(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134960
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】加工装置及び加工装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20220908BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20220908BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B23K26/70
B23Q11/00 K
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034490
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】精山 武士
【テーマコード(参考)】
3C011
4E168
【Fターム(参考)】
3C011DD00
4E168AD07
4E168AD11
4E168CA11
4E168CB03
4E168CB08
4E168DA02
4E168EA17
4E168EA25
4E168FC07
(57)【要約】
【課題】加工対象物から発生する粉塵に起因する移動機構の損傷や位置精度の低下を抑制することができる加工装置を提供する。
【解決手段】加工ヘッドが、加工対象物を加工する。移動機構が、加工ヘッドを支持して移動させる。カバーが、移動機構を内部に収容する。加工ヘッドは、カバーの内部に含まれない。ガス供給系が、カバーの内部にガスを供給する。カバーの内部のガスが排出口を通って外部に流出する。流量調整機構が、カバーの内部を通過するガスの流量を調整する。コントローラが、カバーの内部が陽圧になるように流量調整機構を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を加工する加工ヘッドと、
前記加工ヘッドを支持して移動させる移動機構と、
前記移動機構を内部に収容し、前記加工ヘッドを内部に含まないカバーと、
前記カバーの内部にガスを供給するガス供給系と、
前記カバーの内部から外部にガスを通過させる排出口と、
前記カバーの内部を通過するガスの流量を調整する流量調整機構と、
前記カバーの内部が陽圧になるように前記流量調整機構を制御するコントローラと
を備えた加工装置。
【請求項2】
前記排出口は、前記カバーに設けられた開口を含み、
前記流量調整機構は、前記排出口の開口の一部分を塞ぐ可動蓋を含む請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記流量調整機構は、前記ガス供給系に設けられた流量調整弁を含む請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記移動機構が先端に取り付けられたロボットアームを、さらに備えた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記カバーの内部の温度を測定する温度センサを、さらに備え、
前記コントローラは、前記温度センサによる測定結果に基づいて前記流量調整機構を制御する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記温度センサによる測定結果が上限閾値を超えると、前記流量調整機構を制御して、前記カバーの内部を通過するガスの流量を増大させる請求項5に記載の加工装置。
【請求項7】
加工対象物を加熱する加工ヘッドを支持して移動させる移動機構を内部に含み、前記加工ヘッドを内部に含まないカバーと、
前記カバーの内部にガスを供給するガス供給系と、
前記カバーの内部から外部にガスを通過させる排出口と、
前記カバーの内部を通過するガスの流量を調整する流量調整機構と、
前記カバーの内部が陽圧になるように前記流量調整機構を制御するコントローラと
を備えた加工装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置及び加工装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームの先端に加工ヘッドを取り付けて金属の切断、溶接等を行う加工装置が知られている(特許文献1等参照)。加工ヘッドは、移動機構を介してロボットアームの先端に取り付けられている。加工時には、ロボットアームを駆動して加工ヘッドを加工対象物に接近させ、ロボットアームを静止させた状態で移動機構を駆動することにより、加工ヘッドを微小に移動させる。このように、移動機構で加工ヘッドを微小に移動させることにより、小径の穴加工を高速にかつ高精度に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工中に、加工対象物から金属粉等の粉塵が発生し、大気中に飛散する。加工対象物から飛散した粉塵が移動機構のガイドレール等に付着すると、噛み込みによってガイドレール等が損傷を受けたり、所望の位置精度が満たされなくなったりする。
【0005】
本発明の目的は、加工対象物から発生する粉塵に起因する移動機構の損傷や位置精度の低下を抑制することができる加工装置、及び加工装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
加工対象物を加工する加工ヘッドと、
前記加工ヘッドを支持して移動させる移動機構と、
前記移動機構を内部に収容し、前記加工ヘッドを内部に含まないカバーと、
前記カバーの内部にガスを供給するガス供給系と、
前記カバーの内部から外部にガスを通過させる排出口と、
前記カバーの内部を通過するガスの流量を調整する流量調整機構と、
前記カバーの内部が陽圧になるように前記流量調整機構を制御するコントローラと
を備えた加工装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
加工対象物を加熱する加工ヘッドを支持して移動させる移動機構を内部に含み、前記加工ヘッドを内部に含まないカバーと、
前記カバーの内部にガスを供給するガス供給系と、
前記カバーの内部から外部にガスを通過させる排出口と、
前記カバーの内部を通過するガスの流量を調整する流量調整機構と、
前記カバーの内部が陽圧になるように前記流量調整機構を制御するコントローラと
を備えた加工装置の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
移動機構がカバーの内部に収容されているため、加工対象物から飛散した粉塵が移動機構まで到達しにくい。このため、粉塵に起因する移動機構の損傷や位置精度の低下を抑制することができる。なお、カバーの内部にガスを供給しているため、カバーの内部の過度の温度上昇を抑制することができる。また、ガスの流量を調整することにより、ガス流による冷却能力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施例による加工装置の構造を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、ロボットアームを含む加工装置の概略図である。
【
図3】
図3は、加工ユニットのカバーの内部を示す概略側面図である。
【
図4】
図4は、加工ユニットのカバーの内部を示す概略平面図である。
【
図5】
図5は、温度センサで測定された温度の時間変化と、カバーの内部を通過するガスの流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図5を参照して、本願発明の一実施例による加工装置について説明する。
図1は、実施例による加工装置の構造を模式的に示す図である。加工ヘッド10が接続部材15を介して移動機構20に移動可能に支持されている。移動機構20は、支持部材21を介して後述するロボットアーム40(
図2)の先端に取り付けられている。
【0011】
レーザ光源11から光ファイバ12を通って加工ヘッド10に加工用のレーザ光が導入される。加工ヘッド10の先端から加工対象物80に加工用のレーザビームが出力される。レーザ光源11として、例えば近赤外のレーザビームを出力するファイバレーザ発振器を用いることができる。加工対象物80にレーザビームが入射することにより、加工対象物80の切断、穴明け等の加工が行われる。
【0012】
移動機構20は、加工ヘッド10をレーザビームの光軸に垂直な平面内で相互に直交する二方向に移動させることができる。移動機構20は、内部に空洞を持つカバー50の内部に収容されている。カバー50は、例えば金属材料で形成されている。加工ヘッド10は、カバー50の外部に配置されている。
【0013】
カバー50に、加工ヘッド10と移動機構20とを接続する接続部材15が通過する開口部52が設けられている。開口部52は、移動機構20による加工ヘッド10の移動を妨げない程度の十分な大きさとされている。さらに、支持部材21は、カバー50の外部まで導出されており、カバー50は支持部材21に固定されている。
【0014】
ガス供給系60が、カバー50の内部にガス、例えば圧縮空気を供給する。ガス供給系60は、コンプレッサ61、及びコンプレッサ61からカバー50の内部の空間まで至るガス流路62を含む。ガス流路62として、例えばフレキシブルチューブを用いることができる。ガス流路62の途中に流量調整弁76が挿入されている。
【0015】
カバー50に排出口51が設けられている。排出口51は、例えばカバー50に設けられた開口で構成される。カバー50の内部に流入したガスが排出口51を通って外部に排出される。なお、カバー50内のガスは、排出口51の他に、開口部52等の隙間を通って外部に流出する。排出口51の開口の少なくとも一部分を塞ぐ可動蓋77が設けられている。可動蓋77をスライドさせることにより、ガスが通過する開口の大きさ(以下、「排出口51の実質的な大きさ」という。)を調整することができる。
図1において、カバー50の内部へのガスの流入、及びカバー50の内部から外部へのガスの流出の流れを矢印で示している。
【0016】
カバー50の内部に温度センサ55が配置されている。温度センサ55は、カバー50の内部の温度を測定する。温度センサ55による温度の測定結果がコントローラ70に入力される。
【0017】
コントローラ70は、移動機構20を制御して加工ヘッド10を移動させ、流量調整弁76を制御してガスの流量を調整し、可動蓋77を移動させて排出口51の実質的な大きさを調整する。流量調整弁76または可動蓋77を制御することにより、カバー50の内部を通過するガスの流量を調整することができる。流量調整弁76及び可動蓋77は、カバー50の内部を通過するガスの流量を調整する流量調整機構75として機能する。
【0018】
図2は、ロボットアーム40を含む加工装置の概略図である。基台41にロボットアーム40の基部が固定されている。ロボットアーム40として、例えば6自由度を持つ多関節型ロボットアームが用いられる。ロボットアーム40の先端に加工ユニット18が取り付けられている。加工ユニット18は、
図1を参照して説明した支持部材21、移動機構20、加工ヘッド10、及びカバー50等を含む。加工ユニット18の支持部材21が、ロボットアーム40の先端に固定されている。
【0019】
次に、加工手順について簡単に説明する。加工対象物80が支持機構81によって支持されている。コントローラ70がロボットアーム40を制御することによって、加工ヘッド10を加工対象物80に対向する位置まで移動させ、加工すべき箇所にレーザビームが入射するように、加工ヘッド10を位置決めする。位置決めが完了した状態で、ロボットアーム40を静止させる。コントローラ70は、ロボットアーム40を静止させた状態で移動機構20を制御して、加工ヘッド10を移動させながらレーザビームを加工対象物80に入射させる。レーザビームの入射によって、加工対象物80の穴明け、切断等の加工が行われる。
【0020】
次に、
図3及び
図4を参照して、加工ユニット18のより詳細な構成について説明する。
図3は、加工ユニット18のカバー50の内部を示す概略側面図である。なお、カバー50については断面を示している。
【0021】
加工ヘッド10から出力されるレーザビームの光軸方向をz軸方向とするxyz直交座標系を定義する。加工ヘッド10が、接続部材15、及び第1Y軸直動機構22を介して中間支持部材24に支持されている。質量体25が、第2Y軸直動機構23を介して中間支持部材24に支持されている。第1Y軸直動機構22及び第2Y軸直動機構23は、それぞれ加工ヘッド10及び質量体25を中間支持部材24に対してy軸方向に移動させる。第1Y軸直動機構22及び第2Y軸直動機構23は、それぞれ中間支持部材24の相互に反対側の面(上面と下面)に取り付けられている。第1Y軸直動機構22、第2Y軸直動機構23、及び質量体25の詳細な構成については、後に
図4を参照して説明する。
【0022】
中間支持部材24が、第1X軸直動機構26を介して支持部材21に支持されている。第1X軸直動機構26は、中間支持部材24を支持部材21に対してx軸方向に移動させる。質量体28が、
図3には現れていない第2X軸直動機構27(
図4)を介して支持部材21に支持されている。第2X軸直動機構27(
図4)は、質量体28を支持部材21に対してx軸方向に移動させる。
【0023】
第1X軸直動機構26及び第2X軸直動機構27(
図4)は、支持部材21の上面に取り付けられている。支持部材21の下面に温度センサ55が取り付けられている。
【0024】
図4は、加工ユニット18のカバー50の内部を示す概略平面図である。なお、カバー50については断面を示している。
【0025】
第1Y軸直動機構22が、接続部材15を介して加工ヘッド10を支持している。以下、第1Y軸直動機構22の構成について説明する。第1Y軸直動機構22には、ボールねじ機構が採用される。モータ22aの回転軸がカップリング22bによりねじ軸22dに連結されている。モータ22aは中間支持部材24に支持されており、ねじ軸22dの先端が軸受け22eによって中間支持部材24に支持されている。スラスト軸受け22cが、ねじ軸22dの軸方向の荷重を受け止める。
【0026】
接続部材15が、一対のガイドレール22gによって、中間支持部材24に対してy軸方向に移動可能に支持されている。さらに、接続部材15はボールねじ機構のナット22fに固定されている。モータ22aを駆動することにより、接続部材15及び加工ヘッド10が中間支持部材24に対してy軸方向に移動させることができる。
【0027】
第1Y軸直動機構22として、ボールねじ機構に代えて、その他の直動機構を採用してもよい。例えば、ベルトドライブ機構、ラックアンドピニオン機構等を採用してもよい。
【0028】
質量体25が、第2Y軸直動機構23によって、中間支持部材24にy軸方向に移動可能に支持されている。第2Y軸直動機構23にも、第1Y軸直動機構22と同様にボールねじ機構が採用される。質量体25は環状の形状を有しており、平面視において加工ヘッド10を取り囲んでいる。第1Y軸直動機構22によってy軸方向に移動する部分と、質量体25とは、x軸方向及びz軸方向に関する重心位置がほぼ一致するように配置されており、両者の質量はほぼ等しい。
【0029】
加工ヘッド10をy軸方向に移動させるとき、質量体25を反対方向に移動させることにより、加工ヘッド10の移動によって発生する反力が打ち消される。これにより、加工対象物80(
図2)に対する加工ヘッド10の位置精度を高めることができる。
【0030】
中間支持部材24が、第1X軸直動機構26の一対のガイドレール26gにより、支持部材21に対してx軸方向に移動可能に支持されている。質量体28が、第2X軸直動機構27により、支持部材21に対してx軸方向に移動可能に支持されている。第1X軸直動機構26及び第2X軸直動機構27にも、第1Y軸直動機構22等と同様にボールねじ機構が採用される。第1X軸直動機構26及び第2X軸直動機構27は、支持部材21の上面に取り付けられている。
【0031】
質量体28は、yz断面がU字状の形状を有し、支持部材21を、下方及び側方(y軸方向の正側及び負側)の三方向から取り囲んでいる。
【0032】
第1X軸直動機構26のナット26fが中間支持部材24に取り付けられており、スラスト軸受け26cが支持部材21に取り付けられている。第2X軸直動機構27のナット27fが、支持部材21に設けられた開口21Aを通って質量体28の底面部に取り付けられており、スラスト軸受け27cが支持部材21に取り付けられている。なお、
図4には、スラスト軸受け27cを支持部材21に取り付けた箇所が現れていない。開口21Aは、中間支持部材24のx軸方向の移動を妨げない大きさとされている。第1X軸直動機構26によってx軸方向に移動する部分と、質量体28とは、y軸方向及びz軸方向に関する重心位置がほぼ一致するように配置されており、両者の質量はほぼ等しい。
【0033】
加工ヘッド10をx軸方向に移動させるとき、質量体28を反対方向に移動させることにより、加工ヘッド10の移動によって発生する反力が打ち消される。これにより、加工対象物80(
図2)に対する加工ヘッド10の位置精度を高めることができる。
【0034】
支持部材21の下面に温度センサ55が取りつけられている。例えば、温度センサ55は、平面視において一方のガイドレール26gと部分的に重なる位置に配置されている。
【0035】
次に、
図5を参照して、流量調整機構75(
図1)に対するコントローラ70(
図1)の制御機能について説明する。
【0036】
図5は、温度センサ55で測定された温度の時間変化と、カバー50の内部を通過するガスの流量との関係を示すグラフである。横軸は経過時間を表し、上側のグラフの縦軸は温度センサ55による温度の測定結果を表し、下側のグラフの縦軸はガス流量を表す。
【0037】
加工を行う前の時刻t0において、カバー50の内部にガスを流し始める。この時のカバー50の内部の温度は室温である。加工を開始すると、加工対象物80(
図1)が加熱され、加工対象物80からの熱輻射または対流によってカバー50の内部の移動機構20の温度が上昇する。時刻t1において温度が上限閾値Tth1を超えると、コントローラ70は、流量調整機構75を制御してガス流量を増加させる。例えば、流量調整弁76を通過する流量を増大させ、可動蓋77を制御することにより、排出口51の実質的な大きさを大きくする。
【0038】
カバー50の内部を通過するガスの流量が増大することにより、ガス流による冷却能力が上昇する。これにより、温度の上昇の傾きが緩やかになり、その後温度が下降し始める。時刻t2において、温度が解除閾値Tth2以下になったら、コントローラ70は流量を元に戻す。解除閾値Tth2は上限閾値Tth1より低く設定されている。これにより、ガス流による冷却能力が低下し、温度の下降の傾きが緩やかになり、その後上昇し始める。
【0039】
さらに、コントローラ70は、カバー50の内部が陽圧になるように、流量調整機構75を制御する。このため、カバー50の開口部52(
図1)等の隙間からガスが流出する。
【0040】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
移動機構20がカバー50で覆われているため、加工によって飛散した粉塵が移動機構20の各部材まで到達しにくい。さらに、カバー50の内部が陽圧にされているため、カバー50に形成された種々の隙間を通過して粉塵がカバー50の内部に進入することも抑制される。このため、移動機構20の摺動部分等への粉塵の噛み込みが抑制される。これにより、粉塵の噛み込みに起因する位置決め精度の低下や移動機構の損傷を抑制することができる。粉塵の進入を抑制する十分な効果を得るために、カバー50の内部を0.2MPa以上にすることが好ましい。なお、カバー50の内部の圧力を必要以上に高くしても、粉塵の進入を抑制する効果はほとんど変わらない。例えば、カバー50の内部の圧力を0.4MPa以下にしても十分な効果が得られる。
【0041】
上記実施例では、温度センサ55で測定されたカバー50内の温度に応じてガスの流量を変化させて、冷却能力を調整している。これにより、カバー50の内部の温度、例えば移動機構20を構成する各部材の温度の過度の上昇を抑制することができる。これにより、移動機構20の温度変化に起因する位置決め精度の低下を抑制することができる。
【0042】
また、上記実施例では、温度センサ55(
図3)が支持部材21に取り付けられているため、移動機構20の温度変化が、温度センサ55による測定結果に反映されやすい。特に、平面視においてガイドレール26gと重なる位置に、温度センサ55(
図4)が配置されているため、位置精度に影響を及ぼしやすいガイドレール26gの温度変化が、温度センサ55による測定結果に反映されやすい。このため、移動機構20のより適切な温度制御を行うことが可能になる。
【0043】
カバー50の開口部にファンを取り付けて、カバー50内にガス流を形成することによっても、移動機構20の温度上昇を抑制することができる。この構成を採用した場合、粉塵がカバー50の内部に侵入することを防止するために、開口部にフィルタを設置する必要がある。ファンとフィルタとを設ける構成では。加工装置の使用環境上、フィルタを頻繁に交換しなければならなくなる。
【0044】
上記実施例では、コンプレッサ61(
図1)で発生した圧縮空気を、ガス流路62を通してカバー50の内部に供給している。このため、フィルタの交換を頻繁に行う必要がないという優れた効果が得られる。
【0045】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、流量調整機構75(
図1)を、流量調整弁76と可動蓋77とで構成しているが、流量調整弁76及び可動蓋77の一方のみで流量調整機構75を調整する構成を採用してもよい。例えば、流量調整弁76に代えて、流路の開閉を行う開閉弁を用い、可動蓋77のみで流量を調整してもよい。この場合、可動蓋77を制御して排出口51(
図1)の実効的な大きさを増減させることにより、ガスの流量を増減させることができる。逆に、可動蓋77を無くして排出口51の実効的な大きさを不変にし、流量調整弁76のみでガスの流量を増減させてもよい。その他に、コンプレッサ61を制御して、コンプレッサ61から流出する圧縮空気の圧力を調整することにより、ガスの流量を増減させてもよい。この場合には、コンプレッサ61が流量調整機構75として機能する。
【0046】
また、上記実施例では、
図5を参照して説明したように、1つの上限閾値Tth1を設け、ガスの流量を2段階に変化させている。その他に、ガスの流量を増加させる判定閾値を複数個設けておき、ガスの流量を3段階以上に変化させてもよい。その他に、温度に応じてガスの流量を連続的に変化させてもよい。これらの場合にも、温度が上昇すると、ガスの流量を増加させ、温度が低下すると、ガスの流量を減少させるように制御するとよい。
【0047】
上記実施例による加工装置の加工ヘッド10は、レーザビームのエネルギを利用して加工を行うが、その他の原理で加工を行う加工ヘッドを搭載してもよい。例えば、機械的に加工を行う加工ヘッド等を加工装置に搭載してもよい。この場合、機械的な加工によって飛散する粉塵や、機械的な加工によって発生する熱輻射の影響を軽減することができる。
【0048】
また、上記実施例では、加工ユニット18(
図2)をロボットアーム40で支持しているが、その他の駆動装置で支持してもよい。例えば、門型フレームに加工ユニット18を支持して、加工ユニット18を直線状に移動させるようにしてもよい。
【0049】
上記実施例では、移動機構20に、加工ヘッド10の移動によって発生する反力を打ち消す機構を採用しているが、必ずしも、反力を打ち消す機構を採用する必要はない。例えば、発生する反力の大きさに対してロボットアーム40の剛性が十分高い場合には、反力を打ち消す機構を採用しなくてもよい。または、反力によって発生する加工ヘッド10の位置精度の低下が許容範囲内であるような加工を行う場合には、反力を打ち消す機構を採用しなくてもよい。
【0050】
上述の実施例は例示であり、上記実施例および種々の変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。さらに、本発明は上述の実施例および変形例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0051】
10 加工ヘッド
11 レーザ光源
12 光ファイバ
15 接続部材
18 加工ユニット
20 移動機構
21 支持部材
22 第1Y軸直動機構
22a モータ
22b カップリング
22c スラスト軸受け
22d ねじ軸
22e 軸受け
22f ナット
22g ガイドレール
23 第2Y軸直動機構
24 中間支持部材
24A 開口
25 質量体
26 第1X軸直動機構
26c スラスト軸受け
26f ナット
26g ガイドレール
27 第2X軸直動機構
27c スラスト軸受け
27f ナット
28 質量体
40 ロボットアーム
41 基台
50 カバー
51 排出口
52 開口部
55 温度センサ
60 ガス供給系
61 コンプレッサ
62 ガス流路
70 コントローラ
75 流量調整機構
76 流量調整弁
77 可動蓋
80 加工対象物
81 支持機構