる。
なお、火災受信機11が、端末器が配置されたフロア図を表示部DSPに表示する機能を有していない場合には、火災受信機11が取得した各端末器の通信アドレスや位置情報を、ネットワーク16を介してPC13へ送信し、PC13が表示部に表示するようにしても良い。これにより、PC13において、設備図面と火災受信機11が取得した情報に基づく図面(フロア図)との差分を確認することができる。
【0035】
第2の施工パターンは、
図6に示すように、ステップS1~S3は
図5の第1の施工パターンとほぼ同じであり、営業店で、PC13によって
図3に示す設備図面を作成し、各端末器(10)に通信アドレスと位置情報を付与する(ステップS1)。続いて、作成した設備図面から端末器の情報と棟および階の情報を抜き出してQRコードを生成し(ステップS2)、生成したQRコードを端末器の位置情報を元に
図3に示す設備図面に配置して
図4に示す設備図面を作成する(ステップS3)。
【0036】
その後、作業者は設置する端末器とプリントアウトした設備図面またはタブレット端末を携えて端末器(10)を設置するフロア(施工位置)へ移動して、施工現場で設備図面上のQRコードをアドレス設定器12のカメラ21を用いて読み込み、通信アドレスおよび位置情報を抽出して端末器(10)に設定する(ステップS4’)。続いて、通信アドレスを設定した端末器を所定の位置に取り付け(ステップS6’)、次の設置場所へ移動し、上記と同様にして端末器を設置する。そして、全ての端末器の取付けが終了すると、火災受信機11において感知器回線(15)を介して設置済みの端末器を呼び出して通信アドレスや端末器の位置情報を取得する(ステップS7)。
【0037】
上記施工パターンによれば、施工現場にて任意の端末器を選択して取り付け位置に応じて通信アドレスを設定することができるので、端末器へのメモをつける必要がなくなるとともに、端末器と設備図面との照合の手間を省くことができるという利点がある。
また、上記施工手順ですべての端末器の取り付けが完了すると、火災受信機11が取得した各端末器に設定された通信アドレスおよび位置情報を表示部DSPに表示したフロア図上に自動配置して表示、あるいは取得したデータをPC13へ送信してPCの表示部に表示させることができる。
【0038】
第3の施工パターンは、通信アドレスの設定と端末器の取付け施工を2人の作業者が分担して実施するパターンである。この第3の施工パターンは、
図7に示すように、ステップS1~S3は
図6の第2のパターンと同じであり、営業店で、PC13によって
図3に示す設備図面を作成し、各端末器(10)に設定するための通信アドレスと位置情報を付与する(ステップS1)。続いて、作成した設備図面から端末器の情報と棟および階の情報を抜き出してQRコードを生成し(ステップS2)、生成したQRコードを端末器の位置情報を元に
図3に示す設備図面に配置して
図4に示す設備図面を作成する(ステップS3)。
【0039】
その後、設置する端末器とプリントアウトした設備図面またはタブレット端末を携えて端末器(10)を設置するフロアへ移動して、アドレス設定担当作業者が施工現場で設備図面上のQRコードをアドレス設定器12のカメラ21を用いて読み込み、通信アドレスおよび位置情報を抽出して端末器(10)に設定して取付け位置に置く(ステップS4”)。続いて、取付け施工担当作業者が、取付け位置に置かれている端末器を取付け面に取り付ける(ステップS6”)。そして、全ての端末器の取付けが終了すると、火災受信機11において感知器回線(15)を介して設置済の端末器を呼び出して通信アドレスや端末器の位置情報を取得する(ステップS7)。
【0040】
上記施工パターンによれば、アドレス設定担当作業者と取付け施工担当作業者が作業を分担して行うため、作業可能な時間が短い場合においても、施工現場にて与えられた時間内に効率よく端末器へ通信アドレスを設定し指定の位置に取り付けることができるという利点がある。
また、上記施工手順ですべての端末器の取り付けが完了すると、火災受信機11は、フロア図面の表示要求があると、取得した各端末器に設定された通信アドレスおよび位置情報を、表示部DSPに表示したフロア図上に自動配置して表示あるいはPC13へ送信してPCの表示部に表示させることができる。
【0041】
次に、特許文献2に記載されている発明における防災機器の取り付けおよびアドレス設定の施工手順と本発明の前記第1パターンの施工手順との差異について説明する。
図8には、特許文献2に記載されている先行発明における施工手順が示されている。
先行発明における施工手順は、先ずPCによって
図3に示す設備図面を準備する(ステップS11)。続いて、作成した設備図面に従って、ICタグを付けた防災機器(感知器)を所定の位置に取り付ける(ステップS12)。その後、読み取り器を用いて防災機器のICタグから識別情報(番号)を読み取り、コード変換器によってQRコードを生成する(ステップS13)。そして、生成したQRコードを印字出力してステップS11で作成した設備図面に貼付する(ステップS14)。
【0042】
続いて、設備図面に貼付されているQRコードをコード読み取り器により読み取り、元のICタグ番号に変換してPCやCADに取り込み、PC上でICタグ番号を設備図面の対応位置に書き込む(ステップS15)。次に、PCを用いてICタグ番号とアドレス番号とを相互に関連付けて構成された番号設定用テーブルを作成し、記録媒体を介して受信機に入力し記憶させる(ステップS16)。その後、受信機は、番号設定用テーブルを参照してICタグ番号を用いて防災機器と通信し、防災機器に対してICタグ番号と関連するアドレスを設定する(ステップS17)。
【0043】
上記のように、先行発明においては、QRコードを使用して防災機器(感知器)にアドレスを設定するため、人為的なミスを少なくしてアドレスの誤設定を低減できるという利点があるものの、アドレス設定以外に使用することのないICタグを防災機器に付けておく必要があるため、防災機器のコスト(単価)が高くなるというデメリットがある。また、施工にかかる工数が多いため、取付け施工に要するコストもアップする。
【0044】
これに対し、本発明に係る施工手順によれば、QRコードを使用するとともに感知器がもともと備えているEEPROMのようなメモリ機能を利用してアドレスを設定するため、人為的なミスを少なくしてアドレスの誤設定を低減できるとともに、ICタグが不要であるため感知器のコストアップを招くことがない上、メモリ機能を有する感知器であれば適用することができるため、汎用性を高めることができる。また、施工にかかる工数が少ないため、取付け施工に要するコストの上昇を抑制することができるという利点がある。
従って、本発明は先行発明に対して、感知器に機能を追加することなく作業負荷と人為的なミスを低減可能であって、しかも汎用性を高めるとともに、施工にかかる工数を削減することができるという利点がある。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、営業店で感知器に対して通信アドレスを設定してから施工現場へ運んで取り付けるようにしているが、既に取り付け位置に設置されている感知器にあとから通信アドレスを設定することも可能である。また、上記実施形態においては、アドレス設定器20に端末器の端子を接続可能なソケット(22)を設けて端子同士を接触させて電気信号としてデータを送信するように構成しているが、例えばBluetooth(登録商標)通信や赤外線通信、可視光通信など無線通信でデータを送信してアドレスを設定するように構成しても良い。また、そのような通信手段を感知器が有している場合においては、感知器とPC間で通信を行い、設定された情報を収集してPC上で表示させることや、感知器への制御を行うようにしてもよい。このようにすることで、受信機が起動していなくとも、どの感知器が設定済みであるか等の情報表示や感知器が正常に機能するかの確認等を行うことができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、端末器の例として火災感知器を挙げているが、アドレスを設定する端末器は火災感知器に限定されず、ガス感知器、人感センサのような検知器の他、警報用音響装置、防排煙ダンパー、防火戸閉鎖装置等の機能(種別)の異なる端末器であっても良いし、火災感知器は煙感知器、熱感知器等、検知方式の異なるものを異なる種別の端末器として扱っても良い。
さらに、上記実施形態においては、コード読取り手段としてのカメラ21をアドレス設定器12に設けているが、カメラを設ける代わりに、スマートフォンなどの携帯機器が備えるカメラ機能を用いてQRコードを撮影し、読み込んだQRコードをアドレス設定器12へ送信するように構成しても良い。なお、QRコードの代わりにバーコードを使用するようにしても良い。
なお、本発明はEEPROMのような不揮発性メモリを内蔵する端末器であれば対応可能であるため、ロータリスイッチ等によってアドレスが設定される端末器であっても、EEPROMの読み書きができる端末器であれば適用可能である。
また、本発明は、火災検知システムその他の監視システムのみならず、端末器を備えた設備に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 端末器(火災感知器)
11 火災受信機
12 アドレス設定器
13 PC(パソコン)
14 記憶装置
15 感知器回線
16 ネットワーク(インターネット)
21 カメラ
22 接続端子部(ソケット)
23 データ処理部
24 記憶部
25 入力操作部
26 表示部