(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134878
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】鉄道車両用雨除けバイザー
(51)【国際特許分類】
B61D 25/00 20060101AFI20220908BHJP
B60J 3/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B61D25/00 G
B60J3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034351
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000101961
【氏名又は名称】イズミ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】野津 敬
(72)【発明者】
【氏名】村田 和也
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の側面から突出することなく、寸法が「車両限界」内に収まり、すれ違い時等に発生する大きな風圧に耐えうる強度を有する鉄道車両用雨除けバイザーを提供すること。
【解決手段】窓開け運行可能な鉄道車両の車両窓に取付けられる鉄道車両用雨除けバイザーDであって、鉄道車両窓枠4に沿うような形状を有する金属フレーム1に合成樹脂またはガラス製で板状の透明材料3が接続、保持され、この透明材料が保持された前記金属フレームを既製の窓枠に取り付けるため、前記金属フレームに沿って連続的または部分的に接合された、車内側へ内向きに延びる内向き金属部材2を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開け運行可能な鉄道車両の車両窓に取付けられる鉄道車両用雨除けバイザーであって、鉄道車両窓枠に沿うような形状を有する金属フレームに合成樹脂またはガラス製で板状の透明材料が接続、保持され、この透明材料が保持された前記金属フレームを既製の窓枠に取り付けるため、前記金属フレームに沿って連続的または部分的に接合された、車内側へ内向きに延びる内向き金属部材を有する鉄道車両用雨除けバイザー。
【請求項2】
内向きに延びる前記内向き金属部材が鉄道車両窓枠に沿った形状で、ボルト貫通用の穴を有し、鉄道車両窓枠にフィットさせた上で、鉄道車両窓枠にボルト留めが可能としてある請求項1に記載の鉄道車両用雨除けバイザー。
【請求項3】
前記金属フレームまたは内向きに延びる前記内向き金属部材にブラケットを取付けることで鉄道車両窓枠に取付け可能とした請求項1に記載の鉄道車両用雨除けバイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両、特に「窓開け」運行可能な通勤電車の車両窓に取付けられる、鉄道車両用雨除けバイザー(鉄道車両用サイドバイザー)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2020年の初めに中国での感染を皮切りに新型コロナウイルスが国境を越えて拡大し、世界中に広がって、パンデミックを引き起こした。
【0003】
わが国でも2021年2 月までに2 回にわたって緊急事態宣言が発出され、感染者数が累積4 万人、死者が累積で6 千人にのぼるなど、これまで経験したことのない異常な事態となった。
【0004】
そのような状況の中、鉄道車両内での感染防止のため、強制換気の他、窓開け可能な客車車両では、夏冬通して複数の窓を開けて、強制換気・自然換気併用による車内ウイルスの排除に努めている。
【0005】
このような「窓開け」運行による換気効果について、鉄道総合研究所が、通勤電車が窓を開けて走行した場合、混雑の状況にかかわらず「車両内の空気が5分前後に1回入れ替わる」とするシミュレーション結果を発表している(News from Japan 2020.11.02 記事より)。
【0006】
また、実際の換気効果に加え、「窓が開いていることにより安心感が得られる」との乗客の意見も紹介されている(TBS ラジオweb 版「新型コロナ対策で電車が窓開け運行 効果以上の安心!」より)。
【0007】
ところが、降雨時には走行による風圧で風と共に雨水が客車内に侵入するため、降雨時の運行においては窓を細目に開けたり、完全に閉めたりしなければならないという問題が発生している(News Web 2020 年6 月2 日「どうなる?梅雨期の窓開け運行 鉄道各社の対応は」およびウエザーニュース2020/08/07「コロナで開ける列車の窓、雨が降ったらどうしてる?」より)。
【0008】
ところで、鉄道車両窓、特に現行の通勤車両の多くに「下降窓」が採用されている。
(「鉄道車両の客室側窓について」鉄道車両工業 428号 P49, 2017.4)。
【0009】
これは客車の側面の窓について、窓重量を支えるバランサーが装着され、必要な開口位置に設定できるフリーストップを採用した車両窓であり、乗務員あるいは乗客が必要に応じ、客車窓のガラスサッシを引き下げ、上部を15cmから50cmほど開けることができるものである。
【0010】
窓の上部が開くため、雨天走行時は侵入した雨滴が座席に座っている乗客の上に降りかかる不具合が発生する場合がある。本発明の目的はこのような不具合を解消することにある。
【0011】
自動車用のサイドバイザーあるいはドアバイザーについては乗用車においてはカーメーカーの純正品が販売店オプションとして設定されており、我が国では装着率が60-80%と極めて一般的な外装部品となっている。形状的には、下記特許文献1に開示されているドアサッシのAピラー部および上部に沿わせた形状の樹脂製のバイザーが主流であり、前方からの雨、雪の侵入を防止するとともに換気効果を保持する機能を有している。
【0012】
また、下記特許文献2には現在でも一般的に採用されている樹脂製バイザーの装着方法が開示されている。
【0013】
最近では樹脂バイザーの意匠面に金属モールなどの装飾モールを取り付けることを特徴とする、従来のバイザーの意匠性をより高める技術も開示されている(下記特許文献3)。
【0014】
乗用車のみならず、トラックや荷役用車両においても日よけ、雨除けのバイザーが種々考案されている(下記特許文献4,5)。
【0015】
一方、鉄道車両においては、列車の客車側面窓からの雨の侵入防止は、専ら屋根からの雨滴を集める雨樋(下記特許文献6)あるいは屋根構造(下記特許文献7)によってはかられており、バイザーの例は、運転席内側に取り付ける遮光用のバイザー等に限られている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実開昭47-004628 公報
【特許文献2】実開昭63-061322 公報
【特許文献3】特開2018-122820 公報
【特許文献4】実開昭58-163307 公報
【特許文献5】実開昭58-52020 公報
【特許文献6】実開昭52-079608 公報
【特許文献7】特開2016-43808 公報
【特許文献8】実開昭57-148521 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
鉄道車両の客車側面窓に自動車で用いられるようなサイドバイザーが採用されない主な理由として、
1)鉄道客車用冷房設備の発達により、夏の暑さを凌ぐための窓開けが必要なくなったこと。
2)同じく強制換気装置の発達により、窓を開けての空気の入れ替えの必要性が低下したこと。
等、降雨時に敢えて客車窓を開けて走行する必要がなくなったことが挙げられる。
さらに、技術面からも
3)鉄道車両は「車両限界」で横幅に規制があり、通常の場合、車両はこの車両限界ぎりぎりに幅を広げた設計をされるため、自動車のように幅方向に膨出したバイザー等は取付できないこと。
4)自動車に比べ、鉄道車両はすれ違いの風圧が大きく、高い強度が求められること。
などが理由として考えられる。
【0018】
ところが、1)、2)の状況は、前述した通り、新型コロナウイルスによる感染爆発により常時客車側面窓を開けた状態で走行しなければならない事態となり一変した。
【0019】
新型コロナウイルスによる感染拡大防止のため、降雨時でも窓開け換気ができるサイドバイザーの必要性が高まったにもかかわらず、上記3)、4)項に記載した理由は以前技術的障壁として残っている。
【0020】
本発明はかかる技術的な課題に鑑みてなされたもので、鉄道車両の側面から突出することなく、寸法が「車両限界」内に収まり、すれ違い時等に発生する大きな風圧に耐えうる強度を有する鉄道車両用雨除けバイザーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、窓開け運行可能な鉄道車両の車両窓に取付けられる鉄道車両用雨除けバイザーであって、鉄道車両窓枠に沿うような形状を有する金属フレームに合成樹脂またはガラス製で板状の透明材料が接続、保持され、この透明材料が保持された前記金属フレームを既製の窓枠に取り付けるため、前記金属フレームに沿って連続的または部分的に接合された、車内側へ内向きに延びる内向き金属部材を有するものである。本発明の鉄道車両用雨除けバイザーは、前記鉄道車両窓枠の上部に取付けられるものである。そして、鉄道車両の客車側面窓を含む前記車両窓(窓ガラス)は、少なくとも上部が開放可能になっている(後述するように、該車両窓の上部が例えば15cm~25cmほど開く「下降窓」構造になっている)。
【0022】
本発明では、十分な強度を有する金属フレームに合成樹脂またはガラス製で板状の透明材料を保持させることにより、鉄道車両同士のすれ違い時およびトンネル通過時の風圧ならびに洗車機等による機械的作用に耐えうる、十分な強度を持たせたものである。ここで透明材料が板状であるとは、透明材料が平坦面(フラット面)の形状を有する場合のみならず、やや湾曲した湾曲面の形状を有する場合も含む。
【0023】
鉄道車両の強度には法的規制がなく強度設計は各車両メーカーのノウハウとなっている。公開されている情報のひとつとして、前田による新幹線車両の空力研究の報告(「空気力学における解析技術」, 第17回鉄道総研講演会, Nov (2004))が挙げられ、すれ違う2 列車にかかる風圧・衝撃力についての記述がある。
【0024】
すなわち、「自列車が対向列車から受ける空気力学的な力として、先頭部通過時に正負のパルス状の圧力変動を、尾部通過時に負正のパルス状の圧力変動を受ける。パルス状のピーク値の大きさは先頭部・後尾部形状に依存し、対向列車の速度の2乗に比例し、パルスの時間幅は対向列車と自列車の速度の和に比例する」と述べられている。
【0025】
パルス状の圧力の大きさとして、自列車速度0km/h 、対向列車速度260km/h において凡そ+0.5kPa 、-1.0kPa の圧力変動が図示されている。
【0026】
この圧力変動は対向列車の速度は260km/h のまま、自列車速度210km/h とした場合も変わらない。
【0027】
JRおよび私鉄の通勤電車においては、速度は最大でも120km/h 以下と見込まれるので、通勤列車同士のすれ違い時の圧力変動は((120/260)“2) 倍となり、圧力変動は凡そ+0.11kPa 、-0.21kPaと計算される。
【0028】
ただし、通勤電車の先頭車両は「ずん切り」形状が多く、ここで計算される数値よりもやや大きくなると考えられる。
【0029】
一方、透明材料(合成樹脂またはガラス製で板状の透明窓材)にかかる衝撃力については、JIS R3213 「鉄道車両用安全ガラス」の規格があり、この中で車両窓の耐衝撃性の試験法と合否判定基準が記されており、この試験に合格することが前提となる。
【0030】
鉄道車両窓枠に沿うような形状を有する金属フレーム材料としては、アルミニウムやステンレス鋼が好適であるが、鉄材、真鍮材なども使用でき、意匠性と強度、加工性、重量などの特性において最適なものが選択可能である。
【0031】
十分な強度を確保するため、金属フレームおよび車内側へ内向きに延びる内向き金属部材に用いる金属材料は十分な厚みを有することが望ましいが、荷重との関係から、アルミニウム材であれば肉厚2 ~5mm が望ましく、ステンレス材であれば肉厚1 ~3mm が望ましい。リブや、折り目、ビードなどを設けることで補強することも可能である。
【0032】
そして、鉄道車両用雨除けバイザーの寸法を車両限界以下とするため該金属フレームは車両窓枠の中に納まるよう車両窓枠より小さくなるよう設計される。
【0033】
また、前記透明材料を用いるのは客車からの眺めを妨げないためである。強化ガラス、合わせガラスなどの他、ポリカーボネート、塩化ビニルなどの樹脂板も使用可能である。また、色調は無色透明のみならず、グレー色、スモーク色、ブロンズ色、ブルー色、グリーン色など透視性を妨げない程度に着色された素材を用いることもできるし、赤外光や紫外光に対する遮蔽効果を持たせることも可能である。また、熱線あるいは紫外線などを反射・吸収する機能を有する膜を表面に直接成膜したり、それらの機能を有するフィルムを表面に貼り付けることも可能である。強度を確保するため、強化ガラスでは厚み3 ~5mm 、合わせガラスでは、中間膜を含め厚み6 ~8mm 、ポリカーボネート、塩化ビニルでは厚み3 ~8mm とするのが望ましい。ただし、長期間の屋外使用に耐えられるよう、樹脂材料の場合は高耐侯性のグレードのものが望ましく、また、車両の火災対策上、鉄道車両用材料の燃焼性規格において「不燃性」を示すものが望ましい。
【0034】
なお、金属フレームへの透明材料のはめ込みは金属フレームに予めチャンネル形状をもたせ、そこに透明材料を挿入する方法をとってもいいし、同形状の2枚のフレームの間に透明材料を挟み込む方法をとってもいい。固定方法としては建築用途あるいは鉄道車両用途で用いられる窓枠とガラス等透明材料との接合方法、例えばシリコンシーラント、ブチルシーラント等による接着、グレージングチャンネンルの挿入嵌めこみ等を流用できる。さらに取付け強度を確保するため、透明材料に予め取付け穴をあけておき、これにボルトを通すなどして金属フレームとの接合をより強固にすることも可能であるが、取付け方法はこれらに限定されるものではない。
【0035】
本発明の鉄道車両用雨除けバイザーの寸法については前述の通り、鉄道車両窓枠の上部に取付けられるバイザー全体が窓枠内に収まり、窓枠の外縁部より車外側に突出することなく、車両限界に納まる寸法とすべきである。すなわち、バイザーの横幅は窓枠と同じか、窓枠の幅より小さめ(例えば2mm ~5mm ほど)に設計することが望ましい。これは窓枠との隙間が大きいと、取付け時にガタが生ずるほか、雨水の侵入を許す恐れがあるためである。
【0036】
また、内向き金属部材の車内側(内向き)への張り出し寸法については、窓枠と同等か、やや小さめにすることが望ましい。これは前記内向き金属部材が窓枠寸法より長いと、鉄道車両の車両窓(窓ガラス)に突き当たったり、窓ガラスの昇降レールにかかり、昇降の妨げとなるからである。
【0037】
一方、本発明の鉄道車両用雨除けバイザーの縦寸(長さ)は、通常の走行で車両窓が引き下げられる長さが望ましい。これは前記バイザーが窓の開口面積を覆っていないと雨天走行時に雨水が侵入する恐れがあるためである。
【0038】
JRや私鉄各線では、日常の運行において「下降窓」を15cm~25cm(窓枠上部から、窓ガラス上端までの距離)ほど引き下げて走行していることから、本発明の鉄道車両用雨除けバイザーの縦寸もこの長さに合うよう設計すべきである。前記バイザーの縦寸法をさらに長くすることもできるが、バイザー本体の重量が増す上、意匠的にも鈍重な印象になり好ましくない。「下降窓」のガラス窓の可動範囲は鉄道車両によりまちまちであるが、一般的には30cm~50cmと考えられる。前記バイザーの縦寸法をこの半分程度に収めることで、晴天時に急速に空気を入れ替えたい場合などに、前記バイザーの縦寸法よりも広く窓を開けることで、前記バイザーに覆われない開口面積が確保でき、風が直接吹き込むため換気性が増し好適である。さらに、停電事故や故障停止などの非常時にも、ガラス窓を最大限引き下げることで、車両の内外間で飲料水のボトルや工具などを、前記バイザーに遮られることなく受け渡すことが可能となる。
【0039】
ところで、十分な耐衝撃性をもった前記透明材料を使用し、十分な強度をもった前記金属フレームを製作しても、取付け強度が低いと、風圧や機械的な力がかかることで窓枠から外れる恐れがあり、また耐久性の高い取付け方法でなければ、長期にわたり取付け強度を維持できない。
【0040】
本発明の請求項2に記載の鉄道車両用雨除けバイザーは、内向きに延びる前記内向き金属部材が鉄道車両窓枠に沿った形状で、ボルト貫通用の穴を有し、鉄道車両窓枠にフィットさせた上で、鉄道車両窓枠にボルト留めが可能としてある。
【0041】
すなわち、本発明の請求項2に記載の鉄道車両用雨除けバイザーは窓枠の形状に一致した内向き金属部材を有し、これが金属フレームから内向きに伸びており、該内向き金属部材を車両窓枠に沿わせ、全周に例えばアクリルフォームテープを配し、車両窓枠に接着される(
図2参照)。
【0042】
該アクリルフォームテープは前記バイザーを定位置に保持固定する役割とともに、前記バイザーと窓枠との隙間を埋め、水の侵入を防止する役割も果たす。
【0043】
さらに取付け強度を確保するため、前記バイザーは、ボルト、インプルナット、リベット等で窓枠に固定されることを特長としている。
【0044】
一方、本発明の請求項3に記載の鉄道車両用雨除けバイザーは、前記金属フレームまたは内向きに延びる前記内向き金属部材にブラケットを取付けることで鉄道車両窓枠に取付け可能としてある。
【0045】
すなわち、本発明の請求項3に記載の鉄道車両用雨除けバイザーでは、請求項2記載の金属フレームから延びる前記内向き金属部材の延長線上に取付け金具を有する、または前記内向き金属部材に代えて取付け金具を有するものである。これらの金具を介して、ボルト、インプルナット、リベットなどの固定具により、前記バイザーを車両窓枠により強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、鉄道車両の車両限界を超えることなく、鉄道車両窓枠の上部に鉄道車両用雨除けバイザーを取り付けることができる。すなわち、客車側面窓に鉄道車両用雨除けバイザーを取り付けることができ、これにより客車側面窓を閉めることなく、窓を開けたまま走行することで、降雨時でも車内の換気が可能となり、鉄道車両内での新型コロナやインフルエンザ等のウイルスや細菌等による感染の拡大の防止に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】上記実施形態における鉄道車両用雨除けバイザーの鉄道車両窓枠への取り付け状態の一例を示す構成説明図である。
【
図3】上記実施形態における鉄道車両用雨除けバイザーの鉄道車両窓枠への別の取り付け状態を示す構成説明図である。
【
図4】上記実施形態における鉄道車両用雨除けバイザーの鉄道車両窓枠への更に別の取り付け状態を示す構成説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図6】上記第2の実施形態における鉄道車両用雨除けバイザーの鉄道車両窓枠への取り付け状態の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の鉄道車両用雨除けバイザーの実寸の1/3 サイズの模型窓と模型バイザーを用いて取付け効果(雨水侵入防止効果および換気効果)を比較検証して示す表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に本発明の実施形態となる鉄道車両用バイザーについて、図面をもとに説明する。なお、それによって本発明は限定されるものではない。
【0049】
《実施例1》
図1に本発明の鉄道用車両バイザーDの一例を示す。ここで、1は金属フレーム、2は内側に伸びる内向き金属部材を示す。3は透明材料である。Sは金属フレーム1および内向き金属部材2を接合する接合部材である。ここでは金属フレーム1および内向き金属部材2に厚み3mm のアルミ材を用い、透明材料3には厚み5mm の強化ガラス板を用いた。左右上端部のR 径は窓枠に沿うように設計されるものであるが、ここではR120mmの窓枠に合わせた。車両窓の幅が990mm であったため、前記バイザーDの横幅寸法はこれよりも5mm 小さく設定した。内向き金属部材2の車内側への張り出し寸法は窓枠の奥行と等しくした。また、前記バイザーDの縦寸法は200mm とした。
【0050】
この場合、金属フレーム1を含めた透明板3の面積は約1900cm2(0.19m2)と計算される。この面積にかかるすれ違い時のパルス状圧力変動は、自列車、対向列車の速度が各120km/h のときに+0.11kPa,-0.21kPaであるとすると、
+0.11kPa*0.19m2=110N/m2*0.19m2=21N =21N/9.8 =2.1kgf
-0.21kPa*0.19m2=-210N/m2*0.19m2 =-40N=-40N/9.8=-4.1kgf
のように計算される。
【0051】
そして、代表的な通勤電車の客車窓の窓枠4にバイザーDを取り付けた状態を
図2に示す。
図2に示すように、前記バイザーDは、車両窓枠4の形状に一致した内向き金属部材2を有し、これが金属フレーム1から内向きに伸びており、該内向き金属部材2を車両窓枠4に沿わせ、全周にアクリルフォームテープを配し、車両窓枠4に接着される。ここで、窓枠4端部と前記バイザーDは面一になっている。
【0052】
また
図3は、バイザーDを取付けた窓枠4を車内の左下側から俯瞰した図で、バイザーDをその内向き金属部材2を介して窓枠4にボルト留めした様子を示したものである。窓枠4への取付には直径6mmのボルトを用い、同じねじ穴を窓枠4にタップ加工して取り付けた。ここで、窓枠4端部と前記バイザーDは面一になっている。ただし、この
図3では、窓枠4への取付け構造を明確に示すため、車内側の壁面パネルは省略して描かれている。
【0053】
ここで、窓枠の傾きは12度であったため、内向き金属部材と金属フレームとのなす角も12度としている。
【0054】
そして、取付け強度を確認するため、デジタルフォースゲージを用いてフレーム部分に圧子を押し当てプッシュテストを行った。
【0055】
20kgf の荷重(衝撃荷重として約200kgf/s)をかけたがバイザーDは取り付け部分からずれたり、外れたりしなかった。
【0056】
また、窓の内側からも同様に、バイザーDのフレーム部分にデジタルフォースゲージの圧子を押し当て外側に向けてプッシュテストを行った。
【0057】
20kgf の荷重(衝撃荷重として約200kgf/s)をかけたがバイザーDは取り付け部分からずれたり、外れたりすることはなかった。
【0058】
また
図4は、透明板材をバイザーの金属サッシにボルト留めしたものを示している。すなわち、透明材料3として厚さ5mm のスモーク色のポリカーボネート板を用い、ポリカーボネート板には金属フレーム1への取付け部分に貫通穴を複数個開け、金属フレーム1にボルト留めしたものを
図4は示している。
【0059】
《実施例2》
本発明の鉄道車両用雨除けバイザーDの別実施例を
図5、
図6に示す。この別実施例として、金属フレーム1と内向き金属部材2に厚さ2mm のステンレス鋼を用い、透明材料3として厚さ5mm のスモーク色のポリカーボネート板を用いた。国土交通省の不燃性認定品で、可視光透過率は約35% であった。
【0060】
また、該ポリカーボネート板材3単体で、JIS R3213 「鉄道車両用安全ガラス」の強化ガラスの耐衝撃性試験に適合することを確認している。
【0061】
ここでポリカーボネート板3は下部に切り欠き5を設け、風圧がかかる面積の低減をはかるとともに換気効果の向上をはかっている。
【0062】
また、
図6に示すポリカーボネート板3には金属フレーム1への取付け部分に貫通穴を複数個開けてあり、金属フレーム1にボルト留めした。
【0063】
そして、窓枠4への内向き金属部材2を介しての取付け方法は実施例1と同様に直径6mm のボルトを用いてもよく、また、同径のインプルナットを用いて取付けてもよい。
【0064】
取付け強度を確認するため、デジタルフォースゲージを用いてフレーム部分に圧子を押し当てプッシュテストを行った。
【0065】
20kgf の荷重(衝撃荷重として約200kgf/s)をかけたがバイザーは取り付け部分からずれたり、外れたりしなかった。
【0066】
また、窓の内側からも同様に、バイザーのフレーム部分にデジタルフォースゲージの圧子を押し当て外側に向けてプッシュテストを行った。
【0067】
20kgf の荷重(衝撃荷重として約200kgf/s)をかけたがバイザーは取り付け部分からずれたり、外れたりすることはなかった。
【0068】
《実施例3》
本発明の鉄道車両用雨除けバイザーDの更に別の例として、実施例2で述べたバイザーと材質や構成はほぼ同じであるが、
図7に示す通り、内向き金属部材2のR 部分からステー6,6が伸びて鍵の手に外側に曲がり、車両窓枠の裏側に回り込み、ブラケットとして窓枠裏にボルト固定される構造のものを示す。該バイザーDと窓枠との固定はアクリルフォームテープの他、該ブラケットのみで行ってもよいし、実施例1で述べた、内向き金属部材2にボルト穴を開けて、窓枠正面に直接ボルト固定する方法と併用することもできる。
【0069】
《バイザーの取付け効果の検証》
バイザーDによる雨滴の侵入防止効果、並びに換気効果を確認するため、実施例1に準じ、約1/3 サイズの模型バイザーを作成した。フレームおよび内向き金属部材には厚さ0.5mm のステンレス鋼材を用い、透明窓には厚み1.5mm のポリカーボネート板をはめ込んだ。
【0070】
模型バイザーの寸法に合わせ、取り付け用の模型窓を製作した。これを貨物自動車(パネルバン)の窓に装着して、速度40km/h乃至60km/hで雨天走行試験を行った。
【0071】
模型窓は木製で内側に厚さ2mm の透明樹脂板を取り付け、上下にスライドさせることで窓の開口面積を調節し、種々の開口面積での雨滴の侵入と走行に伴う風速を計測した。
【0072】
雨滴の侵入は模型窓面から10cm内側までの範囲への雨滴の付着数で求めた。計測時間は30秒間とし、バイザーを取り付けた場合と取り付けない場合で比較した。
【0073】
また、風速は模型窓の内側のバイザー後端部分(風下側)に風速計を保持して計測した。その結果を
図8の表-1に示す。
【0074】
それぞれ実寸の1/3 サイズの模型窓と模型バイザーであったが、取付け効果を比較検証するには十分であると判断された。
【0075】
表-1の結果から雨水の侵入を防止しながら、換気ができる効果が確認できた。
【符号の説明】
【0076】
1:金属フレーム
2:内向き金属部材
3:透明材料
D:鉄道車両用雨除けバイザー