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特開2022-134850管口止水工法並びに止水用リング及び管口止水具セット
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  • 特開-管口止水工法並びに止水用リング及び管口止水具セット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134850
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】管口止水工法並びに止水用リング及び管口止水具セット
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20220908BHJP
   E03F 5/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
E02D29/12 E
E03F5/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034300
(22)【出願日】2021-03-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】521093314
【氏名又は名称】株式会社匠技工
(74)【代理人】
【識別番号】100115598
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 脩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩一郎
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
【Fターム(参考)】
2D063DA28
2D147BA27
(57)【要約】
【課題】コンクリートの壁と剛性管との結合の弱さを補強し、簡便かつ短時間で管口周囲からの漏水を止水することができる管口止水工法並びにその工法を行うにあたって必要となる止水用リングを提供することを目的とする。
【解決手段】管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って、前記漏水を止水する止水域を特定する第1工程と、コイルばねの両端を結合して形成され、内径が地下埋設管外径よりも小さいリングと、該リングに連結されて該リング内部に侵入した水が導通する複数のホースとを有する止水用リングを前記地下埋設管に被嵌し、前記止水域に流入する水を外部に排水すると共に、該止水域に止水セメンとを充填する第2工程と、ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から流出するまで注入を継続する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の周壁に設けた孔に捜通し、該周壁に固定された地下埋設管の管口周辺からの漏水を止水する管口止水工法であって、
前記管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って、前記漏水を止水する止水域を特定する第1工程と、
コイルばねの両端を結合して形成され、内径が前記地下埋設管外径よりも小さいリングと、該リングに連結されて該リング内部に侵入した水が導通する複数のホースとを有する止水用リングを前記地下埋設管に被嵌し、前記止水域に流入する水を外部に排水すると共に、該止水域に止水セメンとを充填する第2工程と、
前記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から流出するまで注入を継続する第3工程と、を含むことを特徴とする管口止水工法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記止水用リングが隠れる程度に前記止水セメントを充填しても前記漏水が止まらないときには、更に、別の該止水用リングを被嵌して残余の止水域に該止水セメントを充填する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の管口止水工法。
【請求項3】
前記第3工程は、前記別の前記止水用リングにおける前記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から該薬液が流出するまで継続する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の管口止水工法。
【請求項4】
前記第3工程は、前記ホースの他方からも前記薬液を注入し、注入した薬液が硬化した後に、前記壁面から突出した該ホースを切断する工程を含むことを特徴とする請求項1又は3記載の管口止水工法。
【請求項5】
コイルばねの両端を結合して形成され、内径が前記地下埋設管の外径よりも小さいリングと、該リング内部に侵入した水が導通する複数のホースとを有し、該地下埋設管に被嵌させることにより、該該地下埋設管の管口周辺からの漏水を該リングに取り込み、該ホースで外部に排水することを特徴とする止水用リング。
【請求項6】
前記リングは、所定の外径を有する長尺の引張コイルばねの両端を溶接若しくは接着して形成され、該リングの少なくとも2か所に、外径が該引張コイルばねの外径以下の短尺の圧縮コイルばねを該引張コイルばねに係止させて、前記ホースを被嵌させる連結部が設置されたことを特徴とする請求項5記載の止水用リング。
【請求項7】
請求項5記載の止水用リングと、前記ホースに嵌入するノズルを有し、所定の薬液が充填されたカートリッジとを備えたことを特徴とする管口止水具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール、排水桝その他のコンクリート構造物の周壁に配置される地下埋設管の管口周囲からの漏水を止水する管口止水工法及びその止水工法に用いる止水用リング、並びにそれに薬液カートリッジを加えた管口止水具セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下埋設された上下水道管路や電力ケーブル及び通信ケーブル用管路の分岐個所や引き込み個所等には、マンホールや枡等のコンクリート構造物が設置され、それらのコンクリート構造物と管との接続はモルタルが用いられている。
しかしながら、地震や不等沈下などの地盤変動、あるいは激しい交通量にさらされる上、長期に亘る使用により管や接続部にひび割れや破損により濾水が生じ勝ちである。特に、下水道管と構造物との接続部においては、処理不要な、生活排水以外の地下水までが処理場に送られるので処理コストがかさんでしまうという問題がある。
そこで、マンホール内周壁部と剛性管の内周部に遮蔽部材を配置し、内周壁部を覆う個所に加圧調整部材を配置して押圧固定部材で覆い、固定部材で固定した後、遮蔽部材と剛性管の内周部との間に凝固剤を注入する止水工法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、地振動によりコンクリートにひび割れが生じたり、破損した場合は、下水の流下機能を維持することができなくなるので、ゴムや軟質プラスチック等を主体に 作られた可とう継手で接続し、耐震性を持たせる工法が提案されている(特許文献2参照)。
一方、地下水の水位が高く、地下水が既設管外側の地盤にも存在する場合に、マンホールの開口周辺に注入孔を設け、そこから止水剤を注入する方法が考えられるが、他企業の埋設管を総称する恐れがある。
そこで、マンホールの内側から既設管の外周部分(既設管から150mm以上の位置)に、マンホールの外側に通じる注入孔を穿孔機で形成し、止水剤を注入して既設管周囲で固化させて地下水を止水する。そして、切削装置で管接続部の外側の地盤を掘削し、そこにゴム材からなる止水部材を充填して管接続部を改修する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5972239号公報
【特許文献2】特開2001-26937号公報
【特許文献3】特許第681205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、管口径が異なる場合には、様々なサイズの部材を用意する必要があり、実用的ではない。また、特許文献2記載の方法を既設管に適用するには、大掛かりな掘削作業を伴うので工期やコストがかかり過ぎる。さらに、特許文献3記載の方法は、掘削装置が入らない小さなマンホールや排水桝などには適用できない。
本発明は、かかる事情に鑑み、コンクリートの壁と剛性管との結合の弱さを補強し、簡便かつ短時間で管口周囲からの漏水を止水することができる管口止水工法並びにその工法を行うにあたって必要となる止水用リング及び止水具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管口止水工法は、コンクリート構造物の周壁に設けた孔に捜通し、該周壁に固定された地下埋設管の管口周辺からの漏水を止水する管口止水工法であって、
上記管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って、上記漏水を止水する止水域を特定する第1工程と、コイルばねの両端を結合して形成され、内径が上記地下埋設管外径よりも小さいリングと、該リングに連結されて該リング内部に侵入した水が導通する複数のホースとを有する止水用リングを上記地下埋設管に被嵌し、上記止水域に流入する水を外部に排水すると共に、該止水域に止水セメンとを充填する第2工程と、上記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から流出するまで注入を継続する第3工程と、を含むことを特徴とする。
このように、管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って、止水域とし、コイルばねで形成されたリングにホースを連結した止水用リングを地下埋設管に被嵌し、止水域に流入する水をホースで外部に排水する方法を用いれば、その止水域に止水セメントを確実に充填することができる。また、そのように止水セメントを充填したうえで、ホースから薬液を注入すれば、止水用リングの内部や止水域の漏水箇所などの空隙のある個所に薬液が広範囲に、確実に注入されるので長期に亘り漏水を止水することができる。
ここで、上記第2工程は、上記止水用リングが隠れる程度に上記止水セメントを充填しても上記漏水が止まらないときには、更に、別の該止水用リングを被嵌して残余の止水域に該止水セメントを充填する工程を含むことができる。
また、上記第3工程は、上記別の上記止水用リングにおける上記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から該薬液が流出するまで継続する工程を含むことも、上記ホースの他方からも上記薬液を注入し、注入した薬液が硬化した後に、上記壁面から突出した該ホースを切断する工程を含むことも好ましい。
【0007】
本発明の止水用リングは、コイルばねの両端を結合して形成され、内径が上記地下埋設管の外径よりも小さいリングと、該リング内部に侵入した水が導通する複数のホースとを有し、該地下埋設管に被嵌させることにより、該該地下埋設管の管口周辺からの漏水を該リングに取り込み、該ホースで外部に排水することを特徴とする。
そして、上記リングは、所定の外径を有する長尺の引張コイルばねの両端を溶接若しくは接着して形成され、該リングの少なくとも2か所に、外径が該引張コイルばねの外径以下の短尺の圧縮コイルばねを該引張コイルばねに係止させて、上記ホースを被嵌させる連結部が設置されたことが好ましい。
このようにすれば、管口止水工法に用いる止水用リングを低コストで簡単に作成することができる。
本発明の管口止水具セットは、請求項5記載の止水用リングと、上記ホースに嵌入するノズルを有し、所定の薬液が充填されたカートリッジとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の管口止水工法及びその工法に用いる止水用リングによれば、地下埋設管の管口周りにおける漏水の止水工事を、熟練者でなくても簡単に施工することができるうえ、止水用リング内はもとより、ひび割れ等によって漏水している個所に至るまでの広範囲な部分にゴム状の薬材が浸透するので、確実に止水できるうえ、止水効果を長期間にわたり持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、マンホールを一例として示す図である。
図2図2は、本実施形態の止水工法に用いる本実施形態の止水用リングの一例を示す図である。
図3図3は、止水域を特定する第1工程の一例を示す図である。
図4図4は、第2工程のうち、止水用リングを地下埋設管に被嵌する工程の一例を示す図である。
図5図5は、第2工程のうち、止水用リングが設置された止水域に止水セメントを充填する工程の一例を示す図である。
図6図6は、地下水勢いが激しいので止水セメントを充填している最中に、その周囲から漏水してしまう場合の補強工程の一例を示す図である。
図7図7は、止水域に薬液を注入する第3工程の一例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の管口止水工法及び止水用リングの実施形態について図に基いて説明する。
図1は、マンホールを一例として示す図であり、図1(a)は、周壁の側断面面図、図1(b)は、正面図である。
図1に示すように、マンホール1の周壁2には地下埋設管3を捜通する孔4があり、そこに捜通された地下埋設管3は、管口5周囲にモルタル7が詰められ、固定されている。
しかしながら、地盤変動によって地下埋設管3と周壁2とは異なる動き方をすること、それぞれの材質が異なるので親和性が低いことから、周壁2、特に地下埋設管3周囲にはひび割れや隙間が生じ易く、そのひび割れ個所から地下水が侵入し、管口5周囲から漏水6する。
ここでは、コンクリ―ト構造物がマンホール1で、その周壁2に接続された地下埋設管3の管口5から漏水する例を示したが、コンクリ―ト構造物は、公道に設置されたマンホール1に限定する必要はなく、私有地に設置された排水桝などであってもよいし、ビルの地階の壁面であっても同様に適用できる。
【0011】
図2は、本実施形態の止水工法に用いる本実施形態の止水用リングの一例を示す図である。
図2に示す止水用リング20は、所定の外径を有する長尺の引張コイルばね11の両端を溶接16してリング13を形成し、そのリング13の周囲2か所に、引張コイルばね11の外径以下の外径を有する短尺の圧縮コイルばね12をからませて係止した連結部15を設け、その連結部15にはホース14が被嵌されている。
なお、引張コイルばね11の線と線の隙間に較べると、圧縮コイルばね12の線と線の隙間は大きいので、圧縮コイルばね12の先端を引張コイルばね11の複数の線に絡めて回転させることにより係止することができる。
ここでは、引張コイルばね11の両端は、溶接16によって結合されているが、接着剤で接着して接合してもよい。
リング13の内径は、地下埋設管3の外径よりも少し小さくしてあるので、拡開して管口5から地下埋設管3に被嵌すれば、リング13が地下埋設管3の外周にぴったりと圧接される。
引張コイルばね11にからませて係止している連結部15は、引張コイルばね11で形成されたリング13と導通しているので、管口5周囲のひび割れや隙間8から止水域9に流れ込んだ地下水は、リング13内部に侵入し、連結部15を通ってホース14へと導かれて外部に排水される。
ここで示す止水用リング20は、外径が12mmから30mm程度の引張コイルばね11で形成され、連結部15は、外径12mm程度の圧縮コイルばね12で形成されている。
連結部15は、リング13から15mm程度突出しており、内径12mm程度のホースがその突出部分に被嵌されている。そして、リング13の内径が100mmから200mm程度の止水用リング20には、リング13の2か所に、リング13の内径が450mmから600mm程度の止水用リング20には、リング13の4か所に、リング13の内径が100mmから200mm程度の止水用リング20には、リング13の2か所にそれぞれ、連結部15が設けてある。
但し、ここで示した数値は一例であって、必ずしもこれらの数値に限定する必要はない。
【0012】
図3から図6は、本実施形態の管口止水工法の施工手順を一例として示す図である。
図3は、止水域を特定する第1工程の一例を示す図であり、図3(a)は、マンホール周壁の側断面図、図3(b)は、マンホール周壁の正面図である。
図3に示すように、マンホール1の周壁2には、地下埋設管3を捜通する孔4があり、その孔4に捜通された地下埋設管3の周囲にはモルタル7が詰められ、周壁2に固定している。従って、管口5周囲のモルタル7を壁面から少なくとも3センチメートル程度の深さまで、ピックハンマー等を用いて斫り、漏水を止水する止水域9を特定する。
管口5周囲のひび割れや隙間8から侵入した地下水は、止水域9に流出している。
ここでは、壁面から4cmの深さまで斫ってあるが、斫る深さは3cmから5cmにすることが好ましい。
【0013】
図4は、第2工程のうち、止水用リングを地下埋設管に被嵌する工程の一例を示す図であり、図4(a)は、マンホール周壁の側断面図、図4(b)は、マンホール周壁の正面図である。
図4に示すように、地下埋設管3の管口5から4cmの深さまで斫って形成された止水域9のできるだけ奥に、リング13を拡開して管口5に被嵌させた止水用リング20を配置する。
止水用リング20は、リング13の外径が、管口5の外径にほぼ等しいので、拡開して被嵌させたときに、地下埋設管3の外周面に圧接される。そして、連結部15に被嵌させた2つのホース14の端は、管口5の外側で、マンホール1内にある。従って、止水域9に流出する地下水は、リング13の内部に侵入して流通し、導通している連結部15に導かれてホース14からマンホール1内に排水される。
【0014】
図5は、第2工程のうち、止水用リングが設置された止水域に止水セメントを充填する工程の一例を示す図であり、図5(a)は、マンホール周壁の側断面図、図5(b)は、マンホール周壁の正面図である。
図4に示すように、止水域9に流出した地下水の大部分は、止水用リング20によって排水されるので、止水用リング20の周囲を含む止水域9は、止水セメント21を充填し、壁面と面一になるまで詰めることができる。
【0015】
図6は、図5で示す第2工程において、止水域に流出する地下水の勢いが激しくて止水セメントを充填している最中に、その周囲から漏水してしまう場合の補強工程の一例を示す図であり、図6(a)は、マンホール周壁の側断面図、図6(b)は、マンホール周壁の正面図である。
図6に示すように、止水用リング20が隠れる程度に止水セメント21を充填しても漏水が止まらないときには、別の止水用リング20を管口5から地下埋設管3にさらに被嵌して、別のホース14でも排水する。そして、漏水がほぼ止まった残余の止水域9に止水セメント21を充填し、壁面と面一になるまで詰める。
【0016】
図7は、止水域に薬液を注入する第3工程の一例を示す側断面図である。
図7に示すように、地下埋設管3の周囲のモルタル7を壁面からの深さLが3乃至5cm程度まで斫って止水域9が特定され、その止水域9に流出する地下水は、地下埋設管3に圧接させて被嵌された止水用リング20のホース14から排水される。そして、止水域9の全域に、止水用セメント21が充填されている。しかし、止水用リング20の内部は空洞であり、漏水した全ての地下水は、止水用リング20を形成する引張コイルばね11の隙間から侵入してホース14から排水されている。
次に、絞り込んだ地下水の流通ルートに薬液を注入し、そのルートを塞いで漏水を防ぐ。
先ず、止水域9の止水セメント21が硬化したら、薬液の入ったカートリッジ22をガン23に装填し、カートリッジ22のノズルを、低位の位置にあるホース14に嵌入し、充填する。そして高位の位置にあるホース14から薬液があふれ出るまで充填を継続する。
そして、低位の位置にあるホース14からの薬液注入が終了したら、念のために、高位の位置にあるホース14からも薬液注入をすることが好ましい。
薬液が硬化したら、壁面から突き出しているホース14を切断する。
ここで、薬液としては、水ガラス系、ウレタン系、尿素系、アクリルアミド系などがあるが、作業性の観点から、専用のガン23で注入できるカートリッジタイプのものが好ましく、かつ水に反応して発泡後ゴム状弾性ゲル化する親水性ポリウレタンカートリッジ
22が好適である。
ここでは、止水用リング20を一つ設置した場合を示しているが、止水用リング20を二つ設置する場合もそれと同様に行えばよいので、図は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
下水道管のみならず、上水道管、通信ケーブルや電力ケーブルの管路の管口周囲の壁面からの漏水を止水する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 マンホール
2 周壁
3 地下埋設管
4 孔
5 管口
6 漏水
7 モルタル
8 ひび割れや隙間
9 止水域
11 引張コイルばね
12 圧縮コイルばね
13 リング
14 ホース
15 連結部
16 溶接
20 止水用リング
21 止水セメント
22 カートリッジ
23 ガン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の周壁に設けた孔に捜通し、該周壁に固定された地下埋設管の管口周辺からの漏水を止水する管口止水工法であって、
前記管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って、前記漏水を止水する止水域を特定する第1工程と、
コイルばねの両端を結合して形成され、内径が前記地下埋設管外径よりも小さいリングと、該リングに連結されて該リング内部に侵入した水が導通する複数のホースとを有する止水用リングを前記止水域の奥部に存在する前記地下埋設管の外周面に被嵌し、前記止水域に流入する水を外部に排水すると共に、該止水域に止水セメントを充填する第2工程と、
前記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から流出するまで注入を継続する第3工程と、を含むことを特徴とする管口止水工法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記止水用リングが隠れる程度に前記止水セメントを充填しても前記漏水が止まらないときには、更に、別の該止水用リングを被嵌して残余の止水域に該止水セメントを充填する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の管口止水工法。
【請求項3】
前記第3工程は、前記別の前記止水用リングにおける前記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から該薬液が流出するまで継続する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の管口止水工法。
【請求項4】
前記第3工程は、前記ホースの他方からも前記薬液を注入し、注入した薬液が硬化した後に、前記壁面から突出した該ホースを切断する工程を含むことを特徴とする請求項1又は3記載の管口止水工法。
【請求項5】
コイルばねの両端を結合して形成され、内径がコンクリート構造物の周壁に固定された地下埋設管の外径よりも小さいリングと、該リングに連結され、該コイルばねの隙間から該リング内部の空洞に侵入した水が導通する複数のホースとを有し、
該地下埋設管の管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って特定された止水域の奥部に存在する該地下埋設管の外周面に該リングを被篏して圧接し、該止水域に流出する地下水を該ホースで外部に排水し、かつ止水セメントを該止水域に充填し、絞り込んだ地下水の流通ルートに該ホースから薬液を注入して止水することを特徴とする止水用リング。
【請求項6】
前記リングは、所定の外径を有する長尺の引張コイルばねの両端を溶接若しくは接着して形成され、該リングの少なくとも2か所に、外径が該引張コイルばねの外径以下の短尺の圧縮コイルばねを該引張コイルばねに係止させて、前記ホースを被嵌させる連結部が設置されたことを特徴とする請求項5記載の止水用リング。
【請求項7】
請求項5記載の止水用リングと、前記ホースに嵌入するノズルを有し、所定の薬液が充填されたカートリッジとを備えたことを特徴とする管口止水具セット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の管口止水工法は、コンクリート構造物の周壁に設けた孔に捜通し、該周壁に固定された地下埋設管の管口周辺からの漏水を止水する管口止水工法であって、
上記管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って、上記漏水を止水する止水域を特定する第1工程と、コイルばねの両端を結合して形成され、内径が上記地下埋設管外径よりも小さいリングと、該リングに連結されて該リング内部に侵入した水が導通する複数のホースとを有する止水用リングを上記止水域の奥部に存在する上記地下埋設管の外周面に被嵌し、上記止水域に流入する水を外部に排水すると共に、該止水域に止水セメントを充填する第2工程と、上記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から流出するまで注入を継続する第3工程と、を含むことを特徴とする。
このように、管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って、止水域とし、コイルばねで形成されたリングにホースを連結した止水用リングを地下埋設管に被嵌し、止水域に流入する水をホースで外部に排水する方法を用いれば、その止水域に止水セメントを確実に充填することができる。また、そのように止水セメントを充填したうえで、ホースから薬液を注入すれば、止水用リングの内部や止水域の漏水箇所などの空隙のある個所に薬液が広範囲に、確実に注入されるので長期に亘り漏水を止水することができる。
ここで、上記第2工程は、上記止水用リングが隠れる程度に上記止水セメントを充填しても上記漏水が止まらないときには、更に、別の該止水用リングを被嵌して残余の止水域に該止水セメントを充填する工程を含むことができる。
また、上記第3工程は、上記別の上記止水用リングにおける上記ホースの一つから所定の薬液を注入し、他方から該薬液が流出するまで継続する工程を含むことも、上記ホースの他方からも上記薬液を注入し、注入した薬液が硬化した後に、上記壁面から突出した該ホースを切断する工程を含むことも好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の止水用リングは、コイルばねの両端を結合して形成され、内径がコンクリート構造物の周壁に固定された地下埋設管の外径よりも小さいリングと、該リングに連結され、該コイルばねの隙間から該リング内部の空洞に侵入した水が導通する複数のホースとを有し、該地下埋設管の管口周囲を壁面から少なくとも3センチメートル程度斫って特定された止水域の奥部に存在する該地下埋設管の外周面に該リングを被篏して圧接し、該止水域に流出する地下水を該ホースで外部に排水し、かつ止水セメントを該止水域に充填し、絞り込んだ地下水の流通ルートに該ホースから薬液を注入して止水することを特徴とする
そして、上記リングは、所定の外径を有する長尺の引張コイルばねの両端を溶接若しくは接着して形成され、該リングの少なくとも2か所に、外径が該引張コイルばねの外径以下の短尺の圧縮コイルばねを該引張コイルばねに係止させて、上記ホースを被嵌させる連結部が設置されたことが好ましい。
このようにすれば、管口止水工法に用いる止水用リングを低コストで簡単に作成することができる。
本発明の管口止水具セットは、上記止水用リングと、上記ホースに嵌入するノズルを有し、所定の薬液が充填されたカートリッジとを備えたことを特徴とする。