(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135006
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】レーザ媒質ユニット及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/06 20060101AFI20220908BHJP
H01S 3/042 20060101ALI20220908BHJP
H01S 3/091 20060101ALI20220908BHJP
H01S 3/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01S3/06
H01S3/042
H01S3/091
H01S3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034560
(22)【出願日】2021-03-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、高輝度・高効率次世代レーザー技術開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】村松 侑輝
(72)【発明者】
【氏名】関根 尊史
(72)【発明者】
【氏名】幡野 佑真
(72)【発明者】
【氏名】玉置 善紀
(72)【発明者】
【氏名】倉田 将輝
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE03
5F172AF06
5F172AL07
5F172DD02
5F172EE16
5F172NS02
5F172NS18
5F172WW13
(57)【要約】
【課題】応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下及び熱複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下の両方を十分に抑制すると共に、レーザ媒質の温度制御を容易にすることができるレーザ媒質ユニット及びレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ媒質ユニット10Aは、レーザ媒質11と、保持体12と、を備えている。レーザ媒質11は、一対の端面11a,11bを有している。保持体12は、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11を包囲し、レーザ媒質11を保持している。保持体12は、Z軸方向から見た場合に保持体12の内側から外側に延在する変形許容部131を含んでいる。レーザ媒質11と保持体12とは、互いに接触している。保持体12におけるレーザ媒質11との接触領域Rは、Z軸方向において幅を有し、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11の側面11cに沿って延在している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の端面を有するレーザ媒質と、
前記一対の端面に交差する方向から見た場合に前記レーザ媒質を包囲し、前記レーザ媒質を保持する保持体と、を備え、
前記保持体は、前記一対の端面に交差する前記方向から見た場合に前記保持体の内側から外側に延在する変形許容部を含み、
前記レーザ媒質と前記保持体とは、互いに接触しており、
前記保持体における前記レーザ媒質との接触領域は、前記一対の端面に交差する前記方向において幅を有し、前記一対の端面に交差する前記方向から見た場合に前記レーザ媒質の外縁に沿って延在している、レーザ媒質ユニット。
【請求項2】
前記レーザ媒質は、前記一対の端面のそれぞれを主面とする板状を呈している、請求項1に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項3】
前記保持体は、前記変形許容部を含む本体部と、前記レーザ媒質と前記本体部との間に設けられた応力緩和部と、を有する、請求項1又は2に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項4】
前記レーザ媒質は、光増幅領域と、前記一対の端面に交差する前記方向から見た場合に前記光増幅領域を包囲する光吸収領域と、を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項5】
前記変形許容部は、前記一対の端面に交差する前記方向から見た場合に前記保持体の内側から外側に延在するスリットを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項6】
前記スリットは、複数のスリットのそれぞれであり、
前記複数のスリットは、前記一対の端面に交差する前記方向から見た場合に等角度間隔で配置されている、請求項5に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項7】
第1弾性部材を更に備え、
前記スリットは、複数のスリットのそれぞれであり、
前記第1弾性部材は、前記複数のスリットのそれぞれに配置されている、請求項5又は6に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項8】
取付部材を更に備え、
前記スリットは、複数のスリットのそれぞれであり、
前記取付部材は、前記一対の端面に交差する前記方向から見た場合に前記保持体を包囲している、請求項5~7のいずれか一項に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項9】
前記保持体と前記取付部材との間に配置された第2弾性部材を更に備える、請求項8に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項10】
前記取付部材の熱膨張率は、前記保持体の熱膨張率よりも小さい、請求項9に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項11】
前記取付部材の熱膨張率は、前記保持体の熱膨張率よりも大きい、請求項9に記載のレーザ媒質ユニット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のレーザ媒質ユニットを備える、レーザ装置。
【請求項13】
前記レーザ媒質ユニットを収容し、冷媒が流れるチャンバを更に備える、請求項12に記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記レーザ媒質ユニットは、複数のレーザ媒質ユニットのそれぞれであり、
前記複数のレーザ媒質ユニットのそれぞれは、前記冷媒が流れる隙間を介して配置されている、請求項13に記載のレーザ装置。
【請求項15】
前記レーザ媒質ユニットによって増幅されるレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ媒質を励起する励起光を出射する励起光源と、を更に備える、請求項12~14のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項16】
前記励起光源は、第1励起光源及び第2励起光源のそれぞれであり、
前記第1励起光源は、前記レーザ媒質ユニットに対して、前記一対の端面に交差する前記方向における一方の側に配置されており、
前記第2励起光源は、前記レーザ媒質ユニットに対して、前記一対の端面に交差する前記方向における他方の側に配置されている、請求項15に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ媒質ユニット及びレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円板状を呈するレーザ媒質と、レーザ媒質の厚さ方向から見た場合にレーザ媒質を包囲する保持プレートと、レーザ媒質と保持プレートとの間に配置されたCリング、スプリング又は複数のコンタクトフィンガ(以下、「Cリング等」という)と、を備えるレーザ媒質ユニットが記載されている。特許文献1に記載のレーザ媒質ユニットでは、冷却ガスによって保持プレートが冷却されている際に、Cリング等が、レーザ媒質で発生した熱を保持プレートに逃がす熱伝導部として機能すると共に、保持プレートの収縮によってレーザ媒質に生じる応力を緩和する応力緩和部として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレーザ媒質ユニットでは、Cリング等が応力緩和部としては機能し、応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下が抑制されると想定される。しかし、特許文献1に記載のレーザ媒質ユニットでは、Cリング等とレーザ媒質との接触が不十分であるため、Cリング等が熱伝導部としては十分に機能せず、熱複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下が十分に抑制されないことに加え、レーザ媒質の温度制御が難しくなることが想定される。
【0005】
そこで、本発明は、応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下及び熱複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下の両方を十分に抑制すると共に、レーザ媒質の温度制御を容易にすることができるレーザ媒質ユニット及びレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ媒質ユニットは、一対の端面を有するレーザ媒質と、一対の端面に交差する方向から見た場合にレーザ媒質を包囲し、レーザ媒質を保持する保持体と、を備え、保持体は、一対の端面に交差する方向から見た場合に保持体の内側から外側に延在する変形許容部を含み、レーザ媒質と保持体とは、互いに接触しており、保持体におけるレーザ媒質との接触領域は、一対の端面に交差する方向において幅を有し、一対の端面に交差する方向から見た場合にレーザ媒質の外縁に沿って延在している。
【0007】
このレーザ媒質ユニットでは、レーザ媒質を保持する保持体が、保持体の内側から外側に延在する変形許容部を含んでいる。これにより、レーザ媒質ユニットが冷却されて保持体が収縮したとしても、保持体の収縮によってレーザ媒質に生じる応力を緩和することができ、応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下を抑制することができる。また、保持体におけるレーザ媒質との接触領域が、レーザ媒質の一対の端面に交差する方向において幅を有しており、当該方向から見た場合にレーザ媒質の外縁に沿って延在している。これにより、レーザ媒質で発生した熱を保持体に効率良く逃がすことができ、熱複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下を抑制すると共に、レーザ媒質の温度制御を容易にすることができる。以上により、このレーザ媒質ユニットによれば、応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下及び熱複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下の両方を十分に抑制すると共に、レーザ媒質の温度制御を容易にすることができる。
【0008】
本発明のレーザ媒質ユニットでは、レーザ媒質は、一対の端面のそれぞれを主面とする板状を呈していてもよい。レーザ媒質が板状を呈している場合には、例えばレーザ媒質がロッド状を呈している場合に比べ、保持体におけるレーザ媒質との接触領域の確保が難しくなるおそれがある。そのため、レーザ媒質が板状を呈している場合には、上述した保持体の構成が特に有効である。
【0009】
本発明のレーザ媒質ユニットでは、保持体は、変形許容部を含む本体部と、レーザ媒質と本体部との間に設けられた応力緩和部と、を有してもよい。これにより、保持体の収縮によってレーザ媒質に生じる応力をより確実に緩和することができ、応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下をより確実に抑制することができる。
【0010】
本発明のレーザ媒質ユニットでは、レーザ媒質は、光増幅領域と、一対の端面に交差する方向から見た場合に光増幅領域を包囲する光吸収領域と、を有してもよい。これにより、光増幅領域で発生した放出光の一部が光吸収領域によって吸収されるため、寄生発振の発生が抑制される。また、光吸収領域では、放出光の一部の吸収によって熱が発生するため、上述した保持体の構成が特に有効である。
【0011】
本発明のレーザ媒質ユニットでは、変形許容部は、一対の端面に交差する方向から見た場合に保持体の内側から外側に延在するスリットを含んでもよい。これにより、保持体の収縮によってレーザ媒質に生じる応力を緩和すること、及びレーザ媒質で発生した熱を保持体に効率良く逃がすことの両方を実現し得る保持体を容易且つ確実に得ることができる。
【0012】
本発明のレーザ媒質ユニットでは、スリットは、複数のスリットのそれぞれであり、複数のスリットは、一対の端面に交差する方向から見た場合に等角度間隔で配置されていてもよい。これにより、保持体の収縮によってレーザ媒質に生じる応力を均一に緩和することができると共に、レーザ媒質で発生した熱を保持体に均一に逃がすことができる。
【0013】
本発明のレーザ媒質ユニットは、第1弾性部材を更に備え、スリットは、複数のスリットのそれぞれであり、第1弾性部材は、複数のスリットのそれぞれに配置されていてもよい。これにより、保持体が複数のスリットによって分割されたとしても、保持体をレーザ媒質に適切に接触させることができる。
【0014】
本発明のレーザ媒質ユニットは、取付部材を更に備え、スリットは、複数のスリットのそれぞれであり、取付部材は、一対の端面に交差する方向から見た場合に保持体を包囲していてもよい。これにより、保持体が複数のスリットによって分割されたとしても、保持体をレーザ媒質に適切に接触させることができる。
【0015】
本発明のレーザ媒質ユニットは、保持体と取付部材との間に配置された第2弾性部材を更に備えてもよい。これにより、保持体が複数のスリットによって分割されたとしても、保持体をレーザ媒質に適切に接触させることができる。
【0016】
本発明のレーザ媒質ユニットでは、取付部材の熱膨張率は、保持体の熱膨張率よりも小さくてもよい。これにより、レーザ媒質ユニットが冷却された際に、取付部材の収縮量が保持体の収縮量よりも小さくなるが、保持体と取付部材との間に第2弾性部材が配置されているため、取付部材の収縮の影響がレーザ媒質に及ぶのを抑制することができる。
【0017】
本発明のレーザ媒質ユニットでは、取付部材の熱膨張率は、保持体の熱膨張率よりも大きくてもよい。これにより、レーザ媒質ユニットが冷却された際に、取付部材の収縮量が保持体の収縮量よりも大きくなるが、保持体と取付部材との間に第2弾性部材が配置されているため、取付部材の収縮の影響がレーザ媒質に及ぶのを抑制することができる。
【0018】
本発明のレーザ装置は、上記のレーザ媒質ユニットを備える。
【0019】
本発明のレーザ装置によれば、上述したように、応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下及び熱複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下の両方を十分に抑制すると共に、レーザ媒質の温度制御を容易にすることができる。
【0020】
本発明のレーザ装置は、レーザ媒質ユニットを収容し、冷媒が流れるチャンバを更に備えてもよい。これにより、レーザ媒質ユニットを効率良く冷却することができる。
【0021】
本発明のレーザ装置では、レーザ媒質ユニットは、複数のレーザ媒質ユニットのそれぞれであり、複数のレーザ媒質ユニットのそれぞれは、冷媒が流れる隙間を介して配置されていてもよい。これにより、複数のレーザ媒質ユニットを効率良く冷却することができる。
【0022】
本発明のレーザ装置は、レーザ媒質ユニットによって増幅されるレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ媒質を励起する励起光を出射する励起光源と、を更に備えてもよい。これにより、良好な特性でレーザ光を増幅させることができる。
【0023】
本発明のレーザ装置では、励起光源は、第1励起光源及び第2励起光源のそれぞれであり、第1励起光源は、レーザ媒質ユニットに対して、一対の端面に交差する方向における一方の側に配置されており、第2励起光源は、レーザ媒質ユニットに対して、一対の端面に交差する方向における他方の側に配置されていてもよい。これにより、より良好な特性でレーザ光を増幅させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、応力複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下及び熱複屈折に起因するレーザ媒質の特性の低下の両方を十分に抑制すると共に、レーザ媒質の温度制御を容易にすることができるレーザ媒質ユニット及びレーザ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】
図1に示されるレーザ媒質ユニットの正面図である。
【
図3】
図2に示されるレーザ媒質ユニットの分解斜視図である。
【
図4】第2実施形態のレーザ媒質ユニットの正面図である。
【
図5】
図4に示されるレーザ媒質ユニットの分解斜視図である。
【
図6】第3実施形態のレーザ媒質ユニットの正面図である。
【
図7】変形例のレーザ媒質ユニットの正面図である。
【
図8】変形例のレーザ媒質ユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
[第1実施形態]
図1に示されるように、第1実施形態のレーザ装置1は、複数のレーザ媒質ユニット10Aと、チャンバ2と、レーザ光源3と、複数の励起光源4と、を備えている。各レーザ媒質ユニット10Aは、Z軸方向に沿って隙間を介して配置されている。
【0028】
チャンバ2は、本体部21と、一対の窓部22と、導入部25と、導出部26と、を有している。本体部21は、複数のレーザ媒質ユニット10Aを収容する内部空間Sを有している。本体部21には、一対の開口21a及び一対の開口21bが形成されている。一対の開口21aは、Z軸方向において互いに対向している。一対の開口21bは、Y軸方向において互いに対向している。
【0029】
各窓部22は、各開口21aを塞ぐように本体部21に取り付けられている。窓部22は、枠体23と、枠体23によって保持された窓部材24と、を含んでいる。窓部材24は、後述するレーザ光L1及び励起光L2を透過させる。
【0030】
導入部25は、導入通路25aを有している。導入部25は、導入通路25aが開口21bを介して内部空間Sと連通するように、本体部21に取り付けられている。導入部25は、冷媒C(例えば、低温ヘリウムガス等の冷却ガス)を内部空間Sに導入する。冷媒Cは、内部空間Sにおいて、隣り合うレーザ媒質ユニット10Aの間に形成された隙間を流れる。導出部26は、導出通路26aを有している。導出部26は、導出通路26aが開口21bを介して内部空間Sと連通するように、本体部21に取り付けられている。導出部26は、冷媒Cを内部空間Sから導出する。
【0031】
レーザ光源3は、チャンバ2(複数のレーザ媒質ユニット10A)に対して、Z軸方向における一方の側に配置されている。レーザ光源3は、複数のレーザ媒質ユニット10Aに対して種光であるレーザ光L1を出射する。レーザ光源3から出射されたレーザ光L1は、複数のレーザ媒質ユニット10Aに対してZ軸方向における一方の側に配置された窓部22の窓部材24を介して複数のレーザ媒質ユニット10Aに入射する。レーザ光L1は、各レーザ媒質ユニット10Aによって増幅される。
【0032】
複数の励起光源4は、一対の第1励起光源41と、一対の第2励起光源42と、を含んでいる。一対の第1励起光源41は、チャンバ2(複数のレーザ媒質ユニット10A)に対して、Z軸方向における一方の側に配置されている。各第1励起光源41は、複数のレーザ媒質ユニット10Aに対して励起光L2を出射する。各第1励起光源41から出射された励起光L2は、複数のレーザ媒質ユニット10Aに対してZ軸方向における一方の側に配置された窓部22の窓部材24を介して複数のレーザ媒質ユニット10Aに入射する。一対の第2励起光源42は、チャンバ2(複数のレーザ媒質ユニット10A)に対して、Z軸方向における他方の側に配置されている。各第2励起光源42は、複数のレーザ媒質ユニット10Aに対して励起光L2を出射する。各第2励起光源42から出射された励起光L2は、複数のレーザ媒質ユニット10Aに対してZ軸方向における他方の側に配置された窓部22の窓部材24を介して複数のレーザ媒質ユニット10Aに入射する。励起光L2は、後述するレーザ媒質11を励起する。
【0033】
図2及び
図3に示されるように、レーザ媒質ユニット10Aは、レーザ媒質11と、保持体12と、第1弾性部材15と、を備えている。レーザ媒質11は、一対の端面11a,11b、及び側面11cを有している。レーザ媒質11は、一対の端面11a,11bを主面とする板状を呈している。レーザ媒質11は、例えば円板状を呈している。レーザ媒質11の側面11cは、Z軸方向(レーザ媒質11の一対の端面11a,11bに交差する方向)において所定の幅を有している。レーザ媒質11の厚さ(すなわち、Z軸方向における側面11cの幅)は、例えば数mm~数十mm程度である。
【0034】
レーザ媒質11は、固体レーザ媒質である。レーザ媒質11は、例えば、活性元素としてYbがドープされたYAGである。レーザ媒質11は、励起光L2によって励起されて放出光を出力する。放出光は、例えば誘導放出光である。誘導放出光は、レーザ光L1の光増幅に寄与する。
【0035】
保持体12は、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11を包囲しており、レーザ媒質11を保持している。保持体12は、本体部13と、複数の係止部(爪部)14と、を有している。本体部13は、例えば板状を呈している。本体部13は、内側面13a及び外側面13bを有している。第1実施形態では、本体部13の内側面13aが保持体12の内側面12aを構成しており、本体部13の外側面13bが保持体12の外側面12bを構成している。
【0036】
内側面13aは、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11の側面11cに沿って延在している。第1実施形態では、内側面13aは、Z軸方向から見た場合に円形状を呈している。外側面13bは、Z軸方向から見た場合に例えば矩形状を呈している。本体部13の内側面13a及び外側面13bのそれぞれは、Z軸方向(本体部13の厚さ方向)において所定の幅を有している。本体部13の厚さ(すなわち、Z軸方向における内側面13a及び外側面13bのそれぞれの幅)は、例えば数mm~数十mm程度である。本体部13の厚さは、レーザ媒質11の厚さと略同じである。本体部13の熱膨張率は、レーザ媒質11の熱膨張率よりも大きい。本体部13の材料は、例えば銅等である。
【0037】
本体部13の一方の主面には、一対の係止部14が設けられている。同様に、本体部13の他方の主面には、一対の係止部14が設けられている。本体部13の一方の主面及び他方の主面のそれぞれにおいて、一対の係止部14は、Z軸方向から見た場合に本体部13の内側の領域を介して互いに対向している。本体部13の一方の主面及び他方の主面のそれぞれにおいて、各係止部14は、Z軸方向から見た場合に内側面13aよりも本体部13の内側に突出している。
【0038】
本体部13は、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11を包囲している。つまり、レーザ媒質11は、本体部13の内側に配置されている。Z軸方向から見た場合に、レーザ媒質11の直径は、本体部13の内側面13aの直径と略同じである。Z軸方向に垂直な方向へのレーザ媒質11の移動は、本体部13によって規制されている。レーザ媒質11は、Z軸方向において複数の係止部14によって挟まれている。Z軸方向におけるレーザ媒質11の移動は、複数の係止部14によって規制されている。このように、レーザ媒質11は、本体部13の内側において、本体部13及び複数の係止部14によって、保持されている。
【0039】
レーザ媒質11と保持体12とは、互いに接触している。レーザ媒質11と保持体12とは、他の部材(例えば伝熱性の悪い部材等)等を介さずに直接的に接触している。具体的には、レーザ媒質11の側面11cと本体部13の内側面13aとは、互いに接触している。保持体12におけるレーザ媒質11との接触領域Rは、Z軸方向において所定の幅を有している。Z軸方向における接触領域Rの幅は、好ましくはレーザ媒質11の厚さの50%以上であり、より好ましくはレーザ媒質11の厚さの70%以上であり、更に好ましくはレーザ媒質11の厚さの90%以上である。第1実施形態では、本体部13の内側面13aが接触領域Rに相当する。つまり、Z軸方向における接触領域Rの幅は、レーザ媒質11の厚さと略同じである。
【0040】
接触領域Rは、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11の側面11cに沿って延在している。つまり、接触領域Rは、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11の外縁に沿って延在している。接触領域Rは、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11の外縁から離れていない。レーザ媒質11の側面11c及び接触領域Rは、一続きの面である。側面11c及び接触領域Rには、例えば穴等の凹部が形成されていない。側面11cと接触領域Rとの間には、空間が存在しない。レーザ媒質11と保持体12とは、接触領域Rにおいて連続的に且つ隙間なく接触している。レーザ媒質11と保持体12とは、接触領域Rにおいて互いに密着している。
【0041】
本体部13は、本体部13の変形を許容する複数の変形許容部131を含んでいる。各変形許容部131は、Z軸方向から見た場合に保持体12の内側から外側に延在している。各変形許容部131は、スリット13cである。各スリット13cは、Z軸方向から見た場合に保持体12の内側から外側に延在している。各スリット13cは、本体部13の内側面13a及び外側面13bに至っている。これにより、本体部13は、複数の本体部材132に分割されている。複数のスリット13cは、Z軸方向から見た場合に等角度間隔で配置されている。一例として、各スリット13cは、Z軸方向から見た場合に本体部13の外側面13bの各辺部における略中央の位置から内側面13aに向かって延在している。
【0042】
Z軸方向から見た場合に、各スリット13cの幅は、本体部13の内側面13a(レーザ媒質11の側面11c)の長さに対して十分に小さい。Z軸方向から見た場合に、各スリット13c幅は、本体部13の内側面13a(レーザ媒質11の側面11c)の長さの5%以下である。Z軸方向から見た場合におけるスリット13cの幅は、スリット13cの延在方向におけるスリット13cの長さよりも小さい。Z軸方向から見た場合におけるスリット13cの幅は、Z軸方向における接触領域Rの幅よりも小さい。Z軸方向から見た場合におけるスリット13cの幅は、例えば数百μm~数mm程度である。
【0043】
第1弾性部材15は、各スリット13cに配置されている。第1弾性部材15は、例えば、重なり合った複数のワイヤ状の弾性体によって構成されている。第1弾性部材15の材料は、例えば銅等である。第1弾性部材15は、例えば銅メッシュである。第1弾性部材15は、例えば溶接又はろう付けによって、スリット13cを構成する各本体部材132の側面に固定されている。複数の本体部材132は、第1弾性部材15によって一体的に保持されている。本体部13の内側面13aは、第1弾性部材15の弾性力によって、レーザ媒質11の側面11cに接触している。具体的には、本体部13の内側面13aがレーザ媒質11の側面11cに接触している状態においては、第1弾性部材15は、引っ張られている。複数の本体部材132は、第1弾性部材15の弾性力によって、互いに近寄せられている。
【0044】
以上説明したように、レーザ媒質ユニット10Aでは、レーザ媒質11を保持する保持体12が、保持体12の内側から外側に延在する変形許容部131を含んでいる。これにより、レーザ媒質ユニット10Aが冷却されて保持体12が収縮したとしても、保持体12の収縮によってレーザ媒質11に生じる応力を緩和することができ、応力複屈折に起因するレーザ媒質11の特性の低下を抑制することができる。また、保持体12におけるレーザ媒質11との接触領域Rが、Z軸方向において幅を有しており、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11の側面11cに沿って延在している。すなわち、保持体12の接触領域Rとレーザ媒質11の側面11cとの間には、空間が存在しない。保持体12とレーザ媒質11とは、接触領域Rにおいて互いに密着している。更に、Z軸方向から見た場合に、各スリット13cの幅が、本体部13の内側面13aの長さに対して十分に小さい。これにより、レーザ媒質11で発生した熱を保持体12に効率良く逃がすことができ、熱複屈折に起因するレーザ媒質11の特性の低下を抑制すると共に、レーザ媒質11の温度制御を容易にすることができる。レーザ媒質11は、熱が溜まりやすい性質を持つ場合があるため、レーザ媒質11を効率良く冷却するのが特に重要である。上記の構成によれば、レーザ媒質11の熱を効率良く逃がすことができ、レーザ媒質11の特性の低下又はレーザ媒質11の特性の不安定化を抑制することができる。以上により、レーザ媒質ユニット10Aによれば、応力複屈折に起因するレーザ媒質11の特性の低下及び熱複屈折に起因するレーザ媒質11の特性の低下の両方を十分に抑制すると共に、レーザ媒質11の温度制御を容易にすることができる。
【0045】
レーザ媒質ユニット10Aでは、レーザ媒質11が、一対の端面11a,11bのそれぞれを主面とする板状を呈している。レーザ媒質11が板状を呈している場合には、例えばレーザ媒質がロッド状を呈している場合に比べ、保持体12におけるレーザ媒質11との接触領域Rの確保が難しくなるおそれがある。そのため、レーザ媒質11が板状を呈している場合には、上述した保持体12の構成が特に有効である。また、保持体12におけるレーザ媒質11との接触領域Rに加え、レーザ媒質11の一対の端面11a,11bからもレーザ媒質11で発生した熱を効率よく放出させることができる。
【0046】
レーザ媒質ユニット10Aでは、変形許容部131が、Z軸方向から見た場合に保持体12の内側から外側に延在するスリット13cを含んでいる。これにより、保持体12の収縮によってレーザ媒質11に生じる応力を緩和すること、及びレーザ媒質11で発生した熱を保持体に効率良く逃がすことの両方を実現し得る保持体を容易且つ確実に得ることができる。
【0047】
レーザ媒質ユニット10Aでは、複数のスリット13cが、Z軸方向から見た場合に等角度間隔で配置されている。これにより、保持体12の収縮によってレーザ媒質11に生じる応力を均一に緩和することができると共に、レーザ媒質11で発生した熱を保持体12に均一に逃がすことができる。
【0048】
レーザ媒質ユニット10Aは、第1弾性部材15を備えている。第1弾性部材15は、複数のスリット13cのそれぞれに配置されている。これにより、保持体12が複数のスリット13cによって分割されたとしても、保持体12をレーザ媒質11に適切に接触させることができる。
【0049】
レーザ装置1によれば、上述したように、応力複屈折に起因するレーザ媒質11の特性の低下及び熱複屈折に起因するレーザ媒質11の特性の低下の両方を十分に抑制すると共に、レーザ媒質11の温度制御を容易にすることができる。
【0050】
レーザ装置1は、レーザ媒質ユニット10Aが収容され、冷媒Cが流れるチャンバ2を備えている。これにより、レーザ媒質ユニット10Aを効率良く冷却することができる。
【0051】
レーザ装置1では、複数のレーザ媒質ユニット10Aのそれぞれが、冷媒Cが流れる隙間を介して配置されている。これにより、複数のレーザ媒質ユニット10Aを効率良く冷却することができる。
【0052】
レーザ装置1は、レーザ媒質ユニット10Aによって増幅されるレーザ光L1を出射するレーザ光源3と、レーザ媒質11を励起する励起光L2を出射する励起光源4と、を備えている。これにより、良好な特性でレーザ光L1を増幅させることができる。
【0053】
レーザ装置1では、第1励起光源41が、レーザ媒質ユニット10Aに対して、Z軸方向における一方の側に配置されており、第2励起光源42が、レーザ媒質ユニット10Aに対して、Z軸方向における他方の側に配置されている。これにより、より良好な特性でレーザ光L1を増幅させることができる。
【0054】
[第2実施形態]
図4及び
図5に示されるように、第2実施形態のレーザ媒質ユニット10Bは、保持体12に代えて保持体12Bを備えている点、取付部材16を更に備えている点、及び、第1弾性部材15を備えていない点で、第1実施形態のレーザ媒質ユニット10Aと主に相違している。
【0055】
レーザ媒質ユニット10Bは、保持体12Bを備えている。保持体12Bは、一対の本体部13A,13Bを有している。本体部13Aは、第1実施形態の本体部13のZ軸方向における一方側の一部に相当し、本体部13Bは、第1実施形態の本体部13のZ軸方向における他方側の一部に相当する。
【0056】
具体的には、各本体部13A,13Bは、内側面13a及び外側面13bを有している。各本体部13A,13Bの厚さは、第1実施形態の本体部13の厚さの半分程度である。本体部13Aの一方の主面には、一対の係止部14が設けられている。本体部13Bの他方の主面には、一対の係止部14が設けられている。レーザ媒質11は、Z軸方向において本体部13Aと本体部13Bとによって挟まれている。各本体部13A,13Bは、複数の変形許容部131を含んでいる。各変形許容部131は、スリット13cである。レーザ媒質11が本体部13Aと本体部13Bとによって挟まれている状態においては、本体部13A,13Bは、第1実施形態の本体部13と同じ構成を有している。第2実施形態では、各スリット13cに第1弾性部材15が配置されていない。
【0057】
レーザ媒質ユニット10Bは、取付部材16を備えている。取付部材16は、Z軸方向から見た場合に保持体12Bを包囲している。具体的には、取付部材16は、第1取付部材161と、第2取付部材162と、を有している。第1取付部材161は、例えば矩形枠状を呈している。第1取付部材161には、内縁16aと外縁16bとの間において第1段差部16c及び第2段差部16dが形成されている。第1段差部16cは、Z軸方向から見た場合に例えば矩形状を呈している。第2段差部16dは、Z軸方向から見た場合に第1段差部16cの外側に位置している。第2段差部16dは、Z軸方向から見た場合にY軸方向に沿って延在し、且つ第1取付部材161の外縁16bに至っている。
【0058】
第2取付部材162は、例えば矩形枠状を呈している。第2取付部材162の内縁16eは、Z軸方向から見た場合に第1取付部材161の内縁16aと略一致している。第2取付部材162の外縁16fは、Z軸方向から見た場合に第1取付部材161の第2段差部16dと略一致している。第2取付部材162は、第1取付部材161の第2段差部16dに配置されている。
【0059】
一対の本体部13A,13Bの外側面13bは、Z軸方向から見た場合に第1取付部材161の内縁16a及び第2取付部材162の内縁16eよりも外側に位置しており、第1段差部16cと略一致している。レーザ媒質11及び保持体12Bは、第1段差部16cに配置された状態で、第1取付部材161及び第2取付部材162によって挟まれている。このように、保持体12Bは、取付部材16によって一括で保持されている。
【0060】
以上説明したように、レーザ媒質ユニット10Bは、取付部材16を備えている。取付部材16は、Z軸方向から見た場合に保持体12Bを包囲している。これにより、保持体12が複数のスリット13cによって分割されたとしても、保持体12をレーザ媒質11に適切に接触させることができる。
【0061】
[第3実施形態]
図6に示されるように、第3実施形態のレーザ媒質ユニット10Cは、レーザ媒質11に代えてレーザ媒質11Cを備えている点、保持体12に代えて保持体12Cを備えている点、第1弾性部材15を備えていない点、取付部材18を更に備えている点、及び、第2弾性部材19を更に備えている点で、第1実施形態のレーザ媒質ユニット10Aと主に相違している。
【0062】
レーザ媒質ユニット10Cは、レーザ媒質11Cを備えている。レーザ媒質11Cは、光増幅領域111と、光吸収領域112と、を有している。光増幅領域111は、例えば、活性元素としてYbがドープされたYAGである。光増幅領域111は、例えば円板状を呈している。光吸収領域112は、Z軸方向から見た場合に光増幅領域111を包囲している。光吸収領域112は、光増幅領域111と一体的に形成されている。光吸収領域112は、光増幅領域111で発生した放出光の一部を吸収することで、寄生発振の発生を抑制している。光吸収領域112の外側面は、レーザ媒質11Cの側面11cを構成している。光吸収領域112の材料は、例えばCr:YAGセラミクス、Sm:YAG、黒色インク又は黒色樹脂等である。
【0063】
レーザ媒質ユニット10Cは、保持体12Cを備えている。保持体12Cは、本体部13と、応力緩和部17と、を有している。応力緩和部17は、本体部13の内側面13aに設けられている。つまり、応力緩和部17は、レーザ媒質11Cと本体部13との間に設けられている。応力緩和部17は、リング状を呈している。応力緩和部17は、Z軸方向において所定の幅を有している。Z軸方向における応力緩和部17の幅は、例えば数mm~数十mm程度である。Z軸方向における応力緩和部17の幅は、レーザ媒質11Cの厚さと略同じである。応力緩和部17は、Z軸方向から見た場合にレーザ媒質11Cの側面11cに沿って延在している。応力緩和部17は、Z軸方向から見た場合に連続的に繋がっている。応力緩和部17には、例えば局所的に切欠き等が形成されていてもよい。当該切欠きは、例えば、本体部13のスリット13cに対応する位置に形成され、スリット13cと略同じ幅を有していてもよい。
【0064】
レーザ媒質11Cと保持体12Cとは、互いに接触している。具体的には、レーザ媒質11Cの側面11cと応力緩和部17の内側面17aとは、互いに接触している。第3実施形態では、応力緩和部17の内側面17aが保持体12の内側面12aを構成している。第3実施形態では、応力緩和部17の内側面17aが接触領域Rに相当する。応力緩和部17の弾性係数は、本体部13の弾性係数よりも小さい。応力緩和部17の熱伝導率は、レーザ媒質11Cの熱伝導率よりも大きい。応力緩和部17の熱伝導率と本体部13の熱伝導率との差の絶対値は、応力緩和部17の熱伝導率とレーザ媒質11Cの熱伝導率との差の絶対値よりも小さい。つまり、応力緩和部17の熱伝導率は、レーザ媒質11Cよりも本体部13に近い。応力緩和部17の材料は、例えばインジウム等である。
【0065】
レーザ媒質ユニット10Cは、取付部材18を備えている。取付部材18は、Z軸方向から見た場合に保持体12Cを包囲している。取付部材18は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形枠状を呈している。取付部材18の内側面18aは、Z軸方向から見た場合に本体部13の外側面13bよりも外側に位置している。取付部材18の熱膨張率は、本体部13の熱膨張率よりも小さい。取付部材18の材料は、例えばステンレス等である。
【0066】
レーザ媒質ユニット10Cは、第2弾性部材19を備えている。第2弾性部材19は、本体部13と取付部材18との間に配置されている。第2弾性部材19は、Z軸方向から見た場合に本体部13の外側面13bに沿って延在している。第2弾性部材19は、第1弾性部材15と同様に、例えば、重なり合った複数のワイヤ状の弾性体によって構成されている。第2弾性部材19の材料は、例えば銅等である。第2弾性部材19は、例えば銅メッシュである。第2弾性部材19は、例えば溶接又はろう付けによって、本体部13の外側面13b及び取付部材18の内側面18aに固定されている。
【0067】
本体部13の複数の本体部材132は、取付部材18及び第2弾性部材19によって一括で保持されている。応力緩和部17の内側面17aは、第2弾性部材19の弾性力によって、レーザ媒質11Cの側面11cに接触している。具体的には、第2弾性部材19は、圧縮されている。複数の本体部材132は、第2弾性部材19の弾性力によって、レーザ媒質11Cに押し付けられている。応力緩和部17の内側面17aは、複数の本体部材132に押圧されることによって、レーザ媒質11Cの側面11cに接触している。なお、
図6においては、係止部14の図示が省略されている。
【0068】
以上説明したように、レーザ媒質ユニット10Cでは、保持体12Cが、変形許容部131を含む本体部13と、レーザ媒質11Cと本体部13との間に設けられた応力緩和部17と、を有している。これにより、保持体12Cの収縮によってレーザ媒質11Cに生じる応力をより確実に緩和することができ、応力複屈折に起因するレーザ媒質11Cの特性の低下をより確実に抑制することができる。また、応力緩和部17の弾性係数は、本体部13の弾性係数よりも小さいため、レーザ媒質11Cと保持体12Cとの密着性を向上させることができる。これにより、レーザ媒質11Cで発生した熱を保持体12Cに更に効率良く逃がすことができる。
【0069】
レーザ媒質ユニット10Cでは、レーザ媒質11Cが、光増幅領域111と、Z軸方向から見た場合に光増幅領域111を包囲する光吸収領域112と、を有している。これにより、光増幅領域111で発生した放出光の一部が光吸収領域112によって吸収されるため、寄生発振の発生が抑制される。また、光吸収領域112では、放出光の一部の吸収によって熱が発生するため、上述した保持体12Cの構成が特に有効である。また、レーザ媒質11Cが板状を呈している場合には、レーザ媒質11Cの主面である端面からの冷却(端面冷却)が主流(一般的)であり、レーザ媒質11Cの側面11cからの冷却(側面冷却)については、注目されない傾向にある。更に、レーザ媒質11Cが、寄生発振を抑制する光吸収領域112を有している場合には、特にレーザ媒質11Cの側面11cでの発熱が多くなる。そのため、上述した保持体12Cの構成によれば、例えば冷却ガス等の冷媒による端面冷却、及び保持体12Cによる側面冷却が可能となり、レーザ媒質11Cで発生した熱を効率良く逃がすことができ、レーザ媒質11Cのレーザ特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0070】
レーザ媒質ユニット10Cは、保持体12Cと取付部材18との間に配置された第2弾性部材19を備えている。これにより、保持体12Cが複数のスリット13cによって分割されたとしても、保持体12Cをレーザ媒質11Cに適切に接触させることができる。
【0071】
レーザ媒質ユニット10Cでは、取付部材18の熱膨張率が、本体部13の熱膨張率よりも小さい。これにより、レーザ媒質ユニット10Cが冷却された際に、取付部材18の収縮量が保持体12Cの収縮量よりも小さくなる。しかし、保持体12Cと取付部材18との間に配置されている第2弾性部材19によって、取付部材18の収縮量と保持体12Cの収縮量との差を調整でき、取付部材18の収縮の影響がレーザ媒質11Cに及ぶのを抑制することができる。
【0072】
[変形例]
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0073】
第3実施形態において、本体部13の外側面13bが、Z軸方向から見た場合に矩形状を呈している例を示したが、
図7に示されるように、本体部13Dは、Z軸方向から見た場合に例えば円環状を呈していてもよい。この場合、取付部材18Dの内側面18aは、Z軸方向から見た場合に円形状を呈している。また、保持体12Dと取付部材18Dとの間には、第2弾性部材19が配置されていなくてもよい。この場合、取付部材18Dの熱膨張率は、本体部13Dの熱膨張率よりも大きい。これにより、取付部材18Dが冷却された場合、取付部材18Dの収縮によって、保持体12Dを保持することができ、保持体12Dをレーザ媒質11Cに適切に接触させることができる。また、
図8に示されるように、本体部13Eは、1つのスリット13c(変形許容部131)を含んでいてもよい。
【0074】
第1実施形態において、第1弾性部材15が重なり合った複数のワイヤ状の弾性体によって構成されている例を示したが、
図9に示されるように、第1弾性部材15は、例えばスプリング等であってもよい。第3実施形態においても、第2弾性部材19は、例えばスプリング等であってもよい。第1弾性部材15及び第2弾性部材19のそれぞれは、例えば、弾性接着剤等の弾性樹脂によって構成されていてもよい。
【0075】
各実施形態において、レーザ媒質11,11Cが板状を呈している例を示したが、レーザ媒質11,11Cは、例えばロッド状を呈していてもよい。また、レーザ媒質11,11Cが円板状を呈している例を示したが、レーザ媒質11,11Cは、例えば矩形板状を呈していてもよい。
【0076】
各実施形態において、スリット13cが本体部13,13A,13Bの内側面13a及び外側面13bに至っている例を示したが、スリット13cは、本体部13,13A,13Bの内側面13a及び外側面13bに至っていなくてもよい。スリット13cは、本体部13,13A,13Bの内側面13a及び外側面13bのいずれか一方に至っていてもよく、内側面13a及び外側面13bのいずれにも至っていなくてもよい。つまり、スリット13cは、本体部13,13A,13Bの内側面13a及び外側面13bの少なくとも一方に至っていてもよい。
【0077】
各実施形態において、各変形許容部131がスリット13cである例を示したが、変形許容部131は、スリット13cではなくてもよい。変形許容部131は、例えば、保持体12,12B,12Cのうちの第1領域であって、弾性係数が、保持体12,12B,12Cのうちの第2領域よりも小さい領域であってもよい。また、変形許容部131は、例えば、保持体12,12B,12Cのうちの第1領域であって、Z軸方向における厚さが、保持体12,12B,12Cのうちの第2領域よりも小さい領域であってもよい。つまり、変形許容部131は、Z軸方向において保持体12,12B,12Cを貫通していなくてもよい。変形許容部131は、保持体12,12B,12Cの変形を許容するものであればよい。
【0078】
第1実施形態のレーザ媒質ユニット10A及び第2実施形態のレーザ媒質ユニット10Bのそれぞれも、第3実施形態のレーザ媒質ユニット10Cと同様に、応力緩和部17を有する保持体12Cを備えていてもよい。
【0079】
第1実施形態のレーザ媒質ユニット10A及び第2実施形態のレーザ媒質ユニット10Bのそれぞれも、第3実施形態のレーザ媒質ユニット10Cと同様に、光増幅領域111及び光吸収領域112を有するレーザ媒質11Cを備えていてもよい。
【0080】
第3実施形態において、光吸収領域112が光増幅領域111と一体的に形成されている例を示したが、光吸収領域112は、光増幅領域111と別体的に形成されていてもよい。光吸収領域112は、別部材として光増幅領域111の側面に設けられていてもよい。
【0081】
第3実施形態において、取付部材18の熱膨張率が、本体部13の熱膨張率よりも小さい例を示したが、取付部材18の熱膨張率は、本体部13の熱膨張率よりも大きくてもよい。この場合、レーザ媒質ユニット10Cが冷却された際に、取付部材18の収縮量が保持体12Cの収縮量よりも大きくなる。しかし、保持体12Cと取付部材18との間に配置されている第2弾性部材19によって、取付部材18の収縮量と保持体12Cの収縮量との差を調整でき、取付部材18の収縮の影響がレーザ媒質11Cに及ぶのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…レーザ装置、2…チャンバ、3…レーザ光源、4…励起光源、10A,10B,10C…レーザ媒質ユニット、11,11C…レーザ媒質、11a,11b…端面、11c…側面、12,12B,12C,12D…保持体、13,13A,13B,13D…本体部、13c…スリット、15…第1弾性部材、16,18,18D…取付部材、17…応力緩和部、19…第2弾性部材、41…第1励起光源、42…第2励起光源、111…光増幅領域、112…光吸収領域、131…変形許容部、C…冷媒。