(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013484
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】部品供給装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/14 20060101AFI20220111BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B23K11/14 310
B23P19/00 301L
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020125807
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030AA05
3C030AA08
3C030AA11
3C030AA15
3C030BB01
3C030BC01
3C030BC11
3C030BD06
(57)【要約】
【課題】部品の移動挙動を簡素化し、部品供給動作の信頼性を向上すること。
【解決手段】供給管4から送出された扁平な部品3を、進退作動式の移送部材14に形成した保持構造部15に保持して、部品3を電気抵抗溶接電極や部品供給ロッドなどの部品保持部材25の近傍の所定位置に停止させ、部品3を目的箇所へ移動させるための移動手段30が移送部材14に取り付けられており、供給管4の部品送出方向と移送部材14の進退方向が直交した位置関係とされ、移送部材14の進退方向と部品保持部材25の進退方向は、直角に食い違った位置関係とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な部品が供給の対象とされているもので、
部品供給源から伸びてきている供給管から送出された部品を、進退作動式の移送部材に形成した保持構造部に保持して、部品を電気抵抗溶接電極や部品供給ロッドなどの部品保持部材の近傍の所定位置に停止させ、
前記移送部材に保持された部品を前記目的箇所へ移動させるための移動手段が移送部材に取り付けられており、
前記供給管の部品送出方向と前記移送部材の進退方向が直交した位置関係とされ、
前記移送部材の進退方向と前記部品保持部材の進退方向は、直角に食い違った位置関係とされていることを特徴とする部品供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扁平な部品を供給する部品供給装置に関している。
【背景技術】
【0002】
特開平9-220676号公報に記載された発明は、斜め方向に進退する供給ロッドの先端に保持部材が設けられ、この保持部材に部品の進退駆動手段が設けられ、進退駆動手段の作動で部品が目的箇所である電極の受入孔に挿入されるようになっている。そして、部品には空気が噴射されて電極の受入孔へ挿入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されている技術においては、供給ロッドが斜め方向に進退するので、傾斜角度を正確に維持するためにエアシリンダなどの進退駆動手段の設置精度を高く維持する必要があり、また、何等かの外力によって傾斜角度が狂いやすくなるという問題がある。さらに、空気噴射が残存したりすると、受入孔に入った部品の位置がずれたりする恐れがあり、信頼性の面で改善が必要である。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、部品の移動挙動を簡素化し、部品供給動作の信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
扁平な部品が供給の対象とされているもので、
部品供給源から伸びてきている供給管から送出された部品を、進退作動式の移送部材に形成した保持構造部に保持して、部品を電気抵抗溶接電極や部品供給ロッドなどの部品保持部材の近傍の所定位置に停止させ、
前記移送部材に保持された部品を前記目的箇所へ移動させるための移動手段が移送部材に取り付けられており、
前記供給管の部品送出方向と前記移送部材の進退方向が直交した位置関係とされ、
前記移送部材の進退方向と前記部品保持部材の進退方向は、直角に食い違った位置関係とされていることを特徴とする部品供給装置である。
【発明の効果】
【0007】
供給管の部品送出方向と移送部材の進退方向が直交した位置関係とされているので、圧縮空気を部品に噴射して部品搬送を行う場合であっても、移送部材が進出して部品が部品保持部材近傍の所定位置に移動しているので、圧縮空気の噴流が部品に及ぶことがない。したがって、軽量の薄っぺらな部品であっても風圧で位置ずれを起こすようなことがなく、部品の移動軌跡が正確に維持でき、信頼性の高い供給動作がえられる。とくに、移送部材が進出して部品が所定位置で待機するときには、何等かの原因で部品搬送空気噴射が部品に作用すると、部品の保持位置に狂いが発生しやすいのである。つまり、部品を電気抵抗溶接電極や部品供給ロッドなどの部品保持部材の近傍の所定位置に停止させているときに、有害な風圧が部品に作用しないことが重要であり、本願発明では、このような要件を満足している。
【0008】
供給管の部品送出方向と移送部材の進退方向が直交した位置関係とされているとともに、移送部材の進退方向と部品保持部材の進退方向は、直角に食い違った位置関係とされている。このように可動部材の移動方向がそれぞれ直角関係で配置されているので、可動部材を動作させるエアシリンダおよび進退出力式電導モータなどの配置や出力角度の設定が行いやすくなり、合わせて動作信頼性が向上する。
【0009】
本願発明は、上述のような装置発明であるが、以下に記載する実施例から明らかなように、ナットの移送過程等を特定した方法発明として存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】装置全体と各部の断面構造等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の部品供給装置を実施するための形態を説明する。
【実施例0012】
【0013】
最初に、部品について説明する。
【0014】
部品は、板部材に突起部材が付いた部材であったり、円形のフランジを有する薄っぺらなナットであったりしており、扁平な形状のものである。ここでは、後者のタイプである。
【0015】
ねじ孔が形成された円形のナット本体1に円形のフランジ2が一体化されて、円形の扁平な部品3が形成されている。フランジ2は、平らな板状部材で構成されている。部品3は、鉄製である。
【0016】
つぎに供給管について説明する。
【0017】
供給管4は、部品供給源であるパーツフィーダ5から伸びてきている。パーツフィーダ5の出口管6に空気噴射管7を接合し、ここからの噴射空気で部品3を搬送する。
【0018】
供給管4は、装置の機枠のような静止部材8に固定してある。
図1(C)は、供給管4の断面形状を示すもので、ステンレス鋼でできた管本体9にフランジ2が通過する幅広で浅いフランジ溝10(
図1(A)参照)が形成され、その中央部にナット本体1が通過する幅の狭い本体溝11(
図1(A)および(C)参照)が形成されている。管本体9に蓋板12がボルト付けなどで固定してある。
図1(C)に2点鎖線で示すように、蓋板12は内部の部品3の存在を確認するために、透明のアクリル板で構成されている。
【0019】
つぎに、移送部材について説明する。
【0020】
移送部材14は、断面矩形の細長いステンレス鋼製の部材で作られている。移送部材14は、エアシリンダや進退出力式電動モータなどで構成された進退駆動手段16によって進退する。この進退方向は、供給管4の部品送出方向と直交した位置関係になっている。ここでは、進退駆動手段としてエアシリンダ17が採用されている。静止部材8に固定されたエアシリンダ17のピストンロッド18が、結合片19を介して移送部材14に結合してある。ここでは、移送部材14とエアシリンダ17が平行に並んだ配置になっていて、所要スペースを小さくしている。
【0021】
供給管4からの部品3は、移送部材14に形成した保持構造部15に入り込む。保持構造部15の断面形状は、
図1(B)に示されている。保持構造部15には、フランジ溝10に連続した受け入れ凹部20(
図1(D)参照)が形成され、この受け入れ凹部20に連続した送出孔21が移送部材14を貫通した状態で開けられている。部品3は、そのフランジ2の外周部近くの部分が受け入れ凹部20上に載置された状態で支持されている。送出孔21の直径はフランジ2の直径よりもわずかに小さく設定してある。部品3の進入方向で見た受け入れ凹部20の終端は、円弧部22によって形成され、供給管4から入ってきた部品3は、フランジ2が円弧部22に合致して位置決めがなされる。
【0022】
部品3を受け入れ凹部20に引き込むための吸引手段として、永久磁石24が移送部材14に埋め込んである。永久磁石24の個数や埋め込む位置は、部品3をできるだけ円滑に引き込めるように選定されている。ここでは、
図1(A)に示すように、円弧部22の近傍に上下対称となるように選定されている。2個の永久磁石24は、円弧部22の直径線よりも右側、すなわち奥まった箇所に上下対称に配置してある。永久磁石に換えて、空気バキュームを利用することも可能である。
【0023】
移送部材14が進退する高さ位置は、後述の部品保持部材の下端部よりも低い位置に設定されている。
【0024】
保持構造部15に保持された部品3が移送部材14の進出で移動すると、2番目の部品3は移送部材14の横側面13に擦りつけられて、空になった保持構造部15の復帰に備える。
【0025】
つぎに、部品保持部材について説明する。
【0026】
電気抵抗溶接電極や部品供給ロッドなどのように、部品3をしっかりと保持してつぎの目的箇所へ移行させる部材が、部品保持部材25である。部品保持部材25は、部品供給の目的箇所を保有している。
【0027】
ここでは、電気抵抗溶接の電極が部品保持部材25とされている。部品保持部材25は、可動電極であり、その先端面にフランジ2が入り込む円形の浅い受入凹部26が形成してある。受入凹部26に入った部品3の落下を防止するために、吸引手段である永久磁石27が部品保持部材25の外周部に埋め込んである。永久磁石27の個数や埋め込む位置は、部品3をできるだけ強く保持するように選定されている。ここでは、
図1(B)に示すように、受入凹部26の近傍に180度間隔で2個配置してある。これを90度間隔で4個配置してもよい。永久磁石に換えて、空気バキュームを利用することも可能である。部品保持部材25の進退動作は、図示していないが、エアシリンダや進退出力式電動モータによって行われる。
【0028】
なお、可動電極である部品保持部材25と対をなす固定電極は、符号28で示されている。固定電極28上に鋼板部品29が載置され、ナット本体1が溶接される。なお、ナット本体1に形成される溶着用突起は通常の一般的なものであり、その図示は省略してある。
【0029】
移送部材14が所定ストローク分の進出をすると、部品3を電気抵抗溶接電極や部品供給ロッドなどの部品保持部材25の近傍の所定位置に停止する。移送部材14の停止位置がこのような位置となるように、エアシリンダ17の進出ストロークの長さが設定されている。この停止状態においては、保持構造部15に保持されている部品3が電極軸線O1-O1と同軸状態となるように、移送部材14の進出ストロークが設置されている。同時に、移送部材14の停止位置においては、電極軸線O1-O1と
図1(D)に示す上昇軸線O2-O2が同軸になっている。
【0030】
つぎに、移動手段について説明する。
【0031】
移動手段30は、エアシリンダや進退出力式電動モータのような進退出力がえられるもので、ここではエアシリンダ31である。エアシリンダ31は、取り付け金具33を用いて移送部材14の下面に固定されている。エアシリンダ31のピストンロッド34にカップ状の押出し部材35が結合してある。押出し部材35は円筒状の部材で、その押し上げ面36は環状の平坦面であり、この平坦面は、上昇軸線O2-O2が垂直に交わる仮想平面上に存在している。
図1(D)は、押し上げ面36がフランジ2の下面に密着した過渡状態である。押出し部材35は、送出孔21の内面に摺動しながら進退する。押し上げ面36がフランジ2の下面に密着していることによって、フランジ2は上昇軸線O2-O2に対して傾いたりすることがなく、正確に受入凹部26内へ送り込まれる。
【0032】
つぎに、永久磁石の吸引力について説明する。
【0033】
移送部材14が矢線37のように進出して上昇軸線O2-O2が電極軸線O1-O1に合致すると、移動手段30の動作で部品3は矢線38の方へ送り出される。この送り出しの開始直後または部品3(フランジ2)が受入凹部26に接近したときに、部品保持部材25側の永久磁石27の吸引力が支配的になって、部品3が確実に受入凹部26内に保持される。このような受入凹部26における保持を確実なものとするために、移送部材14側の永久磁石24の吸引力が部品保持部材25側の永久磁石27の吸引力よりも弱く設定してある。
【0034】
押出し部材35の進出によって、部品3が受け入れ凹部20から浮上し始める時期、すなわち部品3の送り出しの開始直後か、または部品3が受入凹部26に接近したときに、部品3は部品保持部材25側の永久磁石27の吸引力圏内に入るように、両永久磁石24、27の吸引力の強弱関係が設定してある。このような磁石の吸引力関係で部品が移動するものであるから、部品が近隣の静止部材に擦れながら移動するようなことを回避して、円滑に部品移動を行わせることが可能となる。つまり、部品3は、空間移動をする。
【0035】
つぎに、部品供給装置の動作を説明する。
【0036】
図1(A)は、供給管4からの部品3の先頭のものが保持構造部15に入り、フランジ2が受け入れ凹部20内に位置決めされており、このときナット本体1は送出孔21の中央部に位置している。
【0037】
この状態で移送部材14が進出して、上昇軸線O2-O2が電極軸線O1-O1と同軸になった箇所で移送部材14は停止する。
【0038】
ついで、移動手段30の進出動作によって、最後退位置にあった押出し部材35が上昇し、押し上げ面36がフランジ2の下面に全周にわたって未着する。それに引き続いて部品3が受け入れ凹部20から上昇する。部品3が上昇移動をすることによって、部品3は永久磁石27の吸引力圏内に移行して、フランジ2が受入凹部26内に引き込まれて、位置決めがなされる。
【0039】
各エアシリンダ17、31などに記載される作動空気の給排管は、図示を省略してある。
【0040】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。
【0041】
上述の各エアシリンダの進退動作や空気噴射などの動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0042】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0043】
供給管4の部品送出方向と移送部材14の進退方向が直交した位置関係とされているので、圧縮空気を部品3に噴射して部品搬送を行う場合であっても、移送部材14が進出して部品3が部品保持部材25の近傍の所定位置に移動しているので、圧縮空気の噴流が部品3に及ぶことがない。したがって、軽量の薄っぺらな部品3であっても風圧で位置ずれを起こすようなことがなく、部品3の移動軌跡が正確に維持でき、信頼性の高い供給動作がえられる。とくに、移送部材14が進出して部品3が所定位置で待機するときには、何等かの原因で部品搬送空気噴射が部品3に作用すると、部品3の保持位置に狂いが発生しやすいのである。つまり、部品3を電気抵抗溶接電極や部品供給ロッドなどの部品保持部材25の近傍の所定位置に停止させているときに、有害な風圧が部品3に作用しないことが重要であり、本実施例では、このような要件を満足している。
【0044】
供給管4の部品送出方向と移送部材14の進退方向が直交した位置関係とされているとともに、移送部材14の進退方向と部品保持部材25の進退方向は、直角に食い違った位置関係とされている。このように可動部材の移動方向がそれぞれ直角関係で配置されているので、可動部材を動作させるエアシリンダおよび進退出力式電導モータなどの配置や出力角度の設定が行いやすくなり、合わせて動作信頼性が向上する。
【0045】
保持構造部15に付属している部品3の吸引手段として、例えば永久磁石24が採用され、一方、部品保持部材25に付属している部品3の保持手段として、例えば永久磁石27を採用し、保持構造部15側の永久磁石24の吸引力を部品保持部材25側の永久磁石27の吸引力よりも弱く設定してあるので、移動手段30で部品3が押し出された直後には、部品3が部品保持部材25側にしっかりと吸引されるように変換される。つまり、部品3が部品保持部材25側の永久磁石27の吸引力圏内に移行する。したがって、部品保持部材25への部品保持が確実に達成されて、部品3は正確につぎの目的箇所へ移送され、信頼性の高い動作がえられる。
【0046】
保持構造部15に位置している部品3は、移動手段30に設けた円筒状の押出し部材35で部品保持部材25側へ移動するので、押し出される部品3が傾斜したり、偏心したりしないので、部品3は部品保持部材25の目的箇所に対して正確に送り込まれ、供給精度の向上にとって好適である。押出し部材35の環状の平坦な端面36が部品3の下面にぴったりと密着するように成型されていることによって、上記の安定した良好な結果がえられる。
上述のように、本発明の装置によれば、部品の移動挙動を簡素化し、部品供給動作の信頼性を向上する。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。