(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134994
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ソナードーム
(51)【国際特許分類】
B63B 49/00 20060101AFI20220908BHJP
B63G 8/39 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B63B49/00 B
B63G8/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034545
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】松本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 友輔
(57)【要約】
【課題】船舶の高速航行時におけるFRP製のドーム本体の損傷を抑制でき、送受波器の保護を図る上で有利なソナードームのドーム本体を提供すること。
【解決手段】ドーム本体18は、内側FRP製板20と、外側FRP製板22と、内部ゴム層24と、防汚ゴム層26とを含んで構成されている。内側FRP製板20は、送受波器12側に位置するドーム本体18の箇所を形成している。外側FRP製板22は、送受波器12と反対に位置するドーム本体18の箇所を形成している。内部ゴム層24は、内側FRP製板20と外側FRP製板22との間に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船底側に取り付けられるビード部と、前記ビード部から延在し前記船底に設置された送受波器を覆うドーム本体とを備えるソナードームであって、
前記ドーム本体は、前記送受波器側に位置する前記ドーム本体の箇所を形成する内側FRP製板と、前記送受波器と反対に位置する前記ドーム本体の箇所を形成する外側FRP製板と、それら内側FRP製板と外側FRP製板との間に配置され衝撃吸収機能を有する内部ゴム層とを含んで構成されている、
ことを特徴とするソナードーム。
【請求項2】
前記ドーム本体は、前記内部ゴム層と反対側の前記外側FRP製板の面に取り付けられ防汚機能及び衝撃吸収機能を有する防汚ゴム層をさらに含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のソナードーム。
【請求項3】
前記ビード部は芯材を含んで構成され、
一枚の第1FRP製板が前記ビード部において前記芯材に掛装されて折り返され、
前記内側FRP製板と前記外側FRP製板は、前記折り返された第1FRP製板により構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のソナードーム。
【請求項4】
前記ビード部と、前記ビード部の近傍の前記ドーム本体の箇所は、前記船底側の取り付け具により支持される取り付け基部となっており、
前記ビード部において前記第1FRP製板の内側で第2FRP製板が前記芯材に掛装されて折り返され、
前記取り付け具から露出する前記ドーム本体の箇所で前記取り付け具寄りの箇所は、前記折り返され2枚となった前記第2FRP製板が重ねられ前記内部ゴム層に代えて配置されている、
ことを特徴とする請求項3記載のソナードーム。
【請求項5】
前記ビード部において、前記第1FRP製板の外側で第3FRP製板が前記芯材に掛装されて折り返され、
前記取り付け具から露出する前記ドーム本体の箇所で前記取り付け具寄りの箇所は、前記折り返され2枚となった前記第3FRP製板が、前記送受波器側に向いた前記内側FRP製板の面と、前記送受波器と反対に向いた前記外側FRP製板の面とに配置されている、
ことを特徴とする請求項4記載のソナードーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船底に設置された送受波器を覆い自船等から発生する雑音から送受波器を保護するソナードームに関する。
【背景技術】
【0002】
ソナードームは、芯材を有するビード部と、ビード部から延在するドーム本体を備えている。
そして、ビード部が船体側に取り付けられることでソナードームは船底に設置されている。
このようなソナードームは、従来、ゴム製である(特許文献1)。
そのため近年の船舶の高速航行化に伴い、高速航行時にソナードームのドーム本体に作用する流体抵抗が大きくなり、ドーム本体に変形が生じ船底の抵抗が大きくなるなどの不具合が生じていた。
そこで、本発明者らは、高速航行時に変形を阻止できるFRP製のソナードームを提案しており、このFRP製のソナードームは、ドーム本体がFRP製板を含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ドーム本体がFRP製板のみで構成されたドーム本体では、高速航行時に浮遊物がドーム本体に衝突した場合、その衝撃によりドーム本体が損傷し易く、送受波器の保護を図る上で不利がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、高速航行時におけるFRP製のドーム本体の損傷を抑制でき、送受波器の保護を図る上で有利なソナードームのドーム本体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明の一実施の形態は、船底側に取り付けられるビード部と、前記ビード部から延在し前記船底に設置された送受波器を覆うドーム本体とを備えるソナードームであって、前記ドーム本体は、前記送受波器側に位置する前記ドーム本体の箇所を形成する内側FRP製板と、前記送受波器と反対に位置する前記ドーム本体の箇所を形成する外側FRP製板と、それら内側FRP製板と外側FRP製板との間に配置され衝撃吸収機能を有する内部ゴム層とを含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ドーム本体は、前記内部ゴム層と反対側の前記外側FRP製板の面に取り付けられ防汚機能及び衝撃吸収機能を有する防汚ゴム層をさらに含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ビード部は芯材を含んで構成され、一枚の第1FRP製板が前記ビード部において前記芯材に掛装されて折り返され、前記内側FRP製板と前記外側FRP製板は、前記折り返された第1FRP製板により構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ビード部と、前記ビード部の近傍の前記ドーム本体の箇所は、前記船底側の取り付け具により支持される取り付け基部となっており、前記ビード部において前記第1FRP製板の内側で第2FRP製板が前記芯材に掛装されて折り返され、前記取り付け具から露出する前記ドーム本体の箇所で前記取り付け具寄りの箇所は、前記折り返され2枚となった前記第2FRP製板が重ねられ前記内部ゴム層に代えて配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ビード部において、前記第1FRP製板の外側で第3FRP製板が前記芯材に掛装されて折り返され、前記取り付け具から露出する前記ドーム本体の箇所で前記取り付け具寄りの箇所は、前記折り返され2枚となった前記第3FRP製板が、前記送受波器側に向いた前記内側FRP製板の面と、前記送受波器と反対に向いた前記外側FRP製板の面とに配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、船舶の高速航行時に浮遊物がドーム本体に衝突した場合、その衝撃を内部ゴム層により吸収できるため、2枚のFRP製板を重ねてドーム本体を構成する場合に比べ、外側FRP製板の損傷を最小限に留め、送受波器の保護を図る上で有利となる。
また、2枚のFRP製板を重ねてドーム本体を構成する場合に比べ、音波透過率を高めることで送受波を効率良く行なえ、物体の検知を高い精度で行なう上で有利となる。
また、加硫を分割して行なえるようになるため、外側FRP製板形成用のプリプレグと内側FRP製板形成用のプリプレグの曝露時間の短縮化を図る上で有利となり、ソナードーム14を簡単に確実に製造する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、外側FRP製板に防汚ゴム層を設けると、ドーム本体への海洋生物の付着を防止でき、ドーム本体の音響透過性を確保する上で有利となり、また、船舶の高速航行時に浮遊物がドーム本体に衝突した場合、その衝撃を防汚ゴム層でも吸収できるため、外側FRP製板の損傷を最小限に留め、送受波器の保護を図る上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、ビード部において芯材に掛装されて折り返された第1FRP製板により、芯材に連結された内側FRP製板と外側FRP製板とを簡単に構成できる。
また、本発明の一実施の形態によれば、取り付け具から露出する取り付け具寄りのドーム本体の箇所に、内部ゴム層に代えて第2FRP製板を配置すると、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用するドーム本体の箇所の強度を確保する上で有利となり、ソナードームの耐久性を高める上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、取り付け具から露出する取り付け具寄りのドーム本体の箇所において、送受波器に向いた内側FRP製板の面と、送受波器と反対に向いた外側FRP製板の面とに、それぞれ第3FRP製板を配置すると、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用するドーム本体の箇所の強度を確保する上で有利となり、ソナードームの耐久性を高める上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】船底にソナードームが配置された状態の側面図である。
【
図2】(A)はソナードームの平面図、(B)は同側面図、(C)は同斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態のドーム本体の断面図である。
【
図4】第1の実施の形態のソナードームの船底への取り付け状態の断面図である。
【
図5】第2の実施の形態のソナードームの船底への取り付け状態の断面図である。
【
図6】第3の実施の形態のソナードームの船底への取り付け状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
まず、第1の実施の形態について
図1~
図4を参照して説明する。
図1に示すように、船底10に送受波器12が設置され、送受波器12を覆うようにソナードーム14が設けられている。
図2に示すように、ソナードーム14は、船舶の延在方向に沿って細長の細長状を呈し、上方が開放状に設けられている。
図2(A)、(C)に示すように、ソナードーム14は、平面視した場合、長さ方向の両端の半円弧部と、それら半円弧部の両端を接続する互いに対向する2本の直線部とでその輪郭が形成されている。
また、
図2(B)で示すように、側方から見た場合、ソナードーム14の高さは、長さ方向の中央が最も大きい寸法で形成され、両端に至るにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、また、長さ方向から見たソナードーム14の高さは、不図示ではあるが幅方向の中央が最も高く、幅方向の外側に至るにつれて次第に小さくなる寸法で形成されている。
ソナードーム14は、ビード部16と、ドーム状に延在するドーム本体18とを含んで構成されている。
ビード部16は、船底10にその全周が取り付けられ、ソナードーム14の形状を保持する箇所であり、ドーム本体18Aの上縁全周にわたって延在している。
【0009】
図3に示すように、ドーム本体18は、内側FRP(Fiber Reinforced Plastics)製板20と、外側FRP製板22と、内部ゴム層24と、防汚ゴム層26とを含んで構成されている。
内側FRP製板20は、送受波器12側に位置するドーム本体18の箇所を形成している。
内部ゴム層24は、送受波器12と反対に位置する内側FRP製板20の面に設けられている。
内部ゴム層24は、衝撃吸収機能を有するゴム材料で形成されている。
外側FRP製板22は、内側FRP製板20と反対に位置する内部ゴム層24の面に設けられている。
したがって、外側FRP製板22は、送受波器12と反対に位置するドーム本体18の箇所を形成し、内部ゴム層24は内側FRP製板20と外側FRP製板22との間に挟まれて配置されている。
防汚ゴム層26は、必要に応じて設けられるもので、内部ゴム層24と反対に位置する外側FRP製板22の面に設けられている。
防汚ゴム層26は、海洋生物の外側FRP製板22への付着を防止する防汚機能と衝撃吸収機能とを有している。
【0010】
次に、ソナードーム14の船底10への取り付けについて説明する。
図4に示すように、ビード部16は芯材28を含んで構成されている。
芯材28は、ドーム本体18の上縁の全周にわたって延在している。
芯材28としては、ゴムで円形に被覆された可撓性を有する1本または複数本のワイヤ、あるいは、ゴムで円形に被覆された合成繊維からなる可撓性を有するロープなど、従来公知の様々な可撓性を有する材料が使用可能である。
【0011】
ビード部16は、芯材28に加え、外周ゴム層32と、第1FRP製板34と、シールゴム層36と、隙間閉塞用ゴム38Aとを含んで構成されている。
外周ゴム層32は、芯材28の外周面を覆っている。
第1FRP製板34は、外周ゴム層32の上から芯材28に掛装されて折り返され、ビード部16からドーム本体18に至っており、折り返された2枚の第1FRP製板34は、ドーム本体18においてそれぞれ内側FRP製板20と外側FRP製板22を構成している。
すなわち、ビード部16において芯材28に掛装されて折り返された第1FRP製板34により、芯材28に連結された内側FRP製板20と外側FRP製板22とを簡単に構成できる。
シールゴム層36は、船底10側でビード部16を含むソナードーム14の箇所をシール性を確保しつつ確実に保持できるように設けられたもので、詳細には、船底10側で取り付けられる箇所であるビード部16と、ビード部16近傍の第1FRP製板34の箇所を覆うように設けられている。
なお、
図4に示すように、船底10に取り付けられるソナードーム14の箇所を取り付け基部1402とすると、取り付け基部1402は、ビード部16と、ビード部16寄りのドーム本体18の箇所を含んで構成され、シールゴム層36は取り付け基部1402に設けられている。
【0012】
隙間閉塞用ゴム38Aは、芯材28から離れるにつれてその厚さが次第に減少する断面形状で予め加硫成形され、芯材28と、芯材28から折り返された2枚の第1FRP製板34との間に形成される隙間を閉塞している。
本実施の形態では、芯材28が外周ゴム層32で覆われているため、隙間閉塞用ゴム38Aは、外周ゴム層32と、外周ゴム層32から折り返された2枚の第1FRP製板34との間に形成される隙間を閉塞する断面形状で予め加硫成形され隙間を閉塞している。
隙間閉塞用ゴム38Aは、船舶の高速航行時にドーム本体18に大きな引っ張り力が作用し、この大きな引っ張り力を受ける第1FRP製板34の箇所に位置しているため、大きな力を受けても変形しないように硬質ゴムで形成されている。
なお、ビード部16は、芯材28の周囲に位置するソナードーム14の箇所であり、本実施の形態では、ビード部16は、芯材28、外周ゴム層32、隙間閉塞用ゴム38Aと、それら芯材28、外周ゴム層32、隙間閉塞用ゴム38Aの周囲に位置する第1FRP製板34の部分とシールゴム層36の部分により構成され、ドーム本体18はこのビード部16を除いたソナードーム14の箇所をいう。
そして、芯材28の延在方向と直交する平面で切断した取り付け基部1402の断面形状は、芯材28の中心と、ビード部16寄りのドーム本体18の厚さの中心とを結ぶ想像線Cに対して左右対称に形成されることで、船舶の高速航行時、取り付け基部1402において大きな引っ張り力が第1FRP製板34から芯材28に作用した際に、この引っ張り力は芯材28を回転させる方向に作用することはなくなり、ビード部16を含む取り付け基部1402の耐久性を高める上で有利となっている。
【0013】
図4に示すように、ソナードーム14は、取り付け部材42、取り付け具であるビードシート44、ビードクランプ46を介して船底10に取り付けられている。
取り付け部材42は、船底10に取り付けられた板状の部材であり、送受波器12の周囲でソナードーム14の平面視形状に沿って細長の枠状に延在している。
取り付け部材42は、金属製または合成樹脂製である。
ビードシート44は、ビード部16の平面視形状に対応して細長の枠状に延在している。
ビードシート44は、金属製または合成樹脂製であり、ビードシート側合わせ面4402と、ビードシート側挟持面4404を備えている。
ビードクランプ46は、ビードシート44の全周にわたって延在している。
ビードクランプ46は、金属製または合成樹脂製であり、ビードクランプ側合わせ面4602と、ビードクランプ側挟持面4604とを備えている。
【0014】
ソナードーム14を船底10に取り付けるに際して、ビードシート44のビードシート側挟持面4404とビードクランプ46のビードクランプ側挟持面4604とをソナードーム14の取り付け基部1402に合わせ、ビードシート44のビードシート側合わせ面4402とビードクランプ46のビードクランプ側合せ面4602を合わせ、第1ボルトB1によりビードクランプ46とビードシート44とを締結し、ビードシート側挟持面4404とビードクランプ側挟持面4604により、ソナードーム14の取り付け基部1402を挟持する。
そして、ビードシート44の上面を、船底10側に取り付けられた取り付け部材42の下面に合せ、第2ボルトB2によりビードシート44を取り付け部材42に取り付け、これによりソナードーム14は船底10に配置される。
すなわち、ビードシート44とビードクランプ46は、ソナードーム14の取り付け基部1402を支持する取り付け具48を構成している。
【0015】
次に、ソナードーム14の製造方法について説明する。
まず、取り付け基部1402とその近傍のドーム本体18の箇所について説明する。
取り付け基部1402とその近傍のドーム本体18の箇所は、ビード部16の延在方向に沿った所定の長さ毎で、この長さと直交する所定幅毎に順次製造されていく。
すなわち、芯材28の所定長さ毎に、外周ゴム層32形成用の帯状の未加硫ゴムを巻回する。
次に、予め加硫成形された隙間閉塞用ゴム38Aの端部を、外周ゴム層32形成用の未加硫ゴムの外周面に重ね合わせて配置する。
次に、所定長さおよび所定幅の第1FRP製板34形成用のプリプレグを、外周ゴム層32形成用の未加硫ゴムの外周面の半部に重ね合わせて掛装する。
次に、所定長さおよび所定幅の内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムの端部を、隙間閉塞用ゴム38Aの端部に合わせ、第1FRP製板34形成用のプリプレグの上に配置する。
次に、外周ゴム層32形成用の未加硫ゴムの外周面の半部に重ね合わせて掛装した残りの第1FRP製板34形成用のプリプレグを、外周ゴム層32形成用の未加硫ゴムの外周面の残りの半部に重ね合わせて掛装し、隙間閉塞用ゴム38Aと内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムの上に配置する。
【0016】
次に、シールゴム層36形成用の未加硫ゴムを、取り付け基部1402に対応する第1FRP製板34形成用のプリプレグの箇所の上に重ね合わせる。
このように重ね合わせた状態で加硫成形することで、外周ゴム層32形成用の未加硫ゴム、シールゴム層36形成用の未加硫ゴム、内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムが加硫されて芯材28、外周ゴム層32、シールゴム層36、内部ゴム層24の部分が形成され、第1FRP製板34形成用のプリプレグが加硫成形時の熱により硬化して第1FRP製板34が形成され、ソナードーム14の取り付け基部1402が製造される。
【0017】
次に、残りのドーム本体18の製造方法について説明する。
まず、ソナードーム14の取り付け基部1402を構成するシールゴム層36の端部に、その端部を接触させて所定幅および所定長さの防汚ゴム層26形成用の未加硫ゴムを配置する。
次に、ソナードーム14の取り付け基部1402を構成する第1FRP製板34の端部に、その端部を重ねて所定幅および所定長さの外側FRP製板22のプリプレグを、防汚ゴム層26形成用の未加硫ゴムの上に載置する。
そして、防汚ゴム層26形成用の未加硫ゴムを加硫成形し、その加硫時の熱により外側FRP製板22のプリプレグを硬化させると共に防汚ゴム層26に接合し、また、ソナードーム14の取り付け基部1402を構成する第1FRP製板34の端部に接合する。
つぎに、ソナードーム14の取り付け基部1402を構成する内部ゴム層24の端部に、その端部を接触させて外側FRP製板22の上に、所定幅および所定長さの内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムを載置し、ソナードーム14の取り付け基部1402を構成する第1FRP製板34の端部に、その端部を重ねて所定幅および所定長さの内側FRP製板20のプリプレグを、内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムの上に載置する。
なお、第1FRP製板34、外側FRP製板22、内側FRP製板20のプリプレグの組成は同一である。
そして、内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムを加硫成形し、その加硫時の熱により内側FRP製板20のプリプレグを硬化させると共に内部ゴム層24に接合し、また、ソナードーム14の取り付け基部1402を構成する第1FRP製板34の端部に接合する。
このようにしてドーム本体18を、ビード部16の延在方向に沿った所定の長さ毎に、かつ、ビード部16の延在方向と直交する方向に沿った所定の幅毎に順次製造していく。
【0018】
本実施の形態のソナードーム14のドーム本体18によれば、次の作用、効果が発揮される。
ドーム本体18は、内側FRP製板20と外側FRP製板22との2枚のFRP製板と、それら2枚のFRP製板の間に配置された内部ゴム層24とを含んで構成されている。
そのため、船舶の高速航行時に浮遊物がドーム本体18に衝突した場合、その衝撃を内部ゴム層24により吸収できるため、2枚のFRP製板を重ねてドーム本体18を構成する場合に比べ、外側FRP製板22の損傷を最小限に留め、送受波器12の保護を図る上で有利となる。
本実施の形態では、外側FRP製板22に防汚機能及び衝撃吸収機能を有する防汚ゴム層26を設けているので、ドーム本体18への海洋生物の付着を防止でき、ドーム本体18の音響透過性を確保する上で有利となり、また、船舶の高速航行時に浮遊物がドーム本体18に衝突した場合、その衝撃を防汚ゴム層26でも吸収できるため、外側FRP製板22の損傷を最小限に留め、送受波器12の保護を図る上でより有利となる。
【0019】
また、ソナードーム14は、内側FRP製板20と外側FRP製板22との2枚のFRP製板と、それらFRP製板に挟まれ衝撃吸収機能を有する内部ゴム層24とを含んで構成されているので、2枚のFRP製板を重ねてドーム本体18を構成する場合に比べ、音波透過率を高めることで送受波を効率良く行なえ、物体の検知を高い精度で行なう上で有利となる。
また、一般にFRP製板のプリプレグが硬化するまでの曝露時間は短く、比較的広い範囲において、硬化したFRP製板に、FRP製板のプリプレグを均一に確実に貼り合わせる作業は作業性が悪い。
本実施の形態では、上述のように、加硫を、防汚ゴム層26と内部ゴム層24とに分割して行なえる。
【0020】
すなわち、防汚ゴム層26の加硫成形時に外側FRP製板22を硬化させて防汚ゴム層26と外側FRP製板22とを接合でき、内部ゴム層24の加硫成形時に内側FRP製板20を硬化させて外側FRP製板22と内部ゴム層24と内側FRP製板20とを接合できるので、外側FRP製板22形成用のプリプレグと内側FRP製板20形成用のプリプレグの曝露時間の短縮化を図る上で有利となり、ソナードーム14を簡単に確実に製造する上で有利となる。
また、防汚ゴム層26を備えていないドーム本体18の場合であっても、外側FRP製板22形成用のプリプレグの上に、内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムを載置し、内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムの厚さ方向の下半部を加硫成形することで、その加硫時の熱により外側FRP製板22形成用のプリプレグを硬化させ外側FRP製板22を形成すると共に内部ゴム層24に接合し、次に、内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムの厚さ方向の上半部の上に内側FRP製板20形成用のプリプレグを載置し、内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムの厚さ方向の上半部を加硫成形することで、その加硫時の熱により内側FRP製板20形成用のプリプレグを硬化させ内側FRP製板20を形成すると共に内部ゴム層24に接合できる。
すなわち、加硫を内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムの厚さ方向の半部毎に分けて加硫できるため、外側FRP製板22形成用のプリプレグと内側FRP製板20形成用のプリプレグの曝露時間の短縮化を図る上で有利となり、ソナードーム14を簡単に確実に製造する上で有利となる。
【0021】
つぎに、
図5を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付し、その説明を省略あるいは簡略化して異なった箇所を重点的に説明する。
第2の実施の形態では、取り付け基部1402と、取り付け基部1402寄りのドーム本体18の箇所が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、ビード部16において、第1FRP製板34の内側で外周ゴム層32の上から第2FRP製板52が芯材28に掛装されて折り返され、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用する取り付け具48から露出した取り付け具48(取り付け基部1402)寄りのドーム本体18の箇所に、折り返され2枚となった第2FRP製板52が内部ゴム層24に代えて重ねられて配置されている。
詳細には、外周ゴム層32と隙間閉塞用ゴム38Bとにわたり、第2FRP製板52が掛装されて折り返され、2枚となった第2FRP製板52は、隙間閉塞用ゴム38Bを通過したところで互いに重ね合わされ、取り付け具48から突出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所に延在している。
第1FRP製板34は、ビード部16においてこの第2FRP製板52の上に掛装されて折り返され、内側FRP製板20と外側FRP製板22とを構成し、シールゴム層36は、取り付け基部1402において第1FRP製板34を覆うように設けられている。
【0022】
第2の実施の形態のソナードーム14の製造方法は、取り付け基部1402において、外周ゴム層32形成用の帯状の未加硫ゴムの上から、第2FRP製板52形成用のプリプレグを掛装して折り返し隙間閉塞用ゴム38Bを通過したところで、折り返された2枚の第2FRP製板52形成用のプリプレグを重ね合わせる点、第2FRP製板52形成用のプリプレグの上から第1FRP製板34形成用のプリプレグを掛装して折り返す点が異なっている。
また、取り付け基部1402寄りのドーム本体18の箇所では、第2FRP製板52形成用のプリプレグの先部の傾斜面5202に、その端部の傾斜面を載せて、所定幅および所定長さの内部ゴム層24形成用の未加硫ゴムを外側FRP製板22の上に載置する点が異なっている。
【0023】
このような第2の実施の形態によれば第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、次の効果が奏される。
取り付け具48から露出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所には、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用する。
第2の実施の形態では、取り付け具48の近傍のドーム本体18の箇所に、内部ゴム層24に代えて第2FRP製板52を配置している。
したがって、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用するドーム本体18の箇所の強度を確保する上で有利となり、ソナードーム14の耐久性を高める上で有利となっている。
また、取り付け基部1402からドーム本体18に延在する2枚となった第2FRP製板52が重ねられたFRP製板の端部は、2枚となった第2FRP製板52が重ねられた方向に対して交差する方向に延在する傾斜面5202で形成されている。
そして、2枚となった第2FRP製板52が重ねられたFRP製板の端部と内部ゴム層24の端部とは、傾斜面5202を介して接合されている。
このような傾斜面5202を設けることで、内部ゴム層24の端部と第2FRP製板52の端部との接合面を増加させ、接合性を向上する上で有利となり、取り付け具48の近傍のドーム本体18の箇所の強度を向上させる上で有利となる。
【0024】
つぎに、
図6を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は第2の実施の形態に第3FRP製板54を加えたものである。
すなわち、第3FRP製板54が、ビード部16において第1FRP製板34の上から芯材28に掛装されて折り返され、2枚となった第3FRP製板54が、それぞれ取り付け具48から突出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所に配置され、シールゴム層36は、取り付け基部1402において第3FRP製板54を覆うように設けられている。
取り付け具48から露出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所に配置された第3FRP製板54の箇所は、送受波器12に向いた内側FRP製板20の面と、送受波器12と反対に向いた外側FRP製板22の面において、厚さが取り付け具48から離れるにつれて段階的に小さくなるように設けられている。
本実施の形態では、取り付け部1402寄りの箇所が、厚さが最も厚い第1板部54Aとして形成され、続いて第1板部54Aよりも厚さの薄い第2板部54Bとして形成され、続いて第2板部54Bよりも厚さの薄い第3板部54Cとして形成されている。
【0025】
第3の実施の形態のソナードーム14の製造方法は、取り付け基部1402とその近傍のドーム本体18の箇所において、第1FRP製板34形成用のプリプレグの上から、第3FRP製板54形成用のプリプレグを掛装して折り返し、その上から、シールゴム層36形成用の未加硫ゴムを載置する点、防汚ゴム層26形成用の未加硫ゴムの上に、取り付け基部1402から突出する第3FRP製板54形成用のプリプレグを載置し、その上に、外側FRP製板22形成用のプリプレグを載置する点、内側FRP製板20形成用のプリプレグの上に、取り付け基部1402から突出する第3FRP製板54形成用のプリプレグを載置する点が第2の実施の形態と異なっている。
【0026】
このような第3の実施の形態によれば第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、次の効果が奏される。
取り付け具48から露出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所には、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用する。
第3の実施の形態では、取り付け具48から露出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所において、送受波器12に向いた内側FRP製板20の面と、送受波器12と反対に向いた外側FRP製板22の面とに、それぞれ第3FRP製板54が配置されている。
さらに、第2FRP製板52も、取り付け具48から露出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所に配置されている。
したがって、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用するドーム本体18の箇所の強度を確保する上で有利となり、ソナードーム14の耐久性を高める上でより有利となっている。
また、取り付け具48から露出した取り付け具48寄りのドーム本体18の箇所に配置された第3FRP製板54は、送受波器12に向いた内側FRP製板20の面と、送受波器12と反対に向いた外側FRP製板22の面において、船舶の高速航行時に生じる応力分布に対応させ、その厚さが取り付け基部1402から離れるにつれて段階的に小さくなるように設けられている。
したがって、船舶の高速航行時に大きな曲げモーメントが作用するドーム本体18の箇所の強度を確保する上で有利となり、同時に、応力集中の発生を抑制でき、ソナードーム14の耐久性を高める上でより有利となっている。
【符号の説明】
【0027】
10 船底
12 送受波器
14 ソナードーム
1402 取り付け基部
16 ビード部
18 ドーム本体
20 内側FRP製板
22 外側FRP製板
24 内部ゴム層
26 防汚ゴム層
28 芯材
32 外周ゴム層
34 第1FRP製板
36 シールゴム層
38A、38B 隙間閉塞用ゴム
42 取り付け部材
44 ビードシート
4402 ビードシート側合わせ面
4404 ビードシート側挟持面
46 ビードクランプ
4602 ビードクランプ側合わせ面
4604 ビードクランプ側挟持面
48 取り付け具
52 第2FRP製板
5202 傾斜面
54 第3FRP製板
54A 第1板部
54B 第2板部
54C 第3板部