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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135032
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】積層造形物
(51)【国際特許分類】
   B22F 5/10 20060101AFI20220908BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20220908BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20220908BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220908BHJP
【FI】
B22F5/10
B22F3/16
B22F3/105
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034597
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】畑中 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁
(72)【発明者】
【氏名】中拂 博之
(72)【発明者】
【氏名】谷本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
(72)【発明者】
【氏名】小田 拓央
(72)【発明者】
【氏名】上藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】江口 駿作
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA06
4K018AA33
4K018BA03
4K018BA17
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018HA01
4K018HA10
4K018KA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶融不良に起因する積層造形物の製造上の不具合を抑制し、品質を向上させた積層造形物を提供する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る積層造形物は、金属製の第1基部61と、第1基部よりも薄い厚さを有し、壁厚さ方向に並ぶように第1基部上に立設される複数の壁部23と、を備える。各々の壁部23の第1端部51は、壁厚さ方向において壁部23の厚さよりも大きな幅を有する第1接続部41を介して第1基部に接続される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1基部と、
前記第1基部よりも薄い厚さを有し、壁厚さ方向に並ぶように前記第1基部上に立設される複数の壁部と、
を備え、
各々の前記壁部の第1端部は、前記壁厚さ方向において前記壁部の前記厚さよりも大きな幅を有する第1接続部を介して前記第1基部に接続される
積層造形物。
【請求項2】
各々の前記壁部の前記第1端部とは反対側の第2端部が第2接続部を介して接続される第2基部を備え、
前記第2接続部は、前記壁厚さ方向において前記第1接続部よりも小さな幅を有する
請求項1に記載の積層造形物。
【請求項3】
前記第2接続部の前記壁厚さ方向における幅の最大値W2maxと、前記壁厚さ方向において隣り合う一対の前記壁部間の間隔gと、各々の前記壁部の前記厚さtとが、
W2max-t<0.5×g
を満たす
請求項2に記載の積層造形物。
【請求項4】
前記第2接続部を介して各々の前記壁部の前記第2端部が接続される前記第2基部の第2表面は、前記第1接続部を介して各々の前記壁部の前記第1端部が接続される前記第1基部の第1表面よりも大きな表面粗さを有する
請求項2又は3に記載の積層造形物。
【請求項5】
前記壁厚さ方向の直交方向における前記第1接続部から前記第2接続部までの距離dと、前記壁厚さ方向において隣り合う一対の前記壁部間の間隔gとが、
d>g
を満たす
請求項2乃至4の何れか一項に記載の積層造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属を積層造形して三次元形状物を得る積層造形法が種々の金属製品の製造方法として利用されている。例えば、パウダーベッド法による積層造形法では、層状に敷設された原料粉末としての金属粉末に光ビームや電子ビーム等のエネルギービームを照射することによって、溶融固化を繰り返し積層することにより三次元形状の積層造形物を形成する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えば、積層造形物として、熱交換器の熱交換コアをパウダーベッド法による積層造形法で形成することができる。熱交換器には様々なタイプのものが存在するが、例えば、筒状のケーシングの内側に、プレートの積層体から形成された熱交換コアを収容した構成のものが知られている。例えば、2つの流体間で熱交換を行うための熱交換コアでは、流体の流れる方向に沿って延在する複数の流路群を有する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6405028号公報
【特許文献2】特許第3406896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献に記載の熱交換コアでは、流路同士を隔てる壁部が薄い方が伝熱距離が短くなって熱交換効率が向上する。
このような熱交換コアをパウダーベッド法による積層造形法で形成する場合、上述したような比較的薄い壁部と、この比較的薄い壁部と接続される、体積が比較的大きい部位との交差部において溶融不良が生じるおそれがある。すなわち、例えば、体積が比較的大きい部位の造形後に、該部位に対して比較的薄い壁部を積層造形する場合、エネルギービームによるパウダーベッドへの入熱が該部位に逃げてしまうことで、金属粉末の溶融不良が生じるおそれがある。
このような溶融不良に起因する積層造形物の製造上の不具合を抑制することが望まれる。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、積層造形物の品質を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る積層造形物は、
金属製の第1基部と、
前記第1基部よりも薄い厚さを有し、壁厚さ方向に並ぶように前記第1基部上に立設される複数の壁部と、
を備え、
各々の前記壁部の第1端部は、前記壁厚さ方向において前記壁部の前記厚さよりも大きな幅を有する第1接続部を介して前記第1基部に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、積層造形物の品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の熱交換器における熱交換コアの模式的な斜視図である。
図2図1の破線L1に沿って切断した切断面を表す模式的な図の一例である。
図3図1の破線L1に沿って切断した切断面を表す模式的な図の他の例である。
図4図2の一部を拡大した図である。
図5A】フィレット部のバリエーションの例を示す図である。
図5B】フィレット部のバリエーションの例を示す図である。
図6】フィレット部のバリエーションの例を示す図である。
図7A】フィレット部のバリエーションの例を示す図である。
図7B】フィレット部のバリエーションの例を示す図である。
図7C】フィレット部のバリエーションの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
まず、幾つかの実施形態に係る積層造形物の一例としての熱交換器の概要について説明する。
図1は、一実施形態の熱交換器における熱交換コア1の模式的な斜視図である。図1に示す熱交換コア1は、第1流体と第2流体とが熱交換する熱交換器10に用いられる熱交換コア1であって、本体部2を備えている。ここで、第1流体及び第2流体はそれぞれ、液体でも気体でもよく、通常は両者の温度は異なっている。限定はしないが、本体部2は直方体形状とすることができる。
図1に示す熱交換コア1は、例えば熱交換器10の不図示の筐体に取り付けた状態で用いるようにしてもよい。また、図1に示す熱交換コア1は、架台に設置するか、熱交換コア1に接続される不図示の配管に支持させる等によって、筐体に取り付けずに用いてもよい。この場合、図1に示す熱交換コア1そのものが熱交換器10となる。
【0012】
図2は、図1の破線L1に沿って切断した切断面を表す模式的な図の一例である。
図3は、図1の破線L1に沿って切断した切断面を表す模式的な図の他の例である。
図4は、図2の一部を拡大した図である。
なお、図2及び図4に示した切断面に係る熱交換コア1と、図2に示した切断面に係る熱交換コア1とでは、例えば積層造形における積層方向が異なっている。
【0013】
図2から図4に示すように、一実施形態に係る本体部2には、熱交換器10(熱交換コア1)の内部で熱交換を行うための熱交換流路であって、主に第1流体が流通する第1流路21と、主に第2流体が流通する第2流路22とが形成されている。第1流路21及び第2流路22はそれぞれ、本体部2の長手方向(図2から図4では紙面に対して垂直な方向)に沿って延びるように形成されている。第1流路21及び第2流路22は、本体部2の長手方向に対して垂直な方向に交互に配列されている。隣り合う第1流路21と第2流路22とは、隔壁(壁部)23によって隔てられている。尚、第1流路21及び第2流路22それぞれの個数、すなわち壁部23の個数については、図2及び図3で示される個数に限定するものではなく、任意の個数に設計可能である。
【0014】
各第1流路21及び各第2流路22はそれぞれ、複数の第1区画壁24a及び第2区画壁24bによって複数の分割流路21a及び分割流路22aに区画されてもよい。この場合、分割流路21a及び22aそれぞれの個数、すなわち第1区画壁24a及び第2区画壁24bの個数については、図2及び図3で示される個数に限定するものではなく、任意の個数に設計可能である。
なお、以下の説明では、第1区画壁24aと第2区画壁24bとで、特に区別をする必要がない場合、第1区画壁24aと第2区画壁24bとの間に存在する壁部も含めて、単に区画壁24と称する。
【0015】
図1に示すように、一実施形態に係る熱交換コア1には、第1流体第1ヘッダ流路4と、第1流体第2ヘッダ流路5と、第2流体第1ヘッダ流路6と、第2流体第2ヘッダ流路7とが設けられている。
第1流体第1ヘッダ流路4は、各第1流路21の図1における図示上方の端部と連通している。第1流体第2ヘッダ流路5は、各第1流路21の図1における図示下方の端部と連通している。
第2流体第1ヘッダ流路6は、各第2流路22の図1における図示上方の端部と連通している。第2流体第2ヘッダ流路7は、各第2流路22の図1における図示下方の端部と連通している。
図1に示した例では、本体部2の長手方向の一方及び他方の端部側にヘッダ部8、9が設けられているものとする。
【0016】
図1に示す一実施形態に係る熱交換コア1では、第1流体第1ヘッダ流路4又は第1流体第2ヘッダ流路5の何れか一方に供給された流体は、各第1流路21を流通した後、第1流体第1ヘッダ流路4又は第1流体第2ヘッダ流路5の何れか他方から排出される。
同様に、図1に示す一実施形態に係る熱交換コア1では、第2流体第1ヘッダ流路6又は第2流体第2ヘッダ流路7の何れか一方に供給された流体は、各第2流路22を流通した後、第2流体第1ヘッダ流路6又は第2流体第2ヘッダ流路7の何れか他方から排出される。
図1に示す一実施形態に係る熱交換コア1では、第1流路21を流通する流体と第2流路22を流通する流体とは、壁部23を介して熱交換される。
【0017】
図1に示す一実施形態に係る熱交換コア1のうち本体部2は、その構成の複雑さから、プレートの積層や鋳造等では製造が難しい。このため、本体部2は、原材料としての金属粉末を積層造形することにより製造することが好ましい。この場合、本体部2は、金属粉末の積層造形体である。本体部2の積層造形に用いられる金属粉末は特に限定しないが、ステンレスやチタン等の粉末を用いることができる。
【0018】
例えば図2及び図4において、図示上下方向を積層造形における積層方向とし、図示下方から図示上方に向かって積層して、積層造形物として熱交換コア1を形成することとする。
この場合、本体部2の側壁部2aの一つである図示下方の側壁部2aを形成した後、形成後の該側壁部2aに対して、壁部23の各々が積層されて形成されることとなる。
図1に示す一実施形態に係る熱交換コア1をパウダーベッド法による積層造形法で形成する場合、図2及び図4における図示下方の側壁部2aを形成した後、該側壁部2aの上面に原料粉末を層状に敷設し、敷設された原料粉末における、壁部23に相当する領域にエネルギービームを照射して原料粉末を溶融固化させることとなる。
なお、原料粉末の粒度は、例えば平均粒径で5μm以上100μ以下、望ましくは、平均粒径で10μm以上45μ以下であるとよい。また、敷設する原料粉末の層の厚さは、一般的に、1層あたり0.03mm以上0.07mm以下である。エネルギービームのスポット径は一般的には、レーザービームの場合で0.08mm程度である。
【0019】
この場合、壁部23の厚さ、すなわち壁部23の図示左右方向の大きさに対して、側壁部2aの図示左右方向が大きく、これら2つの部位の左右方向の大きさの差が比較的大きいため、エネルギービームによるパウダーベッドへの入熱が側壁部2aに逃げてしまうことで、壁部23に相当する領域の金属粉末の溶融不良が生じるおそれがある。
同様の現象は、区画壁24の上に壁部23を形成する場合にも生じ得る。
このような溶融不良は、積層造形物としての熱交換コア1の品質を低下させることとなり、場合によっては、壁部23の形成不良による流体の漏洩などの不具合を招くおそれがある。
【0020】
そこで、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、各々の分割流路21a及び分割流路22aにおける各々の壁部23の図示下方の端部23aは、壁厚さ方向において壁部23の厚さよりも大きな幅を有する第1接続部41を介して側壁部2a又は区画壁24に接続されるようにした。すなわち、各々の壁部23の図示下方の端部23aを第1端部51とし、図2及び図4における図示下方の側壁部2a又は区画壁24を第1基部61としたときに、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、次の特徴を備えている。
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1は、金属製の第1基部61と、第1基部61よりも薄い厚さtを有し、壁厚さ方向に並ぶように第1基部61上に立設される複数の壁部23と、を備える。各々の壁部23の第1端部51は、壁厚さ方向において壁部23の厚さtよりも大きな幅W1を有する第1接続部41を介して第1基部61に接続される。
なお、図4では、理解を容易にするために、第1接続部41の存在範囲を破線の矩形で囲んで表している。
【0021】
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、第1接続部41は、図2及び図4における図示下方の側壁部2a又は区画壁24と各壁部23とを接続する部位であって、例えば図2及び図4に示すようなフィレット部411(図4参照)を有する。
図2及び図4に示すフィレット部411は、第1流路21及び第2流路22から見たときに、側壁部2a又は区画壁24の内側及び壁部23の内側に向かって凹んだ凹面411aを有している。
【0022】
これにより、壁厚さ方向における幅が壁部23よりも第1接続部41の方が大きい(t<W1)ので、例えば、図3に示すように第1接続部41を介さずに第1基部61と第1端部51とが接続される場合と比べて、原料粉末の溶融不良が生じ難くなる。すなわち、第1基部61に接続される部位(すなわち第1接続部41)へのトータルの入熱量が大きくなるので、該部位の形成時にエネルギービームによるパウダーベッドへの入熱が第1基部61に逃げても、原料粉末の溶融不良が生じ難くなる。
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1によれば、積層造形時の原料粉末の溶融不良を抑制できるので、積層造形物である熱交換コア1の品質を向上できる。
【0023】
なお、上述したような積層造形時の原料粉末の溶融不良は、例えば、壁厚さ方向における壁部23の厚さtが0.5mm以下であり、且つ、該壁厚さ方向における第1基部61の大きさが壁厚さ方向における壁部23の厚さtの10倍以上となる場合(仮に条件Aと称する)に特に問題となる。そこで、この条件Aを満たす場合に、上述したように、壁厚さ方向において壁部23の厚さtよりも大きな幅W1を有する第1接続部41を介して各々の壁部23の第1端部51を第1基部61に接続するとよい。
【0024】
図5Aから図7Cは、フィレット部411のバリエーションの例を示す図である。
例えば、図5Aに示すように、フィレット部411は、フィレット部411の高さ方向(図示上下方向)の寸法よりも幅方向(図示左右方向)の寸法の方が大きくてもよい。
また、例えば、図5Bに示すように、フィレット部411は、フィレット部411の高さ方向(図示上下方向)の寸法よりも幅方向(図示左右方向)の寸法の方が小さくてもよい。
例えば、図6に示すように、フィレット部411は、第1流路21及び第2流路22から見たときに、側壁部2a又は区画壁24の内側及び壁部23の内側に向かって突出した突面411bを有していてもよい。
【0025】
例えば、図7Aから7Cに示すように、フィレット部411は、表面が平坦な斜面であってもよい。
なお、図7Aに示すように、フィレット部411は、フィレット部411の高さ方向(図示上下方向)の寸法と、幅方向(図示左右方向)の寸法とが等しくてもよい。
また、図7Bに示すように、フィレット部411は、フィレット部411の高さ方向(図示上下方向)の寸法よりも幅方向(図示左右方向)の寸法の方が小さくてもよい。
また、図7Cに示すように、フィレット部411は、フィレット部411の高さ方向(図示上下方向)の寸法よりも幅方向(図示左右方向)の寸法の方が大きくてもよい。
【0026】
図5Aから図7Cに示したフィレット部411のバリエーションの例は、後述する第2接続部42のフィレット部421に適用してもよい。
【0027】
なお、例えば図3において、図紙面奥行き方向を積層造形における積層方向として、積層造形物として熱交換コア1を形成する場合、図3に示すように、上述したような第1接続部41や後述する第2接続部42を設けなくてもよい。
【0028】
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、各々の分割流路21a及び分割流路22aにおける各々の壁部23の図示上方の端部23b(図4参照)は、壁厚さ方向において第1接続部41よりも小さな幅を有する第2接続部42(図4参照)を介して区画壁24又は図示しない上方の側壁部2aに接続されるようにしてもよい。すなわち、各々の壁部23の図示上方の端部23bを第2端部52(図4参照)とし、図2及び図4における区画壁24又は不図示の上方の側壁部2aを第2基部62としたときに、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、次の特徴を備えている。
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、各々の壁部23の第1端部51とは反対側の第2端部52が第2接続部42を介して接続される第2基部62を備えていてもよい。第2接続部42は、壁厚さ方向において第1接続部41よりも小さな幅を有するとよい。すなわち、第2接続部42についての壁厚さ方向における幅W2は、第1接続部41についての壁厚さ方向における幅W1よりも小さいとよい。
なお、図4では、理解を容易にするために、第2接続部42の存在範囲を破線の矩形で囲んで表している。
【0029】
なお、例えば図4に示すように、ある一つの区画壁24について注目すると、該区画壁24は、該区画壁24よりも図示下方の壁部23との関係では、第2基部62に該当し、該区画壁24よりも図示上方の壁部23との関係では、第1基部61に該当する。
【0030】
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、第2接続部42は、図2及び図4における区画壁24又は上方の側壁部2aと各壁部23とを接続する部位であって、例えば図2及び図4に示すようなフィレット部421(図4参照)を有していてもよい。
図2及び図4に示すフィレット部421の形状は、図4に示した、第1接続部41におけるフィレット部411と同様の形状であってもよく、図5Aから図7Cに示したフィレット部411のバリエーションの例のような形状であってもよい。
なお、第2接続部42におけるフィレット部421は、積層造形に意図せず形成された、すなわち、区画壁24又は不図示の側壁部2aと各壁部23との交差部分の角がダレてしまった結果として形成されたものであってもよい。
【0031】
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、壁厚さ方向で隣り合う2つの壁部23と、第1基部61と、第2基部62とで周囲が囲まれた空間が形成される。幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、この空間が第1流路21の分割流路21a及び第2流路22の分割流路22aとなる。
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1において上記空間が流体が流通する流路となる場合のように、上記空間の大きさが大きいことが望ましい場合がある。
しかし、第1接続部41についての壁厚さ方向における幅W1、及び、第2接続部42についての壁厚さ方向における幅W2が大きくなると、上記空間の大きさが小さくなってしまう。
上述したように、積層造形時の原料粉末の溶融不良の抑制の観点から、第1接続部41についての壁厚さ方向における幅W1はある程度確保した方がよい。しかし、第2接続部42については、壁厚さ方向における幅W2を確保する必要性に乏しい。すなわち、例えば、パウダーベッド法による積層造形法により、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1を第1基部61から壁部23に向かって積層して形成する場合、第2基部62は、第2接続部42の上に形成されることとなる。この場合には、第2基部62の形成時にエネルギービームによるパウダーベッドへの入熱が第2接続部42に逃げても、第2接続部42の大きさが比較的小さいため、逃げる熱量も比較的小さくなり、原料粉末の溶融不良が生じ難い。
したがって、第2接続部42についての壁厚さ方向における幅W2は、第1接続部41についての壁厚さ方向における幅W1よりも小さくてもよいこととなる。第2接続部42についての壁厚さ方向における幅W2を第1接続部41についての壁厚さ方向における幅W1よりも小さくする(W2<W1)ことで、壁厚さ方向で隣り合う2つの壁部23と、第1基部61と、第2基部62とで周囲が囲まれた空間、すなわち分割流路21a、22aの大きさが小さくなることを抑制できる。
【0032】
第2接続部42についての壁厚さ方向における幅W2を第1接続部41についての壁厚さ方向における幅W1よりも小さくするにあたり、1つの分割流路21a、22aにおける第2接続部42の2つフィレット部421の最大幅bの和(2×b)よりも、第2基部62の内、該分割流路21a、22aに面した天井面(後述する第2表面62a)についての壁厚さ方向の大きさaの方が大きくなるようにしてもよい。
すなわち以下の式(1)を満たすとよい。
2×b<a ・・・(1)
なお、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、1つの分割流路21a、22aにおける第2表面62aについての壁厚さ方向の大きさaは、3mm以下である。
また、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、フィレット部421の最大幅bは、500μm程度であるとよい。
【0033】
上記の式(1)から、第2接続部42の壁厚さ方向における幅の最大値W2maxと、壁厚さ方向において隣り合う一対の壁部23間の間隔gと、各々の壁部23の厚さtとの関係式を以下のようにして導く。
まず、式(1)の両辺に2×bを加算すると、
4×b<a+2×b ・・・(2)
となる。
ここで、図4より明らかなように、g=a+2×bであるので、上記の式(2)から以下の式(3)が導かれる。
4×b<g
2×b<0.5×g ・・・(3)
【0034】
また、図4に示すように、第2接続部の壁厚さ方向における幅の最大値W2maxは、フィレット部421の最大幅bの和(2×b)と壁部23の厚さtとの和であるので、以下の式(4)のとおりとなる。
W2max=2×b+t
W2max-t=2×b ・・・(4)
【0035】
上記の式(3)の左辺に上記の式(4)を代入すると、第2接続部42の壁厚さ方向における幅W2の最大値W2maxと、壁厚さ方向において隣り合う一対の壁部23間の間隔gと、各々の壁部23の前記厚さtとの関係式として、以下の式(5)が得られる。
W2max-t<0.5×g ・・・(5)
【0036】
すなわち、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、第2接続部42の壁厚さ方向における幅W2の最大値W2maxと、壁厚さ方向において隣り合う一対の壁部23間の間隔gと、各々の壁部23の前記厚さtとが、上記の式(5)を満たすとよい。
これにより、第2基部62の内、後述する第2表面62aについての壁厚さ方向の大きさaを、分割流路21a、22aを挟んで壁厚さ方向で隣り合う2つの壁部23のそれぞれについての第2接続部42が該2つの壁部23のそれぞれから壁厚さ方向に突出した突出量(最大幅b)の合計(2×b)よりも大きくすることができる。したがって、分割流路21a、22aの大きさが小さくなることを抑制できる。
【0037】
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、第2接続部42を介して各々の壁部23の第2端部52が接続される第2基部62の第2表面62aは、第1接続部41を介して各々の壁部23の第1端部51が接続される第1基部61の第1表面61aよりも大きな表面粗さを有していてもよい。
【0038】
例えば、パウダーベッド法による積層造形法により、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1を第1基部61から壁部23に向かって積層して形成する場合、第2基部62のうち、分割流路21a、22aを挟んで壁厚さ方向で隣り合う2つの壁部23の間に位置する領域は、いわゆるオーバーハング領域となる。そのため、第2基部62の形成時に、第2表面62aへの意図しない原料粉末の付着により、第2表面62aの表面粗さが第1表面61aよりも大きくなりがちである。
したがって、幾つかの実施形態に係る熱交換コア1のように、第2表面62aの表面粗さが第1表面61aよりも大きくなってもよい。
【0039】
幾つかの実施形態に係る熱交換コア1では、壁厚さ方向の直交方向における第1接続部41から第2接続部42までの距離dと、壁厚さ方向において隣り合う一対の壁部23間の間隔gとが、以下の式(6)を満たすとよい。
d>g ・・・(6)
これにより、分割流路21a、22aについての壁厚さ方向の直交方向の大きさが壁厚さ方向の厚さよりも大きくなり、オーバーハング領域の拡大を抑制しつつ分割流路21a、22aの流路断面積を大きくすることができる。
【0040】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述の説明では、第1基部61の第1表面61aと各々の壁部23の延在方向との関係について明確に言及していなかったが、第1基部61の第1表面61aに対する直交方向に各々の壁部23が延在してもよく、第1基部61の第1表面61aに対して傾斜した方向に各々の壁部23が延在してもよい。
【0041】
また、例えば、上述の説明では、積層造形物として熱交換コア1を例に挙げて説明したが、熱交換コア1に限らず、金属製の第1基部61に相当する部位と、第1基部61よりも薄い厚さtを有し、壁厚さ方向に並ぶように第1基部61上に立設される複数の壁部23に相当する部位とを備える各種の積層造形物に対しても上述の説明の内容を適用できる。
【0042】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る積層造形物としての熱交換コア1は、金属製の第1基部61と、第1基部61よりも薄い厚さtを有し、壁厚さ方向に並ぶように第1基部61上に立設される複数の壁部23と、を備える。各々の壁部23の第1端部51は、壁厚さ方向において壁部23の厚さtよりも大きな幅W1を有する第1接続部41を介して第1基部61に接続される。
【0043】
例えば、パウダーベッド法による積層造形法により、積層造形物を第1基部から壁部に向かって積層して形成する場合について考える。
この場合、壁厚さ方向における幅が壁部23よりも第1接続部41の方が大きいので、第1接続部41を介さずに第1基部61と第1端部51とが接続される場合と比べて、金属粉末(原料粉末)の溶融不良が生じ難くなる。すなわち、第1基部61に接続される部位(すなわち第1接続部41)へのトータルの入熱量が大きくなるので、該部位の形成時にエネルギービームによるパウダーベッドへの入熱が第1基部61に逃げても、原料粉末の溶融不良が生じ難くなる。
上記(1)の構成によれば、積層造形時の原料粉末の溶融不良を抑制できるので、積層造形物の品質を向上できる。
【0044】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、各々の壁部23の第1端部51とは反対側の第2端部52が第2接続部42を介して接続される第2基部62を備えていてもよい。第2接続部42は、壁厚さ方向において第1接続部41よりも小さな幅を有するとよい。
【0045】
上記(2)の構成によれば、壁厚さ方向で隣り合う2つの壁部23と、第1基部61と、第2基部62とで周囲が囲まれた空間の大きさが小さくなることを抑制できる。
【0046】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第2接続部42の壁厚さ方向における幅W2の最大値W2maxと、壁厚さ方向において隣り合う一対の壁部23間の間隔gと、各々の壁部の厚さtとが式(5)を満たすとよい。
W2max-t<0.5×g ・・・(5)
【0047】
上記(3)の構成によれば、第2基部62の内、上記空間に面した天井面(第2表面62a)についての壁厚さ方向の大きさを、上記空間を挟んで壁厚さ方向で隣り合う2つの壁部23のそれぞれについての第2接続部42が該2つの壁部23のそれぞれから壁厚さ方向に突出した突出量(最大幅b)の合計(2×b)よりも大きくすることができる。
【0048】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、第2接続部42を介して各々の壁部23の第2端部52が接続される第2基部62の第2表面62aは、第1接続部41を介して各々の壁部23の第1端部51が接続される第1基部61の第1表面61aよりも大きな表面粗さを有していてもよい。
【0049】
例えば、パウダーベッド法による積層造形法により、積層造形物としての熱交換コア1を第1基部61から壁部23に向かって積層して形成する場合、第2基部62のうち、上記空間を挟んで壁厚さ方向で隣り合う2つの壁部23の間に位置する領域は、いわゆるオーバーハング領域となる。そのため、第2基部62の形成時に、第2表面62aへの意図しない原料粉末の付着により、第2表面62aの表面粗さが第1表面61aよりも大きくなりがちである。
したがって、(4)の構成のように、第2表面62aの表面粗さが第1表面61aよりも大きくなってもよい。
【0050】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの構成において、壁厚さ方向の直交方向における第1接続部41から第2接続部42までの距離dと、壁厚さ方向において隣り合う一対の壁部23間の間隔gとが式(6)を満たすとよい。
d>g ・・・(6)
【0051】
上記(5)の構成によれば、上記空間における壁厚さ方向の直交方向の大きさが壁厚さ方向の厚さよりも大きくなり、オーバーハング領域の拡大を抑制しつつ上記空間を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 熱交換コア
2 本体部
2a 側壁
10 熱交換器
21 第1流路
21a 分割流路
22 第2流路
22a 分割流路
23 壁部
24 区画壁
41 第1接続部
42 第2接続部
51 第1端部
52 第2端部
61 第1基部
61a 第1表面
62 第2基部
62a 第2表面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C