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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134832
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B62D25/20 G
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034259
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一真
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 美規夫
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203AA33
3D203AA34
3D203BB04
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB17
3D203CA25
3D203CA45
3D203CB19
3D203DB05
3D203DB06
3D203DB10
(57)【要約】
【課題】側面衝突時におけるバッテリパックの保護を図る。
【解決手段】衝突対象物60がサイドシル16に衝突すると、サイドメンバ14とサイドシル16との間で車幅方向に押し潰されることで、第3クロスメンバ22が変形すると共に、ブラケット34が変形し、また、2.5クロスメンバ26が上方に湾曲するように変形し、2.5クロスメンバ26の上方への変形に追従してブラケット34も上方に変位する。側面衝突時、2.5クロスメンバ26およびブラケット34は上方に変位するように変形し、車載機器32をバッテリパック30よりも上方の箇所に変位させる。車幅方向外側に移動するバッテリパック30よりも車載機器32が上方の箇所に位置するので、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上で有利となる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向外側で車両前後方向に延在するサイドメンバと、
前記サイドメンバの車幅方向外側で車両前後方向に延在するサイドシルと、
前記サイドメンバよりも車幅方向内側に設けられたバッテリパックと、
車幅方向に延在しフロアパネルの上面に設けられ、端部を前記サイドメンバと前記サイドシル間に連結し挟まれて接合されるクロスメンバと、
前記バッテリパックの車幅方向外側に配置された車載機器と、
を備える車両構造であって、
前記車載機器を保持すると共に前記クロスメンバに取り付けられたブラケットを設け、
側面衝突時に、前記クロスメンバは前記サイドシル及び前記サイドメンバ間で上方に変形し、前記車載機器を前記バッテリパックよりも上方の箇所に変位させる、
ことを特徴とする車両構造。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記車載機器を保持するブラケット本体と、前記ブラケット本体から突設され前記クロスメンバに取り付けられる取り付け片とを備え、
前記取り付け片により前記ブラケットが前記クロスメンバに取り付けられた状態で前記ブラケット本体は前記クロスメンバの上方に離れた箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項1記載の車両構造。
【請求項3】
前記ブラケット本体は、孔部を有し、
前記取り付け片は前記孔部の車幅方向内側から前記クロスメンバに向かって下方に延びて形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の車両構造。
【請求項4】
前記取り付け片は前記ブラケット本体から突設された突出片と前記クロスメンバに取り付けられる第1取り付け片とを含んで構成され、
前記ブラケット本体と前記突出片との間に第1屈曲部が介在し、
前記突出片と前記第1取り付け片との間に第2屈曲部が介在している、
ことを特徴とする請求項3記載の車両構造。
【請求項5】
前記ブラケットには、前記ブラケット本体よりも上方に前記車載機器を配置し前記ブラケットと前記車載機器を締結する配置部が形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両構造。
【請求項6】
前記クロスメンバの車両前方および車両後方に、前クロスメンバ及び後クロスメンバが形成され、
前記ブラケットは、前クロスメンバ及び後クロスメンバの上面部またはそれらクロスメンバが互いに対向する縦壁部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックと車載機器とを搭載した車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリパック(燃料電池スタック)をフロアパネルの下方に搭載すると共に、バッテリパックの車幅方向に隣接して車載機器(補機類)を配置した車両が提供されている(特許文献1参照)。
この車両では、車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延在する一対のサイドフレームの車幅方向内側に車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延在する一対のセンターフレームが設けられている。
そして、一対のセンターフレームの間の空間にバッテリパックを配置すると共に、センターフレームとその車幅方向外側に位置するサイドフレームとの間の2箇所の空間にそれぞれ車載機器を配置している。
このように一対のセンターフレームをバッテリパックと車載機器との間に配置することで、車両の側面衝突時に、車載機器とバッテリパックとが直接ぶつかることを回避しバッテリパックを保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4637666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、側面衝突時、バッテリパックが慣性により車幅方向外側に移動することで、バッテリパックがセンターフレームを変形させ、これによりバッテリパックがセンターフレームを介して車載機器に干渉するおそれがあり、バッテリパックの保護を図る上で改善の余地がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、側面衝突時におけるバッテリパックの保護を図る上で有利な車両構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、車両の車幅方向外側で車両前後方向に延在するサイドメンバと、前記サイドメンバの車幅方向外側で車両前後方向に延在するサイドシルと、前記サイドメンバよりも車幅方向内側に設けられたバッテリパックと、車幅方向に延在しフロアパネルの上面に設けられ、端部を前記サイドメンバと前記サイドシル間に連結し挟まれて接合されるクロスメンバと、前記バッテリパックの車幅方向外側に配置された車載機器と、を備える車両構造であって、前記車載機器を保持すると共に前記クロスメンバに取り付けられたブラケットを設け、側面衝突時に、前記クロスメンバは前記サイドシル及び前記サイドメンバ間で上方に変形し、前記車載機器を前記バッテリパックよりも上方の箇所に変位させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、側面衝突時、サイドメンバとサイドシル間に挟まれて接合されたクロスメンバが衝突荷重によって上方に湾曲するように変形し、車載機器をバッテリパックよりも上方の箇所に変位させる。車幅方向外側に移動するバッテリパックよりも車載機器が上方の箇所に位置するので、車載機器がバッテリパックに干渉することを抑制し、バッテリパックの保護を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の車両の平面図である。
図2】車載機器の取り付け箇所を示す斜視図である。
図3】車載機器が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図4】車載機器およびブラケットの分解斜視図である。
図5】(A)はブラケットの平面図、(B)は車幅方向外側から見たブラケットの側面図、(C)は車両前方から見たブラケットの正面図である。
図6】(A)はブラケットに車載機器が取り付けられた状態を示す平面図、(B)は(A)の側面図、(C)は(A)の正面図である。
図7】車載機器が車体に取り付けられた状態を車両前後方向と直交する断面で見た断面図である。
図8】(A)、(B)、(C)は車両の側面衝突時に車体が変形する過程を示す説明図である。
図9】(D)、(E)は、図8に続いて車両の側面衝突時に車体が変形する過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
以下の図面において符号UPは車両上方を示し、符号FRは車両前方を示し、符号INは車幅方向内側を示し、符号OUTは車幅方向外側を示す。
本実施の形態では、車両がモータのみを駆動源とする電気自動車である場合について説明するが、本発明は、電気自動車に限定されるものではなく、床下にバッテリパックが配置される車両であれば広く適用可能であり、例えば、ハイブリッド車、あるいは、プラグインハイブリッド車などの電動車に広く適用可能である。
【0009】
図1に示すように、車両10は、フロアパネル12と、サイドメンバ14と、サイドシル16と、複数のクロスメンバ18、20、22、24と、2.5クロスメンバ(特許請求の範囲のクロスメンバ)26と、バッテリ収容部28と、バッテリパック30と、車載機器32と、ブラケット34とを含んで構成されている。
【0010】
図1に示すように、フロアパネル12は車室の床面を構成するものであり、車室の下部で車両前後方向および車幅方向に延在している。
サイドメンバ14は、車幅方向に間隔をおいて一対設けられ、車両前後方向に延在している。言い換えると、サイドメンバ14は車両10の車幅方向外側で車両前後方向に延在している。
図7に示すように、本実施の形態では、サイドメンバ14は、上側サイドメンバ36と、下側サイドメンバ38と、サイドメンバ用補強部材40とを含んで構成され、閉断面形状を呈している。
【0011】
上側サイドメンバ36は断面が下方に開放されたハット形状を呈し、車両前後方向に延在する上面部3602と、上面部3602の幅方向両側から垂設された一対の側面部3604と、一対の側面部3604の先端から互いに離間する方向に突出した一対のフランジ3606とを備え、一対のフランジ3606がフロアパネル12の上面に重ね合わせて接合されている。
【0012】
下側サイドメンバ38は断面が上方に開放されたハット形状を呈し、車両前後方向に延在する下面部3802と、下面部3802の幅方向両側から起立された一対の側面部3804と、一対の側面部3804の先端から互いに離間する方向に突出した一対のフランジ3806とを備え、上側サイドメンバ36のフランジ3806と対応するフロアパネル12の下面の箇所に一対のフランジ3806が接合されている。
【0013】
サイドメンバ用補強部材40は、下側サイドメンバ38の内部で車両前後方向に延在する本体板部4002と、本体板部4002の両側から起立する一対の側面部4004とを備え、本体板部4002がフロアパネル12と下面部3802との双方に対向しそれら双方と間隔をおいた箇所で一対の側面部4004が下側サイドメンバ38の一対の側面部3804の内面に接合されている。
【0014】
図1に示すように、サイドシル16は、車幅方向に間隔をおいて一対設けられ、サイドメンバ14の車幅方向外側で車両前後方向に延在している。
図7に示すように、本実施の形態では、サイドシル16は、内側サイドシル42と、外側サイドシル44とを備え、閉断面構造を呈している。
【0015】
内側サイドシル42は、車幅方向外側に開放された断面ハット形状を呈し、車両前後方向に延在する内面部4202と、内面部4202の上下方向の両側から車幅方向外側に突出する上面部4204および下面部4206と、上面部4204および下面部4206の先端からそれぞれ互いに離間する方向に突出する一対のフランジ4208とを備えている。
内側サイドシル42の内面部4202には、フロアパネル12の車幅方向外側の端部の起立片1202が重ね合わされて接合されている。
【0016】
外側サイドシル44は、車幅方向内側に開放された断面ハット形状を呈し、車両前後方向に延在する外面部4402と、外面部4402の上下方向の両側から車幅方向外側に突出する上面部4404および下面部4406と、上面部4404および下面部4406の先端からそれぞれ互いに離間する方向に突出する一対のフランジ4408とを備えている。
内側サイドシル42の一対のフランジ4208と外側サイドシル44の一対のフランジ4408とが重ね合わされて接合されている。
【0017】
図1に示すように、複数のクロスメンバは、第1クロスメンバ18、第2クロスメンバ20、第3クロスメンバ22、第4クロスメンバ24を含んで構成されている。
第1クロスメンバ18は、フロアパネル12の車両前後方向における前端が位置する箇所で車幅方向に延在し、その両端近傍が一対のサイドメンバ14に接合されると共に、両端が一対のサイドシル16に接合されている。
第2、第3、第4クロスメンバ20、22、24は、第1クロスメンバ18の車両後方の箇所で相互に間隔をおいて車幅方向に延在し、その両端近傍が一対のサイドメンバ14に接合されると共に、両端が一対のサイドシル16に接合されている。
第1、第2、第3、第4クロスメンバ18、20、22、24は、車幅方向に延在する上面部と、上面部の車両前後方向の端部から垂設され車両前方および車両後方を向いた一対の側面部と、一対の側面部の下端から互いに離間する車両前後方向に突出する一対のフランジとを備えている。
【0018】
図1図5(B)、(C)、図7に示すように、2.5クロスメンバ26は、第2クロスメンバ20と第3クロスメンバ22の間で、後述するバッテリ収容部28の車幅方向の一方の外側に位置するフロアパネル12の上面上で、サイドメンバ14とサイドシル16の間で車幅方向に延在している。
言い換えると、2.5クロスメンバ26は、この2.5クロスメンバ26の車両前方および車両後方に形成された前クロスメンバ20及び後クロスメンバ22の間で車幅方向に延在している。
図5(B)に示すように、2.5クロスメンバ26の車両前後方向で切断した断面は下方に開放されたハット形状を呈している。
図5(B)、(C)に示すように、2.5クロスメンバ26は、車幅方向に延在する上面部2602と、上面部2602の車両前後両側から垂設された一対の側面部2604と、一対の側面部2604の先端から互いに離間する車両前後方向に突出する一対のフランジ2606と、図2図7に示すように、上面部2602のうち車幅方向内側の端部から車幅方向内側に突出する内側突出片部2608と、図7に示すように、上面部2602のうち車幅方向外側の端部から上方に起立する外側起立片部2610とを備えている。
図5(B)に示すように、一対のフランジ2606は、フロアパネル12の上面に重ね合わされて接合されている。
したがって、2.5クロスメンバ26は、フロアパネル12に接合されることで閉断面形状を呈している。
図5(C)、図7に示すように、内側突出片部2608は、上側サイドメンバ36の上面部3602に上方から重ね合わされて接合されている。
図7に示すように、外側起立片部2610は、内側サイドシル42の内面部4202に車幅方向内側から重ね合わされて接合されている。
したがって、2.5クロスメンバ26は、車幅方向に延在しフロアパネル12の上面に設けられ、その両端部がサイドメンバ14とサイドシル16間に連結され挟まれて接合されている。
【0019】
また、フロアパネル12を挟んで2.5クロスメンバ26の直下の箇所に、フロアパネル12と間隔をおいて車幅方向に延在する2.5クロスメンバ用補強部材46が設けられ、2.5クロスメンバ26の直下の箇所の剛性が高められている。
すなわち、2.5クロスメンバ用補強部材46は、その車幅方向内側の端部に下方に垂設された取り付け片部4602が設けられ、この取り付け片部4602が下側サイドメンバ38の側面部3804に車幅方向外側から重ね合わされて接合されている。
また、2.5クロスメンバ用補強部材46の車幅方向外側の端部4604は、内側サイドシル42の下面部4406に下方から重ね合わされて接合されている。
【0020】
図1に示すように、バッテリ収容部28は、フロアパネル12の車幅方向中央箇所に配置され、平面視した場合、バッテリ収容部28は、一対のサイドメンバ14の間でかつ第1クロスメンバ18と第4クロスメンバ24の間に配置され、言い換えると、バッテリ収容部28はサイドメンバ14よりも車幅方向内側に設けられている。
図2図7に示すように、バッテリ収容部28は、フロアパネル12の車幅方向中央箇所が上方に膨出することで設けられ、下方に開放状に形成されている。
バッテリ収容部28は、フロアパネル12上で矩形をなす4辺から上方に起立する側壁2802と、それら側壁2802の上端を接続する矩形状の上壁2804とを備えている。
バッテリ収容部28は、互いに対向する一対の側壁2802が車両前後方向で対向し、残りの一対の側壁2802が車幅方向で対向するように設けられている。
【0021】
図7に示すように、バッテリパック30は、平面視ほぼ矩形状のバッテリケース3002と、その内部に収容された複数の電池セルからなる1つ以上の組電池3004とを含んで構成されている。
バッテリケース3002は、バッテリケース3002の四辺をバッテリ収容部28の上壁2804の四辺にそれぞれ平行させてフロアパネル12の下面に不図示のブラケット34を介して取り付けられ、バッテリパック30のほぼ上半部がバッテリ収容部28に収容されている。
したがって、バッテリパック30は、サイドメンバ14よりも車幅方向内側に設けられている。
【0022】
図3図4に示すように、車載機器32は、車載機器本体48と、カバー50を含んで構成され、バッテリパック30の車幅方向外側に配置されている。なお、図3ではカバー50が省略されている。
車載機器本体48は、例えば、カーオーディオのアンプである。
図4図6(A)、(B)、(C)に示すように、車載機器本体48は、ほぼ矩形板状を呈しており、電子部品が実装されたプリント基板を収容する筐体48Aを備えており、筐体48Aはバッテリパック30に比べて外形が小さい。
また、筐体48Aは、バッテリパック30のバッテリケース3002よりも硬い材料(金属材料)で構成されている。
車載機器本体48は、矩形状の上面4802、上面4802の四辺から垂設された4つの側面4804、4つの側面4804の下端を接続する下面4806とを備えている。
車載機器本体48のうち、4つの側面4804のうち1つの側面4804の下面4806寄りの箇所から側面4804の全長に沿って第1フランジ4808が突設されており、第1フランジ4808の両端にそれぞれねじ挿通孔4808Aが形成されている。
また、第1フランジ4808と反対側に位置する側面4804の中間部の下面4806寄りの箇所から第2フランジ4810が突設され、第2フランジ4810にねじ挿通孔4810Aが形成されている。
【0023】
図4に示すように、カバー50は車載機器本体48を保護するものであり、後述するブラケット34に取り付けられる。
カバー50は、ブラケット34に取り付けられた状態で、車載機器本体48の上面4802を覆う矩形状の上板部5002と、上板部5002の四辺から垂設され車載機器本体48の4つの側面4804を覆う4つの側面板部5004とを備え、合成樹脂製である。
4つの側面板部5004のうち、1つの側面板部5004の両端寄りの下部から下方に一対の係合爪5006が突設されている。
また、4つの側面板部5004のうち一対の係合爪5006が設けられた側面板部5004と対向する側面板部5004の両端寄りの下部から下方に一対のピン5008が突設されている。
【0024】
図3に示すように、ブラケット34は、車載機器32を保持するものであり、2.5クロスメンバ26および第3クロスメンバ22に取り付けられ板金製である。
図4図5(A)、(B)、(C)に示すように、ブラケット34は、ブラケット本体52と、突出片54と、第1取り付け片56と、第2取り付け片58とを備えている。
ブラケット本体52は、車載機器本体48の下面4806を保持する箇所であり、下面4806よりも大きな輪郭のほぼ矩形状を呈している。
車載機器本体48の第1フランジ4808、第2フランジ4810の3つのねじ挿通孔4808A、4810Aに対応するブラケット本体52の3箇所には、ブラケット本体52よりも上方に変位した配置部53が形成され、各配置部53には上方に突出する雄ねじ部5202がそれぞれ形成されている。
カバー50の一対のピン5008に対応するブラケット本体52の2箇所には、一対のピン5008が挿通される一対の位置決め孔5204が形成されている。
カバー50の一対の係合爪5006に対応するブラケット本体52の2箇所には、一対の係合爪5006が係脱可能に係合される一対の係合溝5206が形成されている。
【0025】
したがって、図6(A)、(B)、(C)に示すように、車載機器本体48は、その下面4806をブラケット本体52に載置し、第1フランジ4808、第2フランジ4810の3つのねじ挿通孔4808A、4810Aに3つの雄ねじ部5202を挿通し、それら雄ねじ部5202にそれぞれナットNが締結されることでブラケット34に取り付けられる。
したがって、配置部53は、ブラケット本体52よりも上方に車載機器32を配置しブラケット34と車載機器32を締結する箇所となっている。
また、カバー50は、カバー50により車載機器本体48を覆い、一対のピン5008を一対の位置決め孔5204に挿通し、一対の係合爪5006を一対の係合溝5206に係合させることで、ブラケット34に取り付けられる。
【0026】
図4図5(A)に示すように、ブラケット本体52のほぼ中央に四辺をブラケット本体52の四辺と平行させたほぼ矩形状の孔部5210が設けられている。
図5(A)、(C)に示すように、ブラケット34が2.5クロスメンバ26および第3クロスメンバ22に取り付けられた状態で、突出片54は、車幅方向内側に位置する孔部5210の一辺から第1屈曲部55を介して下方に突出し、本実施の形態では、突出片54は、下方に至るにつれて孔部5210の一辺から車幅方向外側に変位する傾斜を有して設けられている。
図4図5(A)、(C)に示すように、第1取り付け片56は、突出片54の下端に第2屈曲部57を介して接続され車幅方向外側に向かってブラケット本体52と平行に延在している。
言い換えると、ブラケット34には、突出片54、第1屈曲部55、第2屈曲部57、第1取り付け片56を含む取り付け片59が設けられている。
この取り付け片59は、孔部5210の車幅方向内側から2.5クロスメンバ26に向かって下方に延びて形成されている。
そして、取り付け片59は、ブラケット本体52から突設された突出片54と、2.5クロスメンバ26に取り付けられる第1取り付け片56とを含んで構成されている。
また、ブラケット本体52と突出片54との間に第1屈曲部55が介在し、突出片54と第1取り付け片56との間に第2屈曲部57が介在している。
なお、第1、第2屈曲部55、57はそれぞれ車両前後方向に延在している。
第1取り付け片56は、ブラケット本体52よりも小さい面積で形成されている。
第1取り付け片56には、1つのねじ挿通孔5602が形成されている。
第2取り付け片58は、ブラケット本体52の車両後側に位置する辺の車幅方向外側寄りの箇所から起立され、第2取り付け片58の車幅方向に間隔をおいた2箇所にねじ挿通孔5802が形成されている。
【0027】
図6(A)、(B)、(C)、図7に示すように、第1取り付け片56を2.5クロスメンバ26の上面部2602に重ね合わせた状態で、第1取り付け片56のねじ挿通孔5602を挿通したねじBが2.5クロスメンバ26の雌ねじ2612(図2参照)に締結されると共に、第2取り付け片58を第3クロスメンバ22の車両前方を向いた縦壁部2204に重ね合わせた状態で、第2取り付け片58の一対のねじ挿通孔5802を挿通したねじBが第3クロスメンバ22の雌ねじ2210(図2参照)に締結される。
なお、図6(B)において、符号2202は第3クロスメンバ22の上面部、2206はフロアパネル12の上面に接合される第3クロスメンバ22のフランジを示す。
これによりブラケット34が2.5クロスメンバ26および第3クロスメンバ22に取り付けられ、図3図7に示すように、車載機器32がブラケット34を介して2.5クロスメンバ26および第3クロスメンバ22に取り付けられる。
図7に示すように、ブラケット34に保持された車載機器32の輪郭の大半はバッテリパック30の上面30Aよりも高い箇所に位置している。
なお、本実施の形態では、2.5クロスメンバ26の車両前後に前クロスメンバ20及び後クロスメンバ22が形成され、ブラケット34が、前クロスメンバ20に対向する後クロスメンバ22の縦壁部2204に取り付けられている場合について説明した。
しかしながら、ブラケット34は、図3に示す後クロスメンバ22の上面部2202に取り付けられていてもよい。
あるいは、ブラケット34は、図3に示す前クロスメンバ20の上面部2002または後クロスメンバ22に対向する縦壁部2004に取り付けられていてもよい。
言い換えると、ブラケット34は、前クロスメンバ20及び後クロスメンバ22の上面部2002、2202またはそれらクロスメンバ20、22が互いに対向する縦壁部2004、2204に取り付けられていてもよい。
【0028】
次に作用効果について説明する。
図8図9は、車両10の側面衝突時に車体が変形する過程を示す説明図である。
図8(A)に示すように、車両10の側面に対して衝突対象物60が接近する。
なお、衝突対象物60は、電柱を模したポールである。
やがて、図8(B)に示すように、衝突対象物60がサイドシル16に衝突すると、その衝突荷重は、サイドシル16から2.5クロスメンバ26と第3クロスメンバ22を介してブラケット34および車載機器32に伝達されると共に、2.5クロスメンバ26と第3クロスメンバ22からサイドメンバ14およびフロアパネル12に伝達される。
そして、サイドメンバ14とサイドシル16との間で車幅方向に押し潰されることで、第3クロスメンバ22が変形すると共に、図8(C)に示すように、ブラケット34が変形し、また、サイドメンバ14とサイドシル16との間で2.5クロスメンバ26が車幅方向に押し潰されることで、2.5クロスメンバ26が上方に湾曲するように変形し、2.5クロスメンバ26の上方への変形に追従してブラケット34も上方に変位する。
2.5クロスメンバ26が上方に湾曲するような変形を生じる理由は、2.5クロスメンバ26の車両前後方向の両側に側面部2604とフランジ2606とが設けられ、2.5クロスメンバ26の上面部2602の強度、剛性が、上面部2602を除く残りの部分の強度、剛性よりも低くなっていることによる。
また、本実施の形態では、2.5クロスメンバ26の直下に2.5クロスメンバ用補強部材46が設けられ、2.5クロスメンバ26の下方の箇所の剛性が高められていることによる。
【0029】
さらに、図9(D)に示すように、衝突対象物60が車両10の車幅方向内側に侵入することで、慣性によりバッテリパック30は衝突対象物60に近接する方向に移動し、やがてバッテリパック30の車幅方向外側の箇所がバッテリ収容部28の側壁2802にぶつかる。
これにより、バッテリパック30から側壁2802を介してフロアパネル12、サイドメンバ14、2.5クロスメンバ26に対して車幅方向外側に向かって応力が作用する。
そのため、図9(E)に示すように、サイドメンバ14とサイドシル16の間で第3クロスメンバ22が車幅方向にさらに押しつぶされ、また、ブラケット34および2.5クロスメンバ26も車幅方向にさらに押しつぶされ、2.5クロスメンバ26がさらに上方に変位するように変形し、2.5クロスメンバ26の変形に追従してブラケット34もさらに上方に変位する。
また、サイドメンバ14とサイドシル16の間のフロアパネル12の箇所も2.5クロスメンバ26の変形に追従して車幅方向に押しつぶされるように変形する。
このように、側面衝突時、2.5クロスメンバ26およびブラケット34並びにその周辺のフロアパネル12の箇所は上方に変位するように変形し、車載機器32をバッテリパック30よりも上方の箇所に変位させる。
したがって、側面衝突時、車幅方向外側に移動するバッテリパック30よりも車載機器32が上方の箇所に位置するので、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上で有利となる。
また、車載機器32を保持するブラケット34は外形が小さいため最小限の設置スペースで足り、ブラケット34を簡単に確実に設置する上で有利となり、また、ブラケット34の部品コスト、取り付けコストのコストダウンを図る上で有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、取り付け片59によりブラケット34が2.5クロスメンバ26に取り付けられた状態でブラケット本体54は2.5クロスメンバ26の上方に離れた箇所に位置している。
したがって、側面衝突時、取り付け片59によって2.5クロスメンバ26の強度、剛性が高められることがなく、2.5クロスメンバ26の上方への変形が円滑になされ、側面衝突時に車載機器32を上方の箇所に変位させる上で有利となり、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上でより有利となる。
【0031】
また、本実施の形態では、取り付け片59は孔部5210の車幅方向内側から2.5クロスメンバ26に向かって下方に延びて形成されているので、側面衝突時、取り付け片59が変形しやすく、したがって、2.5クロスメンバ26の変形に追従してブラケット34を上方に変位させる上でより有利となり、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上でより有利となる。
【0032】
また、本実施の形態では、第1取り付け片56が2.5クロスメンバ26の上面部2602に重ね合わされて締結されるものの、第1取り付け片56の面積はブラケット本体52の面積に比べて十分に小さく、かつ、ブラケット本体52は2.5クロスメンバ26の上方に離れた箇所に位置しているため、第1取り付け片56によって2.5クロスメンバ26の上面部2602の強度、剛性が高められることがなく、2.5クロスメンバ26の上方への変形が円滑になされ、側面衝突時に車載機器32を上方の箇所に変位させる上で有利となる。
また、突出片54は第1屈曲部55を介してブラケット本体52に接続され、第1取り付け片56は第2屈曲部57を介して突出片54に接続され、第1取り付け片56はそれら2つの屈曲部55、57で変形しやすくなっているため、ブラケット34によって2.5クロスメンバ26の上面部2602の強度、剛性が高められることがなく、側面衝突時に車載機器32を上方の箇所に変位させる上で有利となる。
すなわち、取り付け片59は、ブラケット本体52から突設された突出片54と、2.5クロスメンバ26に取り付けられる第1取り付け片56とを含んで構成され、ブラケット本体52と突出片54との間に第1屈曲部55が介在し、突出片54と第1取り付け片56との間に第2屈曲部57が介在しているので、取り付け片59はそれら2つの屈曲部55、57で変形しやすくなっているため、ブラケット34によって2.5クロスメンバ26の上面部2602の強度、剛性が高められることがなく、側面衝突時に車載機器32を上方の箇所に変位させる上で有利となる。
したがって、側面衝突時、車幅方向外側に移動するバッテリパック30よりも車載機器32を上方の箇所に変位させる上でより有利となり、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上でより有利となる。
【0033】
また、本実施の形態では、ブラケット34には、ブラケット本体52よりも上方に車載機器32を配置しブラケット34と車載機器32を締結する配置部53が形成されているので、側面衝突時、配置部53に締結された車載機器32を上方の箇所に変位させる上でより有利となり、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上でより有利となる。
【0034】
また、本実施の形態では、2.5クロスメンバ26の車両前方および車両後方に、前クロスメンバ20及び後クロスメンバ22が形成され、ブラケット32は、前クロスメンバ20に対向する後クロスメンバ22の縦壁部2204に取り付けられている。
したがって、通常時は、ブラケット32は、車体側に強固に取り付けられているものの、側面衝突時には、2.5クロスメンバ26が上方に湾曲するのに伴ってブラケット32が上方に変位する作用が阻害されない。
そのため、車載機器32を上方の箇所に変位させる上でより有利となり、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上でより有利となる。
なお、前述したように、ブラケット32が、後クロスメンバ22の上面部2202、あるいは、前クロスメンバ20の上面部2002または後クロスメンバ22に対向する縦壁部2004に取り付けられていても上記と同様の効果が奏される。
言い換えると、ブラケット34が、前クロスメンバ20及び後クロスメンバ22の上面部2002、2202またはそれらクロスメンバ20、22が互いに対向する縦壁部2004、2204に取り付けられていても上記と同様の効果が奏される。
【0035】
また、本実施の形態では、第3クロスメンバ22の縦壁部2204に第2取り付け片58が重ね合わされて締結されている場合について説明したが、第2取り付け片58を第3クロスメンバ22に取り付ける代わりに、2.5クロスメンバ26近傍のフロアパネル12の箇所に取り付けるようにしてもよい。
しかしながら、第2取り付け片58を2.5クロスメンバ26近傍のフロアパネル12の箇所に取り付けると、2.5クロスメンバ26近傍のフロアパネル12の箇所の強度、剛性が高められることになり、側面衝突時における2.5クロスメンバ26の上方への変位が阻害される不利がある。
これに対して本実施の形態のように第3クロスメンバ22の縦壁部2204に第2取り付け片58を取り付けると、側面衝突時における2.5クロスメンバ26の上方への変位が円滑になされ、車載機器32がバッテリパック30に干渉することを抑制し、バッテリパック30の保護を図る上でより有利となる。
また、本実施の形態では、ブラケット34に保持された車載機器32の輪郭の大半はバッテリパック30の上面30Aよりも高い箇所に位置しているので、側面衝突時、バッテリパック30よりも車載機器32を上方の箇所に変位させる上でより有利となり、バッテリパック30の保護を図る上でより有利となる。
【符号の説明】
【0036】
10 車両
12 フロアパネル
14 サイドメンバ
16 サイドシル
20 第2クロスメンバ(前クロスメンバ)
2002 上面部
2004 縦壁部
22 第3クロスメンバ(後クロスメンバ)
2202 上面部
2204 縦壁部
26 2.5クロスメンバ(クロスメンバ)
2602 上面部
2604 側面部
2606 フランジ
2608 内側突出片部
2610 外側起立片部
28 バッテリ収容部
2802 側壁
2804 上壁
30 バッテリパック
30A 上面
32 車載機器
34 ブラケット
48 車載機器本体
50 カバー
52 ブラケット本体
5210 孔部
53 配置部
55 第1屈曲部
56 第1取り付け片
57 第2屈曲部
58 第2取り付け片
59 取り付け片
60 衝突対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9