(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134912
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】補機ベルト用オートテンショナ、および補機駆動システム
(51)【国際特許分類】
F16H 7/12 20060101AFI20220908BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F16H7/12 A
F02B67/06 A
F02B67/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034400
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 洋生
(72)【発明者】
【氏名】田中 唯久
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049BB05
3J049BB08
3J049BB10
3J049BB13
3J049BB23
3J049BB25
3J049BC03
3J049BH02
3J049CA03
(57)【要約】
【課題】補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときに、弛み側となった側の補機ベルトの部分の弛みを迅速に吸収することが可能な補機ベルト用オートテンショナを提供する。
【解決手段】メインアーム揺動軸7を支点として揺動可能に支持されたメインアーム8と、第1の揺動端部に設けた第1のプーリ軸9で回転可能に支持された第1のテンションプーリ10と、第2の揺動端部に設けたアーム関節軸11を支点としてメインアーム8に揺動可能に連結されたサブアーム12と、サブアーム12に設けた第2のプーリ軸13で回転可能に支持された第2のテンションプーリ14と、サブアーム12を付勢するテンションスプリング15とを有する補機ベルト用オートテンショナ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインアーム揺動軸(7)を支点として揺動可能に支持され、前記メインアーム揺動軸(7)に対して互いに反対側に位置する第1の揺動端部と第2の揺動端部とをもつメインアーム(8)と、
前記第1の揺動端部に設けた第1のプーリ軸(9)で回転可能に支持された第1のテンションプーリ(10)と、
前記第2の揺動端部に設けたアーム関節軸(11)を支点として前記メインアーム(8)に揺動可能に連結されたサブアーム(12)と、
前記サブアーム(12)に設けた第2のプーリ軸(13)で回転可能に支持された第2のテンションプーリ(14)と、
前記第2のテンションプーリ(14)が前記第1のテンションプーリ(10)に近づく方向に前記サブアーム(12)を付勢するテンションスプリング(15)と、
を有する補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項2】
前記メインアーム(8)が揺動するときにその揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクを前記メインアーム(8)に付与する揺動抵抗付与機構(33)を更に有する請求項1に記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項3】
前記揺動抵抗付与機構(33)は、前記メインアーム揺動軸(7)に回り止めされたカム部材(34)と、前記メインアーム(8)に回り止めされ、前記カム部材(34)に摩擦接触するシュー部材(37)とを有し、前記カム部材(34)と前記シュー部材(37)の摩擦抵抗で前記揺動抵抗トルクを発生する機構である請求項2に記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項4】
前記シュー部材(37)は、前記カム部材(34)の径方向外側に径方向に移動可能に設けられた円弧状の部材であり、前記シュー部材(37)には、シュー部材(37)を前記カム部材(34)に向けて付勢する弾性部材(40)が取り付けられている請求項3に記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項5】
前記シュー部材(37)は、前記カム部材(34)の径方向外側に対向して配置され、前記カム部材(34)との接触により径方向に変形可能な金属製の板ばねである請求項3に記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項6】
前記カム部材(34)は、径方向外方に突出する凸曲面状のカム外周面(39)を有し、
前記シュー部材(37)は、前記カム外周面(39)に摩擦接触するシュー内周面(42)を有し、
前記シュー内周面(42)は、前記メインアーム(8)の揺動により前記シュー部材(37)が前記カム部材(34)に対して相対回転するときに、その回転角度が大きくなるに従って前記カム外周面(39)に対する前記シュー内周面(42)の接触面圧が次第に大きくなるように、周方向に対して傾斜した形状を有する請求項3から5のいずれかに記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項7】
前記揺動抵抗付与機構(33)は、前記メインアーム揺動軸(7)に一端が回り止めされ、他端が前記メインアーム(8)に回り止めされたねじりコイルばね(46)を有し、そのねじりコイルばね(46)の弾性力で前記揺動抵抗トルクを発生する機構である請求項2に記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項8】
前記メインアーム(8)には、前記メインアーム揺動軸(7)が挿入される揺動軸挿入孔(16)が形成され、
前記揺動抵抗付与機構(33)が、前記メインアーム揺動軸(7)の外周と前記揺動軸挿入孔の内周の間に収容されている請求項2から7のいずれかに記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項9】
前記テンションスプリング(15)が、圧縮コイルばねであり、
前記メインアーム(8)には、前記サブアーム(12)に向けて開口するスプリング収容穴(19)が形成され、
前記スプリング収容穴(19)に前記テンションスプリング(15)が収容されている請求項1から8のいずれかに記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項10】
前記スプリング収容穴(19)への挿入端が開口し、前記スプリング収容穴(19)からの突出端が閉じた有底筒状のスプリングキャップ(21)が、前記スプリング収容穴(19)にスライド可能に挿入され、
前記スプリングキャップ(21)と前記スプリング収容穴(19)とで囲まれる空間に前記テンションスプリング(15)が組み込まれた請求項9に記載の補機ベルト用オートテンショナ。
【請求項11】
スタータジェネレータの回転軸(2)に取り付けられたスタータジェネレータプーリ(3)と、
クランクシャフト(4)に取り付けられたクランクプーリ(5)と、
前記スタータジェネレータプーリ(3)と前記クランクプーリ(5)の間に巻き掛けられた補機ベルト(6)と、
前記補機ベルト(6)に張力を付与する請求項1から10のいずれかに記載の補機ベルト用オートテンショナ(1)と、を有する補機駆動システム。
【請求項12】
前記第1のテンションプーリ(10)が、前記クランクプーリ(5)から前記スタータジェネレータプーリ(3)に向かって走行する前記補機ベルト(6)の部分に接触して設けられ、
前記第2のテンションプーリ(14)が、前記スタータジェネレータプーリ(3)から前記クランクプーリ(5)に向かって走行する前記補機ベルト(6)の部分に接触して設けられている請求項11に記載の補機駆動システム。
【請求項13】
前記補機ベルト用オートテンショナ(1)が、前記スタータジェネレータプーリ(3)の外周よりも径方向外側に前記メインアーム揺動軸(7)の中心がくるように配置されている請求項11または12に記載の補機駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、自動車エンジンの補機を駆動するベルトの張力保持に用いられる補機ベルト用オートテンショナ、およびその補機ベルト用オートテンショナを用いた補機駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンの補機、例えば、オルタネータやカーエアコンやウォータポンプなどは、エンジンの動力を、クランクプーリから補機ベルトを介して補機プーリに伝えることで駆動される。ここで、クランクプーリは、エンジンのクランクシャフトに取り付けられたプーリであり、補機プーリは、補機の回転軸に取り付けられたプーリである。また、補機ベルトは、クランクプーリと補機プーリの間に巻き掛けられた環状の伝動ベルトである。
【0003】
この補機ベルトの張力を適正範囲に保つため、例えば、特許文献1のようなオートテンショナが使用される。特許文献1のオートテンショナは、揺動軸を支点に揺動可能に支持されたテンションアームと、そのテンションアームの揺動端部に回転可能に取り付けられたテンションプーリと、そのテンションプーリを補機ベルトに押し付ける方向にテンションアームを付勢するスプリングとを有する。
【0004】
この特許文献1のオートテンショナは、補機ベルトの弛み側の部分に配置して使用される。すなわち、クランクプーリと補機プーリの間に巻き掛けられる補機ベルトは、クランクプーリに引き込まれる側の部分が張り側となり、クランクプーリから送り出される側の部分が弛み側となる。そして、特許文献1のオートテンショナは、補機ベルトの弛み側の部分にテンションプーリが接触するように配置して使用される。
【0005】
一方、近年、自動車エンジンの補機として、電動モータ(スタータ)と発電機(ジェネレータ)の両方の機能を兼ね備えたスタータジェネレータを搭載し、そのスタータジェネレータを、アイドリングストップ後のエンジン再始動時のスタータとして用いたり、車両走行中のエンジンの動力をアシストするための補助動力源として用いたりするマイルドハイブリッド車が増えている。
【0006】
マイルドハイブリッド車では、スタータジェネレータの回転軸に取り付けられたスタータジェネレータプーリと、クランクシャフトに取り付けられたクランクプーリと、クランクプーリとスタータジェネレータプーリとの間に巻き掛けられた補機ベルトとを有するベルト伝動装置が使用される。
【0007】
このスタータジェネレータを使用したベルト伝動装置は、通常運転時とスタータジェネレータ駆動時とで、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わるという特徴を有する。すなわち、スタータジェネレータが発電機として作動する通常運転時は、クランクシャフトが駆動軸として回転し、クランクプーリが補機ベルトを介してスタータジェネレータプーリを駆動するので、スタータジェネレータプーリからクランクプーリに向かって走行する補機ベルトの部分が張り側となり、クランクプーリからスタータジェネレータプーリに向かって走行する補機ベルトの部分が弛み側となる。一方、スタータジェネレータが電動モータとして作動するスタータジェネレータ駆動時は、スタータジェネレータの回転軸が駆動軸として回転し、スタータジェネレータプーリが補機ベルトを介してクランクプーリを駆動するので、クランクプーリからスタータジェネレータプーリに向かって走行する補機ベルトの部分が張り側となり、スタータジェネレータプーリからクランクプーリに向かって走行する補機ベルトの部分が弛み側となる。
【0008】
このように、スタータジェネレータを使用したベルト伝動装置においては、通常運転時とスタータジェネレータ駆動時とで、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わるという特徴がある。
【0009】
このようなベルト伝動装置の補機ベルトの張力を保持する方法として、例えば、特許文献1のオートテンショナを2つ用意し、その2つのオートテンショナをスタータジェネレータプーリの両側に設けるという方法が考えられる。すなわち、スタータジェネレータプーリとクランクプーリの間に巻き掛けられた補機ベルトのうち、クランクプーリからスタータジェネレータプーリに向かって走行する補機ベルトの部分と、スタータジェネレータプーリからクランクプーリに向かって走行する補機ベルトの部分とにそれぞれ、特許文献1のオートテンショナを配置するという方法が考えられる。しかしながら、この方法では、ベルト伝動装置の重量およびコストが増大し、またベルト伝動装置の組み立て作業が煩雑になるという問題がある。
【0010】
そこで、そのような問題を解消するオートテンショナとして、特許文献2のものが知られている。特許文献2のオートテンショナは、スタータジェネレータプーリとクランクプーリの間に巻き掛けられた補機ベルトのうち、クランクプーリからスタータジェネレータプーリに向かって走行する補機ベルトの部分に接触する第1のテンションプーリと、スタータジェネレータプーリからクランクプーリに向かって走行する補機ベルトの部分に接触する第2のテンションプーリとを有する。
【0011】
第1のテンションプーリは、スタータジェネレータプーリの位置を中心に揺動可能な第1のテンションアームの揺動端部に回転可能に取り付けられている。同様に、第2のテンションプーリは、スタータジェネレータプーリの位置を中心に揺動可能な第2のテンションアームの揺動端部に回転可能に取り付けられている。第1のテンションアームと第2のテンションアームは、揺動中心の位置が共通しているが、それぞれが独立に揺動することができるように支持されている。そして、第1のテンションアームと第2のテンションアームの間には、第1のテンションプーリと第2のテンションプーリとを互いに近づけるように両アームを付勢するテンションスプリングが組み込まれている。
【0012】
この特許文献2のオートテンショナは、第1のテンションプーリと第2のテンションプーリが、テンションスプリングによって互いに近づく方向に付勢されているので、そのテンションスプリングの付勢力によって、第1のテンションプーリを補機ベルトに押し付けるとともに第2のテンションプーリも補機ベルトに押し付けることができ、これにより、補機ベルトに張力を付与することが可能となっている。
【0013】
また、この特許文献2のオートテンショナは、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときは、第1のテンションアームと第2のテンションアームが全体として揺動することで、補機ベルトの弛みを吸収する。
【0014】
すなわち、第1のテンションプーリが接触する補機ベルトの部分が張り側となり、第2のテンションプーリが接触する補機ベルトの部分が弛み側となっているときは、第1のテンションプーリが補機ベルトから押し返される力により、第1のテンションアームと第2のテンションアームが全体として揺動し、第2のテンションプーリが補機ベルトの弛みを吸収する。具体的には、第1のテンションプーリが、張り側となった補機ベルトの部分から押し返されることで、第1のテンションプーリが第2のテンションプーリから遠ざかる方向に第1のテンションアームが揺動する。そして、その第1のテンションアームの揺動が、テンションスプリングを介して第2のテンションアームに伝わることで、第2のテンションプーリが第1のテンションプーリに近づく方向に第2のテンションアームが揺動し、その結果、第2のテンションプーリが、弛み側となった補機ベルトの部分に押し込まれ、補機ベルトの弛みが吸収される。
【0015】
その後、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わることで、第2のテンションプーリが接触する補機ベルトの部分が張り側となり、第1のテンションプーリが接触する補機ベルトの部分が弛み側となったときは、第2のテンションプーリが補機ベルトから押し返される力により、第1のテンションアームと第2のテンションアームが全体として逆向きに揺動し、第1のテンションプーリが補機ベルトの弛みを吸収する。具体的には、第2のテンションプーリが、張り側となった補機ベルトの部分から押し返されることで、第2のテンションプーリが第1のテンションプーリから遠ざかる方向に第2のテンションアームが揺動する。そして、その第2のテンションアームの揺動が、テンションスプリングを介して第1のテンションアームに伝わることで、第1のテンションプーリが第2のテンションプーリに近づく方向に第1のテンションアームが揺動し、その結果、第1のテンションプーリが、弛み側となった補機ベルトの部分に押し込まれ、補機ベルトの弛みが吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009-275757号公報
【特許文献2】特許第5634685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、本願の発明者が、特許文献2のオートテンショナを調査検討したところ、同文献のオートテンショナでは、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときに、弛み側となった側の補機ベルトの部分の弛みを吸収する追従性が不足するおそれがあることが分かった。
【0018】
すなわち、特許文献2のオートテンショナにおいて、第1のテンションプーリを支持する第1のテンションアームと、第2のテンションプーリを支持する第2のテンションアームは、同じ位置(スタータジェネレータプーリの位置)を揺動中心として、それぞれが独立に揺動することができるように支持され、その両アームの間にテンションスプリングが組み付けられている。ここで、第1のテンションプーリと第2のテンションプーリのうちの一方のプーリが補機ベルトから押し返されたときに、そのプーリの受ける力が、第1のテンションアームと第2のテンションアームのうちの一方のアームから他方のアームに伝わることで、両アームが全体として揺動する。このとき一方のアームから他方のアームへの力の伝達は、両アームの間に組み込まれたテンションスプリングのみを介して行われるため、一方のアームの動作に対して他方のアームの動作に遅れが生じやすい。そのため、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときに、弛み側となった側の補機ベルトの部分の弛みを吸収する追従性が不足するおそれがあることが分かった。
【0019】
また、エンジンの作動中、クランクシャフトにはエンジンの燃焼サイクルに応じた回転変動が生じ、そのクランクシャフトの回転変動に伴って、クランクプーリとスタータジェネレータプーリの間に巻き掛けられた補機ベルトにも張力変動が生じる。このクランクシャフトの回転変動に伴って生じる補機ベルトの張力変動が大きい場合、特許文献2のオートテンショナは、第1のテンションアームと第2のテンションアームが全体として過度に揺動し、その結果、補機ベルトの振動による異音を生じたり、補機ベルトの張力不足を生じたりするおそれがあった。
【0020】
この発明が解決しようとする課題は、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときに、弛み側となった側の補機ベルトの部分の弛みを迅速に吸収することが可能な補機ベルト用オートテンショナを提供することである。また、補機ベルトの張力変動が大きい場合でも、オートテンショナ全体が過度に揺動し、補機ベルトの振動による異音や補機ベルトの張力不足が生じることを抑制可能な補機ベルト用オートテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、この発明では、以下の構成の補機ベルト用オートテンショナを提供する。
メインアーム揺動軸を支点として揺動可能に支持され、前記メインアーム揺動軸に対して互いに反対側に位置する第1の揺動端部と第2の揺動端部とをもつメインアームと、
前記第1の揺動端部に設けた第1のプーリ軸で回転可能に支持された第1のテンションプーリと、
前記第2の揺動端部に設けたアーム関節軸を支点として前記メインアームに揺動可能に連結されたサブアームと、
前記サブアームに設けた第2のプーリ軸で回転可能に支持された第2のテンションプーリと、
前記第2のテンションプーリが前記第1のテンションプーリに近づく方向に前記サブアームを付勢するテンションスプリングと、
を有する補機ベルト用オートテンショナ。
【0022】
このようにすると、第2のテンションプーリが、テンションスプリングによって第1のテンションプーリに近づく方向に付勢されているので、そのテンションスプリングの付勢力によって、第1のテンションプーリを補機ベルトに押し付けるとともに第2のテンションプーリも補機ベルトに押し付けることができ、これにより、補機ベルトに張力を付与することが可能である。
【0023】
また、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときは、メインアームとサブアームが、メインアーム揺動軸を支点として全体として揺動することで、補機ベルトの弛みを吸収する。ここで、第1のテンションプーリと第2のテンションプーリのうちの一方のプーリが補機ベルトから押し返されると、そのプーリの受ける力が、メインアームとサブアームのうちの一方のアームから他方のアームに伝わることで、メインアームとサブアームが全体として揺動する。このとき、メインアームとサブアームの間での力の伝達が、テンションスプリングによってだけでなく、両アームを連結するアーム関節軸によっても行われるため、メインアームとサブアームの間に動作の遅れが生じにくい。そのため、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときに、弛み側となった側の補機ベルトの部分の弛みを迅速に吸収することが可能である。
【0024】
前記メインアームが揺動するときにその揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクを前記メインアームに付与する揺動抵抗付与機構を更に設けると好ましい。
【0025】
このようにすると、メインアームがメインアーム揺動軸を中心に揺動するときに、その揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクが、揺動抵抗付与機構からメインアームに付与されるので、クランクシャフトの回転変動に伴って生じる補機ベルトの張力変動が大きい場合にも、メインアームを含むオートテンショナの全体が過度に揺動するのを防止することができ、その結果、補機ベルトの振動による異音を生じたり、補機ベルトの張力不足を生じたりするのを防止することが可能となる。
【0026】
前記揺動抵抗付与機構としては、前記メインアーム揺動軸に回り止めされたカム部材と、前記メインアームに回り止めされ、前記カム部材に摩擦接触するシュー部材とを有し、前記カム部材と前記シュー部材の摩擦抵抗で前記揺動抵抗トルクを発生する機構を採用することができる。
【0027】
このようにすると、メインアームが揺動したときに、そのメインアームの揺動エネルギーを、カム部材とシュー部材の間の摩擦エネルギーとして消費することができ、ダンパ効果を得ることができる。そのため、メインアームを含むオートテンショナの全体が過度に揺動するのを効果的に防止することが可能となる。
【0028】
前記シュー部材として、前記カム部材の径方向外側に径方向に移動可能に設けられた円弧状の部材を採用し、前記シュー部材には、シュー部材を前記カム部材に向けて付勢する弾性部材が取り付けられている構成を採用することができる。
【0029】
このようにすると、シュー部材が、カム部材との接触により径方向に移動可能であり、そのシュー部材が弾性部材でカム部材に向けて付勢されているので、カム部材とシュー部材の間の接触面圧が安定したものとなり、カム部材とシュー部材の間の摩擦抵抗も安定したものとなる。
【0030】
また前記シュー部材として、前記カム部材の径方向外側に対向して配置され、前記カム部材との接触により径方向に変形可能な金属製の板ばねを採用することができる。
【0031】
このようにすると、シュー部材が、カム部材との接触により径方向に変形可能な板ばねなので、カム部材とシュー部材の間の接触面圧が安定したものとなり、カム部材とシュー部材の摩擦抵抗も安定したものとなる。また、シュー部材が金属製の板ばねなので、シュー部材の耐摩耗性に優れる。
【0032】
前記カム部材は、径方向外方に突出する凸曲面状のカム外周面を有し、
前記シュー部材は、前記カム外周面に摩擦接触するシュー内周面を有し、
前記シュー内周面は、前記メインアームの揺動により前記シュー部材が前記カム部材に対して相対回転するときに、その回転角度が大きくなるに従って前記カム外周面に対する前記シュー内周面の接触面圧が次第に大きくなるように、周方向に対して傾斜した形状を有する構成を採用すると好ましい。
【0033】
このようにすると、メインアームの揺動角度が大きくなるにつれて、カム外周面に対するシュー内周面の接触面圧が次第に大きくなる。そのため、クランクシャフトの回転変動に伴って生じる補機ベルトの張力変動が大きい場合にも、メインアームを含むオートテンショナの全体が過度に揺動するのを効果的に防止することが可能となる。
【0034】
また、前記揺動抵抗付与機構としては、前記メインアーム揺動軸に一端が回り止めされ、他端が前記メインアームに回り止めされたねじりコイルばねを有し、そのねじりコイルばねの弾性力で前記揺動抵抗トルクを発生する機構を採用することもできる。
【0035】
このようにすると、メインアームが揺動したときに発生する揺動抵抗トルクが、ねじりコイルばねの弾性力によるものなので、摩擦抵抗で揺動抵抗トルクを発生する揺動抵抗付与機構を採用したときと比較して、摩耗が生じにくく、長期にわたって安定した揺動抵抗トルクを発生することが可能となる。
【0036】
前記メインアームには、前記メインアーム揺動軸が挿入される揺動軸挿入孔が形成され、
前記揺動抵抗付与機構が、前記メインアーム揺動軸の外周と前記揺動軸挿入孔の内周の間に収容されている構成を採用すると好ましい。
【0037】
このようにすると、揺動抵抗付与機構が、メインアーム揺動軸の外周とメインアームの揺動軸挿入孔の内周との間に収容されているので、補機ベルト用オートテンショナがコンパクトである。また、補機ベルト用オートテンショナのベルト伝動装置への取り付け作業も容易である。
【0038】
前記テンションスプリングが、圧縮コイルばねであり、
前記メインアームには、前記サブアームに向けて開口するスプリング収容穴が形成され、
前記スプリング収容穴に前記テンションスプリングが収容されている構成を採用すると好ましい。
【0039】
このようにすると、スプリング収容穴の長さの分、テンションスプリングの長さを長くすることができるので、アーム関節軸を支点とするサブアームの揺動角度によらず、安定した大きさの付勢力でサブアームを付勢することが可能となる。
【0040】
この場合、前記スプリング収容穴への挿入端が開口し、前記スプリング収容穴からの突出端が閉じた有底筒状のスプリングキャップが、前記スプリング収容穴にスライド可能に挿入され、
前記スプリングキャップと前記スプリング収容穴とで囲まれる空間に前記テンションスプリングが組み込まれた構成を採用すると好ましい。
【0041】
このようにすると、スプリングキャップは、スプリング収容穴にスライド可能に支持されて姿勢が安定しており、そのスプリングキャップを介してテンションスプリングがサブアームを付勢するので、アーム関節軸を支点とするサブアームの回動角度によらず、テンションスプリングの姿勢が安定したものとなる。
【0042】
また、この発明では、上記の補機ベルト用オートテンショナを用いた補機駆動システムとして、以下の構成のものを提供する。
スタータジェネレータの回転軸に取り付けられたスタータジェネレータプーリと、
クランクシャフトに取り付けられたクランクプーリと、
前記スタータジェネレータプーリと前記クランクプーリの間に巻き掛けられた補機ベルトと、
前記補機ベルトに張力を付与する上記の補機ベルト用オートテンショナと、を有する補機駆動システム。
【0043】
この補機駆動システムにおいて、
前記第1のテンションプーリが、前記クランクプーリから前記スタータジェネレータプーリに向かって走行する前記補機ベルトの部分に接触して設けられ、
前記第2のテンションプーリが、前記スタータジェネレータプーリから前記クランクプーリに向かって走行する前記補機ベルトの部分に接触して設けられている構成を採用すると好ましい。
【0044】
このようにすると、スタータジェネレータプーリとクランクプーリの間に巻き掛けられた補機ベルトのうち、瞬間的に最も大きな弛みが生じる可能性のある部分(すなわち、アイドリングストップ後のエンジン再始動時に弛み側となる、スタータジェネレータプーリからクランクプーリに向かって走行する補機ベルトの部分)に第2のテンションプーリが接触した構成となる。ここで、第2のテンションプーリは、メインアーム揺動軸を支点とするメインアームの揺動だけでなく、アーム関節軸を支点とするサブアームの揺動によっても移動可能であり、移動の応答性に優れる。したがって、アイドリングストップ後のエンジン再始動時に補機ベルトに瞬間的に生じる大きな弛みを含めて、補機ベルトの弛みを確実に吸収することが可能となる。
【0045】
この補機駆動システムにおいて、前記補機ベルト用オートテンショナは、前記スタータジェネレータプーリの外周よりも径方向外側に前記メインアーム揺動軸の中心がくるように配置すると好ましい。
【0046】
このようにすると、メインアームおよびサブアームの長さを確保することができるので、補機ベルトの弛みに対するメインアームおよびサブアームの追従性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0047】
この発明の補機ベルト用オートテンショナは、第2のテンションプーリが、テンションスプリングによって第1のテンションプーリに近づく方向に付勢されているので、そのテンションスプリングの付勢力によって、第1のテンションプーリを補機ベルトに押し付けるとともに第2のテンションプーリも補機ベルトに押し付けることができ、これにより、補機ベルトに張力を付与することが可能である。
【0048】
また、この発明の補機ベルト用オートテンショナは、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときは、メインアームとサブアームが、メインアーム揺動軸を支点として全体として揺動することで、補機ベルトの弛みを吸収する。ここで、第1のテンションプーリと第2のテンションプーリのうちの一方のプーリが補機ベルトから押し返されると、そのプーリの受ける力が、メインアームとサブアームのうちの一方のアームから他方のアームに伝わることで、メインアームとサブアームが全体として揺動する。このとき、メインアームとサブアームの間での力の伝達が、テンションスプリングによってだけでなく、両アームを連結するアーム関節軸によっても行われるため、メインアームとサブアームの間に動作の遅れが生じにくい。そのため、補機ベルトの張り側と弛み側が入れ替わったときに、弛み側となった側の補機ベルトの部分の弛みを迅速に吸収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】この発明の第1実施形態の補機ベルト用オートテンショナを用いた補機駆動システムの一例を示す正面図
【
図2】
図1の補機ベルト用オートテンショナのサブアームの近傍を拡大した部分断面図
【
図6】(a)は、エンジンが停止しているときの補機駆動システムを模式的に示す図、(b)は、通常運転時の補機駆動システムを模式的に示す図、(c)は、スタータジェネレータ駆動時の補機駆動システムを模式的に示す図、(d)は、ベルトが経年劣化により伸びたときの補機駆動システムを模式的に示す図
【
図7】この発明の第2実施形態の補機ベルト用オートテンショナのメインアーム揺動軸の近傍を
図3に対応して示す図
【
図9】
図8に示すメインアームが揺動した状態を示す断面図
【
図10】この発明の第3実施形態の補機ベルト用オートテンショナのメインアーム揺動軸の近傍を
図3に対応して示す図
【
図12】
図11に示すメインアームが揺動した状態を示す断面図
【
図13】この発明の第4実施形態の補機ベルト用オートテンショナのメインアーム揺動軸の近傍を
図3に対応して示す図
【
図15】
図14に示すメインアームが揺動した状態を示す断面図
【
図16】この発明の第5実施形態の補機ベルト用オートテンショナのメインアーム揺動軸の近傍を
図3に対応して示す図
【
図18】
図17に示すメインアームが揺動した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1に、この発明の第1実施形態の補機ベルト用オートテンショナ1(以下、単に「オートテンショナ1」という)を用いた補機駆動システムの例を示す。この補機駆動システムは、スタータジェネレータの回転軸2に取り付けられたスタータジェネレータプーリ3と、クランクシャフト4に取り付けられたクランクプーリ5と、スタータジェネレータプーリ3とクランクプーリ5の間に巻き掛けられた環状の補機ベルト6(以下、単に「ベルト6」という)と、ベルト6に張力を付与するオートテンショナ1とを有する。エンジン作動中、スタータジェネレータの回転軸2とクランクシャフト4は、所定の方向(図では右回転方向)に回転する。
【0051】
オートテンショナ1は、メインアーム揺動軸7と、メインアーム揺動軸7を支点として揺動可能に支持されたメインアーム8と、メインアーム8の第1の揺動端部に設けた第1のプーリ軸9と、第1のプーリ軸9で回転可能に支持された第1のテンションプーリ10と、メインアーム8の第2の揺動端部に設けたアーム関節軸11と、アーム関節軸11を支点としてメインアーム8に揺動可能に連結されたサブアーム12と、サブアーム12に設けた第2のプーリ軸13と、第2のプーリ軸13で回転可能に支持された第2のテンションプーリ14と、第2のテンションプーリ14が第1のテンションプーリ10に近づく方向にサブアーム12を付勢するテンションスプリング15とを有する。
【0052】
第1のテンションプーリ10は、クランクプーリ5からスタータジェネレータプーリ3に向かって走行するベルト6の部分の外周面に接触している。また、第2のテンションプーリ14は、スタータジェネレータプーリ3からクランクプーリ5に向かって走行するベルト6の部分の外周面に接触している。ここで、第1のテンションプーリ10と第2のテンションプーリ14は、スタータジェネレータプーリ3に対して上流側に隣接するベルト6のスパンと、スタータジェネレータプーリ3に対して下流側に隣接するベルト6のスパンとを間に挟み込んで配置されている。
【0053】
メインアーム8の第1の揺動端部(第1のプーリ軸9が配置された端部)と、メインアーム8の第2の揺動端部(アーム関節軸11が配置された端部)は、メインアーム揺動軸7に対して互いに反対側に位置している。メインアーム8は、第1の揺動端部から第2の揺動端部まで継ぎ目の無い一体に形成された部材である。
【0054】
メインアーム8は、スタータジェネレータプーリ3の外周のうち半周以上の部分と径方向に対向する形状を有する。メインアーム8には、スタータジェネレータの回転軸2まわりの周方向の一端に第1のプーリ軸9が配置され、スタータジェネレータの回転軸2まわりの周方向の他端にアーム関節軸11が配置され、スタータジェネレータの回転軸2まわりの周方向に沿って第1のプーリ軸9とアーム関節軸11の間にメインアーム揺動軸7が配置されている。メインアーム揺動軸7は、スタータジェネレータの回転軸2と平行に設けられ、メインアーム8に形成された揺動軸挿入孔16に挿入されている。
【0055】
メインアーム8は、メインアーム揺動軸7からアーム関節軸11までの部分の長さが、メインアーム揺動軸7から第1のプーリ軸9までの部分の長さよりも短くなるように揺動軸挿入孔16に対して左右非対称に形成されている。メインアーム8は、メインアーム揺動軸7の中心が、スタータジェネレータプーリ3の外周よりも径方向外側にくるように配置されている。また、メインアーム8は、メインアーム揺動軸7の中心が、無端のベルト6で囲まれる領域の外側にくるように配置されている。
【0056】
第1のテンションプーリ10は、図示しない転がり軸受を介して、第1のプーリ軸9で回転可能に支持されている。第1のプーリ軸9は、メインアーム8の第1の揺動端部に、メインアーム揺動軸7と平行に設けられている。
【0057】
図2に示すように、アーム関節軸11は、メインアーム8の第2の揺動端部に、メインアーム揺動軸7と平行に設けられている。アーム関節軸11は、サブアーム12に形成されたサブアーム側軸穴17(
図1参照)と、メインアーム8の第2の揺動端部に形成されたメインアーム側軸穴18とに挿入されている。メインアーム8とサブアーム12は、アーム関節軸11を介して回動可能に連結されている。アーム関節軸11は、サブアーム側軸穴17(
図1参照)に圧入することでサブアーム12に固定され、メインアーム8は、そのアーム関節軸11の外周で回動可能に支持されている。アーム関節軸11をメインアーム8に固定するとともに、そのアーム関節軸11の外周でサブアーム12を回動可能に支持するようにしてもよい。
【0058】
メインアーム8には、テンションスプリング15を収容するスプリング収容穴19が形成されている。スプリング収容穴19は、一端がサブアーム12に設けられたスプリング受け部20に向けて開口し、他端が閉じた円筒状の有底穴である。サブアーム12のスプリング受け部20は、スタータジェネレータの回転軸2から見て、アーム関節軸11の位置よりも径方向外側に離れた位置に設けられている。スプリング受け部20は、図では、アーム関節軸11と平行にサブアーム12に取り付けたピンである。
【0059】
テンションスプリング15は、金属製の線材を螺旋状に巻回して形成した圧縮コイルばねである。テンションスプリング15は、一端がスプリング収容穴19内に挿入され、他端がスプリング収容穴19から突出した状態にスプリング収容穴19に収容されている。スプリング収容穴19には、スプリング収容穴19への挿入端が開口し、スプリング収容穴19からの突出端が閉じた有底筒状のスプリングキャップ21がスプリング収容穴19にスライド可能に挿入されている。テンションスプリング15は、スプリングキャップ21とスプリング収容穴19とで囲まれる空間に圧縮した状態で組み込まれ、その弾性復元力によって、スプリングキャップ21を介してサブアーム12のスプリング受け部20を押圧している。
【0060】
図3に示すように、揺動軸挿入孔16は、メインアーム8を軸方向に貫通して形成されている。メインアーム揺動軸7は、外周に雄ねじが形成されたねじ軸部22と、ねじ軸部22の一端に設けられた頭部23とを有する頭部付きボルトである。ねじ軸部22は、固定部材24(スタータジェネレータのハウジング、またはそのハウジングに取り付けられたブラケット、またはエンジンブロック等)にねじ込まれている。ねじ軸部22の外周には、頭部23の側から固定部材24の側に向かって順に、座金25、スリーブ26が嵌合して設けられている。座金25、スリーブ26は、頭部23から受ける軸力によって固定部材24に固定されている。揺動軸挿入孔16の内周には円筒状の滑り軸受27が圧入され、その滑り軸受27の内周がスリーブ26の外周で回動可能に支持されている。
【0061】
図4に示すように、スリーブ26の固定部材24(
図3参照)の側の端部外周には、周方向位置決め部28(図ではDカット部)が形成されている。周方向位置決め部28は、固定部材24に形成された周方向位置決め穴29(
図3参照)に嵌合することで、固定部材24に対するスリーブ26の取付角度を所定の角度に位置決めしている。
【0062】
図5に示すように、第2のテンションプーリ14は、転がり軸受30を介して第2のプーリ軸13で支持されている。第2のプーリ軸13は、アーム関節軸11(
図2参照)と平行に設けられている。転がり軸受30は、第2のテンションプーリ14の内周に装着されている。転がり軸受30の内周には、転がり軸受30の軸方向両側から一対のアダプタリング31が嵌め込まれ、そのアダプタリング31に第2のプーリ軸13が挿入されている。第2のプーリ軸13の軸方向両端は、サブアーム12の揺動端部に形成された軸方向の貫通孔32に圧入して固定されている。第1のテンションプーリ10(
図1参照)も、第2のテンションプーリ14と同一の構成である。
【0063】
上記のオートテンショナ1の使用例を説明する。
【0064】
図6(a)は、エンジンが停止しているときの補機駆動システムを示す。スタータジェネレータプーリ3とクランクプーリ5は、いずれも停止している。第1のテンションプーリ10と第2のテンションプーリ14は、テンションスプリング15によって互いに近づく方向に付勢され、これにより、第1のテンションプーリ10がベルト6の外周面に押し付けられるとともに第2のテンションプーリ14もベルト6の外周面に押し付けられ、ベルト6に張力が付与されている。このとき、第1のテンションプーリ10が接触するベルト6の部分の張力と、第2のテンションプーリ14が接触するベルト6の部分の張力は釣り合った状態である。このとき、メインアーム8は中立位置にある。
【0065】
図6(b)は、通常運転時(すなわち、クランクプーリ5が駆動プーリとして作動し、スタータジェネレータプーリ3が従動プーリとして作動するとき)の補機駆動システムを示す。クランクプーリ5は、ベルト6を介してスタータジェネレータプーリ3を駆動している。スタータジェネレータプーリ3からクランクプーリ5に向かって走行するベルト6の部分が張り側となり、クランクプーリ5からスタータジェネレータプーリ3に向かって走行するベルト6の部分が弛み側となる。このとき、オートテンショナ1は、第2のテンションプーリ14がベルト6から押し返される力により、メインアーム8とサブアーム12がメインアーム揺動軸7を支点として全体として揺動し、第1のテンションプーリ10がベルト6に押し付けられてその弛みを吸収する。具体的には、第2のテンションプーリ14が、張り側となったベルト6の部分から押し返され、このとき第2のテンションプーリ14の受ける力が、
図1に示すテンションスプリング15およびアーム関節軸11を介してサブアーム12からメインアーム8に伝わることで、メインアーム8とサブアーム12が全体として揺動し、その結果、第1のテンションプーリ10が、弛み側となったベルト6の部分に押し込まれ、クランクプーリ5からスタータジェネレータプーリ3に向かって走行するベルト6の部分の弛みを吸収する。
【0066】
図6(c)は、スタータジェネレータ駆動時(すなわち、スタータジェネレータプーリ3が駆動プーリとして作動し、クランクプーリ5が従動プーリとして作動するとき)の補機駆動システムを示す。例えば、アイドリングストップ後のエンジン始動時や、スタータジェネレータによるエンジン動力のアシスト時である。スタータジェネレータプーリ3は、ベルト6を介してクランクプーリ5を駆動している。クランクプーリ5からスタータジェネレータプーリ3に向かって走行するベルト6の部分が張り側となり、スタータジェネレータプーリ3からクランクプーリ5に向かって走行するベルト6の部分が弛み側となる。このとき、オートテンショナ1は、第1のテンションプーリ10がベルト6から押し返される力により、メインアーム8とサブアーム12がメインアーム揺動軸7を支点として全体として揺動し、第2のテンションプーリ14がベルト6に押し付けられてその弛みを吸収する。具体的には、第1のテンションプーリ10が、張り側となったベルト6の部分から押し返され、このとき第1のテンションプーリ10の受ける力が、
図1に示すテンションスプリング15およびアーム関節軸11を介してメインアーム8からサブアーム12に伝わることで、メインアーム8とサブアーム12が全体として揺動し、その結果、第2のテンションプーリ14が、弛み側となったベルト6の部分に押し込まれ、スタータジェネレータプーリ3からクランクプーリ5に向かって走行するベルト6の部分の弛みを吸収する。
【0067】
図6(d)は、ベルト6が経年劣化により伸びたときの補機駆動システムを示す。このとき、第1のテンションプーリ10と第2のテンションプーリ14は、テンションスプリング15の付勢力によって互いに近づく方向に移動し、これにより、ベルト6の伸びを吸収し、ベルト6の張力を適正範囲に保持する。図において、スタータジェネレータプーリ3とクランクプーリ5は、いずれも停止している。
【0068】
このオートテンショナ1は、
図1に示すように、第2のテンションプーリ14が、テンションスプリング15によって第1のテンションプーリ10に近づく方向に付勢されているので、そのテンションスプリング15の付勢力によって、第1のテンションプーリ10をベルト6に押し付けるとともに第2のテンションプーリ14もベルト6に押し付けることができ、これにより、ベルト6の摩擦伝動に必要な張力をベルト6に付与することが可能となっている。
【0069】
また、このオートテンショナ1は、
図6(b)と
図6(c)に示すように、ベルト6の張り側と弛み側が入れ替わったときは、メインアーム8とサブアーム12が、メインアーム揺動軸7を支点として全体として揺動することで、ベルト6の弛みを吸収する。ここで、このオートテンショナ1は、第1のテンションプーリ10と第2のテンションプーリ14のうちの一方のプーリがベルト6から押し返されたときに、そのプーリの受ける力が、メインアーム8とサブアーム12のうちの一方のアームから他方のアームに伝わることで、メインアーム8とサブアーム12が全体として揺動する。このとき、メインアーム8とサブアーム12の間での力の伝達は、
図1に示すテンションスプリング15によってだけでなく、メインアーム8とサブアーム12を連結するアーム関節軸11によっても行われるため、メインアーム8とサブアーム12の間に動作の遅れが生じにくい。そのため、ベルト6の張り側と弛み側が入れ替わったときに、弛み側となった側のベルト6の部分の弛みを迅速に吸収することが可能である。
【0070】
また、このオートテンショナ1は、
図2に示すように、テンションスプリング15を収容するスプリング収容穴19をメインアーム8に形成しているので、そのスプリング収容穴19の長さの分、テンションスプリング15の長さを長くすることが可能である。そのため、アーム関節軸11を支点とするサブアーム12の揺動角度によらず、安定した大きさの付勢力でサブアーム12を付勢することが可能となっている。
【0071】
また、このオートテンショナ1は、
図2に示すように、スプリングキャップ21とスプリング収容穴19とで囲まれる空間にテンションスプリング15を組み込んだ構成を採用している。ここで、スプリングキャップ21は、スプリング収容穴19にスライド可能に支持されて姿勢が安定しており、そのスプリングキャップ21を介してテンションスプリング15がサブアーム12を付勢するので、アーム関節軸11を支点とするサブアーム12の回動角度によらず、テンションスプリング15が曲がったり座屈したりせず、テンションスプリング15の姿勢が安定したものとなっている。
【0072】
また、
図1に示す補機駆動システムは、スタータジェネレータプーリ3とクランクプーリ5の間に巻き掛けられたベルト6のうち、瞬間的に最も大きな弛みが生じる可能性のある部分(すなわち、
図6(c)に示すように、アイドリングストップ後のエンジン再始動時に弛み側となる、スタータジェネレータプーリ3からクランクプーリ5に向かって走行するベルト6の部分)に第2のテンションプーリ14が接触するようにオートテンショナ1を配置している。ここで、第2のテンションプーリ14は、
図1に示すように、メインアーム揺動軸7を支点とするメインアーム8の揺動だけでなく、アーム関節軸11を支点とするサブアーム12の揺動によっても移動可能であり、移動の応答性に優れる。したがって、アイドリングストップ後のエンジン再始動時にベルト6に瞬間的に生じる大きな弛みを含めて、ベルト6の弛みを確実に吸収することが可能である。
【0073】
また、
図1に示す補機駆動システムは、スタータジェネレータプーリ3の外周よりも径方向外側にメインアーム揺動軸7の中心がくるようにオートテンショナ1を配置しているので、オートテンショナ1のメインアーム8およびサブアーム12の長さを確保することが可能となっている。そのため、ベルト6の弛みに対するメインアーム8およびサブアーム12の追従性が高い。
【0074】
図7~
図9に、この発明の第2実施形態を示す。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、メインアーム8が揺動するときにその揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクをメインアーム8に付与する揺動抵抗付与機構33を追加した点のみが異なり、それ以外の構成は同一である。そのため、第1実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
図7に示すように、メインアーム揺動軸7は、外周に雄ねじが形成されたねじ軸部22と、ねじ軸部22の一端に設けられた頭部23とを有する頭部付きボルトである。ねじ軸部22の外周には、頭部23の側から固定部材24の側に向かって順に、座金25、スリーブ26、カム部材34が嵌合して設けられている。座金25、スリーブ26、カム部材34は、頭部23から受ける軸力によって固定部材24に固定されている。
【0076】
揺動軸挿入孔16は、小径内径部35と、小径内径部35よりも大きい内径をもつ大径内径部36とを有する。大径内径部36は、小径内径部35に対して固定部材24の側に隣接して形成されている。小径内径部35の内周には円筒状の滑り軸受27が圧入され、その滑り軸受27の内周がスリーブ26の外周で回動可能に支持されている。大径内径部36の内側には、メインアーム8が揺動するときにその揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクをメインアーム8に付与する揺動抵抗付与機構33が組み込まれている。
【0077】
揺動抵抗付与機構33は、メインアーム8の揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクを発生するように互いに摩擦接触するカム部材34とシュー部材37とを有し、そのカム部材34とシュー部材37の摩擦抵抗で揺動抵抗トルクを発生する機構である。カム部材34は、頭部23から受ける軸力で固定部材24に押し付けて固定され、その固定によりメインアーム揺動軸7に回り止めされた状態となっている。
【0078】
カム部材34の固定部材24の側の端部外周には、周方向位置決め部28(図ではDカット部)が形成されている。周方向位置決め部28は、固定部材24に形成された周方向位置決め穴29に嵌合することで、固定部材24に対するカム部材34の取付角度を所定の角度に位置決めしている。ここでは、カム部材34の周方向位置決め部28が嵌合する周方向位置決め穴29を、直接、固定部材24に形成した例を示したが、カム部材34と固定部材24の間に、図示しない角度決め用の座金を介在させ、その角度決め用の座金にカム部材34の周方向位置決め部28が嵌合する周方向位置決め穴29を形成するようにしてもよい。揺動軸挿入孔16の大径内径部36の固定部材24の側の端部開口は、環状のカバー38で塞がれている。
【0079】
図8に示すように、カム部材34は、揺動軸挿入孔16の大径内径部36内に挿入されている。カム部材34には、径方向外方に突出する凸曲面状のカム外周面39が形成されている。カム外周面39は、メインアーム揺動軸7を中心とする正反対の向きに一対形成されている。
【0080】
シュー部材37は、カム部材34の径方向外側に対向して設けられた円弧状の部材である。シュー部材37の外周と大径内径部36の内周との間には径方向隙間が設けられ、その径方向隙間の範囲で、シュー部材37が径方向に移動可能となっている。シュー部材37は、一対のカム外周面39に対応して一対設けられている。
【0081】
一対のシュー部材37には、各シュー部材37をカム部材34に向けて付勢する弾性部材40が取り付けられている。弾性部材40は、C形のサークリップである。弾性部材40は、一対のシュー部材37を互いに近づく方向に付勢することで、各シュー部材37をカム部材34のカム外周面39に押し付けている。一対のシュー部材37のうち、一方のシュー部材37には、弾性部材40の周方向の一端で周方向に押圧される押圧面41が設けられ、他方のシュー部材37にも、弾性部材40の周方向の他端で周方向に押圧される押圧面41が設けられている。
【0082】
シュー部材37には、カム外周面39に摩擦接触するシュー内周面42が形成されている。シュー内周面42は、メインアーム揺動軸7を中心とする楕円状の内周面であり、楕円の長軸方向がカム外周面39の突出方向となるようにカム部材34を内部に収容している。シュー内周面42は、弾性部材40の付勢力によって、常時、カム外周面39に接触している。
【0083】
揺動軸挿入孔16の大径内径部36の内周には、径方向内方に突出する2つの回り止め突起43が形成されている。回り止め突起43は、揺動軸挿入孔16の内周に沿って円弧状に延びる各シュー部材37の周方向端部に係合し、この係合によって、シュー部材37は、メインアーム8に回り止めされている。
【0084】
ここで、シュー内周面42(実施形態では楕円状の内周面)は周方向(すなわち、メインアーム揺動軸7を中心とする真円に沿った方向)に対して傾斜した形状となっている。そのため、
図9に示すように、メインアーム8の揺動によりシュー部材37がカム部材34に対して相対回転するときに、その回転角度が大きくなるに従ってカム外周面39に対するシュー内周面42の接触面圧が次第に大きくなる。
【0085】
図8に示すように、メインアーム8が中立位置にあるとき(すなわち、メインアーム8が、カム外周面39に対するシュー内周面42の接触面圧が最も小さい揺動角度にある状態のとき。また、メインアーム8が
図6(a)に示す位置にあるとき。)、シュー部材37の外周と、揺動軸挿入孔16の大径内径部36の内周との間には、全周にわたって隙間が設けられている。この隙間は、
図9に示すように、メインアーム8の揺動によりシュー部材37がカム部材34に対して相対回転するに従って徐々に狭まり、メインアーム8の揺動角度αが所定の大きさに達すると、シュー部材37の外周と揺動軸挿入孔16の大径内径部36の内周とが接触し、それ以上はシュー部材37がカム部材34に対して相対回転することができず、メインアーム8が係止された状態となる。
【0086】
この第2実施形態のオートテンショナ1を採用すると、
図1に示すメインアーム8がメインアーム揺動軸7を中心に揺動するときに、その揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクが、揺動抵抗付与機構33(
図9参照)からメインアーム8に付与されるので、クランクシャフト4の回転変動に伴って生じるベルト6の張力変動が大きい場合にも、メインアーム8を含むオートテンショナ1の全体が過度に揺動するのを防止することができ、その結果、ベルト6の振動による異音を生じたり、ベルト6の張力不足を生じたりするのを防止することが可能である。
【0087】
また、第2実施形態のオートテンショナ1は、
図1に示すメインアーム8が揺動したときに、そのメインアーム8の揺動エネルギーを、
図8に示すカム部材34とシュー部材37の間の摩擦エネルギーとして消費することができ、ダンパ効果を得ることができる。そのため、メインアーム8を含むオートテンショナ1の全体が過度に揺動するのを効果的に防止することが可能である。
【0088】
また、第2実施形態のオートテンショナ1は、
図8に示すように、シュー部材37が、カム部材34との接触により径方向に移動可能であり、そのシュー部材37が弾性部材40でカム部材34に向けて付勢されているので、カム部材34とシュー部材37の間の接触面圧が安定しており、カム部材34とシュー部材37の間の摩擦抵抗も安定している。
【0089】
また、第2実施形態のオートテンショナ1は、
図8、
図9に示すように、メインアーム8の揺動角度αが大きくなるにつれて、カム外周面39に対するシュー内周面42の接触面圧が次第に大きくなる。そのため、
図1に示すクランクシャフト4の回転変動に伴って生じるベルト6の張力変動が大きい場合にも、メインアーム8を含むオートテンショナ1の全体が過度に揺動するのを効果的に防止することが可能である。
【0090】
また、第2実施形態のオートテンショナ1は、揺動抵抗付与機構33が、メインアーム揺動軸7の外周とメインアーム8の揺動軸挿入孔16の内周との間に収容されているので、オートテンショナ1がコンパクトである。また、オートテンショナ1のベルト伝動装置への取り付け作業も容易である。
【0091】
図10~
図12に、この発明の第3実施形態を示す。第3実施形態は、第2実施形態と比べて、揺動抵抗付与機構33を構成するシュー部材37の構成のみが異なり、それ以外の構成は同一である。そのため、第1実施形態および第2実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
図11に示すように、シュー部材37は、カム部材34の径方向外側に対向して配置されたアーチ状の板ばねである。シュー部材37の外周と揺動軸挿入孔16の大径内径部36の内周との間には径方向隙間が設けられ、その径方向隙間の範囲で、シュー部材37が径方向に変形可能となっている。シュー部材37は、一対のカム外周面39に対応して一対設けられている。
【0093】
シュー部材37には、カム外周面39に摩擦接触するシュー内周面42が形成されている。シュー内周面42は、凸曲面状のカム外周面39に沿った凹曲面状の内周面である。シュー内周面42は、
図11に示すように、メインアーム8が中立位置にあるときにカム外周面39と非接触であり、
図12に示すように、メインアーム8が中立位置から揺動するとカム外周面39に接触するように形成されている。シュー内周面42は、常時、カム外周面39に接触するように形成してもよい。
【0094】
揺動軸挿入孔16の大径内径部36の内周には、径方向内方に突出する2つの回り止め突起43が周方向に間隔をおいて形成されている。回り止め突起43は、シュー部材37の両端を周方向に受け止めることで、各シュー部材37をメインアーム8に回り止めしている。また、シュー部材37の周方向両端は、大径内径部36の内周で径方向外側への移動が規制されている。
【0095】
ここで、シュー内周面42は、周方向(すなわち、メインアーム揺動軸7を中心とする真円に沿った方向)に対して傾斜した形状となっている。そのため、
図12に示すように、メインアーム8の揺動によりシュー部材37がカム部材34に対して相対回転するときに、その回転角度が大きくなるに従ってカム外周面39に対するシュー内周面42の接触面圧が次第に大きくなる。そして、メインアーム8の揺動角度が所定の大きさに達すると、それ以上はシュー部材37がカム部材34に対して相対回転することができず、メインアーム8が係止された状態となる。
【0096】
この第3実施形態のオートテンショナ1を採用すると、第2実施形態と同様、
図1に示すメインアーム8がメインアーム揺動軸7を中心に揺動するときに、その揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクが、揺動抵抗付与機構33(
図12参照)からメインアーム8に付与されるので、クランクシャフト4の回転変動に伴って生じるベルト6の張力変動が大きい場合にも、メインアーム8を含むオートテンショナ1の全体が過度に揺動するのを防止することができ、その結果、ベルト6の振動による異音を生じたり、ベルト6の張力不足を生じたりするのを防止することが可能である。
【0097】
また、第3実施形態のオートテンショナ1は、第2実施形態と同様、
図1に示すメインアーム8が揺動したときに、そのメインアーム8の揺動エネルギーを、
図11に示すカム部材34とシュー部材37の間の摩擦エネルギーとして消費することができ、ダンパ効果を得ることができる。そのため、メインアーム8を含むオートテンショナ1の全体が過度に揺動するのを効果的に防止することが可能である。
【0098】
また、第3実施形態のオートテンショナ1は、
図12に示すように、シュー部材37が、カム部材34との接触により径方向に変形可能な板ばねなので、カム部材34とシュー部材37の間の接触面圧が安定しており、カム部材34とシュー部材37の摩擦抵抗も安定している。また、シュー部材37が金属製の板ばねなので、シュー部材37の耐摩耗性に優れる。
【0099】
また、第3実施形態のオートテンショナ1は、
図11、
図12に示すように、メインアーム8の揺動角度が大きくなるにつれて、カム外周面39に対するシュー内周面42の接触面圧が次第に大きくなる。そのため、
図1に示すクランクシャフト4の回転変動に伴って生じるベルト6の張力変動が大きい場合にも、メインアーム8を含むオートテンショナ1の全体が過度に揺動するのを効果的に防止することが可能である。
【0100】
また、第3実施形態のオートテンショナ1は、第2実施形態と同様、揺動抵抗付与機構33が、メインアーム揺動軸7の外周とメインアーム8の揺動軸挿入孔16の内周との間に収容されているので、オートテンショナ1がコンパクトである。また、オートテンショナ1のベルト伝動装置への取り付け作業も容易である。
【0101】
図13~
図15に、この発明の第4実施形態を示す。第4実施形態は、第2実施形態と比べて、揺動抵抗付与機構33の構成のみが異なり、それ以外の構成は同一である。そのため、第1実施形態および第2実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
図13に示すように、メインアーム揺動軸7は、外周に雄ねじが形成されたねじ軸部22と、ねじ軸部22の一端に設けられた頭部23とを有する頭部付きボルトである。ねじ軸部22の外周には、頭部23の側から固定部材24の側に向かって順に、座金25、スリーブ26が嵌合して設けられている。座金25、スリーブ26は、頭部23から受ける軸力によって固定部材24に固定されている。
【0103】
スリーブ26は、揺動軸挿入孔16の内周に圧入された滑り軸受27の内周を支持する円筒状のスリーブ本体44と、スリーブ本体44の固定部材24の側の端部に一体に設けられたスリーブ端板45と、スリーブ端板45から固定部材24の側に延び出す周方向位置決め部28とを有する。スリーブ本体44の内周とねじ軸部22の外周との間には、ねじりコイルばね46を収容する環状の空間が形成されている。また、スリーブ本体44の固定部材24とは反対側の端部には、径方向に貫通する切り欠き47が形成されている。スリーブ端板45は、ねじ軸部22の外周に嵌合している。
【0104】
揺動抵抗付与機構33は、メインアーム8が揺動したときにねじり変形するねじりコイルばね46を有し、そのねじりコイルばね46の弾性力で揺動抵抗トルクを発生する機構である。ねじりコイルばね46の一端には、メインアーム8に回り止めされる第1腕部48が形成され、ねじりコイルばね46の他端には、メインアーム揺動軸7に回り止めされる第2腕部49が形成されている。
【0105】
図14に示すように、第1腕部48は、スリーブ本体44に形成された切り欠き47を径方向に貫通し、その切り欠き47を通って外径側に突出した部分が、揺動軸挿入孔16の内面に形成された係合凹部50に係合し、その係合によりねじりコイルばね46の一端がメインアーム8に回り止めされた状態となっている。第2腕部49は、スリーブ端板45に設けた係合穴51に係合し、その係合によりねじりコイルばね46の他端がメインアーム揺動軸7に回り止めされた状態となっている。
【0106】
係合凹部50の内面と第1腕部48との間には、周方向の遊びが設けられている。この遊びの範囲内では、メインアーム8が揺動してもねじりコイルばね46がねじり変形を生じず、
図15に示すように、遊びの範囲を超えてメインアーム8が揺動したときに、その揺動の大きさに応じてねじりコイルばね46がねじり変形するようになっている。係合凹部50の径方向内縁には、スリーブ本体44の切り欠き47の内面と周方向に対向するストッパ突起52が形成されている。
【0107】
この第4実施形態のオートテンショナ1は、
図15に示すように、メインアーム8の揺動によってねじりコイルばね46がねじり変形し、そのねじりコイルばね46の弾性力によってメインアーム8の揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクを生じる。そして、メインアーム8の揺動角度が所定の大きさに達すると、ストッパ突起52がスリーブ本体44の切り欠き47の内面に受け止められ、それ以上はメインアーム8がスリーブ本体44に対して相対回転することができず、メインアーム8が係止された状態となる。
【0108】
この第4実施形態のオートテンショナ1を採用すると、第2実施形態と同様、
図1に示すメインアーム8がメインアーム揺動軸7を中心に揺動するときに、その揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクが、揺動抵抗付与機構33からメインアーム8に付与されるので、クランクシャフト4の回転変動に伴って生じるベルト6の張力変動が大きい場合にも、メインアーム8を含むオートテンショナ1の全体が過度に揺動するのを防止することができ、その結果、ベルト6の振動による異音を生じたり、ベルト6の張力不足を生じたりするのを防止することが可能である。
【0109】
また、第4実施形態のオートテンショナ1は、第2実施形態と同様、揺動抵抗付与機構33が、メインアーム揺動軸7の外周とメインアーム8の揺動軸挿入孔16の内周との間に収容されているので、オートテンショナ1がコンパクトである。また、オートテンショナ1のベルト伝動装置への取り付け作業も容易である。
【0110】
また、第4実施形態のオートテンショナ1は、メインアーム8が揺動したときに発生する揺動抵抗トルクが、ねじりコイルばね46の弾性力によるものなので、摩擦抵抗で揺動抵抗トルクを発生する揺動抵抗付与機構33を採用したときと比較して、摩耗が生じにくく、長期にわたって安定した揺動抵抗トルクを発生することが可能である。
【0111】
図16~
図18に、この発明の第5実施形態を示す。第5実施形態は、第4実施形態と比べて、ストッパ突起52(
図14参照)が無い点のみが異なり、それ以外の構成は同一である。そのため、第4実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0112】
図17に示すように、ねじりコイルばね46の第1腕部48は、スリーブ本体44に形成された切り欠き47を径方向に貫通し、その切り欠き47を通って外径側に突出した部分が、揺動軸挿入孔16の内面に形成された係合凹部50に係合し、その係合によりねじりコイルばね46の一端がメインアーム8に回り止めされた状態となっている。ねじりコイルばね46の第1腕部48は、スリーブ本体44の切り欠き47の内面と周方向に対向している。
【0113】
この第5実施形態のオートテンショナ1は、
図17、
図18に示すように、メインアーム8の揺動によってねじりコイルばね46がねじり変形し、そのねじりコイルばね46の弾性力によってメインアーム8の揺動方向とは逆向きの揺動抵抗トルクを生じる。そして、メインアーム8の揺動角度が所定の大きさに達すると、
図18に示すように、ねじりコイルばね46の第1腕部48がスリーブ本体44の切り欠き47の内面に受け止められ、それ以上はメインアーム8がスリーブ本体44に対して相対回転することができず、メインアーム8が係止された状態となる。この第5実施形態のオートテンショナ1の作用効果は、第4実施形態と同様である。
【0114】
上記実施形態では、補機ベルト6が巻き掛けられる補機プーリを、スタータジェネレータの回転軸2に取り付けられたスタータジェネレータプーリ3と、クランクシャフト4に取り付けられたクランクプーリ5との2つのプーリで構成した補機駆動システムを例に挙げて説明したが、この発明は、補機ベルト6が巻き掛けられる補機プーリが、3つ以上のプーリ(スタータジェネレータプーリ3と、クランクプーリ5と、例えば、カーエアコンやウォータポンプ等の回転軸に取り付けられた他の補機プーリ)で構成される補機駆動システムにも適用することができる。
【0115】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 オートテンショナ
2 スタータジェネレータの回転軸
3 スタータジェネレータプーリ
4 クランクシャフト
5 クランクプーリ
6 補機ベルト
7 メインアーム揺動軸
8 メインアーム
9 第1のプーリ軸
10 第1のテンションプーリ
11 アーム関節軸
12 サブアーム
13 第2のプーリ軸
14 第2のテンションプーリ
15 テンションスプリング
16 揺動軸挿入孔
19 スプリング収容穴
21 スプリングキャップ
33 揺動抵抗付与機構
34 カム部材
37 シュー部材
39 カム外周面
40 弾性部材
42 シュー内周面
46 ねじりコイルばね