(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013486
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】吸収性複合体、吸収性複合体の製造方法、吸収性物品、衛生材料、及び医療用品
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220111BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220111BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20220111BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20220111BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20220111BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20220111BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20220111BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220111BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220111BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220111BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20220111BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20220111BHJP
A61L 15/60 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08J3/12
A61F13/53 300
C08L101/12
C08L1/00
C08F220/06
C08F8/00
B01J20/24 B
B01J20/26 D
B01J20/26 H
B01J20/28 Z
B01J20/28 A
B01J20/30
A61L15/24 100
A61L15/28 100
A61L15/60 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】35
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020126843
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】520277793
【氏名又は名称】陳 兵
(72)【発明者】
【氏名】陳 兵
【テーマコード(参考)】
3B200
4C081
4F070
4G066
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3B200AA01
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4J100HC39
4J100HE12
4J100JA51
4J100JA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乳、血液等のたんぱく質や、固形成分を含有する液体に対しても十分な吸収性を示し、シート形状に加工しこれを使用した際においても、吸収した液の戻りが少なく、漏れにくく、繰り返し吸収性に優れ、吸収量と吸収速度の両立が可能な吸収性複合体を提供する。
【解決手段】吸収性複合体は、吸収性樹脂と親水性繊維とを含み、ヘマトクリット値90%血液に5分間浸漬した際の吸収量が2~18g/gであり、下記式(1)で示される血液濃度依存特性が0.20以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性樹脂と親水性繊維とを含み、
ヘマトクリット値90%血液に5分間浸漬した際の吸収量が2~18g/gである吸収性複合体。
【請求項2】
下記式(1)で示される血液濃度依存特性が0.20以上である、請求項1に記載の吸収性複合体。
【数1】
【請求項3】
吸水性樹脂と親水性繊維とを含み、
全反射赤外分光法により得られる4000-400cm-1の最大ピークを0.18、ベースラインを0に規格化した際のCO伸縮振動(1650-1500cm-1)のピーク強度が0.08以下である吸収性複合体。
【請求項4】
粒子状である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項5】
前記吸収性樹脂の周囲を前記親水性繊維が被覆している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項6】
前記親水性繊維がセルロースを含有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項7】
前記親水性繊維の平均粒子径が10~200μmである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項8】
含水率5~5.2%に調整した吸収性複合体をパルスNMR測定して得られる100μs以上の緩和時間を有する成分の比率が10~21%である、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項9】
流動電位法により得られるゼータ電位の絶対値が14.8mV以上である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項10】
前記吸収性複合体の耐衝撃指数が0.1~12g/gである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項11】
湿潤時の平均粒子径が、乾燥時の平均粒子径よりも大きい、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項12】
タップ密度が、0.50g/mL以下である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項13】
濡れ張力が45mN/m以上である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項14】
前記親水性繊維の脱離率が10%以下である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項15】
前記親水性繊維が、前記吸収性樹脂の表面に付着している、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項16】
前記吸収性複合体中、前記吸収性樹脂の表面が露出している吸収性樹脂の数が、500個中に50個以下である、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項17】
粒子径が1mm以上の前記吸収性複合体と粒子径が1mm以上の前記吸収性樹脂とが、合計で、
前記吸収性複合体0.25g中に100個以下の割合で存在する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項18】
前記吸収性樹脂の平均粒子径が300μm以下である、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項19】
前記吸収性樹脂が酸基を有し、
前記吸収性複合体内部の前記吸収性樹脂の酸基量に対して、
前記吸収性複合体の表面における酸基量が10モル%以下である、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の吸収性複合体。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の吸収性複合体の製造方法であって、
吸収性樹脂と、予め含水させた親水性繊維とを混合して含水状態の複合体を得る工程と、
前記複合体を乾燥し、吸収性複合体を得る工程と、
を、有する、吸収性複合体の製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の吸収性複合体の製造方法であって、
吸収性樹脂と親水性繊維を混合する工程と、
平均液滴が300μm以下の水滴を添加する工程と、
を、有する、吸収性複合体の製造方法。
【請求項22】
前記吸水性樹脂と親水性繊維を混合する工程を、垂直型の浮遊式混合器を用いて行う、請求項20又は21に記載の吸収性複合体の製造方法。
【請求項23】
前記吸水性樹脂と親水性樹脂を混合する工程の前に、
予め前記垂直型の浮遊式混合器の内部の相対湿度を55%以下にする、請求項22に記載の吸収性複合体の製造方法。
【請求項24】
前記吸水性樹脂と親水性樹脂を混合する工程を、
混合器の羽の回転数を、フルード数が0.3~5.0の範囲として行う、
請求項20乃至23のいずれか一項に記載の吸収性複合体の製造方法。
【請求項25】
繊維及び/又は繊維集合体と、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の吸収性複合体と、
を、具備する吸収性物品。
【請求項26】
嵩密度が0.004g/cm3以上0.900g/cm3以下であり、
かつ厚みが0.2mm以上15mm以下である、請求項25に記載の吸収性物品。
【請求項27】
2層以上の多層構造からなり、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の吸収性複合体を含まない層を具備する、
請求項25又は26に記載の吸収性物品。
【請求項28】
繊維及び/又は繊維集合体と、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の吸収性複合体の少なくとも一部が、接着剤により接着されている請求項25乃至27のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項29】
前記繊維及び/又は繊維集合体に、熱可塑性繊維が含まれており、
前記熱可塑性繊維と、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の吸収性複合体の少なくとも一部が、熱融着されている、請求項25乃至28のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項30】
前記吸収性複合体が存在する層の上層側の繊維と、下層側の繊維の少なくとも一部が、交絡、又は融着している、請求項27乃至29のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項31】
幅2mm以下の連続した線状の凹みを有する、請求項25乃至30のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項32】
吸収性複合体を分離する工程、吸収性複合体を積層する工程、吸収性複合体を固定化する工程を含むことを特徴とする、請求項25乃至31のいずれか一に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項32】
吸収性複合体を分離する工程、吸収性複合体を積層する工程を篩によって行うことを特徴とする請求項32に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項33】
請求項25乃至31のいずれか一項に記載の吸収性物品を含む、衛生材料。
【請求項34】
請求項25乃至31のいずれか一項に記載の吸収性物品を含む、医療用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性複合体、吸収性複合体の製造方法、吸収性物品、衛生材料、及び医療用品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大量の水を吸収してゲル化する吸収性樹脂が開発され、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料分野を中心に利用されている。
【0003】
吸収性樹脂は、通常、微粉末状で得られるため、単独では取り扱い性が悪く、衛生材料分野においては、前記吸収性樹脂をパルプ等と混合し、袋に詰めて使用したり、シート状に加工して使用したりしている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、吸水性樹脂を固定してシートとするために、熱溶融性の接着剤を用いて吸水性樹脂を結合させる技術が開示されている。
特許文献2においては、粉砕パルプと熱可塑性繊維との混合物に熱処理を加えてシート状に成形し、当該シート状の成形物に吸水性樹脂の粉末固体を担持させる技術が開示されている。
特許文献3においては、吸水性樹脂中の粘着成分を利用し、含水したパルプと吸水性樹脂を乾燥させながら固着させる技術が開示されている。
特許文献4においては、吸水性樹脂とパルプ等の繊維状材料とを均一に混合し、水を用いてパルプ同士の水素結合を形成させ、シート状に成形する技術が開示されている。
特許文献5においては、重合進行中の吸収性ポリマー粒子を繊維質基材に付着させ、繊維質基材上で吸水性樹脂の重合を行う技術が開示されている。
特許文献6においては、親水性の基材へ吸水性樹脂を直接結合させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3196933号公報
【特許文献2】特開昭53-4789号公報
【特許文献3】特開昭56-60556号公報
【特許文献4】特表2003-508647号公報
【特許文献5】特開2003-11118号公報
【特許文献6】国際公開第2006/121148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来提案されている吸収性樹脂は、水分に対しては良好な吸収性を示しているものの、乳、血液等のたんぱく質や、固形成分を含む液体に対しては、未だ十分な吸収性を発現できず、特に、シート形状に加工し、これを使用した際には、実用上十分な吸収性が得られていない、という問題を有している。
また、従来提案されている吸収性樹脂は、例えば、血液吸収後の血液の保持力が低く、吸収した血液の戻りが多く、血液の捕獲力が低く、漏れやすく、繰り返し吸収性が悪く、吸収量を上げると吸収速度が低下してしまう等の問題を有している。
【0007】
そこで、本発明においては、実用上十分な特性、例えば、乳、血液等のたんぱく質や、固形成分を含有する液体に対しても十分な吸収性を示し、シート形状に加工しこれを使用した際においても、吸収した液の戻りが少なく、漏れにくく、繰り返し吸収性に優れ、吸収量と吸収速度の両立が可能な吸収性複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記従来技術の課題に対して鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有し、かつ通常のレベルを超えた高濃度の血液の吸収量が特定範囲である吸収性複合体が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕
吸収性樹脂と親水性繊維とを含み、
ヘマトクリット値90%血液に5分間浸漬した際の吸収量が2~18g/gである吸収性複合体。
〔2〕
下記式(1)で示される血液濃度依存特性が0.20以上である、前記〔1〕に記載の吸収性複合体。
【0010】
【0011】
〔3〕
吸水性樹脂と親水性繊維とを含み、
全反射赤外分光法により得られる4000-400cm-1の最大ピークを0.18、ベースラインを0に規格化した際のCO伸縮振動(1650-1500cm-1)のピーク強度が0.08以下である吸収性複合体。
〔4〕
粒子状である前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔5〕
前記吸収性樹脂の周囲を前記親水性繊維が被覆している、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔6〕
前記親水性繊維がセルロースを含有する、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔7〕
前記親水性繊維の平均粒子径が10~200μmである、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔8〕
含水率5~5.2%に調整した吸収性複合体をパルスNMR測定して得られる100μs以上の緩和時間を有する成分の比率が10~21%である、
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔9〕
流動電位法により得られるゼータ電位の絶対値が14.8mV以上である、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔10〕
前記吸収性複合体の耐衝撃指数が0.1~12g/gである、前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔11〕
湿潤時の平均粒子径が、乾燥時の平均粒子径よりも大きい、前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔12〕
タップ密度が、0.50g/mL以下である、前記〔1〕乃至〔11〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔13〕
濡れ張力が45mN/m以上である、前記〔1〕乃至〔12〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔14〕
前記親水性繊維の脱離率が10%以下である、前記〔1〕乃至〔13〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔15〕
前記親水性繊維が、前記吸収性樹脂の表面に付着している、前記〔1〕乃至〔14〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔16〕
前記吸収性複合体中、前記吸収性樹脂の表面が露出している吸収性樹脂の数が、500個中に50個以下である、前記〔1〕乃至〔15〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔17〕
粒子径が1mm以上の前記吸収性複合体と粒子径が1mm以上の前記吸収性樹脂とが、合計で、
前記吸収性複合体0.25g中に100個以下の割合で存在する、前記〔1〕乃至〔16〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔18〕
前記吸収性樹脂の平均粒子径が300μm以下である、前記〔1〕乃至〔17〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔19〕
前記吸収性樹脂が酸基を有し、
前記吸収性複合体内部の前記吸収性樹脂の酸基量に対して、
前記吸収性複合体の表面における酸基量が10モル%以下である、前記〔1〕乃至〔18〕のいずれか一に記載の吸収性複合体。
〔20〕
前記〔1〕乃至〔19〕のいずれか一に記載の吸収性複合体の製造方法であって、
吸収性樹脂と、予め含水させた親水性繊維とを混合して含水状態の複合体を得る工程と、
前記複合体を乾燥し、吸収性複合体を得る工程と、
を、有する、吸収性複合体の製造方法。
〔21〕
前記〔1〕乃至〔19〕のいずれか一に記載の吸収性複合体の製造方法であって、
吸収性樹脂と親水性繊維を混合する工程と、
平均液滴が300μm以下の水滴を添加する工程と、
を、有する、吸収性複合体の製造方法。
〔22〕
前記吸水性樹脂と親水性繊維を混合する工程を、垂直型の浮遊式混合器を用いて行う、前記〔20〕又は〔21〕に記載の吸収性複合体の製造方法。
〔23〕
前記吸水性樹脂と親水性樹脂を混合する工程の前に、
予め前記垂直型の浮遊式混合器の内部の相対湿度を55%以下にする、前記〔22〕に記載の吸収性複合体の製造方法。
〔24〕
前記吸水性樹脂と親水性樹脂を混合する工程を、
混合器の羽の回転数を、フルード数が0.3~5.0の範囲として行う、
前記〔20〕乃至〔23〕のいずれか一に記載の吸収性複合体の製造方法。
〔25〕
繊維及び/又は繊維集合体と、
前記〔1〕乃至〔19〕のいずれか一に記載の吸収性複合体と、
を、具備する吸収性物品。
〔26〕
嵩密度が0.004g/cm3以上0.900g/cm3以下であり、
かつ厚みが0.2mm以上15mm以下である、前記〔25〕に記載の吸収性物品。
〔27〕
2層以上の多層構造からなり、
前記〔1〕乃至〔19〕のいずれか一に記載の吸収性複合体を含まない層を具備する、
前記〔25〕又は〔26〕に記載の吸収性物品。
〔28〕
繊維及び/又は繊維集合体と、
前記〔1〕乃至〔19〕のいずれか一に記載の吸収性複合体の少なくとも一部が、接着剤により接着されている、前記〔25〕乃至〔27〕のいずれか一に記載の吸収性物品。
〔29〕
前記繊維及び/又は繊維集合体に、熱可塑性繊維が含まれており、
前記熱可塑性繊維と、前記〔1〕乃至〔19〕のいずれか一に記載の吸収性複合体の少なくとも一部が、熱融着されている、前記〔25〕乃至〔28〕のいずれか一に記載の吸収性物品。
〔30〕
前記吸収性複合体が存在する層の上層側の繊維と、下層側の繊維の少なくとも一部が、交絡、又は融着している、前記〔27〕乃至〔29〕のいずれか一に記載の吸収性物品。
〔31〕
幅2mm以下の連続した線状の凹みを有する、前記〔25〕乃至〔30〕のいずれか一に記載の吸収性物品。
〔32〕
吸収性複合体を分離する工程、吸収性複合体を積層する工程、吸収性複合体を固定化する工程を含むことを特徴とする、前記〔25〕乃至〔31〕のいずれか一に記載の吸収性物品の製造方法。
〔33〕
吸収性複合体を分離する工程、吸収性複合体を積層する工程を篩によって行うことを特徴とする前記〔32〕に記載の吸収性物品の製造方法。
〔34〕
前記〔25〕乃至〔31〕のいずれか一に記載の吸収性物品を含む、衛生材料。
〔35〕
前記〔25〕乃至〔31〕のいずれか一に記載の吸収性物品を含む、医療用品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、乳、血液等のたんぱく質や固形分を含む液体に対しても十分な吸収性を示し、シート形状に加工してこれを使用した際においても吸収した液の戻りが少なく、漏れにくく、繰り返し吸収性に優れ、かつ、吸収量と吸収速度の両立が可能な、実用上の特性に優れた吸収性複合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0014】
〔吸収性複合体〕
本実施形態に係る吸収性複合体は、吸収性樹脂と親水性繊維とを含み、ヘマトクリット値90%血液に5分間浸漬した際の血液の吸収量が2~18g/gである。
なお、「ヘマトクリット値」とは、血液中の固形分(血球)の濃度を示す値である。
通常の血液のヘマトクリット値はおよそ50%である。
【0015】
本実施形態の吸収性複合体は、固形分(血球)濃度の高い血液を、高い吸収量で吸収することができる。
ヘマトクリット値90%血液に5分間浸漬した際の吸収量が上記数値範囲であることにより、通常濃度の血液の吸収量と吸収速度のバランスが良好なものとなる。
また、本実施形態の吸収性複合体を衛材用品の吸収体として使用した場合、液の捕獲力に優れるため、血液の漏れを抑えることができる。
本実施形態の吸収性複合体のヘマトクリット値90%血液の吸収量は、吸収速度の観点から2g/g以上であるものとし、好ましくは3.5g/g以上、より好ましくは5.5g/g以上、さらに好ましくは7g/g以上、さらにより好ましくは9g/g以上である。
また、吸収量の上限値については、血液の吸収量と吸収速度のバランスの観点から、18g/g以下であるものとし、好ましくは16g/g以下、より好ましくは15g/g以下であり、さらに好ましくは14g/g以下、さらにより好ましくは13g/g以下である。
【0016】
本実施形態の吸収性複合体におけるヘマトクリット値90%血液の吸収量は、吸収性樹脂と親水性繊維を適切に複合化することにより、2~18g/gに制御することができる。例えば、後述のとおり吸収性樹脂と親水性繊維とを混合する際に水を添加するが、予め吸収性樹脂と親水性繊維とを混合した後に水を添加する方法、添加する水の水滴径を制御する、等の方法が挙げられる。
なお、後述するように、市販の吸収性物品は吸収性複合体が他のセルロース繊維などと一緒にシート状に加工されている場合が多い。このような場合であっても、前記シート状に加工された吸収性物品をイソプロピルアルコール中に浸漬することにより、シート状に加工された吸収性物品を構成するセルロースがほぐれ、セルロースと吸収性複合体が分離し、分離され浮遊しているセルロースを除去することにより、吸収性複合体を取り出すことができる。上述した血液の吸収量や、後述する吸収性複合体の各種特性は、このようにして吸収性物品から分離した吸収性複合体を用いて測定することも可能である。
【0017】
通常、吸収性複合体の血液の吸収量は血液のヘマトクリット値によって異なる。
本実施形態の吸収性複合体は、下記式(1)で示される血液濃度依存特性が0.20以上であることが好ましい。
【0018】
【0019】
上記式(1)で示される血液濃度依存特性が0.20以上であることにより、血液のヘマトクリット値の違いによる吸収量の違いが小さくなり、血液吸収後の保持力をより高く保つことができ、かつ繰り返し吸収性をより高めることができる。
上記式(1)で示される血液濃度依存特性は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.55以上、さらにより好ましくは0.6以上である。
血液の固形分濃度が高いほど吸収性複合体の血液吸収量は減少するので、上記式(1)で示される血液濃度依存特性の値が1.0を超えることはないが、上記式(1)で示される血液濃度依存特性の上限は1.0に近いほど好ましい。
上記式(1)で示される血液濃度依存特性は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0020】
本実施形態の吸収性複合体における、上記式(1)で示される血液濃度依存性は、吸収性樹脂と親水性繊維を特定の構造に複合化することにより、0.20以下に制御することができる。例えば、吸収性樹脂と親水繊維とを混合する際の割合、混合条件を適正化する等の方法が挙げられる。
【0021】
本実施形態の吸収性複合体の形状は、上記特性を有していれば、特に限定されるものではないが、表面積を高め、吸収速度を向上させるという観点から、粒子状であることが好ましく、例えば、略球形状の吸収性樹脂と、後述する親水性繊維とを含み、親水性繊維が吸収性樹脂の表面の少なくとも一部を覆うように付着していることが好ましく、吸収性樹脂の周囲を親水性繊維が被覆していることがより好ましい。
【0022】
本実施形態の吸収性複合体は、吸収性樹脂と親水性繊維とを含むことから、吸収性樹脂単独の場合に比べて、吸水速度が速く、ドライ感に優れる。
また、上記のように、吸収性樹脂の周囲を親水性繊維が被覆していることにより親水性繊維が液体を補足し、速やかに吸収性樹脂へ送り込むことができる。また、親水性繊維が、吸収性樹脂同士の接触を防ぎ、吸収性樹脂の膨潤を阻害するゲルブロッキングの形成を防止することができる。さらに、本実施形態の吸収性複合体はゲルブロッキング防止のために別途衛生材料を設ける必要がないため、使用部材数の低減化が図られ、衛生材料等の製造プロセスの簡略化、省資源化にも貢献することもできる。
さらには、本実施形態の吸収性複合体は、吸収性樹脂表面が露出している部分が少なく、親水性繊維に覆われていることが好ましい。これにより、親水性繊維により、たんぱく質、血球等の電荷を持った吸収阻害物質が、電気的に吸収性樹脂表面に付着することが抑制されるため、吸収性樹脂の吸収性能を効果的に発揮できる。
【0023】
(吸収性樹脂)
本実施形態の吸収性複合体は、吸収性樹脂を具備している。
吸収性樹脂とは、液体に対し、吸収・保持性能を有するものを言う。
吸収性樹脂は、樹脂の種類は特に限定されるものではなく、液体に対し、吸収性能を有するものであればよい。
吸収性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリル酸部分中和物重合架橋体(例えば特開昭55-84304号公報参照)、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物(例えば特公昭49-43395号公報参照)、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物(例えば特開昭51-125468号公報参照)、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体の鹸化物(例えば特開昭52-14689号公報参照)、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物(例えば特公昭53-15959号公報参照)、ポリグルタミン酸塩(例えば特開2003-192794号公報参照)等が挙げられる。
【0024】
本実施形態の吸収性複合体に用いる吸収性樹脂としては、吸収性能、コスト等の観点から、ポリアクリル酸を主体とした重合架橋体が好ましく、ポリアクリル酸塩共重合体及び/又はポリアクリル酸部分中和物重合架橋体、アクリル酸とアクリル酸塩との混合物の重合体がより好ましい。
ポリアクリル酸塩共重合体としては、以下に示すモノマーの共重合体等が挙げられる。以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の酸、又は部分中和物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリアクリル酸部分中和物重合架橋体及びアクリル酸とアクリル酸塩との混合物の重合体としては、ポリマー分子鎖中における構成単位、詳細には、中和されたカルボキシル基とカルボン酸の合計の、全構成単位に対し、50mol%以上がカルボキシル基を有する構成単位であるものが好ましく、80mol%以上であるものがより好ましく、90mol%以上であるものがさらに好ましい。
カルボキシル基を含有する構成単位の割合が50mol%以上であることにより、充分な吸収性能が得られる。
また、ポリアクリル酸を主体とした重合架橋体中のカルボキシル基は一部が中和(部分中和)されて塩を形成していることが好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニア等の含窒素塩基性物の塩が挙げられる。
カルボキシル基の30mol%以上が中和されていることが好ましく、50mol%以上が中和されていることがより好ましく、70mol%以上が中和されていることが更に好ましい。
【0025】
(酸基)
本実施形態の吸収性複合体に用いる吸収性樹脂は酸基を有することが好ましい。
吸収性樹脂が側鎖に酸基を有していることにより、液体吸収時に酸基同士の静電反発が起こり、吸収速度が速くなるため好ましい。また、酸基が中和されていると、浸透圧により液体が吸収性樹脂の内部に吸収されるため好ましく、酸基を中和する塩により親水性繊維と吸収性樹脂とが直接接着しやすくなるため好ましい。
酸基の種類は特に限定されないが、吸収速度を高める観点から、カルボキシル基、スルホン酸基等の電離性の酸基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
吸収量を高める観点から、酸基のうち50~90mol%が部分中和されていることが好ましい。
酸基を中和する塩の種類は特に限定されず、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、アンモニア等が挙げられるが、吸収性能の観点からナトリウム塩及び/又はアンモニウム塩で中和されていることが好ましい。
【0026】
(酸基比率)
水分を高速に吸収するための原動力としては、浸透圧の寄与が大きいため、本実施形態においては、酸基を含有する構造の吸収性樹脂を用いることが好ましい。
しかしながら、酸基は電荷をもつため、タンパク質や固形分を含む液体を吸収する場合、前記酸基にタンパク質や固形分が吸着、結合しやすく、これにより吸収性複合体全体が凝集してしまうおそれがあり、吸収能力の低下を招来するおそれがある。
特に、吸収性樹脂が水分を吸収していくと、それに従ってタンパク質や固形分は濃縮されていくため、高濃度のタンパク質や固形分を含有する液体の高い吸収性が要求されるが、酸基による吸着量・吸着速度はタンパク質や固形分の濃度が増加すると共に加速度的に増加することから、タンパク質や固形分が濃縮されていくと、吸収性複合体全体の吸収能力は、一層、低下するおそれがある。
本実施形態の吸収性複合体においては、液体の吸収性と、吸着性樹脂の酸基に対するタンパク質や固形分の非吸着性を両立するため、吸収性複合体の内部の吸収性樹脂の酸基濃度は高く保ったまま、吸収性複合体粒子の表面における酸基量を低減化することが好ましい。
本実施形態の吸収性複合体においては、当該吸収性複合体粒子の表面における酸基の量は、吸収性複合体粒子の内部、すなわち吸収性樹脂の酸基の量を基準(100モル%)に対して10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下とし、さらに好ましくは1モル%以下である。
【0027】
上述したように、吸収性複合体内部の吸収性樹脂の酸基量(100モル%)に対して、吸収性複合体の表面における酸基量を10モル%以下とするためには、親水性繊維が吸収性樹脂の表面に付着し、吸収性樹脂を覆うよにすることが有効である。
【0028】
吸収性樹脂の酸基の量は、例えば、赤外分光法(IR)により定量することができる。
吸収性樹脂の粒子の表面における酸基の量については、全反射赤外線分光法(ATR)測定により、吸収性樹脂の粒子の内部における吸収性樹脂の酸基の量については、吸収性樹脂の粒子を切断した断面のATR測定により、それぞれ測定することができる。
なお、ATR測定では測定時の圧力が重要であり、4000~400cm-1の最大のピークのAbsorbanceが0.15~0.20の間になるような条件に圧力を調整して行う。
酸基の定量は、酸基に応じた特徴的なピークを利用して適宜行えばよく、例えば、酸基がカルボキシル基の場合には、1650~1500cm-1のカルボニルの伸縮振動(CO伸縮振動)のピークを使うことができる。
酸基がスルホン酸の場合には、1350~1300cm-1、又は、1160~1120cm-1のSO2伸縮運動のピークを使うことができる。
吸収性樹脂の粒子表面、及び、吸収性樹脂の粒子内部の、酸基の量を比較する際には、規格化を行って差分を取ればよく、ピークのない領域(吸収性樹脂がポリアクリル酸系吸収性樹脂、セルロース繊維から構成されている場合は、2500~1800cm-1の領域)のベースラインのAbsorbanceを0、最大ピークの大きさを0.18になるように規格化する。
【0029】
吸収性複合体を粒子にみたてた場合、当該吸収性複合体の表面にカルボキシル基が存在しない場合においても、吸収性樹脂の粒子の表面、すなわち親水性繊維との界面からケトンやエステル等のカルボニルのピークが観測される場合があるが、この場合は、ピーク分離を行って分析することもできるし、IR以外の手法で分析してもよい。
なお、カルボキシル基ほどではないが、吸収性複合体の表面にカルボニル基を含有しているとタンパク質や固形分の吸着が起こりやすい傾向があるため、由来にかかわらず、吸収性複合体の表面のカルボニル基のピークは小さいほど好ましい。
吸収性複合体内部、すなわち吸収性樹脂の表面と、吸収性複合体表面のカルボニルピークの値の比較も、適宜規格化して行うことができる。
【0030】
本実施形態の吸収性複合体に含まれる吸収性樹脂は、吸収速度を高める観点から、平均粒子径が300μm以下であることが好ましく、270μm以下であることがより好ましく、240μm以下であることがさらに好ましい。
下限値については、取り扱い性の観点から、80μm以上であることが好ましい。
吸収性樹脂の平均粒子径は、篩分けにより測定することができる。
また、吸収性樹脂の平均粒子径は、乳化重合や懸濁重合により所定の粒子径になるように重合すること、水溶液重合により得られたゲルの粉砕条件を調整すること、篩分けにより所定範囲の粒子径を回収することにより制御することができる。
【0031】
(親水性繊維)
本実施形態の吸収性複合体は、親水性繊維を含む。
親水性繊維とは、接触した液体を内部に取り込む機能を有する繊維である。
親水性繊維は、接触した液体を内部に取り込むことができれば特に限定されず任意のものを使用することができる。なお、親水性繊維の内部に取り込まれた液体は、親水性繊維から吸収性樹脂に送られ、吸収性樹脂の内部で保持される。
【0032】
親水性繊維の素材は、特に限定されるものではなく、素材として親水性である綿、麻、毛、絹、レーヨン、ポリノジック、リヨセル、キュプラ、パルプ等の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の合成繊維に親水化処理を施したものでもよい。
親水性繊維の素材としては、親水性であるもの、又は、ナイロンが好ましく、セルロースを含有することがより好ましく、セルロース系繊維がさらに好ましい。
セルロース系繊維とは、セルロースを主原料として含有する繊維のことを表す。
ここで「主原料」とは、セルロースを50質量%以上含有することを意味する。
セルロースは、例えば、エステル化、エーテル化等の処理により誘導体化されたものを使用してもよい。
また、親水性繊維は、上記セルロース系繊維と他の繊維とを混合したものを用いてもよい。
セルロース系繊維としては、例えば、綿、麻、レーヨン、ポリノジック、リヨセル、キュプラ、パルプ等が挙げられる。これらの中でも、パルプが好ましい。パルプとしては、木材パルプでも、非木材パルプでもよい。木材パルプでは、針葉樹を使用してもよいし、広葉樹を使用してもよい。
非木材パルプとしては、例えば、バガス、草・藁・竹等を挙げることができる。また、古紙等からも再生してパルプとすることもできるが、衛生材料に使用する場合には、木材等から直接製造されるバージンパルプであることが好ましい。
【0033】
上述した親水性繊維の形状は、特に限定されない。
親水性繊維の形状としては、例えば、繊維状、粒子状、棒状、鱗片状、針状、ひも状等の形状が挙げられる。
【0034】
パルプは、衛生材料において、吸収性樹脂を絡めて担持させる目的、液体の捕獲性を高める目的等で広く利用されている。このような目的でパルプを利用する場合において、パルプは、通常、原料を粉砕し繊維状にした状態で使用される。繊維同士の絡み合いを利用して吸収性樹脂を効率よく担持するためには、パルプは、10~13mm程度の長い繊維の状態で好ましく使用されている。しかしながら、このような長い繊維長を得ることを目的として原料の粉砕を行っても、使用に適さない微粉末も同時に生成してしまうおそれがある。このような微粉末は衛生材料製造工程では、拡散してロスとなるため、従来においては、除去されている。
【0035】
本実施形態においては、従来、ロスとなっていた小さい粒子径のパルプを中心として使用することができる。
このような微粉末状の親水性繊維を、パルプ原料を粉砕して得ることは、長い繊維状の親水性繊維を得るよりも簡便な装置で行うことができる。また、得られるパルプの粒子径分布を狭くすることもできる。粒子径の小さな粉砕パルプを使用した方が、従来と比較してパルプのロスが減り生産性が上がるため好ましい。
【0036】
本実施形態の吸収性複合体に含まれる親水性繊維の平均粒子径は、10~200μmであることが好ましく、20~130μmであることがより好ましく、30~120μmであることがさらに好ましく、50~110μmであることがさらにより好ましく、60~100μmであることがよりさらに好ましい。
親水性繊維の平均粒子径が10~200μmであることにより、吸水性樹脂同士のブロッキングを防止し、液体を一次捕獲し吸水性樹脂へと液体を送り込む層として十分な厚みを維持でき、かつ、過度な親水性繊維同士の絡み合いが抑制でき吸水速度が向上するといった効果が得られる。
親水性繊維の平均粒子径を10μm以上とすることにより、吸収性樹脂同士の接触を防ぐことができ、また、本実施形態の吸収性複合体と液体とが接触した際に、吸収性樹脂表面に液体が直接接触することを防止できる。
一方、親水性繊維の平均粒子径を200μm以下とすることにより、親水性繊維同士の絡み合い凝集による通液性の低下、及び、取り扱い性の悪化を効果的に防止できる。
【0037】
親水性繊維の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、測定することができる。
すなわち、親水性繊維の平均粒子径は、分散媒体として水に分散させた親水性繊維を超音波で1分間処理し、25℃における体積基準のメジアン径を測定することにより得られる。
具体的には、後述の実施例に記載する方法により測定することができる。
また、本実施形態の吸収性複合体は、固形分を抑制し、親水性を高めることで吸収性能が高まるという観点から、吸収性樹脂の表面に親水性繊維が付着したものであることが好ましい。
付着した親水性繊維がはがすことができれば、これをはがすことにより上述の方法で親水繊維の平均粒子径を求めることができる。
【0038】
親水性繊維の平均粒子径は、本実施形態の吸収性複合体を製造する工程中で調整することもできるが、あらかじめ平均粒子径の調整された親水性繊維を使用して、吸収性複合体を製造することが好ましい。
なお、吸収性複合体中の親水性繊維の平均粒子径については、適宜方法を選択して親水性繊維と吸水性樹脂を分離することにより測定することができる。
例えば、吸収性樹脂がアクリル酸系樹脂の場合であれば、吸水状態で紫外線をあてることにより吸収性樹脂を水溶化させることができる。吸収性樹脂を水溶化すれば、ろ過等により親水性繊維を分離することができ、これにより親水性繊維の平均粒子径を測定することができる。
上記と同様に、使用する親水性繊維、吸収性樹脂の種類に応じて、適した分離方法を選択すればよい。
【0039】
親水性繊維の粒度に関しては、JIS Z 8901に従い、篩にて粒度を測定した場合、目開き100μmの篩を50質量%以上通過するものであることが好ましく、70質量%以上通過するものであることがより好ましく、80質量%以上通過するものであることがさらに好ましく、90質量%以上通過するものであることがさらにより好ましい。
また、目開き75μmの篩を50質量%以上通過するものであることが好ましく、70質量%以上通過するものであることがより好ましく、80質量%以上通過するものであることがさらに好ましく、90質量%以上通過するものであることがさらにより好ましい。
親水性繊維の粒度が上記数値範囲であると、親水性繊維同士の絡み合いを効果的に防止できる。
【0040】
親水性繊維の濡れ張力は、45mN/m以上であることが好ましく、50mN/m以上であることがより好ましく、55mN/m以上であることがさらに好ましい。
親水性繊維の濡れ張力が高いほど、良好な吸収性を示す。
親水性繊維の濡れ張力は、後述する実施例に記載する吸収性複合体の濡れ張力と同様の方法で測定することができる。
【0041】
親水性繊維の血液吸収量は2~8g/gであることが好ましく、3~6g/gであることがより好ましい。
親水性繊維の血液保液量は2~6g/gであることが好ましく、3~5g/gであることがより好ましい。
ここで、吸収量とは血液に浸漬後、軽くふき取った後に保持している量であり、保液量とは血液に浸漬後、完全に絞りとった後に保持している量である。
親水性繊維の血液吸収量が2g/g以上であることにより、吸収性複合体としての吸収性も実用上十分なレベルで得られる傾向にあり、親水性繊維の血液吸収量が8g/g以下であることにより、吸収性樹脂内部への液吸収の速度が実用上十分なものとなる傾向にある。
また、親水性繊維の血液保液量が2g/g以上であることにより吸収速度が向上するという効果が得られ、6g/g以下であることにより戻り性が低減しドライ缶に優れるという効果が得られる。
【0042】
親水性繊維のタップ密度は、0.01~0.5g/mLであることがより好ましく、0.05~0.4g/mLであることがさらに好ましく、0.08~0.3g/mLであることがさらにより好ましく、0.1~0.25g/mLであることがよりさらに好ましい。
親水性繊維のタップ密度が、0.01~0.5g/mLであることにより、吸収性樹脂の周辺に適切な大きさの空間が形成され、ゲルブロッキングを抑制することが可能であり、親水性繊維が吸収性樹脂への通水と濡れ性の向上に寄与することができ、吸水速度が向上する。
タップ密度は、後述する実施例に記載する吸収性複合体のタップ密度と同様の方法で測定できる。
【0043】
本実施形態の吸収性複合体における親水性繊維の含有量は、吸収性樹脂100質量部に対して、25~250質量部であることが好ましく、30~200質量部であることがより好ましく、35~160質量部であることがさらに好ましく、40~120質量部であることがさらにより好ましい。
親水性繊維の含有量が25質量部以上であることにより、吸収性樹脂の表面を覆うことができ、その性能を十分に発揮でき、吸収性樹脂同士の凝集を防止できる。
親水性繊維の含有量が250質量部以下であることにより、吸収性樹脂の表面に十分に接着した状態とすることができる。親水性繊維の含有量は、吸収性樹脂の表面積、親水性繊維の表面積に応じて適宜調整することが好ましい。なお、吸収性樹脂の表面積は、含水量によっても変化するため、当該表面積の変化を考慮して親水性繊維の含有量を調整することが好ましい。
【0044】
(吸収性複合体の構造)
本実施形態の吸収性複合体は、全反射赤外分光法(ATR)測定により得られる4000~400cm-1の最大ピークを0.18、ベースラインを0に規格化した際のCO伸縮振動(1650~1500cm-1)のピーク強度が0.08以下であることが好ましい。
なお、前記ATR測定においては、吸収性複合体の表面におけるスペクトルを測定するものとする。
前記ピーク強度が0.08以下であることにより、本実施形態の吸収性複合体の吸収を抑制する成分の付着を防止することができる。
前記ピーク強度は、より好ましくは0.05以下であり、さらに好ましくは0.04以下であり、さらにより好ましくは0.02以下である。
本実施形態の吸収性複合体の、前記CO伸縮振動のピーク強度は、吸収性樹脂の親水性繊維による被覆率を高めることにより、0.08以下に制御することができる。例えば、吸収性樹脂と親水性繊維との混合割合、及び、混合時の条件を制御する等の方法が挙げられる。
【0045】
本実施形態の吸収性複合体の粒子の内部の酸基量に対して、吸収性複合体の粒子の表面の酸基量、例えば、カルボニル基の量は、内部の酸基に対するタンパク質や固形成分の付着を防止する観点から、49モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがさらにより好ましい。
【0046】
本実施形態の吸収性複合体における、内部に比して酸基が少ない表面の、「表面層」は、固形成分の付着防止と吸収容量を高めることを両立する観点から、厚みが0.1~100μmであることが好ましく、1~70μmであることがより好ましく、3~50μmであることがさらに好ましく、5~30μmであることがさらにより好ましい。
吸収性複合体の粒子の表面層の厚みは、吸収性複合体粒子の断面を切り出した後、顕微IRにて確認し、測定することができる。
また、吸収性複合体の表面層の厚みは、吸収性樹脂表面に、親水性繊維を重なりの少ない状態で複合化することにより制御することができる。例えば、吸収性樹脂と親水性繊維との混合時の混合強度を制御することなどが挙げられる。
【0047】
本実施形態の吸収性複合体の形状は、粒子状であることが好ましい。
本実施形態の吸収性複合体の平均粒子径は、100~1000μmであることが好ましく、200~800μmであることがより好ましく、250~700μmであることがさらに好ましく、300~600μmであることがさらにより好ましく、350~500μmであることがよりさらに好ましい。
吸収性複合体の平均粒子径が1000μm以下であることにより、高い吸収速度が得られ、100μm以上であることにより十分な吸収量が得られる。
前記吸収性複合体の平均粒子径とは、動的画像法粒度分布・形状評価装置にて測定、計算された円面積相当径の体積加重平均粒子径のことをいう。
体積加重平均粒子径とは、画像解析により測定された円面積相当径に対応する球の体積を全粒子において計算し、体積を基準に加重平均したものである。具体的には以下の式で計算される。
体積加重平均粒子径(μm)=ΣEQPCi×Vi/Vtotal
ここでEQPCiはi番目の粒子の円面積相当径、Viはi番目の粒子の体積、Vtotalは全吸収性複合体粒子の体積の総和を表す。
吸収性複合体の平均粒子径の測定方法の具体的な一例を下記に示す。
例えば、日本レーザー株式会社製の動的画像法粒度分布・形状評価装置QICPICシステムを使用して行う。測定レンジはM6、分散ユニットは気流式RODOS/Lを用いて行う。
計算モードは面積円相当径、サンプル密度設定1g/mL、測定濃度0.03%、分散圧1.00bar、集塵38.00mbar、回転100%、フィーダーはVIBRIモードで送りは70%にて行う。フィーダー上部に2mmの目開きの篩を用意し、そこにアズワン製の3/8インチのステンレスボールを7個のせ、その上に測定用サンプルの吸収性複合体を入れ、測定を行う。
【0048】
本実施形態における吸収性複合体の粒度は、JIS Z 8901に従い、篩にて粒度を測定した場合、取り扱い性の観点から、目開きが90μmの篩を通過できる粒子が50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。また、目開きが710μmの篩を通過できない粒子が50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
(吸収性複合体の各種特性)
本実施形態の吸収性複合体において、親水性繊維は吸水性樹脂の表面に強固に付着していることが好ましい。
本実施形態の吸収性複合体からの親水性繊維の脱離率は、吸収容量を高くすること、繰り返し吸収性を高めるという観点から、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることがさらにより好ましい。
吸収性複合体からの親水性繊維の脱離率は、篩振とう機を用いて測定することができる。吸収性複合体の脱離率は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0050】
本実施形態の吸収性複合体の濡れ張力は、45mN/m以上であることが好ましく、48mN/m以上であることがより好ましく、50mN/m以上であることがさらに好ましく、52mN/m以上であることがさらにより好ましい。
本実施形態の吸収性複合体の濡れ張力が上記範囲であると、たんぱく質を含む液体の吸収性をより高めることができる。
濡れ張力は、濡れ張力標準液を用いて測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0051】
吸収性複合体中、吸収性樹脂の表面が露出している吸収性複合体の割合は、100個中50個以下、すなわち50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることがさらにより好ましく、10%以下であることがよりさらに好ましい。
吸収性複合体における吸収性樹脂の表面の露出は、光学顕微鏡により観察し、割合を測定することができる。
上記吸収性樹脂の表面が露出している吸収性複合体の割合が50%以下であると、ヘマトクリット値90%血液の吸収量を十分な量に確保することができる。
光学顕微鏡で観察した際に吸収性樹脂の表面が露出している吸収性複合体の割合は、100個の吸収性複合体を観察した際に、吸収性樹脂表面が露出している数により、算出することができる。
【0052】
本実施形態の吸収性複合体は、血液等の高粘度液体の吸収性能、最終製品中における手触りの観点から、凝集塊が含まれないことが好ましい。
凝集塊とは、吸収性樹脂や親水性繊維同士が固まり絡み合うことにより形成される塊を意味する。
吸収性複合体が集合体である場合、凝集塊の含有量は、吸収性複合体の集合体全体の20体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることがさらに好ましく、凝集塊を含まないことがさらにより好ましい。
凝集塊の含有量は、例えば、光学顕微鏡又は電子顕微鏡により撮影した写真を解析することにより測定することができる。
【0053】
吸収性複合体中の凝集塊の含有量は、所定量の吸収性複合体を2枚のスライドガラス間に均一に配置し、最小フェレー径が1mm以上となる吸収性複合体の塊の数を直接数えて、その個数の合計数を塊度として定義し、評価してもよい。1mm以上の塊の数は少ない方が好ましい。
例えば、吸収性複合体0.25g中に、粒子径が1mm以上の吸収性複合体及び1mm以上の吸収性樹脂の合計数が、100個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましく、20個以下であることがさらに好ましい。
なお、粒子径が1mm以上の吸収性複合体と、粒子径1mm以上の吸収性樹脂とは、親水性繊維が付着しているものを吸収性複合体、親水性繊維が付着していないものを吸収性樹脂として区別することができるが、両者は同様に特性に悪影響を与えるものであるため、凝集塊の数を数える際には、両者を特に区別せず、粒子径1mm以上の凝集塊として数え、これらの合計数を算出することとした。
また、吸収性複合体0.25g中に、粒子径1mm以上の吸収性複合体及び粒子径1mm以上の吸収性複合体の合計数を100個以下に制御するためには、予め所定の粒径に整えた吸収性樹脂を用い、凝集が起こりにくい状態で親水性繊維と複合化することが有効である。
【0054】
本実施形態の吸収性複合体は、本質的に吸収性樹脂が吸収しない有機溶媒のような液体も保持しえるものであることが好ましい。
具体的には、吸収性複合体を製造し、80℃、3時間の条件下で、乾燥させた際(乾燥時)の吸収性複合体の平均粒径(以下、「Dry粒径」「乾燥時の平均粒子径」ともいう)を基準として、25℃の条件下において、エタノール中(湿潤時)で測定した吸収性複合体のピークトップの粒径(以下、「Wet粒径」ともいう)の比(wet粒子径/dry粒子径)が、1より大きくなることが好ましい。
吸収性複合体のDry粒径に対するWet粒径の比(Wet粒径/Dry粒径)は、1より大きいことが好ましく、1.1より大きいことがより好ましく、1.2より大きいことがさらに好ましい。
Dry粒径及びWet粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計を用いて測定することができる。
Wet粒径測定時には、吸収性複合体はエタノールを吸収しているわけではなく、親水性繊維が広がって繊維の間にエタノールを保持しているだけであり、荷重をかければエタノールを吐き出す状態である。
Dry粒径よりWet粒径が大きいということは、吸収性樹脂の周囲に空間を有しており、親水性繊維が自由に動ける状態で吸収性樹脂に結合されていることを意味する。
この構造を有していることにより毛管力が強くなり、血液のような高粘度液体においても、速やかに吸収性樹脂の表面に送り込むことができるため、好ましい吸収速度、吸収量を示すようになる。
また、セルロースと血液中の血球成分は相互作用で弱く吸着するが、セルロースよりなる親水性繊維が吸収性樹脂の周囲で自由に動くことにより、吸収性樹脂による吸収を阻害する血球成分を効率よく吸着することができるため、吸収性複合体全体としての吸収量が増えるため好ましい。
なお、吸収性複合体のWet粒径は100~800μmであることが好ましく、170~600μmであることがより好ましく、250~500μmであることがさらに好ましい。
なお、前記Wet粒径/Dry粒径は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0055】
本実施形態の吸収性複合体のタップ密度は、0.50g/mL以下であることが好ましく、0.42g/mL以下であることがより好ましく、0.35g/mL以下であることがさらに好ましく、0.30g/mL以下であることがさらにより好ましく、0.25g/mL以下であることがよりさらに好ましく、0.20g/mL以下であることが特に好ましい。
吸収性複合体のタップ密度が0.5g/mL以下であることにより、液体に対する濡れ性をより高くすることができる。
吸収性複合体のタップ密度は、メスシリンダーを用いて測定することができる。
吸収性複合体のタップ密度は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0056】
本実施形態の吸収性複合体においては、当該吸収性複合体の見かけの嵩比重と、圧縮後の嵩比重が、見かけの嵩比重:圧縮後の嵩比重=1:2~1:10であることが好ましく、4:9~1:7であることがより好ましく、2:5~1:5であることがさらに好ましく、4:11~1:4であることがさらにより好ましい。
見掛けの嵩比重と圧縮後の嵩比重の比は、吸収性樹脂の周りにどれだけの空間を確保できているかという指標となる。
見かけの嵩比重と圧縮後の嵩比重の比のうち、見かけの嵩比重の比率1に対して、圧縮後の嵩比重が2以上であれば、吸収性樹脂の周りに十分な空間を確保でき、ゲルブロッキングを防ぐことができる。
一方、見かけの嵩比重と圧縮後の嵩比重の比のうち、見かけの嵩比重の比率が1に対して、圧縮後の嵩比重が10以下であれば、製造プロセスにおいて取り扱い性が悪化することをなく製造することできる。
【0057】
見かけの嵩比重とは、加重がかかっていない状態において、吸収性樹脂の粒子と粒子間空隙をあわせた体積あたりの質量のことを言う。
具体的には、メスシリンダーに適当量の吸収性複合体を入れ、ふたをかぶせて上下に10回程度ふり、10分程度放置する。その後、体積を読み取り、質量を測定し、質量を体積で除することにより、見かけの嵩比重を算出することができる。
一方、圧縮後の嵩比重は、加重をかけた状態において、吸収樹脂の粒子と粒子間空隙をあわせた体積あたりの質量のことを言う。
圧縮後の嵩比重は、メスシリンダーに適当量の吸収性複合体を入れ、ふたをかぶせて上下に10回程度ふり、10分程度放置し、その後、5kg/cm2の加重を10分間かけてから、質量を測定し、当該質量を体積で除することにより、算出することができる。
これらの測定は、23℃、相対湿度30%RHで行う。
【0058】
吸収性複合体においては、流動電位法により得られるゼータ電位が、当該吸収性複合体からなる粒子の安定性の指標となる。当該ゼータ電位の絶対値が大きいほど、吸収性複合体の粒子が凝集し難くなるという傾向にある。
本実施形態の吸収性複合体においては、ゼータ電位の絶対値が14.8mV以上であることが好ましく、15.2mV以上であることがより好ましく、15.5mV以上であることがさらに好ましい。
吸収性複合体のゼータ電位は、吸収性複合体をイソプロピルアルコール中に分散させて測定することができる。
また、後述するように、セルロースと吸収性複合体がシート状に加工されている場合は、このシートをイソプロピルアルコール中に浸漬することにより、シートを構成するセルロースがほぐれ、シートを構成するセルロースと吸収性複合体が分離し、分離され浮遊しているセルロースを除去することにより、吸収性複合体が得られ、当該吸収性複合体を用いてゼータ電位を測定することができる。
吸収性複合体のゼータ電位は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
吸収性樹脂はゼータ電位の絶対値は小さく、凝集しやすい状態である。これをゼータ電位の絶対値が大きい親水性繊維で被覆することにより、吸収性複合体のゼータ電位の絶対値を大きくすることができる。
吸収性複合体のゼータ電位と、被覆している親水性繊維のゼータ電位の差は、1.5mV以下であることが好ましく、1.2mV以下であることがより好ましく、0.9mV以下であることがさらに好ましく、0.6mV以下であることがさらにより好ましい。
吸収性複合体において、吸収性樹脂表面の露出が減るほど、吸収性複合体のゼータ電位と、被覆している親水性繊維のゼータ電位の差は小さくなる。よって、血液などの吸収性樹脂表面と作用しやすい吸収阻害物質を含む液体を吸収することを考慮することが必要な場合には、吸収性樹脂表面が露出していないことが好ましい。
吸収性複合体が、吸収性樹脂の周囲を親水性繊維によって被覆された形態である場合、吸収性複合体のゼータ電位は、親水性繊維のゼータ電位の値から、±(吸収性樹脂のゼータ電位と親水性繊維のゼータ電位の差の絶対値20%)の範囲に入ることが好ましい。
すなわち、吸収性複合体のゼータ電位=親水性繊維のゼータ電位±|親水性繊維のゼータ電位-吸収性樹脂のゼータ電位|×0.2
吸収性複合体のゼータ電位は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0059】
吸収性複合体の形状は、吸収性複合体の吸収性能に影響する重要な因子である。
吸収性複合体の形状を示す指標である円形度、凹凸度、伸度、直進度、アスペクト比等は、画像解析により測定することができる。
吸収性複合体の形状は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0060】
円形度は投影面積と等しい面積をもつ円の周囲長を、実際の周囲長で除した値であり、粒子が球に近いほど1に近い値となる。
本実施形態の吸収性複合体は、円形度が0.7以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。
円形度が0.7以下であると、略球形状の吸収性樹脂の周囲に独立して親水性繊維が存在することになり、吸収性樹脂の表面を、親水性繊維独自の形状を活かした状態で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
また、親水性繊維単独で測定した円形度と、吸収性複合体の円形度を、それぞれ同一粒径で比較した場合の差は0.3以内であることが好ましく、0.2以内であることがより好ましい。親水性繊維単独での円形度と吸収性複合体の円形度との差が小さいほど、吸収性複合体の表面の親水性繊維の形状を反映していることを意味し、親水性繊維の形状を活かした形状で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
【0061】
本実施形態の吸収性複合体の凸凹度は0.85以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.75以下であることがさらに好ましく、0.7以下であることがさらにより好ましい。
凸凹度は、粒子投影エリアを、凸包エリア(Convex Hull Areaであり投影画像の凹んだ部分を埋めた面積となる)で除した値であり、凸凹が少ないほど1に近い値となる。
吸収性複合体の凸凹度が小さいと、吸収性樹脂の表面を親水性繊維独自の形状を活かした状態で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
また、親水性繊維単独で測定した凸凹度と、吸収性複合体の凸凹度を、それぞれ同一粒径で比較した場合の差は0.4以内であることが好ましく、0.3以内であることがより好ましく、0.2以内であることがさらに好ましい。
親水性繊維単独での凸凹度と吸収性複合体の凸凹度との差が小さいほど、吸収性複合体の表面の親水性繊維の形状を反映していることを意味し、親水性繊維独自の形状を活かした形状で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
【0062】
本実施形態の吸収性複合体の伸度は0.25以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることがさらに好ましい。
伸度は繊維状に近似した場合の繊維径を繊維の長さで除したものであり、細長いものほど小さな値となる。
伸度が0.25以下であると、吸収性樹脂の表面を親水性繊維独自の形状を活かした状態で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
また、親水性繊維単独で測定した伸度と、吸収性複合体の伸度を、それぞれ同一粒径で比較した場合の差は0.2以内であることが好ましく、0.15以内であることがより好ましく、0.1以内であることがさらに好ましい。
親水性繊維単独で測定した場合の伸度と、吸収性複合体の伸度の差が小さいほど、吸収性複合体の表面の親水性繊維の形状を反映していることを意味し、親水性繊維独自の形状を活かした形状で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
【0063】
本実施形態の吸収性複合体においては、直進度は0.9以下であることが好ましく、0.87以下であることがより好ましく、0.85以下であることがさらに好ましい。
直進度は、最大フェレー径(定方向接線径の最大値)を親水性繊維の長さで除したものであり曲がり具合の指標となる。
直進度が小さいと、吸収性樹脂の表面を親水性繊維独自の形状を活かした状態で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
また、親水性繊維単独で測定した直進度と、吸収性複合体の直進度を、それぞれ同一粒径で比較した場合の差は0.15以内であることが好ましく、0.1以内であることがより好ましく、0.05以内であることがさらに好ましい。
親水性繊維単独で測定した直進度と、吸収性複合体の直進度の差が小さいほど、吸収性複合体の表面の親水性繊維独自の形状を反映していることを意味し、親水性繊維独自の形状を活かした形状で覆っていることになり、良好な吸収性を示す。
【0064】
本実施形態の吸収性複合体は、アスペクト比が0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。
アスペクト比は最小フェレー径を最大フェレー径で除したものである。
アスペクト比が0.5以上であることにより、取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。
【0065】
吸収性複合体のb値は、15以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましく、7以下であることがさらにより好ましい。
また、吸収性複合体のb値は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。
b値が上記範囲に入っていることにより、長期間保存後にも、吸収した液体の戻りが少なく、べたつきがなく、また、高い吸収速度が維持され、良好な性能を示す。
b値は、分光色彩計を用い、粉体用のセルに3gの吸収性複合体を入れ、軽くタッピングを行って空隙の内容に充填をして測定することができる。
【0066】
本実施形態の吸収性複合体は、25℃でパルスNMR測定すると、緩和時間が10数μs程度の成分、緩和時間が数十~100μs程度の成分、緩和時間が数百μs以上程度の成分が観測される。
本実施形態の吸収性複合体においては、緩和時間が100μs以上の成分を高運動性成分と定義する。
本実施形態の吸収性複合体は、含水率を5~5.2%に調整した状態でパルスNMR測定した際、高運動性成分の比率が10~21%であることが好ましく、11~20%であることがより好ましく、12~19%であることがさらに好ましく、14~18%であることがさらにより好ましい。
高運動成分の比率が所定の範囲にあることで、吸収量と吸収速度の両者により優れた特性を示し、かつ、液の捕獲力がより高くなる。
その理由は、以下のメカニズムに限定されないが、低含水率の時点で高運動性成分の比率が高いということは、液体の拡散が速いことを意味し、血液中の固形分が吸着するよりも速く液体を吸収できるものであると推定される。
本実施形態の吸収性複合体において、含水率を5~5.2%に調整した状態でパルスNMR測定した際、前記高運動成分の比率を10~21%になるようにするためには、親水性繊維と吸収性樹脂の界面の接着状態を制御することが有効である。例えば、予め吸収性樹脂と親水性繊維を混合した後に水を添加する、添加する水の水滴径を制御する、水の添加速度を制御する、等の方法が挙げられる。
【0067】
本実施形態におけるパルスNMRの測定条件の具体例としては、以下のとおりである。
例えば、本実施形態の吸収性複合体を、90℃の熱風乾燥機により3時間乾燥を行い、その後、D20湿度20%雰囲気下に3日間静置する。この時点で質量を測定し、これを含水率0%と定義する。
その後、D20湿度100%雰囲気下で、一定時間ごとに質量測定を行い、含水率が所定の値になった時点でパルスNMR測定を実施する。
装置はブルカーバイオスピン社製のMinispec MQ20を用い、核種は1H、測定はT2、測定法はソリッドエコー法、積算回数は256回、繰り返し時間1.0秒、測定温度25℃で行う。
フィッテイングはガウス型*Sinc関数、ローレンツ型関数、ローレンツ関数を組み合わせて行い、高運動性成分の緩和時間T2を測定する。
【0068】
本実施形態における吸収性複合体は、耐衝撃指数が0.1g/g~12g/gであることが好ましく、0.3g/g~10g/gであることがより好ましく、0.5g/g~8g/gであることがさらに好ましく、0.7g/g~7g/gであることがさらにより好ましく、1g/g~6g/gであることがよりさらに好ましい。
耐衝撃指数が低いほど、血液吸収後の保持力が高く、繰り返し吸収性がよくなるため好ましい。
耐衝撃指数が低いほど血液保持力、繰り返し吸収性に優れる理由は、耐衝撃指数は、親水性繊維と吸収性樹脂との接着形態、界面との相関がみられる値であり、特定の形態で両者が接着していることにより、吸収性樹脂内部へ液体を保持する力が高まるためであると推定される。
また、耐衝撃指数が低いことは、吸収性複合体を輸送する際や、フィーダー、散布装置等にかけた際、シートや製品中で衝撃がかかった際にも形態が安定していることを示し、どのような使用方法においても安定した吸収性能を示すため好ましい。
さらには、衝撃により破砕されると、微粉が生じるため、レートを落として破砕されないように運転したり、微粉を吸引したりするなどの対策が必要となるため、耐衝撃指数が低いことは生産性の観点からも好ましい。
【0069】
吸収性複合体の耐衝撃指数は、以下のように算出することができる。
ステンレスふるい(大きさ75φ×20、ステンレス製、アズワンカタログ品)を、上から、蓋、目の開き710μmの篩、目の開き500μmの篩、目の開き300μmの篩、目の開き100μmの篩、受け器の順番にセットし、受け器以外の篩各段に、ステンレス球(アズワン製 SUS304 3/8インチ)を3個ずつセットする。
目の開き710μmの篩の上に、吸収性複合体のサンプル1.5gを入れ、振動ふるい(アズワン製 ミニふるい振とう機 MVS-1)にセットし、メモリ9で20分間処理を行う。
目の開き500μmの篩、目の開き300μmの篩、目の開き100μmの篩の上に、残った吸収性複合体のサンプルを回収する。
すなわち、最初の吸収性複合体のサンプルから710μm以上の大きな粒子と、100μm未満の小さな粒子が取り除かれたものとなる。
チャック付ポリ袋(生産日本社製 ユニパック C-8)に回収した吸収性複合体のサンプルを入れ、空気を含んだ状態でチャックを行い、手で振ることによって吸収性複合体のサンプルを均一に混合する。
容器(サンダイヤ社製 総絞りスクリュー式保存容器 浅中 80cc 55φ×55H)の中に、上記サンプル1.0g、及び、ステンレス球(アズワン製 SUS3043/8インチ)を5個入れ、蓋をしめる。
ラボシェーカー(大洋化学工業社製 ロータリーシェーカーR20mini)にセットし、160rpmにて30分間処理を行う。
吸収性複合体のサンプルを取り出し、ステンレスふるいにて同様に篩分けを行う。
受け器に残った吸収性複合体のサンプルを回収し、質量を測定し、生理食塩水の吸収量を測定する。
この値は、篩い上でのステンレス球の衝撃に対する耐性を示しており、この値を耐衝撃指数と定義する。
なお、吸収性複合体の耐衝撃指数は、後述する実施例に記載する方法により、測定することができる。
なお、吸収性複合体の耐衝撃指数を0.1~12(g/g)に制御するためには、吸収性樹脂の周囲を、親水性繊維によって完全にかつ、スペースを有する形状で被覆することが有効である。
【0070】
(その他の成分)
本実施形態の吸収性複合体は、上述した吸収性樹脂、親水性繊維の他、所望の特性に応じて、所定のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、架橋剤、無機粒子、界面活性剤、潤滑剤、有機微粒子等が挙げられる。
【0071】
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、公知の架橋剤を使用することができる。
【0072】
本実施形態においては、前記架橋剤として吸収性樹脂が有する酸基と反応する官能基を複数もった化合物を好ましく用いることができる。
なお、吸収性樹脂が、酸基と反応する官能基を有する樹脂である場合には、酸基を複数もった化合物を好ましく用いることができる。
【0073】
前記吸収性樹脂が有する酸基と反応する官能基を複数もった化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;(ポリ)グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンジアミン等の多価アミン類等が挙げられる。
反応速度のコントロールの容易さから、多価アルコール類が好ましい。
また、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の多価イオン類等も吸収性樹脂が有する酸基と反応して架橋剤として働くので好ましく用いることができる。
【0074】
前記吸収性樹脂が有する酸基と反応する官能基を複数もった化合物や、多価イオン類の添加量は、吸収性樹脂全質量に対して0.5~10質量%であることが好ましく、0.7~5質量%であることがより好ましく、1~3質量%であることがさらに好ましい。
【0075】
吸収性樹脂が酸基を有する樹脂であり、吸収性樹脂の酸基がナトリウム塩又はアンモニウム塩等の形で中和されている場合、中和されている酸基以外の酸基が、前記吸収性樹脂が有する酸基と反応する官能基を複数もった化合物と反応することが好ましい。
【0076】
〔吸収性複合体の製造方法〕
本実施形態の吸収性複合体は、吸収性樹脂と親水性繊維とを混合することにより製造することができる。
本実施形態の吸収性複合体は、親水性繊維が吸収性樹脂に付着して、吸収性樹脂を覆っている状態であることが好ましいが、このような状態とするためには、親水性繊維を含水させることにより達成することができる。
例えば、親水性繊維と水とが混ざり、含水した親水性繊維が吸収性樹脂と接触して水分が吸収性樹脂に移動した状態とした後(含水混合工程)、乾燥させること(乾燥工程)で製造できる。
さらに、表面架橋工程、分級工程を含むことも好ましい。
【0077】
以下、吸収性複合体の製造方法を説明する。
まず、吸収性樹脂と、親水性繊維と、水とを混合する。
吸収性樹脂と親水性繊維と水を混合して吸収性樹脂の表面に親水性繊維をコーティングする場合には、親水性繊維と水とを混合して含水繊維を形成した後、速やかに表面が可塑化した吸収性樹脂と混合することが好ましい。
なお、添加の順番は限定されるものではなく、含水した親水性繊維を形成できればよい。
【0078】
吸収性樹脂に親水性繊維をコーティングするための具体的な方法として、水により吸収性樹脂の表面を可塑化し、固体状の親水性繊維よりなるコーティング剤を吸収性樹脂表面に接触させた後、乾燥させる方法について説明する。
本方法は、含水工程と乾燥工程より形成される。
【0079】
(含水工程)
含水工程としては、例えば、(1)親水性繊維と水を混合した後に、吸収性樹脂を混合する方法、(2)吸収性樹脂と親水性繊維を混合した後、親水性繊維に優先的に水が吸収される状態を形成する方法等が挙げられる。
吸収性樹脂の表面と水が接触した時点から(具体的には接触して数秒後)、水が吸収性樹脂に吸収され、表面の可塑化が開始する。
前記(1)では、親水性繊維と水を混合して形成された含水状態の親水性繊維と吸収性樹脂が混ざった時点で吸収性樹脂の表面の可塑化が開始する。
前記(2)も実質的には同様である。含水状態の親水性繊維と吸収性樹脂とが接触すると、親水性繊維中の水分が吸収性樹脂に移動しながら吸収性樹脂の表面が可塑化される。
【0080】
<(1)親水性繊維と水を混合した後に、吸収性樹脂を混合する方法>
前記(1)の方法においては、親水性繊維に水を加えて含水状態の親水性繊維とした後、含水状態の親水性繊維(以下、含水繊維という)と吸収性樹脂を混合する。
含水状態の親水性繊維から吸収性樹脂に水が移動することで、好ましい接着形態で吸収性樹脂と親水性繊維とを接着させることができる。
【0081】
含水した親水性繊維と吸収性樹脂とを混合する際には、吸収性樹脂の吸水時間よりも速く系内の吸収性樹脂が均一に混合される混合機を用いて混合することが好ましい。これにより、吸収性樹脂同士の凝集を抑制する効果が得られる。
ここで、吸収性樹脂の吸水時間とは、ボルテックス法で計測した時間の2倍の時間のことを指す。
ボルテックス法とは、攪拌状態の生理食塩水中に吸収性樹脂を投入し、液面が平らになった時点までの時間を計測する測定方法である。
ボルテックス法により計測される時間は、攪拌状態の液単独に吸収性樹脂を加える点、生理食塩水を用いる点、液が吸収されるまでの時間ではなく流動性が低下した時点を測定している点等から、親水性繊維から吸収性樹脂に液が吸収される時間と相関する値であると言える。
含水した親水性繊維と吸収性樹脂とを混合する工程においては、ボルテックス法により計測される時間の2倍の時間以下で混合することが好ましいが、ボルテックス法の時間の1.5倍の時間以下で混合することがより好ましく、ボルテックス法の時間よりも短い時間で混合することがさらに好ましく、ボルテックス法の時間の半分よりも短い時間で混合することがさらにより好ましく、ボルテックス法の時間の1/3よりも短い時間で混合することがよりさらに好ましい。
この混合時間は、吸収性樹脂に水が吸収される時間に依存するため、吸収性樹脂の吸収速度を抑制する手段を講じた場合にはこの限りではなく、吸収性樹脂に吸収されるまでに混合が終了すればよい。
ボルテックス法の具体的な方法は、後述の実施例に記述する。
ボルテックス法により計測される時間に関係なく、30秒以内で速やかに混合することが、混合後の吸収性複合物の形状、構造、吸収性能のバラつきを抑制する観点からは好ましく、20秒以内であることがより好ましく、10秒以内であることがさらに好ましい。
【0082】
上記混合方法においては、連続式の混合機、バッチ式混合機のいずれの混合機も使用できる。
連続式の混合機であれば、攪拌状態の混合機の中に、含水した親水性繊維と吸収性樹脂とを分けて供給することもできる。
少量スケールで混合能力が十分に高いバッチ式混合機であれば、含水した親水性繊維と吸収性樹脂とを離れた位置に配置しておき、瞬時に攪拌することもできる。
また、攪拌状態の吸収性樹脂へ、含水した親水性繊維を少量ずつ供給することも可能である。
。
前記バッチ式混合機とは、吸収性樹脂の吸水時間以内に系内の粉体が均一に混合される混合機であり、具体的には、ラボミルサー(実験室レベルの高速回転混合機)、10L以下の高速回転混合機(ヘンシェルミキサー等)等が挙げられる。
上記混合方法において、系内が均一に混合されているか否かは、攪拌を止めて、吸収性複合体の状態を確認することにより判断することができる。
具体的には、吸収性複合体の状態に応じて、目視で確認したり、乾燥後に成分の比率を分析したりすることで確認することができる。
連続式の混合器を使用する場合については、混合器中の平均滞留時間が吸収性樹脂の吸収時間より短くなるようにすることが好ましい。
【0083】
<(2)吸収性樹脂と親水性繊維を混合した後、親水性繊維に優先的に水が吸収される状態を形成する方法>
前記(2)の方法においては、吸収性樹脂と親水性繊維を混合し、両者が接触した状態で、優先的に親水性繊維に水が吸収される状態で水を添加する。
この方法においては、吸収性樹脂の水の吸収速度を遅くするために、水の液滴径を小さくすること、水に添加剤を加えて粘度を高めておくこと、水に有機溶剤等の吸収を阻害する物質を混合しておくこと、等が有効である。
当該(2)の方法を用いる場合、吸収性樹脂と親水性繊維とを、予め十分に混合しておくことが好ましい。
混合する装置としては、例えば、垂直型の浮遊式混合器が挙げられる。
混合の状態は、所定の混合装置にのぞき窓を設けておけば、目視で確認することができる。混合性を十分に高めるため、両者の混合は、予め前記垂直型の浮遊式混合器の内部の相対湿度55%以下に調整した後に行うことが好ましく、相対湿度50%以下で行うことがより好ましく、相対湿度45%以下で行うことがさらに好ましい。湿度の調整はどの時点で行っても構わないが、仕込みを行う前に予め調整をしておくことが好ましい。湿度の調整方法は任意の方法を用いることができるが、混合器に乾燥空気、窒素やアルゴン等の不活性ガス等を加えることが好ましい。乾燥空気や不活性ガスは、後の水を添加する時点においても加え続けることが、良好な混合状態を得るという観点から好ましい。
【0084】
水の添加は、吸収性樹脂と親水性繊維とを混合しながら行うことが好ましい。
水の添加速度は、混合方法によって変えることが好ましい。
全体的に均一に水を加えるという観点から、乾燥状態の混合において、マクロ的に系内が更新される時間よりも長い時間をかけて添加することが好ましい。
前記マクロ的に系内が更新される時間は、系(吸収性樹脂と親水性繊維を含む原料全体)の端に、当該吸収性樹脂と親水性繊維を含む原料全体の合計質量の10%程度の着色原料を配置し、反対側の端から10%以内の体積部分まで着色原料が到達するまでの時間である。
ミクロに均一に混合されている必要はなく、マダラ模様で構わない。
マクロ的に原料が移動する時間の方が重要である。
一方で、含水状態の吸収性複合体が形成されるに従って、系内の状態は変化し、混合されにくくなる。
含水状態でも十分な混合性を持つ混合機で混合する場合については、ゆっくりと水を添加すればよいが、含水状態での混合性が悪い混合機の場合については、マクロ的に系内が更新される時間より長い時間で、系内の状態が変化してから5分以内で水添加を終えることが好ましく、より好ましくは3分以内、さらに好ましくは1分以内、さらにより好ましくは、系内の状態が変化する前に水の添加を終えることである。
系内の状態は、目視で観察をしていれば把握することができる。
【0085】
(2)の方法においては、親水性繊維と吸収性樹脂が十分に混合されるような混合器を使用することが好ましい。
バッチ式の混合器としては、内容物が持ち上げられながら攪拌される浮遊混合形式を用いることが好ましく、高シェアの装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー等が挙げられ、低シェアの装置としては、例えば、プロシェアミキサー、レーディゲミキサー等が挙げられる。
連続式の装置でも、親水性繊維、吸収性樹脂、水の供給方法を工夫することで、親水性繊維を優先的に含水させた後に、吸収性樹脂と混合させることが可能である。
【0086】
含水工程は、連続式の混合器や、少量スケールで混合能力が十分に高いバッチ式混合器を使用する場合であれば、上述した(1)の製造方法を適用することが好ましく、大容量のバッチ式混合器や連続式の混合器を使用する場合、及びその他の場合であれば、上述した(2)の製造方法を適用することが好ましい。
連続式の混合器を用いる場合、その混合能力に応じて(1)、又は(2)の方法を適用することができる。
【0087】
後述する乾燥工程の前の段階においては、親水性繊維及び/又は吸収性樹脂が水を含有していればよいが、吸収性樹脂側に多く水が含まれていることが好ましい。
乾燥前の含水状態においては、乾燥状態の吸収性樹脂と親水性繊維を単純にブレンドした状態よりも、タップ密度が小さくなっていることが好ましい。
通常、親水性繊維も吸収性樹脂もタップ密度は1g/mLよりも小さく、密度が1g/mLの水を混合するとタップ密度は増加すると考えられる。しかし、好適な混合方法を行うことで、吸収性樹脂と親水性繊維とが好適な状態で結合し、タップ密度を小さくすることができる。
この状態で乾燥することで、タップ密度の小さな好適な形状の吸収性複合体が得られる。
【0088】
上記(1)の方法及び(2)の方法においては、吸収性樹脂を含水状態で保存すると、吸収性樹脂の吸収性能が低下する場合があるため、原料として吸収性樹脂を保存する場合には、吸収性樹脂の水分量を10%以下とすることが好ましい。
親水性繊維が水を含有していても吸収性能は変化しないため、親水性繊維を含水状態として保存してもよい。
この場合、親水性繊維を湿度のある空気中に保存しておけば、自然に含水される。
吸収性樹脂を保存せずに、すぐに使用する場合には、吸収性樹脂が水分を含有していてもよく、吸収性樹脂の重合後、完全には乾燥していない状態の吸収性樹脂を用いることで好適な水分範囲とすることもできる。この場合、後述する乾燥工程後に最適な粒子径範囲となるように形状をコントロールしておくことが好ましい。
【0089】
上記(2)の方法においては、添加する水の液滴径は、300μm以下とすることが好ましく、200μm以下とすることがより好ましく、150μm以下とすることがさらに好ましく、100μm以下とすることがさらにより好ましく、50μm以下とすることがよりさらに好ましい。
水の液滴径を小さくすることで、吸収性樹脂同士の凝集を抑制しやすくなる。
また、水の液滴径が小さいと、吸収性樹脂の吸収速度が低下するため、吸収性樹脂が水を吸収する前に、親水性繊維が水を吸収し、親水性繊維から水へと液の受け渡しを行うことになるため、良好な接着面を形成できる。
水の液滴を小さくするためには、適宜スプレーを選択すればよい。
スチーム、水蒸気等で行うことも可能である。
吸収速度を抑制する手段を講じ、攪拌しながら液を添加した場合については、液滴径は特に問題とする必要はない。吸収速度を抑制する手段は、例えば、水に有機溶剤、増粘剤、pH調整剤等の添加物を加える等の方法が挙げられる。
【0090】
上記(1)の方法及び(2)の方法においては、水の量は、吸収性樹脂の量、吸収性樹脂の表面積、親水性繊維の量等に応じて最適値が異なるため、適宜設定すればよい。
例えば、吸収性樹脂の量が多い場合には、多量の水が必要となる。
吸収性樹脂の表面積が小さい場合には、少ない水量でも親水性繊維と吸収性樹脂とが接着する。
水の量は吸収性樹脂と親水性繊維とを単純混合したときのタップ密度よりも、水を加えた状態のタップ密度が小さくなるような水量とすることが好ましい。
水の量が少なすぎると接着性に劣る場合があり、水の量が多すぎても吸収性能が低下する傾向にある。最適な水量を設定するためには、水の量をふって吸収性複合体を製造し、乾燥後のタップ密度を測定すればよい。
水の添加量を増やしていくと、当初はタップ密度が低下していくが、ある一定量以上ではタップ密度が一定となる。更に水の量を増やしていくとタップ密度が大きくなる。水の添加量は、タップ密度が一番小さくなる付近の水量とすることが好ましい。この水量は使用する吸収性樹脂と親水性繊維のそれぞれの粒子径、吸収性樹脂と親水性繊維の比率に応じて変化する。
【0091】
吸収性樹脂と親水性繊維とを混合する場合において、吸収性樹脂と親水性繊維との質量比が、吸収性樹脂:親水性繊維=2:1の場合については、吸収性樹脂と水との質量比は、吸収性樹脂:水=20:1~1:5であることが好ましく、15:1~1:2であることがより好ましく、10:1~1:1であることがさらに好ましく、10:3~10:7であることがさらにより好ましい。
このときの水の量は、含水した状態の吸収性樹脂及び含水した状態の親水性繊維における合計の含水量を表す。
後述する乾燥工程前の含水量が少ない場合は、吸収性樹脂と親水性繊維との直接接着している箇所が少なくなる傾向にあり、多すぎる場合には後の乾燥工程における乾燥時間が長くなる傾向にある。
同様の吸収性樹脂と親水性繊維を使用し、その質量比を吸収性樹脂:親水性繊維=1:1とした場合については、吸収性樹脂と水の質量比は、吸収性樹脂:水=1:0.5~1:5であることが好ましく、1:0.6~1:3であることがより好ましく、1:0.7~1:2であることがさらに好ましく、1:0.8~1:1.6であることがさらにより好ましい。
【0092】
供給する水は、不純物を含んでいてもよい。
不純物としては、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、鉄イオン等の陽イオン、塩素イオン等の陰イオン、アセトン、アルコール類、エーテル類、アミン類などの水溶性有機化合物などが挙げられる。
吸収性樹脂及び/又は吸収性複合体のpH調整のために、酸性又は塩基性の水を使用してもよい。
吸収性樹脂の接触性、吸収能力等の観点から、不純物量は水道水レベルであることが好ましく、不純物のない蒸留水又はイオン交換水を単独で用いることがより好ましい。
【0093】
以下、吸収性樹脂と親水性繊維の好ましい混合工程として、例えば、ヘンシェルミキサーを用いて混合する方法について説明する。
ヘンシェルミキサーの羽根としては、内容物を掻き揚げる力の強い羽根を使用することが好ましい。
下羽根は、直線形状よりも湾曲した形状であることが好ましく、端部に角度のついた羽根は特に好ましく、例えば、日本コークス社製のS0羽根等が好ましく使用できる。
上羽根は、高循環、大量処理に適した羽根を適宜選択することが好ましい。含水状態の吸収性樹脂と親水性繊維とを効率よく混合するために、水平面に対して垂直の成分を持つ羽根を使用することが好ましく、特に、外周部に垂直な板のついた羽根を用いることが好ましい。例えば、日本コークス社製のCK羽根、Y1羽根は好ましく使用でき、混合状態に合わせて、適宜、水平面に対して垂直となる向きに掻板を追加して組み合わせることが好ましい。
原料を投入する前に、予め、混合器内部の湿度調整を行うことが好ましい。
下部の軸シールとして、乾燥空気や、窒素等の不活性ガスを使用することで行うと効率がよいため好ましい。
【0094】
混合工程においては、所定の混合器内に、所定量の吸収性樹脂、親水性繊維を、任意の順番で投入する。
密度の小さい繊維を先に投入する方が、短い混合時間で良好な混合状態を得られるため好ましい。
原料としての吸収性樹脂の含水率は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることがさらにより好ましい。吸収性樹脂の含水率が高すぎると、性状が変化し、混合効率が低下する場合がある。
混合器の蓋をしめ、先ず、乾燥状態で吸収性樹脂、及び、親水性繊維を混合することが好ましい。
回転数は任意でよいが、高速すぎると吸収性樹脂が粉砕される可能性があり、低速すぎると混合されない。のぞき窓がある場合、内部全体が白く見える程度の回転数を設定するのがよい。通常、30秒程度攪拌すれば、十分な混合状態が得られる。
水を添加する前に、所定の回転数範囲に調整することが好ましい。乾燥状態の混合を所定の回転数に調整して行ってもよいし、乾燥状態での混合後、水添加前に回転数を調整してもよい。乾燥状態の混合時に吸収性樹脂や繊維が壁面等に付着している場合、一度攪拌を停止し、掻き落としてから次の水の添加工程に移行することは好ましい。
【0095】
水を添加後に良好な混合状態を得るために、吸収性樹脂と親水性樹脂とを混合する工程における混合器、例えばヘンシェルミキサーの羽の回転数は、以下で表されるフルード数が0.3~5.0の範囲で設定することが好ましく、0.35~2.0であることがより好ましく、0.4~1.6であることがさらに好ましく、0.45~1.4であることがさらにより好ましく、0.5~1.25であることがよりさらに好ましい。
フルード数=n2×d/9.8
(n:羽の回転数(s-1)、d:羽根の直径(m))
【0096】
さらに、より好ましい形態を形成するためには、混合器の攪拌所要動力に相当するPv値が200以下の範囲で混合することが好ましく、150以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましく、35以下であることがさらにより好ましい。
Pv値=n3×d5/V
(n:羽の回転数(s-1)、d:羽根の直径(m)、V:ミキサーの有効体積(m3))
【0097】
上記混合工程における水の添加は、水滴径を前述の好ましい範囲にコントロールし、混合器の上部より行うことが好ましい。
壁面、羽根、ディフレクターに液滴が付着すると、大きな水滴を形成して凝集物が生成する場合があるため、噴霧の角度を調整することが好ましい。
水の添加は、例えば、いけうち社、スプレーイングシステム社のスプレーノズルを好適に使用することができる。
壁面、羽根、ディフレクターへの付着を防止するために、ホローコーン型のノズルを使用することが好ましい。
水の噴霧は一か所から行ってもよいし、複数の箇所から行ってもよい。
ヘンシェルミキサーでは、フルード数を所定の範囲にコントロールすることで数秒の単位で全体がマクロに混合される。このため、水の添加時間は任意に設定すればよい。前述のPv値が大きい条件で長時間運転を行うと、好ましい形態が崩れていく場合があるため、速やかに添加することが好ましい。
【0098】
また、吸収速度と混合時間のバランスをとるため、所定のジャケットにより混合器内の温度調節を行うことが好ましい。
ジャケットにより混合器内を室温以下にしておくと、吸収性樹脂の吸収速度が遅くなり混合挙動をコントロールしやすくなるため好ましい。ただし、冷却を行う場合には結露防止のため、系内の湿度のコントロールが必須となる。混合時は適宜粉温をモニターし、ジャケット、混合条件、水添加速度により調節することが好ましい。
【0099】
水の添加終了後、混合系の系内が均一になるまで攪拌を継続することが好ましい。
ただし、長時間攪拌を続けても効果は少なく、通常は1分以内で十分である。
混合終了後、混合器とは異なる乾燥機で乾燥を行う場合は払い出しを行う。
下部の排出口を開け、羽根を回転させることで払い出しを行うことが好ましい。
混合終了後、ヘンシェルミキサー中で乾燥を行う場合は、ジャケット温度を上げて加熱を行うことが好ましい。この際、ヘンシェルミキサーの羽の回転数は、内部の粉体が最低限動く程度まで低下させておくことが好ましい。
ジャケット温度は100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましく、120~160℃であることがさらに好ましい。
粉体、すなわち吸収性樹脂と親水性樹脂の混合物の温度はモニターしながら適宜コントロールすることが好ましい。
乾燥速度をコントロールするために、減圧を行ったり、熱風を吹き込んだりすることが好ましい。
混合工程の終了後、ヘンシェルミキサー中で架橋を行う場合は、混合終了後に溶剤に溶解させた架橋剤を添加すればよい。
溶剤量が十分に多い場合は、攪拌を止めた状態で添加してもよいが、溶剤量が少ない場合は、攪拌をしながらスプレー等でゆっくり添加し、全体に均一に架橋剤を分布させる。その後、上記乾燥工程と同様に加熱を行い、乾燥と同時に架橋反応を進行させることができる。
【0100】
(架橋剤添加・架橋工程)
上述した含水工程後、含水状態の吸水性樹脂と親水性繊維との混合物に、架橋剤を添加し、架橋反応を行うことで、吸収性樹脂と親水性繊維との接着力を強固なものとするのことができる。
吸収性樹脂と親水性繊維とが理想的な形態で接着している場合は、架橋反応を行わずとも強固な接着力が得られる。
架橋剤添加・架橋工程は、後述の乾燥工程の前に行うことが好ましい。これにより、乾燥中のストレスによる吸収性樹脂と親水性繊維との剥離を抑制し、吸収性樹脂の周囲に緻密に親水性繊維を接着させることができる。
【0101】
架橋剤としては、吸収性樹脂中の官能基、及び/又は、親水性繊維中の官能基と反応できる官能基を複数有している化合物を用いる。
架橋剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の多価エポキシ化合物;(ポリ)グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンジアミン等の多価アミン類などが挙げられる。
架橋剤としては、反応速度のコントロールの容易さから、多価エポキシ化合物、多価アルコール類が好ましい。
また、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の多価イオン類なども好ましく使用される。
【0102】
架橋剤の添加方法は特に限定されず、そのまま添加してもよいし、溶媒を用いて添加してもよい。
吸収性樹脂への浸透速度をコントロールするために、水を加えることは好ましい。
全体的に均一にいきわたることは重要であり、例えば、吸収性複合体を混合しながら架橋剤を噴霧する方法が好ましい。
【0103】
上述した含水工程の後に架橋剤を添加することにより、架橋剤は吸収性樹脂中の、親水性繊維と接触していない表面部分に優先的に配置されることになる。
すなわち、架橋剤として酸基を有していない架橋剤を用いることで、吸収性複合体の表面における酸基濃度を効率的に低減することができる。
【0104】
(乾燥工程)
本実施形態の吸収性複合体の製造方法においては、含水状態の吸収性複合体に対して乾燥処理を実施する乾燥工程を有することが好ましい。
乾燥処理方法は、特に限定されず、加熱により乾燥を行う方法、減圧により乾燥する方法、気流により乾燥する方法等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、複数種類の方法を組み合わせてもよい。
【0105】
親水性繊維と吸収性樹脂との接着強度を高めるという観点から、加熱を伴う乾燥方法が好ましい。
加熱の方法は特に限定されず、熱風により加熱する方法、マイクロ波を使用して加熱する方法、赤外光線を使用して加熱する方法等、使用する設備に応じて自由に選択することができる。
【0106】
加熱温度は特に限定されないが、60~200℃であることが好ましく、80℃~160℃であることがより好ましい。温度が高すぎると吸収性複合体が着色する場合があり、温度が低すぎると乾燥効率が低下する場合がある。
含水率が高い場合には温度が上がりにくく着色しにくい傾向があるため、含水率が10%以上の時には120℃以上の高温で、含水率が5%以下の時には120℃未満の低温で行うことが好ましい。乾燥は熱風をあてて行ってもよいし、減圧により行ってもよい。
【0107】
含水状態の吸収性複合体に荷重をかけると、塊になって凝集物が生成しやすい場合がある。このため、荷重がかからないように薄く延ばした状態で乾燥を実施すること、又は混合しながら乾燥することが好ましい。振動や空気などの流体の流動を併用することにより効率的に乾燥することができる。バッチ式の場合は棚段式乾燥機、連続式の場合はベルトコンベア方式、フロードライヤー方式などが好ましく用いられる。
【0108】
乾燥は、前述の含水工程を行った装置と同じ装置で行ってもよいし、異なる装置で行ってもよい。異なる装置で行う場合については、含水状態の吸収性複合体が凝集しないように、荷重がかかりにくい取り扱いを行うことが好ましい。
【0109】
含水してから乾燥させるまでの時間は任意に設定することができるが、吸収性複合体を含水状態で長時間放置すると、親水性繊維中へ吸収性樹脂中の可溶成分が移動し、親水性繊維中の通液性が低下する場合があるため、上述した含水工程、及び架橋工程実施終了後に速やかに乾燥することが好ましい。具体的には、系内の状態が変化、具体的には密度が変化してから60分以内に乾燥することが好ましく、30分以内に乾燥することがより好ましい。
【0110】
乾燥の程度は特に限定されないが、吸収性樹脂の乾燥前の含水率に対する乾燥後の吸収性樹脂の含水率が70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましい。
【0111】
乾燥後の含水量は特に限定されないが、吸収性樹脂の質量に対して0.01~100質量%であることが好ましく、0.1~50質量%であることがより好ましく、0.5~20質量%であることがさらに好ましく、2~10質量%であることがさらにより好ましい。上記範囲とすることにより、充分な吸収能力を有する吸収性樹脂が得られる。
【0112】
(分級工程)
本実施形態の吸収性複合体の製造工程においては、分級工程を有することが好ましい。
これは極度な凝集物、未接着の親水性繊維等を取り除く工程である。
この分級工程においては、吸収性複合体の大きさを50~1000μmとすることが好ましく、70~800μmとすることがより好ましく、100~710μmとすることがさらに好ましい。
凝集物は感触の悪化を招来したり、場合によっては性能低下の原因となったりする。
また、50μm未満の微粒子は空気中に舞いやすいため、作業性の悪化を招来するおそれがある。
分級は、例えば、篩分けにより分級する方法、気流により分級する方法等がある。絡みあって篩分けを行いがたい場合については、篩中に適度な重さと大きさのボール等をまぜるなど、適宜調整を行う。これらの分級は連続式でもよいし、バッチ方式でもよい。
【0113】
〔吸収性複合体の使用方法〕
本実施形態に係る吸収性複合体は、乳、血液等のたんぱく質や固形分を含む液体に対しても十分な吸収速度、十分な保液量などを示すことから、衛生材料用途、医療用途に好適に用いることができる。
本実施形態の吸収性複合体は、袋詰め状態の吸収性物品、又はシート状に加工した吸収性物品とすることもでき、これを組み込んで衛生材料、医療用品等の素材として好適に用いることができる。
【0114】
〔吸収性物品〕
本実施形態の吸収性物品とは、繊維及び/又は繊維集合体と、上述した本実施形態の吸収性複合体とを具備しており、これらを用いて成形した物品である。
繊維集合体としては、紙や布が挙げられる。
紙とは、JIS P 0001で定義される広義の意味での紙のことを指し、布とはJIS L 0206で定義されるシート状繊維製品の総称である。
布はシートを形成する手段によって織物、編物、組み物、レース、網、不織布に分類されるが、本実施形態において使用する布は、織物、編物、不織布が好ましく、より好ましくは不織布である。不織布とは、JIS L 0222により定義されるものである。
【0115】
本実施形態の吸収性物品は大きく3種類に分けられる。
1つ目は、本実施形態の吸収性複合体を繊維集合体で作られた袋に詰めた、袋詰め状の形状の吸収性物品タイプAであり、外部からの力によって内部の吸収性複合体粒子が動く場合もありえる状態にある物品である。すなわち、袋詰めは吸収性複合体の目付量を比較的高く、高密度で充填することが可能であり、袋内で吸収性複合体が動くことが許容される用途に好適に使用される。
2つ目は、シート状に成形した吸収性物品タイプBである。すなわち、吸収性複合体と繊維及び/又は繊維集合体と混合し、任意の方法にてシート状に成形した物品である。
3つ目は、シート状に成形した吸収性物品(タイプB)を袋状の繊維集合体に詰める(袋詰め)、または、シート状に成形した吸収性物品(タイプB)を、シート状に加工した繊維集合体でさらに覆った吸収性物品タイプCである。
繊維集合体で覆う方法は任意であるが、たとえば、包む、挟み込む等の加工方法が挙げられる。
【0116】
タイプA及び/又はタイプCの吸収性物品を得るために用いる繊維集合体で作られた袋、シート状の成形した繊維集合体は、吸収性複合体が袋の外にこぼれず、また、吸収の対象となる液体を素早く通過させる機能を有しているものとする。
繊維集合体の原料となる繊維の繊維径は、繊維集合体の厚み、液透過性や柔軟性、滑らかさ、加工性に影響を及ぼし、繊維長は加工性と毛羽立ち性に影響を及ぼす。
すなわち、太い繊維を原料に用いると、厚みがあり、剛直な繊維集合体が得られ、細い繊維を用いると薄く、滑らかな繊維集合体が得られる。
一方、繊維を細くし過ぎると1本ずつの繊維は切れやすくなり毛羽立ち、繊維集合体の強度の低下になる。
そこで、繊維径が100μm以下、好ましくは0.1μm以上60μm以下、より好ましくは0.5μm以上50μm以下、さらに好ましくは3μm以上25μm以下の繊維からなり、かつ、繊維長が0.3mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上の繊維を用いる。
繊維長の上限は、繊維集合体を製造する製造方法に適した上限の長さを適宜選択する。
繊維集合体を得る方法として、湿式、乾式の製造方法があり、それぞれに適した繊維長は文献(『不織布の最新技術と用途展開』、(株)東レリサーチセンター調査研究部、2012年11月)に好適な範囲が示されている。しかし、繊維長は本文献に示された繊維長に限定されない。
タイプBに用いる繊維及び繊維集合体の原料となる繊維も、同様の理由から、前記繊維径、繊維長であることが好ましい。
【0117】
本実施形態に係る吸収性物品タイプA、B、Cに用いられる繊維及び繊維集合体を形成する繊維は、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、複合化繊維が挙げられる。これらの繊維は、任意に複数の繊維を混合して用いてもよい。
天然繊維としては、植物性繊維すなわち木材パルプ、非木材パルプ、綿、麻があり、動物性繊維としては、絹、モヘヤ、ウール、カシミアなどがある。
再生繊維としては、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセルなどがある。
半合成繊維とは、天然繊維を構成するポリマーの一部に化学修飾を行ったポリマーからなる繊維である。たとえば、パルプの主構成ポリマーであるセルロースをエステル化、エーテル化等の処理により誘導されたポリマーを主とした繊維である。
合成繊維とは、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエーテル系、ポリアミド系(ナイロン)、ウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、アラミド系などの繊維である。
複合化繊維とは、例えば、異なる2種以上のポリマーを溶融状態で混合又は共重合により得られたポリマー及び/又はサイド・バイ・サイド繊維、芯鞘繊維、分割繊維、海島型繊維、中空繊維からなる繊維である。
本実施形態にかかわる吸収性物品の製造工程は、吸収性複合体を分離する工程、吸収性複合体を積層する工程、吸収性複合体を固定化する工程を含むことが好ましい。この工程を含むことによって吸収性複合体が物品中で凝集しにくくなるため、特に好ましい。吸収性複合体を均一に分離するためには、前期分級工程と同じ操作で行うことができる。特に薄型の吸収性物品を作製する場合には、ほぐし用のボール等と一緒に篩をかけることが好ましい。接着成分を塗布した基材を連続的に流し、そこに篩で散布していくことによって均一な積層シートを作製することができる。
【0118】
特にシート状に加工した、本実施形態の吸収性物品を紙おむつ、尿パッド、生理用ナプキン等の使い捨て用の衛生材料や、各種の医療用材料に使用する場合には、装着者の身体にフィットし、その動きによく追随する柔軟性が求められる。このように柔軟性が求められる用途に使用する場合には、潜在的に捲縮性を有する繊維(潜在捲縮性繊維)を用いると装着感に優れる柔軟な吸収性物品を得ることができる。
潜在捲縮性繊維としては、加熱される前は、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、かつ所定温度での加熱によって螺旋状の三次元捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維が用いられる。
潜在捲縮性繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その一例としては、特開平9-296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。
【0119】
上述した本実施形態の吸収性複合体を構成する親水性繊維(第1の繊維)と、吸収性複合体と混合する、吸収性物品を構成する上記繊維及び/又は繊維集合体(第2の繊維)は、互いに同種のものを用いてもよく、異種のものを用いてもよい。
【0120】
本実施形態の吸収性物品は、嵩密度が0.004g/cm3以上0.900g/cm3以下であり、かつ厚みが0.2mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0121】
繊維集合体の液拡散性は、構成する繊維の濡れ性と毛細管現象に強く影響される。
繊維密度が高い、すなわち一定の嵩密度以上であると液体の拡散性に優れ、注入部分など局所的に液体が溜まることがない。
一方、嵩密度が高過ぎると、毛細管現象による拡散性には優れるものの、得られる吸収性物品が剛直であり衛生材料、医療用途に使用する際、装着感が悪化する。
よって、本実施形態の吸収性物品の嵩密度は、0.004g/cm3以上0.900g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.008g/cm3以上0.7g/cm3以下、さらに好ましくは0.01以上0.5g/cm3、さらにより好ましくは0.03g/cm3以上0.5g/cm3以下である。
また、吸収性物品の厚みは、薄い方が衛生材料や医療材料の設計の幅を広げることが可能であるため、好まれる傾向にある。
しかし、薄くするために過度にプレスを行うと吸収性複合体の粒子が粉砕され、微粉末が生じることがある。
そこで吸収性複合体の平均的な粒径以上の厚みである0.2mm以上の厚みがあることが好ましい。
また、吸収性物品の厚みが15mm以下であると、衛生材料や医療材料に用いた際のハンドリング性、装着感に優れ、製品設計の幅が広がる。
上述したことから、吸収性物品の厚みは、0.2mm以上15mm以下が好ましく、より好ましくは0.3mm以上10mm以下、さらに好ましくは0.4mm以上7mm以下、さらにより好ましくは5mm以下、よりさらに好ましくは3mm以下である。
【0122】
吸収性物品の嵩密度を制御する方法としては、例えば、平面ロールやエンボスロール、凸のパターンを刻印したロール等によるロールプレスを用いる方法が挙げられる。
また、棘のある針を用い、袋の上面と下面の繊維を交絡させる、熱エンボスロールや熱刻印ロール、超音波端子を用い、吸収性物品の上面側と下面側の繊維をドット状、不連続なライン状、連続した融着させると嵩密度の制御に加え、吸収性物品の形状安定性の向上、液体の吸収速度向上に有効である。
【0123】
上述したタイプA、Cの吸収性物品に用いる繊維集合体の1枚の厚みは7mm以下であることが好ましく、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
吸収性複合体をこぼれないようにする目的で使用する場合は、繊維集合体は、より薄い方が好ましい。かかる場合、好ましくは0.5mm以下である。
繊維集合体の強度や、吸収性複合体がこぼれない等の問題が無い限りは、繊維集合体の厚みは、0.1mm又はそれ以下、例えば、0.05mm以下にしてもよい。
一方、繊維集合体に液体の拡散性や強度、肌触り、風合い、意匠性を求める場合には、任意に厚みを設定することができる。
繊維集合体の嵩密度は、本実施形態の吸収性物品の嵩密度と同様に、0.004g/cm3以上0.500g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.008g/cm3以上0.4g/cm3以下、さらに好ましくは0.01以上0.5g/cm3以下、さらにより好ましくは0.03g/cm3以上0.5g/cm3以下である。
嵩密度・厚みを制御する方法は、前述の吸収性物品の制御方法と同様にロール等の加工を行うことが有効である。
【0124】
繊維及び/又は繊維集合体と、吸収性複合体との合計目付量に関しては、上述した「吸収性物品の嵩密度は0.004g/cm3以上0.900g/cm3以下であり、かつ厚みが0.2mm以上15mm以下」という条件から算出され、8g/m2以上13,500g/m2以下となる。
しかし、吸収性物品の成形品としての強度、柔軟性、ハンドリング性の観点から、実質的には20g/m2以上1,500g/m2の範囲が好ましい。
【0125】
特にタイプA、Cの吸収性物品で用いる繊維集合体の1枚当たりの目付量は8g/m2以上700g/m2以下であることが好ましい。
吸収性複合体がこぼれないようにする目的の場合には、好ましい目付量は、13g/m2以上、より好ましくは15g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは60g/m2以下である。
タイプA、Cの吸収性物品に用いる繊維集合体は、必要に応じ2枚またはそれ以上重ねて使用してもよく、その場合は2枚以上の繊維集合体の各目付量の合計値を用いる。
タイプAの吸収性物品に充填できる吸収性複合体の目付量の範囲は、用途・吸収対象の量により任意に設定が可能であるが、好ましくは5g/m2以上1,000g/m2以下であり、より好ましくは20g/m2以上300g/m2以下、さらに好ましくは50g/m2以上200g/m2以下である。
タイプBの吸収性物品は、繊維及び/又は繊維集合体と吸収性複合体の目付量の比率は200:1~1:200の範囲であることが好ましく、合計の目付量は20g/m2以上1,000g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは50g/m2以上600g/m2以下である。
なお、吸収性複合体の目付量は10g/m2以上500g/m2以下であり、20g/m2以上200g/m2以下であり、より好ましくは50g/m2以上である。
【0126】
本実施形態の吸収性物品は、2層以上の多層構造からなるものであってもよく、当該2層以上の多層構造中には、本実施形態の吸収性複合体を含まない層を有してもよい。この場合、吸収性複合体を含む層と含まない層が全面又は点/ライン状に接着されていることが好ましい。
【0127】
かかる場合、前記吸収性物品が、繊維及び/又は繊維集合体と吸収性複合体とが、接着剤により部分的に接着されている、又は繊維が少なくとも熱可塑性繊維を含み、熱可塑性繊維と吸収性複合体が熱融着していることが好ましい。
そのほか、吸収性物品を平面ロールとエンボスロールの間に通す、または棘のある針を刺すことで、吸収性複合体が存在する層の上側の繊維と下側の繊維が交絡、または融着した吸収性物品を得ることが可能であり、また、凸の幅が2mm以下のパターンを刻印したロールと平面ロールの間に通すことで幅2mm以下の連続したライン状の凹みがある吸収性物品を得ることができる。
【0128】
すなわち、一度得られた吸収性物品をエンボスロールや刻印ロールに通す、棘のある針を刺すことで、嵩密度を調節することができるとともに、吸収性物品を構成する繊維及び/又は繊維集合体を形成する繊維同士が交絡、融着することで、吸収性物品の形状をより安定化させることができる。
【0129】
本実施形態の吸収性物品は、乳、血液等のたんぱく質や固形分を含む液体に対しても十分な吸収速度、十分な保液量などを示すことから、衛生材料用途、医療用途の部材として好適に用いることができる。
衛生材料用途の一つである生理用ナプキンに対する昨今のニーズとしては、幅が狭く、薄くコンパクトであることが求められている。
衛生材料の肌当接面を形成する透水シートと非肌当接面を形成する裏面シート(防水シート)の間に位置する液の吸収を目的とした吸収体として、本実施形態の吸収性物品を好適に使用することができる。
特に生理用ナプキンの吸収体として本実施形態の吸収性物品を用いる場合、吸収性物品に凹み部があると、吸収面の表面積が増え、液を迅速に吸収することができ、装着時のドライ感を得ることができる。
さらに、吸収性物品に幅2mm以下の連続したライン(線)状の凹み部を形成することにより、ライン(線)状の凹み部と直角方向には液が広がりにくいため、自在に液の広がる方向を制御可能であり、それによって従来よりも幅を狭くしても横漏れを防止することができる。
【0130】
上述した、吸収性複合体をシート状に加工して得られる吸収性物品タイプBとは、バインダー溶液やホットメルト接着剤(熱可塑性樹脂粉末=非繊維状物及び/又は高温部に樹脂を接触させ溶融状態の樹脂を吐出するタイプ)を、吸収性複合体に散布し、続いて繊維集合体で包むことでシート状の成形した物品;繊維及び/又は繊維集合体と吸収性複合体を混合し、シート状に成形した物品;バインダー溶液やホットメルト接着剤が付着したシート状に分離した吸収性複合体を散布して接着させたシート状の物品;熱可塑性樹脂をノズルから押し出したとき(紡糸)から繊維集合体を形成するまでの時に吸収性複合体を混合し、吸収性複合体が繊維間(一部繊維と接着していてもよい)に配置されたシート状に成形した物品(すなわち、スパンボンド法及び/又はメルトブローン法により繊維集合体を形成時に吸収性複合体を取り込む製法により得られる物品)である。
これらの方法のいずれか1つ、又は任意の複数の製法を組み合わせにより、シート状の吸収性物品タイプBを得ることができる。
【0131】
例えば、前記バインダー溶液を用いて吸収性物品を製造する方法としては、溶剤(水及び/又は有機溶剤)で希釈したバインダーを直接吸収性複合体に噴霧し、溶剤を熱等で蒸発させることで吸収性複合体を固定化する方法;バインダーを熱硬化させることで固定化する方法が挙げられる。
乾燥により固定化するこれらの固定化方法は一般にケミカルボンド法という。
その他、熱可塑性樹脂粉末、ホットメルト接着剤を用いる方法は、吸収性複合体に熱可塑性樹脂粉末又はホットメルト接着剤を散布し、熱を加え吸収性複合体を固定化する方法である。
このように熱により固定化機能を発現する固定化方法を一般にサーマルボンド法という。
【0132】
バインダー溶液を構成するバインダー材料としては、従来より知られるもの、例えばアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリアクリレート、クロロプレンゴム(CR)、その他ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0133】
繊維及び/又は繊維集合体と吸収性複合体を混合によりシート状に固定化する方法としては、例えば、予め吸収性複合体と繊維とを混合し、上記ケミカルボンド法及び/又はサーマルボンド法のいずれかの方法でシート状に固定化する方法が挙げられる
その他、予め吸収性複合体と繊維とを混合したものを、ロール等のプレス、刺のあるニードルを突き刺し、繊維を機械的に絡めるニードルパンチ法によりシート状に固定化する方法;エンボス加工によりシート状に固定化する方法;吸収性複合体粒子と混合する繊維に熱可塑性繊維を用いる(熱可塑性を示さない任意の繊維との併用も可能)ことで熱により固定化するサーマルボンド法;シート状の繊維集合体で吸収性複合体を覆う方法;、さらには、これらの方法により吸収性複合体と繊維との混合物を任意の方法でシート状にした繊維集合体で包んだ後、任意の方法(例えば、上記のケミカルボンド、サーマルボンド法に加え、ロール、ニードル等でプレス加工を行うこと)でシート状に固定化する方法がある。
これらの方法は、1種のみを単独で用いてもよく、複数の方法を任意に組み合わせて使用することができる。
【0134】
吸収性複合体粒子と繊維とを混合する方法としては、例えば、文献(『不織布の最新技術と用途展開』、(株)東レリサーチセンター調査研究部、2012年11月)に記載されているカーディング法(カード法)により、繊維集合体から繊維を解きほぐし、均一なシート状のウエブ(繊維集合体)を形成するまでの間に吸収性複合体粒子を混ぜ込む方法が挙げられる。
その他、特開平7-268752号公報、特開平9-143850号公報、特開2005-67190号公報に記載されているエアレイド法により、空気を媒体として解裁した繊維と共に吸収性複合体をシート状の繊維集合体を形成する方法が挙げられる。
現在、商業的に成功したエアレイド法に基づく製法には、本州方式、クロイヤー(M&J)法、Dan-Web法がある。
また、カード法やエアレイド法、その他任意の方法でシート状に形成した吸収性複合体粒子を含まない繊維集合体に吸収性複合体粒子を散布し、その上にカード法又はエアレイド法を用いて繊維を積層する、任意の方法でシート状に成形した繊維集合体を被せる、という混合方法を用いることも可能である。
シート状に成形した繊維集合体を用いる場合には、繊維集合体の最表面の繊維同士の空間が吸収性複合体粒子の50%平均粒子径の1.5倍以上の開いていることが好ましい。これにより、繊維集合体の繊維が吸収性複合体粒子のスペーサーになり、吸収性複合体粒子が3次元的に配置されることが可能となる。
繊維同士の空間が吸収性複合体粒子の平均粒径の1.5倍以下のシート状に成形した繊維集合体を用いる場合には、繊維集合体の表面に、吸収性複合体粒子の50%平均粒子径の3倍以上の凹凸があり、1×1cm角内に凹凸がそれぞれ6個以上のあることが好ましい。
【0135】
吸収性複合体粒子と繊維との混合物は、ケミカルボンド法、すなわち、バインダー溶液に浸漬又はスプレー散布を行い、乾燥によりシート状に固定化する方法;混合する繊維にホットメルト接着剤を塗布しておき、加熱カレンダーロールにより熱プレス及び/又は熱風を当てながらシート状に固定化する方法(エアースルー方式);混合する繊維の一部又は全部に熱可塑性繊維を用い、加熱カレンダーロールにより熱プレス及び/又は熱風を当てながらシート状に固定化する方法(エアースルー方式);刺のあるニードルを突き刺し、繊維を機械的に絡めるニードルパンチ法によりシート状に固定化する方法;エンボス加工によりシート状に固定化する方法;からなる方法から1つ又は複数の方法を任意に組み合わせて使用することができる。
また、ロール等により加圧を行い、任意のシートの厚み、繊維密度に調節することができる(例えば特開平10-329252号公報参照)。
【0136】
シート状の繊維集合体で吸収性複合体粒子を覆う方法としては、繊維集合体の上に吸収性複合体粒子を配置後、他のシート状の繊維集合体及び/又は吸収性複合体粒子を散布した繊維集合体の一部を被せる方法が挙げられる。
これらの方法により、吸収性複合体粒子を覆った繊維集合体にバインダーを含浸及び/又はスプレー散布を行いシート状に固定化することができる。また、繊維集合体及び/又は吸収性複合体粒子にバインダーをスプレー散布しシート状に固定化するケミカルボンド法;吸収性複合体粒子を覆う繊維集合体に熱可塑性繊維を混合するか熱可塑性樹脂(繊維、粉末)を吸収性複合体粒子と共に配置しておき、サーマルボンド法によりシート状に固定化する方法(エアースルー方式)を用いることにより、シート状に固定化することができる。
さらには、ニードルパンチ法又はエンボス加工により吸収性複合体粒子の上面と下面の繊維集合体を接着する方法も用いることができる。
【0137】
吸収性複合体粒子と混合する繊維及び/又は繊維集合体の繊維径は、少なくとも繊維径が100μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上60μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上50μm以下、さらにより好ましくは3μm以上25μm以下である。
また、繊維長が好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上の繊維を繊維集合体に加工したものであることが好ましい。
繊維長の上限は、その袋を製造する製造方法に適した上限の長さであるものとする。
【0138】
吸収性複合体粒子と混合する繊維及び/又は繊維集合体としては、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、複合化繊維等が挙げられる。これらは、一種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
天然繊維としては、植物性繊維すなわち木材パルプ、非木材パルプ、綿、麻があり、動物性繊維としては、絹、モヘヤ、ウール、カシミアなどがある。
再生繊維としては、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセルなどがある。
半合成繊維とは、天然繊維を構成するポリマーの一部に化学修飾を行ったポリマーからなる繊維である。たとえば、パルプの主構成ポリマーであるセルロースをエステル化、エーテル化等の処理により誘導されたポリマーを主とした繊維である。
合成繊維とは、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエーテル系、ポリアミド系(ナイロン)、ウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、アラミド系などの繊維である。
複合化繊維とは、例えば異なる2種以上のポリマーを溶融状態で混合又は共重合により得られたポリマー、及び/又はサイド・バイ・サイド繊維、芯鞘繊維、分割繊維、海島型繊維、中空繊維からなる繊維である。特にシート状に加工した吸収性物品を紙おむつ、尿パッド、生理用ナプキン等の使い捨て用の衛生材料や、各種の医療用材料に使用する場合には、装着者の身体にフィットし、その動きによく追随する柔軟性が求められる。このように柔軟性が求められる用途に使用する場合には、潜在的に捲縮性を有する繊維(潜在捲縮性繊維)を用いると装着感に優れる柔軟な吸収性物品を得ることができる。潜在捲縮性繊維としては、加熱される前は、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、かつ所定温度での加熱によって螺旋状の三次元捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維が用いられる。潜在捲縮性繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9-296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。
【0139】
吸収性複合体粒子を構成する繊維(第1の繊維)と、吸収性複合体粒子と混合する上記繊維(第2の繊維)とは、互いに同種のものを用いてもよく、異種のものを用いてもよい。
【0140】
合成繊維をサーマルボンド法による熱可塑性繊維としては、従来公知のものを使用できる。以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレンオクテン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系重合体;エチレンテレフタレート共重合体、ポリヘキサメチレンテレフタレート共重合体;ブチレンイソフタレート共重合体、ポリアミド、スチレン共重合体などの可紡性熱可塑性重合体が挙げられる。
これらは、一種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、熱融着性繊維の形態としては、上記樹脂成分のみからなる繊維の他に、これを鞘成分とする芯鞘型、サイドバサイド型、海島型などの複合繊維を挙げることができる。
複合繊維を構成する芯成分としては、鞘成分との軟化点または融点の差が20°C以上のものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、6-ナイロン、6、6-ナイロン、610-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミドなどのポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の可紡性重合体が挙げられる。
融着量をコントロールしやすいことから芯鞘構造の繊維を好適に用いることができる。
【0141】
繊維の太さは特に限定されないが、0.01~200デニールであることが好ましく、0.1~100デニールであることがより好ましく、0.5~50デニールであることがさらに好ましく、1.2~15デニールであることがさらにより好ましい。細すぎると疎水性繊維同士の間の空間が小さくなりすぎて吸収性能を損なう場合があり、太すぎると感触が悪くなる場合がある。
繊維長は特に限定されないが、0.1~20mmであることが好ましく、0.5~10mmであることがより好ましく、1~5mmであることがさらに好ましい。
短すぎる場合は、接合力が弱くなる場合があり、長すぎる場合は、混合性が悪くなる場合がある。
【0142】
本実施形態に係る吸収性複合体を使用した吸収性物品は、薄型でかつ、吸水速度とドライ感に優れるため、必要に応じて、透水シート、不透水シート、ギャザー等の補助部材を加えることで紙おむつ、尿パッド、生理用ナプキン等の使い捨て用の衛生材料や、各種の医療用品に好適に使用できる。
【0143】
その他、本実施形態の吸収性物品は、以下に限定されるものではないが、例えば、動物用シーツ、ペットシーツ等の愛玩動物用の排泄物処理材の吸収部材、冷凍水産物の運搬の際に水産物が氷解した水に濡れるのを防止する吸収性シート、鉢植えを被う水蒸発防止用の吸収性シート、鉢植えの下に敷く吸収性シート、水槽の回りに配置する吸収性シート、結露防止用シート等に使用する吸収性シート、傘立ての受部等の滴の垂れる箇所に配置して、傘等から落ちる水滴を吸収する水滴吸収マット、乗り物のヘッドカバー用のマット、ヘルメット又は帽子内の蒸れ防止用マット、温水洗浄便座(TOTO株式会社製のウォシュレット(登録商標)便器など)での排便後に使用されるトイレットペーパーシート、屋根の無いイベント会場の雨による床の濡れ防止用吸収性マット、雨の日の自動車、列車、飛行機といった乗り物の床の濡れ防止用吸収性マット、雨の日の病院、サービスエリア、デパート、ホテル、店舗、オフィスビル、又は、レジャー施設の床の濡れ防止用吸収性マット、冷蔵庫内の濡れ防止用吸収性マット、調理場の床の濡れ防止用吸収性マット、炊事場又は調理場の生ゴミのドリップ吸収用の吸収シート、給水設備、給湯設備、便器、洗面具等の衛生器具を備える床の濡れ防止用吸収性マット、冷蔵庫の周囲の床の濡れの防止用吸収性マット、レジャーマツト、マッサージ療法用シーツ、ベット用補助マット、野菜、青果物若しくは花卉類の保水又は調湿機能を有する包装材料、鮮魚、生肉、総菜食品、弁当等の保水又は調湿機能を有する包装材料、種子、菌株、幼苗又は球根の包装材料、機械類や窓の掃除用、建築物の天井部、壁部、床部、窓部等の結露及び濡れの拭き取り用のウエス又は雑巾、園芸植物の栽培時における水蒸発防止用のシートなどとして好適に使用できる。
【実施例0144】
以下に本発明の具体的な実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されない。
以下の測定は特に記載のない限り、25℃、湿度50%RHの環境で行った。
【0145】
〔測定で用いた材料〕
(吸収材)
下記「吸収材」とは、粒子状の吸収性樹脂、又は、吸収性複合体を意味する。
前記吸収材が、パルプ等の繊維と混合して使用されている場合については、分離をしてから測定を行った。
分離方法については、篩い分け、気流分離、ピンセット等でつまんで分離する方法、イソプロピルアルコール等の溶媒に浸漬して攪拌した後、密度差を利用してピンセット等で分離する方法から選択し、吸収材にダメージがない方法で任意に行った。
接着剤や、熱可塑性の化合物により基材上に接着されているものについては、任意の溶剤により接着剤等を除去する方法、又は、溶剤中でシェアを加えることにより分解し、密度差を利用してピンセット等で分離する等を行って用いた。
これらの方法で分離不可能なものについては、粉砕機にて粒状にして吸収材として取り扱った。
吸収性樹脂と吸収性複合体の区別は、光学顕微鏡で観察することにより行った。
【0146】
(生理食塩水)
測定用生理食塩水としては、濃度が0.9質量%の生理食塩水を用いた。
和光純薬社製の特級の塩化ナトリウムを、イオン交換水(0.05×10-4S/m以下)に溶解させて作製した。
【0147】
(血液)
測定で用いる血液は、コージンバイオ社製の馬脱繊維血であり、製造後10日以内のものを用いた。なお、血液は開封後1時間以内に使用し、同一ロットの血液を用いて同一日に行った。ヘマトクリット値が48~52%のものであり、この範囲を外れた場合には使用不可であるとした。
血算値の測定は、シスメックス社製、多項目自動血球分析装置、XT-1800iを使用して行った。
血液は馬脱繊維血を使用したが、牛血モードで算出した。
なお、後述のヘマトクリット90%血液の血算を測定する場合、装置の測定範囲外となるため、生理食塩水にて適宜希釈を行って測定した。
表1に実施例、比較例で使用した血液の血算値の一例を示した。
【0148】
以下、血液の物性を示す記号の意味を記載する。
WBC:白血球数
RBC:赤血球数
HGB:血色素量(ヘモグロビン:Hemoglobin)
HCT:ヘマトクリット(hematocrit)値
MCV:平均赤血球容積
MCH:平均赤血球色素量
MCHC:平均赤血球血色素濃度
PLT:血小板数
PDW-SD:RBC粒度分布図においてピークの高さを100%としたときの20%度数レベルの分布幅
RDW-CV:RBC粒度分布曲線を正規分布曲線と仮定したときの分布幅の指標
NEUT:好中球(Neutrophil)数及び好中球比率
LYMPH:リンパ球(Lymphocyte)数及びリンパ球比率
MONO:単球(Monocyte)数及び単球比率
EO:好酸球(Eosinophil)数及び好酸球比率
BASO:好塩基球(Basophil)数及び好塩基球比率
全タンパク:遠心分離した血液の上澄み(血漿)に含まれる蛋白質量。簡易的には血漿を糖度計(たとえば、アタゴ糖度計・Brix計 MASTER-ON)にて測定される値(単位:g/100mL)
密度:31℃に調温した血液1mLあたりの質量
【0149】
【0150】
〔評価方法〕
評価方法について、以下、説明する。
【0151】
<吸収性樹脂>
((1)無加圧下における吸収性樹脂の吸収量の測定;Tea-bag法)
無加圧下における吸収性樹脂の生理食塩水吸収量を以下のとおり測定した。
不織布製のティーバッグ式袋(60×40mm、以下、「Tea-bag」という)の質量A(g)を測定した。
吸収性樹脂をB(g)(0.1990~0.2010g)量り取り、前記Tea-bagに均一に入れ、23℃の生理食塩水中に浸漬した。
60分後にTea-bagを取り出した。
Tea-bagの一つの角を固定した斜めの状態で10分間吊るして水切り後、Tea-bagの質量C(g)を測定した。
ブランクとして前記と同様の操作を、質量A’(g)のTea-bagに、吸収性樹脂を入れない状態で行い、Tea-bagの質量D(g)を計測した。
吸収量は、下記式(1)に従って算出した。
測定は3回行い、平均値を吸収量とした。
吸収量(g/g)=(C-D×A/A’-B)/B ・・・(1)
【0152】
((2)吸収性樹脂の生理食塩水の保液量の測定;Tea-bag法)
上記の吸収量を測定した後のTea-bagを、キムタオル(日本製紙クレシア株式会社製キムタオル 4つ折り)の間に包み込んだ。
アクリル板(アズワン株式会社製 500mm×500mm、厚み2mm)を、100mm×100mmの大きさに切りとり、前記アクリル板をTea-bagを包み込んだキムタオルの上に設置した。
さらに、前記アクリル板上に、1kgの荷重をかけ、1分間、加圧した。
加圧後、キムタオルに付着する水が0.1g以下になるまで、同様の操作を繰り返し行い、キムタオルに付着する水が0.1g以下になった際のTea-bagの質量E(g)を測定した。
ブランクとして同様の操作を質量A’(g)のTea-bagに吸収性樹脂を入れない状態で行い、Tea-bagの質量F(g)を計測した。
下記式(2)に従って、吸収性樹脂の生理食塩水の保液量を算出した。
測定は3回行い、平均値を吸収性樹脂の生理食塩水の吸収量とした。
保液量(g/g)=(E-F×A/A’-B)/B・・・(2)
【0153】
((3)吸収性樹脂の生理食塩水の吸収速度の測定;ボルテックス法)
100mLのガラス製ビーカーに25℃に調整した生理食塩水を50g測り取った。
ここに30mm×8mmの回転子を入れ、回転計のついたマグネチックスターラーの上にのせ、600min-1(rpm)で回転させた。
非接触式回転計(アズワン株式会社製)にて、回転数を確認した。
吸収性樹脂を2.00g測り取り、ビーカーに投入した。
吸収性樹脂の投入後から、液表面が平らになるまでの時間を測定し、これを吸収性樹脂の吸収速度(秒)とした。
【0154】
((4)加圧下における吸収量(加圧57g/cm2)の測定)
加圧下における吸収性樹脂の生理食塩水の吸収量を以下のとおり測定した。
底面に250メッシュのナイロン網を貼ったアクリル樹脂製の円筒形器具(外径35.0mm、内径24.5mm、高さ30mm、重さD(g))に、吸収性樹脂E(g)(0.1590~0.1610g)を均一になるように入れ、278.3gの分銅(底の外径24.5mm)をのせた。
SUS製シャーレ(内径120mm)に生理食塩水を60mL入れ、円筒形器具をシャーレの中に1時間置いた。
1時間経過後、紙製タオルにて水切りを行い、天秤で器具全体の質量F(g)を測定した。
得られた値から、下記式(3)により加圧下吸収量を求めた。
吸収量(g/g)=(F(g)-D(g)-分銅の重さ(g))/E(g)…(3)
【0155】
((5)吸収性樹脂の残存モノマーの測定)
500mLのプラスチック製容器(アズワン株式会社製アイボーイ)に、吸収性樹脂1gを精秤し、生理食塩水を250g加えて、スターラーチップを入れ、蓋をした状態でマグネチックスターラーにて6時間攪拌した。
6時間経過後、メンブレンフィルターでろ過し、ろ液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、残存モノマー濃度(ppm)を測定した。
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下のとおりとした。
カラム:東ソー製、ODS80Ts
カラム温度:40℃
キャリアー:10mMリン酸水溶液、0.7mL/minで流した。
検出:UV207nm
打ち込み量:50μL
【0156】
((6)吸収性樹脂の表面と中心部(内部)の酸基(カルボキシル基)中和率の測定)
測定装置として、Bio-Rad社製「FTS-575」を用い、下記の方法により、カルボキシル基中和率を測定した。
(i)測定条件
顕微ATR法(結晶板Ge 1回反射)
Back Ground:Air、常温測定
アパーチャー:50×50μm
積算回数:100回
上記の測定条件で得られたスペクトルデータから、1695cm-1(カルボン酸νC=O、ベースライン1774~1616cm-1)及び1558cm-1(カルボキシレートνCOO-、ベースライン1616~1500cm-1)のピーク面積比(1695/1558cm-1)を求めた。
(ii)検量線の作成
検量線作成用試料として全カルボン酸の10mol%、30mol%、50mol%、70mol%、90mol%、100mol%を、アンモニアで中和した部分重合架橋ポリアクリル酸を用いた。検量線試料を割断し、中心部分を顕微ATR法にて1試料につき5回測定した。ピーク面積比(1695cm-1/1558cm-1)より検量線(5次多項式近似曲線)を作成した。割断はウルトラミクロトーム(Reichert社製 ULTRACUT N)にて行った。
(iii)サンプルの測定
検量線試料と同様に測定を行った。吸収性樹脂表面はATR法で直接測定し、吸収性樹脂中心部はウルトラミクロトームにて割断を行ってからATR法にて測定を行った。吸収性樹脂表面は1試料につき3回、吸収性樹脂中心部は1試料につき5回測定を行い、その平均値を測定結果とした。なお、吸収性樹脂中心部とは断面の重心近傍のことである。
【0157】
((7)吸収性樹脂の表面強度の測定)
装置:島津オートグラフAG-1
試料:吸収性樹脂0.10gを精秤し、底面に67μmの孔径のナイロンシート(サンプラテック社製)を貼り付けた内径20.5mm、高さ50mmの円筒容器の底に均一に入れた。
50φのシャーレを用意し、0.90gの生理食塩水を入れ、吸収性樹脂の入った円筒容器を静置し、1時間吸収膨潤させた。
測定:1kNのロードセルを使用し、直径19.7mmの円柱軸をとりつけた。
測定レンジは0.2kNと設定し、ロードセルに荷重がかからない高さにあわせ、そこから降下速度0.6mm/分という一定の速度で下がるように設定した。ロードセルに加わる荷重を経時的に記録した。
ここで、表面強度とは吸収性樹脂が実体積になった時点における荷重(N)を表す。
吸収性樹脂の実体積は、生理食塩水の比重1.010g/cm3と吸収性樹脂の比重(g/cm3)から、下記式(4)を用いて計算した。
実体積(cm3)=0.10/吸収性樹脂の比重+0.90/1.010・・・(4)
【0158】
((8)吸収性樹脂の平均粒子径)
吸収性樹脂を目開きが20μm、25μm、32μm、38μm、45μm、53μm、63μm、75μm、90μm、106μm、212μm、300μm、425μm、500μm、600μm、710μm、850μm、1000μm、1180μm、1400μm、1700μm、2500μmの篩を使用し、ロータップ式篩振套機を用いて10分間篩い分けを行った。
通過することのできた篩の目開きと通過することのできない篩の目開きの中間の値を粒子径とした。
それぞれの粒子径ごとに、粒子径と吸収性樹脂全体中のその粒子径の質量比率の積を求め、その全ての和を算出し、平均粒子径とした。
なお、20μmの篩を通過したものについては、10μmとし、2500μmの篩の上に残ったものについては、2700μmとした。
【0159】
<親水性繊維>
((9)親水性繊維の平均粒子径、平均繊維径、平均繊維長)
分散媒体として水に分散させた親水性繊維を超音波で1分間処理し、25℃における体積基準のメジアン径を測定した。
測定は、レーザー回折散乱粒度分布計(日機装株式会社製、Microtrack MT3300EX 自動試料循環器付き)を用いた。
光学台はMT3300EX、透過設定、屈折率1.54、非球状、測定時間30秒で体積平均粒子径を算出した。
また、親水性繊維の平均繊維径および平均繊維長は、マイクロスコープで100本の繊維を観察して画像解析を行った。
【0160】
<吸収材(吸収性樹脂または吸収性複合体)>
((10)吸収性樹脂又は吸収性複合体の血液吸収量の測定;Tea-bag法)
Tea-bagの質量G(g)を測定した。
実施例においては吸収性複合体、比較例においては吸収性樹脂をH(g)(0.1990g~0.2010g)量りとり、前記Tea-bagに均一に入れた。
ヘマトクリット値50%の血液を未開封の状態で32±1℃の温浴に30分間つけて温調した。
血液を100mLの広口のプラスチック製のボトルに移し変えて、そのまま温調を続けた。
プラスチック製のボトルを、あわ立たないように回して、血液の固形成分が均一になるように調整した。
ピペットマン(ギルソン社製)を10mLに設定し、血液の固形成分が均一になるようにピペットの先端でプラスチック製ボトル中の血液を泡立たないように攪拌しながら、10mLを2回(20mL)の血液をとり、直径90mmのプラスチック製シャーレ中に手早く入れ、ここにTea-bagを入れ、ピンセットでTea-bag全面が血液に濡れるように浸漬した。シャーレに血液を取り分けるまでの温調時間は合計で90分以内とした。
血液浸漬の2.5分後に、Tea-bagを裏返して、満遍なく血液に接触するようにした。
血液浸漬の5分後、Tea-bagを取り出し(即ち、血液浸漬時間は5分である)、荷重をかけない状態でキムタオルにて包み込み、周囲に付着している血液をふき取った。
その後、新しいキムタオルにてTea-bagを包み込み、100mm×100mmの大きさのアクリル板(アズワン株式会社製 500mm×500mm、厚み2mm)を、Tea-bagを包み込んだキムタオルの上に設置し、1kgの加重をかけることで1分間、加圧した。加圧後、Tea-bagの質量I(g)を測定した。
血液吸収量の測定に対して、ブランクとして前記と同様の操作を、質量G’(g)のTea-bagに吸収性複合体(吸収性樹脂)を入れない状態で同様の操作を行い、最終的なTea-bagの質量を測定し、質量J(g)とした。
下記式(5)に従い血液吸収量を算出した。
測定は3回行い、平均値を血液保液量とした。
血液吸収量(g/g)=(I-J×G/G’-H)/H・・・(5)
【0161】
((11)ヘマトクリット値90%の血液の吸収量、及び血液濃度依存特性の測定)
ヘマトクリット値の高い血液は、以下の方法にて調整をった。
50mLのPP製遠沈管に馬脱繊維血40mLを入れた。
久保田商事製テーブルトップ遠心機5100に、ユニバーサルスイングローターRS-720、TUBERACK TC50×16RS720をセットし、3500rpmにて10分間遠心分離をかけた。
遠心分離機から遠沈管を取り出し、蓋をあけて、ヘマトクリット値が目的とする90%になるよう、上澄み(血漿)部を適量吸い出した。界面も含め全血漿を吸い出すことで目的のヘマトクリット値となった。
血漿を吸い出した血液が入った遠沈管の蓋を閉めて、ゆっくりと5分間上下転倒を行い、沈殿した血球を均一に分散させた後、遠沈管をミックスローターにセットし、ゆっくりと5分間回転させた。
血算の測定を行い、ヘマトクリット値が目標値となっていることを確認した。
同作業を複数回行い、所定量の血液を回収した。
回収後の血液は、大きな容器(例えば500mLのPP製プラ容器)に加えた後、ミックスローターにてゆっくりと5分間回転させて混合し、再度血算を測定し、ヘマトクリット値が目標値になっていることを確認した。
同様の方法で、ヘマトクリット値70%の血液を調整した。
ヘマトクリット値20%の血液は、上記操作で回収した上澄み液(血清)を、通常の血液に混ぜることで調整した。
ヘマトクリット値を90%、70%、20%に調整した血液を32±1℃の温浴に30分間つけて温調した。温調以降の操作は前記(10)と同様に行うことで、ヘマトクリット値90%、70%、20%の血液吸収量の測定を行った。
ヘマトクリット値の使用範囲は目的の値±2%とした。
また、血液濃度依存特性として、(ヘマトクリット値70%血液吸収量/ヘマトクリット値20%血液吸収量)を算出し、表3中、70%/20%として記載した。
【0162】
((12)吸収性複合体表面のCOピーク強度)
IRを用いて定量した。
装置は、パーキンエルマー社製 Spectrum Oneを用い、ATR法(1回反射)にて、ダイヤモンド/ZnSe(屈折率約2.4、ユニバーサルATR)を用い、分解能4cm-1、積算回数100回、波数範囲4000-650cm-1で測定を行った。
試料をATR結晶の上に重ならないように敷き詰め、押し付け棒で押さえた。
圧力は適宜調整を行い、スペクトルの最大Absorbanceが0.15~0.2になるようにした。
規格化を行い、親水性繊維、及び、吸収性樹脂に特徴的なピーク高さを比較した。
具体的に、吸収性樹脂がポリアクリル酸系であり、親水性繊維がセルロースである場合には、1800cm-1から低波数側に底辺を引きアクリル酸塩由来の1550cm-1付近のピークトップから底辺までの距離をCO伸縮振動のピーク強度とした(表3中に、COピーク強度として示す。)。
【0163】
((13)吸収性複合体の表面と内部の酸基濃度比)
吸収性複合体の内部の酸基濃度については、樹脂製の試料台に、接着剤で吸収性複合体中の各試料を1粒ずつ固定した後、ミクロトームにて断面を作製し、得られた断面について、ATR測定を行った。前記(12)と同様に測定、規格化を行い、酸基濃度を算出した。具体的には、吸収性樹脂がポリアクリル酸系であり、親水性繊維がセルロースである場合には、1800cm-1から低波数側に底辺を引きアクリル酸塩のカルボキシル基に由来する1550cm-1付近のピークトップから底辺までの距離を酸基濃度とした。
前記(12)で求める吸収性複合体のCOピーク強度は吸収性複合体表面の酸基濃度を示しており、これと、(13)で求めた内部の酸基濃度の比(表面/内部)を酸基比率とした。
【0164】
((14)100μS以上の値を有する成分の比率(%))
吸収性複合体を、90℃の熱風乾燥機により3時間乾燥を行い、その後、D20湿度20%雰囲気下に3日間静置する。この時点で質量を測定し、これを含水率0%と定義した。
その後、D20湿度100%雰囲気下で、一定時間ごとに質量測定を行い、含水率が5~5.2%になった時点でパルスNMR測定を実施した。
装置はブルカーバイオスピン社製のMinispec MQ20を用い、核種は1H、測定はT2、測定法はソリッドエコー法、積算回数は256回、繰り返し時間1.0秒、測定温度25℃で行った。
フィッティングはガウス型*Sinc関数、ローレンツ型関数、ローレンツ関数を組み合わせて行い、緩和時間T2を測定した。
【0165】
((15)ゼータ電位の測定)
吸収性複合体のうち100μm~200μmの成分を篩によって回収した。
凝集物が存在する場合については、ラボミルサーにて粉砕を行ったのちに回収を行った。
日機装株式会社製のStabinoを用いて、イソプロピルアルコール溶媒中でゼータ電位の測定を行った。
吸収性複合体0.1gを10mLのイソプロピルアルコール中に分散させた。
測定は3分間、Statモードで行った。
30秒程度で値が安定するため、その値をゼータ電位とした。
【0166】
((16)耐衝撃指数)
ステンレスふるい(大きさ75φ×20、ステンレス製、アズワンカタログ品)を、上から、蓋、目の開き710μmの篩、目の開き500μmの篩、目の開き300μmの篩、目の開き100μmの篩、受け器の順番にセットし、受け器以外の篩各段に、ステンレス球(アズワン製 SUS304 3/8インチ)を3個ずつセットした。
目の開き710μmの篩の上に、吸収性複合体のサンプル1.5gを入れ、振動ふるい(アズワン製 ミニふるい振とう機 MVS-1)にセットし、メモリ9で20分間処理を行った。
目の開き500μmの篩、目の開き300μmの篩、目の開き100μmの篩の上に、残った吸収性複合体のサンプルを回収した。
すなわち、最初の吸収性複合体のサンプルから710μm以上の大きな粒子と、100μm未満の小さな粒子が取り除かれたものとなるようにした。
チャック付ポリ袋(生産日本社製 ユニパック C-8)に回収した吸収性複合体のサンプルを入れ、空気を含んだ状態でチャックを行い、手で振ることによって吸収性複合体のサンプルを均一に混合した。
容器(サンダイヤ社製 総絞りスクリュー式保存容器 浅中 80cc 55φ×55H)の中に、上記サンプル1.0g、及び、ステンレス球(アズワン製 SUS3043/8インチ)を5個入れ、蓋をしめた。
ラボシェーカー(大洋化学工業社製 ロータリーシェーカーR20mini)にセットし、160rpmにて30分間処理を行った。
吸収性複合体のサンプルを取り出し、ステンレスふるいにて同様に篩分けを行った。
受け器に残った吸収性複合体のサンプルを回収し、質量を測定し、生理食塩水の吸収量を測定した。
【0167】
((17)Dry粒径、及びWet粒径の測定)
測定対象は、吸収性複合体とした。
測定は25℃に温度管理された部屋で行った。
日機装株式会社製のレーザー回折・散乱式粒度分析計「Microtrack MT3300EXII」を用いて光散乱方式にてピークトップの粒子径を測定した。
光学台MT3000II、透過設定、屈折率1.54、非球状、測定時間30秒で体積分布としての粒径分布を測定したグラフからピークトップの粒子径を読み取った。
乾燥状態(Dry)では、日機装株式会社製の自動試料供給機(TDFII)を使用して、付属の吸引機の設定弱で吸引しながら測定を行った。
湿潤状態(Wet)では、日機装株式会社製の自動試料循環器を使用し、エタノール溶媒中にて超音波分散を行った後に測定を行った。
乾燥状態で測定した粒径をDry粒径、エタノール溶媒中で測定した粒径をWet粒径とし、湿潤粒径(Wet粒径)/乾燥粒径(Dry粒径)を算出した。
【0168】
((18)タップ密度の測定)
アズワン株式会社製の5mLのメスシリンダーを用意し、吸収性複合体の質量を測定した。
吸収性複合体1gをイワタニ製ラボミルサーに投入して1秒間ミキシングを行い、凝集をほぐした後、メスシリンダーに0.2mL加え、5回タッピングを行った。
この操作を繰り返し、2mLになるまで吸収性複合体をメスシリンダーに充填した。
2mLの吸収性複合体を充填したメスシリンダーの質量を測定し、メスシリンダー自体の質量をさし引くことで、吸収性複合体の質量を測定した。
吸収性複合体の質量を2で割ることにより、タップ密度(g/mL)を算出した。
【0169】
((19)濡れ張力の測定)
和光純薬工業株式会社製の濡れ張力標準液を、35~55(mN/m)の範囲で2(mN/m)刻みに準備し、プラスチック製のシャーレ上に各5mLずつ加えた。
吸収性複合体1粒をスパチュラを用いて取り、液面から3cmの高さから、液の上に落した。
このとき、すぐさま沈んだ場合は濡れたものとし、はじいて流れたものを濡れなかったものとした。
吸収性複合体10粒を測定したときに、7個以上濡れることのできたものの最大の数値の濡れ張力標準液の値を濡れ張力とした。
なお、吸収性複合体は目開き500μmの篩を通過するものを使用して評価した。
凝集物でこれより大きいものに関しては、イワタニ社製ラボミルサーで粉砕を行い目開き500μmの篩を通過する大きさにしてから評価を行った。
【0170】
((20)凝集物量、親水性繊維の脱離率)
目開き100μm、300μm、500μm、710μm、1.4mm、2mm、2.8mmの直径75mmの篩(アズワン株式会社製)を準備した。
目開き2.8mmの篩、2mmの篩、1.4mmの篩、710μmの篩、受けの順に重ねてセットし、アズワン株式会社製ステンレスボール(3/8インチ)を用意し、それぞれの篩に3個ずついれた。
目開き2.8mmの篩上に約1.0gの吸収性複合体を入れた。
スパチュラにて吸収性複合体を薄く広げた。
アズワン株式会社製のミニ篩振とう機(MVS-1)のメモリ9の設定にて3分間篩をかけた。
振とう機から受けと篩をはずし、20回タッピングを行った。
その後、ミニ篩振とう機(MVS-1)にセットし、メモリ9の設定にて3分間篩をかけた。
各篩の質量を測定し、篩上に残った吸収性複合体の質量を測定した。
全ての篩上に残った吸収性複合体の合計量が、凝集物量であるとみなし、これを仕込んだ質量で除した値を凝集物の割合とした。
本測定においては緩く絡み合ったものについては、ステンレスボールによって分解されるため、硬い凝集物のみを定量できた。
受けに残った吸収性複合体を回収した。
目開き100μm、300μm、500μm、710μmの篩をセットし、アズワン製ステンレスボール(3/8インチ)を用意し、それぞれの篩に3個ずついれた。
回収した吸収性複合体を710μmの篩上に入れ、スパチュラにて薄く広げた。
アズワン株式会社製のミニ篩振とう機(MVS-1)のメモリ9の設定にて3分間篩をかけた。
振とう機から受けと篩をはずし、20回タッピングを行った。
その後、ミニ篩振とう機(MVS-1)にセットし、メモリ9の設定にて3分間篩をかけた。
目開き100μmの篩を通過したものの質量を脱離量とみなし、試料質量に対する脱離量の割合(脱離率)を計算した。
【0171】
((21)表面露出の観察)
吸収性複合体における吸収性樹脂の表面露出の有無を、光学顕微鏡又は電子顕微鏡により写真を撮影することによって判断した。
吸収性複合体の粒子500個を観察し、吸収性樹脂の表面が露出している吸収性複合体粒子の数が50個以下である場合には、表面露出なしとした。
51個から100個である場合は「一部」とし、101個以上である場合は「あり」とした。
【0172】
((22)塊度の測定)
MATSUNAMI MICRO SLIDE GLASS(品番S911)、厚み1mm、縦76mm、横52mmのスライドガラス2枚の間に、吸収性複合体0.25gを、スパチュラを用いて均一に配置した。
ただし、ガラスの端部から5mm以内の部分には吸収性複合体を配置しないこととした。
スライドガラスの下部より均一な光を当てて、スケールを設置し、デジタルカメラにて写真を撮影した。
影になる1mm以上の塊の数を目視でカウントした。
塊には、吸収性複合体中の凝集物のほか、絡み合ったものも含まれるものとした。
塊の合計数が20個以下の場合はa、21個以上50個以下の場合はb、51個以上100個以下の場合をc、101個以上のものをdとした。
【0173】
((23)血液の吸収速度の測定:ボルテックス法)
100mLのガラス製ビーカーに32±1℃に調整した血液を50mL測り取った。
ここに30mm×8mmの回転子を入れ、回転計のついたマグネチックスターラーの上にのせ、600min-1(rpm)で回転させた。
非接触式回転計(アズワン株式会社製)にて、回転数を確認した。
吸収性複合体を2.00g測り取り、ビーカーに投入した。
吸収性複合体投入後から、液表面が平らになるまでの時間(sec)を吸収時間とした。
【0174】
((24)吸収材の実用試験))
血液吸収性に対する実用試験として、以下の方法にてシート状に加工を行い、血液の戻り性と拡散面積の評価を実施した。
日本製紙クレシア社製のペーパータオル(品名クレシアEFハンドタオル SOFT TYPE200、2枚重ね)を用い、重ねてある2枚を1枚ずつにわけ、50×50mm角に切り取り、コアラップシートとした。
平らな机上にコアラップシートよりも大きいポリプロピレン製シートを配置し、さらにこの上に、コアラップシートを1枚載せた。
コアラップシート上にパルプ由来の粉末状のセルロース(マイクロスコープで100本の繊維を観察して画像解析を行ったところ、平均繊維径は17μm、平均繊維長は174μmであった)0.25gと、吸収性複合体0.25gを、φ5cm、深さ5cmの金属缶に入れ、手で1分間振り混ぜることでプレ混合を行った後、その全量を50×50mm角のコアラップシートの上に均一に散布を行った(吸収性複合体とセルロースの混合物の目付量=200g/m2)
吸収性複合体とセルロースのプレ混合物が凝集している場合については、適宜篩等を使用して散布した。
この上に、コアラップシート1枚を重ねた。
この上に、花王製のナプキン(ロリエスリムガードしっかり昼用羽なし32個入り、長さ20.5cm、多い昼~普通の日に)の中央部分の表面材(5×5cm角)のみを切り取って回収し、コアラップシートの上に配置した。
表面材の四隅をたるみが無いようにセロハンテープで留め、吸収シートとした。
ヘマトクリット値50%の血液を未開封の状態で32℃の温浴に30分間漬け込み、温調した。
血液をPP製の100mLの広口のプラスチック製のボトルに移し変えて、そのまま温調を続けた。
なお、測定は温調開始時点から1時間以内に行った。
プラスチック製のボトルを、あわ立たないように回して、血液の固形成分が均一になるように調整した。
ピペットマン(ギルソン社製)を3mLに設定し、血液の固形成分が均一になるようにピペットの先端でプラスチック製ボトル中の血液を泡立たないように攪拌しながら、3mL採取した。
吸収シートの中央部に内径2cmのアクリルパイプを置き、そこへ血液を1秒間かけて滴下した。
血液が浸み込んだ時点でアクリルパイプを外した。
血液注入から3分後、血液が拡散している面積を測定した。
拡散面積はデジタルカメラ等でスケールと一緒に吸収状態の写真を撮っておき、後から画像処理によって面積を算出した。
5分後、あらかじめ用意しておいた秤量済みのろ紙セット(アドバンテック社製 No.2 90mmφ、15枚を1セットとする。)を、吸収シートの上に配置し、その上に4.5kgの錘をのせて20秒間荷重をかけた。
荷重とろ紙セットを外し、新しいろ紙セットを吸収シートの上に乗せ、その上に4.5kgの錘を載せて20秒間荷重をかけた。
この作業を合計4回繰り返し、各ろ紙セットが吸収した(吸収シートからろ紙セットに戻った)血液の質量の合計を戻り量とした。
8分後に、同様に血液を2mL滴下し、13分後にろ紙をあてて戻り量を測定した。
1回目の戻り量と2回目の戻り量の合計(合計5mLの注入に対する戻り量)を繰り返し戻り量とした。
【0175】
((25)形状パラメーターの測定)
吸収性複合体の形状パラメーターの測定を、日本レーザー株式会社製の動的画像法粒度分布・形状評価装置QICPICシステムを使用して行った。
測定レンジはM6、分散ユニットは気流式RODOS/Lを用いて行った。
計算モードは面積円相当径、サンプル密度設定1g/mL、測定濃度0.03%、分散圧1.00bar、集塵38.00mbar、回転100%、フィーダーはVIBRIモードで送りは70%にて行った。
フィーダー上部に2mmの目開きの篩を用意し、そこにアズワン製の3/8インチのステンレスボールを7個のせ、その上にサンプルを入れることで分散されながらフィードされるようにした。
日本レーザー株式会社製のソフト(WINDOX5)により、円形度、凸凹度、伸度、直線度、アスペクト比を計算し、Wet粒径のときの値を求めた。
実施例で使用している親水性繊維であるKCフロック「W-50GK」について、実施例、比較例の吸収性複合体の粒子径に近く、かつ、観測数を確保できた粒子径である150μmの粒子径を有する親水性繊維の円形度、凸凹度、伸度、直線度、及びアスペクト比を計測したところ、それぞれ、円形度0.45、凸凹度0.56、伸度0.09、直進度0.83及びアスペクト比0.44であった。
【0176】
<吸収性物品>
((26)吸収性物品の厚みと嵩密度)
吸収性物品に1g/cm2の荷重をかけた時の厚みを厚み計(株式会社尾崎製作所製のピーコック直読型デジタルリニアゲージPDN-12)を用いて測定し、続いて吸収性物品の中央部を所定の大きさに切り出し、その質量を測定し、質量(g)を面積(cm2)と厚み(cm)で除すことで、吸収性物品の嵩密度(g/cm3)を算出して求めた。
【0177】
((27)吸収性物品を用いた実用評価)
上述した「(24)吸収材の実用試験」に記載の手順に従い、32±1℃に調温した馬脱繊維血液2mLを吸収性物品の中央部に注入した。
注入の1分後に拡散面積を測定するとともに、秤量済みのろ紙(アドバンテック東洋、φ90、5A)を15枚を1セットとしたろ紙セットを載せ、70g/m2の荷重を20秒間かけ、新しいろ紙セットに交換し、同様に20秒間荷重を掛けることを合計で3回以上実施した。3回目の戻り量が0.1gより多い場合には4回目、5回目とろ紙セットを交換し、戻り量が0.1g以下となるまで繰り返した。戻り量が0.1g以下となったことを確認したのち、全ろ紙セットへの戻り量の合計を2mL注入時の戻り量とし、表5の「戻り量」の欄に記載した。
血液注入から5分後に、吸収性物品1の中央部に再度2mLの血液を注入し、1分後(合計6分後)にろ紙セット(15枚の束)を載せ、同様の手法で繰り返し戻り量の測定を実施した。
拡散面積、戻り量、繰り返し戻り量については、「(24)吸収材の実用試験」と同様の方法で測定した。
【0178】
((28)吸収性物品の柔軟性)
吸収性物品の柔軟性は、幅100mm、長さ300mm以上の大きさの吸収性物品を机の端からせり出し、端が10mm垂れ下がる時に机の端からはみ出した吸収性物品の長さを測定し、吸収性物品の長さが50mm未満の場合は◎、50mm以上100mm以下の場合は○とした。
後述(実施例20、21、比較例13)する袋詰め状態の吸収性物品は、端部が接着剤等で固めていること、端部の接着部を除去すると、吸収性物品がバラバラになってしまうために測定ができない。よって、表5では測定不能として、「-」表記とした。
【0179】
〔製造例1〕
(アクリル酸の中和によるアクリル酸アンモニウムの調製)
アクリル酸は和光純薬工業株式会社製、試薬特級品を使用した。
アクリル酸は使用する前に蒸留を行い、重合禁止剤を除去してから使用した。
次に、アクリル酸100kgを水297.22kgに溶解した。
このアクリル酸水溶液を氷浴にて冷却し、液温30℃以下に保ちながら、25質量%のアンモニア水溶液75.56kgを攪拌しながら徐々に加え、40質量%の80mol%中和アクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
【0180】
〔製造例2〕
(アクリル酸の中和によるアクリル酸ナトリウムの調製)
アクリル酸は和光純薬工業株式会社製、試薬特級品を使用した。
アクリル酸は使用する前に蒸留を行い、重合禁止剤を除去してから使用した。
次に、アクリル酸100kgを水43.2kgに溶解した。
このアクリル酸水溶液を氷浴にて冷却し、液温30℃以下に保ちながら、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液166.7kgを攪拌しながら徐々に加え、40質量%の75mol%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0181】
〔製造例3(吸収性樹脂(1)の製造)〕
上述した〔製造例1〕のアクリル酸アンモニウム水溶液300kgに、トリメチロールプロパントリアクリレートを0.024kg添加した後、光重合開始剤として、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン0.0067kg及び過硫酸アンモニウム0.0033kg添加した単量体溶液を10℃に冷却し、窒素ガスでバブリングすることにより脱気し、反応系中を窒素置換した。
この時、溶存酸素は1ppm以下となった。
この単量体水溶液を厚みが20mmとなるようにステンレス製のバットに入れ、高圧水銀ランプ(SEN EngineeringCO,Ltd.製 MUMK-20-25XE、20W、発光長253nm;これを3台使用)を用いて、2分間紫外線を照射した(光量 684mJ/cm2)。
内部温度は13℃から開始して最高到達温度は約90℃であった。
その後、単量体が重合して得られたゲル(含水した吸収性樹脂)を取り出し粗解砕を行ってから130℃の熱風乾燥機を用いて2時間乾燥させて硬化物を得た。硬化物をホモジナイザーにて粉砕したものを吸収性樹脂(1)とした。
【0182】
〔製造例4(吸収性樹脂(2)、(3)の製造)〕
吸収性樹脂(1)50kgに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.125kg、水を3kg、シリカを0.3kg添加し、混合した後、25℃で1時間真空乾燥させた樹脂を吸収性樹脂(2)とした。
次いで、吸収性樹脂(2)を、180℃の熱風乾燥機を用いて10分加熱し、吸収性樹脂(3)を得た。
【0183】
〔製造例5(吸収性樹脂(4)の製造)〕
〔製造例1〕のアクリル酸アンモニウム水溶液に代えて、〔製造例2〕のアクリル酸ナトリウム水溶液300kgを用いた以外は上記〔製造例3〕と同様に操作して、吸収性樹脂(4)を製造した。
【0184】
〔製造例6(吸収性樹脂(5)、(6)の製造)〕
吸収性樹脂(4)50kgに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.125kg、水を3kg、シリカを0.3kg添加し、混合した後、25℃で1時間真空乾燥させた樹脂を吸収性樹脂(5)とした。
次いで、吸収性樹脂(5)を、180℃の熱風乾燥機を用いて10分加熱した樹脂を吸収性樹脂(6)とした。
【0185】
それぞれの吸収性樹脂について、篩わけを行い、粒子径106~300μmの吸収性樹脂を回収して、上述した各種測定の結果を下記表2に示した。
【0186】
【0187】
親水性繊維として、パルプ由来の粉末状のセルロースを準備した(日本製紙株式会社製KCフロック「W-50GK」)。
親水性繊維の平均粒子径は271μm、平均繊維径は17μm、平均繊維長は174μmであった。実施例、比較例において、特別な記載がない限り、親水性繊維はこれを使用した。
親水性繊維1gを、イワタニ製のラボミルサーにて3秒間分散させた後、スプレーで水1gを噴霧し、ラボミルサーにて更に3秒間攪拌し、ラボミルサーの壁面に張り付いた親水性繊維をスパチュラにてかきとり、再び攪拌を3秒間行った。
これを5回繰り返し、親水性繊維を均一に含水させた。
次いで、含水した親水性繊維をスパチュラにてかきとり、ラボミルサー中の端の部分によせ、吸収性樹脂(1)2gを、含水した親水性繊維と接触しないようにラボミルサー中に配置した後、両者を5秒間混合した。
エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04gをイソプロピルアルコール8gに溶解させた架橋剤溶液を準備した。ラボミルサーから取り出した含水状態の混合物をアルミトレーに広げ、架橋剤溶液を均一に添加した。
窒素気流下のオーブンにて150℃で10分間加熱することにより、加熱乾燥を行い、吸収性複合体を得た。
得られた吸収性複合体の評価結果を下記表3、表4に示す。