(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134954
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】自動駐車装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B60W30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034483
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】陶山 羊三
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241CD07
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA52Z
3D241DB32Z
3D241DC33Z
(57)【要約】
【課題】車両を移動困難な状況から効率的に離脱させ、車両を駐車区域内に駐車する駐車制御を効率化する。
【解決手段】本発明の自動駐車装置は、駐車区域内に車両を駐車する駐車制御を実行する駐車制御部を有し、駐車制御部は、中止条件が満たされた場合に、自動停止を実施し、かつ離脱条件が満たされるように離脱制御を実行する。中止条件は、駐車制御が妨げられる状況に基づいて設定され、離脱条件は、駐車制御実行前に前面道路を走行してきた車両の幅方向の中心軸線に沿うと共に該車両の進行方向を向く第1単位ベクトルと、離脱制御実行中にて車両の中心軸線に沿って車両前方を向く第2単位ベクトルの成す角度である離脱角度が、0度~離脱角度基準値の鋭角離脱範囲内にあるか又は(180度-離脱角度基準値)~180度の鈍角離脱範囲内にある離脱充足状態に基づいて設定され、離脱角度基準値は前面道路の幅が大きいほど大きく設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の駐車区域内への車両の駐車のために前記車両の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする駐車制御を実行可能とするように構成される駐車制御部を備える自動駐車装置であって、
前記駐車制御部は、所定の中止条件が満たされた場合に、前記自動停止を実施し、かつ所定の離脱条件が満たされるように前記車両を移動させるために前記車両の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする離脱制御を実行するように構成され、
前記中止条件は、前記駐車制御の実行が妨げられる状況に基づいて設定され、
前記離脱条件は、離脱角度が鋭角離脱範囲内及び鈍角離脱範囲内のいずれかにある離脱充足状態に基づいて定められ、
前記離脱角度が、前記駐車制御の実行前に前記駐車区域に隣接する前面道路を走行してきた前記車両の幅方向の中心軸線に沿うと共にこの車両の進行方向を向く第1単位ベクトルと、前記離脱制御の実行中にて前記車両の幅方向の中心軸線に沿って車両前方を向く第2単位ベクトルの成す角度であり、
前記鋭角離脱範囲が0度以上かつ所定の離脱角度基準値以下であり、
前記鈍角離脱範囲が(180度-所定の離脱角度基準値)以上かつ180度以下であり、
前記離脱角度基準値が0度以上かつ90度未満の範囲内にあり、
前記前面道路が、前記駐車区域に対して前記駐車区域の前後方向にて前記車両が前記駐車制御中に進入してくる側に位置し、かつ前記駐車区域の前後方向と交差する方向に延びており、
前記離脱角度基準値は、前記前面道路の幅が大きいほど大きく設定されるようになっている、自動駐車装置。
【請求項2】
前記離脱条件は、前記車両が前記離脱充足状態で走行を継続した距離である離脱継続距離が、所定の離脱継続距離閾値以上である場合に満たされるようになっている、請求項1に記載の自動駐車装置。
【請求項3】
前記離脱充足状態が、前記離脱角度が前記鋭角離脱範囲内のみにある状態となっている、請求項1又は2に記載の自動駐車装置。
【請求項4】
前記駐車制御部は、前記離脱制御中にて所定の駐車可能条件が満たされた場合に、前記離脱制御を停止し、かつ前記駐車制御を再び実行するように構成され、
前記駐車可能条件が、前記車両を前記駐車区域に駐車できる状況に基づいて設定されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の駐車区域内に車両を駐車するために車両を自動運転可能とする自動駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両を特定の駐車区域内に駐車するように車両の自動運転を実施可能とする自動駐車装置の普及が進んでいる。このような自動駐車装置は、それを搭載した車両を現在地から駐車区域内に移動させるためのルートを算出し、かつ算出されたルートに沿った車両の自動運転を実施することができる。しかしながら、自動運転中においては、予期せぬ事態のために車両が算出されたルートどおりに移動できない状況に陥るおそれがある。そのため、このような状況から車両を離脱可能とするための様々な自動駐車装置が提案されている。
【0003】
このような自動駐車装置の一例として、ドライバのステアリング操作に基づいて車輪の転舵角を制御するステアリングアクチュエータと、目標停車位置までの車両の移動軌跡(ルート)を予め記憶する記憶手段と、ドライバのステアリング操作に代えて、記憶手段の記憶内容に基づいてステアリングアクチュエータを自動的に制御する制御手段と、ドライバの操作によって車輪を制動する制動手段と、車両の実際の移動方向を検出する移動方向検出手段とを有する車両の自動操舵装置であって、移動方向検出手段により検出された車両の移動方向がセレクトレバーにより選択された車両の移動方向と異なる場合に、制御手段が自動操舵制御を中止するか、又は記憶手段が車両を元の移動経路に向けて逆行させるように移動軌跡を出力する、自動操舵装置が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記自動駐車装置の一例においては、走行路の傾斜、路面状況等の変化に起因して車両が初期に算出されたルートに沿って移動できなくなった場合に、自動駐車装置が、車両を停止させるか、又は車両を元のルートに戻すことができるに過ぎない。さらに、自動駐車装置は、車両に搭載されるソナーやカメラ等のセンサを利用して車両及び障害物間の距離を測定しながらこの距離を可能な限り小さくするように車両の自動運転を実施可能に構成される。そのため、自動駐車装置にて算出されるルートは、ドライバの運転操作によっては車両及び障害物の接触が回避困難となるほど車両及び障害物間の距離を小さくするように設定されることがある。
【0006】
そのため、上記自動駐車装置の一例において、例えば、自動駐車開始時点に認識されていなかった新たな障害物を自動駐車開始時点に算出されたルート上に検出し、その結果として、車両が当該ルートに沿って移動困難な状況に陥った場合、自動駐車制御によって、この移動困難な状況から車両を離脱させることができず、さらには、ドライバの運転操作によって、移動困難な状況から車両を離脱させることも難しくなるおそれがある。
【0007】
このような実情を鑑みると、自動駐車装置において、車両が自動運転中に移動困難な状況に陥った場合であっても、この移動困難な状況から車両を効率的に離脱させること、特に、この移動困難な状況から車両をドライバの運転操作によって容易に移動可能な状況に向けて効率的に離脱させること、さらには、特定の駐車区域内に車両を駐車するための駐車制御を効率化することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係る自動駐車装置は、特定の駐車区域内への車両の駐車のために前記車両の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする駐車制御を実行可能とするように構成される駐車制御部を備える自動駐車装置であって、前記駐車制御部は、所定の中止条件が満たされた場合に、前記自動停止を実施し、かつ所定の離脱条件が満たされるように前記車両を移動させるために前記車両の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする離脱制御を実行するように構成され、前記中止条件は、前記駐車制御の実行が妨げられる状況に基づいて設定され、前記離脱条件は、離脱角度が鋭角離脱範囲内及び鈍角離脱範囲内のいずれかにある離脱充足状態に基づいて定められ、前記離脱角度が、前記駐車制御の実行前に前記駐車区域に隣接する前面道路を走行してきた前記車両の幅方向の中心軸線に沿うと共にこの車両の進行方向を向く第1単位ベクトルと、前記離脱制御の実行中にて前記車両の幅方向の中心軸線に沿って車両前方を向く第2単位ベクトルの成す角度であり、前記鋭角離脱範囲が、0度以上かつ所定の離脱角度基準値以下であり、前記鈍角離脱範囲が、(180度-所定の離脱角度基準値)以上かつ180度以下であり、前記離脱角度基準値が、0度以上かつ90度未満の範囲内にあり、前記前面道路が、前記駐車区域に対して前記駐車区域の前後方向にて前記車両が前記駐車制御中に進入してくる側に位置し、かつ前記駐車区域の前後方向と交差する方向に延びており、前記離脱角度基準値は、前記前面道路の幅が大きいほど大きく設定されるようになっている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る自動駐車装置においては、車両が自動運転中に移動困難な状況に陥った場合であっても、この移動困難な状況から車両を効率的に離脱させることができ、特に、この移動困難な状況から車両をドライバの運転操作によって容易に移動可能な状況に効率的に向けて離脱させることができ、さらには、特定の駐車区域内に車両を駐車するための駐車制御を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る自動駐車装置を有する車両の構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態において、駐車制御の実行中における車両及びその周辺の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態において、駐車制御の実行途中で中止条件が満たされた状態の車両及びその周辺の一例を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態において、離脱制御にて離脱条件が満たされた状態の自車両及びその周辺の一例を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態において、離脱制御の実行途中で駐車可能条件が満たされた状態の車両及びその周辺の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る自動駐車装置の離脱制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る自動駐車装置について以下に説明する。なお、本実施形態に係る自動駐車装置を適用する車両は自動車となっている。しかしながら、自動駐車装置は、自動車以外の車両にも適用することができる。また、以下の説明において、左側は、車両前方を向いた状態での左側を指し、かつ右側は、車両前方を向いた状態での右側を指す。なお、
図2~
図5においては、車両1の前方側を片側矢印Fにより示す。
【0012】
「自動駐車装置及び車両の概略」
図1~
図5を参照して、本実施形態に係る自動駐車装置10及び車両1の概略について説明する。本実施形態に係る自動駐車装置10及び車両1は、概略的には次のように構成される。
図1に示すように、車両1は、自動駐車装置10を有する。自動駐車装置10は、駐車制御部11を有する。
図1及び
図2を参照すると、駐車制御部11は、車両1を特定の駐車区域P内に駐車するために車両1の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする駐車制御を実行可能とする。
【0013】
図1、
図3、及び
図4を参照すると、駐車制御部11は、所定の中止条件が満たされた場合に、自動停止を実施し、かつ所定の離脱条件が満たされるように車両1を移動させるために車両の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする離脱制御を実行する。ここで、
図3に示すように、中止条件は、駐車制御の実行が妨げられる状況に基づいて設定される。
【0014】
図4に示すように、離脱条件は、離脱角度Gが鋭角離脱範囲内及び鈍角離脱範囲内のいずれかにある離脱充足状態に基づいて定められる。離脱角度Gは、駐車制御の実行前に駐車区域Pに隣接する前面道路Rを走行してきた車両1の幅方向の中心軸線に沿うと共にこの車両1の進行方向を向く第1単位ベクトルL1と、離脱制御の実行中にて車両1の幅方向の中心軸線に沿って車両前方を向く第2単位ベクトルL2の成す角度である。
【0015】
鋭角離脱範囲は、0度以上かつ所定の離脱角度基準値G1以下である。鈍角離脱範囲は、(180度-所定の離脱角度基準値G1)以上かつ180度以下である。離脱角度基準値G1は、0度以上かつ90度未満の範囲内にある。前面道路Rは、駐車区域Pに対して駐車区域Pの前後方向にて車両1が駐車制御中に進入してくる側に位置し、かつ駐車区域Pの前後方向と交差する方向に延びる道路Rである。このような自動駐車装置10において、離脱角度基準値G1は、前面道路Rの幅Wが大きいほど大きく設定される。
【0016】
さらに、本実施形態に係る自動駐車装置10及び車両1は、概略的には次のように構成することができる。
図4を参照すると、離脱制御を完了させるための判断基準となる離脱条件は、上述のように離脱角度Gが鋭角離脱範囲内及び鈍角離脱範囲内のいずれかにある離脱充足状態で車両1が走行を継続した距離Dである離脱継続距離Dが、所定の離脱継続距離閾値D1以上である場合に満たされるようになっている。さらに、離脱充足状態は、離脱角度Gが鋭角離脱範囲内のみにある状態とすることができる。この場合、離脱充足状態の車両1は、駐車制御の実行前に前面道路Rを走行してきた車両1の向きと実質的に同じ向きに向けることができる。
【0017】
図1及び
図5を参照すると、駐車制御部11は、離脱制御中にて所定の駐車可能条件が満たされた場合に、離脱制御を停止し、かつ駐車制御を再び実行するように構成される。駐車可能条件は、車両1を駐車区域Pに駐車できる状況に基づいて設定される。
【0018】
「車両の詳細」
図1を参照すると、本実施形態に係る車両1は、詳細には次のように構成することができる。車両1は、この車両1を前進駆動させるためのDレンジ(ドライブレンジ)と、車両1を後退駆動させるためのRレンジ(リバースレンジ)と、車両1を停止させるためのPレンジ(パーキングレンジ)との間における切換を可能とする自動変速装置20を有する。車両1はまた、ステアリングホイール等を含む操舵装置30を有する。車両1は、アクセルペダル等を含む加速装置40を有する。車両1は、ブレーキペダル等を含む制動装置50を有する。
【0019】
車両1は、この車両1の情報及び車両1の周辺の情報を取得可能に構成される情報取得装置60を有する。情報取得装置60は、車両1の周辺に存在する物体を検出可能に構成される物体検出部61を有する。物体検出部61は、レーザ光、超音波、ミリ波等を送受信することによって車両1の周辺に存在する物体との距離を検出可能に構成される。例えば、物体検出部61は、ソナーセンサを含むことができる。しかしながら、物体検出部は、ソナーセンサの代わりに又はソナーセンサに加えて、赤外線ライダ、ミリ波レーダ等を有することもできる。
【0020】
情報取得装置60は、車両1の周辺領域を撮像可能に構成される撮像部62を有する。撮像部62は、カメラを含むことができる。しかしながら、撮像部は、カメラ以外の撮像手段を含むこともできる。
【0021】
情報取得装置60は、車両1の走行距離を計測可能とする走行距離計測部63を有する。走行距離計測部63は、車速及び経過時間から走行距離を算出する走行距離算出手段を含むことができる。しかしながら、走行距離計測部は、走行距離算出手段の代わりに、又はこれに加えて、GNSS(Global Navigation Satellite System)の走行距離計測部等を含むことができる。
【0022】
「自動駐車装置の詳細」
図1~
図5を参照すると、本実施形態に係る自動駐車装置10は、詳細には次のように構成することができる。自動駐車装置10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、入力インターフェース、出力インターフェース等の電子部品と、かかる電子部品を配置した電気回路とを含むように構成される。ROMには、種々の制御定数、種々のマップ等と一緒に、自動駐車装置10の機能を発揮するためのプログラムが記憶されている。そのため、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行するときに、自動駐車装置10の機能を発揮することができる。しかしながら、自動駐車装置はこれに限定されない。
【0023】
上述のように、駐車制御部11は、駐車制御及び離脱制御において自動前進、自動後退、及び自動停止を実施することができる。自動駐車装置10の駐車制御部11は、自動前進において、自動変速装置20をDレンジに設定するように制御する。駐車制御部11は、自動後退において、自動変速装置20をRレンジに設定するように制御する。駐車制御部11は、自動停止において、自動変速装置20をPレンジに設定するように制御する。
【0024】
さらに、駐車制御部11は、駐車制御及び離脱制御において自動操舵及び自動車速変更を実施することもできる。駐車制御部11は、自動操舵において、後述する駐車ルートT1及び離脱ルートT2のそれぞれに沿って車両1を移動させるように操舵装置30を制御することができる。駐車制御部11は、自動車速変更において、後述する駐車車速及び離脱車速のそれぞれにて車両1を移動させるように加速装置40及び制動装置50を制御することができる。
【0025】
図1及び
図2を参照すると、駐車制御の開始前に、駐車制御部11は、物体検出部61及び撮像部62の少なくとも1つによって、前面道路R上の車両1の周辺に位置する基本障害物U1、前面道路R、及び駐車区域Pを含む周辺情報を取得することができる。駐車制御部11は、取得した周辺情報から基本障害物U1及び前面道路Rを識別する。
【0026】
駐車制御部11は、車両1が、取得した周辺情報から識別した基本障害物U1を避けながら駐車することができる駐車区域Pを検索し、車両1を現在地から駐車区域Pに到達させるための駐車ルートT1(仮想線により示す)を設定し、かつ車両1を駐車ルートT1に沿って移動させるための駐車車速を設定する。駐車制御部11は、駐車制御の実行中に、駐車ルートT1の設定及び駐車車速の設定を繰り返し実行する。
【0027】
なお、駐車区域Pの検索は、ドライバが駐車可能なスペースの存在を確認した状態で実行されるので、駐車区域Pの検索においては、ほとんどの場合に、駐車区域Pを発見することができる。また、基本障害物U1は、駐車ルートT1の範囲外及び駐車区域Pの範囲外に位置する障害物である。
【0028】
駐車制御部11は、車両1の車輪速センサ(図示せず)及び操舵角センサ(図示せず)によって取得された各種数値を用いて算出される車両1の位置情報と、物体検出部61及び撮像部62のうち少なくとも1つによって認識された駐車区域Pの位置情報とに基づいて、車両1の現在地の情報を取得することができる。駐車制御部11は、取得した現在地の情報と、上記駐車ルートT1との情報に基づいて、車両1が駐車区域Pに到達したか否かを判定することができる。駐車制御部11は、車両1が駐車区域Pに到達した場合、駐車制御を終了する。
【0029】
図1及び
図3を参照すると、駐車制御部11は、駐車制御の実行中に、上記中止条件が満たされたか否かを繰り返し判定する。例えば、駐車制御部11は、駐車制御の実行中に、物体検出部61及び撮像部62の少なくとも1つによって取得された追加障害物U2の情報に起因して、新たな駐車ルートT1を設定できなくなった場合に、中止条件が満たされたと判定することができる。駐車制御部11は、中止条件が満たされた場合に、駐車制御を中止すべく車両1を自動停止させる。
【0030】
駐車制御部11は、駐車制御を中止した後、車両1を現在地から前面道路Rに向けて移動させるための離脱ルートT2(仮想線により示す)を設定し、かつ車両1を離脱ルートT2に沿って移動させるための離脱車速を設定する。駐車制御部11は、離脱制御の実行中に、離脱ルートT2の設定及び離脱車速の設定を繰り返し実行する。
【0031】
図1及び
図4を参照すると、駐車制御部11は、離脱制御の実行中に、車両1が上記離脱充足状態にあるか否かを繰り返し判定する。この離脱充足状態の判定のために、駐車制御部11は、物体検出部61及び撮像部62の少なくとも1つによって取得された前面道路Rの情報から、第1単位ベクトルL1と前面道路Rの幅Wとを設定する。第1単位ベクトルL1は、前面道路Rの延伸方向に沿って延びるように定義することもできる。
【0032】
駐車制御部11はまた、物体検出部61、撮像部62、車両1の車輪速センサ(図示せず)、及び操舵角センサ(図示せず)によって取得された各種数値を用いて算出される車両1の位置情報から第2単位ベクトルL2を設定する。
【0033】
さらに、駐車制御部11は、設定された第1及び第2単位ベクトルL1,L2の成す角度である離脱角度Gを算出する。なお、離脱角度は、0度以上かつ180度以下の範囲内にあるものとする。離脱角度Gは、第1及び第2単位ベクトルL1,L2の内積から算出される角度とすることができる。駐車制御部11はまた、設定した前面道路Rの幅Wに基づいて離脱角度基準値G1を設定する。駐車制御部11は、上記離脱充足状態の判定と、走行距離計測部63によって計測される走行距離とに基づいて離脱継続距離Dを算出する。駐車制御部11は、算出された離脱継続距離Dが予め設定された離脱継続距離閾値D1以上であるか否かを判定する。駐車制御部11は、算出された離脱継続距離Dが予め設定された離脱継続距離閾値D1以上である場合に、離脱制御を終了する。なお、離脱継続距離閾値D1は、各種条件に応じて変更可能とすることができる。
【0034】
駐車制御部11は、離脱制御の実行中に、上記駐車可能条件が満たされたか否かを繰り返し判定する。例えば、駐車制御部11は、離脱制御の実行中に、車両1を現在地から駐車区域Pに到達させるための駐車ルートT1を検索し、かつこの検索にて駐車ルートT1を発見した場合に、駐車可能条件が満たされたと判定することができる。駐車制御部11は、駐車可能条件が満たされた場合に、離脱制御を中止すべく車両1を自動停止させる。さらに、駐車制御部11は、発見された駐車ルートT1に沿って車両1を移動させるように駐車制御を再び実行することができる。
【0035】
「自動駐車装置の離脱制御方法」
図6を参照して、本実施形態に係る自動駐車装置10の離脱制御方法の一例について説明する。最初に、車両1を現在地から駐車区域Pに到達させるように駐車制御を実行する(ステップS1)。車両1が駐車区域Pに到達したか否かを判定する(ステップS2)。車両1が駐車区域Pに到達した場合(YES)、駐車制御を終了する(ステップS3)。車両1が駐車区域Pに到達していない場合(NO)、駐車制御の実行が妨げられるように中止条件が満たされたか否かを判定する(ステップS4)。
【0036】
中止条件が満たされていない場合(NO)、駐車制御を継続する(ステップS1)。中止条件が満たされた場合(YES)、駐車制御を中止すべく車両1を自動停止させる(ステップS5)。車両1を現在地から前面道路Rに向けて移動させるように離脱制御を実行する(ステップS6)。
【0037】
車両1を駐車区域Pに駐車できるように駐車可能条件が満たされたか否かを判定する(ステップS7)。駐車可能条件が満たされた場合(YES)、離脱制御を中止すべく車両1を自動停止させる(ステップS8)。駐車制御を再び実行する(ステップS1)。駐車可能条件が満たされなかった場合(NO)、駐車制御の実行前に駐車区域Pに隣接する前面道路Rを走行してきた車両1の幅方向の中心軸線に沿うと共にこの車両1の進行方向を向く第1単位ベクトルL1を設定し、かつ離脱制御の実行中にて車両1の幅方向の中心軸線に沿って車両前方を向く第2単位ベクトルL2を設定する(ステップS9)。
【0038】
第1単位ベクトルL1及び第2単位ベクトルL2の内積から離脱角度Gを算出する(ステップS10)。前面道路Rの幅Wに基づいて離脱角度基準値G1を設定する(ステップS11)。車両1が、離脱角度Gが0度以上かつ所定の離脱角度基準値G1以下である鋭角離脱範囲内と、(180度-所定の離脱角度基準値G1)以上かつ180度以下である鈍角離脱範囲内とのいずれかにある離脱充足状態にあるか否かを判定する(ステップS12)。
【0039】
車両1が離脱充足状態にない場合(NO)、離脱制御を継続する(ステップS6)。車両1が離脱充足状態にある場合(YES)、この離脱充足状態状態での車両1の走行距離である離脱継続距離Dを算出する(ステッププS13)。
【0040】
離脱継続距離Dが離脱継続距離閾値D1以上であるか否かを判定する(ステップS14)。離脱継続距離Dが離脱継続距離閾値D1未満である場合(NO)、離脱制御を継続する(ステップS6)。離脱継続距離Dが離脱継続距離閾値D1以上である場合(YES)、離脱制御を終了する(ステップS15)。
【0041】
以上、本実施形態に係る自動駐車装置10は、特定の駐車区域P内への車両1の駐車のために前記車両の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする駐車制御を実行可能とするように構成される駐車制御部11を備える自動駐車装置10であって、前記駐車制御部11は、所定の中止条件が満たされた場合に、前記自動停止を実施し、かつ所定の離脱条件が満たされるように前記車両1を移動させるために前記車両1の自動前進、自動後退、及び自動停止を実施可能とする離脱制御を実行するように構成され、前記中止条件は、前記駐車制御の実行が妨げられる状況に基づいて設定され、前記離脱条件は、離脱角度Gが鋭角離脱範囲内及び鈍角離脱範囲内のいずれかにある離脱充足状態に基づいて定められており、離脱角度Gが、駐車制御の実行前に駐車区域Pに隣接する前面道路Rを走行してきた車両1の幅方向の中心軸線に沿うと共にこの車両1の進行方向に向かう第1単位ベクトルL1と、離脱制御の実行中にて車両1の幅方向の中心軸線に沿って車両前方を向く第2単位ベクトルL2の成す角度であり、前記鋭角離脱範囲が0度以上かつ所定の離脱角度基準値G1以下であり、前記鈍角離脱範囲が(180度-所定の離脱角度基準値G1)以上かつ180度以下であり、前記離脱角度基準値G1が0度以上かつ90度未満の範囲内にあり、前記前面道路Rが、前記駐車区域Pに対して前記駐車区域Pの前後方向にて前記車両1が前記駐車制御中に進入してくる側に位置し、かつ前記駐車区域Pの前後方向と交差する方向に延びており、前記離脱角度基準値G1は、前記前面道路Rの幅Wが大きいほど大きく設定されるようになっている。
【0042】
一般的に、自動的な駐車制御を実行しているときに、駐車制御の開始時点に認識されていなかった新たな障害物が駐車制御の開始時点に算出された駐車ルート上に検出されること、新たな障害物の検出によって駐車制御の開始時点に推測した駐車区域の幅が車両を駐車するために十分でなくなること等が起こり、その結果、駐車制御の実行が妨げられる状況となることがある。
【0043】
これに対して、本実施形態に係る自動駐車装置10においては、このような状況に基づいて中止条件を設定し、この中止条件が満たされた場合に、車両1を自動停止し、これによって、駐車制御を中止する。さらに、駐車制御を中止した後、所定の離脱条件が満たされるように車両1を移動させる離脱制御を実施する。この離脱条件は、車両1が少なくとも離脱充足状態にある場合に満たされ、かつ離脱角度基準値G1は、前面道路Rの幅Wが大きいほど大きく設定される。
【0044】
このような自動駐車装置10においては、離脱条件が満たされた場合には、ドライバの運転操作によって、車両1を容易に前面道路R上で移動可能な状態に復帰させることができる。また、離脱条件の離脱角度基準値G1を前面道路Rの幅Wが大きいほど大きくするので、前面道路Rの幅Wが大きい場合に不必要な切り返しが行われることを防ぐことができる。その結果、離脱制御において、車両1の切り返し回数を減らすことができる。
【0045】
よって、本実施形態に係る自動駐車装置10によれば、車両1が駐車制御中に移動困難な状況に陥った場合であっても、この移動困難な状況から車両1を効率的に離脱させることができ、特に、この移動困難な状況から車両1をドライバの運転操作によって容易に移動可能な状況に向けて効率的に離脱させることができ、さらには、特定の駐車区域P内に車両1を駐車するための駐車制御を効率化することができる。
【0046】
本実施形態に係る自動駐車装置10においては、前記離脱条件は、前記車両1が前記離脱充足状態で走行を継続した距離である離脱継続距離Dが、所定の離脱継続距離閾値D1以上である場合に満たされるようになっている。
【0047】
このような自動駐車装置10において、一時的に離脱角度Gが鋭角及び鈍角離脱範囲内のいずれかにあるようになっても、ドライバの運転操作を再開した直後に、ドライバの運転操作によって移動困難な状況から車両1を離脱させることが再び難しくなるおそれがある。
【0048】
これに対して、本実施形態に係る自動駐車装置10においては、離脱角度Gが鋭角及び鈍角離脱範囲内のいずれかにある離脱充足状態を継続した離脱継続距離Dが離脱継続距離閾値D1以上である場合に、離脱条件が満たされたと判定するので、離脱制御において、ドライバの運転操作によって、車両1を容易に前面道路R上で移動可能な状態に効率的かつ安定的に復帰させることができる。
【0049】
本実施形態に係る自動駐車装置10においては、前記離脱充足状態が、前記離脱角度Gが前記鋭角離脱範囲内のみにある状態となっている。そのため、離脱充足状態の車両1を、駐車制御の実行前に前面道路Rを走行してきた車両1の向きと実質的に同じ向きに向けることができる。この場合、離脱制御においては、ドライバの運転操作によって、車両1を容易に前面道路Rに沿って移動可能な状態により確実に復帰させることができる。
【0050】
本実施形態に係る自動駐車装置10においては、前記駐車制御部11は、前記離脱制御中にて所定の駐車可能条件が満たされた場合に、前記離脱制御を停止し、かつ前記駐車制御を再び実行するように構成され、前記駐車可能条件が、前記車両1を前記駐車区域Pに駐車できる状況に基づいて設定されている。
【0051】
このような自動駐車装置10においては、例えば、離脱制御中に駐車制御の実行を妨げていた追加障害物U2が無くなった場合には、離脱制御を中止し、その後、駐車制御を再開することができる。この場合、例えば、離脱制御の開始前における駐車制御にて認識していた駐車区域Pを用いて駐車制御を再度実行すれば、駐車区域Pを再度探す手間を省略することができる。よって、特定の駐車区域P内に車両1を駐車するための駐車制御を効率化することができる。
【0052】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…車両
10…自動駐車装置、11…駐車制御部
P…駐車区域、R…前面道路、L1…第1単位ベクトル、L2…第2単位ベクトル、G…離脱角度、G1…離脱角度基準値、D…離脱継続距離、D1…離脱継続距離閾値