(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134959
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】魚体腹部の厚さの測定方法および測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 3/20 20060101AFI20220908BHJP
A22C 25/04 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
G01B3/20 Z
A22C25/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034489
(22)【出願日】2021-03-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】榊原 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】目原 和俊
(72)【発明者】
【氏名】堀込 康裕
【テーマコード(参考)】
2F061
4B011
【Fターム(参考)】
2F061AA16
2F061AA20
2F061CC40
2F061DD22
2F061FF10
2F061FF33
2F061FF73
2F061GG04
2F061JJ02
2F061LL22
2F061LL61
2F061RR01
2F061RR07
2F061RR18
2F061RR21
4B011KB07
(57)【要約】
【課題】魚体を切断する前に腹部の厚さを調べることができる魚体腹部の厚さの測定方法および測定装置を提供する。
【解決手段】魚体腹部の厚さの測定装置4Aが、メインスケール1と、メインスケール1に取り付けられている1対のジョー2,3と、を有する。1対のジョーは固定側のジョー2と移動側のジョー3とからなり、1対のジョー2,3はそれぞれ、本体部と、本体部の先端に設けられて互いに近接する方向に突出する突出部と、を有している。一方のジョー2を鰓部から魚体の内部に挿入して、突出部を魚体の腹部の一部に当接させ、他方のジョー3を魚体の外部に配置して突出部を魚体の外表面に当接させる。魚体の内部に位置するジョー2の突出部と、魚体の外部に位置するジョー3の突出部とによって、魚体の腹部を挟み込み、突出部同士の間の間隔を、メインスケール1の目盛りから読み取る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に延び、長手方向に沿って目盛りが形成されているメインスケールと、前記メインスケールに取り付けられている1対のジョーと、を有し、1対の前記ジョーは、前記メインスケールに固定されている固定側のジョーと、前記固定側のジョーと対向するとともに前記メインスケールの長手方向に沿って移動可能な移動側のジョーとからなり、1対の前記ジョーはそれぞれ、前記メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に設けられて互いに近接する方向に突出する突出部と、を有している、魚体腹部の厚さの測定装置を用い、
前記魚体腹部の厚さの測定装置の一方の前記ジョーを鰓部から魚体の内部に挿入して、前記突出部を魚体の内部において魚体の腹部の一部に当接させるとともに、他方の前記ジョーを魚体の外部に配置して前記突出部を魚体の外表面に当接させて、前記魚体の内部に位置する前記ジョーの前記突出部と、前記魚体の外部に位置する前記ジョーの前記突出部とによって、魚体の腹部を挟み込み、
魚体の腹部を挟み込んだ状態の1対の前記ジョーの前記突出部同士の間の間隔を、前記メインスケールの前記目盛りから読み取ることを特徴とする、魚体腹部の厚さの測定方法。
【請求項2】
前記固定側のジョーは、前記メインスケールの長手方向の端部に固定されており、前記移動側のジョーは、前記メインスケールの長手方向において前記固定側のジョーよりも中央側に位置する、請求項1に記載の魚体腹部の厚さの測定方法。
【請求項3】
直線的に延び、長手方向に沿って目盛りが形成されているメインスケールと、前記メインスケールの長手方向の端部に固定されており、鰓部から魚体の内部に挿入される内部側ジョーと、前記メインスケールの長手方向において前記内部側ジョーよりも中央側に取り付けられており、前記内部側ジョーと対向するとともに前記メインスケールの長手方向に沿って移動可能であり、前記魚体の外部に配置される外部側ジョーと、を有し、
前記内部側ジョーは、前記メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に設けられて魚体の内部において魚体の腹部の一部に当接する突出部と、を有し、
前記外部側ジョーは、前記メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に設けられて魚体の外表面に当接して前記内部側ジョーの前記突出部とともに魚体の腹部を挟み込むことが可能な突出部と、を有し、
前記メインスケールの前記目盛りは、互いに対向する前記内部側ジョーの前記突出部と前記外部側ジョーの前記突出部との間の間隔を表示することを特徴とする、魚体腹部の厚さの測定装置。
【請求項4】
前記内部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部を、少なくとも部分的に被覆する保護部を備えている、請求項3に記載の魚体腹部の厚さの測定装置。
【請求項5】
前記外部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部を、少なくとも部分的に被覆する保護部を備えている、請求項4に記載の魚体腹部の厚さの測定装置。
【請求項6】
前記内部側ジョーと前記外部側ジョーの前記本体部は金属製であって面取りが施されており、
前記保護部は合成樹脂からなり、
一方の前記保護部は、前記内部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部と、前記内部側ジョーの前記本体部を前記メインスケールに取り付けるための取付部材とを被覆しており、
他方の前記保護部は、前記外部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部と、前記外部側ジョーの前記本体部を前記メインスケールに取り付けるための取付部材とを被覆している、請求項5に記載の魚体腹部の厚さの測定装置。
【請求項7】
少なくとも前記内部側ジョーの前記突出部と前記本体部の角部は、丸みを付けた曲線状に形成されている、請求項3から6のいずれか1項に記載の魚体腹部の厚さの測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚体腹部の厚さの測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖または漁獲した魚の評価を行うために、例えば特許文献1に記載されているような魚体の体長の測定や、特許文献2に記載されているような魚体の重量の測定が行われている。しかし、特にマグロのような大きな魚においては、魚体の体長や重量だけでなく、高級食材とされる部位(例えばいわゆるトロと言われる部分)の大きさによって、その魚の価値が左右される場合がある。すなわち、魚を評価する指標の1つとして、高級食材とされる部位である腹部の厚さが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5565715号
【特許文献2】実用新案登録第3203007号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように高級食材とされる部位、例えば魚体の腹部の厚さが魚の価値に大きな影響を与える場合があるが、魚体を解体または切断することなく外部から腹部の厚さを簡易に調べる方法は見出されていない。従って、出荷前や取引時には、腹部の厚さを知ることはできず、その魚の価値を十分に的確に認識できない。
そこで、本発明の目的は、魚体を解体または切断する前に腹部の厚さを調べることができる魚体腹部の厚さの測定方法および測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の魚体腹部の厚さの測定方法は、直線的に延び、長手方向に沿って目盛りが形成されているメインスケールと、メインスケールに取り付けられている1対のジョーと、を有し、1対のジョーは、メインスケールに固定されている固定側のジョーと、固定側のジョーと対向するとともにメインスケールの長手方向に沿って移動可能な移動側のジョーとからなり、1対のジョーはそれぞれ、メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、本体部の先端に設けられて互いに近接する方向に突出する突出部と、を有している、魚体腹部の厚さの測定装置を用い、魚体腹部の厚さの測定装置の一方のジョーを鰓部から魚体の内部に挿入して、突出部を魚体の内部において魚体の腹部の一部に当接させるとともに、他方のジョーを魚体の外部に配置して突出部を魚体の外表面に当接させて、魚体の内部に位置するジョーの突出部と、魚体の外部に位置するジョーの突出部とによって、魚体の腹部を挟み込み、魚体の腹部を挟み込んだ状態の1対のジョーの突出部同士の間の間隔を、メインスケールの目盛りから読み取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の魚体腹部の厚さの測定方法および測定装置によると、魚体を解体または切断する前に腹部の厚さを調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る魚体腹部の厚さの測定装置の正面図、(b)は(a)のL1-L1線断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る魚体腹部の厚さの測定方法を示す概略図である。
【
図3】
図2に示す魚体腹部の厚さの測定状態を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す魚体腹部の厚さの測定状態を示す、
図3のL2-L2線断面図である。
【
図5】(a)は本発明の他の実施形態に係る魚体腹部の厚さの測定装置の正面図、(b)は(a)のL3-L3線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る魚体腹部の厚さの測定装置4Aを示す正面図、
図1(b)は
図1(a)のL1-L1線断面図である。
図2はこの測定装置4Aを用いる魚体腹部の厚さの測定方法を模式的に示す概略図である。
図3は、
図2に示すように魚体腹部の厚さを測定する状態を拡大して示す斜視図であり、
図4はその測定状態を示すL2-L2線断面図である。本発明の測定装置4Aの測定対象である魚体腹部の厚さの一例は、腹びれDの付け根と胸びれEの付け根とを結ぶ直線の中間点付近から腹腔内面までの厚さである。本実施形態の測定装置4Aは、主に、直線的に延び、長手方向に沿って目盛り1aが形成されているメインスケール1と、メインスケール1に取り付けられている2つのジョー2,3とからなる、いわゆるキャリパー状の測定装置を改良したものである。
【0009】
一方のジョーは、メインスケール1の長手方向の端部またはその近傍に固定されている固定側のジョーであって、魚体腹部の厚さを計測するときに魚体の内部に挿入される内部側ジョー2である。他方のジョーは、メインスケール1の長手方向において内部側ジョー2よりも中央側に位置し、メインスケール1の長手方向に沿って移動可能な移動側のジョーであって、魚体腹部の厚さを計測するときに魚体の外部に配置される外部側ジョー3である。
【0010】
内部側ジョー2は、メインスケール1の長手方向に直交する方向に延びる本体部2aと、本体部2aの先端に設けられて外部側ジョー3の方に向かって突出する突出部2bとを有している。同様に、外部側ジョー3は、メインスケール1の長手方向に直交する方向に延びる本体部3aと、本体部3aの先端に設けられて内部側ジョー2の方に向かって突出する突出部3bとを有している。すなわち、メインスケール1の長手方向の端部またはその近傍に固定された内部側ジョー2の突出部2bと、メインスケールの長手方向の中央側に移動可能に取り付けられた外部側ジョー3の突出部3bとが、互いに近接する方向に向かって突出して互いに対向している。そして、内部側ジョー2の突出部2bと外部側ジョー3の突出部3bとの間の間隔を表示するように設定された目盛り1aが、メインスケール1に設けられている。目盛り1aは、内部側ジョー2の突出部2bと外部側ジョー3の突出部3bとが当接した状態を0として、内部側ジョー2の突出部2bと外部側ジョー3の突出部3bとが離れた状態では、それらの間の間隔を表示するように設定されている。本実施形態の測定装置4Aのジョー2,3の本体部2a,3aおよび突出部2b,3bは金属製であって面取りが施されており、この金属製の本体部2a,3aの一部を覆うように合成樹脂製の保護部2c,3cが設けられている。
【0011】
具体的には、
図1(a),1(b)に示すように、内部側ジョー2の本体部2aの、突出部2bが設けられている先端と反対側の端部に、合成樹脂製の保護部2cが、取付部材の一例である複数のビス6によって取り付けられている。保護部2cは、本体部2aの一方の面のみを被覆するように設けられており、他方の面は被覆していない。すなわち、保護部2cは、内部側ジョー2の本体部2aの、突出部2bが設けられている先端と反対側の端部を、部分的に被覆している。このように保護部2cを取り付けるビス6のうちの1つが、内部側ジョー2をメインスケール1に固定している。同様に、外部側ジョー3の本体部3aの、突出部3bが設けられている先端と反対側の端部に、合成樹脂製の保護部3cが、複数のビス6によって取り付けられている。保護部3cは、本体部3aの一方の面のみを被覆して他方の面は被覆しておらず、外部側ジョー3の本体部3aの、突出部3bが設けられている先端と反対側の端部を、部分的に被覆している。保護部3cを取り付けるビス6は、外部側ジョー3をメインスケール1に固定しておらず、メインスケール1の長手方向に移動可能に保持している。
【0012】
本実施形態の測定装置4Aの2つのジョー2,3を、前述したように使い分けている理由について説明する。魚体の内部においてジョーを移動させると魚体の内部に当たって傷つける可能性があるため、魚体の内部におけるジョーの移動は最小限に抑えることが好ましい。そのため、魚体の内部には固定側のジョーを挿入し、移動側のジョーは魚体の外部に配置することが好ましい。一般的に、キャリパー状の測定装置において、固定側のジョーはメインスケールの長手方向の端部に位置し、移動側のジョーはメインスケールの中央側に位置する。従って、本実施形態の測定装置4Aでは、メインスケール1の長手方向の端部に固定されたジョーを内部側ジョー2にして、メインスケール1の長手方向の中央側に移動可能に取り付けられたジョーを外部側ジョー3にしている。
【0013】
この測定装置4Aは、
図2~4に示すように魚体腹部の厚さを測定するという今までにない用途に用いられるために、他用途の測定装置にはない特徴を有している。従来からキャリパー状の測定装置は存在するが、それらの測定装置は精密な測定(例えば最小測定単位が1/20mm程度の測定)を行うことを目的とするものであり、例えばジョーの長さが数十mm程度の小型のものである。これに対し、本発明は、魚体を解体または切断することなく、魚体の腹部の厚さを測定するという、今までにない新規な測定方法を提案するとともに、それに適したキャリパー状の測定装置4Aを提案する。大型の魚(例えば出荷時の重量が30kg~100kgのマグロ)の腹部の厚さを測定するために、従来にはない大型のキャリパー状の測定装置4Aを用いる。大型の魚の腹部の厚さを測定可能な大きさであって、かつ操作性を損なわない寸法として、2つのジョー2,3はそれぞれ300mm以上で400mm以下であることが好ましく、メインスケール1は200mm以上で400mm以下であることが好ましい。一例として、本実施形態の測定装置4Aのメインスケール1は、長さ300mm、幅15mm、厚さ1mmのステンレス板からなる。内部側ジョー2の本体部2aは、長さ320mm、幅20mm、厚さ3mm(面取り部を除く)のアルミニウム板からなる。外部側ジョー3の本体部3aは、長さ345mm、幅25mm、厚さ3mm(面取り部を除く)のアルミニウム板からなる。内部側ジョー2と外部側ジョー3の本体部2a,3aはいずれも、メインスケール1から突出する長さが300mmである。一般的な機械式のキャリパー状の測定装置は精密な測定を行うための小型のものであったのに対し、本実施形態では、魚体腹部という直接目視できない部位を測定可能にし、しかも大型の魚の腹部の厚さを測定できるように、大型のキャリパー状の測定装置4Aが用いられる。このような魚体腹部の厚さの測定では、さほど高い精密さは要求されない(最小測定単位が1mm程度でよい)ため、一般的なキャリパー状の測定装置のように小型である必要はなく、大型のものであってよい。すなわち、本実施形態のキャリパー状の測定装置4Aは、一般的なキャリパー状の測定装置とは、主な目的や必要とされる要件が異なる。
【0014】
また、
図4に示すように、魚体の内部には腹腔Aが存在し、腹部の一部は厚さが小さくなり内側に向かって凹んだ形状になっている。腹部の一部の厚さが小さくなった複雑な形状の部位Bの厚さtを測定する場合には、ジョーを差し込む鰓蓋の付け根の部分が湾曲して内側に向かって突出しているため、すなわち、かまFの部分(
図3参照)が腹腔A内に向かって内側に突出しているため、先端まで直線状のジョーでは測定すべき部位Bに接触できないので、その部位Bを隙間なく挟み込むことはできず、測定困難である。そこで、本実施形態では、ジョー2,3の先端にそれぞれ突出部2b,3bを設け、互いに対向させている。それにより、2つの突出部2b,3bで被測定部分を摘まむようにして、腹部の抉れた形状の部位Bの厚さtを測定することが可能である。
【0015】
食用に供される魚体に傷をつけることは極力回避しなければならない。しかし、測定装置のジョーが過度に軟らかい材料によって形成されていると、力が加わった時に変形や破損を生じて、測定が不正確になったり測定不能になったりするおそれがある。また、破損したジョーの一部が魚体に食い込み、除去されずにそのまま出荷されると、重大な事故を起こすおそれがある。特に、前述したように一般的なキャリパー状の測定装置に比べて大型である本実施形態の測定装置4Aでは、ジョー2,3が過度に軟らかい材料で形成されていると測定時に湾曲などの変形や破損を生じやすい。そこで、本実施形態の測定装置4Aでは、ジョー2,3の本体部2a,3aが、ステンレスやアルミニウム等の金属によって形成され、その金属の一部を覆うように合成樹脂製(例えば強化プラスチック製)の保護部2c,3cが設けられている。それによって、ジョー2,3が変形や破損を生じ難い程度の強度を確保するとともに、本体部2a,3aの金属部分が魚体に直接接触することを減らして魚体に傷をつけるおそれを低減している。
【0016】
本実施形態のジョー2,3の突出部2b,3bは合成樹脂の保護部2c,3cで覆われずに露出している。その突出部2b,3bや、本体部2a,3aおよび保護部2c,3cの角部が魚体に傷をつけないように、突出部2b,3bや、本体部2a,3aおよび保護部2c,3cの各角部は、丸みを付けた曲線状にそれぞれ形成されている。すなわち、本実施形態の測定装置4Aでは、魚体に触れる可能性が高い部分に尖った角部が存在しない。そして、ジョー2,3の本体部2a,3aの金属部分の各辺には面取りが施されている。それにより、ジョー2,3の突出部2b,3b、本体部2a,3a、保護部2c,3cが魚体に触れたとしても、魚体に傷が付きにくい構成を有している。
【0017】
また、一般的な機械式のキャリパー状の測定装置は、精密な測定を行うためにメインスケールとバーニヤスケールを有しており、部品数が多く複雑な形状をしているものが多い。バーニヤスケールは複雑な形状を有し、メインスケールの周囲に突き出す突起部分となり、さらにメインスケールに取り付けるための取付部材(ネジ等)を必要とする。このように突起部分となるバーニヤスケールや取付部材が魚体等の被測定部に触れると傷を付ける可能性がある。それに対し、本実施形態の魚体腹部の厚さの測定装置4Aは、測定部位が魚体の部位Bに限定されており、また、さほど精密な測定を行う必要はないので、ジョー3自体が指し示すメインスケール1の目盛り1aを読み取ることで測定を行えばよい。すなわち、この測定装置4Aでは、メインスケール(主尺)とバーニヤスケール(副尺)とを組み合わせて精密な測定を行う必要はないので、複雑な形状の突起部分となり取付部材を必要とするバーニヤスケールは設けられていない。従って、魚体に傷を付けるおそれが小さい。また、測定装置4Aが水没しても、水が滞留し易い形状の部分が少なく、水切れがよいので、錆びにくい。さらに、本実施形態の測定装置4Aには、メインスケール1およびジョー2,3以外にバーニヤスケールのような複雑な付属部材が存在しないため、付属部材を構成する部品や付属部材の取り付け等に用いられる部品が脱落して魚体内に残留することはない。
【0018】
本実施形態における魚体腹部の厚さの測定方法について説明する。本実施形態では、従来は困難であったマグロのような大型の魚の腹部の厚さの測定を実現するものである。
図1に示す測定装置4Aを用い、
図2に示すように、メインスケール1の長手方向の端部またはその近傍に固定された内部側ジョー2の一部を、魚体の内部に挿入する。本発明の概念を説明するための模式的な概略図である
図2には明示していないが、本実施形態では、
図3に示すように、鰓蓋Cをこじ開けた状態で内部側ジョー2の先端を鰓部から挿入する。具体的には、
図3のL2-L2線断面図(ただし理解を容易にするために測定装置4Aは断面ではなく全体を図示している)である
図4に示すように、内部側ジョー2の先端を魚体の腹腔A内に進入させて、突出部2bを魚体の内側から、厚さtを測定すべき部位B(腹びれDの付け根と胸びれEの付け根とを結ぶ直線の中間点付近に対応する位置)に当接させる。そして、外部側ジョー3をメインスケール1の長手方向に沿って移動させて、内部側ジョー2の突出部2bに対向する外部側ジョー3の突出部3bを魚体の外部から魚体の外表面に当接させる。こうして、魚体の内部に位置する内部側ジョー2の突出部2bと、魚体の外部に位置する外部側ジョー3の突出部3bとによって、魚体の腹部(被測定部位)Bを挟み込む。その状態でメインスケール1の目盛り1aを読むことにより、腹部Bの厚さtを求めることができる。測定が完了した後には、内部側ジョー2を魚体の内部から抜き取り、鰓蓋Cを閉じる。魚体は、測定のために損傷することはほとんどなく、測定前の状態と変化していない。
【0019】
以上説明したように、本発明は、魚体の解体や切断を行うことなく、鰓部から魚体の内部に測定装置4Aの一部を挿入して腹部Bの厚さtを測定するという、従来にない新規な技術を提案するものである。すなわち、本発明によると、従来は実施できなかった、魚を解体したり切断したりすることなく魚体の腹部Bの厚さtを測定することが可能になるという格別の効果が得られる。しかも、本発明の測定装置4Aを用いることにより、魚体に傷が付くことが抑えられる。すなわち、本発明の測定装置4Aでは、本体部2a,3aの魚体に接し易い部分に合成樹脂製の保護部2c,3cが設けられている。また、本発明の測定装置4Aでは、ジョー2,3の突出部2b,3bや本体部2a,3aや保護部2c,3cに尖った角部が存在せず、バーニヤスケールなど複雑な形状の突起部分も存在しない。そして、移動可能なジョー3ではなく固定されたジョー2を魚体の内部に挿入するため、魚体の内部でジョー2を移動させる必要がなく、意図せずにジョー2の本体部2aが魚体の内部で腹部等に接することが抑えられる。このような構成の測定装置4Aを用いることにより、魚体に傷を付けることを抑えつつ腹部Bの厚さtを測定することができる。
【0020】
本発明では、少なくとも内部側ジョー2において、合成樹脂製の保護部2cを設けるとともに、突出部2bや本体部2aおよび保護部2cの角部を丸みを付けた曲線状に形成することが好ましい。その理由について説明すると、特に、魚体の内部に挿入される内部側ジョー2は魚体の腹部等に接して傷つける可能性があるため、内部側ジョー2の本体部2aの突出部2bと反対側の端部を少なくとも部分的に覆う保護部2cを設けることと、本体部2aに面取り部を設けたり、突出部2bや本体部2aおよび保護部2cの角部を丸みを帯びた形状にしたりして尖った部分を無くすことが、魚体の損傷を防ぐために非常に有効である。一方、外部側ジョー3は、魚体の内部に挿入されず魚体の外部に配置されるため、内部側ジョー2に比べて魚体を傷つけるおそれが小さい。ただし、安全のために、外部側ジョー3においても内部側ジョー2と同様に、合成樹脂製の保護部3cを設けるとともに、突出部3bや本体部3aおよび保護部3cの角部を、丸みを付けた曲線状に形成すると、より好ましい。また、鰓部を利用して内部側ジョー2の魚体内部への出し入れを行うことにより、測定後の魚を測定前と概ね同様な状態に戻すことができる。
【0021】
次に、
図5に示す本発明の他の実施形態の測定装置4Bについて説明する。本実施形態の測定装置4Bの保護部2c,3cは、ジョー2,3の本体部2a,3aの、突出部2b,3bが設けられている先端と反対側の端部を、全周に亘って被覆している。具体的には、内部側ジョー2の本体部2aとメインスケール1とが補助部材5に挟まれた状態で、取付部材の一例であるビス6によって補助部材5同士が固定される。この時、補助部材5同士が固定されると同時に、1つのビス6によって本体部2aがメインスケール1に固定される。そして、内部側ジョー2の本体部2aの端部と補助部材5とビス6とを覆うように、保護部2cが取り付けられている。同様に、外部側ジョー3の本体部3aとメインスケール1とが補助部材5に挟まれた状態で、取付部材の一例であるビス6によって補助部材5同士が固定される。ただし、外部側ジョー3の本体部3aはメインスケール1に固定されてはおらず、メインスケール1は補助部材5に挟まれているだけなので、外部側ジョー3はメインスケール1に対して、メインスケール1の長手方向に移動可能である。そして、外部側ジョー3の本体部3aの端部と補助部材5とビス6とを覆うように、保護部3cが取り付けられている。
【0022】
図1に示す測定装置4Aの保護部2c,3cは、ジョー2,3の本体部2a,3aの、突出部2b,3bが設けられている先端と反対側の端部の一方の面のみを被覆して、他方の面は被覆していなかったのに対し、本実施形態の測定装置4Bの保護部2c,3cは、ジョー2,3の本体部2a,3aの、突出部2b,3bが設けられている先端と反対側の端部を全周に亘って被覆している。従って、本実施形態によると、ジョー2,3の本体部2a,3aが魚体に直接接触することがさらに抑えられ、魚体の損傷防止の効果がより大きい。さらに、本実施形態によると、ジョー2,3のメインスケール1への取り付け等に用いられるビス6(一例では、
図5に示すように内部側ジョー2を取り付けるための4つのビス6と外部側ジョー3を取り付けるための3つのビス6)を保護部2c,3cで覆っている。従って、ビス6が魚体を傷つけることや、ビス6が魚体内で脱落して残留することが抑えられる。特に、魚体内に金属製の異物であるビス6が入り込んだまま出荷されると、大きな事故を引き起こすおそれがあるが、本実施形態では、保護部2c,3cによってビス6の脱落および魚体内への残留を抑えられるため、大きな事故を引き起こす危険性を著しく低減することができる。なお、以上説明した事項以外は、本実施形態においても、前述した実施形態と同様の構成および方法を採用可能であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0023】
1 メインスケール
1a 目盛り
2 固定側のジョー(内部側ジョー)
2a,3a 本体部
2b,3b 突出部
2c,3c 保護部
3 移動側のジョー(外部側ジョー)
4A,4B 測定装置
5 補助部材
6 ビス(取付部材)
A 腹腔
B 腹部(被測定部位)
C 鰓蓋
D 腹びれ
E 胸びれ
F かま
t 厚さ
【手続補正書】
【提出日】2021-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に延び、長手方向に沿って目盛りが形成されているメインスケールと、前記メインスケールに取り付けられている1対のジョーと、を有し、1対の前記ジョーは、前記メインスケールに固定されている固定側のジョーと、前記固定側のジョーと対向するとともに前記メインスケールの長手方向に沿って移動可能な移動側のジョーとからなり、1対の前記ジョーはそれぞれ、前記メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に設けられて互いに近接する方向に突出する突出部と、を有している、魚体腹部の厚さの測定装置を用い、
前記魚体腹部の厚さの測定装置の一方の前記ジョーを鰓部から魚体の内部に挿入して、前記突出部を魚体の内部において魚体の腹部の一部に当接させるとともに、他方の前記ジョーを魚体の外部に配置して前記突出部を魚体の外表面に当接させて、前記魚体の内部に位置する前記ジョーの前記突出部と、前記魚体の外部に位置する前記ジョーの前記突出部とによって、魚体の腹部を挟み込み、
魚体の腹部を挟み込んだ状態の1対の前記ジョーの前記突出部同士の間の間隔を、前記メインスケールの前記目盛りから読み取り、
前記固定側のジョーは、前記メインスケールの長手方向の端部に固定されており、前記移動側のジョーは、前記メインスケールの長手方向において前記固定側のジョーよりも中央側に位置することを特徴とする、魚体腹部の厚さの測定方法。
【請求項2】
直線的に延び、長手方向に沿って目盛りが形成されているメインスケールと、前記メインスケールの長手方向の端部に固定されており、鰓部から魚体の内部に挿入される内部側ジョーと、前記メインスケールの長手方向において前記内部側ジョーよりも中央側に取り付けられており、前記内部側ジョーと対向するとともに前記メインスケールの長手方向に沿って移動可能であり、前記魚体の外部に配置される外部側ジョーと、を有し、
前記内部側ジョーは、前記メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に設けられて魚体の内部において魚体の腹部の一部に当接する突出部と、を有し、
前記外部側ジョーは、前記メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、前記本体部の先端に設けられて魚体の外表面に当接して前記内部側ジョーの前記突出部とともに魚体の腹部を挟み込むことが可能な突出部と、を有し、
前記メインスケールの前記目盛りは、互いに対向する前記内部側ジョーの前記突出部と前記外部側ジョーの前記突出部との間の間隔を表示するものであり、
前記内部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部を、少なくとも部分的に被覆する保護部と、前記外部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部を、少なくとも部分的に被覆する保護部とを備え、
前記内部側ジョーと前記外部側ジョーの前記本体部は金属製であって面取りが施されており、
前記保護部は合成樹脂からなり、
一方の前記保護部は、前記内部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部と、前記内部側ジョーの前記本体部を前記メインスケールに取り付けるための取付部材とを被覆しており、
他方の前記保護部は、前記外部側ジョーの前記本体部の、前記突出部が設けられている前記先端と反対側の端部と、前記外部側ジョーの前記本体部を前記メインスケールに取り付けるための取付部材とを被覆していることを特徴とする、魚体腹部の厚さの測定装置。
【請求項3】
少なくとも前記内部側ジョーの前記突出部と前記本体部の角部は、丸みを付けた曲線状に形成されている、請求項2に記載の魚体腹部の厚さの測定装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の魚体腹部の厚さの測定方法は、直線的に延び、長手方向に沿って目盛りが形成されているメインスケールと、メインスケールに取り付けられている1対のジョーと、を有し、1対のジョーは、メインスケールに固定されている固定側のジョーと、固定側のジョーと対向するとともにメインスケールの長手方向に沿って移動可能な移動側のジョーとからなり、1対のジョーはそれぞれ、メインスケールの長手方向に直交する方向に延びる本体部と、本体部の先端に設けられて互いに近接する方向に突出する突出部と、を有している、魚体腹部の厚さの測定装置を用い、魚体腹部の厚さの測定装置の一方のジョーを鰓部から魚体の内部に挿入して、突出部を魚体の内部において魚体の腹部の一部に当接させるとともに、他方のジョーを魚体の外部に配置して突出部を魚体の外表面に当接させて、魚体の内部に位置するジョーの突出部と、魚体の外部に位置するジョーの突出部とによって、魚体の腹部を挟み込み、魚体の腹部を挟み込んだ状態の1対のジョーの突出部同士の間の間隔を、メインスケールの目盛りから読み取り、固定側のジョーは、メインスケールの長手方向の端部に固定されており、移動側のジョーは、メインスケールの長手方向において固定側のジョーよりも中央側に位置することを特徴とする。