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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134897
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20220908BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20220908BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20220908BHJP
   F16C 43/06 20060101ALI20220908BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20220908BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20220908BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16C19/36
F16C33/58
F16C43/06
F16C35/067
F16J15/3232 201
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034378
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】桃井 直生
【テーマコード(参考)】
3J006
3J027
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE14
3J006AE40
3J027FA18
3J027GC02
3J027GC24
3J027GE25
3J117HA03
3J701AA13
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA54
3J701BA57
3J701FA15
3J701FA46
3J701FA53
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】製造時の不具合の発生を抑制することが可能な歯車装置及び歯車装置の製造方法を提供する。
【解決手段】歯車装置1は、ケース2と、キャリア3及びクランク軸42と、第1主軸受5及び第2主軸受6と、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44と、を備える。第1主軸受5及び第2主軸受6はケース2とキャリア3との間に配置される。第1主軸受5及び第2主軸受6は、インナーレース52,62と、アウターレース51,61と、複数のころ53,63と、保持器54,64とを備える。ころ53,63は、キャリア3の軸線Oに対して傾いた中心軸線R1,R2の軸周りに回転する。アウターレース51,61は、外輪軌道面51a,61aの大径側端部で径方向内方に突出するとともにころ53,63の中心軸線R1,R2の移動を規制する鍔部51b,61bを備える。鍔部51b,61bは複数のころ53,63を支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースの内部に配置される軸部及び入力軸と、
前記ケース又は前記軸部のいずれか一方に、前記入力軸の回転を伝達する歯車機構と、
前記ケースと前記軸部との間に配置され、前記ケースに対して前記軸部を回転自在に支持する軸受と、
を備え、
前記軸受は、
前記軸部に設けられるインナーレースと、
前記ケースに設けられるアウターレースと、
前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されるとともに、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体と、
前記複数の転動体を保持する保持器と、
を備え、
前記アウターレースは、内周面の大径側端部で径方向内方に突出するとともに前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部を備える
歯車装置。
【請求項2】
前記軸部の軸線方向で前記軸受よりも外方に配置されるとともに前記ケースと前記軸部との間をシールするシール部を備える
請求項1に記載の歯車装置。
【請求項3】
前記転動体は、外形が円すい台形の円すいころであり、前記転動体の軸線方向両端のうち、大径側の端部を径方向外側に向けて配置されている
請求項1又は請求項2に記載の歯車装置。
【請求項4】
前記転動体は、外形が円柱状の円筒ころである
請求項1又は請求項2に記載の歯車装置。
【請求項5】
前記入力軸は、前記軸部の軸線から径方向にずれた偏心軸線を有し、前記偏心軸線に対して偏心している偏心部が設けられた複数のクランク軸であり、
前記歯車機構は、前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転する揺動歯車である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の歯車装置。
【請求項6】
前記入力軸は、前記軸部の軸線と同軸上に配置され、前記軸部の軸線に対して偏心している偏心部を有し、
前記歯車機構は、前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転する揺動歯車である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の歯車装置。
【請求項7】
ケースと、
前記ケースの内部に配置される軸部と、
前記ケースの内部に配置され、前記軸部の軸線から径方向にずれた偏心軸線を有するとともに前記偏心軸線に対して偏心している偏心部が設けられた複数のクランク軸と、
前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転し、前記クランク軸に入力される回転を前記ケース又は前記軸部のいずれか一方に伝達する複数の揺動歯車と、
前記ケースと前記軸部との間に配置され、前記ケースに対して前記軸部を回転自在に支持する軸受と、
を備え、
前記軸受は、
前記軸部に設けられるインナーレースと、
前記ケースに設けられるアウターレースと、
前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されるとともに、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体と、
前記複数の転動体を保持する保持器と、
を備え、
前記アウターレースは、内周面の大径側端部で径方向内方に突出するとともに前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部を備える
歯車装置。
【請求項8】
ケースに軸部を回転自在に支持するための軸受のアウターレースを、前記ケースに取り付けるアウターレース取り付け工程と、
前記軸受のインナーレースを、前記軸部に取り付けるインナーレース取り付け工程と、
前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体、及び前記複数の転動体を保持する保持器を、前記アウターレースの内周面と前記内周面の大径側端部で径方向内方に突出形成され前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部とに装着する第1装着工程と、
前記第1装着工程後に、前記ケース又は前記軸部のいずれか一方を、他方に対して前記軸部の軸線に沿って移動させ、前記インナーレースの外周面に前記転動体を装着する第2装着工程と、
を有する
歯車装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車装置及び歯車装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケースに軸受を介して軸部が回転自在に設けられた歯車装置では、軸受として、重荷重や衝撃荷重がかかる用途に適した円すいころ軸受を採用する場合がある。円すいころ軸受は、インナーレースと、アウターレースと、インナーレースとアウターレースとの間に配置された複数の円筒ころと、を備える。円筒ころは円柱状であり、その軸線は軸部の軸線に対して傾いている。
ここで、インナーレースの外周面のうち、大径側端部に鍔部を備える円すいころ軸受が知られている(例えば、特許文献1参照)。鍔部によって、円筒ころの軸線方向の移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-4659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の従来技術に係る歯車装置の組み立て方法では、まず、円すいころ軸受の外輪(アウターレース)をケースに装着する。次に、複数の円筒ころ及び保持器(リテーナ)を外輪の内周面の外輪軌道面に装着する。次に、シールをケースに装着する。そして、内輪(インナーレース)が装着されたキャリアの基部を軸方向に沿ってケースに接近させて、内輪の外周面の内輪軌道面を複数のころ及び保持器に装着する。
【0005】
このような組み立て方法となるので、内輪を複数のころ及び保持器に装着する際に、外輪に装着された複数のころ及び保持器の位置ずれが生じると、外輪及び内輪の不適切な部位による円筒ころ及び保持器の噛み込み等の不具合が生じる可能性があった。
【0006】
本発明は、製造時の不具合の発生を抑制することが可能な歯車装置及び歯車装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る歯車装置は、ケースと、前記ケースの内部に配置される軸部及び入力軸と、前記ケース又は前記軸部のいずれか一方に、前記入力軸の回転を伝達する歯車機構と、前記ケースと前記軸部との間に配置され、前記ケースに対して前記軸部を回転自在に支持する軸受と、を備え、前記軸受は、前記軸部に設けられるインナーレースと、前記ケースに設けられるアウターレースと、前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されるとともに、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する保持器と、を備え、前記アウターレースは、内周面の大径側端部で径方向内方に突出するとともに前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部を備える。
【0008】
このように、ケース又は軸部のいずれか一方に、入力軸の回転を伝達する歯車機構を備えた歯車装置では、上記のように構成することで、アウターレースの鍔部によって複数の転動体の位置を規制することができる。このため、インナーレースを装着する際に複数の転動体の位置ずれが生じることを抑制し、歯車装置を容易に組み立てることができる。
【0009】
上記構成で、前記軸部の軸線方向で前記軸受よりも外方に配置されるとともに前記ケースと前記軸部との間をシールするシール部を備えてもよい。
【0010】
上記構成で、前記転動体は、外形が円すい台形の円すいころであり、前記転動体の軸線方向両端のうち、大径側の端部を径方向外側に向けて配置されていてもよい。
【0011】
上記構成で、前記転動体は、外形が円柱状の円筒ころでもよい。
【0012】
上記構成で、前記入力軸は、前記軸部の軸線から径方向にずれた偏心軸線を有し、前記偏心軸線に対して偏心している偏心部が設けられた複数のクランク軸であり、前記歯車機構は、前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転する揺動歯車であってもよい。
【0013】
上記構成で、前記入力軸は、前記軸部の軸線と同軸上に配置され、前記軸部の軸線に対して偏心している偏心部を有し、前記歯車機構は、前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転する揺動歯車であってもよい。
【0014】
本発明の他の態様に係る歯車装置は、ケースと、前記ケースの内部に配置される軸部と、前記ケースの内部に配置され、前記軸部の軸線から径方向にずれた偏心軸線を有するとともに前記偏心軸線に対して偏心している偏心部が設けられた複数のクランク軸と、前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転し、前記クランク軸に入力される回転を前記ケース又は前記軸部のいずれか一方に伝達する複数の揺動歯車と、前記ケースと前記軸部との間に配置され、前記ケースに対して前記軸部を回転自在に支持する軸受と、を備え、前記軸受は、前記軸部に設けられるインナーレースと、前記ケースに設けられるアウターレースと、前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されるとともに、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する保持器と、を備え、前記アウターレースは、内周面の大径側端部で径方向内方に突出するとともに前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部を備える。
【0015】
このように、偏心部が設けられた複数のクランク軸と、偏心部の回転に連動して揺動回転し、クランク軸に入力される回転をケース又は軸部のいずれか一方に伝達する複数の揺動歯車と、を備えた歯車装置では、上記のように構成することで、アウターレースの鍔部によって複数の転動体の位置を規制することができる。このため、インナーレースを装着する際に複数の転動体の位置ずれが生じることを抑制し、歯車装置を容易に組み立てることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る歯車装置の製造方法は、ケースに軸部を回転自在に支持するための軸受のアウターレースを、前記ケースに取り付けるアウターレース取り付け工程と、前記軸受のインナーレースを、前記軸部に取り付けるインナーレース取り付け工程と、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体、及び前記複数の転動体を保持する保持器を、前記アウターレースの内周面と前記内周面の大径側端部で径方向内方に突出形成され前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部とに装着する第1装着工程と、前記第1装着工程後に、前記ケース又は前記軸部のいずれか一方を、他方に対して前記軸部の軸線に沿って移動させ、前記インナーレースの外周面に前記転動体を装着する第2装着工程と、を有する。
【0017】
このような製造することで、アウターレースの鍔部によって複数の転動体の位置を規制した後にインナーレースを装着することにより、複数の転動体の位置ずれが生じることを抑制できる。このため、アウターレースとインナーレースとによる転動体の噛み込み等の不具合の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の転動体の位置ずれが生じることを抑制し、歯車装置を容易に組み立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る歯車装置の断面図の一部を示す図。
図2図1に示す歯車装置の断面の一部を拡大して示す図。
図3】本発明の実施形態に係る歯車装置の製造方法を示す図。
図4】本発明の実施形態に係る歯車装置の製造方法を示す図。
図5】本発明の実施形態の比較例に係る歯車装置の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る歯車装置及び歯車装置の製造方法について添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
<歯車装置>
図1は、実施形態に係る歯車装置1の断面図の一部を示す図である。図2は、図1に示す歯車装置1の断面の一部を拡大して示す図である。
図1及び図2に示すように、歯車装置1は、例えば偏心揺動型の歯車伝動装置である。歯車装置1は、ケース2と、ケース2に対して回転自在に設けられたキャリア(請求項における軸部の一例)3と、ケース2又はキャリア3に図示しない駆動源の回転を減速して伝達する減速機構4と、ケース2にキャリア3を回転自在に支持する第1主軸受(請求項における軸受の一例)5及び第2主軸受(請求項における軸受の一例)6と、ケース2とキャリア3との間をシールするシール部7と、を備える。
【0022】
ケース2は、例えばモータ等の駆動源を収容するハウジング(図示しない)に固定されている。ケース2の外形は、例えば軸線Oを中心とする円筒状等である。ケース2の内周面11は、複数のピン溝12aが形成された内歯部12と、各主軸受5,6のアウターレース51,61を保持する第1アウターレース保持部13及び第2アウターレース保持部14と、ケース側シール部15と、を備える。
なお、以下の説明では、軸線O方向と平行な方向を軸方向と称し、キャリア3の回転方向を周方向と称し、軸方向及び周方向に直交するキャリア3の径方向を単に径方向と称する。
【0023】
内歯部12は、ケース2の内周面11における軸方向両端(図1中、上側の第1端11a及び図1中、下側の第2端11b)の間に形成されている。複数のピン溝12aの各々は、軸方向に延びている。複数のピン溝12aは、周方向に等間隔に形成されている。各ピン溝12aは、内歯ピン16を保持する。
【0024】
第1アウターレース保持部13及び第2アウターレース保持部14は、軸方向における内歯部12の両側に隣接している。第1アウターレース保持部13及び第2アウターレース保持部14は、内歯部12のピン溝12aの底部よりも径方向外方に設けられている。例えば、第2アウターレース保持部14は、ケース2の内周面11における第2端11b側の端部を含む。
【0025】
第1アウターレース保持部13は、内歯部12の第1端11a側の端から径方向外方に向かって延びる円環状の第1段差面13aと、第1段差面13aの外周側端から軸方向外方に向かって延びる円環状の第1周面13bと、を備える。
第2アウターレース保持部14は、内歯部12の軸方向両端のうちの第2端11b側の端から径方向外方に向かって延びる円環状の第2段差面14aと、第2段差面14aの外周側端から軸方向外方に向かって延びる円環状の第2周面14bと、を備える。
【0026】
例えば、第1段差面13aの径方向の長さと第2段差面14aの径方向の長さとは、同一である。第1周面13bの内径(軸線Oを中心とする直径)と第2周面14bの内径(軸線Oを中心とする直径)とは、同一である。
第1アウターレース保持部13は、後述する第1主軸受5のアウターレース51(図2参照)を保持する。第2アウターレース保持部14は、後述する第2主軸受6のアウターレース61を保持する。
【0027】
ケース側シール部15は、第1アウターレース保持部13よりも第1端11a側に設けられ、軸方向で第1アウターレース保持部13に隣接している。ケース側シール部15の内径(軸線Oを中心とする直径)は、例えば、第1アウターレース保持部13の第1周面13bの内径(軸線Oを中心とする直径)と同一である。例えば、ケース側シール部15は、ケース2の内周面11の第1端11a側の端部を含む。ケース側シール部15は、シール部7を保持する。
【0028】
キャリア3は、被駆動部(図示しない)に接続される。キャリア3は、ケース2の内側に挿入されている。キャリア3の軸方向両端(第1端3a及び第2端3b)は、ケース2から軸方向両側に突出している。
キャリア3は、軸方向に並ぶ第1ブロック20と、第2ブロック21と、を備える。
なお、以下の説明では、キャリア3の軸方向両端のうち、第1ブロック20側の端部を第1端3aとし、第2ブロック21側の端部を第2端3bとして説明する。キャリア3の第1端3aの方向とケース2の第1端11aの方向とは一致している。また、キャリア3の第2端3bの方向とケース2の第2端11bの方向とは一致している。
【0029】
第1ブロック20は、第1主軸受5を介してケース2に支持された基部22と、基部22に一体成形された複数の支柱部23及びフランジ部24と、を備える。基部22の外形は、例えば軸線Oを中心とする円板状等である。
複数の支柱部23は、基部22の第2端3b側の端面から軸方向に突出している。複数の支柱部23は、基部22の第2端3b側の端面上で周方向に等間隔に配置されている。複数の支柱部23は、後述する第1揺動歯車(請求項における揺動歯車の一例)43及び第2揺動歯車(請求項における揺動歯車の一例)44の各々に形成された複数の貫通孔47に遊びを持った状態で挿入されることによって、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44を支持する。
【0030】
フランジ部24の外形は、例えば軸線Oを中心として基部22よりも径方向外方に突出する円板状等である。フランジ部24は、基部22の第1端3a側の端部に設けられている。フランジ部24は、軸方向から見てケース2の第1端11a側の端部に重なっている。
フランジ部24の第1端3a側の端面24aは、被駆動部(図示しない)が装着される装着面である。
【0031】
第2ブロック21の外形は、例えば軸線Oを中心とする円板状等である。第2ブロックは、複数の支柱部23の先端に締結部材(図示しない)によって固定されている。
キャリア3は、後述する第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44の揺動回転に伴って軸線Oの軸周りにケース2に対して回転する。
【0032】
基部22の外周面25は、第1インナーレース保持部26と、第1インナーレース保持部26よりも第1端3a側(軸方向外側)に設けられたキャリア側シール部27と、を備える。
第1インナーレース保持部26は、基部22の外周面25における第2端3b側の端部に設けられている。第1インナーレース保持部26は、基部22の第2端3b側の端から第1端3a側(軸方向外側)に向かって延びる円環状の第1周面26aと、第1周面26aの軸方向外側端から径方向外方に向かって延びる円環状の第1段差面26bと、を備える。第1インナーレース保持部26の第1周面26aの少なくとも一部は、第1アウターレース保持部13の第1周面13bに径方向で向かい合っている。
【0033】
キャリア側シール部27は、軸方向で第1インナーレース保持部26に隣接している。キャリア側シール部27は、基部22の外周面25における第1端3a側の端部に設けられている。キャリア側シール部27の外径(軸線Oを中心とする直径)は、例えば、第1インナーレース保持部26の第1周面26aの外径(軸線Oを中心とする直径)よりも大きい。キャリア側シール部27は、ケース2のケース側シール部15に径方向で向かい合っている。キャリア側シール部27は、シール部7を保持する。
【0034】
第2ブロック21は、第2主軸受6を介してケース2に支持されている。第2ブロック21の外周面28には、第2インナーレース保持部29が設けられている。より詳しくは、第2インナーレース保持部29は、第2ブロック21の外周面28における第1端3a側の端部に設けられている。
【0035】
第2インナーレース保持部29は、第2ブロック21の第1端3a側の端から第2端3b側(軸方向外側)に向かって延びる円環状の第2周面29aと、第2周面29aの軸方向外側端から径方向外方に向かって延びる円環状の第2段差面29bと、を備える。第2インナーレース保持部29の第2周面29aの少なくとも一部は、第2アウターレース保持部14の第2周面14bに径方向で向かい合っている。
【0036】
例えば、第1周面26aの外径(軸線Oを中心とする直径)と第2周面29aの外径(軸線Oを中心とする直径)とは、同一である。第1段差面26bの径方向の長さと第2段差面29bの径方向の長さとは、同一である。
第1インナーレース保持部26は、後述する第1主軸受5のインナーレース52(図2参照)を保持する。第2インナーレース保持部29は、後述する第2主軸受6のアウターレース61を保持する。
【0037】
<減速機構>
減速機構4は、例えば軸線Oと同軸上に配置され、図示しない駆動源に連結された駆動シャフト70と、駆動シャフト70の駆動ギア70aに噛み合う複数の伝達ギア41と、複数の伝達ギア41に連結される複数のクランク軸42と、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44と、を備える。
複数の伝達ギア41及び複数のクランク軸42の中心軸線Pは、軸線Oの軸周りの周方向に等間隔の位置で軸線Oに平行である。
【0038】
各クランク軸42は、キャリア3に支持される軸部42aと、軸部42aに設けられ中心軸線Pに対して偏心している2つの偏心部42bと、を備える。各クランク軸42の軸部42aは、キャリア3(第1ブロック20及び第2ブロック21)に形成された図示しない貫通孔に一対の軸受45を介して挿入されている。各クランク軸42の2つの偏心部42bは、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44の各々に形成された図示しない貫通孔に各軸受46を介して挿入されている。第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44は、各クランク軸42の2つの偏心部42bの相対回転に連動して揺動回転することにより、ケース2とキャリア3とを相対的に回転させる。
【0039】
第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44の各々の外形は、例えば、ケース2の内歯部12の内径よりも小さい外径を有する円板状等である。第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44の各々には、複数の支柱部23と同数の貫通孔47が形成されている。各貫通孔47には、各支柱部23が挿入されている。各貫通孔47の内径は、各支柱部23が第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44の揺動回転を妨げないように、各支柱部23の外径よりも大きい。
【0040】
第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44の各々の外周面は、ケース2の内歯部12の複数の内歯ピン16に噛み合う外歯48を備える。複数の内歯ピン16の個数と外歯48の歯数とは異なる。第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44は、入力軸の回転駆動力を受ける各クランク軸42の回転に伴って偏心部42bとともに偏心運動する。これにより、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44は、ケース2の複数の内歯ピン19の一部に外歯48を噛み合わせながら揺動回転する。
【0041】
ここで、図示しない被固定部材にケース2を固定した場合、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44は、キャリア3とともにケース2に対して軸線Oの軸周りに回転する。一方、図示しない被固定部材にキャリア3を固定した場合、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44は、ケース2とともにキャリア3に対して軸線Oの軸周りに回転する。
【0042】
<主軸受>
第1主軸受5及び第2主軸受6は、例えば円すいころ軸受である。
第1主軸受5は、ケース2とキャリア3の第1ブロック20の基部22との間に配置されている。第1主軸受5は、アウターレース(外輪)51と、アウターレース51の径方向内側に配置されたインナーレース(内輪)52と、アウターレース51とインナーレース52との間に配置された複数のころ(転動体又はローラー)53、及びリテーナ(保持器)54と、を備える。
【0043】
アウターレース51の外形は、軸線Oを中心とする円環状等である。アウターレース51は、ケース2の第1アウターレース保持部13の第1段差面13aに軸方向外側(第1端11a側)から接触するとともに、第1アウターレース保持部13の第1周面13bに嵌め合わされている。アウターレース51は、軸線Oに対して傾斜した内周面である外輪軌道面(請求項における内周面の一例)51aを備える。外輪軌道面51aは、径方向内側及び軸方向外側(第1端11a側)に向いている。
【0044】
アウターレース51は、外輪軌道面51aの大径側端部(軸方向外側である第1端11a側の端部)に径方向内方に突出する鍔部51bを備える。鍔部51bは、各ころ53の端面に接触することによって各ころ53を支持する。より詳しくは、鍔部51bは、各ころ53の中心軸線(請求項における転動体の軸線の一例)R1の移動を規制し、各ころ53の位置を外輪軌道面51a上の所定位置に保持する。
【0045】
インナーレース52の外形は、アウターレース51と同軸の円環状等である。インナーレース52は、第1ブロック20の基部22の第1インナーレース保持部26の第1段差面26bに軸方向内側(第2端3b側)から接触するとともに、第1インナーレース保持部26の第1周面26aに嵌め合わされている。インナーレース52は、軸方向に対して傾斜した外周面である内輪軌道面52aを備える。内輪軌道面52aは、アウターレース51の外輪軌道面51aに向かい合うように、径方向外側及び軸方向内側(第2端3b側)に向いている。
【0046】
各ころ53は、外形が円すい台形の円すいころである。各ころ53の中心軸線R1は、軸方向に対して所定角度で傾いている。各ころ53は、アウターレース51とインナーレース52との間に配置されている。また、各ころ53は、軸方向からみて中心軸線R1が径方向に沿うように、周方向に等間隔に並んでいる。各ころ53は、中心軸線R1方向の両端のうち、大径(下底)53a側を径方向外側に向けて配置されている。各ころ53は、アウターレース51の外輪軌道面51a上及びインナーレース52の内輪軌道面52a上を転動しながら軸線Oの軸周りに周回する。
【0047】
保持器54は、複数のころ53を保持する。保持器54は、周方向に延びる第1環状部55及び第2環状部56と、第1環状部55と第2環状部56とを接続する複数の接続部57と、を備える。
【0048】
第1環状部55は、保持器54の径方向内側の端部に設けられている。第1環状部55は、複数のころ53の第1端面に沿って延びている。
第2環状部56は、第1環状部55よりも軸方向外側及び径方向外側に設けられている。第2環状部56は、複数のころ53の第2端面に沿って延びている。
各接続部57は、軸方向から見て径方向に沿って延びている。複数の接続部57は、周方向に所定の間隔で並んでいる。各接続部57は、アウターレース51の外輪軌道面51aとインナーレース52の内輪軌道面52aとの間を延びて、第1環状部55と第2環状部56とを連結している。
保持器54は、第1環状部55、第2環状部56及び隣り合う一対の接続部57によって囲われた各ポケットに各ころ53を保持している。
【0049】
第2主軸受6は、ケース2とキャリア3の第2ブロック21との間に配置されている。第2主軸受6は、アウターレース(外輪)61と、アウターレース61の径方向内側に配置されたインナーレース(内輪)62と、アウターレース61とインナーレース62との間に配置された複数のころ(転動体又はローラー)63及び、リテーナ(保持器)64と、を備える。例えば、第2主軸受6は実質的に第1主軸受5と同一であることにより、以下では第2主軸受6の説明を省略又は簡略化する。
【0050】
アウターレース61の外形は、軸線Oを中心とする円環状等である。アウターレース61は、ケース2の第2アウターレース保持部14の第2段差面14aに軸方向外側(第2端11b側)から接触するとともに、第2アウターレース保持部14の第2周面14bに嵌め合わされている。アウターレース61は、軸方向に対して傾斜した内周面である外輪軌道面(請求項における内周面の一例)61aを備える。外輪軌道面61aは、径方向内側及び軸方向外側(第2端11b側)に向いている。
アウターレース61は、外輪軌道面61aの大径側端部(軸方向外側である第2端11b側の端部)に径方向内方に突出する鍔部61bを備える。
【0051】
インナーレース62の外形は、アウターレース61と同軸の円環状等である。インナーレース62は、第2ブロック21の第2インナーレース保持部29の第2段差面29bに軸方向内側(第1端3a側)から図示しないスペーサを介して接触するとともに、第2インナーレース保持部29の第2周面29aに嵌め合わされている。インナーレース52は、軸方向に対して傾斜した外周面である内輪軌道面62aを備える。内輪軌道面62aは、アウターレース61の外輪軌道面61aに向かい合うように、径方向外側及び軸方向内側(第1端3a側)に向いている。
【0052】
各ころ63は、外形が円すい台形の円すいころである。各ころ63の中心軸線(請求項における転動体の軸線の一例)R2は、軸方向に対して第1主軸受5の各ころ53とは逆方向に所定角度で傾いている。各ころ63は、アウターレース61とインナーレース62との間に配置されている。各ころ63は、周方向に等間隔に並んでいる。各ころ63は、アウターレース61の外輪軌道面61a上及びインナーレース62の内輪軌道面62a上を転動しながら軸線Oの軸周りに周回する。保持器64は、各ころ63を保持する。
【0053】
シール部7の外形は、例えば円環状等である。シール部7は、軸方向で第1主軸受5よりも外側(第1端3a側)に配置されている。シール部7は、径方向でケース側シール部15とキャリア側シール部27とによって挟み込まれている。シール部7は、ケース2とキャリア3との間に形成される環状空間をシールする。シール部7は、例えば、外部から環状空間に異物が侵入すること及び環状空間に貯留されている液状の潤滑剤が外部に流出することを抑制する。
【0054】
本発明の実施形態による歯車装置1は上記構成を備えており、次に、この歯車装置1の製造方法として、歯車装置1の組み立て方法について説明する。
【0055】
<歯車装置の組み立て方法>
次に、図3図4に基づいて、歯車装置1の組み立て方法について説明する。
図3及び図4は、実施形態に係る歯車装置1の組み立て方法を示す図である。
歯車装置1の組み立て方法について説明するにあたり、第1主軸受5と第2主軸受6との組み立て方法の説明は同様になる。このため、以下の説明では、主に第1主軸受5についての組み立て方法について説明し、第2主軸受6についての組み立て方法については必要に応じて説明する。
【0056】
図3及び図4に示すように、キャリア3をケース2に組み付ける際には、予めケース2に第1主軸受5のアウターレース51、複数のころ53及び保持器54と、シール部7と、を装着する。
まず、図3に示すように、アウターレース51をケース2の第1アウターレース保持部13に装着する(アウターレース取り付け工程)。
【0057】
次に、複数のころ53を保持する保持器54を軸方向外側からアウターレース51に向かってケース2の内側に挿入して、複数のころ53を外輪軌道面51aに接触させるとともに鍔部51bに保持させる(第1装着工程)。これにより、複数のころ53の位置は外輪軌道面51a上の所定位置に規制される。
次に、シール部7を軸方向外側からケース2の内側に挿入して、シール部7をケース側シール部15に装着する。
【0058】
次に、図4に示すように、予め分割されたキャリア3の第1ブロック20及び第2ブロック21のうち第1ブロック20の基部22の第1インナーレース保持部26に第1主軸受5のインナーレース52を装着する(インナーレース取り付け工程)。
【0059】
次に、ケース2を軸方向に沿って第1ブロック20に接近させて、第1ブロック20の基部22をケース2の内側に配置する。これに伴い、ケース2に保持されている複数のころ53をインナーレース52の内輪軌道面52aに接触させるとともに、シール部7を径方向両側からケース側シール部15とキャリア側シール部27とによって挟み込む(第2装着工程)。これにより、インナーレース52の内輪軌道面52aに、複数のころ53と保持器54とが装着されて第1主軸受5の組み立てが完了する。
ここで、ケース2と第1ブロック20との相対移動の際、ケース2に装着されたシール部7と、第1ブロック20の基部22に装着されたインナーレース52とが干渉しないように設定される。
【0060】
同様に、キャリア3の第2ブロック21を軸方向に沿ってケース2の内側に挿入して、第2主軸受6の組み立てが完了する。そして、第2ブロック21を第1ブロック20の複数の支柱部23に固定し、歯車装置1の組み立てが完了する。
【0061】
<歯車装置の比較例>
以下に、上述した各主軸受5,6の作用、効果を説明するために、図5に基づいて、比較例の歯車装置1Aについて説明する。
図5は、実施形態の比較例に係る歯車装置1Aの製造方法の一部を示す図である。
上述した実施形態の歯車装置1と比較例の歯車装置1Aとで異なる点は、第1主軸受5及び第2主軸受6の各々のアウターレース51,61及びインナーレース52,62の形状に関する点、ケース2に対するシール部7の位置及びシール部7の大きさに関する点、である。
【0062】
例えば図5に示すように、比較例の歯車装置1Aは、上述した実施形態のアウターレース51及びインナーレース52の代わりに、アウターレース71及びインナーレース72を備える。比較例のアウターレース71の外形は、実施形態のアウターレース51から鍔部51bを省略して得られる形状に相当する。比較例のインナーレース72の外形は、実施形態のインナーレース52に鍔部72bを追加して得られる形状に相当する。比較例の鍔部72bは、インナーレース72の内輪軌道面72aの大径側端部から径方向外方及び軸方向内方に突出する。
【0063】
比較例のインナーレース72は、実施形態のインナーレース52に比べて、鍔部72bに起因する所定径方向長さΔrだけ径方向外方に突出している。これに伴い、キャリア側シール部27は、所定径方向長さΔrだけ径方向外方にずれる。さらに、例えば上述した製造方法の第5工程のようにシール部7とインナーレース72とが干渉しないように設定されると、シール部7の位置は、実施形態に比べて、所定径方向長さΔrだけ径方向外方にずれた位置になる。
【0064】
つまり、シール部7の径方向の厚さ(幅)が不変であれば、シール部7の内径及び外径が所定径方向長さΔrだけ増大する。この場合、例えばケース2の外周端の位置が実施形態に比べて不変であれば、ケース側シール部15におけるケース2の径方向厚さが実施形態に比べて小さくなる。この分、ケース2の剛性(機械的強度)が低下する。また、例えばケース2の径方向厚さが実施形態に比べて不変であれば、ケース2の外周端の位置が実施形態に比べて径方向外方にずれ、ケース2が大型化する。
【0065】
例えば図5に示す比較例では、実施形態のケース側シール部15におけるケース2の径方向厚さが所定厚さWr(図4参照)であることに比べて、比較例のケース側シール部15におけるケース2の径方向厚さは所定厚さWrよりも所定径方向長さΔrだけ小さく、ケース2の剛性が低下する。
【0066】
上述したように、実施形態の歯車装置1は、各アウターレース51,61の外輪軌道面51a,61aの大径側端部に径方向内方に突出する鍔部51b,61bを備える。このため、歯車装置1を容易に組み立てることができる。
各アウターレース51,61の鍔部51b,61bは、複数のころ53,63を支持することによって外輪軌道面51a,61a上における各ころ53,63の位置を規制する。このため、各アウターレース51,61に支持された複数のころ53,63に各インナーレース52,62を装着する際に各ころ53,63の位置ずれが生じることを抑制することができる。
【0067】
例えば比較例のインナーレース72のように内輪軌道面72aに鍔部72bを備える場合に比べて、実施形態のインナーレース52,62の外径を小さくすることができる。これに伴い、キャリア3のキャリア側シール部27が径方向外方にずれること、つまり、第1ブロック20の基部22の外周面25の外径が増大することを抑制することができる。
【0068】
また、シール部7とインナーレース52とが干渉しないように設定される場合であっても、比較例のインナーレース72のように鍔部72bを備える場合に比べて、シール部7の内径及び外径を小さくすることができる。これに伴い、ケース側シール部15におけるケース2の径方向厚さが小さくなってケース2の剛性が低下することを抑制できる。さらに、ケース2の外周端の位置が径方向外方にずれてケース2が大型化することを抑制できる。これらのような効果を得つつ、歯車装置1の組み立て時に、インナーレース52にシール部7が接触し、シール部7が損傷してしまうことも確実に防止できる。
【0069】
ところで、各ころ53は、軸方向からみて中心軸線R1が径方向に沿うように、周方向に等間隔に並んでいる。そして、各ころ53は、アウターレース51の外輪軌道面51a上及びインナーレース52の内輪軌道面52a上を転動しながら軸線Oの軸周りに周回する。このため、ころ53が1回転だけ転動する間での径方向内側端の移動距離に対し、径方向外側端の移動距離を長くする必要がある。このように構成しないと、ころ53が滑ってこの分主軸受5,6の駆動効率が低下してしまうとともに、ころ53の製品寿命が低下してしまう可能性があるからである。
【0070】
ここで、第1主軸受5及び第2主軸受6の各々は円すいころ軸受であり、各ころ53,63は、外形が円すい台形の円すいころである。そして、各ころ53,63は、中心軸線R1,R2方向の両端のうち、大径(下底)53a側を径方向外側に向けて配置されている。このため、各ころ53の径方向内側端の周長よりも径方向外側端の周長を長くできる。この結果、各ころ53が1回転だけ転動する間での径方向内側端の移動距離に対し、径方向外側端の移動距離を長くできる。このため、主軸受5,6の駆動効率が低下してしまうことを防止できるとともに、製品寿命を延命化できる。
また、各ころ53,63を、外形が円すい台形の円すいころとすることにより、各主軸受5,6の耐荷重性を向上できる。
【0071】
また、減速機構4は、例えば軸線Oと同軸上に配置され、図示しない駆動源に連結された駆動シャフト70と、駆動シャフト70の駆動ギア70aに噛み合う複数の伝達ギア41と、複数の伝達ギア41に連結される複数のクランク軸42と、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44と、を備える。このため、小型でありながら大トルク容量の歯車装置1を提供できる。
【0072】
また、上述の歯車装置1の組み立て方法は、アウターレース取り付け工程と、インナーレース取り付け工程と、第1装着工程と、第2装着工程と、を有する。これら組み立て工程の過程で、アウターレース51,61の鍔部51b,61bによって複数のころ53,63の位置を規制した後にインナーレース52,62を装着することにより、複数のころ53,63の位置ずれが生じることを抑制できる。また、アウターレース51,61とインナーレース52,62とによる各ころ53,63の噛み込み等の不具合の発生を抑制することができる。
さらに、インナーレース52が複数のころ53に装着される際にシール部7とインナーレース52とが干渉しないように設定されていることにより、シール部7の損傷を抑制することができる。
【0073】
[変形例]
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0074】
上述の実施形態では、第1主軸受5及び第2主軸受6の各々は円すいころ軸受であり、各ころ53,63は、外形が円すい台形の円すいころである場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、第1主軸受5及び第2主軸受6の各ころ53,63の外形は、円柱状の円筒ころであってもよい。
このように構成することで、各ころ53,56の外形を円すい台形とする場合と比較して容易に形成することができる。また、各ころ53,56を円柱状とする分、中心軸線R1,R2方向への移動を規制しやすい。この分、主軸受5,6の信頼性を向上できる。
【0075】
上述の実施形態では、減速機構4は、軸線Oから径方向にずれた各中心軸線Pの軸周りに回転する各クランク軸42によって第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44を揺動回転させる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、例えば、減速機構4は、上述した実施形態の駆動シャフト70、駆動ギア70a、伝達ギア41、複数のクランク軸42の代わりに、中心軸線が軸線Oと同一であるとともに複数の偏心部42bを有する入力軸80(図1中、2点鎖線参照)備えてもよい。また、上述した実施形態の第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44の代わりに、複数の偏心部42bの回転に連動して揺動回転する複数の揺動歯車(例えば、第1揺動歯車43及び第2揺動歯車44)を備えてもよい。
このように構成した場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、減速機構4の構成を簡素化できる。
【0076】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
1…歯車装置、2…ケース、3…キャリア(軸部)、4…減速機構、5…第1主軸受(軸受)、6…第2主軸受(軸受)、7…シール部、51,61…アウターレース、42…クランク軸(入力軸)、42b…偏心部、43…第1揺動歯車(揺動歯車)、44…第2揺動歯車(揺動歯車)、51a,61a…外輪軌道面(内周面)、51b,61b…鍔部、52,62…インナーレース、53,63…ころ(転動体)、53a…大径、54,64…保持器(リテーナ)、80…入力軸、P…中心軸線(偏心軸線)、R1,R2…中心軸線(転動体の軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースの内部に配置される軸部及び入力軸と、
前記ケース又は前記軸部のいずれか一方に、前記入力軸の回転を伝達する歯車機構と、
前記ケースと前記軸部との間に配置され、前記ケースに対して前記軸部を回転自在に支持する軸受と、
前記軸部の軸線方向で前記軸受よりも外方に配置されるとともに前記ケースと前記軸部との間をシールするシール部と、
を備え、
前記軸受は、
前記軸部に設けられるインナーレースと、
前記ケースに設けられるアウターレースと、
前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されるとともに、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体と、
前記複数の転動体を保持する保持器と、
を備え、
前記アウターレースは、内周面の大径側端部で径方向内方に突出するとともに前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部を備え
前記軸部は、前記インナーレースと軸方向で並び、前記シール部が配置されるシール面を有し、
前記シール面は、前記インナーレースの外周面と同一平面上に配置されている
歯車装置。
【請求項2】
前記転動体は、外形が円すい台形の円すいころであり、前記転動体の軸線方向両端のうち、大径側の端部を径方向外側に向けて配置されている
請求項1記載の歯車装置。
【請求項3】
前記転動体は、外形が円柱状の円筒ころである
請求項1記載の歯車装置。
【請求項4】
前記入力軸は、前記軸部の軸線から径方向にずれた偏心軸線を有し、前記偏心軸線に対して偏心している偏心部が設けられた複数のクランク軸であり、
前記歯車機構は、前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転する揺動歯車である
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の歯車装置。
【請求項5】
前記入力軸は、前記軸部の軸線と同軸上に配置され、前記軸部の軸線に対して偏心している偏心部を有し、
前記歯車機構は、前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転する揺動歯車である
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の歯車装置。
【請求項6】
ケースと、
前記ケースの内部に配置される軸部と、
前記ケースの内部に配置され、前記軸部の軸線から径方向にずれた偏心軸線を有するとともに前記偏心軸線に対して偏心している偏心部が設けられた複数のクランク軸と、
前記軸部に支持されるとともに前記偏心部の回転に連動して揺動回転し、前記クランク軸に入力される回転を前記ケース又は前記軸部のいずれか一方に伝達する複数の揺動歯車と、
前記ケースと前記軸部との間に配置され、前記ケースに対して前記軸部を回転自在に支持する軸受と、
前記軸部の軸線方向で前記軸受よりも外方に配置されるとともに前記ケースと前記軸部との間をシールするシール部と、
を備え、
前記軸受は、
前記軸部に設けられるインナーレースと、
前記ケースに設けられるアウターレースと、
前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されるとともに、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体と、
前記複数の転動体を保持する保持器と、
を備え、
前記アウターレースは、内周面の大径側端部で径方向内方に突出するとともに前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部を備え
前記軸部は、前記インナーレースと軸方向で並び、前記シール部が配置されるシール面を有し、
前記シール面は、前記インナーレースの外周面と同一平面上に配置されている
歯車装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、歯車装に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、製造時の不具合の発生を抑制することが可能な歯車装を提供する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様に係る歯車装置は、ケースと、前記ケースの内部に配置される軸部及び入力軸と、前記ケース又は前記軸部のいずれか一方に、前記入力軸の回転を伝達する歯車機構と、前記ケースと前記軸部との間に配置され、前記ケースに対して前記軸部を回転自在に支持する軸受と、前記軸部の軸線方向で前記軸受よりも外方に配置されるとともに前記ケースと前記軸部との間をシールするシール部と、を備え、前記軸受は、前記軸部に設けられるインナーレースと、前記ケースに設けられるアウターレースと、前記インナーレースと前記アウターレースとの間に配置されるとともに、前記軸部の軸線に対して傾いた軸線周りに回転する複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する保持器と、を備え、前記アウターレースは、内周面の大径側端部で径方向内方に突出するとともに前記複数の転動体の軸線方向の移動を規制する鍔部を備え、前記軸部は、前記インナーレースと軸方向で並び、前記シール部が配置されるシール面を有し、前記シール面は、前記インナーレースの外周面と同一平面上に配置されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る歯車装について添付図面を参照しながら説明する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
1…歯車装置、2…ケース、3…キャリア(軸部)、4…減速機構、5…第1主軸受(軸受)、6…第2主軸受(軸受)、7…シール部、27…キャリア側シール部(シール面)、51,61…アウターレース、42…クランク軸(入力軸)、42b…偏心部、43…第1揺動歯車(揺動歯車)、44…第2揺動歯車(揺動歯車)、51a,61a…外輪軌道面(内周面)、51b,61b…鍔部、52,62…インナーレース、53,63…ころ(転動体)、53a…大径、54,64…保持器(リテーナ)、80…入力軸、P…中心軸線(偏心軸線)、R1,R2…中心軸線(転動体の軸線)