(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135048
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】回転機械の運転条件決定装置、運転支援装置、制御装置、及び、運転条件決定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20220908BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034623
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 理
(72)【発明者】
【氏名】川畠 竜
(72)【発明者】
【氏名】石沢 修一
(72)【発明者】
【氏名】山下 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 伸之介
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD05
2G024AD22
2G024BA23
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA09
2G024FA01
(57)【要約】
【課題】回転機械で音響信号に基づくラビング検出がなされた際にラビングを抑制するための運転条件を的確に決定することにより、回転機械の運転範囲を拡大する。
【解決手段】回転機械の固定部に設置されたAEセンサからAE信号を取得し、AE信号に基づいて、回転機械におけるラビングの有無を判定する。その結果、ラビングが有ると判定された場合に、ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の固定部に設置されたAEセンサからのAE信号を取得するための信号取得部と、
前記AE信号に基づいて、前記回転機械におけるラビングの有無を判定するための判定部と、
前記判定部で前記ラビングが有ると判定された場合に、前記ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件を決定するための運転条件決定部と、
を備える、回転機械の運転条件決定装置。
【請求項2】
前記ラビング抑制運転条件は、前記回転機械の運転モードごとに予め設定されており、
前記運転条件決定部は、前記判定部で前記ラビングが有ると判定された際に前記回転機械で実施されている前記運転モードに対応する前記ラビング抑制運転条件を選択する、請求項1に記載の回転機械の運転条件決定装置。
【請求項3】
前記運転モードは、前記回転機械の回転数又は負荷の変動を伴う、請求項2に記載の回転機械の運転条件決定装置。
【請求項4】
前記回転機械で実施されている前記運転モードが、出力指令に応じて前記回転機械が起動される起動モードである場合、前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際の前記回転機械の回転数を一時的に維持するもしくは昇速率を低下させるように前記ラビング抑制運転条件を決定する、請求項2又は3に記載の回転機械の運転条件決定装置。
【請求項5】
前記回転機械で実施されている前記運転モードが、出力指令に応じて前記回転機械の負荷が変動する負荷変動モードである場合、前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際の前記回転機械の負荷を一時的に維持するように前記ラビング抑制運転条件を決定する、請求項2又は3に記載の回転機械の運転条件決定装置。
【請求項6】
前記回転機械で実施されている前記運転モードが、出力指令に応じて前記回転機械が低負荷運転する低負荷運転モードである場合、前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際に前記回転機械の負荷を維持もしくは増加するように前記ラビング抑制運転条件を決定する、請求項2又は3に記載の回転機械の運転条件決定装置。
【請求項7】
前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際に、前記回転機械において前記固定部と回転部との間のクリアランスを増大するように前記ラビング抑制運転条件を決定する、請求項2又は3に記載の回転機械の運転条件決定装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記AE信号の位相の情報に基づいて算出されるラビング検知指標に基づいて、前記ラビングの有無を判定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の回転機械の運転条件決定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の回転機械の運転条件決定装置と、
前記回転機械の運転状態を特定するための運転状態特定部と、
前記判定部の判定結果と前記運転状態特定部によって特定された前記運転状態とに基づいてマップを作成するためのマップ作成部と、
前記マップ作成部によって作成された前記マップを表示するための表示部と、
を備える、回転機械の運転支援装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の回転機械の運転条件決定装置と、
前記回転機械の運転状態を特定するための運転状態特定部と、
前記判定部の判定結果と前記運転状態特定部によって特定された前記運転状態とに基づいてマップを作成するためのマップ作成部と、
前記マップ作成部によって作成された前記マップに基づいて、前記回転機械の制御パラメータについて制御目標値を決定するための制御目標値決定部と、
前記制御目標値決定部で決定された前記制御目標値に基づいて前記制御パラメータを制御するための制御部と、
を備える、回転機械の制御装置。
【請求項11】
回転機械の固定部に設置されたAEセンサからのAE信号を取得する工程と、
前記AE信号に基づいて、前記回転機械におけるラビングの有無を判定する工程と、
前記判定部で前記ラビングが有ると判定された場合に、前記ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件を決定する工程と、
を備える、回転機械の運転条件決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械の運転条件決定装置、運転支援装置、制御装置、及び、運転条件決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機械におけるラビング検出は、回転軸の軸振動を検出することにより行われていた。回転軸における軸振動は、車室の熱変形によってシール等と回転軸とがラビングし(擦れ)、ラビングにより生じた熱によって回転軸に熱曲がりが生じることによって発生することがある。このようなラビングの発生は、回転機械の軸振動や、シール劣化による性能低下をもたらす。また回転軸の軸振動は、ロータに熱曲がりが生じる程度にラビングが進行した段階で検出可能な現象であるため、軸振動によってラビングを検出した場合には、回転機械を緊急停止させるなど、回転機械の運転に大きな影響を及ぼす対応が必要となるおそれがあった。そのため、ラビングの早期検出が望まれている。
【0003】
このような課題を解決するために、音響信号を利用することで従来に比べて早期にラビングを検出するための技術が提案されている。例えば特許文献1では、プラントにおける回転機械で回転体異常現象により発生する音響に基づく音響信号を用いて、回転機械におけるラビングの有無を診断可能な装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転機械におけるラビング発生は、上述のように回転機械の緊急停止など、回転機械の運転範囲を狭める要因となる。上記特許文献1では、音響信号に基づくラビング診断を行うことで、従来に比べて早い段階でラビングを検出可能ではあるが、ラビング検出後に回転機械をどのように制御することによって、回転機械の運転範囲を改善するかについては検討されていない。また回転機械におけるラビングは、起動時、負荷変動時、低負荷運転モードへの移行時のような回転機械の負荷に変動が生じる場合に生じやすい傾向がある。そのため、これらの場合における回転機械の運転条件に対して過度なマージンが設定されており、回転機械の運転範囲が制約されている。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、回転機械で音響信号に基づくラビング検出がなされた際にラビングを抑制するための運転条件を的確に決定することにより、回転機械の運転範囲を拡大可能な回転機械の運転条件決定装置、運転支援装置、制御装置、及び、運転条件決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の運転条件決定装置は、上記課題を解決するために、
回転機械の固定部に設置され、前記回転機械のAE信号を取得するためのAEセンサと、
前記AE信号に基づいて、前記回転機械におけるラビングの有無を判定するための判定部と、
前記判定部で前記ラビングが有ると判定された場合に、前記ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件を決定するための運転条件決定部と、
を備える。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の運転支援装置は、上記課題を解決するために、
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の運転条件決定装置と、
前記判定部における前記ラビングの有無の判定結果に基づいて、前記回転機械の運転状態に関するパラメータに対するラビング発生領域を特定するラビング発生領域特定部と、
ラビング発生領域を表示するための表示部と、
を備える。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の制御装置は、上記課題を解決するために、
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の運転条件決定装置と、
前記運転条件決定装置で決定された運転条件に基づいて前記回転機械を制御するための制御部と、
を備える。
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の運転条件決定方法は、上記課題を解決するために、
回転機械の固定部に設置され、前記回転機械のAE信号を取得する工程と、
前記AE信号に基づいて、前記回転機械におけるラビングの有無を判定する工程と、
前記ラビングが有ると判定された場合に、前記ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件を決定する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、回転機械で音響信号に基づくラビング検出がなされた際にラビングを抑制するための運転条件を的確に決定することにより、回転機械の運転範囲を拡大可能な回転機械の運転条件決定装置、運転支援装置、制御装置、及び、運転条件決定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る運転条件決定装置を回転機械とともに示す構成図である。
【
図2】包絡線処理後のAE信号の振幅を回転次数ごとに示したグラフである。
【
図3】ラビング検知指標の時系列分布を示したグラフである。
【
図4】ラビング検知指標の累積確率を示したグラフである。
【
図5】幾つかの運転モードに対して設定されたラビング抑制運転条件の例である。
【
図6】
図1の運転条件決定装置を備える回転機械の運転支援装置を示す構成図である。
【
図7】
図6のマップ作成部によって作成されるマップの一例である。
【
図8】
図6のマップ作成部によって作成されるマップの他の例である。
【
図9】
図1の運転条件決定装置を備える回転機械の制御装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0014】
図1は本実施形態に係る運転条件決定装置100を回転機械10とともに示す構成図である。
図1では回転機械10の一例として蒸気タービンが記載されているが、回転機械10は蒸気タービンに限定されず、ガスタービン、圧縮機等、種々の回転機械とすることができる。本実施形態の回転機械10は、両端部を固定部である軸受部20で支持され、複数配列された動翼32を有する回転軸30と、複数配列された静翼44を有する車室40とを有し、動翼32および静翼44は各列に交互に配置され車室40に収納されている。AEセンサ50は、軸受部20に取り付けられている。
【0015】
車室40の流入口42から流入した作動流体Wである蒸気は、車室40の内部の回転軸30に配列された動翼32を通過することにより、動翼32に作用して回転軸30に回転力を付与する。車室40に配列された静翼44は、蒸気の流れを調整する。動翼32を通過した蒸気は、流出口46から流出する。
【0016】
AEセンサ50は、AE(Acoustic Emission;高周波出力)検出用のセンサとして構成され、検出したAE波をAE信号Sとして出力する。AEセンサ50は、軸受部20に取り付けられている。
【0017】
回転機械10は、例えば、熱変形を生じた車室40に取り付けられているシール等が回転軸30に対してラビング(擦れ)を発生することがあり、その場合、ラビングによるAE波を生じる。例えば、ラビングの発生個所Rで生じたAE波は、弾性波として回転軸30の表面を伝播し、軸受部20を介してAEセンサ50で検出される。AE波は、一般的に数10kHz~数MHzの音波領域の周波数を有する。AEセンサ50により検出されるAE信号Sは、ラビングにより生じるAE波の周波数および他のノイズからのノイズ信号Nの周波数を含んでいる。
【0018】
AEセンサ50は、AE波の振動を検出し電圧として出力する素子、及び、当該素子からの電圧を増幅して電気信号として出力する増幅器を含んでいる。
【0019】
回転計52は、回転軸30の回転数fを検出するための構成である。回転計52は、例えば、回転軸30に取り付けられるドグと、ドグを検出する検出器とを備えており、回転軸30が1回転してドグが回転計52に対して1回入力されると、それを基に回転数fを出力する。回転計52から出力された回転数fは、AE信号Sと同期して取得可能である。
【0020】
運転条件決定装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0021】
運転条件決定装置100は、
図1に示すように、信号取得部110と、記憶部112と、判定部120と、運転条件決定部130と、出力部140とを備える。
【0022】
信号取得部110は、AEセンサからのAE信号Sを取得するための構成である。信号取得部110は、記憶部112に記録されるプログラムを実行することにより、AEセンサ50からAE信号Sを取得し、当該取得したAE信号Sを記憶部112にデータとして記憶する。AE信号Sの取得は、所定の間隔で行われる。AE信号Sの取得は、例えば数秒に一度の時間間隔で行われる。信号取得部110は、例えば1度のデータ取得で回転軸が2回転~4回転する時間のデータを取得する。
【0023】
判定部120は、信号取得部110で取得されたAE信号Sに基づいてラビングの有無を判定するための構成であり、フィルタ処理部121、データ処理部122、回転同期成分計算部123、指標算出部124と、閾値算出部125と、ラビング判定部126とを含んで構成される。
【0024】
フィルタ処理部121は、記憶部112に記憶されたプログラムを実行することにより、AE信号Sについてフィルタ処理を行い、フィルタ処理されたAE信号Sfを出力する。フィルタ処理部121は、所定の周波数成分を通過帯域とするフィルタを有する。フィルタ処理部121が有するフィルタの通過帯域は、AE信号Sに含まれる周波数成分である数10kHz~数MHzのうちのいずれかの周波数帯域を含む。
【0025】
データ処理部122は、記憶部112に記憶されたプログラムを実行することにより、AE信号S又はフィルタ処理されたAE信号Sfについて、所定の包絡線処理、リサンプリング及び平均値化ゼロ処理を行う。包絡線処理は、AE信号S又はAE信号Sfについて包絡線処理を行い、高周波成分が取り除かれたAE信号Srを出力する。リサンプリング処理は、包絡線処理されたAE信号Srについて所定の周波数でのリサンプリングを行い、リサンプリング後のAE信号Spを出力する。平均値ゼロ化処理は、AE信号Spについて、同期平均である周期ごとの振幅の平均値をゼロとする処理を行い、平均値ゼロ化処理されたAE信号Szを出力する。
【0026】
回転同期成分計算部123は、記憶部112に記憶されるプログラムを実行することにより、AE信号Szについて周波数分析を行う。回転同期成分計算部123は、周波数分析を行うことにより、時系列関数であるAE信号Szを周波数ごとの振幅として表した周波数関数に変換し、周波数を回転次数により表した回転次数分析結果Fを出力する(
図2)。ここで
図2は包絡線処理後のAE信号の振幅を回転次数ごとに示したグラフである。回転次数は、回転軸30の回転数fに対応する周波数成分を1とした次数である。ここで、回転数1倍成分Cは、回転同期成分計算部123により出力される回転次数1である周波数成分を有する。
【0027】
指標算出部124は、記憶部112に記録されるプログラムを実行することにより、AE信号Sの位相の情報について、ラビング検知指標Dを算出する。ラビング検知指標Dは、
図3に示すように、時系列分布として求められる。ラビング検知指標Dは以下の式(1)により算出される。
ラビング検知指標=1/(1+(AE信号の位相の分散)^0.5)・・・(1)
【0028】
ラビング検知指標Dの算出には、例えば、回転数1倍成分Cの位相についての分散が用いられる。回転数1倍成分Cの位相の分散は、具体的には、回転数1倍成分Cの位相について所定のサンプリングを行うことで求められた回転数1倍成分抽出位相Pについての分散として求められる。回転数1倍成分抽出位相Pは、回転計52で取得された回転数fの周期に対する回転数1倍成分Cの周期のズレを位相として取得する。回転数1倍成分C抽出位相Pの取得は、例えば、数秒間隔で、5-10回点についてサンプリングすることにより行われる。
【0029】
閾値算出部125は、記憶部112に記録されるプログラムを実行することにより、ラビング検知指標Dについてラビングの有無を判定するための閾値Tを取得する。閾値Tは、例えば、
図4に示すように、ラビングが生じていない状態におけるラビング検知指標Dの累積確率から算出される。閾値Tは、例えば、予め累積確率が与えられ、それを満たすラビング検知指標Dが閾値として算出されてもよい。閾値Tは、例えば、予めラビング検知指標Dが与えられてもよい。すなわち、閾値Tは、例えば、
図4に示す例において、累積確率99.7%が予め与えられており、それに基づいて算出されるラビング検知指標D0.034を閾値Tとしてもよく、また、例えば、予め閾値Tを0.034として与えられていてもよい。
【0030】
ラビング判定部126は、記憶部112に記憶されるプログラムを実行することにより、ラビング検知指標Dについてのラビングの有無を判定する。ラビングの有無の判定は、ラビング検知指標Dと閾値Tと比較することにより行われる。ラビング判定部126は、回転機械10が、ラビングが有と判定された場合に、例えばモニタ表示にラビング有の旨を出力するよう構成されていてもよい。
【0031】
判定部120では、このようにAE信号Sの位相の情報を基にラビング検知指標を算出することで、ラビング検知指標に基づくラビングの有無判定を行う。仮にAEセンサ50からのラビングのAE信号Sの振幅を指標とする場合、蒸気タービンのような他のノイズからのノイズ信号の大きい回転機械においては、ラビングのAE信号の振幅は他のノイズからのノイズ信号の振幅よりも小さく、他のノイズからのノイズ信号に埋もれてしまうため、ラビングのAE信号が検出できないおそれがあった。判定部120では、AE信号Sの位相の情報を基にラビング検知指標を算出することで、蒸気タービンのような他のノイズからのノイズ信号の大きい回転機械においても、ラビングをより高い精度で効率よく検出することができる。
【0032】
続いて運転条件決定部130は、判定部120でラビングが有ると判定された場合に、ラビングを抑制するために回転機械10に課される運転条件であるラビング抑制運転条件を決定するための構成である。ラビング抑制運転条件は、回転機械10の運転モードごとに設定され、各運転モードにおける回転機械10の運転状態においてラビングを抑制するために必要な運転条件として規定される。
【0033】
本実施形態では、回転機械10は複数の運転モードを有しており、複数の運転モードのうち、ラビングが発生する可能性が比較的高い幾つかの運転モードに対してラビング抑制運転条件が設定される。例えば、回転機械10の運転モードのうち急速起動モード、負荷変動モード、低負荷運転モードでは、回転機械10の回転数又は負荷の変動を伴うためラビングが発生しやすい傾向にある。
【0034】
急速起動モードは、停止状態にある回転機械10を急速起動するためのモードであり、回転機械10の回転数が急増する。また負荷変動モードでは、外部からの出力指令に基づいて回転機械10の負荷が変動する。また低負荷運転モードでは、外部からの出力指令によって回転機械10の運転が不要になった場合に、回転機械10を停止することなく低負荷状態に維持することで、出力指令によって回転機械10の運転が再び必要になった際に、良好な応答性で負荷追従できる。これらの運転モードは、例えば回転機械10が発電プラントにおいて発電機に連結された蒸気タービン等である場合、近年、電力系統に占める自然エネルギーの割合増加に伴って回転機械10で実施されるケースが増えている。すなわち自然エネルギーは環境条件によって変動するため比較的不安定であり、電力需要を賄うために発電プラントに対する出力指令に応じて、これらの運転モードで回転機械10を制御することが増えている。
【0035】
ここで
図5は、幾つかの運転モードに対して設定されたラビング抑制運転条件の例である。この例では、急速起動モード、負荷変動モード及び低負荷運転モードに対して、それぞれ第1ラビング抑制運転条件C1、第2ラビング抑制運転条件C2及び第3ラビング抑制運転条件C3が設定される。
【0036】
第1ラビング抑制運転条件C1は、急速起動モードに対応するラビング抑制運転条件であり、急速起動時に時間経過に従って上昇する回転機械10の回転数を一時的にホールドするように設定される。具体的には、回転機械10の急速起動時に判定部120でラビングが有ると判定された場合には、その際の回転機械10の回転数をホールドし、その後、ラビングが無いと判定された際(すなわちラビングの解除判定がなされた際)に回転機械10の回転数の上昇を再開するように設定される。これにより、判定部120においてラビングが有ると判定された場合、急速起動を一時的に停止することで、更なるラビングの進行を抑制することができる。
【0037】
第2ラビング抑制運転条件C2は、負荷変動モードに対応するラビング抑制運転条件であり、外部からの出力指令に応じて回転機械10の負荷を変動しながら運転する場合に、負荷変動を一時的にホールドするように設定される。具体的には、回転機械10の負荷変動時に判定部120でラビングが有ると判定された場合には、その際の回転機械10の負荷をホールドし、その後、ラビングが無いと判定された際(すなわちラビングの解除判定がなされた際)に回転機械10の負荷変動を再開するように設定される。これにより、判定部120においてラビングが有ると判定された場合、負荷変動を一時的に停止することで、更なるラビングの進行を抑制することができる。
【0038】
第3ラビング抑制運転条件C3は、低負荷運転モードに対応するラビング抑制運転条件であり、外部からの出力指令に応じて回転機械10を低負荷運転にするために、回転機械10の負荷を減少させる場合に、当該負荷の減少を中断して、その負荷を維持するもしくは一時的に増加するように設定される。具体的には、回転機械10の負荷減少時に判定部120でラビングが有ると判定がなされた場合には、その際の回転機械10の負荷の減少を、その負荷を維持するもしくは一時的に増加に転じさせ、その後、ラビングが無いと判定された際(すなわちラビングの解除判定がなされた際)に回転機械10の負荷減少を再開するように設定される。これにより、判定部120においてラビングが有ると判定された場合、負荷減少を一時的に中断することで、更なるラビングの進行を抑制することができる。
【0039】
また運転条件決定部130は、他のラビング抑制運転条件として、ラビングを緩和するために回転機械10の回転部と固定部との間に存在する間隙の大きさを増大(もしくは拡大)するACC制御を行うための第4ラビング抑制運転条件C4を規定してもよい。間隙の大きさの調整は、例えば、間隙を規定する回転機械の固定部(例えば車室や翼環などの静止部材)を加熱することで、熱膨張(又は熱収縮)により行われてもよいし、間隙における圧力(より具体的には、間隙を規定するシールリング等の部材の周囲圧力)を弁の開閉制御により調整することで、間隙の少なくとも一部を規定する部材(シールリングなど)を移動させることによって行われてもよい。
尚、ラビング抑制運転条件は、複数の運転モードに共通して対応づけられていてもよく、
図5では第4ラビング抑制運転条件C4は、急速起動モード、負荷変動モード及び低負荷運転モードのそれぞれに共通して対応づけられている。
【0040】
このような運転モードごとのラビング抑制運転条件は、互いに関連づけられて記憶部112に予め記憶される。運転条件決定部130は、回転機械10で実施されている運転モードを特定し、当該運転モードに対応するラビング抑制運転条件を記憶部112から選択することで、運転条件の決定を行う。そして運転条件決定部130で決定された運転条件は、出力部140から外部に出力される。
【0041】
以上説明したように本実施形態に係る運転条件決定装置100によれば、ラビングの発生がAEセンサを用いて取得した音響信号に基づいて早期に判定されるとともに、ラビングが有ると判定された場合には、ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件が決定される。このように決定されるラビング抑制運転条件を回転機械に課すことで、ラビングを抑制することで、回転機械の緊急停止などを回避し、運転範囲を効果的に広げることができる。
【0042】
<運転支援装置>
続いて前述の運転条件決定装置100を利用した回転機械10の運転支援装置200について説明する。
図6は
図1の運転条件決定装置100を備える回転機械10の運転支援装置200を示す構成図である。運転支援装置200は、運転条件決定装置100と、運転状態特定部210と、マップ作成部220と、表示部230とを備える。
【0043】
運転条件決定装置100は前述の構成を備え、特に判定部120では回転機械10におけるラビングの有無が判定される。また運転状態特定部210は、判定部120と同期して回転機械10の運転状態を特定する。回転機械10の運転状態は少なくとも1つのパラメータによって規定される。
【0044】
マップ作成部220は、判定部120における判定結果と、運転状態特定部210で特定された運転状態とに基づいて、マップを作成する。ここで
図7は
図6のマップ作成部220によって作成されるマップの一例である。
図7の例では、運転状態が「負荷変化率」と「前回運転停止時からの経過時間」という2つのパラメータによって特定され、回転機械10の過去の運転状態を示す各点におけるラビング判定結果が示されている。これによれば、ラビング判定結果が「無」である範囲R1と、ラビング判定結果が「有無」である範囲R2とが、境界ラインLを介して分布している様子が示されており、前回停止時からの経過時間が長くなるに従って、より少ない負荷変化率でラビングが発生しやすくなる傾向が示されている。
【0045】
尚、
図7では、回転機械10の運転状態を「負荷変化率」と「前回運転停止時からの経過時間」という2つのパラメータで特定する場合について例示しているが、回転機械10の運転状態は、例えば回転機械10の回転数の昇速率や最低負荷など、他のパラメータによって特定されてもよい。
【0046】
また
図8は
図6のマップ作成部220によって作成されるマップの他の例である。
図8の例では、運転状態が「負荷変化率」と「負荷」という2つのパラメータによって特定され、回転機械10の負荷を減少させることで低負荷運転に移行する際における回転機械10の過去の運転状態を示す各点におけるラビング判定結果が示されている。
図8においても
図7と同様に、ラビング判定結果が「無」である範囲R1と、ラビング判定結果が「有」である範囲R2とが、境界ラインLを介して分布している様子が示されており、負荷を低下させる際の負荷変化率が大きいほどラビングせずに到達できる負荷が大きく。
【0047】
従来、回転機械10におけるラビング発生を防止するために、境界ラインLに対して、例えば仮の境界ラインL’において範囲R1とR2とを想定するように過度なマージンが設定されていた。それに対して本実施形態では、AEセンサを用いたラビング判定によって、回転機械10にラビングが発生した場合に、より早期に精度よく判定することができるため、過度なマージンを設定する必要がなくなり、境界ラインLで示すように従来に比べて回転機械10の運転範囲を拡大することができる。
【0048】
表示部230は、例えばディスプレイ等の利用者が認識可能な態様で、マップ作成部220で作成したマップを表示するための構成である。回転機械10の運転者は、表示部230に表示された上記マップを参照することで、ラビングが生じない運転範囲を容易に把握し、回転機械10の運転状態が当該運転範囲を逸脱しないように回転機械10を制御することで、ラビング発生を効果的に回避した運用が可能となる。
【0049】
以上説明したように本実施形態に係る運転支援装置200によれば、判定部120における判定結果と運転状態特定部210で特定された運転状態との相関を示すマップを表示部230に表示することで、回転機械10の運転状態が当該運転範囲を逸脱しないように回転機械10を制御するための運転支援を行うことができる。
【0050】
<制御装置>
続いて前述の運転条件決定装置100を利用した回転機械10の制御装置300について説明する。
図9は
図1の運転条件決定装置100を備える回転機械10の制御装置300を示す構成図である。
【0051】
制御装置300は、運転条件決定装置100と、マップ作成部220と、制御目標値決定部310と、制御部320とを備える。制御装置300は、運転条件決定装置100と、運転状態特定部210と、マップ作成部220と、制御目標値決定部310と、制御部320とを備える。
尚、運転状態特定部210及びマップ作成部220は、前述の運転支援装置200と同様であるため重複する説明は省略する。
【0052】
制御目標値決定部310は、マップ作成部220で作成されたマップに基づいて、回転機械10の制御パラメータについて制御目標値を決定する。具体的には、制御目標値決定部310は、外部からの出力指令に基づいて算出される本来の制御目標値がマップのうちラビング判定結果が「無」である範囲R1内にあるか否かを判定する。その結果、本来の制御目標値が範囲R1内にある場合には、本来の制御目標値がそのまま採用される。
【0053】
一方、本来の制御目標値が範囲R1内にない場合、制御目標値決定部310は本来の制御目標値が範囲R1内になるように補正を行う。この補正は、例えば、範囲R1と範囲R2との境界ラインLに対して、所定のマージンを有するように行われてもよい。これにより、出力指令に対応した本来の制御目標値からの乖離を抑えつつ、ラビングの発生を効果的に防止可能な制御目標値への修正が可能となる。
【0054】
そして制御部320は、制御目標値決定部310で決定された制御目標値に基づいて、回転機械10の制御パラメータを制御する。これにより、ラビングの発生を回避しながら、出力指令に対して回転機械10を良好に追従運転制御することができる。
【0055】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0056】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0057】
(1)一態様に係る回転機械の運転条件決定装置は、
回転機械の固定部に設置されたAEセンサからのAE信号を取得するための信号取得部と、
前記AE信号に基づいて、前記回転機械におけるラビングの有無を判定するための判定部と、
前記判定部で前記ラビングが有ると判定された場合に、前記ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件を決定するための運転条件決定部と、
を備える。
【0058】
上記(1)の態様によれば、ラビングの発生をAEセンサを用いて取得したAE信号に基づいて早期に判定できるとともに、ラビングが有ると判定された場合には、ラビングを抑制するために回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件が決定される。このように決定されるラビング抑制運転条件を回転機械に課すことで、ラビングを抑制することで、回転機械の緊急停止などを回避し、運転範囲を効果的に広げることができる。
【0059】
(2)他の態様では上記(1)の態様において、
前記ラビング抑制運転条件は、前記回転機械の運転モードごとに予め設定されており、
前記運転条件決定部は、前記判定部で前記ラビングが有ると判定された際に前記回転機械で実施されている前記運転モードに対応する前記ラビング抑制運転条件を選択する。
【0060】
上記(2)の態様によれば、運転モードに対応するラビング抑制運転条件を選択することで、各運転モードにおける回転機械で生じているラビングを効果的に抑制できる。
【0061】
(3)他の態様では上記(2)の態様において、
前記運転モードは、前記回転機械の回転数又は負荷の変動を伴う。
【0062】
上記(3)の態様によれば、回転機械10の回転数又は負荷の変動を伴うためラビングが発生しやすい傾向にある運転モードに対してラビング抑制運転条件を設定することで、回転機械におけるラビングを効果的に抑制できる。
【0063】
(4)他の態様では上記(2)又は(3)の態様において、
前記回転機械で実施されている前記運転モードが、出力指令に応じて前記回転機械が起動される起動モードである場合、前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際の前記回転機械の回転数を一時的に維持するもしくは昇速率を低下させるように前記ラビング抑制運転条件を決定する。
【0064】
上記(4)の態様によれば、起動モードにおいて回転機械の回転数が時間経過に従って上昇する際にラビングが有ると判定された場合、回転機械の回転数を一時的に維持(ホールド)する(すなわち回転機械の起動過程が一時的に停止する)もしくは昇速率を低下させるようにラビング抑制運転条件が決定される。これにより、起動時の回転数の上昇に伴ってラビングが進行することを効果的に防止できる。
【0065】
(5)他の態様では上記(2)又は(3)の態様において、
前記回転機械で実施されている前記運転モードが、出力指令に応じて前記回転機械の負荷が変動する負荷変動モードである場合、前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際の前記回転機械の負荷を一時的に維持するように前記ラビング抑制運転条件を決定する。
【0066】
上記(5)の態様によれば、負荷変動モードにおいて回転機械の負荷が時間経過に従って上昇する際にラビングが有ると判定された場合、回転機械の負荷を一時的に維持(ホールド)する(すなわち回転機械の負荷が略一定に制御される)ようにラビング抑制運転条件が決定される。これにより、回転機械の負荷変動に伴ってラビングが進行することを効果的に防止できる。
【0067】
(6)他の態様では上記(2)又は(3)の態様において、
前記回転機械で実施されている前記運転モードが、出力指令に応じて前記回転機械が低負荷運転する低負荷運転モードである場合、前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際に前記回転機械の負荷を維持もしくは増加するように前記ラビング抑制運転条件を決定する。
【0068】
上記(6)の態様によれば、低負荷モードに移行するために回転機械の負荷を時間経過に従って減少する際にラビングが有ると判定された場合、回転機械の負荷を維持(一時的にホールド)もしくは増加するようにラビング抑制運転条件が決定される。これにより、回転機械の負荷減少に伴ってラビングが進行することを効果的に防止できる。
【0069】
(7)他の態様では上記(2)又は(3)の態様において、
前記運転条件決定部は、前記ラビングが有ると判定された際に、前記回転機械において前記固定部と回転部との間のクリアランスを増大するように前記ラビング抑制運転条件を決定する。
【0070】
上記(7)の態様によれば、回転機械においてラビングが有ると判定された場合、固定部と回転部との間のクリアランスを増大(もしくは拡大)することでラビングを抑制することができる。
【0071】
(8)他の態様では上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記判定部は、前記AE信号の位相の情報に基づいて算出されるラビング検知指標に基づいて、前記ラビングの有無を判定する。
【0072】
上記(8)の態様によれば、ラビングの有無判定を、AE信号の位相の情報に基づいて算出されるラビング検知指標に基づいて行うことで回転軸が軸振動を生じるより先に回転機械のラビングを検出することができ、回転機械のラビングを効率よく高い精度で検出することができる。
【0073】
(9)一態様に係る回転機械の運転支援装置は、
上記(1)から(8)のいずれか一態様の回転機械の運転条件決定装置と、
前記回転機械の運転状態を特定するための運転状態特定部と、
前記判定部の判定結果と前記運転状態特定部によって特定された前記運転状態とに基づいてマップを作成するためのマップ作成部と、
前記マップ作成部によって作成された前記マップを表示するための表示部と、
を備える。
【0074】
上記(9)の態様によれば、ラビングの判定結果と回転機械の運転状態との相関を示すマップを表示部に表示することで、回転機械の運転状態が当該運転範囲を逸脱しないように、運転者が回転機械を操作するための運転支援を行うことができる。
【0075】
(10)一態様に係る回転機械の制御装置は、
上記(1)から(8)のいずれか一態様の回転機械の運転条件決定装置と、
前記回転機械の運転状態を特定するための運転状態特定部と、
前記判定部の判定結果と前記運転状態特定部によって特定された前記運転状態とに基づいてマップを作成するためのマップ作成部と、
前記マップ作成部によって作成された前記マップに基づいて、前記回転機械の制御パラメータについて制御目標値を決定するための制御目標値決定部と、
前記制御目標値決定部で決定された前記制御目標値に基づいて前記制御パラメータを制御するための制御部と、
を備える。
【0076】
上記(10)の態様によれば、ラビングの判定結果と回転機械の運転状態との相関を示すマップに基づいて、回転機械にラビングが生じない範囲で制御パラメータの制御目標値が決定される。そして、回転機械の制御パラメータが、このように決定された制御目標値になるように回転機械を制御することで、ラビングの発生を回避しながら、出力指令に対して回転機械を良好に追従運転制御することができる。
【0077】
(11)一態様に係る回転機械の運転条件決定方法は、
回転機械の固定部に設置されたAEセンサからのAE信号を取得する工程と、
前記AE信号に基づいて、前記回転機械におけるラビングの有無を判定する工程と、
前記判定部で前記ラビングが有ると判定された場合に、前記ラビングを抑制するために前記回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件を決定する工程と、
を備える。
【0078】
上記(11)の態様によれば、ラビングの発生をAEセンサを用いて取得したAE信号に基づいて早期に判定できるとともに、ラビングが有ると判定された場合には、ラビングを抑制するために回転機械の制御に課されるラビング抑制運転条件が決定される。このように決定されるラビング抑制運転条件を回転機械に課すことで、ラビングを抑制することで、回転機械の緊急停止などを回避し、運転範囲を効果的に広げることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 回転機械
20 軸受部
30 回転軸
32 動翼
40 車室
42 流入口
44 静翼
46 流出口
50 センサ
52 回転計
100 運転条件決定装置
110 信号取得部
112 記憶部
120 判定部
121 フィルタ処理部
122 データ処理部
123 回転同期成分計算部
124 指標算出部
125 閾値算出部
126 ラビング判定部
130 運転条件決定部
140 出力部
200 運転支援装置
210 運転状態特定部
220 マップ作成部
230 表示部
300 制御装置
310 制御目標値決定部
320 制御部