(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134871
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】積層体及びインジケーター
(51)【国際特許分類】
B32B 7/02 20190101AFI20220908BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20220908BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20220908BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20220908BHJP
G01N 21/77 20060101ALI20220908BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20220908BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20220908BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220908BHJP
H05H 1/00 20060101ALI20220908BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B32B7/02
H01L21/302 103
G01N31/00 L
G01N31/22 121C
G01N21/77 A
G01N21/78 A
G01N21/59 D
G01N21/27 B
H05H1/00 A
C09K9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034339
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】西 雅之
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 貴文
(72)【発明者】
【氏名】山川 裕
(72)【発明者】
【氏名】浅見 綾香
(72)【発明者】
【氏名】目見田 裕一
【テーマコード(参考)】
2G042
2G054
2G059
2G084
4F100
5F004
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA07
2G042BB10
2G042FB07
2G042FC02
2G054AA01
2G054AB10
2G054CA08
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2G054FA12
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2G054GB04
2G054GB10
2G054GE01
2G054GE06
2G054JA01
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2G059CC20
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2G059MM01
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2G084BB14
2G084HH02
2G084HH15
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2G084HH20
2G084HH30
2G084HH45
4F100AB11B
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4F100AT00B
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4F100BA10B
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4F100JN28A
5F004CB12
5F004DA01
5F004DA26
(57)【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種を検知して色調が変化する変色層と基材層とを有する積層体において、変色層の変色感度が向上した積層体を提供することである。 また、本発明が解決しようとする課題は、被処理物表面の温度分布を、簡便な方法で検出できる温度インジケーターを提供することである。
【解決手段】 膜密度が0.20~1.00g/cm
3である変色層と、基材層とを備え、
変色層は、表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を有し、
内部空間内には、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種類を検知して色調が変化する色素を少なくとも1種含む検知剤が含まれている、
積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜密度が0.20~1.00g/cm3である変色層と、基材層とを備え、
変色層は、表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を有し、
内部空間内には、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種類を検知して色調が変化する色素を少なくとも1種含む検知剤が含まれている、
積層体。
【請求項2】
変色層の膜密度が0.30~0.50g/cm3である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
積層体の変色層を、CF4:O2=1:1のガスを原料ガスとするプラズマで5分間処理した場合の色差ΔE*abが10以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
変色層と基材層の間に隠蔽層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体を備える、プラズマ照射時に生じる温度分布の検知に用いる、温度インジケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びインジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造に際しては、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「プラズマ等」という場合がある。)による処理が均一に行われる必要がある。また、各電子デバイスへの熱履歴が均一となるように処理する必要がある。例えば、半導体チップ製造の前工程でのプラズマ等による処理は、ウエハ面内で均一に行われ、面内均一性を有することが重要である。面内均一性が損なわれる場合、半導体ウエハ上に形成された各半導体チップの性能がバラつき、歩留りに影響する。
このため、プラズマ等による処理の均一性の確認は、各電子デバイス製造装置の設計や、前記装置を使用する製造工程での管理の際に必要不可欠である。
プラズマ処理の均一性の評価手法としては、種々の手法が知られている。このうち、各処理の面内分布を直接測定する手法として、各種インジケーターを用いる手法が知られている。
【0003】
特許文献1には、色素、特定の界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤を含有するインキを、基材上に塗布したインジケーターが記載されている。このインジケーターは、反応チャンバー等の中に置くことで、プラズマ等の処理の終点を検知することが可能である。
特許文献2には、プラズマ等と反応して変色又は消色するインキにより形成された変色層を含む、インジケーターが記載されている。このインジケーターは、電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と同一の形状であり、プラズマ等の処理の均一性を確認することが可能である。
特許文献3には、アノード酸化処理により形成された細孔内に、色素を含有させたプラズマインジケーターが記載されている。
特許文献4には、多孔質体の細孔内に、プラズマ等と反応することにより変色又は消色する色素を含有させた変色層を有する、プラズマインジケーターが記載されている。
【0004】
特許文献1~3に記載されているインジケーターは、反応チャンバー内において、プラズマ処理等の進行を目視にて確認できるが、感度等を適切に調整しなければならない。また、処理条件等によっては、インジケーターの構成成分の一部が飛散し、プラズマ処理等の被処理物やチャンバー内を汚染するおそれがあった。特に、インジケーターには、金属原子やハロゲン原子を含む物質が含まれることが多く、金属原子やハロゲン原子による汚染が発生するおそれがあった。
特許文献4に記載されているインジケーターは、汚染回避のために、金属原子やハロゲン原子の含有量が低減されたものであるが、変色層の変色感度の向上が求められていた。
さらに、プラズマ等での処理の加工精度を確認するために、被処理物表面の温度分布を、簡便な方法で検出できる温度インジケーターが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-013982号公報
【特許文献2】国際公開第2015/025699号
【特許文献3】国際公開第2018/128123号
【特許文献4】特開2020-180963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種を検知して色調が変化する変色層と基材層とを有する積層体において、変色層の変色感度が向上した積層体を提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題は、被処理物表面の温度分布を、簡便な方法で検出できる温度インジケーターを提供することである。
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を行った結果、特定の構造の積層体を構成し、これをインジケーターとすることで、前記課題が解決できることを見出した。
具体的には以下のとおりである。
[1] 膜密度が0.20~1.00g/cm3である変色層と、基材層とを備え、変色層は、表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を有し、内部空間内には、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種類を検知して色調が変化する色素を少なくとも1種含む検知剤が含まれている、積層体。
[2] 変色層の膜密度が0.30~0.50g/cm3である、[1]に記載の積層体。
[3] 積層体の変色層を、CF4:O2=1:1のガスを原料ガスとするプラズマで5分間処理した場合の色差ΔE*abが10以上である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 変色層と基材層の間に隠蔽層を有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層体。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載の積層体を備える、プラズマ照射時に生じる温度分布の検知に用いる、温度インジケーター。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種を検知して色調が変化する変色層と基材層とを有する積層体において、変色層の変色感度が向上した積層体が提供される。
また、本発明により、被処理物表面の温度分布を、簡便な方法で検出できる温度インジケーターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の温度インジケーターにおける、温度、色差ΔE
*ab及びプラズマ照射時間の関係を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[積層体]
本発明の積層体は、膜密度が0.20~1.00g/cm3である変色層と、基材層とを備え、変色層は、表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を有し、内部空間内には、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種類を検知して色調が変化する色素を少なくとも1種含む検知剤が含まれている、積層体である。
なお、本明細書中、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスは、以下のとおりである。
【0011】
<プラズマ>
プラズマは、プラズマ発生用ガスを用い、交流電圧、直流電圧、パルス電圧、高周波、マイクロ波等を印加することにより発生するプラズマを意味し、減圧プラズマ及び大気圧プラズマの両方が該当する。
プラズマ発生用ガスとしては、例えば、酸素、窒素、水素、フッ素、塩素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、シラン、アンモニア、臭化硫黄、水蒸気、亜酸化窒素、テトラエトキシシラン、四フッ化炭素、トリフルオロメタン、四塩化炭素、四塩化ケイ素、六フッ化硫黄、四塩化チタン、ジクロロシラン、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム、空気及び二酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
プラズマとしては、例えば、電子デバイスの製造に際して、成膜工程、エッチング工程、アッシング工程、不純物添加工程、洗浄工程等で使用されるプラズマ処理装置(プラズマ発生用ガスとして含有する雰囲気下で交流電圧、直流電圧、パルス電圧、高周波、マイクロ波等を印加してプラズマを発生させることによりプラズマ処理を行う装置)で発生するプラズマが挙げられる。
【0012】
<オゾン>
オゾンは、例えば、酸素が紫外線にあたり生じたもの、乾燥空気等の酸素含有ガス又は酸素ガス中に放電して生じたもの、希硫酸の電気分解により生じたもの等が挙げられる。例えば、電子デバイスの製造に際して、成膜工程、アッシング工程、洗浄工程等で使用されるオゾン処理装置において発生するオゾンや光化学スモッグの発生に際して発生するオゾン等であってもよい。
<イオン>
イオンは、例えば、アルゴン、メタン、アセチレン等のガスに高周波電力を印加することで生じるもの等が挙げられる。例えば、イオン化したアルゴンを真空中、電場で加速し、金属表面などに照射・衝突させることで、ほとんど化学反応をしない性質を活かして表面原子を削り取るスパッタリングや、イオンビームエッチング、ドーピング等で用いられるイオン等であってもよい。
【0013】
<紫外線>
紫外線は、波長1~400nm程度の電磁波を指し、近紫外線、遠紫外線又は真空紫外線及び極紫外線又は極端紫外線を含む。例えば、水銀灯やLEDを含む紫外線照射装置から発生される紫外線や、電子デバイスの製造に際して、フォトリソグラフィ工程、アッシング工程、洗浄工程等で使用される紫外線処理装置により得ることができる。
【0014】
<ラジカル含有ガス>
ラジカル含有ガスは、例えば、電子線衝撃により2100Kに加熱したTa製細管に水素を通すとともに、真空度を1.0×10-4Torr~1.0×10-6Torr程度に保つことで得られる。
また、例えば、電子デバイスの製造に際して、成膜工程、エッチング工程、アッシング工程、洗浄工程等で使用されるラジカル含有ガス処理装置により得ることができる。
【0015】
<変色層>
変色層の色調の変化は、前記色素が、プラズマ等と接触し、変色、消色又は発色のいずれか1つ以上の色調変化を起こすことで発生する。
本発明の変色層は、検知剤が変色層の面内に均一に存在している。このため、プラズマ等を単に検知するだけでなく、プラズマ等による処理時の面内均一性及びプラズマ等による処理時の温度分布を目視により簡便に検知できる。
【0016】
(構造体)
本発明の変色層を構成する構造体は、有機材料、無機材料及び有機無機複合体材料からなる群より選ばれる少なくとも1種からなり、表面の開孔部と連通する内部空間を有するものである。その色調は、色素の変化を把握できるものであればよく、透明、着色透明、白色、淡色系のものが好ましい。
構造体としては、例えば、表面の開孔部と連通する内部空間を有する多孔質体、適宜の手段により孔、凹部、凸部及びクラックの少なくとも1種を設け、表面の開孔部と連通する内部空間に相当するものを形成したもの、表面に多孔質物質が配置されている組成物等を用いることができる。このうち、表面の開孔部と連通する内部空間を有する多孔質体が好ましく用いられる。
構造体を構成する材料は、必要に応じて、増量剤等の成分を含んでいてもよい。なお、積層体における各金属原子の含有量を5.0質量ppm未満及び/又は各ハロゲン原子の含有量を30質量ppm未満とする場合には、構造体として、金属原子及び/又はハロゲン原子を含まないものを用いることが好ましい。
本発明において、構造体はウエハの色を隠す機能を備えることで、変色感度を高くすることができる。また、構造体を用いることで、プラズマ等の浸透度に応じた検知剤の経時的な色調変化や、プラズマ等に曝された量や強さに比例した色調変化を測定することができる。
【0017】
表面の開孔部と連通する内部空間を有する多孔質体は、例えば、無機系多孔質体、有機系多孔質体及び有機無機複合多孔質体のいずれでもよい。
無機系多孔質体としては、例えば、金属多孔質体、シリカ系多孔質体、アルミナ系多孔質体、ゼオライト系多孔質体、ケイ酸塩系多孔質体、メソポーラス系多孔質体、ガラス多孔質体、セラミック多孔質体、軽石、金属酸化物や金属水酸化物等の多孔質体等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられるが特に限定されない。
【0018】
有機系多孔質体としては、例えば、樹脂多孔質体(多孔質フィルム、多孔質ポリマービーズ等)、不織布、編物、織物、紙、活性炭、フラーレン、カーボンナノチューブ等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられるが特に限定されない。
樹脂多孔質体を構成する樹脂としては、特に限定されず、合成したものでも市販のものでもよい。例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に、構造体として、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリアミド系樹脂のような耐熱性高分子を用いると、耐熱性に優れた積層体となることから、高温条件下で使用可能で、強力なプラズマ処理に対する耐性を有するインジケーターを構成できる。
【0019】
本発明において、積層体における各金属原子のそれぞれの含有量を5.0質量ppm未満及び/又は各ハロゲン原子の含有量を30質量ppm未満とする場合、変色層を構成する構造体として、有機系多孔質体、特に、樹脂多孔質体を用いることが好ましい。
また、金属原子及び/又はハロゲン原子による電子デバイス製造装置内の汚染を防止するために、変色層を構成する構造体として、有機系多孔質体、特に、樹脂多孔質体を用いることが好ましい。
【0020】
(検知剤)
検知剤は、プラズマ等を検知して色調が変化する色素を少なくとも1種含む。なお、検知剤は、色素以外のその他の成分を必要に応じて含むことができる。
本発明においては、検知剤が、金属原子を含まない化合物、特に、炭素、水素、酸素及び窒素以外の原子を含まない色素化合物から構成されることが好ましい。また、検知剤は、その構成成分を十分に精製することや、調製に際して金属製の器具を用いない等により、金属原子やハロゲン原子等の不純物が混入しないようにするのが好ましい。これにより、積層体における各金属原子の含有量を5.0質量ppm未満とすることができ、プラズマ等を検知するためのインジケーターとして積層体を用いた場合、電子デバイスの製造装置内における汚染、特に、金属原子やハロゲン原子による汚染を効果的に防止できる。
なお、検知剤は、色素による色調変化の効果を損なわない範囲において、感度の調整や検知前後の色差の視認性向上等を目的として、色素以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、プラズマ等を検知しても色調が変化しない色素、樹脂及び/又は樹脂前駆体、界面活性剤、充填剤、色調変化遅延剤、色調変化促進剤、溶媒、レベリング剤、消泡剤等の添加剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0021】
{色素}
プラズマ等を検知して色調が変化する色素は、プラズマ等に曝された際に、色調が変化する挙動を示すものであれば特に限定されない。例えば、着色剤として知られている色素、好ましくは、染料や顔料のうち、プラズマ等を検知して色調が変化する色素からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。例えば、アントラキノン系色素、ペリレン系色素、メチン系色素、アゾ系色素(モノアゾ系色素、ジアゾ系色素、トリアゾ系色素、ポリアゾ系色素、アゾイック系色素(ジアゾコンポーネント)、アゾイック系色素(カップリングコンポーネント)等)、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、インダンスレン系色素、食用色素及びペリノン系色素からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。好ましくは、アントラキノン系色素、ペリレン系色素、メチン系色素、アゾ系色素、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、キサンテン系色素、インダンスレン系色素及び食用色素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくは、アントラキノン系色素、ペリレン系色素、メチン系色素、インダンスレン系色素、及びアゾ系色素からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
これらの色素の具体例としては、例えば、C.I.Azoic Coupling Component 3,16、C.I.Basic Green 4、C.I.Mordant Red 27、C.I.Solvent Black 3、C.I.Solvent Blue 35、C.I.Solvent Red 18,24,27,49,52、C.I.Solvent Violet 14、C.I.Solvent Yellow 29、C.I.Vat Black 8,9,25,27,29、C.I.Vat Brown 1,3,25,44、C.I.Vat Green 8、C.I.Vat Orange 13,15、C.I.Vat Red 10,13,15、C.I.Vat Yellow 10,20、Lumogen F IR 788、Lumogen F Orange 240、Lumogen F Pink 285、Lumogen F Red 300,305,339、Lumogen F Violet 570、Lumogen F Yellow 083,170、Iketon Violet extra、Oil Peacock Blue、Oil Brown BG extraからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
本発明においては、これらの色素の種類(分子構造等)の選択、複数の色素を混合して用いること、色素の含有量を調整すること等によって、検知剤の変色感度や変色層の呈色・色調変化を制御できる。
変色層中の検知剤の含有量は、検知剤の種類、変色感度、製品形態、構造体の特性等に応じて適宜好適化すればよい。
例えば、変色層中に検知剤を、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、例えば20.0質量%以下、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。
変色層中に検知剤が大量に含まれていると、変色感度が下がる傾向がある。また、少なすぎても、変色感度が下がる傾向がある。
【0024】
(膜厚)
変色層の膜厚(厚さ)は、検知機能を発揮する範囲であれば特に制限されず、用途や求める特性等に応じて適宜好適化できる。変色感度の点から、例えば10μm未満であり、好ましくは9.5μm、より好ましくは9μm以下であり、例えば0.5μm以上であり、好ましくは1μm以上である。変色層の膜厚が10μm以上であると、プラズマ等の処理時間が短い場合や、プラズマ等の出力が弱い場合の変色感度が十分でないおそれがある。また、0.5μm未満であると、変色層の着色が不足し変色レンジが狭くなるおそれがある。
【0025】
(膜密度)
本発明の積層体は、変色層の膜密度が0.20~1.00g/cm3である。好ましくは0.25g/cm3以上、より好ましくは0.30g/cm3以上であり、好ましくは0.70g/cm3以下、より好ましくは0.50g/cm3以下、さらに好ましくは0.42g/cm3以下である。
変色層の膜密度が0.20g/cm3未満の場合、変色層を形成することが困難であり、また、変色層の膜強度等が不足することとなる。変色層の膜密度が1.00g/cm3を超えると、変色層内部へのプラズマ等の侵入が阻害されることとなり、検知剤の分解が十分に行われず、変色層の変色感度が低くなる。
【0026】
膜密度の調整手段としては、変色層を構成する構造体の多孔度を調整する手段が挙げられる。例えば、
(1)孔形成剤を用いる等の化学的手段による多孔化(例えば、発泡剤による多孔化、成型時等に発生するガスを用いた多孔化、成型後に多孔化形成剤を溶解、気化、昇華等させて除去する多孔化、溶解度や沸点等が異なる混合溶媒の使用等による相分離による多孔化等)
(2)延伸による多孔化
(3)粉粒体の融着による多孔化
(4)穿孔等の機械的手段による多孔化に際して、その多孔度を調整する手段が挙げられる。
【0027】
本発明においては、前記(1)の手段において、構造体を構成する樹脂と、樹脂又はその前駆体の溶解度が高い良溶媒の種類及び量と、樹脂の溶解度が低い貧溶媒の種類及び量とを調整する手段等が好ましい。
構造体を構成する樹脂として、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いた場合、良溶媒としては、アミド系溶媒、尿素系溶媒等からなる群より選ばれる1種以上の含窒素極性溶媒が、貧溶媒としては、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒等からなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒が、それぞれ好ましく用いられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。尿素系溶媒としては、例えば、テトラメチル尿素、ジメチルエチレン尿素が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ジグライム、トリグライム、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル等が挙げられる。エステル系溶媒としては、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル等が挙げられる。
なお、本発明において、樹脂の良溶媒とは、25℃の溶媒100gに溶解する樹脂の量が0.1g以上となる溶媒である。また、樹脂の貧溶媒とは、25℃の溶媒100gに溶解する樹脂の量が0.1g未満である溶媒である。
【0028】
本発明においては、樹脂、良溶媒及び貧溶媒合計量を100質量%とした場合に、樹脂、良溶媒及び貧溶媒の使用量を、それぞれ以下のとおりとすることが好ましい。
樹脂:例えば7.0質量%以上、好ましくは8.0質量%以上であり、例えば15.0質量%以下、好ましくは11.0質量%以下
良溶媒:例えば10.0質量%以上、好ましくは15.0質量%以上であり、例えば50.0質量%以下、好ましくは40.0質量%以下
貧溶媒:例えば35.0質量%以上、好ましくは40.0質量%以上であり、例えば80.0質量%以下、好ましくは70.0質量%以下
樹脂の量が15.0質量%を超えると、多孔度の調製が困難であり、さらに、変色レンジが狭くなるおそれがある。また、樹脂の量が7.0質量%未満であると、多孔質膜が形成されないおそれがあり、さらに、変色感度が悪くなるおそれがある。
良溶媒の量が50.0質量%を超えると、多孔質膜を形成することができないおそれがある。また、良溶媒の量が10.0質量%未満であると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。
貧溶媒の量が80.0質量%を超えると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。また、貧溶媒の量が35.0質量%未満であると、多孔質膜を形成することができないおそれがある。
【0029】
また、本発明においては、樹脂と有機溶媒とを含むワニスを用い、樹脂ワニスに対して良溶媒及び貧溶媒を混合したものを使用してもよい。樹脂ワニスとしては、樹脂含有量が10~20質量%、好ましくは10~15質量%のワニスを用いることができる。この場合、樹脂ワニス、良溶媒及び貧溶媒合計量を100質量%とした場合に、樹脂、良溶媒及び貧溶媒の使用量を、それぞれ以下のとおりとすることが好ましい。
樹脂ワニス:例えば60質量%以上、好ましくは70質量%以上であり、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下
良溶媒:例えば1質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下
貧溶媒:例えば1質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下
樹脂の量が90質量%を超えると、多孔度の調製が困難であり、さらに、変色レンジが狭くなるおそれがある。また、樹脂の量が60質量%未満であると、多孔質膜が形成されないおそれがあり、さらに、変色感度が悪くなるおそれがある。
良溶媒の量が20質量%を超えると、多孔質膜を形成することができないおそれがある。また、良溶媒の量が1質量%未満であると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。
貧溶媒の量が20質量%を超えると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。また、貧溶媒の量が1質量%未満であると、多孔質膜を形成することができないおそれがある。
【0030】
本発明において、膜密度が0.20~1.00g/cm3である変色層を構成する構造体としては、ポリイミド系樹脂前駆体と、アミド系溶媒(ポリイミド系樹脂前駆体の良溶媒)と、エーテル系溶媒(貧溶媒)とを含む樹脂溶液から得られたポリイミド系樹脂多孔質体、ポリアミドイミド系樹脂前駆体と、アミド系溶媒(ポリアミドイミド系樹脂前駆体の良溶媒)と、エーテル系溶媒(貧溶媒)とを含む樹脂溶液から得られたポリアミドイミド系樹脂多孔質体を用いることが好ましい。
【0031】
(色差ΔE*ab)
本発明の積層体は、変色層をCF4:O2=1:1のガスを原料ガスとするプラズマで5分間処理した場合の色差ΔE*abが10以上であることが好ましい。
色差ΔE*abは、L*a*b*色空間における色差である。プラズマ処理を行う前の変色層のL*、a*及びb*と、5分間プラズマ処理した後の変色層のL*、a*及びb*を、それぞれ測色計で測定して各差分ΔL*、Δa*、Δb*を求め、下記式:
ΔE*ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
から求められる。
なお、プラズマ処理条件は、[実施例]の項に記載したプラズマ処理条件である。
ΔE*abは、10以上が好ましく、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは20以上であり、最も好ましくは30以上である。
ΔE*abが10以上であると、目視による変色の確認を確実に行うことが可能であり、変色感度が優れたものとなる。
【0032】
<基材層>
基材層は、変色層を支持し得るものであれば特に限定されない。無機材料、有機材料及びこれらの複合体からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる
基材層の厚さは、変色層を確実に支持し得るものであれば特に制限されない。例えば0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、例えば10mm以下、好ましくは1mm以下である。
【0033】
基材層を構成する無機材料としては、例えば、金属又は合金、半導体材料、セラミック、ガラス、石英、サファイア及びコンクリート等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
基材層を構成する有機材料としては、例えば、樹脂、紙及び繊維類(不織布、編物、織物、その他の繊維シート)、皮革等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
基材層としては、これらの中でも、半導体材料、ガラス、サファイア、樹脂及び紙からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0034】
半導体材料としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)等の、金属酸化物又は金属酸窒化物等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられるが特に限定されない。
樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
各製品の製造装置におけるインジケーターとして積層体を用いる場合、基材層を構成する材料としては、例えば以下のものが挙げられる。
半導体製造装置用インジケーター:シリコン、ガリウムヒ素、炭化ケイ素等
LED製造装置用インジケーター:サファイア、窒化ガリウム、ガリウムヒ素等
半導体レーザー製造装置用インジケーター:ガリウムヒ素、窒化ガリウム、サファイア等
パワーデバイス製造装置用インジケーター:炭化ケイ素、窒化ガリウム、シリコン等
太陽電池製造装置用インジケーター:シリコン、ガラス、ゲルマニウム等
液晶ディスプレイ製造装置用インジケーター:シリコン、ガラス、ゲルマニウム等
有機ELディスプレイ製造装置用インジケーター:ガラス等
汎用・簡易型インジケーター:樹脂、紙、ガラス等
【0036】
<隠蔽層>
本発明においては、変色層と基材層の間に隠蔽層を有していてもよい。
隠蔽層は、基材層の色調が、変色層の色調や変色層の変色の観察等に影響を与えないようにするための層である。また、隠蔽層の色調は、変色層の色調や変色層の変色の観察等に影響を与えない色調が好ましい。
隠蔽層を構成する成分は、特に限定されない。例えば、変色層を構成する構造体と同様の成分から構成されていてもよい。この場合、隠蔽層の色調と変色層の変色後の色調とが同様のものとなることから、変色層の変色をより明確に観測することが可能となる。
また、隠蔽層の成分を、変色層を構成する構造体と異なる成分とした場合であっても、その色調について検討し、変色層の変色後の色調と同様のものとすることが有利である。
さらに、隠蔽層を、プライマー機能を有する隠蔽層とすることで、基材層と変色層との接着性を向上させることができる。
隠蔽層の厚さとしては特に限定されないが、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、例えば35μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0037】
<層構成>
本発明の積層体は、変色層、基材層及び隠蔽層以外に、その他の層を有していてもよい。
変色層、基材層、隠蔽層及びその他の層の積層の順序は、隠蔽層が変色層と基材層の間に設けられる限り、特に限定されない。
変色層、隠蔽層及びその他の層は、それぞれ1層ずつ形成してもよく、それぞれ複数層形成してもよい。また、同じ層同士が隣接していてもよい。この場合、同じ層同士は、互いに同じ組成であっても又は異なる組成であってもよい。
【0038】
変色層、隠蔽層及びその他の層は、基材層又は各層の全面に形成してもよく、あるいは部分的に形成してもよい。これらの場合、特に変色層の色調の変化を確保するために、少なくとも1つの変色層の一部又は全部がプラズマ等に曝されるように、変色層及びその他の層を形成できる。
本発明の積層体は、上記各処理の完了や面内均一性が確認できる限り、変色層、隠蔽層及びその他の層をどのように組み合わせてもよい。変色層とその他の層とが重ならないようにすることができ、また、変色層とその他の層とを重ねることもできる。
本発明の積層体は、プラズマ等により変色層の色調が変化したことを報知するために、例えば変色層の変色により文字、図柄及び記号の少なくとも1種が現れる構成としてもよい。文字、図柄及び記号は、変色を知らせるすべての情報を包含するものであり、これら文字等は、使用目的等に応じて適宜デザインできる。
【0039】
<形状>
本発明の積層体の形状は、用途等に応じて任意の形状にできる。
例えば、電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と同一又は略同一とし、積層体をいわゆるダミー基板として用いることができ、簡便に上記処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能となる。
【0040】
<積層体における各金属原子の含有量>
積層体における各金属原子の含有量は、5.0質量ppm未満であることが好ましい。より好ましくは1.0質量ppm未満、さらに好ましくは0.5質量ppm未満、よりさらに好ましくは0.1質量ppm未満、最も好ましくは1.0質量ppt未満、より最も好ましくは0.5質量ppt未満である。
ここで、「金属原子」は、水素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素及び希ガス以外の原子を意味する。
積層体における各金属原子の含有量を5.0質量ppm未満とするには、積層体に含まれる全ての材料を、金属原子を含まないもので構成する。また、積層体に関係するすべての成分(溶媒等も含む)を、金属原子を含まないものとし、精製により不純物として含まれる金属原子含有物質を除去する。さらに、製造工程において、金属原子の混入(コンタミ)が発生する器具等を用いないことが好ましい。
本発明においては、変色層、基材層、隠蔽層等の全ての層について、ICP-MS(高周波誘導結合プラズマ質量分析/Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)などにより各金属原子含有量を測定し、それぞれが5.0質量ppm未満であれば、積層体における各金属原子の含有量が5.0質量ppm未満とする。
また、本発明の積層体を含むインジケーターを、被処理材料とともに処理装置に導入し、プラズマ処理等の処理を行う。その後、処理装置内に導入した被処理材料の表面にある各金属原子をフッ化水素酸等で回収してICP-MSなどにより各金属原子含有量を測定し、それぞれが5.0質量ppm未満であれば、積層体における各金属原子が5.0質量ppm未満であるとする。
積層体における各金属原子の含有量を5.0質量ppm未満とすることにより、積層体を電子デバイスの製造装置に用いるインジケーターとした際に、被処理物や前記製造装置内における金属原子の汚染を防止することが可能となる。
これにより、特に、金属原子の存在を嫌う半導体電子デバイスの製造工程(特に、前半プロセスにおけるエッチング処理工程)においても使用し得るインジケーターを得ることが可能となる。
【0041】
<各ハロゲン原子の含有量>
積層体における各ハロゲン原子の含有量は、30質量ppm未満であることが好ましい。より好ましくは5質量ppm未満、さらに好ましくは1質量ppm未満、よりさらに好ましくは0.5質量ppm未満、最も好ましくは1.0質量ppt未満である。
積層体における各ハロゲン原子の含有量を30質量ppm未満とするには、積層体に含まれる全ての材料を、ハロゲン原子が含まれていないもので構成することが好ましい。また、積層体に関係するすべての成分(溶媒等も含む)について、ハロゲン原子を含まないものを用いるとともに精製により不純物として含まれるハロゲン原子含有物質を除去することが好ましい。さらに、製造工程において、ハロゲン原子の混入(コンタミ)が発生する器具等を用いない方法等を用いることが好ましい。
本発明においては、変色層、基材層、隠蔽層等の全ての層で用いられる各材料について、燃焼イオンクロマトグラフィー又はICP-MS(高周波誘導結合プラズマ質量分析/Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)などにより各ハロゲン原子含有量を測定し、それぞれが30質量ppm未満であれば、積層体における各ハロゲン原子の含有量が30質量ppm未満であるとする。
また、本発明の積層体を含むインジケーターを、被処理材料とともに処理装置に導入し、プラズマ処理等の処理を行う。その後、処理装置内に導入した被処理材料の表面にあるハロゲン原子を回収して燃焼イオンクロマトグラフィー又はICP-MSなどにより各ハロゲン原子含有量を測定し、それぞれが30質量ppm未満であれば、積層体における各ハロゲン原子の含有量が30質量ppm未満とする。
積層体における各ハロゲン原子の含有量を30質量ppm未満とすることにより、積層体を電子デバイスの製造装置に用いるインジケーターとした際に、被処理物や前記製造装置内におけるハロゲン原子の汚染を防止することが可能となる。
これにより、特に、ハロゲン原子の存在を嫌う半導体電子デバイスの製造工程(特に、前半プロセスにおけるエッチング処理工程)においても使用し得るインジケーターを得ることが可能となる。
【0042】
<積層体の製造方法>
積層体の製造方法は、特に限定されず、例えば、以下の(1)~(5)の方法が挙げられる。
(1)基材層の上に、表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を形成する成分及び検知剤を含む変色層形成材料を塗布し、乾燥・加熱することで所定の膜密度及び所定の構造(多孔質)を有する変色層を形成し、積層体とする方法。
(2)基材層の上に、表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を設けた後に、検知剤又は検知剤溶液を塗布、含浸又は噴霧等して、前記内部空間内に検知剤を保持させて、積層体とする方法。
(3)表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を形成し、これに検知剤又は検知剤溶液を塗布、含浸又は噴霧等して、前記内部空間内に検知剤を保持させた後、基材層の上に固定する方法。
(4)構造体を形成する成分と、表面の開孔部と連通する内部空間を構造体に形成する成分と、前記検知剤と、を含む組成物を、基材層上に設けた後に、構造体に表面の開孔部と連通する内部空間を形成する処置を行う方法。
(5)構造体を形成する成分と、表面の開孔部と連通する内部空間を構造体に形成する成分と、前記検知剤と、を含む組成物を調製し、構造体に表面の開孔部と連通する内部空間を形成するとともに内部空間内に検知剤を保持させた後に、基材層の上に固定する方法。
本発明においては、積層体の製造容易性、積層体への不純物の混入防止等の観点から、(1)~(3)の方法が好ましく、(1)又は(2)の方法がより好ましく、(1)の方法がさらに好ましい。
【0043】
なお、変色層形成材料等の形成に際して、構成成分を混合、溶解又は分散させる際には、必要に応じて撹拌機を用いることができる。この際、撹拌機に起因する汚染成分が混合しないようにすることが好ましい。混合、溶解又は分散に際しては、例えば、検知剤を前記溶媒に投入する方法、溶媒を検知剤に投入する方法、検知剤を構成する各成分を順に前記溶媒に投入する方法等を用いることができる。
内部空間内に検知剤を保持する際、必要に応じて、乾燥等の手段により溶媒を除去することができる。
基材層の上に構造体を設ける際には、必要に応じて基材層に表面処理を行うことにより、接着性を向上できる可能性がある。表面処理としては、周知の手段である、プライマー処理、化成処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、サンドブラスト処理等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0044】
<積層体の用途>
本発明の積層体は、処理前の変色層の色を基準に色差を測定することで、プラズマ等を検知するだけでなく、プラズマ等の処理の均一性を検知するインジケーターとして用いることができる。
例えば、積層体は、半導体、LED、半導体レーザー、パワーデバイス、太陽電池、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、MEMS等の電子デバイスを製造する装置に用いるインジケーターとして用いることができる。また、プラズマ等を検知するための汎用・簡易型インジケーターとして用いることができる。さらに、後述のように、温度インジケーターとして用いることもできる。
【0045】
インジケーターの使用に際しては、電子デバイスを製造する際に上記処理を行う各電子デバイス製造装置内の基板の設置箇所に、本発明のインジケーターを置けばよい。
例えば、ウエハステージ、ヒータ、真空チャックテーブル等に対して水平(横)に寝かせて配置してもよく、また、ウエハボート等を用いて垂直(縦)に配置してもよい。
本発明のインジケーターを、電子デバイスを製造する際に用いられる基板と同一形状とすると、基板と同様に取り扱うことや設置することができる。
このような場合には、装置内に置かれたインジケーターが上記処理に曝露されることで色調が変化することとなり、上記処理の面内均一性を、簡便に検知できる。
【0046】
[温度インジケーター]
本発明者らは、本発明の積層体は、温度が高くなるほど変色が大きくなる温度依存特性を有していることを見出した。これにより、プラズマ等による処理、特にプラズマ処理時において、被処理物(ウエハ等)の表面温度のばらつき(不均一)が発生した際には、積層体に変色分布が発生する。この変色分布を読み取ることで、被処理物表面の温度分布を、容易かつ相対的に検出することが可能であることが見出された。
具体的には、温度により変色感度が高くなる積層体の温度依存特性を利用して、異なる変色域の色差を測定することにより、間接的に面内における温度差の測定が可能となる。
例えば、本発明者は、
図1に示すように、実施例の積層体X1の面内における温度差を、プラズマ処理時間及びΔE
*abの値から推定できることを見出した。これより、例えば、プラズマ処理を15分行った際に、ΔE
*abが8程度となる変色分布が発生した部分は、プラズマ処理時に80~100℃の温度差が発生していたと推定することができる。
【0047】
本発明の温度インジケーターは、特に温度の影響が大きい、半導体製造プロセスでのプラズマを用いたエッチングプロセスにおける温度分布の検出に対して有用である。特に、本発明の温度インジケーター、金属含有量が少ない積層体から形成することにより、装置内汚染を起こすことなく、温度分部測定を容易に行うことができる。
また、本発明の温度インジケーターは、ウエハ基板に熱電対を付加した測定システムや、温度により変色する示温剤を用いた測定システムと比較して、プラズマ処理時に凹凸に起因する電界集中による局所的な温度上昇がなく、金属コンタミの飛散の懸念がない等の点で、極めて有用である。
【実施例0048】
以下、実施例及び比較例をあげて、本発明の積層体及びインジケーターをより詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0049】
[積層体の調製]
ポリイミド前駆体溶液、アミド系溶媒(ポリイミドの良溶媒)、エーテル系溶媒(ポリイミドの貧溶媒)及びペリレン系赤色染料(検知剤)を混合、撹拌して変色層形成材料を得た。得られた変色層形成材料を、シリコン基板に塗布し、乾燥・熱処理して、シリコン基板上に多孔質の変色層を形成し、積層体X1~X9を調整した。
積層体X1~X9における変色層の膜密度、変色層の膜厚及び変色層中の検知剤(ペリレン系赤色染料)濃度を、表1に示す。
【0050】
[プラズマに対する変色性]
積層体X1~X9の変色層に対して、下記の条件でプラズマ処理を行った。
所定のプラズマ処理時間経過後の変色層のL*、a*及びb*を測色計で測定し、各プラズマ処理時間におけるプラズマ処理前後の色差ΔE*abを得た。結果を表1に併せて示す。
<プラズマ処理条件>
原料ガス:CF4:O2=1:1の混合ガス
プラズマ装置:容量結合プラズマ(平行平板型CCP;Capacitively Coupled Plasma)型プラズマ装置
ガス流量:CF4:O2=75:75sccm
初期圧:5×10-4Pa以下
処理圧:20Pa
電極間距離:40mm
電力:50W
電源:13.56MHz
【0051】
【0052】
表1より、変色層の膜密度が0.20~1.00g/cm3であると、変色層のプラズマに対する変色性(変色感度)が良好な積層体が得られることがわかる。特に、変色層の膜密度が0.30g/cm3以上であり、0.50g/cm3以下、好ましくは0.44g/cm3以下の範囲内にあると、短時間の照射であっても照射前後の色差ΔE*abが大きい変色感度の高い積層体が得られることがわかる。なお、使用したポリイミドの密度は、1.42g/cm3である。
また、変色層の膜密度に加えて、変色層の膜厚を薄くする、検知剤濃度を低くすることで、変色感度を調整し得ることが分かった。特に、変色層の膜厚を10μm未満、好ましくは9.5μm~4.0μmの範囲にあると、変色感度を高くすることができる。
【0053】
[温度に対する変色性]
積層体X1を用い、シリコンウエハを置くステージの温度を20℃、100℃又は200℃とし、下記の条件でプラズマ処理し、それぞれの温度における、プラズマ処理時間(分)と変色感度を表す色差ΔE
*abの関係を求めた。結果を
図1に示す。
<プラズマ処理条件>
原料ガス:CF
4:O
2=1:1の混合ガス
プラズマ装置:誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)型プラズマ装置
ガス流量:CF
4:O
2=20:20sccm
初期圧:5×10
-4Pa以下
処理圧:10Pa
電極間距離:80mm
電力:75W(上部放電)
【0054】
図1より、積層体X1は、温度が高くなるほどに変色が大きくなる温度依存性を持っていることがわかる。当該特性を活用することで、プラズマ処理時のウエハ温度ばらつき(不均一;温度分布)の発生の有無とその程度を、ΔE
*abを読み取ることにより容易且つ相対的に検出することが可能となる。
例えば、15分のプラズマ処理を行った際に、約80~100℃の温度差が発生すると、ΔE
*abが8程度となる変色が生じることがわかる。これより、ΔE
*abを測定した際に、8程度の変色分布が発生している場所は、プラズマ処理時に約80~100℃の温度差が発生したことを、容易に間接的に測定することが可能となる。