(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134916
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】光照射装置、および、光照射方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20220908BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220908BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220908BHJP
【FI】
B23K26/064 Z
G02B5/18
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034412
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小田 晃司
【テーマコード(参考)】
2H249
4E168
【Fターム(参考)】
2H249AA55
2H249AA64
4E168AD18
4E168CA06
4E168CA13
4E168CB03
4E168EA05
4E168EA11
4E168EA15
4E168FB06
(57)【要約】
【課題】本願明細書に開示される技術は、たとえば、光が照射される位置を高い精度で検出するための技術に関するものである。
【解決手段】本願明細書に開示される技術に関する光照射装置は、光を照射する光源と、回折光学素子と、検出部とを備える。前記回折光学素子は、前記光源から照射された前記光の一部を回折させる。また、前記検出部は、前記光源から照射された前記光のうち、前記回折光学素子を透過した前記光の位置を検出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光源と、
前記光源から照射された前記光の一部を回折させる回折光学素子と、
前記光源から照射された前記光のうち、前記回折光学素子を透過した前記光の位置を検出する検出部とを備える、
光照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射装置であり、
前記検出部は、前記光源と前記回折光学素子とを結ぶ直線上で、かつ、前記光源との間で前記回折光学素子を挟む位置に配置される、
光照射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光照射装置であり、
前記検出部において検出される前記光の位置の基準である基準位置を記録する記録部と、
前記検出部において検出された前記光の位置と前記基準位置とを比較して、当該比較の結果に応じて前記光源の位置を調整する調整部とをさらに備える、
光照射装置。
【請求項4】
光源から照射された前記光の一部を回折光学素子で回折させ、他の一部を透過させる工程と、
前記光源から照射された前記光のうち、前記回折光学素子を透過した前記光の位置を検出する工程とを備える、
光照射方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光照射方法であり、
前記回折光学素子を透過した前記光が検出される位置の基準である基準位置と、前記回折光学素子を透過した前記光の位置を検出する工程において検出された前記光の位置とを比較して、当該比較の結果に応じて前記光源の位置を調整する工程をさらに備える、
光照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、照射された光を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザー光照射などの光照射によって対象物を加工する光加工技術が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の光加工技術によって微細な構造を形成する場合、光が照射される位置が高い精度で制御されることが重要である。
【0005】
特に、光照射装置の構成要素が経年劣化するなどによって光が照射される位置が変化してしまう場合があるため、照射される光の位置を高い精度で検出することは重要である。
【0006】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、光が照射される位置を高い精度で検出するための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に開示される技術の第1の態様である光照射装置は、光を照射する光源と、前記光源から照射された前記光の一部を回折させる回折光学素子と、前記光源から照射された前記光のうち、前記回折光学素子を透過した前記光の位置を検出する検出部とを備える。
【0008】
本願明細書に開示される技術の第2の態様である光照射装置は、第1の態様である光照射装置に関連し、前記検出部は、前記光源と前記回折光学素子とを結ぶ直線上で、かつ、前記光源との間で前記回折光学素子を挟む位置に配置される。
【0009】
本願明細書に開示される技術の第3の態様である光照射装置は、第1または2の態様である光照射装置に関連し、前記検出部において検出される前記光の位置の基準である基準位置を記録する記録部と、前記検出部において検出された前記光の位置と前記基準位置とを比較して、当該比較の結果に応じて前記光源の位置を調整する調整部とをさらに備える。
【0010】
本願明細書に開示される技術の第4の態様である光照射方法は、光源から照射された前記光の一部を回折光学素子で回折させ、他の一部を透過させる工程と、前記光源から照射された前記光のうち、前記回折光学素子を透過した前記光の位置を検出する工程とを備える。
【0011】
本願明細書に開示される技術の第5の態様である光照射方法は、第4の態様である光照射方法に関連し、前記回折光学素子を透過した前記光が検出される位置の基準である基準位置と、前記回折光学素子を透過した前記光の位置を検出する工程において検出された前記光の位置とを比較して、当該比較の結果に応じて前記光源の位置を調整する工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
本願明細書に開示される技術の少なくとも第1、4の態様によれば、回折光学素子を透過した光の位置に基づいて、回折光学素子で回折される光が照射される位置を高い精度で検出することができる。
【0013】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に関する、光照射装置の構成の例を概略的に示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に関する光照射装置の、真空チャンバの内部構成および周辺構成の例を示す断面図である。
【
図3】
図1および
図2に例が示された光照射部の内部構成の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0016】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0017】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0018】
また、本願明細書に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0019】
また、本願明細書に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0020】
また、本願明細書に記載される説明において、「…軸正方向」または「…軸負方向」などの表現は、図示される…軸の矢印に沿う方向を正方向とし、図示される…軸の矢印とは反対側の方向を負方向とするものである。
【0021】
<実施の形態>
以下、本実施の形態に関する光照射装置について説明する。なお、以下の実施の形態においては、一例としてチャンバ内が真空または減圧雰囲気下とされる光照射装置が記載されるが、チャンバ内が真空でない場合にも、同様に適用可能である。
【0022】
<光照射装置の構成について>
図1は、本実施の形態に関する光照射装置1の構成の例を概略的に示す斜視図である。
図1においては、真空チャンバ12を支持するチャンバフレーム、または、実際に接続される配線などは、便宜のため図示が省略されている。なお、本実施の形態における「真空」とは、基板Wの特性劣化を防止するために高真空(たとえば、0.00001Pa)であることが望ましいが、当該高真空に達しない真空度である場合も含むものとする。
【0023】
図1に例が示されるように、光照射装置1は、真空チャンバ12と、石定盤などの外部固定部14と、真空チャンバ12と外部固定部14とを接続する、たとえばステンレスなどで形成された伸縮性部材であるベローズ16Aと、真空チャンバ12内に光を照射する光照射部18と、真空チャンバ12内を減圧して真空状態にする真空ポンプ21と、光照射装置1のそれぞれの駆動部を制御する制御部22とを備える。上記では、伸縮性部材の例として、ステンレスなどで形成されたベローズが示されているが、求められる仕様に応じて、ステンレス以外の金属で形成された伸縮性部材が採用されてもよいし、樹脂などで形成された伸縮性部材が採用されてもよい。また、伸縮性部材の形状は、上記のベローズ16Aのような蛇腹形状でなくてもよい。
【0024】
真空チャンバ12は、内部に基板Wが収容される空間を有する。処理対象となる基板Wには、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのflat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、セラミック基板、電界放出ディスプレイ(field emission display、すなわち、FED)用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。なお、当該基板Wは、たとえば、上面に薄膜が形成された状態の基板である。
【0025】
また、真空チャンバ12の側面には、基板Wを搬入および搬出する際に基板Wが通過するための開口部12Aが形成されている。開口部12Aは、真空チャンバ12が真空状態となる際に適宜閉じられる。
【0026】
光照射部18は、真空チャンバ12内に収容された基板Wの上面に向けて光を照射する。光照射部18は、たとえばレーザー光を照射することによって基板Wのアブレーション加工を行う。なお、光照射部18は、加工などの目的に応じて、たとえば電子線などの光を照射するものであってもよい。光照射部18は、図示しない照射窓(石英などで形成される透明板)を介して、真空チャンバ12の外部から真空チャンバ12内に収容された基板Wの上面に光を照射する。そして、真空チャンバ12内の基板Wが光照射部18に対して相対的に移動することによって、または、光照射部18における光学系の制御によって、光が基板Wの上面を走査する。また、光照射部18は、外部固定部14に固定された架台24の上面に配置される。
【0027】
制御部22は、たとえば、ハードディスクドライブ(Hard disk drive、すなわち、HDD)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、すなわち、RAM)、リードオンリーメモリ(read only memory、すなわち、ROM)、フラッシュメモリ、揮発性または不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVDなどを含むメモリ(記憶媒体)を含む記憶装置と、たとえば、当該記憶装置、外部のCD-ROM、外部のDVD-ROM、または、外部のフラッシュメモリなどに格納されたプログラムを実行する中央演算処理装置(central processing unit、すなわち、CPU)などの処理回路と、マウス、キーボード、タッチパネル、または、各種スイッチなどの、情報を入力することができる入力装置と、ディスプレイ、液晶表示装置、または、ランプなどの、情報を出力することができる出力装置とを含むことができる。
【0028】
制御部22は、光照射部18における光源の出力および光が照射される方向の調整、または、真空ポンプ21の出力制御などを行う。
【0029】
図2は、本実施の形態に関する光照射装置1の、真空チャンバ12の内部構成および周辺構成の例を示す断面図である。
図2に例が示されるように、真空チャンバ12の内部には、基板Wが上面に配置されるステージ42と、Y軸方向に移動可能であり、かつ、ステージ42を下方から支持するスライダー44と、真空チャンバ12とは独立して外部固定部14に固定されたベース46と、ベース46に固定され、かつ、Y軸方向に延びるリニアガイド48と、スライダー44をリニアガイド48に沿ってY軸方向に移動させるリニアモータ機構50と、ステージ42に形成された貫通孔(ここでは図示せず)を貫通して基板Wを支持するリフトピン52Aを有するリフトピン機構52とを備える。
【0030】
ステージ42は、基板Wの加工面を上方に向けつつ、基板Wを略水平に保持する。ステージ42を支持するスライダー44がリニアモータ機構50によってY軸方向に移動し、また、光照射部18から照射される光がX軸方向に走査されることによって、平面視において基板Wの加工領域の全面を光によって走査することが可能となる。または、光照射部18から照射される光が、X軸方向およびY軸方向に走査されることによって、平面視において基板Wの加工領域の全面を光によって走査することが可能となる。なお、リフトピン機構52は、ベース46に固定される。
【0031】
リニアモータ機構50は、真空チャンバ12の側面に形成された開口部12Bを介して、真空チャンバ12の側方に位置する外部固定部14に固定される。具体的には、リニアモータ機構50は、開口部12Bに溶接されるベローズ16Aの中を通る中空の柱状部材14Aの端部に固定される。この際、リニアモータ機構50に接続される配線などは、柱状部材14Aの内部を通って真空チャンバ12の外部に導出される。なお、外部固定部14に含まれる柱状部材14Aは、外部固定部14に含まれる外部部材14Bに固定される。また、柱状部材14Aは、真空チャンバ12の側面に接続されたベローズ16Aとは接触しない。
【0032】
ベース46は、真空チャンバ12の底面に形成された開口部12Cを介して、真空チャンバ12の下方に位置する外部固定部14に固定される。具体的には、ベース46は、開口部12Cに溶接されるベローズ16Bの中を通る柱状部材14Cの端部に固定される。なお、外部固定部14に含まれる柱状部材14Cは、外部固定部14に含まれる外部部材14Bに固定される。また、柱状部材14Cは、真空チャンバ12の底面に接続されたベローズ16Bとは接触しない。
【0033】
図2では、外部固定部14は、真空チャンバ12の側方および下方に渡って配置されるが、これらの位置における外部固定部14が連続していることは必須ではなく、これらの位置に分散して設けられていてもよいし、いずれかの位置のみに設けられていてもよい。また、真空チャンバ12は、ベローズ16Bとは別にチャンバフレーム(図示せず)によって鉛直方向下方から支持されて固定されるが、当該チャンバフレームは、外部固定部14とは独立して設けられる。
【0034】
図3は、
図1および
図2に例が示された光照射部18の内部構成の例を示す平面図である。
図3に例が示されるように、光照射部18は、たとえばレーザー光を出力する光源18Aと、回折光学素子の一例としての音響光学素子18Bと、音響光学素子18Bから出射された光を基板Wへ照射させるための光学系18Cと、音響光学素子18Bを透過した光を検出するための検出部の一例としてのカメラ18Dと、音響光学素子18Bに制御信号を出力するドライバ18Eとを備える。
【0035】
音響光学素子18Bは、内部に備える結晶182を圧電素子で振動させて結晶182内に疎密の定常波を形成し、これを回折格子として利用する光学素子である。このように形成される回折格子の格子幅は、結晶182に印加される振動周波数で調整可能である。そして、回折格子の格子幅を調整することによって、音響光学素子18Bでブラッグの法則に従って回折する光の回折角を任意の角度に制御することができる。
【0036】
図3に示されるように、結晶182に形成される回折格子の格子面に対する角度が角度θ(すなわち、ブラッグ角)である場合、回折角は角度2θとなる。
【0037】
ここで、音響光学素子18Bにおいて光が回折する際、音響光学素子18Bに入射した光である入射光282の一部(たとえば、10%程度)は、音響光学素子18Bにおいて回折せずに音響光学素子18Bを透過する。この透過した光である0次光286は、後述のように、カメラ18Dにおいて検出される。
【0038】
ドライバ18Eは、音響光学素子18Bに対し、任意の振動周波数の制御信号(RF信号)を出力する。上記のとおり、音響光学素子18Bにおける回折角は結晶182に印加される振動周波数によって定まるため、ドライバ18Eが出力する制御信号によって、音響光学素子18Bにおける回折角(すなわち、音響光学素子18Bに入射した光である入射光282と、音響光学素子18Bで回折して出射された光である1次光284との間の角度)を制御可能である。
【0039】
光学系18Cは、音響光学素子18Bで回折して出射された1次光284を、光照射部18の照射口まで誘導する光学系である。光学系18Cは、たとえば、1次光284を反射するミラー382と、1次光284の照射方向を調整するガルバノミラー384と、ガルバノミラー384で照射方向が調整された1次光284を集光する図示しない集光レンズとを備える。
【0040】
カメラ18Dは、たとえば、CCDカメラである。カメラ18Dは、音響光学素子18Bにおいて回折されずに透過した光(直進光)である0次光286の位置を検出する。ここで、
図3に示された例では、カメラ18Dは0次光286の直線光路上(すなわち、入射光282の光路の延長線上)に配置されているが、カメラ18Dの配置はこのような場合に限られるものではない。すなわち、カメラ18Dは、図示しない光学系に誘導されて所定の方向に誘導された光路上に配置されて、0次光286の位置を検出するものであってもよい。ただし、カメラ18Dが0次光286の直線光路上に配置されている場合(すなわち、カメラ18Dが、光源18Aと音響光学素子18Bとを結ぶ直線上で、かつ、光源18Aとの間で音響光学素子18Bを挟む位置に配置される場合)には、他の光学系を介さずに直接0次光286を検出することができる。そのため、他の光学系を介することで生じ得る誤差によって、0次光286の位置の検出精度が低下することがない。
【0041】
<光照射装置の動作について>
次に、
図4を参照しつつ、本実施の形態に関する光照射装置の動作、特に、光照射部18における動作を説明する。
図4は、光照射部18の動作を説明するための図である。
【0042】
光源18Aから入射光282が音響光学素子18Bにおいて回折し、さらに、1次光284として出射される場合、1次光284の出射方向は、音響光学素子18Bにおいて回折せずに透過した0次光286の、カメラ18Dにおける検出位置に基づいて高い精度で把握することができる。
【0043】
入射光282の結晶182における格子面に対する角度が角度θである場合、ブラッグの法則に従って回折する光の回折角は角度2θとなる。そのため、カメラ18Dにおいて0次光286の位置が検出されれば、入射光282が入射した結晶182の格子面を中心として入射方向に対する回折角である角度2θとなる方向が、1次光284の出射方向となる。
【0044】
次に、光源18Aの配置がずれているために、入射光282の入射位置がずれる場合について述べる。
【0045】
上記のような場合、本来の配置からずれた位置(
図4においては、X軸負方向にずれた位置)に配置された光源18A(
図4において点線で示される)から出射された光は、入射光282Aとして音響光学素子18Bにおける結晶182に入射する。
【0046】
そして、入射光282Aの一部が音響光学素子18Bにおいて回折し、さらに、1次光284Aとして出射される。一方で、入射光282Aの他の一部は音響光学素子18Bにおいて回折せずに透過し、さらに、0次光286Aとしてカメラ18Dにおいてその位置が検出される。上記と同様に、1次光284Aの出射方向は、0次光286Aの検出位置に基づいて高い精度で把握することができる。
【0047】
ここで、カメラ18Dにおいて検出される0次光286Aの位置は、入射光282Aのずれ、すなわち、光源18Aの配置のずれを反映している。よって、本来の配置に位置する光源18Aから出射された入射光282に基づく0次光286の検出位置を基準位置として0次光286Aの検出位置の基準に対する変化量を算出すれば、当該変化量に基づいて光源18Aの配置の調整が可能である。
【0048】
当該調整に際しては、制御部22の記憶装置においてあらかじめ記録されている上記の基準位置と、実際に検出された0次光286Aの検出位置とを、制御部22におけるCPUを用いて比較を行う。
【0049】
当該調整によれば、1次光284Aの出射方向の調整も可能となる。すなわち、制御部22は、カメラ18Dにおける0次光の検出位置を基準となる検出位置と比較した結果に基づいて、1次光の出射方向を基準となる方向(上記の基準位置で0次光が検出される場合の1次光の出射方向)に調整することができる。
【0050】
当該調整は、入射光に基づく0次光がカメラ18Dで検出されれば可能であるため、1次光を出射している間にも適宜行うことができる。よって、カメラ18Dにおける0次光の検出に基づけば、1次光の出射方向のフィードバック制御をリアルタイムで行うことができる。
【0051】
なお、上記の光源18Aの配置の調整は、音響光学素子18Bに入射する入射光と、音響光学素子18Bとの間の相対的な位置関係が調整されればよいため、光源18Aを直接移動させる場合以外にも、音響光学素子18Bに入射する入射光の入射位置を図示しない光学系を用いて移動させる場合、または、音響光学素子18Bを移動させる場合であってもよい。
【0052】
また、上記の基準位置は、本来の配置に位置する光源18Aを用いてあらかじめ測定されたカメラ18Dにおける0次光286の検出位置であってもよいし、本来の配置に位置する光源18Aから入射される入射光282に基づいて算出される、0次光286の理論上の検出位置であってもよい。
【0053】
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。すなわち、以下では便宜上、対応づけられる具体的な構成のうちのいずれか1つのみが代表して記載される場合があるが、代表して記載された具体的な構成が対応づけられる他の具体的な構成に置き換えられてもよい。
【0054】
以上に記載された実施の形態によれば、光照射装置は、光を照射する光源18Aと、回折光学素子と、検出部とを備える。ここで、回折光学素子は、たとえば、音響光学素子18Bなどに対応するものである。また、検出部は、たとえば、カメラ18Dなどに対応するものである。音響光学素子18Bは、光源18Aから照射された光(すなわち、入射光282)の一部を回折させる。カメラ18Dは、光源18Aから照射された光のうち、音響光学素子18Bを透過した光(たとえば、0次光286)の位置を検出する。
【0055】
このような構成によれば、音響光学素子18Bを透過した0次光286の位置に基づいて、音響光学素子18Bで回折される光(たとえば、1次光284)が照射される位置を高い精度で検出することができる。また、このような構成によれば、音響光学素子18Bにおいて透過する0次光286を用いて位置検出が行われる。そのため、音響光学素子18Bで回折した後の1次光284の位置を把握するために、音響光学素子18Bで回折した後の1次光284自身を分岐させて直接検出する必要がない。よって、1次光284を分岐させるための光学系が不要であり、また、照射対象に到達する1次光284の出力を減少させずに音響光学素子18Bで回折した後の1次光284の位置を把握することができる。また、音響光学素子18Bを透過する0次光286は入射光282の一部(たとえば、10%程度)であり入射光282よりも出力が低い光であるため、検出部としてのカメラ18Dの劣化も抑制することができる。
【0056】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0057】
また、以上に記載された実施の形態によれば、カメラ18Dは、光源18Aと音響光学素子18Bとを結ぶ直線上で、かつ、光源18Aとの間で音響光学素子18Bを挟む位置に配置される。このような構成によれば、カメラ18Dが0次光286の直線光路上に配置されている場合には、他の光学系を介さずに直接0次光286を検出することができるため、他の光学系を介することで生じ得る誤差によって、0次光286の位置の検出精度が低下することがない。
【0058】
また、以上に記載された実施の形態によれば、光照射装置は、記録部と、調整部とを備える。ここで、記録部は、たとえば、制御部22におけるメモリなどの記憶装置に対応するものである。また、調整部は、たとえば、制御部22におけるCPUなどに対応するものである。記録部は、カメラ18Dにおいて検出される光の位置の基準である基準位置を記録する。そして、調整部は、カメラ18Dにおいて検出された光の位置と基準位置とを比較して、当該比較の結果に応じて光源18Aの位置を調整する。このような構成によれば、光源18Aの位置を反映する1次光284Aの出射方向の調整が可能となる。すなわち、経年劣化などによって位置がずれ得る光源18Aに対して、カメラ18Dにおける0次光の検出位置を基準となる検出位置と比較した結果に基づいて、1次光の出射方向を基準となる方向に調整することができる。また、当該調整は、入射光に基づく0次光がカメラ18Dで検出されれば可能であるため、1次光を出射している間にも適宜行うことができる。よって、カメラ18Dにおける0次光の検出に基づけば、1次光の出射方向のフィードバック制御をリアルタイムで行うことができる。
【0059】
以上に記載された実施の形態によれば、光照射方法において、光源18Aから照射された光の一部を音響光学素子18Bで回折させ、他の一部を透過させる。そして、光源18Aから照射された光のうち、音響光学素子18Bを透過した光の位置を検出する。
【0060】
このような構成によれば、音響光学素子18Bを透過した0次光286の位置に基づいて、音響光学素子18Bで回折される光(たとえば、1次光284)が照射される位置を高い精度で検出することができる。
【0061】
なお、特段の制限がない場合には、それぞれの処理が行われる順序は変更することができる。
【0062】
また、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0063】
また、以上に記載された実施の形態によれば、光照射方法において、音響光学素子18Bを透過した光が検出される位置の基準である基準位置と、音響光学素子18Bを透過した光の位置を検出する工程において検出された光の位置とを比較して、当該比較の結果に応じて光源18Aの位置を調整する工程を備える。このような構成によれば、光源18Aの位置を反映する1次光284Aの出射方向の調整が可能となる。すなわち、経年劣化などによって位置がずれ得る光源18Aに対して、カメラ18Dにおける0次光の検出位置を基準となる検出位置と比較した結果に基づいて、1次光の出射方向を基準となる方向に調整することができる。
【0064】
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、限定的なものではないものとする。
【0065】
したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 光照射装置
12 真空チャンバ
12A,12B,12C 開口部
14 外部固定部
14B 外部部材
14A,14C 柱状部材
16A,16B ベローズ
18 光照射部
18A 光源
18B 音響光学素子
18C 光学系
18D カメラ
18E ドライバ
21 真空ポンプ
22 制御部
24 架台
42 ステージ
44 スライダー
46 ベース
48 リニアガイド
50 リニアモータ機構
52 リフトピン機構
52A リフトピン
182 結晶
282,282A 入射光
284,284A 1次光
286,286A 0次光
382 ミラー
384 ガルバノミラー