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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134864
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】除菌脱臭機
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20220908BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20220908BHJP
   D06F 58/20 20060101ALI20220908BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20220908BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
A61L2/20
B01D53/26 100
D06F58/20
A61L101:10
A61L101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034325
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
(72)【発明者】
【氏名】藤森 正成
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
【テーマコード(参考)】
3B166
4C058
4D052
【Fターム(参考)】
3B166AA24
3B166AB42
3B166AE11
3B166BA45
3B166BA72
3B166CA01
3B166CA11
3B166CB11
3B166EA03
3B166EA11
3B166EC02
3B166EC13
3B166EC29
3B166ED05
3B166EE04
3B166GA12
3B166GA45
4C058AA05
4C058BB07
4C058CC05
4C058CC08
4C058EE01
4C058JJ12
4C058JJ22
4C058JJ26
4C058JJ29
4D052AA10
4D052BA02
4D052FA08
(57)【要約】
【課題】衣類の除菌・脱臭に掛かる処理時間の短時間化と、メンテナンスコストの増大抑制とを両立させた除菌脱臭機を提供する。
【解決手段】本発明に係る除菌脱臭機は、衣類を収容する衣類収容室と、前記衣類収容室へ空気を送る送風機構と、前記送風機構と前記衣類収容室との間に接続され除菌性ガスを供給する除菌性ガス供給機構と、前記送風機構および前除菌性ガス供給機構を制御するコントローラと、前記衣類収容室から排出される前記除菌性ガスを除害する除害機構と、記前記衣類収容室、送風機構、前記除菌性ガス供給機構、前記コントローラおよび前記除害機構を収容する筐体と、前記衣類収容室を開閉するための前面扉とを有し、前記コントローラは、前記送風機構に対して、ガス燻蒸モードにおける第1送風流量Q1(m3/s)と、除害モードにおける第2送風流量Q2(m3/s)との少なくとも二種類の送風流量を制御する構成になっており、Q2>Q1>0となるように制御することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の除菌脱臭機であって、
前記衣類を収容する衣類収容室と、前記衣類収容室へ空気を送る送風機構と、前記送風機構と前記衣類収容室との間に接続され除菌性ガスを供給する除菌性ガス供給機構と、前記送風機構および前記除菌性ガス供給機構を制御するコントローラと、前記衣類収容室から排出される前記除菌性ガスを除害する除害機構と、前記衣類収容室、前記送風機構、前記除菌性ガス供給機構、前記コントローラおよび前記除害機構を収容する筐体と、前記衣類収容室を開閉するための前面扉と、を有し、
前記コントローラは、前記送風機構に対して、ガス燻蒸モードにおける第1送風流量Q1(m3/s)と、除害モードにおける第2送風流量Q2(m3/s)との少なくとも二種類の送風流量を制御する構成になっており、
Q2>Q1>0となるように制御することを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項2】
請求項1に記載の除菌脱臭機において、
前記コントローラは、3≦Q2/Q1≦30
となるようにQ1、Q2を制御することを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項3】
請求項2に記載の除菌脱臭機において、
前記コントローラは、
前記衣類収容室の容積V(m3)に対して0.8×10-4(s-1)≦Q1/V≦26.2×10-4(s-1
となるようにQ1を制御することを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の除菌脱臭機において、
【数1】
k:前記除菌性ガスによる除菌作用の反応定数(m3/s)、
W( ):ランベルトのオメガ関数、
vi:供給される前記除菌性ガスの質量流量(g/s)、
CCT:単位「ppm×min」を「(g/m3)×s」に換算したCT値、
C1:前記除菌性ガスの安全濃度/作業環境基準、および
CT1:前記ガス燻蒸モードの終了時(時間T1)における前記衣類収容室の中の前記除菌性ガスの質量濃度(g/m3)、
を満たすようにQ1、Q2が制御されていることを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の除菌脱臭機において、
前記送風機構は、空気導入路を介して前記筐体の外から空気を取り込み、
前記除害機構は、空気排出路を介して前記筐体の外へ空気を排出する構成になっていることを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の除菌脱臭機において、
前記除害機構は、空気循環路を介して前記送風機構に接続され、
前記送風機構と前記除菌性ガス供給機構と前記衣類収容室と前記除害機構とがその順で循環流路を形成する構成になっていることを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項7】
請求項6に記載の除菌脱臭機において、
前記循環流路の途中に、空気中の湿分を低減する空気除湿機構と、除湿された空気を加熱する空気加熱機構とが更に配設されていることを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項8】
請求項7に記載の除菌脱臭機において、
前記除害機構の上流側に糸くずフィルタが更に配設されていることを特徴とする除菌脱臭機。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の除菌脱臭機において、
前記衣類収容室は回転動作可能なドラムからなり、
前記ドラムを回転させるドラム回転機構を更に有することを特徴とする除菌脱臭機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類の除菌・脱臭の技術に関するものであり、特にガス燻蒸法によって除菌・脱臭する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、衣類の除菌・脱臭に関して強いニーズがあり、種々の商品・装置が開発されている。例えば、特許文献1(特開2006-158586)には、開閉可能な扉を有して衣類を収納する乾燥室と、この乾燥室内に供給する温風を発生する温風発生機構や乾燥室内に供給するオゾンを発生するオゾン発生機構及びそれらの制御部を備え、前記オゾン発生機構を前記温風発生機構の送風路外に配置して温風発生機構の加熱手段で加熱されていない空気を取り込むと共に、オゾン発生機構から発生したオゾンを温風発生機構の加熱手段の後段に供給して、加熱手段からの熱風と混合することによりオゾンの自己分解を促進させることを特徴とする衣類乾燥機、が開示されている。
【0003】
特許文献1によると、オゾンを効率良く発生できると共に、オゾンの自己分解を誘発して酸素原子による脱臭効果の向上した衣類乾燥機を提供できるとされている。また、オゾン発生機構から発生したオゾンを温風発生機構の加熱手段の後段に供給していることから、加熱手段がオゾンにより腐食されることもないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-158586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス燻蒸法による除菌においては、所定のコンセントレーションタイム値(CT値=除菌性ガス濃度 ppm×ガス燻蒸時間 min)の確保が重要とされている。例えば、大腸菌に対するオゾンガス燻蒸のCT値は、60 ppm×minと言われている。すなわち、除菌性ガス濃度が高い方がガス燻蒸時間を短くすることができる。
【0006】
特許文献1によると、乾燥室内のオゾン濃度は低濃度(例えば0.05~0.2 ppm)になるように調整されている。このような低濃度の場合、脱臭に対しては効果があるかもしれないが、除菌に関しては、非常に長いガス燻蒸時間(例えば、CT値=60 ppm×minに到達するのに5~20時間)が必要になり、実用的ではないと思われる。
【0007】
一方、除菌性ガスは、ある濃度以上になると人体にも有害であることから、安全濃度(作業環境基準)まで低減・除害してから排気する必要がある。安全濃度までの低減・除害をフィルタ類で行う場合、ガス燻蒸時間を短くするために除菌性ガス濃度を高め過ぎると、除害フィルタ類への負担が大きくなる。その結果、除害フィルタ類を大型化したり交換頻度を増加したりすることが必要になり、装置コストやメンテナンスコストが増大するという別の問題が生じる。
【0008】
前述したように、近年、衣類の除菌に関して強いニーズがある。また、利用者にとっては、普段使用する衣類を簡単かつ短時間で除菌できることは非常に重要である。例えば、衣類乾燥機のような箱形装置を用いて除菌・脱臭に掛かるトータルの処理時間が50分間程度以内であれば、実用性が極めて高いと言える。
【0009】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、衣類の除菌・脱臭に掛かる処理時間の短時間化と、メンテナンスコストの増大抑制とを両立させた除菌脱臭機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、衣類の除菌脱臭機であって、
前記衣類を収容する衣類収容室と、前記衣類収容室へ空気を送る送風機構と、前記送風機構と前記衣類収容室との間に接続され除菌性ガスを供給する除菌性ガス供給機構と、前記送風機構および前記除菌性ガス供給機構を制御するコントローラと、前記衣類収容室から排出される前記除菌性ガスを除害する除害機構と、前記衣類収容室、前記送風機構、前記除菌性ガス供給機構、前記コントローラおよび前記除害機構を収容する筐体と、前記衣類収容室を開閉するための前面扉と、を有し、
前記コントローラは、前記送風機構に対して、ガス燻蒸モードにおける第1送風流量Q1(m3/s)と、除害モードにおける第2送風流量Q2(m3/s)との少なくとも二種類の送風流量を制御する構成になっており、
Q2>Q1>0となるように制御することを特徴とする除菌脱臭機、を提供するものである。
【0011】
なお、本発明において、衣類とは、衣服(着るもの)に加えて、履物(靴、タイツなど)、装身具(帽子、アクセサリー、時計など)、服飾雑貨(ベルト、バッグ、財布など)を含むものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衣類の除菌・脱臭に掛かる処理時間の短時間化と、メンテナンスコストの増大抑制とを両立させた除菌脱臭機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る除菌脱臭機の一例を示す断面模式図である。
図2】本発明に係る除菌脱臭機の運転プロセスにおける衣類収容室内のオゾンガスの濃度遷移の一例を示すグラフである。
図3】ガス燻蒸モードにおける第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の所要時間「T1-T0」の変化を示すグラフである。
図4】ガス燻蒸モードにおける第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の除害機構での除菌性ガスの除害量「D」の変化を示すグラフである。
図5】除害モードにおける第2送風流量Q2と衣類収容室の容積Vとの比「Q2/V」をパラメータとした場合の規格化所要時間「(T2-T1)/ln(C1/CT1)」の変化を示すグラフである。
図6】第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1 =3」における、第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」の変化を示すグラフである。
図7】第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1」パラメータとした場合の運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」最小値の変化を示すグラフである。
図8】第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1 =30」における、第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」の変化を示すグラフである。
図9】運転プロセス全体の所要時間「T2-T0≦40(min)」を達成することができる、第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」および第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1」の領域を示すマップである。
図10】第2実施形態に係る除菌脱臭機の一例を示す断面模式図である。
図11】第3実施形態に係る除菌脱臭機の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、前述した除菌脱臭機において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記コントローラは、3≦Q2/Q1≦30となるようにQ1、Q2を制御する。
(ii)前記コントローラは、前記衣類収容室の容積V(m3)に対して0.8×10-4(s-1)≦Q1/V≦26.2×10-4(s-1)となるようにQ1を制御する。
(iii)所定の関係式を満たすようにQ1、Q2が制御されている。
(iv)前記送風機構は、空気導入路を介して前記筐体の外から空気を取り込み、前記除害機構は、空気排出路を介して前記筐体の外へ空気を排出する構成になっている。
(v)前記除害機構は、空気循環路を介して前記送風機構に接続され、前記送風機構と前記除菌性ガス供給機構と前記衣類収容室と前記除害機構とがその順で循環流路を形成する構成になっている。
(vi)前記循環流路の途中に、空気中の湿分を低減する空気除湿機構と、除湿された空気を加熱する空気加熱機構とが更に配設されている。
(vii)前記除害機構の上流側に糸くずフィルタが更に配設されている。
(viii)前記衣類収容室は回転動作可能なドラムからなり、前記ドラムを回転させるドラム回転機構を更に有する。
【0015】
(本発明の基本思想)
除菌脱臭機において衣類の除菌・脱臭に掛かる運転プロセス全体の所要時間を短くするためには、まず、衣類収容室内の除菌性ガス濃度をいかに短時間で高めるのかがポイントになる。一方、除菌性ガス濃度を高めるために、衣類収容室に送り込む除菌性ガス(正確には、除菌性ガスを含む空気)を単純に大容量化すると、除菌作用で消費しきれない除菌性ガスも衣類収容室から大量に排出されるため、除害フィルタ類への負担が大きくなるという問題が生じる。
【0016】
そこで、本発明者等は、除菌作用で消費される除菌性ガスの消費レートを考慮した上で、送風流量と除菌モード(除菌性ガスを送風して衣類収容室内の衣類を除菌する運転モード)の所要時間との関係、および送風流量と除害モード(衣類収容室内の除菌性ガスを安全濃度まで低減・除害する運転モード)の所要時間との関係を検討した。その結果、運転プロセス全体の所要時間を短くするためには、除菌モード時の送風流量をできるだけ小さくし、かつ除害モード時の送風流量をできるだけ大きくすることが好ましいと判明した。
【0017】
さらに、送風装置における制約を考慮した上で、除菌モード時の送風流量と衣類収容室の容積との比、および除害モード時の送風流量と除菌モード時の送風流量との比の影響について検討した。その結果、運転プロセス全体の所要時間を短縮するためには、除害モード時の送風流量と除菌モード時の送風流量との比に適切な範囲があることが判明し、除菌モード時の送風流量と衣類収容室の容積との比にも適切な範囲があることが判明した。
【0018】
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。また、本発明の図面において、同義の機能を有するものは、同じの符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0020】
[第1実施形態]
(除菌脱臭機の構造)
図1は、本発明の第1実施形態に係る除菌脱臭機の一例を示す断面模式図である。除菌脱臭機100は、概略的に、内部機構全体を覆う筐体10の中に、除菌・脱臭対象となる衣類を収容する衣類収容室20と、衣類収容室20へ空気を送る送風機構30と、送風機構30と衣類収容室20との間に接続され除菌性ガスを供給する除菌性ガス供給機構40と、送風機構30および除菌性ガス供給機構40を制御するコントローラ35と、衣類収容室20から排出される除菌性ガスを除害する除害機構50とが収容されている。筐体10の前面には、衣類収容室20を開閉して衣類を出し入れするための前面扉25が配設されている。
【0021】
衣類収容室20は、回転軸21および前面支持リング22に支持された円筒状のドラムからなり、ドラム回転機構60(例えば、電動機61、ドラム駆動ベルト62)によって回転動作可能に構成されていることが好ましい。また、前面支持リング22には、衣類収容室20へ除菌性ガスを導入する除菌性ガス導入路23および衣類収容室20から除菌性ガスを排出する除菌性ガス排出路24が形成されていることが好ましい。
【0022】
なお、図1においては、図面の簡素化のために、除菌性ガス導入路23および除菌性ガス排出路24が接近して描かれているが、実際には、導入された除菌性ガスが衣類収容室20内で十分に拡がった後に排出されるように、除菌性ガス導入路23および除菌性ガス排出路24は離れて配設されることが好ましい。
【0023】
また、本発明の除菌脱臭機100は、衣類収容室20を回転させる運転も可能であるし回転させない運転も可能であるように構成されている。例えば、除菌・脱臭対象の衣類が衣服の場合、衣服を転動させることで除菌性ガスとの接触確率が高まり、効率的な除菌作用が可能となる。一方、除菌・脱臭対象の衣類が履物、装身具、服飾雑貨などの転動に適さない物(転動させると形崩れしたり破損したりする物)である場合、衣類収容室20内に衣類棚を設置して該衣類棚の上に対象物を配置し、衣類収容室20を回転させない運転方法を利用できることが好ましい。
【0024】
送風機構30は、空気導入路31を介して筐体10の外から空気を取り込み、衣類収容室20へ空気を送る機構であり、コントローラ35によって少なくとも二種類の送風流量Q1(ガス燻蒸モード時)およびQ2(除害モード時)が制御される。送風装置に特段の限定はなく、例えば、容積式送風装置(例えば、ダイヤフラムポンプ)や非容積式送風装置(例えば、軸流ファン)を適宜利用することができる。
【0025】
なお、二種類の送風流量Q1、Q2を制御するにあたって、原理的には2つの送風装置を利用してもよいが、費用対効果の観点から、1つの送風装置で送風流量を制御できるように構成することが好ましい(詳細は後述する)。
【0026】
除菌性ガス供給機構40は、送風機構30と衣類収容室20との間に接続され、除菌性ガスを供給する機構であり、コントローラ35によってON(ガス燻蒸モード時)およびOFF(除害モード時)が制御される。また、除菌性ガス供給機構40は、除菌性ガス流路41を介して除菌性ガス導入路23に接続されている。
【0027】
除菌を効果的に行えるかぎり除菌性ガスの種類に特段の限定はなく、例えば、オゾンガスや塩素系ガス(塩素ガス、二酸化塩素ガス、次亜塩素酸ガスなど)を適宜利用できる。除菌性ガスの供給方法にも特段の限定はなく、公知の方法を適宜利用できる。
【0028】
除害機構50は、衣類収容室20から排出される除菌性ガスを除害する機構であり、除菌性ガス排出路24および除菌性ガス流路51を介して衣類収容室20と接続され、空気排出路52を介して筐体10の外へ空気(安全濃度以下まで低減した空気)を排出する。
【0029】
使用する除菌性ガスを除害できるかぎり、除害機構に特段の限定はない。例えば、除菌性ガスがオゾンガスの場合、オゾン吸着材(活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライトなど)やオゾン分解触媒(Cо、Mn、Niなど)を把持したフィルタを好ましく利用できる。フィルタを使用せず、ラビリンス流路中で自己分解を促進するものや、加熱によって自己分解を促進するものであってもよい。
【0030】
筐体10には、換気機構15(例えば、除害フィルタ16、換気ファン17)が配設されていることが好ましい。換気機構15は必須の構成ではないが、換気機構15を設けることによって、筐体10内の各種機構を空冷し過熱を抑制することができる利点がある。また、除害フィルタ16を配設することによって、万が一、筐体10内で除菌性ガスが漏洩した場合でも高濃度の除菌性ガスが外気へ放出されることを防止できる利点がある。
【0031】
必須の構成ではないが、空気排出路52の途中や筐体10内に除菌性ガスセンサ(図示せず)が配設されることは好ましい。除菌性ガスセンサの配設により、除害機構50による除害作用のチェック(除害機構50のメンテナンスの要否の判定を含む)や筐体10内での除菌性ガスの漏洩チェックが可能になる。
【0032】
さらに、前面扉25の開閉検知機構(図示せず)およびロック機構(図示せず)が配設されることも好ましい。前面扉開閉検知機構や前面扉ロック機構の配設により、不用意な除菌性ガスの外気への漏洩/放出を防止することが可能になる。
【0033】
また、除菌脱臭機100の運転中/運転完了前に電源ダウン(停電等を含む)が起こった場合、電源復帰後に前面扉ロック機構を作動させると共に、後述する除害モードM2の運転を行うようにコントローラ35が構成されていることが好ましい。
【0034】
(除菌脱臭機の運転プロセス)
以下、本発明に係る除菌脱臭機の運転プロセスについて、除菌性ガスとしてオゾンガスを用いた場合を例として、具体的に説明する。
【0035】
前述したように、ガス燻蒸法による除菌の指標としてCT値(除菌性ガス濃度 ppm×ガス燻蒸時間 min)がある。例えば、大腸菌に対するオゾンガス燻蒸のCT値は、60(ppm×min)と言われている。なお、オゾンガス燻蒸の「CT値=60 ppm×min」は、大腸菌の他、黄色ブドウ球菌やインフルエンザウイルスにも有効とされている。言い換えると、オゾンガス燻蒸で「CT値=60 ppm×min」相当を確保すれば、多くの種類の細菌・ウイルスに対して有効と言える。
【0036】
図2は、本発明に係る除菌脱臭機の運転プロセスにおける衣類収容室内の除菌性ガスの濃度遷移の一例を示すグラフである。図2に示したように、本発明に係る除菌脱臭機の運転プロセスMは、基本的に、衣類収容室20内の除菌性ガスの濃度を増加させて衣類を除菌するガス燻蒸モードM1と、衣類収容室20内の除菌性ガスの濃度を安全濃度まで低下させる除害モードM2との2つの運転モードからなる。
【0037】
運転プロセスMの開始時間(ガス燻蒸モードM1の開始時間)をT0とし、ガス燻蒸モードM1の終了時間(除害モードM2の開始時間)をT1とし、運転プロセスMの終了時間(除害モードM2の終了時間)をT2とする。ガス燻蒸モードM1の所要時間は「T1-T0」で表され、除害モードM2の所要時間は「T2-T1」で表され、運転プロセスM全体の所要時間は「T2-T0」で表される。除菌性ガス濃度C1は当該除菌性ガスの安全濃度とする。オゾンガスの場合、C1=0.1 ppm(1日8時間まで許容、日本産業衛生学会)である。
【0038】
本発明では、ガス燻蒸モードM1における除菌性ガス濃度C(g/m3)の時間積分が所定のCT値(ここでは60 ppm×min)に到達するまでの所要時間を「T1-T0」とする。ガス燻蒸モードM1でCT値を達成することにより、確実に対象物を除菌・脱臭できる。なお、「ppm×min」を「(g/m3)×s」に単位換算すると、「60 ppm×min=7.7 (g/m3)×s」となる。
【0039】
ガス燻蒸モードM1では、コントローラ35が送風機構30および除菌性ガス供給機構40の両方を稼働させる。送風機構30は、空気導入路31を介して筐体10の外から空気を取り込み、除菌性ガス供給機構40に送風する。除菌性ガス供給機構40では、除菌性ガス(ここではオゾンガス)が生成/供給され、除菌性ガスを含む空気となる(以下、「除菌性ガスを含む空気」を単純に「除菌性ガス」と称する)。除菌性ガスは、除菌性ガス流路41および除菌性ガス導入路23を介して衣類収容室20に導入される。
【0040】
衣類収容室20に導入された除菌性ガスは、除菌・脱臭対象の衣類と接触して除菌作用を及ぼす。このとき、導入された除菌性ガスが瞬時に全て消費されるわけではなく、ある消費レートで消費される(除菌・脱臭作用を及ぼす)と考える。
【0041】
衣類収容室20内で消費しきれなかった除菌性ガスは、除菌性ガス排出路24および除菌性ガス流路51を介して除害機構50に到達する。衣類収容室20から排出された除菌性ガスは、除害機構50によって安全濃度以下まで低減された空気となり、空気排出路52を介して筐体10の外へ排出される。
【0042】
衣類収容室20の容積をV(m3)、衣類収容室20の除菌性ガス濃度をC(g/m3)、衣類収容室20への除菌性ガスの導入レートをvi(g/s)、除菌作用による除菌性ガスの消費レートをvc(g/s)、衣類収容室20からの除菌性ガスの排出レートをve(g/s)、時間をt(s)とすると、除菌性ガスの質量保存則により下記の式(1)が成り立つ。なお、本発明において、ガスの圧縮/膨張に起因する体積変化はないものとする。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、除菌性ガス濃度C(g/m3)は、除菌性ガス流路41、除菌性ガス導入路23および衣類収容室20で偏りがなく一様であるとする。また、除菌性ガスの導入レートvi(g/s)は、実質的に除菌性ガス供給機構40での供給レートを意味する。
【0045】
除菌性ガスの消費レートvc(g/s)は、除菌性ガス濃度C(g/m3)と除菌作用の反応定数k(m3/s)との関数として下記の式(2)で表される。
【0046】
【数2】
【0047】
除菌性ガス排出路24から排出される流量は、ガス燻蒸モードM1における送風機構30の第1送風流量Q1(m3/s)と同じであることから、除菌性ガスの排出レートve(g/s)は、第1送風流量Q1(m3/s)と除菌性ガス濃度C(g/m3)との関数として下記の式(3)で表される。
【0048】
【数3】
【0049】
式(2)、式(3)を式(1)に代入して微分方程式を解く。このとき、除菌性ガスの導入レートvi(g/s)と衣類収容室20の容積V(m3)との比、および第1送風流量Q1(m3/s)と衣類収容室20の容積V(m3)との比は、除菌性ガス濃度C(g/m3)に関係する重要な因子であることから、それらの比を基準とすると、下記の式(4)が得られる。
【0050】
【数4】
【0051】
到達させようとする所定のCT値CCT((g/m3)×s)は、式(4)の時間t(s)の積分であることから、下記の式(5)が得られる。
【0052】
【数5】
【0053】
式(5)を時間t(s)について解くと、ランベルトのオメガ関数Wを用いて下記の式(6)のように表すことができる。得られる時間t(s)は、所定のCT値CCT((g/m3)×s)に到達する時間であり、すなわちガス燻蒸モードM1の所要時間「T0-T1」である。
【0054】
【数6】
【0055】
つぎに、ガス燻蒸モードM1における除害機構50での除菌性ガスの除害量について説明する。ガス燻蒸モードM1における除菌性ガスの除害量D(g)は、衣類収容室20からの除菌性ガスの排出レートve(g/s)の時間積分であることから、下記の式(7)が得られる。
【0056】
【数7】
【0057】
式(6)に基づいて「T1-T0」と「Q1/V」との関係を調査し、式(7)に基づいて「D」と「Q1/V」との関係を調査した。式(6)、式(7)のそれぞれにおいて、衣類収容室20の容積をV=0.1(m3)とし、除菌性ガスの導入レートをvi=1.4×10-6(g/s)とし、所定のCT値をCCT=7.7((g/m3)×s)とした。除菌作用の反応定数は、衣類の代表として成人男性用MサイズのTシャツ(綿100%)を想定し、k=1.2×10-4(m3/s)とした。
【0058】
図3は、ガス燻蒸モードにおける第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の所要時間「T1-T0」の変化を示すグラフである。図3に示したように、「Q1/V」の増大に対して「T1-T0」が単調増加していることが分かる。言い換えると、「Q1/V」を小さくするほど「T1-T0」を短くできることが分かる。
【0059】
なお、「Q1/V=0」(すなわち「Q1=0」)は、除菌性ガス供給機構40で生成・供給した除菌性ガスが送風機構30および空気導入路31を逆流して筐体10の外に放出される可能性があることから、好ましくない。このことから、本発明においては「Q1>0」を必要条件とする。
【0060】
図4は、ガス燻蒸モードにおける第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の除害機構での除菌性ガスの除害量「D」の変化を示すグラフである。図4に示したように、「Q1/V」の増大に対して「D」が単調増加していることが分かる。言い換えると、「Q1/V」を小さくするほど「D」を少なくできることが分かる。除害機構50での除菌性ガスの除害量D(g)の減少は、除害フィルタ類への負担の減少を意味し、除害フィルタ類のメンテナンスコストの増大抑制につながる。
【0061】
図3図4の結果から、ガス燻蒸モードM1においては「Q1/V」を小さくすることが好ましく、それにより「T1-T0」の短時間化と除害フィルタ類のメンテナンスコストの増大抑制が可能となることが解る。
【0062】
つぎに、除害モードM2について説明する。
【0063】
除害モードM2では、コントローラ35が除菌性ガス供給機構40を停止する一方で送風機構30を稼働させる。送風機構30は、空気導入路31を介して筐体10の外から空気を取り込み、第2送風流量Q2(m3/s)で除菌性ガス供給機構40に送風する。除菌性ガス供給機構40は停止しているので、除菌性ガスを含まない空気が、除菌性ガス供給機構40を通過し除菌性ガス流路41および除菌性ガス導入路23を介して衣類収容室20に導入される。
【0064】
衣類収容室20に導入された空気は、衣類収容室20内の除菌性ガス濃度C(g/m3)を希釈しながら除菌性ガス排出路24および除菌性ガス流路51を介して除害機構50に到達する。衣類収容室20から排出された除菌性ガスは、除害機構50によって安全濃度以下まで低減された空気となり、空気排出路52を介して筐体10の外へ排出される。
【0065】
上述したように、除害モードM2では、除菌性ガス供給機構40を停止することから、式(1)における除菌性ガスの導入レートが「vi=0」となる。すなわち、下記の式(8)が成り立つ。
【0066】
【数8】
【0067】
除菌性ガス排出路24から排出される流量は、除害モードM2における送風機構30の第2送風流量Q2(m3/s)と同じであることから、除菌性ガスの排出レートve(g/s)は、第2送風流量Q2(m3/s)と除菌性ガス濃度C(g/m3)との関数として下記の式(9)で表される。
【0068】
【数9】
【0069】
式(2)、式(9)を式(8)に代入して微分方程式を解く。このとき、ガス燻蒸モードM1の終了時(時間T1)における衣類収容室20内の除菌性ガス濃度をCT1(g/m3)とすると、下記の式(10)が得られる。
【0070】
【数10】
【0071】
除害モードM2は、除菌性ガス濃度を安全濃度C1まで低下させる運転モードであることから、その所要時間「T2-T1」は、式(10)のCにC1を代入し、式(10)を時間t(s)について解くと、下記の式(11)のように表される。
【0072】
【数11】
【0073】
式(11)に基づいて「T2-T1」と「Q2/V」との関係を調査した。なお、時間T1における衣類収容室20内の除菌性ガス濃度CT1(g/m3)は、ガス燻蒸モードM1の運転の仕方によって変化することから、CT1とC1との比の自然対数値「ln(C1/CT1)」で「T2-T1」を規格化した規格化所要時間「(T2-T1)/ln(C1/CT1)」を指標とした。衣類収容室20の容積V(m3)および除菌作用の反応定数k(m3/s)は、前述と同様にした。
【0074】
図5は、除害モードにおける第2送風流量Q2と衣類収容室の容積Vとの比「Q2/V」をパラメータとした場合の規格化所要時間「(T2-T1)/ln(C1/CT1)」の変化を示すグラフである。図5に示したように、「Q2/V」の増大に対して「(T2-T1)/ln(C1/CT1)」が指数関数的に単調減少していることが分かる。言い換えると、「Q2/V」を大きくするほど「(T2-T1)/ln(C1/CT1)」を短くできることが分かる。
【0075】
式(6)および式(11)から、運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」は、下記の式(12)のように表される。
【0076】
【数12】
【0077】
図3図5の結果から、運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」を短くするためには、ガス燻蒸モードM1における第1送風流量Q1をできるだけ小さくし、かつ除害モードM2における第2送風流量Q2をできるだけ大きくすることが好ましいと判明した。また、ガス燻蒸モードM1における第1送風流量Q1を小さくすることによって、除害機構50での除菌性ガスの除害量D(g)を減少でき、除害フィルタ類のメンテナンスコストの増大抑制につながると考えられる。
【0078】
一例として、式(12)に基づいて「Q2/Q1=3」とした場合における「T2-T0」と「Q1/V」との関係を調査した。図6は、第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1=3」における、第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」の変化を示すグラフである。衣類収容室20の容積V(m3)および除菌作用の反応定数k(m3/s)は、前述と同様にした。
【0079】
図6に示したように、「Q1/V」の増加に対して「T2-T0」は下に凸の曲線を示し、「T2-T0」を短縮するためには適切な「Q1/V」が存在することが判明した。また、「Q1/V=13.8×10-4(s-1)」において最小値「T2-T0=40(min)=40×60(s)」を達成できることが確認された。
【0080】
図6の結果を受けて、「Q2/Q1」と「T2-T0」の最小値との関係を調査した。図7は、第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1」パラメータとした場合の運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」最小値の変化を示すグラフである。衣類収容室20の容積V(m3)および除菌作用の反応定数k(m3/s)は、前述と同様にした。
【0081】
図7に示したように、「Q2/Q1」の増加に対して「T2-T0」最小値は、指数関数的に単調減少していることが分かる。そして、「Q2/Q1>1」になると「T2-T0」最小値が50分間以下になり、「Q2/Q1≧3」になると「T2-T0」最小値が40分間以下になり、「Q2/Q1≧18」になると「T2-T0」最小値が30分間以下になることが判った。
【0082】
ここで、第1送風流量Q1と第2送風流量Q2との制御について考察する。送風装置は、種々の制御方法によって、通常ある程度の幅で送風流量を制御できる構成になっている。例えば、パルス幅変調制御(PWM制御)によって動作回転数を制御可能な軸流ファンでは、最低回転数(最低送風流量)と最高回転数(最高送風流量)との比は「1:5」程度ある。言い換えると、従来の制御方法では、「Q2/Q1≦5」程度が限界と考えられる。
【0083】
そこで、本発明者等は、1つの送風装置で「Q2/Q1」を拡大する方法について鋭意研究を行った。その結果、従来のPWM制御に加えて、第1送風流量Q1を制御する際に送風装置に間欠的なON/OFF制御を行うことにより、時間平均流量を大幅に減少させられることを見出し、「Q2/Q1≦30」まで拡大できることが確認された。
【0084】
前述したように、「Q2/Q1」を増加させるほど「T2-T0」最小値は減少する。図7をより詳細に見ると、「Q2/Q1>30」となっても「T2-T0」最小値の減少量はわずかであることが判る。このことから、たとえ「Q2/Q1>30」を達成するために2つの送風装置を利用したとしても、装置コストの増大に対する効果は小さいと言える。言い換えると、本発明に係る除菌脱臭機では、費用対効果の観点から、送風機構30として1つの送風装置を利用し、「3≦Q2/Q1≦30」となるように制御することがより好ましい。
【0085】
「Q1/V」制御の他の一例として、式(12)に基づいて「Q2/Q1=30」とした場合における「T2-T0」と「Q1/V」との関係を調査した。図8は、第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1 =30」における、第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」をパラメータとした場合の運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0」の変化を示すグラフである。衣類収容室20の容積V(m3)および除菌作用の反応定数k(m3/s)は、前述と同様にした。
【0086】
図6と同様に図8においても、「Q1/V」の増加に対して「T2-T0」は下に凸の曲線を示す。そして、「0.8×10-4(s-1)≦Q1/V≦26.2×10-4(s-1)」の範囲において「T2-T0≦40(min)」を満たし、「2.7×10-4(s-1)≦Q1/V≦11.4×10-4(s-1)」の範囲において「T2-T0≦30(min)」を満たすことが確認される。
【0087】
図6図8の結果を受けて、「T2-T0≦40(min)」を満たすための「Q1/V」と「Q2/Q1」との関係を調査した。図9は、運転プロセス全体の所要時間「T2-T0≦40(min)」を達成することができる、第1送風流量Q1と衣類収容室の容積Vとの比「Q1/V」および第2送風流量Q2と第1送風流量Q1との比「Q2/Q1」の領域を示すマップである。図中には、「T2-T0≦30(min)」を達成する領域も併せて示してある。
【0088】
図9に示したように、「0.8×10-4(s-1)≦Q1/V≦26.2×10-4(s-1)」かつ「3≦Q2/Q1≦30」となるように、第1送風流量Q1および第2送風流量Q2を制御することにより、運転プロセスM全体の所要時間「T2-T0≦40(min)」を達成することができる。
【0089】
[第2実施形態]
(除菌脱臭機の構造)
図10は、第2実施形態に係る除菌脱臭機の一例を示す断面模式図である。図10に示した除菌脱臭機101は、第1実施形態の除菌脱臭機100における筐体10の外から空気を取り込む空気導入路31および筐体10の外へ空気を排出する空気排出路52を有しない代わりに、送風機構30と除害機構50とが空気循環路53を介して接続され、送風機構30と除菌性ガス供給機構40と衣類収容室20と除害機構50とがその順で循環流路を形成する構成になっている点で第1実施形態の除菌脱臭機100と異なり、他を同じとするものである。
【0090】
送風機構30は、除害機構50で除害された空気を吸引することから、循環流路が形成されても除菌性ガスによる腐食等を防ぐことができる。また、循環流路が形成されることから、衣類収容室20内が陽圧になりにくく衣類収容室20からの除菌性ガスの漏洩をより防止できるという利点がある。
【0091】
他の作用効果および運転プロセスは、第1実施形態と同様である。
【0092】
[第3実施形態]
(除菌脱臭機の構造)
図11は、第3実施形態に係る除菌脱臭機の一例を示す断面模式図である。第3実施形態に係る除菌脱臭機102は、第2実施形態と同様の循環流路を形成しながら、除害機構50と除菌性ガス供給機構40との間に、空気中の湿分を低減する空気除湿機構70と除湿された空気を加熱する空気加熱機構80とが更に配設されている点で第2実施形態の除菌脱臭機101と異なり、他をほぼ同じとするものである。
【0093】
除菌脱臭機102は、空気除湿機構70と空気加熱機構80とを有することから、除菌・脱臭機能に加えて衣類の乾燥機能も有する。すなわち、衣類乾燥除菌脱臭機として利用することができる。ただし、衣類乾燥工程と衣類除菌工程とは別々に行うことが好ましく、衣類乾燥工程の後に衣類除菌工程を行うことがより好ましい。
【0094】
以下、第1実施形態および第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0095】
空気除湿機構70は、排出口24’から排出された空気と外気との間で熱交換して、排出空気中の湿分を低減して乾燥空気とする機構である。空気中の湿分を低減して乾燥空気にできるかぎり空気除湿機構に特段の限定はなく、公知の除湿装置を適宜利用できる。
【0096】
なお、図11においては、空気除湿機構70は送風機構の機能を兼ねる除湿送風ファンとして描いてあるが、本発明はそれに限定されるものではない。例えば、空気除湿機構70を除湿の単機能装置で構成し、第1実施形態や第2実施形態と同様の送風機構を空気除湿機構70と除菌性ガス供給機構40との間に別途配設してもよい。
【0097】
空気加熱機構80は、除湿された乾燥空気を加熱する機構である。空気を加熱できるかぎり空気加熱機構に特段の限定はなく、公知の加熱装置(例えば、電気ヒータ、ヒートポンプ)を適宜利用できる。
【0098】
糸くずフィルタ90は、必須の構成ではないが、衣類収容室20内の衣類から出る埃や糸くず等で除害機構50が目詰まりしないように、除害機構50の上流側に配設されることが好ましい。
【0099】
除菌脱臭機102は、衣類収容室20から排出される空気が除害機構50を通過して除害された空気となることから、たとえ衣類除菌工程中であっても、循環流路内に配設された空気除湿機構70および空気加熱機構80を除菌性ガスによる腐食等から防ぐことができる。
【0100】
上述した実施形態は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
100,101,102…除菌脱臭機、
10…筐体、15…換気機構、16…除害フィルタ、17…換気ファン、
20…衣類収容室、21…回転軸、22…前面支持リング、
23…除菌性ガス導入路、24…除菌性ガス排出路、24’…排出口、25…前面扉、
30…送風機構、31…空気導入路、35…コントローラ、
40…除菌性ガス供給機構、41…除菌性ガス流路、
50…除害機構、51…除菌性ガス流路、52…空気排出路、53…空気循環路、
60…ドラム回転機構、61…電動機、62…ドラム駆動ベルト、
70…空気除湿機構、80…空気加熱機構、90…糸くずフィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11