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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134838
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】電極触媒
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/96 20060101AFI20220908BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220908BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20220908BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20220908BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220908BHJP
【FI】
H01M4/96 M
H01M4/86 M
H01M4/92
B01J23/89 M
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034278
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 瞭
(72)【発明者】
【氏名】野村 久美子
(72)【発明者】
【氏名】竹下 朋洋
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 衆
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲司
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC29A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC32
4G169DA05
5H018AA06
5H018AS01
5H018DD06
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE10
5H018EE17
5H018HH04
5H018HH05
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】燃料電池の初期性能と耐久性とを両立することが可能となる燃料電池用の電極触媒を提供する。
【解決手段】メソ孔を有するカーボン担体と、当該カーボン担体に担持された白金と遷移金属との触媒合金を含み、前記メソ孔は、当該メソ孔内にくびれ部を有し、前記くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上3.2nm未満であり、前記くびれ部より奥側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率が、前記くびれ部より表面側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率より低いことを特徴とする燃料電池用の電極触媒。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の電極触媒であって、
前記電極触媒は、メソ孔を有するカーボン担体と、当該カーボン担体に担持された白金と遷移金属との触媒合金を含み、
前記メソ孔は、当該メソ孔内にくびれ部を有し、
前記くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上3.2nm未満であり、
前記くびれ部より奥側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率が、前記くびれ部より表面側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率より低いことを特徴とする電極触媒。
【請求項2】
前記メソ孔の平均有効直径は3.2nm以上3.8nm以下である、請求項1に記載の電極触媒。
【請求項3】
前記くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上2.1nm以下である、請求項1又は2に記載の電極触媒。
【請求項4】
前記遷移金属がコバルト及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電極触媒を含む触媒層を備える燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル又は複数の単セル(以下、セルと記載する場合がある)を積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)に、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多い。特に酸化剤ガスは酸素を含む空気である場合が多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
この燃料電池の単セルは、通常、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備える。
膜電極接合体は、固体高分子型電解質膜(以下、単に「電解質膜」とも呼ぶ)の両面に、それぞれ、触媒層及びガス拡散層(GDL、以下単に拡散層と記載する場合がある)が順に形成された構造を有している。そのため、膜電極接合体は、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)と称される場合がある。
単セルは、必要に応じて当該膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを有する。セパレータは、通常、ガス拡散層に接する面に反応ガスの流路としての溝が形成された構造を有している。なお、このセパレータは電子伝導性を持ち、発電した電気の集電体としても機能する。
燃料電池の燃料極(アノード)では、ガス流路及びガス拡散層から供給される燃料ガスとしての水素(H)が触媒層の触媒作用によりプロトン化し、電解質膜を通過して酸化剤極(カソード)へと移動する。同時に生成した電子は、外部回路を通って仕事をし、カソードへと移動する。カソードに供給される酸化剤ガスとしての酸素(O)は、カソードの触媒層でプロトンおよび電子と反応し、水を生成する。生成した水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水はガス拡散層を透過して、系外へと排出される。
【0003】
燃料電池に用いられる電極に関して種々の研究がなされている。
例えば特許文献1では、メソ孔内に白金および白金以外の金属成分の合金微粒子が担持され、メソ孔内に担持される合金微粒子における白金以外の金属成分に対する白金の含有モル比が1.0~10.0である、電極触媒が開示されている。
【0004】
特許文献2では、触媒担体および前記触媒担体に担持される触媒金属からなる触媒であって、前記触媒担体は半径が1nm未満の空孔および半径1nm以上の空孔を有し、前記半径が1nm未満の空孔で形成される表面積は、前記半径1nm以上の空孔で形成される表面積以上であり、かつ前記触媒金属の平均粒子径が2.8nm以上であることを特徴とする触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/183475号
【特許文献2】特開2017-212217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
触媒活性種であるPtは単体では活性が低く、遷移金属と合金化することで活性を向上させることが可能である。ただし、CoやNiに代表される合金化に用いられる遷移金属は燃料電池作動下で容易にイオン化し溶出する。それは遷移金属を多く含む触媒で顕著に生じ、当該触媒を燃料電池に用いた場合、燃料電池の初期性能を維持できず燃料電池の耐久性が低い。したがって燃料電池の初期性能と耐久性とを両立するための技術確立が求められる。
一般的に、触媒はPt:遷移金属=3:1の比率で燃料電池の初期性能が高く、Pt:遷移金属=3:1の比率より大きくても小さくても燃料電池の初期性能は低くなる。一方燃料電池の耐久性についてはPt:遷移金属=3:1の比率よりも低い方が高くなる。上記特許文献1の触媒のPt:Co比率では燃料電池の耐久性は高いものの、燃料電池の初期性能は低い。従来技術では、単一比率の合金のみを触媒として用いているため、燃料電池の初期性能もしくは耐久性のいずれかは満足させることはできるが、燃料電池の初期性能と耐久性との両立は困難である。
遷移金属の比率が高い触媒は遷移金属の比率が低い触媒よりも遷移金属が抜けやすく、遷移金属の溶出の進行が顕著な傾向がある。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池の初期性能と耐久性とを両立することが可能となる燃料電池用の電極触媒を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電極触媒は、燃料電池用の電極触媒であって、
前記電極触媒は、メソ孔を有するカーボン担体と、当該カーボン担体に担持された白金と遷移金属との触媒合金を含み、
前記メソ孔は、当該メソ孔内にくびれ部を有し、
前記くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上3.2nm未満であり、
前記くびれ部より奥側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率が、前記くびれ部より表面側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率より低いことを特徴とする。
【0009】
本開示の電極触媒においては、前記メソ孔の平均有効直径は3.2nm以上3.8nm以下であってもよい。
【0010】
本開示の電極触媒においては、前記くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上2.1nm以下であってもよい。
【0011】
本開示の電極触媒においては、前記遷移金属がコバルト及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0012】
本開示の燃料電池は、前記電極触媒を含む触媒層を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の電極触媒によれば、燃料電池の初期性能と耐久性とを両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示に用いられるメソ孔を有するカーボン担体の一例を示す断面模式図である。
図2図2は、触媒合金粒径に対するコバルト濃度の関係を示す図である。
図3図3は、単セルの耐久サイクル数に対する温度60℃、露点温度(Dp)55℃における効率点電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の電極触媒は、燃料電池用の電極触媒であって、
前記電極触媒は、メソ孔を有するカーボン担体と、当該カーボン担体に担持された白金と遷移金属との触媒合金を含み、
前記メソ孔は、当該メソ孔内にくびれ部を有し、
前記くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上3.2nm未満であり、
前記くびれ部より奥側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率が、前記くびれ部より表面側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率より低いことを特徴とする。
【0016】
本開示によれば、担体メソ孔のくびれ部よりも外部(表面側)に、比較的遷移金属比率が高い(遷移金属が抜けやすい)合金を担持し、担体メソ孔のくびれ部よりも内部(奥側)に比較的遷移金属比率が低い(遷移金属が抜けにくい)合金を担持させる。
すなわち、触媒である合金に含まれる遷移金属の比率は、担体メソ孔のくびれ部よりも内部で低く、担体メソ孔のくびれ部よりも外部(表面側)で高い。
これにより、燃料電池の耐久時に表面側に担持されている合金から優先的に遷移金属を抜けさせる(ある程度犠牲にする)ことができる。その結果、燃料電池の耐久後の遷移金属が抜けた後の合金中の遷移金属の比率が、燃料電池の初期性能が高い比率に調整することができる。その間、担体メソ孔のくびれ部よりも内部(奥側)に担持された合金からは遷移金属が抜けにくいため、燃料電池の耐久性が確保される。したがって、燃料電池の初期の高性能を担体メソ孔のくびれ部よりも外部(表面側)で担保し、燃料電池の耐久後の性能を担体メソ孔のくびれ部よりも内部(奥側)で担保することができる。
【0017】
電極触媒は、カーボン担体と、触媒合金を含む。
カーボン担体は、触媒合金を担持する。
カーボン担体は、メソ孔を有する。メソ孔の平均有効直径はくびれ部の平均有効直径よりも大きければ特に限定されない。メソ孔の平均有効直径は3.2nm以上3.8nm以下であってもよい。
メソ孔は、当該メソ孔内にくびれ部を有する。
くびれ部の平均有効直径はメソ孔の平均有効直径よりも小さい。くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上3.2nm未満である。くびれ部の平均有効直径は1.8nm以上2.1nm以下であってもよい。
カーボン担体は、形状が粒子状であるカーボン担体粒子であってもよい。
カーボン担体粒子の粒径は、メソ孔の平均有効直径よりも大きければ特に限定されず、例えば、3.8nm超過100nm以下であってもよい。
メソ孔の平均有効直径、くびれ部の平均有効直径、カーボン担体粒子の粒径は3D-TEM等で測定することができる。平均有効直径とは、3D-TEM画像において、メソ孔及びくびれ部を円とみなして測定した直径を意味する。
カーボン担体の空隙率は、例えば33%~39%であってもよい。
カーボン担体は、アセチレンブラック等であってもよい。カーボン担体は、市販のものを採用してもよい。
図1は、本開示に用いられるメソ孔を有するカーボン担体の一例を示す断面模式図である。図1に示すように、メソ孔は、当該メソ孔内にくびれ部を有する。
【0018】
触媒合金は、カーボン担体に担持される。
触媒合金は、白金と遷移金属との合金である。
遷移金属は、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
触媒合金中の白金と遷移金属との比率はモル比で4~11:1であってもよい。
くびれ部より奥側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率は、くびれ部より表面側の領域に担持された触媒合金の遷移金属比率より低ければよい。
触媒合金は、形状が粒子状である触媒合金粒子であってもよい。
触媒合金粒子の粒径(触媒合金粒径)は、特に限定されないが、1nm以上10nm以下であってもよい。触媒合金粒子の粒径は3D-TEM等で測定することができる。
触媒合金粒子は、その粒径がカーボン担体のメソ孔平均有効直径以上の場合は、メソ孔外部又はカーボン担体表面に担持されていてもよい。
触媒合金粒子は、その粒径がカーボン担体のくびれ部の平均有効直径以上且つカーボン担体のメソ孔平均有効直径未満の場合は、カーボン担体のメソ孔のくびれ部よりも外部(表面側)の領域に担持されていてもよい。
触媒合金粒子は、その粒径がカーボン担体のくびれ部の平均有効直径未満の場合は、カーボン担体のメソ孔のくびれ部よりも内部(奥側)の領域に担持されていてもよい。
【0019】
電極触媒の製造方法は、メソ孔を有するカーボン担体にPtと遷移金属とを担持する担持工程及びカーボン担体に担持されたPtと遷移金属とを合金化する合金化工程を含んでいてもよい。
担持工程では、Ptと遷移金属とを例えば4~11:1のモル比でカーボン担体に担持する。
合金化工程では、Ptと遷移金属とを例えば700~900℃で合金化する。
【0020】
本開示の電極触媒は、燃料電池用である。
電極触媒を含む電極はカソードとして使用してもよいし、アノードとして使用してもよいし、カソード及びアノードの両方として使用してもよい。
本開示の燃料電池は、前記電極触媒を含む触媒層を備える。
触媒層は、カソード触媒層であってもよいし、アノード触媒層であってもよいし、カソード触媒層及びアノード触媒層の両方であってもよい。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
【0021】
燃料電池は、単セルを1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~200個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレートを備えていてもよい。
【0022】
燃料電池の単セルは、少なくとも膜電極ガス拡散層接合体を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0023】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層を含み、必要に応じてカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層を含み、必要に応じてアノード側ガス拡散層を含む。
【0024】
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0025】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0026】
単セルは、必要に応じて膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。2枚のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、反応ガス及び冷媒を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。冷媒としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、アノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、カソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
【0027】
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0028】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
【実施例0029】
以下、実施例及び比較例を用いて本開示をより詳細に説明するが、本開示の技術的範囲はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例は特許請求の範囲に包含されるか否かによって区別されるものではない。特に良好な結果が得られた実施形態を実施例とし、それ以外の実施形態を比較例とした。
【0030】
(実施例1)
<電極触媒の製造>
担持工程:メソ孔を有するカーボン担体(1.0g:デンカ株式会社製)を純水(41.6mL)に分散させ分散液を得た。分散液に白金(1.0g)を含むジニトロジアミン白金硝酸溶液(特許第4315857号:株式会社キャタラー製)を滴下し、カーボン担体にニトロジアミン白金硝酸溶液を十分に馴染ませた。還元剤としてエタノール(3.2g)を加え、還元担持を行った。得られた混合液をろ過洗浄し、得られた粉末を乾燥させ、白金担持触媒を得た。次に、白金担持触媒の表面上の酸素量を4重量%以下まで低減させ、製品比率(モル比)でPt:Coが7:1となるようにコバルト(0.03g)をカーボン担体に担持させ白金コバルト担持触媒を得た。
合金化工程:得られた白金コバルト担持触媒をアルゴン雰囲気下、800℃で合金化し、触媒合金粒子を担持するカーボン担体(触媒合金粒子担持カーボン担体)を含む電極触媒を得た。
得られた、電極触媒について、3D-TEMにより観察を行った。カーボン担体のメソ孔平均有効直径、カーボン担体の計測領域における空隙率(%)、カーボン担体の粒子1個当たりの空隙率(%)、カーボン担体のメソ孔のくびれ部の平均有効直径、カーボン担体のメソ孔の総延長距離、カーボン担体のメソ孔の分岐点間の平均距離、カーボン担体が表面に担持する触媒合金の担持割合、カーボン担体のメソ孔の入口から触媒合金までの平均距離である担持位置平均距離を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2、比較例1~2)
表1に示すカーボン担体のメソ孔平均有効直径、カーボン担体の計測領域における空隙率(%)、カーボン担体の粒子1個当たりの空隙率(%)、カーボン担体のメソ孔のくびれ部の平均有効直径、カーボン担体のメソ孔の分岐点間の平均距離を有するカーボン担体を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で実施例2、比較例1~2の電極触媒を得た。得られた、実施例2、比較例1~2の各電極触媒について、実施例1と同様の方法で3D-TEMにより観察を行った。結果を表1に示す。
実施例2で得られた、電極触媒について、透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)分析を行った。カーボン担体表面からカーボン担体メソ孔のくびれ部よりも内部(奥側)までに担持されている触媒合金中のコバルト濃度を測定した。
図2は、触媒合金粒径に対するコバルト濃度の関係を示す図である。
実施例2で得られた電極触媒において、カーボン担体のメソ孔の平均有効直径(実施例2の場合3.8nm)以上の粒径の触媒合金粒子は、概ねメソ孔の外部又はカーボン担体表面に担持されている。カーボン担体のメソ孔のくびれ部の平均有効直径(実施例2の場合2.1nm)以上且つメソ孔の平均有効直径未満の粒径の触媒合金粒子は、概ねメソ孔のくびれ部よりも外部(表面側)の領域に担持されている。カーボン担体のメソ孔のくびれ部の平均有効直径未満の粒径の触媒合金粒子は、概ねメソ孔のくびれ部よりも内部(奥側)の領域に担持されている。
図2に示すように、メソ孔のくびれ部よりも内部(奥側)の領域に入り込んでいる触媒合金粒子のコバルト濃度が低く、メソ孔のくびれ部よりも外部(表面側)の領域に存在する触媒合金粒子のコバルト濃度が高いことがわかる。したがって、メソ孔のくびれ部よりも内部の領域とメソ孔のくびれ部よりも外部の領域とで、カーボン担体に担持される触媒合金粒子の遷移金属比率に差を持たせることができていることが実証された。
【0032】
【表1】
【0033】
<単セルの製造>
実施例2で得られた電極触媒を有機分溶媒に分散させた。得られた分散液をテフロン(登録商標)シートに塗布して電極を形成した。電極を2つ形成し、電解質膜を2つの電極で挟持しホットプレスによって貼り合わせ膜電極接合体を得た。膜電極接合体を2つの拡散層で挟持し、単セルを得た。比較例1~2で得られた電極触媒についても同様の方法で、単セルを得た。
【0034】
<単セルの評価>
実施例2、比較例1~2で得られた各単セルの温度を60℃に設定し、各単セルの2つの電極の相対湿度を80%とし、スモール単セル評価装置システム(株式会社東陽テクニカ製)を用いて、各単セルのIV測定を行った。
IV測定については、0.01~4.0A/cmの範囲で任意に電流を制御した。0.2A/cm時の電圧値を活性と定義した。
【0035】
<単セルの耐久試験>
実施例2、比較例1~2で得られた各単セルについて以下の条件で耐久試験を行った。
耐久試験は、0.6V~0.9Vの電位サイクルを矩形波で60000サイクル行った。
図3は、単セルの耐久サイクル数に対する温度60℃、露点温度(Dp)55℃における効率点電圧との関係を示す図である。
図3に示すように、比較例1は、初期の活性は高いが耐久後に活性が大きく低下する。
比較例2は、初期の活性は低いが、耐久後の維持率が高い。
実施例2は、初期の活性を比較例2より高く保ち、耐久後に最も性能が高い。
したがって、本開示の電極触媒を用いた燃料電池は、初期性能と耐久性能とのバランスに優れることが示された。実施例においては、遷移金属としてコバルトの例を示したが、遷移金属としてニッケルを用いた場合であっても、ニッケルとコバルトは周期表において隣同士であり、金属的性質が似ているため、コバルトの場合と同様の効果が得られると推察される。
図1
図2
図3